インク貯蔵容器
【課題】再生品の製造が困難なインク貯蔵容器を提供する。
【解決手段】本発明に係るインク貯蔵容器100は、インクMを貯蔵するインク貯蔵部10と、インク貯蔵部10の内外間の空気流量を制御する空気流量制御部20と、を備え、インク貯蔵部10は、少なくとも一部の外壁の内側に、外壁よりも低靱性または低剛性の内壁12cを備えている。
【解決手段】本発明に係るインク貯蔵容器100は、インクMを貯蔵するインク貯蔵部10と、インク貯蔵部10の内外間の空気流量を制御する空気流量制御部20と、を備え、インク貯蔵部10は、少なくとも一部の外壁の内側に、外壁よりも低靱性または低剛性の内壁12cを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク貯蔵容器に関する。
【背景技術】
【0002】
インク貯蔵容器の例としては筆記具のインクタンクや、インクジェットプリンタのインク(タンク)カートリッジなどがある。これらは文字や画像を形成する筆記や印刷に消費されたインク量に対応して外気をタンク内に取込んで空気交換し、タンク内の圧力変化がインクの消費に悪影響を及ぼさないようにした機構とされており、その機構としては、外気の取込み口として単なる孔を形成したものや、必要に応じて通気する弁機構付きの通気路を形成したものを挙げることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来、インクジェットプリンタ用のインク貯蔵容器では、インクの品質および吐出量を一定に保ち、印刷品質を低下させないように、使い切りタイプのものが一般的に使用されている。この使い切りタイプのインク貯蔵容器は、タンク内のインクを全て消費した場合には新しいインク貯蔵容器に交換することを前提に設計されている。
【特許文献1】特開2001−277777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年では、使用済みの使い切りタイプのインク貯蔵容器にドリル等で孔を開け、インクを再充填した後にこの孔を塞ぎ、再生品として販売する業者が増えてきている。
【0005】
このような再生品は、業者の加工技術が未熟なため、タンク内の圧力を適正に制御することができない場合があり、当初の印刷品質を維持できないばかりか、プリンタの故障の原因となることがあった。また、再生品においては、純正品とは異なるコストの低いインクを再充填することが通例であり、これも印刷品質を低下させ、プリンタを故障させる要因となっていた。
【0006】
このため、低品質な再生品を使用するユーザは、印刷品質の低下やプリンタの故障に悩まされ、結果として再生品業者ではなくプリンタメーカや元々のインク貯蔵容器メーカに対する不満を募らせる場合があり、プリンタメーカや元々のインク貯蔵容器メーカの信用が失墜することがあった。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、再生品の製造が困難なインク貯蔵容器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、インクを貯蔵するインク貯蔵部と、前記インク貯蔵部の内外間の空気流量を制御する空気流量制御部と、を備え、前記インク貯蔵部は、少なくとも一部の外壁の内側に、前記外壁よりも低靱性または低剛性の内壁を備えることを特徴とする、インク貯蔵容器である。
【0009】
(2)本発明はまた、前記外壁と前記内壁の間の空間は、前記インク貯蔵部の外部と連通されることを特徴とする、上記(1)に記載のインク貯蔵容器である。
【0010】
(3)本発明はまた、前記内壁は、前記外壁よりも柔軟であることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載のインク貯蔵容器である。
【0011】
(4)本発明はまた、前記内壁は、前記外壁よりも薄肉であることを特徴とする、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のインク貯蔵容器である。
【0012】
(5)本発明はまた、前記内壁は、前記インク貯蔵部の上面部に設けられることを特徴とする、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のインク貯蔵容器である。
【0013】
(6)本発明はまた、前記内壁は、前記インクを収容する袋状に構成されることを特徴とする、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のインク貯蔵容器である。
(7)本発明はまた、前記内壁は、ゴムから構成されることを特徴とする、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載のインク貯蔵容器。
【0014】
(8)本発明はまた、前記空気流量制御部は、通常時は空気を流通させないが、前記インク貯蔵部の内圧変化に応じて外部との間で空気交換を行わせる弾性変形可能な連通多孔質の弁体と、前記弁体よりも前記インク貯蔵部側に配設されて通気性を有しかつ撥水処理を施された撥水膜体と、を備えることを特徴とする、上記(1)乃至(7)のいずれかに記載のインク貯蔵容器である。
【0015】
(9)本発明はまた、前記空気流量制御部は、前記インクを吸収することにより、通常時は空気を流入させないが前記インク貯蔵部の内圧変化に応じて空気交換を行わせるインク吸収体を、前記撥水膜体よりも前記インク貯蔵部側に備えることを特徴とする、上記(8)に記載のインク貯蔵容器である。
【0016】
(10)本発明はまた、前記外壁と前記内壁の間の空間は、前記インク貯蔵部の内外間で空気を流通させる通路の一部であることを特徴とする、上記(1)乃至(9)のいずれかに記載のインク貯蔵容器である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るインク貯蔵容器によれば、再生品の製造を困難にし、低品質な再生品が市場に出回るのを防止できるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の例について詳細に説明する。なお、以下の各実施形態におけるインク貯蔵容器は、インクジェットプリンタ用のインクカートリッジに適用した場合を例に挙げて説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係るインク貯蔵容器100の構造を示す断面図である。インク貯蔵容器100は、適宜の合成樹脂から構成されており、同図に示されるように、内部にインクMを貯蔵するインク貯蔵部10と、インク貯蔵部10の内外間で空気の流量を制御する空気流量制御部20と、インク貯蔵部10に貯蔵されたインクMの吐出を制御するためのインク吐出部30と、を有して構成されている。
【0020】
<インク貯蔵部>
インク貯蔵部10は、上部が開口した中空の本体部11と、本体部11の開口を塞ぐ蓋として上部に組み合わされる上面部12から構成されている。本体部11は、図の縦横の寸法よりも奥行きの寸法が小さい略直方体状に形成されている。本体部11の内部13は、隔壁14によって2つの室13a、13bに分けられている。これらの2つの室13a、13bは、隔壁14の基端部に形成された透孔14aによって連通されている。本体部11の底部には、インク吐出部30が設けられている。
【0021】
上面部12は、平面視(図の上から見た場合)が横長の長方形板状である天板12aと、天板12aの周縁のやや内側の下面から下方に向けて突出する嵌合壁12bから構成されている。上面部12は、この嵌合壁12bを本体部11の内部に嵌合させることによって本体部11と組み合わされる。
【0022】
図2は、図1のA部を拡大した要部拡大断面図である。上面部12は、同図に示されるように、上面部12の嵌合壁12bの先端近傍に形成した膨出部12b1と、本体部11に形成した膨出部11aとが相手側部材に嵌合することで固定される。また、交差するハッチング部で図示するように、嵌合壁12bの基端部の全周に亘って形成した突起部12b2が、超音波溶接等によって本体部11の開口の周縁全周に形成した傾斜部11bに食い込むことで、インクMが外部に漏れないようにシールしている。
【0023】
図1に戻って、上面部12の天板12aには、図の右側の長手方向端部の近傍に空気流量制御部20が設けられている。さらに、上面部12には、この空気流量制御部20の下部から嵌合壁12bの先端にかけてスカート状に広がる内壁12cが設けられている。また、図の左側の嵌合壁12bの上部には、上面部12a、嵌合壁12bおよび内壁12cに囲まれた空間S1と外部を連通する連通孔12dが設けられている。インクMは、本体部11と内壁12cに囲まれた空間(内部13)に貯蔵される。内壁12cの詳細については後述する。
【0024】
<空気流量制御部>
図3は、空気流量制御部20の断面図である。同図に示されるように、上面部12の天板12aには、陥没する平断面円形状の凹部12eが形成されており、空気流量制御部20は、この凹部12e内に収容される弁体22、撥水膜体24、押圧リング26およびキャップ28を備えている。空気流量制御部20は、凹部12e内に撥水膜体24を載置し、その上に押圧リング26を載置し、さらにその上に弁体22を載置した上で、これらの上からキャップ28を凹部12eに嵌合させ、弁体22、撥水膜体24および押圧リング26をキャップ28と凹部12eの間に挟持することによって構成されている。
【0025】
凹部12eの底部12fには、その中央においてインク貯蔵部10の内部13に連通する円形断面の導通口12gが穿たれている。この導通口12gは、内部13に向けて内径が拡大するように形成されている。なお、この導通口12gの内面および周縁部に撥水処理加工を施すようにしてもよい。撥水処理加工を施すことで、導通口12gの内面および周縁部、または撥水膜体24下面に付着するインクを効率的に滴下し、導通口12gまたは撥水膜体24の詰りを未然に防止することができる。
【0026】
底部12fの導通口12gの周囲には、撥水膜体着座部12hと下端受容部12iが設けられている。撥水膜体着座部12hは、撥水膜体24を位置決めして受け止める環状の窪み(環状の段部)である。下端受容部12iは、この撥水膜体着座部12hの外周に同心円状に設けられる環状溝であり、後述するキャップ28の周面部28bの下端を受容する構造となっている。
【0027】
撥水膜体着座部12hは、オレフィン系樹脂素材によって成型されると共に、平滑度を高めた平滑面として形成され、これにより、撥水膜体24が撥水膜体着座部12hに着座したときに、撥水膜体24の撥水膜体着座部12hに対する密着度を高め、インクMが接触面の間から浸入するのを極力抑制するように設定されている。特に、オレフィン系樹脂素材は濡れ性が低いため、撥水効果が高い。従って、撥水膜体24と密着することで、その隙間にインクが浸入できないようになっている。なお、オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレンや、ポリエチレン等の各種素材があるが、本実施形態ではポリプロピレンを採用している。
【0028】
撥水膜体着座部12hと下端受容部12iの間には、図の上方に向けて突出する環状の突条部12jが形成されている。この突条部12jは、撥水膜体24が横方向にずれないように位置決めすると共に、キャップ28の周面部28bの進入を円滑にするガイドとしても機能するようになっている。
【0029】
図4は、空気流量制御部20が備える各部材の斜視図である。同図に示されるように、弁体22は、複数の微細孔が連通した弾性材料からなる略円板形状の平板であり、例えばポリウレタン等の素材を圧縮多孔体とすることにより構成される。
【0030】
弁体22は、インク貯蔵部10の内部13と外部との間に圧力差がない通常時には、通気性が遮断され空気の出入りはないが、所定値以上の圧力差が生じた場合には、微少な弾性変形により伸び、これにより微細孔が押し広げられて通気性が惹起し、圧力の高い側から低い側へ空気が流入することで、空気流量の制御を行う機能が発揮されるように構成されている。
【0031】
すなわち、空気流量制御部20は、外部とインク貯蔵部10の内部13との圧力差に応じてこの弁体22の複数の微細孔を通過する空気量が変化し、この変化によって外部からインク貯蔵部10の内部13への空気流量を制御する機能を有するものである。なお、弁体22の材質や構造等は特に限定されるものではなく、弁体22として上記特許文献1で開示されたものや市販品を採用することができる。
【0032】
弁体22は、本実施形態では圧縮体として、圧縮した場合に通気性がないようにしている。すなわち、弾性材料からなる連通多孔体を通気性がなくなるまで圧縮して、圧縮多孔体を作ることで空気流量制御機能をより発揮できるように加工している。このような圧縮多孔体では、内部において、連通多孔体を構成している弾性体が押し潰され折り重なってできた不定形の空間が多数形成されているが、圧縮された状態では通気性がなくなる。ところが、圧縮多孔体内で形成された多数の不定形の空間は連通されているので、内外の圧力差が生じた場合、弁体22が延びることによって生じた所定の圧力差以上によって、外部から圧縮多孔体の内部へと空気が押し込まれ、空気は、圧縮多孔体内にネットワークされた空間を結んでいる通気孔を押し広げながら、弁体を変形させ、圧縮多孔体の反対側、すなわちインク貯蔵部10の内部13側へ移動することで通気性を生じる。
【0033】
この通気量(空気流量)は、圧縮多孔体内にネットワークされた空間の通りやすさによって決められるので圧力差が大きい場合には弁体22は大きく伸び、圧縮多孔体内にネットワークされた空間中を空気が通りやすくなり、通気量は大きくなる。一方、所定の圧力差以上であって圧力差が小さい場合には弁体22は小さく伸び、圧縮多孔体内にネットワークされた空間中を空気が通る量は少なくなり、通気量は小さくなる。弁体22による通気によって圧力差が減少した場合、弁体22も縮み、通気量が少なくなる。さらに所定の圧力差未満となった場合、弁体22が再び圧縮されるため弁体22の通気性はなくなる。このように圧力差の大きさに応じて通気量も応じるので迅速で適切なインク貯蔵部10内の圧力を一定化する圧力調整が可能となる。
【0034】
外部(大気)とインク貯蔵部10内部との圧力差がどの程度で弁体22の通気性を生じさせるようにするかは、連通多孔、圧縮の程度などを適宜選択して決めればよいが、例えば、圧力差が20mmH2O以下のときは通気性が無く、圧力差が20mmH2O以上のときは通気性が有るように圧縮するようにすると好適である。
【0035】
弁体22を構成する弾性材料は複数の微細孔を有するもので伸びた状態でこの微細孔を通過するものであれば足りるが、例えば、ポリプロピレン、各種ゴム、各種エラストマーを挙げることができる。連通多孔孔質体の場合には、ゴム及び/又はプラスチック原料に不活性ガス、分解性発泡剤、揮発性有機液体を混合し、内部に気泡を形成することにより発砲させて連通多孔を形成したものや、ゴム・プラスチック原料に炭酸カルシウムなどの無機粒子を混練りしたものを板状に形成した後、無機粒子を溶出して連通多孔を形成したもの等が挙げられ、前記ゴム及び/又はプラスチック原料としては、弾性材料として、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ネオプレンゴム、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリルブタジエン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリウレタン、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。中でも特に、液体に対しての耐久性や、連通多孔質体の形成しやすさ、生産性等を考慮するとエーテル系ポリウレタン樹脂などが好適である。
【0036】
弁体22を構成する弾性材料は圧力差が働くと伸び、通気すると圧力差は減少し、ついには元の状態に戻り通気は無くなるという繰り返しによっても、常にはじめの圧縮された通気性のない状態が維持されると好適である。このためには圧縮体であると圧縮永久ひずみ特性が優れていることが好適である。他の特性としては、さらに弁体22のヤング率が1MPa以上5000MPa以下であることが好適である。また、弁体22はアスカーF型硬度計による硬度が30以上100未満であることが好適である。
【0037】
弁体22は、圧縮前の単位長さ当たりの孔数が4個/cm以上1000個/cm以下のものとすることによって、内圧調整を容易にすることができやすい。更に、圧縮を、加熱や高周波による発熱を付与したことにより、成形したものが、厚み8mmの盤状体を検体としたときのアスカーC型硬度計による硬度が20以上100未満であることが望ましい。この圧縮は圧縮率を圧縮前の材料の厚みの5%以上40%以下とすることによって圧力差が所定値未満の場合に確実に閉塞されたものとしやすい。
【0038】
撥水膜体24は、通気性を有する撥水性材料から構成された略円板形状の平板である。本実施形態では、撥水膜体24の材料として通気性の撥水性材料を用いているが、これに限られることなく、防水性材料、弁体22に対してインク成分が接触することを防止する膜であれば足り、臨界表面張力が大きい材料であってもよい。また通気性は、膜が導通口12g全体を塞がず少なくとも一部が貫通している場合については必要ではない場合がある。
【0039】
本実施形態で用いられる撥水性材料は、それ自体通気性を有する材料であれば足りる。特に臨界表面張力が25dyn/cm以下である撥水性材料であると好適である。そのような材料として、各種樹脂膜、無機膜が用いられるが、フッ素樹脂、フッ素ゴムなどを好適に用いることができ、テフロン(登録商標)、すなわちポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いるとさらに好適である。
【0040】
撥水膜体24は、通気性を考慮して連通している複数の微細孔を有し、複数の微細孔の孔径は5μm以下、より好ましくは0.1μm以下とすると好適である。
【0041】
押圧リング26は、略円形状の平板の中央に略円形断面の貫通孔26aが形成された所謂ドーナツ型形状の平板である。本実施形態では、押圧リング26をドーナツ形状とすることで、撥水膜体24と弁体22の間に空気層29(図3参照)を形成するようにしている。この空気層により、例え撥水膜体24を通過しても空気層29があるので、より弁体22にインク貯蔵部10に貯えられたインクMが達することを防止できるので好適である。
【0042】
なお、本実施形態では所謂ドーナツ型形状の押圧リング26を例示したがこれに限られることなく、空気層29を形成できる構造のものを用いて代用することが可能である。すなわち撥水膜体24と弁体22の間に空気の層を形成できる部材形状、配置であれば代用することが可能である。本実施形態では上述の通り、弁体22を均一に押圧するので好適であることから中空略円盤形状の押圧リング26を用いている。
【0043】
また、押圧リング26は、本実施形態では金属を素材として形成されている。これにより、押圧リング26の上下両面の平滑度が高められ、弁体22や撥水膜体24に均一な面圧が作用して互いの接触面の密着度を高め、これによりインクが漏れるのを阻止できるようにしている。
【0044】
キャップ28は、適宜の剛性を有する樹脂材で成形され、円板状の天井部28aと、その周縁から軸方向に延在する筒状の周面部28bとを有する。天井部28aには、撥水膜体着座部12fに対向する位置(図の下面)に平坦な面を成す環状の弁体着座部28cが形成され、この弁体着座部28cには3個の通気孔28dが設けられている。なお、この通気孔28dの個数は3個に限定されることはなく、これ以外の複数個であってもよい。
【0045】
図3に戻って、キャップ28の天井部28aと周面部28bの内側における角部、換言すると、天井部28aの下面側の周縁(周面部28bの内周側の付け根)には、薄肉で形成した弾性ヒンジPが設けられる。こうして、弁体着座部28cを形成する円状の突条部28fの外側近傍に存するヒンジPを基点として周面部28bが弾性変形し易くなるようにしている。さらに、周面部28bの下端は下端受容部12iに当接しうるように形成されている。
【0046】
本実施形態では、この下端が下端受容部12iに当接することでキャップ28の押し込み量を一定に制限し、空気流量制御部20が無理に圧縮されるのを回避している。すなわち、周面部28aの下端は、キャップ28を凹部12eに装着する際に、一時的に下端受容部12iに当接するストッパとして機能するようになっている。この結果、組み立て時において弁体22や撥水膜体24に過負荷が作用し、空気流量制御部20の機能が低下するのを防止することができる。
【0047】
なお、組み立てを完了した後は、弁体22および撥水膜体24の復元力によって、キャップ28が上方に付勢され、キャップ28の周面部28aの下端と下端受容部12iの間には微小な隙間が形成されるようになっている。このようにすることで、凹部12eにキャップ28を装着した場合に、弁体22、押圧リング26および撥水膜体24を、キャップ28の弁体着座部28cと凹部12eの撥水膜体着座部12hの間に適正な圧力で挟持することが可能となっている。
【0048】
次に、キャップ28と凹部12eの相互関係の構成を説明する。図5および6は、図3のB部を拡大した要部拡大断面図である。これらの図に示されるように、キャップ28の周面部28bの外面には、軸方向に上から順に棚状(断面楔状または断面鋸歯状)に突出する第1係合部28gと、なだらかな山状に突出する第2係合部28hとで成る係合部が円周方向に形成される。第1係合部28gには、傾斜面28g1が形成され、第2係合部28h共々キャップ28の押し込みをスムーズに行えるようにしている。凹部12eの内周壁には、この係合部に係合する被係合部、すなわち、第1被係合部12kと第2被係合部12lとが内周方向に形成され、これによりそれぞれ第1係合部28gおよび第2係合部28hに係合する嵌合部が形成される。
【0049】
こうして、キャップ28を凹部12eに押し込んで蓋をする場合には、周面部28bは弾性ヒンジPを中心にしてたわみ変形をしながら、凹部12eに進入し、図6の交差するハッチング部で図示するように、第1係合部28gは第1被係合部12kに、第2係合部28hは第2被係合部12lにそれぞれ食い込んで嵌合する。この結果、第1係合部28gと第1被係合部12kとの嵌合により、その楔効果によってキャップ28が軸方向へ抜けるのを防止し、第2係合部28hと第2被係合部12lとの嵌合により、その接触面積の広さによってキャップが周方向へ回転するのを阻止するようにしている。
【0050】
なお、上記では第1係合部28gと第1被係合部12k、および第2係合部28hと第2被係合部12lとで係合部、すなわち、嵌合部を形成したが、実質的にキャップ28の抜けと回転を防止する機能を有する態様の嵌合部であれば、一つの係合部と、これに係合可能な一つの被係合部とで嵌合部を形成する態様でもよいのは勿論である。また、上記では第1係合部28gを上方に、第2係合部28hを下方に設定したが、上下位置関係を逆にすることも可能であるのは言うまでもない。同様に、ここでは周面部28b側に係合部を形成し、凹部12e側に被係合部を形成する場合を示すが、これらの関係は反対であってもよい。
【0051】
<インク活用弁>
空気流量制御部20は、インク貯蔵部10の内部13のインクMを吸収することによって空気流量を制御するインク活用弁40をさらに備えるものであってもよい。
【0052】
図7は、インク活用弁40を備える空気流量制御部20の断面図である。インク活用弁40を備える空気流量制御部20では、同図に示されるように、導通口12gの内径が一定に形成されると共に、導通口12gの周縁を内部13に向けて突出させた連結用筒部14aが形成されている。連結用筒部14aの下端縁は、水平方向に対して一定の角度で傾斜している。
【0053】
インク活用弁40は、この連結用筒部14aに同軸状に接続される保持部41と、保持部41の内部に装填されるインク吸収体42と、連結用筒部14aと保持部41の接続部分に配設される第2撥水膜体43を備えている。このインク活用弁40は、導通口12gに気水密の状態を維持して連通されており、保持部41の下端はインク吸収体42と共にインクMに浸漬される。すなわち、インク活用弁40は、インク吸収体42がインクMを吸収し、このインクMの吸収量に応じて内部13への空気流入抵抗を増大させることによって空気流量を制御するように構成されている。
【0054】
保持部41は、例えば上端が閉塞され下端を開口させた円筒である。保持部41の上端の中央には、連結用筒部14aが挿入される挿入口41aが形成されている。また、保持部41の上端近傍の内壁には、連結用筒部14aと当接可能な環状の段部41bが、水平面に対して傾斜して形成されている。段部41bが環状となっているのは、内側を空気が通過する必要があるためである。そして、この連結用筒部14Aと段部41bの間に、第2撥水膜体43が挟み込まれている。これにより、第2撥水膜体43が適切に固定される。
【0055】
インク吸収体42はインクMを吸収する機能を有するウレタン、フェルト等の素材を用いて形成される。換言すると、これら素材を圧縮することで、内部に微少孔を多数有して多孔質体を形成し、これら微少孔が互いに連通し合い、インクMが毛細管現象を利用して吸収されていく機能を有する。こうして、インク吸収体42は自体を流通する空気が気泡となって保持部41下端からインク貯蔵部10内に流出するのと入れ替わりに、インクMを吸収し、インクMがしみこんでいくが、インクMの吸収量が増大するに応じて、空気の流入抵抗を増大させるように形成されている。
【0056】
なお、インク吸収体42の材質は、上記例に限定されず、例えば、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ポリプロピレン等の繊維を長手方向に沿わせて束ねた繊維集束体、ポリエチレン等の焼結体、羊毛やレーヨンなどの天然繊維フェルトや、ポリエステルやポリプロピレンなどの化学繊維フェルト等から構成されるフェルト材、ウレタンの連通発泡体であるポリウレタンフォームなど、様々なものを利用することができる。
【0057】
第2撥水膜体43は、撥水膜体24と実質的に同一の素材であるPTFEから構成された略円板形状の平板である。従って、第2撥水膜体43は、インク成分が接触することを防止する膜で、それ自体通気性を有する材料であれば足り、通気性を考慮して連通する複数の微細孔を有する。第2撥水膜体43により、インク吸収体42に吸収されるインクMが飽和して上昇し、撥水膜体24まで上昇するのを防止できる。また、第2撥水膜体43が傾斜しているので、インク滴が一時的に付着した場合でも、この傾斜面に沿ってインク滴が一方向に偏るので、第2撥水膜体43の通気性が阻害されることを抑制できる。
【0058】
また、第2撥水膜体43とインク吸収体42の間、ならびに第2撥水膜体43と撥水膜体24の間には、それぞれ空気層44、45が介在される。本実施形態では、このように空気層44、45を介在させることによって、インク吸収体42に吸収されたインクMが第2撥水膜体43まで到達し難くすると共に、第2撥水膜体43を通過したインクMが撥水膜体24まで到達し難くしている。
【0059】
このように、空気流量制御部20にインク活用弁40を備えることにより、インク貯蔵部10の内部13と外部(大気圧)の圧力差を大きくすることができる。本実施形態では、インク活用弁40を備えない空気流量制御部20が内部13の空間S2(インクMの液面上の空間)に約−40mmH2Oの負圧を発生させるのに対し、インク活用弁40を備える空気流量制御部20は、空気層44、45に約−40mmH2Oの負圧を発生させると共に、内部13の空間S2に約−140mmH2Oの負圧を発生させるようになっている。
【0060】
なお、撥水膜体24または第2撥水膜体43のいずれかを省略し、いずれか一方のみを備えるように空気流量制御部20を構成してもよい。また、空気層44、45を設けないように空気流量制御部20を構成してもよい。
【0061】
<インク吐出部>
図8は、インク吐出部30の断面図である。同図に示されるように、本体部11の底面には、円形断面の挿通孔15が形成されており、インク吐出部30は、この挿通孔15の周縁部を本体部11の外側(図の下方)に向けて突出させた突出部31と、突出部31の先端に配設されるシール部材32と、挿通孔15内に挿通される移動弁33と、挿通孔15の周縁部をインク貯蔵部10の内部13(図の上方)に向けて突出させた移動弁支持部34と、移動弁33をシール部材32に向けて付勢するコイルスプリング35を備えている。
【0062】
突出部31は、周壁が2重に構成された円筒状に形成されており、先端から挿入されたシール部材32が嵌合するように構成されている。突出部31の内径は、挿通孔15の内径と略同一となっている。
【0063】
シール部材32は、一端に底部32aを有し、他端が開口した略円筒状の部材であり、ゴム等の弾性材料から構成されている。底部32aの略中央には円形断面の吐出口32bが形成されており、この吐出口32bの周縁部には軸方向外側に向けて突出する環状の当接部32cが形成されている。また、シール部材の外周面には、半径方向外側に向けて突出する突起部32dが周方向に沿って形成されている。
【0064】
シール部材32の内部は、吐出口33bから他端にかけて放物線状に内径が拡大するように形成されている。そして、シール部材32の底部32aの反対側の端部には、半径方向外側に向けて張り出した後に当接面32側に向けて折り返された鍔部32eが設けられている。
【0065】
シール部材32は、底部32aから本体部分を突出部31の内部に圧入すると共に、鍔部32eの先端を突出部31の2重の周壁の間に圧入することによって配設される。このとき、突起部32dおよび鍔部32eが弾性変形し、その復元力によって突出部31に密着するため、シール部材32は突出部31に安定して固定されると共に、シール部材32と突出部31の隙間からインクMが漏出しないようになっている。
【0066】
移動弁33は、先端側(図の下側)の大径部33aと、基端側(図の上側)の小径部33bからなる略円柱状の部材である。大径部33aの外周面の軸方向中央近傍には、コイルスプリング35の一端が当接する鍔状の受圧部33cが形成されている。移動弁33は、大径部33aを内部に挿入されると共に、小径部33bを移動弁支持部34内に挿入され、軸方向に移動自在な状態で配設されている。なお、大径部33aの外径は、挿通孔15および突出部31の内径よりも小さく形成されている。
【0067】
移動弁支持部34は、本体部11の底面から内部13に向けて突設された略円筒状の基端部34aと、基端部34aの先端に突設された基端部34aより小径の略円筒状の支持部34bからなる。基端部34aの内径は、挿通孔15と略同一に形成されている。また、基端部34aには、軸方向の略全長にわたって形成された複数のスリット34cが形成されている。支持部34bは、内部に挿入された移動弁33を支持すると共に、移動弁33が軸方向に移動するのをガイドする部分である。このため、支持部34bの内径は、移動弁33がスムーズに滑動可能な径に設定されている。移動弁支持部34内部における基端部34aと支持部34bの間の段差34dは、コイルスプリング35の多端が当接する部分となっている。
【0068】
コイルスプリング35は、移動弁支持部34の基端部34aの内部において、移動弁33の受圧部33cと移動弁支持部34の段差34dの間に圧縮して配設されている。従って、コイルスプリング35は、移動弁33をシール部材32に向けて常に付勢し、移動弁33の大径部33aの先端がシール部材32の当接部33cに当接して吐出口32bを塞いだ状態を維持するようになっている。コイルスプリング35の付勢力は、大径部33aの先端がシール部材32の当接部33cを適宜に弾性変形させ、両者の隙間からインクMが漏出することのない大きさに設定されている。
【0069】
なお、インクジェットプリンタのキャリッジにこのインク貯蔵容器100がセットされると、キャリッジが備える部材により、コイルスプリング35の付勢力に抗して移動弁33が上方へ押し上げられ、所定の負圧状態で、インクがインクジェットプリンタに供給されるようになっている。すなわち、内部13から移動弁支持部34の基端部34aのスリット34cを通過して基端部34aおよび突出部31の内部に進入したインクMが、移動弁33の先端と当接部32cの隙間から吐出口32bを通過して吐出される。
【0070】
<内壁>
図9(a)〜(c)は、インク貯蔵部10の上面部12側の一部の断面図である。同図(a)に示されるように、内壁12cは、外周端を嵌合壁12b下端の全周にわたって接合されると共に、円形断面の開口部12c1の周縁部を導通孔12gの周縁部に接合されている。これにより、内壁12cは、空気流量制御部20下端からインク貯蔵部10の内部に向けてスカート状に広がるように設けられている。
【0071】
内壁12cの開口部12c1の周縁部と導通口12gの周縁部の接合、および内壁12cの外周端と嵌合壁12bの接合は気水密状態を保って接合されている。すなわち、空間S1と内部13の間では空気が流通せず、内部13の所定の負圧状態を維持できるようになっている。また、内部13内に貯蔵されたインクMが空間S1内に浸入しないようになっている。なお、空間S1は、連通孔12dによって外部と連通されているため、略大気圧状態に保たれている。
【0072】
内壁12cは、上面部12の天板12aや本体部11の外壁よりも低靱性および低剛性に構成されている。具体的には、内壁12cは、上面部12の天板12aや本体部11の外壁よりも薄肉となっており、これらよりも容易に破壊または変形するように構成されている。ここで、低剛性とは、弾性変形だけではなく塑性変形も含めた変形が生じやすい性質を示している。
なお、この内壁12cを構成する材料は特に限定されるものではなく、通気性をほとんど有さず、内部13を空間S1から隔絶可能であると共に、適宜の柔軟性を有する各種樹脂や各種ゴム等を採用することができる。なお、内壁12cは、本体部11または上面部12と同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。また、内壁12cを、撥水性の高い(濡れ性の低い)素材から構成してもよいし、内壁12cの内部13側の面に撥水処理加工を施すようにしてもよい。
【0073】
このように、上面部12の内側に内壁12cを設けることによって、インク貯蔵容器100の再生品の製造を困難にすることができる。一般に、インクカートリッジ等の再生品の製造では、使用済みのインクカートリッジの上面部分にドリル等で孔を開け、この孔からインクを再充填する。そして、この孔に接着剤等と共に封止ピン等を挿入して、孔を塞ぐようにしている。
【0074】
一方、本実施形態のインク貯蔵容器100では、インク再充填用の孔を加工する場合に、同図(b)に示されるように、ドリル200等により上面部12の天板12aに孔201を開けると共に、内壁12cにも孔202を開ける必要がある。しかしながら、内壁12cは柔軟性を有していることから、ドリル200の押圧力により容易に変形してドリル200から逃げるため、天板12aの孔201の直下に孔202を開けることは非常に困難となる。また、内壁12cは、薄肉で容易に破壊または変形するため、ドリル200によって加工された孔202は、天板12aに加工された孔201よりも大きく、いびつな形状のものとなる。
【0075】
これにより、内壁12cに加工されたインク再充填用の孔202を完全に封止するのは、困難な作業となる。例えば、インクを再充填した後に、インク再充填用の孔201、202に封止ピン300を挿入して孔201、202を封止する場合、封止ピン300を天板12aの孔201および内壁12cの孔202の両方に挿入することは困難である。また、同図(c)に示されるように、天板12aの孔201に挿入した封止ピン300の先端を内壁12cの孔202にうまく挿入できたとしても、封止ピン300の外径よりも内壁12cの孔202が大きいため、内壁12cの孔202を完全に封止することは、略不可能である。
【0076】
内壁12cに加工したインク再充填用の孔202を完全に封止できない場合、インク貯蔵部10の内部13は、空間S1および連通孔12dを介して外部(大気圧状態)と連通した状態となるため、内部13を所定の負圧状態に保つことが不可能となる。従って、内部13のインクMの吐出量を制御することが不可能となり、インク貯蔵容器100をインクカートリッジとして使用することができなくなる。
【0077】
このように、本実施形態のインク貯蔵容器100は、上面部12の天板12aおよび内壁12cに孔201、202を開け、インクを再充填した後にこれらの孔201、202を塞ごうとする場合に内壁12cの孔202を完全に封止することができず、インク貯蔵容器100を再使用することができないように構成されている。これにより、再生品の製造を困難にし、低品質な再生品が市場に出回ることでユーザやメーカが被る不利益を解消することができる。
【0078】
図10(a)は、内壁12cを天板12aと平行に配設した一例を示した断面図である。このように、内壁12cを天板12aと平行に配設するようにしてもよい。すなわち、内壁12cは、天板12aよりも容易に破壊または変形すればよく、柔軟性を有することは必ずしも必要ではない。例えば、内壁12cを脆性材料によって構成し、インク再充填用の孔加工を施そうとした場合に、内壁12cが亀裂の進展と共に大きく破断するようにしてもよい。また、ゴム等の弾性材料を予め伸ばした状態(弾性変形させた状態)で内壁12cとして配設し、インク再充填用の孔加工を施した場合に弾性変形の復元力によって孔が大きくなるようにしてもよい。
【0079】
図10(b)は、天板12a、嵌合壁12bおよび内壁12cによって形成される空間S1を、インク貯蔵部10の内外間で空気を流通させる通路の一部とした一例を示した断面図である。この例では、キャップ28の通気孔28dを廃止すると共に空間S1と空気流量制御部20を繋ぐ通気路12eを形成することによって、空間S1をインク貯蔵部10の内外間で空気を流通させる通路の一部としている。このように、空間S1をインク貯蔵部10の内外間で空気を流通させる通路の一部とすることにより、上面部12の構造がより複雑となる。これにより、インク再充填用の孔の加工および封止をする際に、この通路を塞がないように注意して行う必要が生じるため、インク貯蔵容器100の再生品の製造をさらに困難なものとすることができる。なお、図10(b)では、空間S1を外部と空気流量制御部20を繋ぐ通路の一部とした例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、空間S1を弁体22と撥水膜体24を繋ぐ通路の一部としてもよいし、撥水膜体24と内部13を繋ぐ通路の一部としてもよい。また、空気流量制御部20がインク活用弁40を備える場合には、空間S1を撥水膜体24(撥水膜体24を省略した場合には弁体22)とインク活用弁40を繋ぐ通路の一部としてもよい。
【0080】
なお、内壁12cは、上面部12の内側だけでなく、インク貯蔵部10のその他の外壁の内側に配設するようにしてもよい。すなわち、本体部11の外壁の内側に内壁12cを設けてもよい。また、インクMを収容する袋状に内壁12cを構成してもよい。
【0081】
図11は、内壁12cを袋状に構成した一例を示した図である。この例では、内壁12cは本体部11の内側の形状に沿った袋状に構成されており、2つの開口部12c1、12c2を備えている。内壁12cの一方の開口部12c1の周縁部は、空気流量制御部20の導通口12g下端の周縁部に気水密状態に接合され、他方の開口部12c2の周縁部は、インク吐出部30の移動弁支持部34の基端の外周に気水密状態に接合されている。なお、この例では、内壁12cの内部を1つの室からなる内部13としているが、内部13を複数の室に分けるようにしてもよい。
【0082】
この袋状の内壁12cは、通気性をほとんど有さず、内部13を空間S1から隔絶可能であると共に、インクMを収容していない場合には自重により自身の形態を維持できない程度の柔軟性を有する各種樹脂や各種ゴム等から構成されている。従って、インクMを消費した後には、内壁12cはしぼんで空気流量制御部20から垂れ下がった状態となる。このため、外部から内壁12cまでドリル等を到達させることが非常に困難となるだけでなく、ドリル等を到達させた場合にも内壁12cは自由に変形してドリル等から逃げるため、内壁12cにインク再充填用の孔を加工するのは非常に困難となる。
【0083】
また、この袋状の内壁12cは、上面部12の天板12aや本体部11の外壁よりも薄肉であり、容易に破壊または変形するようになっている。このため、内壁12にインク再充填用の孔を加工できたとしても、この孔を封止するのは非常に困難な作業となる。なお、この袋状の内壁12cは、本体部11または上面部12と同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。また、内壁12cを、撥水性の高い(濡れ性の低い)素材から構成してもよいし、内壁12cの表面に撥水処理加工を施すようにしてもよい。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係るインク貯蔵容器100は、インクMを貯蔵するインク貯蔵部10と、インク貯蔵部10の内外間の空気流量を制御する空気流量制御部20と、を備え、インク貯蔵部10は、少なくとも一部の外壁(上面部12の天板12a、または本体部11の外壁)の内側に、外壁よりも低靱性または低剛性であり破壊または変形しやすい内壁12cを備えている。このため、インク貯蔵部10の外壁および内壁12cに孔を開けてインクを再充填した後にこれらの孔を封止する場合に、内壁12cの孔を完全に封止することが不可能となっている。これにより、再生品の製造を困難にし、低品質な再生品が市場に出回ることでユーザやメーカが被る不利益を解消することができる。
【0085】
また、外壁と内壁12cの間の空間S1は、インク貯蔵部10の外部と連通されているため、内壁12cの孔を完全に封止できなかった場合に、インク貯蔵部10の内部13と外部が連通され、内部13を適正な圧力状態に保つことが不可能となる。これにより、再生品の製造を困難にすることができる。
【0086】
また、内壁12cは、外壁よりも柔軟である。これにより、インク再充填用の孔を加工する場合に、容易に変形してドリル等から逃げるため、インク再充填用の孔加工を困難にすることができる。
【0087】
また、内壁12cは、外壁よりも薄肉である。これにより、インク再充填用の孔を加工する際に内壁12cが容易に変形、破断するため、想定よりも大きくいびつな形状の孔が形成されることとなる。この結果、内壁12cに加工したインク再充填用の孔の封止を困難にすることができる。
【0088】
また、内壁12cは、インク貯蔵部10の上面部12に設けられているため、インク再充填用の孔を加工するのにもっとも適している上面部12に、孔加工が施されるのを防止することができる。
【0089】
また、内壁12cは、インクMを収容する袋状に構成されてもよい。このようにすることで、内壁12cにインク再充填用の孔を加工し、封止する作業を困難にすることができる。
また、内壁12cは、ゴムから構成されるものであってもよい。内壁12cをゴム等の高弾性体から構成することにより、大気圧と内部13の圧力差により内壁12cが内部13側に膨出して(内壁12cを袋状に構成した場合には、収縮して)外壁から遠ざかるため、インク再充填用の孔加工を困難にすることができる。
【0090】
また、空気流量制御部20は、通常時は空気を流通させないが、インク貯蔵部10の内圧変化に応じて外部との間で空気交換を行わせる弾性変形可能な連通多孔質の弁体22と、弁体22よりもインク貯蔵部10側に配設されて通気性を有しかつ撥水処理を施された撥水膜体24と、を備えている。このため、弁体22の空気流量制御によって内部13を適正な圧力に維持すると共に、撥水膜体24によって弁体22にインクMが付着して空気流量制御機能が損なわれるのを防止することができる。
【0091】
また、空気流量制御部20は、インクMを吸収することにより、通常時は空気を流入させないがインク貯蔵部10の内圧変化に応じて空気交換を行わせるインク吸収体42を、撥水膜体24よりもインク貯蔵部10側に備えるものであってもよい。このようにすることで、内部13の圧力をより低い圧力状態(負圧状態)に維持することが可能となる。
【0092】
また、外壁と内壁12cの間の空間S1は、インク貯蔵部10の内外間で空気を流通させる通路の一部としてもよい。このようにすることで、上面部12の構造がより複雑となるため、インク貯蔵容器100の再生品の製造をさらに困難なものとすることができる。
【0093】
以上、本発明を実施形態により詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も本発明の範囲に含まれるものである。
【0094】
例えば、本体部11および上面部12の形状、内壁12cの位置または形状、連通口12dの位置または形状、空気流量制御部20の位置または形状、ならびにインク吐出部30の位置または形状等は、上記実施形態において示したものに限定されることはなく、その他の位置や形状を採用することができる。また、複数の連通孔12dを設けるようにしてもよい。
【0095】
また、内壁12cの内側にさらに内々壁を設けるようにしてもよい。この場合、内壁12cと内々壁の間の空間をインク貯蔵部10の外部と連通させることで、再生品の製造をより困難にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、インク貯蔵容器、特にインクジェットプリンタ用のインクカートリッジとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施形態に係るインク貯蔵容器の構造を示す断面図である。
【図2】図1のA部を拡大した要部拡大断面図である。
【図3】空気流量制御部の断面図である。
【図4】空気流量制御部が備える各部材の斜視図である。
【図5】図3のB部を拡大した要部拡大断面図である。
【図6】図3のB部を拡大した要部拡大断面図である。
【図7】インク活用弁を備える空気流量制御部の断面図である。
【図8】インク吐出部の断面図である。
【図9】(a)〜(c)インク貯蔵部の上面部側の一部の断面図である。
【図10】(a)は内壁を天板と平行に配設した一例を示した断面図であり、(b)は天板、嵌合壁および内壁によって形成される空間を、インク貯蔵部の内外間で空気を流通させる通路の一部とした一例を示した断面図である。
【図11】内壁を袋状に構成した一例を示した図である。
【符号の説明】
【0098】
10 インク貯蔵部
11 本体部
12 上面部
12a 天板
12c 内壁
12d 連通孔
13 インク貯蔵部の内部
20 空気流量制御部
22 弁体
24 撥水膜体
42 インク吸収体
100 インク貯蔵容器
M インク
S1 天板、嵌合壁および内壁によって形成される空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク貯蔵容器に関する。
【背景技術】
【0002】
インク貯蔵容器の例としては筆記具のインクタンクや、インクジェットプリンタのインク(タンク)カートリッジなどがある。これらは文字や画像を形成する筆記や印刷に消費されたインク量に対応して外気をタンク内に取込んで空気交換し、タンク内の圧力変化がインクの消費に悪影響を及ぼさないようにした機構とされており、その機構としては、外気の取込み口として単なる孔を形成したものや、必要に応じて通気する弁機構付きの通気路を形成したものを挙げることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来、インクジェットプリンタ用のインク貯蔵容器では、インクの品質および吐出量を一定に保ち、印刷品質を低下させないように、使い切りタイプのものが一般的に使用されている。この使い切りタイプのインク貯蔵容器は、タンク内のインクを全て消費した場合には新しいインク貯蔵容器に交換することを前提に設計されている。
【特許文献1】特開2001−277777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年では、使用済みの使い切りタイプのインク貯蔵容器にドリル等で孔を開け、インクを再充填した後にこの孔を塞ぎ、再生品として販売する業者が増えてきている。
【0005】
このような再生品は、業者の加工技術が未熟なため、タンク内の圧力を適正に制御することができない場合があり、当初の印刷品質を維持できないばかりか、プリンタの故障の原因となることがあった。また、再生品においては、純正品とは異なるコストの低いインクを再充填することが通例であり、これも印刷品質を低下させ、プリンタを故障させる要因となっていた。
【0006】
このため、低品質な再生品を使用するユーザは、印刷品質の低下やプリンタの故障に悩まされ、結果として再生品業者ではなくプリンタメーカや元々のインク貯蔵容器メーカに対する不満を募らせる場合があり、プリンタメーカや元々のインク貯蔵容器メーカの信用が失墜することがあった。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、再生品の製造が困難なインク貯蔵容器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、インクを貯蔵するインク貯蔵部と、前記インク貯蔵部の内外間の空気流量を制御する空気流量制御部と、を備え、前記インク貯蔵部は、少なくとも一部の外壁の内側に、前記外壁よりも低靱性または低剛性の内壁を備えることを特徴とする、インク貯蔵容器である。
【0009】
(2)本発明はまた、前記外壁と前記内壁の間の空間は、前記インク貯蔵部の外部と連通されることを特徴とする、上記(1)に記載のインク貯蔵容器である。
【0010】
(3)本発明はまた、前記内壁は、前記外壁よりも柔軟であることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載のインク貯蔵容器である。
【0011】
(4)本発明はまた、前記内壁は、前記外壁よりも薄肉であることを特徴とする、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のインク貯蔵容器である。
【0012】
(5)本発明はまた、前記内壁は、前記インク貯蔵部の上面部に設けられることを特徴とする、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のインク貯蔵容器である。
【0013】
(6)本発明はまた、前記内壁は、前記インクを収容する袋状に構成されることを特徴とする、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のインク貯蔵容器である。
(7)本発明はまた、前記内壁は、ゴムから構成されることを特徴とする、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載のインク貯蔵容器。
【0014】
(8)本発明はまた、前記空気流量制御部は、通常時は空気を流通させないが、前記インク貯蔵部の内圧変化に応じて外部との間で空気交換を行わせる弾性変形可能な連通多孔質の弁体と、前記弁体よりも前記インク貯蔵部側に配設されて通気性を有しかつ撥水処理を施された撥水膜体と、を備えることを特徴とする、上記(1)乃至(7)のいずれかに記載のインク貯蔵容器である。
【0015】
(9)本発明はまた、前記空気流量制御部は、前記インクを吸収することにより、通常時は空気を流入させないが前記インク貯蔵部の内圧変化に応じて空気交換を行わせるインク吸収体を、前記撥水膜体よりも前記インク貯蔵部側に備えることを特徴とする、上記(8)に記載のインク貯蔵容器である。
【0016】
(10)本発明はまた、前記外壁と前記内壁の間の空間は、前記インク貯蔵部の内外間で空気を流通させる通路の一部であることを特徴とする、上記(1)乃至(9)のいずれかに記載のインク貯蔵容器である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るインク貯蔵容器によれば、再生品の製造を困難にし、低品質な再生品が市場に出回るのを防止できるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の例について詳細に説明する。なお、以下の各実施形態におけるインク貯蔵容器は、インクジェットプリンタ用のインクカートリッジに適用した場合を例に挙げて説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係るインク貯蔵容器100の構造を示す断面図である。インク貯蔵容器100は、適宜の合成樹脂から構成されており、同図に示されるように、内部にインクMを貯蔵するインク貯蔵部10と、インク貯蔵部10の内外間で空気の流量を制御する空気流量制御部20と、インク貯蔵部10に貯蔵されたインクMの吐出を制御するためのインク吐出部30と、を有して構成されている。
【0020】
<インク貯蔵部>
インク貯蔵部10は、上部が開口した中空の本体部11と、本体部11の開口を塞ぐ蓋として上部に組み合わされる上面部12から構成されている。本体部11は、図の縦横の寸法よりも奥行きの寸法が小さい略直方体状に形成されている。本体部11の内部13は、隔壁14によって2つの室13a、13bに分けられている。これらの2つの室13a、13bは、隔壁14の基端部に形成された透孔14aによって連通されている。本体部11の底部には、インク吐出部30が設けられている。
【0021】
上面部12は、平面視(図の上から見た場合)が横長の長方形板状である天板12aと、天板12aの周縁のやや内側の下面から下方に向けて突出する嵌合壁12bから構成されている。上面部12は、この嵌合壁12bを本体部11の内部に嵌合させることによって本体部11と組み合わされる。
【0022】
図2は、図1のA部を拡大した要部拡大断面図である。上面部12は、同図に示されるように、上面部12の嵌合壁12bの先端近傍に形成した膨出部12b1と、本体部11に形成した膨出部11aとが相手側部材に嵌合することで固定される。また、交差するハッチング部で図示するように、嵌合壁12bの基端部の全周に亘って形成した突起部12b2が、超音波溶接等によって本体部11の開口の周縁全周に形成した傾斜部11bに食い込むことで、インクMが外部に漏れないようにシールしている。
【0023】
図1に戻って、上面部12の天板12aには、図の右側の長手方向端部の近傍に空気流量制御部20が設けられている。さらに、上面部12には、この空気流量制御部20の下部から嵌合壁12bの先端にかけてスカート状に広がる内壁12cが設けられている。また、図の左側の嵌合壁12bの上部には、上面部12a、嵌合壁12bおよび内壁12cに囲まれた空間S1と外部を連通する連通孔12dが設けられている。インクMは、本体部11と内壁12cに囲まれた空間(内部13)に貯蔵される。内壁12cの詳細については後述する。
【0024】
<空気流量制御部>
図3は、空気流量制御部20の断面図である。同図に示されるように、上面部12の天板12aには、陥没する平断面円形状の凹部12eが形成されており、空気流量制御部20は、この凹部12e内に収容される弁体22、撥水膜体24、押圧リング26およびキャップ28を備えている。空気流量制御部20は、凹部12e内に撥水膜体24を載置し、その上に押圧リング26を載置し、さらにその上に弁体22を載置した上で、これらの上からキャップ28を凹部12eに嵌合させ、弁体22、撥水膜体24および押圧リング26をキャップ28と凹部12eの間に挟持することによって構成されている。
【0025】
凹部12eの底部12fには、その中央においてインク貯蔵部10の内部13に連通する円形断面の導通口12gが穿たれている。この導通口12gは、内部13に向けて内径が拡大するように形成されている。なお、この導通口12gの内面および周縁部に撥水処理加工を施すようにしてもよい。撥水処理加工を施すことで、導通口12gの内面および周縁部、または撥水膜体24下面に付着するインクを効率的に滴下し、導通口12gまたは撥水膜体24の詰りを未然に防止することができる。
【0026】
底部12fの導通口12gの周囲には、撥水膜体着座部12hと下端受容部12iが設けられている。撥水膜体着座部12hは、撥水膜体24を位置決めして受け止める環状の窪み(環状の段部)である。下端受容部12iは、この撥水膜体着座部12hの外周に同心円状に設けられる環状溝であり、後述するキャップ28の周面部28bの下端を受容する構造となっている。
【0027】
撥水膜体着座部12hは、オレフィン系樹脂素材によって成型されると共に、平滑度を高めた平滑面として形成され、これにより、撥水膜体24が撥水膜体着座部12hに着座したときに、撥水膜体24の撥水膜体着座部12hに対する密着度を高め、インクMが接触面の間から浸入するのを極力抑制するように設定されている。特に、オレフィン系樹脂素材は濡れ性が低いため、撥水効果が高い。従って、撥水膜体24と密着することで、その隙間にインクが浸入できないようになっている。なお、オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレンや、ポリエチレン等の各種素材があるが、本実施形態ではポリプロピレンを採用している。
【0028】
撥水膜体着座部12hと下端受容部12iの間には、図の上方に向けて突出する環状の突条部12jが形成されている。この突条部12jは、撥水膜体24が横方向にずれないように位置決めすると共に、キャップ28の周面部28bの進入を円滑にするガイドとしても機能するようになっている。
【0029】
図4は、空気流量制御部20が備える各部材の斜視図である。同図に示されるように、弁体22は、複数の微細孔が連通した弾性材料からなる略円板形状の平板であり、例えばポリウレタン等の素材を圧縮多孔体とすることにより構成される。
【0030】
弁体22は、インク貯蔵部10の内部13と外部との間に圧力差がない通常時には、通気性が遮断され空気の出入りはないが、所定値以上の圧力差が生じた場合には、微少な弾性変形により伸び、これにより微細孔が押し広げられて通気性が惹起し、圧力の高い側から低い側へ空気が流入することで、空気流量の制御を行う機能が発揮されるように構成されている。
【0031】
すなわち、空気流量制御部20は、外部とインク貯蔵部10の内部13との圧力差に応じてこの弁体22の複数の微細孔を通過する空気量が変化し、この変化によって外部からインク貯蔵部10の内部13への空気流量を制御する機能を有するものである。なお、弁体22の材質や構造等は特に限定されるものではなく、弁体22として上記特許文献1で開示されたものや市販品を採用することができる。
【0032】
弁体22は、本実施形態では圧縮体として、圧縮した場合に通気性がないようにしている。すなわち、弾性材料からなる連通多孔体を通気性がなくなるまで圧縮して、圧縮多孔体を作ることで空気流量制御機能をより発揮できるように加工している。このような圧縮多孔体では、内部において、連通多孔体を構成している弾性体が押し潰され折り重なってできた不定形の空間が多数形成されているが、圧縮された状態では通気性がなくなる。ところが、圧縮多孔体内で形成された多数の不定形の空間は連通されているので、内外の圧力差が生じた場合、弁体22が延びることによって生じた所定の圧力差以上によって、外部から圧縮多孔体の内部へと空気が押し込まれ、空気は、圧縮多孔体内にネットワークされた空間を結んでいる通気孔を押し広げながら、弁体を変形させ、圧縮多孔体の反対側、すなわちインク貯蔵部10の内部13側へ移動することで通気性を生じる。
【0033】
この通気量(空気流量)は、圧縮多孔体内にネットワークされた空間の通りやすさによって決められるので圧力差が大きい場合には弁体22は大きく伸び、圧縮多孔体内にネットワークされた空間中を空気が通りやすくなり、通気量は大きくなる。一方、所定の圧力差以上であって圧力差が小さい場合には弁体22は小さく伸び、圧縮多孔体内にネットワークされた空間中を空気が通る量は少なくなり、通気量は小さくなる。弁体22による通気によって圧力差が減少した場合、弁体22も縮み、通気量が少なくなる。さらに所定の圧力差未満となった場合、弁体22が再び圧縮されるため弁体22の通気性はなくなる。このように圧力差の大きさに応じて通気量も応じるので迅速で適切なインク貯蔵部10内の圧力を一定化する圧力調整が可能となる。
【0034】
外部(大気)とインク貯蔵部10内部との圧力差がどの程度で弁体22の通気性を生じさせるようにするかは、連通多孔、圧縮の程度などを適宜選択して決めればよいが、例えば、圧力差が20mmH2O以下のときは通気性が無く、圧力差が20mmH2O以上のときは通気性が有るように圧縮するようにすると好適である。
【0035】
弁体22を構成する弾性材料は複数の微細孔を有するもので伸びた状態でこの微細孔を通過するものであれば足りるが、例えば、ポリプロピレン、各種ゴム、各種エラストマーを挙げることができる。連通多孔孔質体の場合には、ゴム及び/又はプラスチック原料に不活性ガス、分解性発泡剤、揮発性有機液体を混合し、内部に気泡を形成することにより発砲させて連通多孔を形成したものや、ゴム・プラスチック原料に炭酸カルシウムなどの無機粒子を混練りしたものを板状に形成した後、無機粒子を溶出して連通多孔を形成したもの等が挙げられ、前記ゴム及び/又はプラスチック原料としては、弾性材料として、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ネオプレンゴム、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリルブタジエン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリウレタン、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。中でも特に、液体に対しての耐久性や、連通多孔質体の形成しやすさ、生産性等を考慮するとエーテル系ポリウレタン樹脂などが好適である。
【0036】
弁体22を構成する弾性材料は圧力差が働くと伸び、通気すると圧力差は減少し、ついには元の状態に戻り通気は無くなるという繰り返しによっても、常にはじめの圧縮された通気性のない状態が維持されると好適である。このためには圧縮体であると圧縮永久ひずみ特性が優れていることが好適である。他の特性としては、さらに弁体22のヤング率が1MPa以上5000MPa以下であることが好適である。また、弁体22はアスカーF型硬度計による硬度が30以上100未満であることが好適である。
【0037】
弁体22は、圧縮前の単位長さ当たりの孔数が4個/cm以上1000個/cm以下のものとすることによって、内圧調整を容易にすることができやすい。更に、圧縮を、加熱や高周波による発熱を付与したことにより、成形したものが、厚み8mmの盤状体を検体としたときのアスカーC型硬度計による硬度が20以上100未満であることが望ましい。この圧縮は圧縮率を圧縮前の材料の厚みの5%以上40%以下とすることによって圧力差が所定値未満の場合に確実に閉塞されたものとしやすい。
【0038】
撥水膜体24は、通気性を有する撥水性材料から構成された略円板形状の平板である。本実施形態では、撥水膜体24の材料として通気性の撥水性材料を用いているが、これに限られることなく、防水性材料、弁体22に対してインク成分が接触することを防止する膜であれば足り、臨界表面張力が大きい材料であってもよい。また通気性は、膜が導通口12g全体を塞がず少なくとも一部が貫通している場合については必要ではない場合がある。
【0039】
本実施形態で用いられる撥水性材料は、それ自体通気性を有する材料であれば足りる。特に臨界表面張力が25dyn/cm以下である撥水性材料であると好適である。そのような材料として、各種樹脂膜、無機膜が用いられるが、フッ素樹脂、フッ素ゴムなどを好適に用いることができ、テフロン(登録商標)、すなわちポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いるとさらに好適である。
【0040】
撥水膜体24は、通気性を考慮して連通している複数の微細孔を有し、複数の微細孔の孔径は5μm以下、より好ましくは0.1μm以下とすると好適である。
【0041】
押圧リング26は、略円形状の平板の中央に略円形断面の貫通孔26aが形成された所謂ドーナツ型形状の平板である。本実施形態では、押圧リング26をドーナツ形状とすることで、撥水膜体24と弁体22の間に空気層29(図3参照)を形成するようにしている。この空気層により、例え撥水膜体24を通過しても空気層29があるので、より弁体22にインク貯蔵部10に貯えられたインクMが達することを防止できるので好適である。
【0042】
なお、本実施形態では所謂ドーナツ型形状の押圧リング26を例示したがこれに限られることなく、空気層29を形成できる構造のものを用いて代用することが可能である。すなわち撥水膜体24と弁体22の間に空気の層を形成できる部材形状、配置であれば代用することが可能である。本実施形態では上述の通り、弁体22を均一に押圧するので好適であることから中空略円盤形状の押圧リング26を用いている。
【0043】
また、押圧リング26は、本実施形態では金属を素材として形成されている。これにより、押圧リング26の上下両面の平滑度が高められ、弁体22や撥水膜体24に均一な面圧が作用して互いの接触面の密着度を高め、これによりインクが漏れるのを阻止できるようにしている。
【0044】
キャップ28は、適宜の剛性を有する樹脂材で成形され、円板状の天井部28aと、その周縁から軸方向に延在する筒状の周面部28bとを有する。天井部28aには、撥水膜体着座部12fに対向する位置(図の下面)に平坦な面を成す環状の弁体着座部28cが形成され、この弁体着座部28cには3個の通気孔28dが設けられている。なお、この通気孔28dの個数は3個に限定されることはなく、これ以外の複数個であってもよい。
【0045】
図3に戻って、キャップ28の天井部28aと周面部28bの内側における角部、換言すると、天井部28aの下面側の周縁(周面部28bの内周側の付け根)には、薄肉で形成した弾性ヒンジPが設けられる。こうして、弁体着座部28cを形成する円状の突条部28fの外側近傍に存するヒンジPを基点として周面部28bが弾性変形し易くなるようにしている。さらに、周面部28bの下端は下端受容部12iに当接しうるように形成されている。
【0046】
本実施形態では、この下端が下端受容部12iに当接することでキャップ28の押し込み量を一定に制限し、空気流量制御部20が無理に圧縮されるのを回避している。すなわち、周面部28aの下端は、キャップ28を凹部12eに装着する際に、一時的に下端受容部12iに当接するストッパとして機能するようになっている。この結果、組み立て時において弁体22や撥水膜体24に過負荷が作用し、空気流量制御部20の機能が低下するのを防止することができる。
【0047】
なお、組み立てを完了した後は、弁体22および撥水膜体24の復元力によって、キャップ28が上方に付勢され、キャップ28の周面部28aの下端と下端受容部12iの間には微小な隙間が形成されるようになっている。このようにすることで、凹部12eにキャップ28を装着した場合に、弁体22、押圧リング26および撥水膜体24を、キャップ28の弁体着座部28cと凹部12eの撥水膜体着座部12hの間に適正な圧力で挟持することが可能となっている。
【0048】
次に、キャップ28と凹部12eの相互関係の構成を説明する。図5および6は、図3のB部を拡大した要部拡大断面図である。これらの図に示されるように、キャップ28の周面部28bの外面には、軸方向に上から順に棚状(断面楔状または断面鋸歯状)に突出する第1係合部28gと、なだらかな山状に突出する第2係合部28hとで成る係合部が円周方向に形成される。第1係合部28gには、傾斜面28g1が形成され、第2係合部28h共々キャップ28の押し込みをスムーズに行えるようにしている。凹部12eの内周壁には、この係合部に係合する被係合部、すなわち、第1被係合部12kと第2被係合部12lとが内周方向に形成され、これによりそれぞれ第1係合部28gおよび第2係合部28hに係合する嵌合部が形成される。
【0049】
こうして、キャップ28を凹部12eに押し込んで蓋をする場合には、周面部28bは弾性ヒンジPを中心にしてたわみ変形をしながら、凹部12eに進入し、図6の交差するハッチング部で図示するように、第1係合部28gは第1被係合部12kに、第2係合部28hは第2被係合部12lにそれぞれ食い込んで嵌合する。この結果、第1係合部28gと第1被係合部12kとの嵌合により、その楔効果によってキャップ28が軸方向へ抜けるのを防止し、第2係合部28hと第2被係合部12lとの嵌合により、その接触面積の広さによってキャップが周方向へ回転するのを阻止するようにしている。
【0050】
なお、上記では第1係合部28gと第1被係合部12k、および第2係合部28hと第2被係合部12lとで係合部、すなわち、嵌合部を形成したが、実質的にキャップ28の抜けと回転を防止する機能を有する態様の嵌合部であれば、一つの係合部と、これに係合可能な一つの被係合部とで嵌合部を形成する態様でもよいのは勿論である。また、上記では第1係合部28gを上方に、第2係合部28hを下方に設定したが、上下位置関係を逆にすることも可能であるのは言うまでもない。同様に、ここでは周面部28b側に係合部を形成し、凹部12e側に被係合部を形成する場合を示すが、これらの関係は反対であってもよい。
【0051】
<インク活用弁>
空気流量制御部20は、インク貯蔵部10の内部13のインクMを吸収することによって空気流量を制御するインク活用弁40をさらに備えるものであってもよい。
【0052】
図7は、インク活用弁40を備える空気流量制御部20の断面図である。インク活用弁40を備える空気流量制御部20では、同図に示されるように、導通口12gの内径が一定に形成されると共に、導通口12gの周縁を内部13に向けて突出させた連結用筒部14aが形成されている。連結用筒部14aの下端縁は、水平方向に対して一定の角度で傾斜している。
【0053】
インク活用弁40は、この連結用筒部14aに同軸状に接続される保持部41と、保持部41の内部に装填されるインク吸収体42と、連結用筒部14aと保持部41の接続部分に配設される第2撥水膜体43を備えている。このインク活用弁40は、導通口12gに気水密の状態を維持して連通されており、保持部41の下端はインク吸収体42と共にインクMに浸漬される。すなわち、インク活用弁40は、インク吸収体42がインクMを吸収し、このインクMの吸収量に応じて内部13への空気流入抵抗を増大させることによって空気流量を制御するように構成されている。
【0054】
保持部41は、例えば上端が閉塞され下端を開口させた円筒である。保持部41の上端の中央には、連結用筒部14aが挿入される挿入口41aが形成されている。また、保持部41の上端近傍の内壁には、連結用筒部14aと当接可能な環状の段部41bが、水平面に対して傾斜して形成されている。段部41bが環状となっているのは、内側を空気が通過する必要があるためである。そして、この連結用筒部14Aと段部41bの間に、第2撥水膜体43が挟み込まれている。これにより、第2撥水膜体43が適切に固定される。
【0055】
インク吸収体42はインクMを吸収する機能を有するウレタン、フェルト等の素材を用いて形成される。換言すると、これら素材を圧縮することで、内部に微少孔を多数有して多孔質体を形成し、これら微少孔が互いに連通し合い、インクMが毛細管現象を利用して吸収されていく機能を有する。こうして、インク吸収体42は自体を流通する空気が気泡となって保持部41下端からインク貯蔵部10内に流出するのと入れ替わりに、インクMを吸収し、インクMがしみこんでいくが、インクMの吸収量が増大するに応じて、空気の流入抵抗を増大させるように形成されている。
【0056】
なお、インク吸収体42の材質は、上記例に限定されず、例えば、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ポリプロピレン等の繊維を長手方向に沿わせて束ねた繊維集束体、ポリエチレン等の焼結体、羊毛やレーヨンなどの天然繊維フェルトや、ポリエステルやポリプロピレンなどの化学繊維フェルト等から構成されるフェルト材、ウレタンの連通発泡体であるポリウレタンフォームなど、様々なものを利用することができる。
【0057】
第2撥水膜体43は、撥水膜体24と実質的に同一の素材であるPTFEから構成された略円板形状の平板である。従って、第2撥水膜体43は、インク成分が接触することを防止する膜で、それ自体通気性を有する材料であれば足り、通気性を考慮して連通する複数の微細孔を有する。第2撥水膜体43により、インク吸収体42に吸収されるインクMが飽和して上昇し、撥水膜体24まで上昇するのを防止できる。また、第2撥水膜体43が傾斜しているので、インク滴が一時的に付着した場合でも、この傾斜面に沿ってインク滴が一方向に偏るので、第2撥水膜体43の通気性が阻害されることを抑制できる。
【0058】
また、第2撥水膜体43とインク吸収体42の間、ならびに第2撥水膜体43と撥水膜体24の間には、それぞれ空気層44、45が介在される。本実施形態では、このように空気層44、45を介在させることによって、インク吸収体42に吸収されたインクMが第2撥水膜体43まで到達し難くすると共に、第2撥水膜体43を通過したインクMが撥水膜体24まで到達し難くしている。
【0059】
このように、空気流量制御部20にインク活用弁40を備えることにより、インク貯蔵部10の内部13と外部(大気圧)の圧力差を大きくすることができる。本実施形態では、インク活用弁40を備えない空気流量制御部20が内部13の空間S2(インクMの液面上の空間)に約−40mmH2Oの負圧を発生させるのに対し、インク活用弁40を備える空気流量制御部20は、空気層44、45に約−40mmH2Oの負圧を発生させると共に、内部13の空間S2に約−140mmH2Oの負圧を発生させるようになっている。
【0060】
なお、撥水膜体24または第2撥水膜体43のいずれかを省略し、いずれか一方のみを備えるように空気流量制御部20を構成してもよい。また、空気層44、45を設けないように空気流量制御部20を構成してもよい。
【0061】
<インク吐出部>
図8は、インク吐出部30の断面図である。同図に示されるように、本体部11の底面には、円形断面の挿通孔15が形成されており、インク吐出部30は、この挿通孔15の周縁部を本体部11の外側(図の下方)に向けて突出させた突出部31と、突出部31の先端に配設されるシール部材32と、挿通孔15内に挿通される移動弁33と、挿通孔15の周縁部をインク貯蔵部10の内部13(図の上方)に向けて突出させた移動弁支持部34と、移動弁33をシール部材32に向けて付勢するコイルスプリング35を備えている。
【0062】
突出部31は、周壁が2重に構成された円筒状に形成されており、先端から挿入されたシール部材32が嵌合するように構成されている。突出部31の内径は、挿通孔15の内径と略同一となっている。
【0063】
シール部材32は、一端に底部32aを有し、他端が開口した略円筒状の部材であり、ゴム等の弾性材料から構成されている。底部32aの略中央には円形断面の吐出口32bが形成されており、この吐出口32bの周縁部には軸方向外側に向けて突出する環状の当接部32cが形成されている。また、シール部材の外周面には、半径方向外側に向けて突出する突起部32dが周方向に沿って形成されている。
【0064】
シール部材32の内部は、吐出口33bから他端にかけて放物線状に内径が拡大するように形成されている。そして、シール部材32の底部32aの反対側の端部には、半径方向外側に向けて張り出した後に当接面32側に向けて折り返された鍔部32eが設けられている。
【0065】
シール部材32は、底部32aから本体部分を突出部31の内部に圧入すると共に、鍔部32eの先端を突出部31の2重の周壁の間に圧入することによって配設される。このとき、突起部32dおよび鍔部32eが弾性変形し、その復元力によって突出部31に密着するため、シール部材32は突出部31に安定して固定されると共に、シール部材32と突出部31の隙間からインクMが漏出しないようになっている。
【0066】
移動弁33は、先端側(図の下側)の大径部33aと、基端側(図の上側)の小径部33bからなる略円柱状の部材である。大径部33aの外周面の軸方向中央近傍には、コイルスプリング35の一端が当接する鍔状の受圧部33cが形成されている。移動弁33は、大径部33aを内部に挿入されると共に、小径部33bを移動弁支持部34内に挿入され、軸方向に移動自在な状態で配設されている。なお、大径部33aの外径は、挿通孔15および突出部31の内径よりも小さく形成されている。
【0067】
移動弁支持部34は、本体部11の底面から内部13に向けて突設された略円筒状の基端部34aと、基端部34aの先端に突設された基端部34aより小径の略円筒状の支持部34bからなる。基端部34aの内径は、挿通孔15と略同一に形成されている。また、基端部34aには、軸方向の略全長にわたって形成された複数のスリット34cが形成されている。支持部34bは、内部に挿入された移動弁33を支持すると共に、移動弁33が軸方向に移動するのをガイドする部分である。このため、支持部34bの内径は、移動弁33がスムーズに滑動可能な径に設定されている。移動弁支持部34内部における基端部34aと支持部34bの間の段差34dは、コイルスプリング35の多端が当接する部分となっている。
【0068】
コイルスプリング35は、移動弁支持部34の基端部34aの内部において、移動弁33の受圧部33cと移動弁支持部34の段差34dの間に圧縮して配設されている。従って、コイルスプリング35は、移動弁33をシール部材32に向けて常に付勢し、移動弁33の大径部33aの先端がシール部材32の当接部33cに当接して吐出口32bを塞いだ状態を維持するようになっている。コイルスプリング35の付勢力は、大径部33aの先端がシール部材32の当接部33cを適宜に弾性変形させ、両者の隙間からインクMが漏出することのない大きさに設定されている。
【0069】
なお、インクジェットプリンタのキャリッジにこのインク貯蔵容器100がセットされると、キャリッジが備える部材により、コイルスプリング35の付勢力に抗して移動弁33が上方へ押し上げられ、所定の負圧状態で、インクがインクジェットプリンタに供給されるようになっている。すなわち、内部13から移動弁支持部34の基端部34aのスリット34cを通過して基端部34aおよび突出部31の内部に進入したインクMが、移動弁33の先端と当接部32cの隙間から吐出口32bを通過して吐出される。
【0070】
<内壁>
図9(a)〜(c)は、インク貯蔵部10の上面部12側の一部の断面図である。同図(a)に示されるように、内壁12cは、外周端を嵌合壁12b下端の全周にわたって接合されると共に、円形断面の開口部12c1の周縁部を導通孔12gの周縁部に接合されている。これにより、内壁12cは、空気流量制御部20下端からインク貯蔵部10の内部に向けてスカート状に広がるように設けられている。
【0071】
内壁12cの開口部12c1の周縁部と導通口12gの周縁部の接合、および内壁12cの外周端と嵌合壁12bの接合は気水密状態を保って接合されている。すなわち、空間S1と内部13の間では空気が流通せず、内部13の所定の負圧状態を維持できるようになっている。また、内部13内に貯蔵されたインクMが空間S1内に浸入しないようになっている。なお、空間S1は、連通孔12dによって外部と連通されているため、略大気圧状態に保たれている。
【0072】
内壁12cは、上面部12の天板12aや本体部11の外壁よりも低靱性および低剛性に構成されている。具体的には、内壁12cは、上面部12の天板12aや本体部11の外壁よりも薄肉となっており、これらよりも容易に破壊または変形するように構成されている。ここで、低剛性とは、弾性変形だけではなく塑性変形も含めた変形が生じやすい性質を示している。
なお、この内壁12cを構成する材料は特に限定されるものではなく、通気性をほとんど有さず、内部13を空間S1から隔絶可能であると共に、適宜の柔軟性を有する各種樹脂や各種ゴム等を採用することができる。なお、内壁12cは、本体部11または上面部12と同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。また、内壁12cを、撥水性の高い(濡れ性の低い)素材から構成してもよいし、内壁12cの内部13側の面に撥水処理加工を施すようにしてもよい。
【0073】
このように、上面部12の内側に内壁12cを設けることによって、インク貯蔵容器100の再生品の製造を困難にすることができる。一般に、インクカートリッジ等の再生品の製造では、使用済みのインクカートリッジの上面部分にドリル等で孔を開け、この孔からインクを再充填する。そして、この孔に接着剤等と共に封止ピン等を挿入して、孔を塞ぐようにしている。
【0074】
一方、本実施形態のインク貯蔵容器100では、インク再充填用の孔を加工する場合に、同図(b)に示されるように、ドリル200等により上面部12の天板12aに孔201を開けると共に、内壁12cにも孔202を開ける必要がある。しかしながら、内壁12cは柔軟性を有していることから、ドリル200の押圧力により容易に変形してドリル200から逃げるため、天板12aの孔201の直下に孔202を開けることは非常に困難となる。また、内壁12cは、薄肉で容易に破壊または変形するため、ドリル200によって加工された孔202は、天板12aに加工された孔201よりも大きく、いびつな形状のものとなる。
【0075】
これにより、内壁12cに加工されたインク再充填用の孔202を完全に封止するのは、困難な作業となる。例えば、インクを再充填した後に、インク再充填用の孔201、202に封止ピン300を挿入して孔201、202を封止する場合、封止ピン300を天板12aの孔201および内壁12cの孔202の両方に挿入することは困難である。また、同図(c)に示されるように、天板12aの孔201に挿入した封止ピン300の先端を内壁12cの孔202にうまく挿入できたとしても、封止ピン300の外径よりも内壁12cの孔202が大きいため、内壁12cの孔202を完全に封止することは、略不可能である。
【0076】
内壁12cに加工したインク再充填用の孔202を完全に封止できない場合、インク貯蔵部10の内部13は、空間S1および連通孔12dを介して外部(大気圧状態)と連通した状態となるため、内部13を所定の負圧状態に保つことが不可能となる。従って、内部13のインクMの吐出量を制御することが不可能となり、インク貯蔵容器100をインクカートリッジとして使用することができなくなる。
【0077】
このように、本実施形態のインク貯蔵容器100は、上面部12の天板12aおよび内壁12cに孔201、202を開け、インクを再充填した後にこれらの孔201、202を塞ごうとする場合に内壁12cの孔202を完全に封止することができず、インク貯蔵容器100を再使用することができないように構成されている。これにより、再生品の製造を困難にし、低品質な再生品が市場に出回ることでユーザやメーカが被る不利益を解消することができる。
【0078】
図10(a)は、内壁12cを天板12aと平行に配設した一例を示した断面図である。このように、内壁12cを天板12aと平行に配設するようにしてもよい。すなわち、内壁12cは、天板12aよりも容易に破壊または変形すればよく、柔軟性を有することは必ずしも必要ではない。例えば、内壁12cを脆性材料によって構成し、インク再充填用の孔加工を施そうとした場合に、内壁12cが亀裂の進展と共に大きく破断するようにしてもよい。また、ゴム等の弾性材料を予め伸ばした状態(弾性変形させた状態)で内壁12cとして配設し、インク再充填用の孔加工を施した場合に弾性変形の復元力によって孔が大きくなるようにしてもよい。
【0079】
図10(b)は、天板12a、嵌合壁12bおよび内壁12cによって形成される空間S1を、インク貯蔵部10の内外間で空気を流通させる通路の一部とした一例を示した断面図である。この例では、キャップ28の通気孔28dを廃止すると共に空間S1と空気流量制御部20を繋ぐ通気路12eを形成することによって、空間S1をインク貯蔵部10の内外間で空気を流通させる通路の一部としている。このように、空間S1をインク貯蔵部10の内外間で空気を流通させる通路の一部とすることにより、上面部12の構造がより複雑となる。これにより、インク再充填用の孔の加工および封止をする際に、この通路を塞がないように注意して行う必要が生じるため、インク貯蔵容器100の再生品の製造をさらに困難なものとすることができる。なお、図10(b)では、空間S1を外部と空気流量制御部20を繋ぐ通路の一部とした例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、空間S1を弁体22と撥水膜体24を繋ぐ通路の一部としてもよいし、撥水膜体24と内部13を繋ぐ通路の一部としてもよい。また、空気流量制御部20がインク活用弁40を備える場合には、空間S1を撥水膜体24(撥水膜体24を省略した場合には弁体22)とインク活用弁40を繋ぐ通路の一部としてもよい。
【0080】
なお、内壁12cは、上面部12の内側だけでなく、インク貯蔵部10のその他の外壁の内側に配設するようにしてもよい。すなわち、本体部11の外壁の内側に内壁12cを設けてもよい。また、インクMを収容する袋状に内壁12cを構成してもよい。
【0081】
図11は、内壁12cを袋状に構成した一例を示した図である。この例では、内壁12cは本体部11の内側の形状に沿った袋状に構成されており、2つの開口部12c1、12c2を備えている。内壁12cの一方の開口部12c1の周縁部は、空気流量制御部20の導通口12g下端の周縁部に気水密状態に接合され、他方の開口部12c2の周縁部は、インク吐出部30の移動弁支持部34の基端の外周に気水密状態に接合されている。なお、この例では、内壁12cの内部を1つの室からなる内部13としているが、内部13を複数の室に分けるようにしてもよい。
【0082】
この袋状の内壁12cは、通気性をほとんど有さず、内部13を空間S1から隔絶可能であると共に、インクMを収容していない場合には自重により自身の形態を維持できない程度の柔軟性を有する各種樹脂や各種ゴム等から構成されている。従って、インクMを消費した後には、内壁12cはしぼんで空気流量制御部20から垂れ下がった状態となる。このため、外部から内壁12cまでドリル等を到達させることが非常に困難となるだけでなく、ドリル等を到達させた場合にも内壁12cは自由に変形してドリル等から逃げるため、内壁12cにインク再充填用の孔を加工するのは非常に困難となる。
【0083】
また、この袋状の内壁12cは、上面部12の天板12aや本体部11の外壁よりも薄肉であり、容易に破壊または変形するようになっている。このため、内壁12にインク再充填用の孔を加工できたとしても、この孔を封止するのは非常に困難な作業となる。なお、この袋状の内壁12cは、本体部11または上面部12と同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。また、内壁12cを、撥水性の高い(濡れ性の低い)素材から構成してもよいし、内壁12cの表面に撥水処理加工を施すようにしてもよい。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係るインク貯蔵容器100は、インクMを貯蔵するインク貯蔵部10と、インク貯蔵部10の内外間の空気流量を制御する空気流量制御部20と、を備え、インク貯蔵部10は、少なくとも一部の外壁(上面部12の天板12a、または本体部11の外壁)の内側に、外壁よりも低靱性または低剛性であり破壊または変形しやすい内壁12cを備えている。このため、インク貯蔵部10の外壁および内壁12cに孔を開けてインクを再充填した後にこれらの孔を封止する場合に、内壁12cの孔を完全に封止することが不可能となっている。これにより、再生品の製造を困難にし、低品質な再生品が市場に出回ることでユーザやメーカが被る不利益を解消することができる。
【0085】
また、外壁と内壁12cの間の空間S1は、インク貯蔵部10の外部と連通されているため、内壁12cの孔を完全に封止できなかった場合に、インク貯蔵部10の内部13と外部が連通され、内部13を適正な圧力状態に保つことが不可能となる。これにより、再生品の製造を困難にすることができる。
【0086】
また、内壁12cは、外壁よりも柔軟である。これにより、インク再充填用の孔を加工する場合に、容易に変形してドリル等から逃げるため、インク再充填用の孔加工を困難にすることができる。
【0087】
また、内壁12cは、外壁よりも薄肉である。これにより、インク再充填用の孔を加工する際に内壁12cが容易に変形、破断するため、想定よりも大きくいびつな形状の孔が形成されることとなる。この結果、内壁12cに加工したインク再充填用の孔の封止を困難にすることができる。
【0088】
また、内壁12cは、インク貯蔵部10の上面部12に設けられているため、インク再充填用の孔を加工するのにもっとも適している上面部12に、孔加工が施されるのを防止することができる。
【0089】
また、内壁12cは、インクMを収容する袋状に構成されてもよい。このようにすることで、内壁12cにインク再充填用の孔を加工し、封止する作業を困難にすることができる。
また、内壁12cは、ゴムから構成されるものであってもよい。内壁12cをゴム等の高弾性体から構成することにより、大気圧と内部13の圧力差により内壁12cが内部13側に膨出して(内壁12cを袋状に構成した場合には、収縮して)外壁から遠ざかるため、インク再充填用の孔加工を困難にすることができる。
【0090】
また、空気流量制御部20は、通常時は空気を流通させないが、インク貯蔵部10の内圧変化に応じて外部との間で空気交換を行わせる弾性変形可能な連通多孔質の弁体22と、弁体22よりもインク貯蔵部10側に配設されて通気性を有しかつ撥水処理を施された撥水膜体24と、を備えている。このため、弁体22の空気流量制御によって内部13を適正な圧力に維持すると共に、撥水膜体24によって弁体22にインクMが付着して空気流量制御機能が損なわれるのを防止することができる。
【0091】
また、空気流量制御部20は、インクMを吸収することにより、通常時は空気を流入させないがインク貯蔵部10の内圧変化に応じて空気交換を行わせるインク吸収体42を、撥水膜体24よりもインク貯蔵部10側に備えるものであってもよい。このようにすることで、内部13の圧力をより低い圧力状態(負圧状態)に維持することが可能となる。
【0092】
また、外壁と内壁12cの間の空間S1は、インク貯蔵部10の内外間で空気を流通させる通路の一部としてもよい。このようにすることで、上面部12の構造がより複雑となるため、インク貯蔵容器100の再生品の製造をさらに困難なものとすることができる。
【0093】
以上、本発明を実施形態により詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も本発明の範囲に含まれるものである。
【0094】
例えば、本体部11および上面部12の形状、内壁12cの位置または形状、連通口12dの位置または形状、空気流量制御部20の位置または形状、ならびにインク吐出部30の位置または形状等は、上記実施形態において示したものに限定されることはなく、その他の位置や形状を採用することができる。また、複数の連通孔12dを設けるようにしてもよい。
【0095】
また、内壁12cの内側にさらに内々壁を設けるようにしてもよい。この場合、内壁12cと内々壁の間の空間をインク貯蔵部10の外部と連通させることで、再生品の製造をより困難にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、インク貯蔵容器、特にインクジェットプリンタ用のインクカートリッジとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施形態に係るインク貯蔵容器の構造を示す断面図である。
【図2】図1のA部を拡大した要部拡大断面図である。
【図3】空気流量制御部の断面図である。
【図4】空気流量制御部が備える各部材の斜視図である。
【図5】図3のB部を拡大した要部拡大断面図である。
【図6】図3のB部を拡大した要部拡大断面図である。
【図7】インク活用弁を備える空気流量制御部の断面図である。
【図8】インク吐出部の断面図である。
【図9】(a)〜(c)インク貯蔵部の上面部側の一部の断面図である。
【図10】(a)は内壁を天板と平行に配設した一例を示した断面図であり、(b)は天板、嵌合壁および内壁によって形成される空間を、インク貯蔵部の内外間で空気を流通させる通路の一部とした一例を示した断面図である。
【図11】内壁を袋状に構成した一例を示した図である。
【符号の説明】
【0098】
10 インク貯蔵部
11 本体部
12 上面部
12a 天板
12c 内壁
12d 連通孔
13 インク貯蔵部の内部
20 空気流量制御部
22 弁体
24 撥水膜体
42 インク吸収体
100 インク貯蔵容器
M インク
S1 天板、嵌合壁および内壁によって形成される空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを貯蔵するインク貯蔵部と、
前記インク貯蔵部の内外間の空気流量を制御する空気流量制御部と、を備え、
前記インク貯蔵部は、少なくとも一部の外壁の内側に、前記外壁よりも低靱性または低剛性の内壁を備えることを特徴とする、インク貯蔵容器。
【請求項2】
前記外壁と前記内壁の間の空間は、前記インク貯蔵部の外部と連通されることを特徴とする、
請求項1に記載のインク貯蔵容器。
【請求項3】
前記内壁は、前記外壁よりも柔軟であることを特徴とする、
請求項1または2に記載のインク貯蔵容器。
【請求項4】
前記内壁は、前記外壁よりも薄肉であることを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれかに記載のインク貯蔵容器。
【請求項5】
前記内壁は、前記インク貯蔵部の上面部に設けられることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載のインク貯蔵容器。
【請求項6】
前記内壁は、前記インクを収容する袋状に構成されることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載のインク貯蔵容器。
【請求項7】
前記内壁は、ゴムから構成されることを特徴とする、
請求項1乃至6のいずれかに記載のインク貯蔵容器。
【請求項8】
前記空気流量制御部は、通常時は空気を流通させないが、前記インク貯蔵部の内圧変化に応じて外部との間で空気交換を行わせる弾性変形可能な連通多孔質の弁体と、前記弁体よりも前記インク貯蔵部側に配設されて通気性を有しかつ撥水処理を施された撥水膜体と、を備えることを特徴とする、
請求項1乃至7のいずれかに記載のインク貯蔵容器。
【請求項9】
前記空気流量制御部は、前記インクを吸収することにより、通常時は空気を流入させないが前記インク貯蔵部の内圧変化に応じて空気交換を行わせるインク吸収体を、前記撥水膜体よりも前記インク貯蔵部側に備えることを特徴とする、
請求項8に記載のインク貯蔵容器。
【請求項10】
前記外壁と前記内壁の間の空間は、前記インク貯蔵部の内外間で空気を流通させる通路の一部であることを特徴とする、
請求項1乃至9のいずれかに記載のインク貯蔵容器。
【請求項1】
インクを貯蔵するインク貯蔵部と、
前記インク貯蔵部の内外間の空気流量を制御する空気流量制御部と、を備え、
前記インク貯蔵部は、少なくとも一部の外壁の内側に、前記外壁よりも低靱性または低剛性の内壁を備えることを特徴とする、インク貯蔵容器。
【請求項2】
前記外壁と前記内壁の間の空間は、前記インク貯蔵部の外部と連通されることを特徴とする、
請求項1に記載のインク貯蔵容器。
【請求項3】
前記内壁は、前記外壁よりも柔軟であることを特徴とする、
請求項1または2に記載のインク貯蔵容器。
【請求項4】
前記内壁は、前記外壁よりも薄肉であることを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれかに記載のインク貯蔵容器。
【請求項5】
前記内壁は、前記インク貯蔵部の上面部に設けられることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載のインク貯蔵容器。
【請求項6】
前記内壁は、前記インクを収容する袋状に構成されることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載のインク貯蔵容器。
【請求項7】
前記内壁は、ゴムから構成されることを特徴とする、
請求項1乃至6のいずれかに記載のインク貯蔵容器。
【請求項8】
前記空気流量制御部は、通常時は空気を流通させないが、前記インク貯蔵部の内圧変化に応じて外部との間で空気交換を行わせる弾性変形可能な連通多孔質の弁体と、前記弁体よりも前記インク貯蔵部側に配設されて通気性を有しかつ撥水処理を施された撥水膜体と、を備えることを特徴とする、
請求項1乃至7のいずれかに記載のインク貯蔵容器。
【請求項9】
前記空気流量制御部は、前記インクを吸収することにより、通常時は空気を流入させないが前記インク貯蔵部の内圧変化に応じて空気交換を行わせるインク吸収体を、前記撥水膜体よりも前記インク貯蔵部側に備えることを特徴とする、
請求項8に記載のインク貯蔵容器。
【請求項10】
前記外壁と前記内壁の間の空間は、前記インク貯蔵部の内外間で空気を流通させる通路の一部であることを特徴とする、
請求項1乃至9のいずれかに記載のインク貯蔵容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−149458(P2010−149458A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332242(P2008−332242)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(503401614)ジット株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(503401614)ジット株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
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