説明

インサートの心出し材

【課題】 既製のコンクリート製品にインサートを後付する場合、挿入孔とインサートを同心に配置するのが困難である。
【解決手段】 本発明に係るインサートの心出し材は、封止部(1)と心出し部(2)を有している。該封止部(2)はリング板状でインサート(3)の口径(d1)に適合する孔径の透孔(11)と、該インサート(3)の開口(31)の周面(32)に対向する環状の水切山(12)を備えている。そして、該心出し部(2)は弾性があり、該封止部(1)の該水切山(12)のある面側の該水切山(12)の外側から突出し、該インサート(3)の外周面(33)に対する弾接部(21)と、コンクリート製品(4)に穿った該インサート用の挿入孔(41)の内壁面(42)と圧接して該インサート(3)の該開口(31)の心出しをする圧接部(22)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木や建築等において使用されるインサートの心出し材に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
従来、土木や建築で使用されるインサートの雌ねじ部に塵埃等が侵入しないようにインサートの開口部にキャップを被せることが行われている。例えば特開2002−213023号公報の蓋体23がそれに該当する。また、このキャップと同様の作用をするマスキング材を色分け表示して、電気、電話、水道、冷暖房用等の配管の種別を特定できるようにした技術が特開平10−34043号公報に述べられている。
【特許文献1】特開2002−213023号公報
【特許文献2】特開平10−34043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特開2002−213023号公報に記載されたインサート器具は、コンクリートが打設される前に予め型枠に取り付けられる先施工型で、そこで使用される蓋体はインサートの心出し機能を果たす必要がなく、コンクリート製品が出来上がってからインサートに被せられる。従って、このインサート器具で使用される蓋体は、出来上がっているコンクリート製品に後からインサートを設置する後施工型の心出しには適用できない。
【0004】
また、特開平10−34043号公報に開示されたインサートのマスキング材も既にコンクリート製品に埋設されているインサートに使用するもので、インサートの心出し機能を果たす必要がない。従って、このマスキング材も、出来上がっているコンクリート製品に後からインサートを設置する後施工型の心出しには適用できない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(請求項1)本発明に係るインサートの心出し材は、封止部と心出し部を有している。該封止部はリング板状でインサートの口径に適合する孔径の透孔と、該インサートの開口の周面に対向する環状の水切山を備えている。そして、該心出し部は弾性があり、該封止部の該水切山のある面側の該水切山の外側から突出し、該インサートの外周面に対する弾接部と、コンクリート製品に穿った該インサート用の挿入孔の内壁面と圧接して該インサートの該開口の心出しをする圧接部を備えている。
【0006】
インサートの外周面にその開口側から心出し部を摺嵌し、透孔をインサートの開口と合わせる。心出し部はその弾性によりインサートの外周面に圧接する。締着用のボルトを封止部の透孔及びインサートの開口を通してインサートの雌ねじにねじ込む。ボルトを更に強くねじ込めば、封止部の該心出し部と反対側の水切山がボルトにより圧偏されてボルトに密接し、透孔を封止する。また、封止部の該心出し部側の水切山はインサートの開口周面により圧偏されてこの周面に密接し、該開口を封止する。
【0007】
コンクリート製品の所定箇所にドリルでインサートを埋設する挿入孔を掘削する。挿入孔の孔径は心出し材の心出し部の外寸より小さくしておく。この挿入孔に注入用のポンプ等を介して接着剤を送り込む。心出し材を取り付けたインサートをボルトと反対側からこの挿入孔に挿入する。心出し部が挿入孔の内壁面に当たると、心出し部の外寸が挿入孔の内径より大きいので、心出し部は内壁面によりインサートの外周面方向へ弾発され、インサートを、その開口の中心を挿入孔の開口の中心に合致させて、支持する。
【0008】
インサートの挿入により、接着剤の一部は挿入孔の開口側に押し出され、インサートの周りを包み込む。この状態で接着剤が固化するのを待つ。固化したら、ボルトをインサートから抜き取り、インサートを供用可能とする。
【0009】
(請求項2)該封止部は該水切山のある面と反対側の面に環状の水切山が形成されていてもよい。
こうすると、締着用のボルトの締め付けによりこの水切山が押しつぶされて封止部の透孔を塞ぐので、異物がこの透孔を通ってインサート内にその開口から入り込むのを防ぐことができる。
【0010】
(請求項3)該封止部は該水切山のある面と同じ面の外周に水切山を備えていてもよい。
こうすると、心出し材をインサートに取り付けた状態でインサートをコンクリート製品の挿入孔に挿入して封止部の外周をコンクリート製品の表面に押し付けた際、この水切山が圧扁されてコンクリート製品の表面に圧接するので、この表面を伝って流下する水滴等がインサート内に浸入するのを防げる。
【0011】
(請求項4)該心出し部は複数の脚片となっており、該各脚片は該封止部の軸心に対し等中心角度の配置となっていてもよい。
こうすると、各脚片が均等にインサートを支持するので、インサートの開口を挿入孔の中心に適合させるのが容易となる。
【0012】
(請求項5)該脚片は該封止部との接続部分に切断用部を備えていてもよい。
こうすると、封止部がコンクリート製品の表面上に突き出ているため、取付部品等がコンクリート表面に密接に着座できないときに、この封止部を切断用部で切断して取り除くことにより、密接な着座が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
(請求項1)本発明に係るインサートの心出し材によれば、封止部はリング板状でインサートの口径に適合する孔径の透孔と、該インサートの開口の周面に対向する環状の水切山を備えているので、ボルトにより心出し材をインサートに締着した場合、ボルトとインサート間で水切山を圧扁して心出し材の透孔とインサートの開口を蜜閉し、インサートに異物や水等が侵入するのを防げる。また、該心出し部は弾性があり、該封止部の該水切山のある面側の該水切山の外側から突出し、該インサートの外周面に対する弾接部と、該インサート用の挿入孔の内壁面と圧接して該インサートの該開口の心出しをする圧接部を備えているので、インサートの外周面にその開口側から心出し部を摺嵌すれば、心出し部はその弾性によりインサートの外周面に圧接する。コンクリート製品に穿った挿入孔に接着剤を入れ、心出し材を取り付けたインサートをボルトと反対側からこの挿入孔に挿入すれば、心出し部が挿入孔の内壁面により弾発されてインサートを、その開口の中心を挿入孔の開口の中心に合致させて、支持することができる。
インサートの挿入により、接着剤の一部は挿入孔の開口側に押し出されてインサートの周りを包み込むので、接着剤が固化するのを待ってボルトをインサートから抜き取れば、インサートを供用することができる。
【0014】
請求項2によれば、該封止部は該水切山のある面と反対側の面に環状の水切山が形成されているので、締着用のボルトの締め付けによりこの水切山が押しつぶされて封止部の透孔を塞ぐので、異物がこの透孔を通ってインサート内にその開口から入り込むのを防ぐことができる。
【0015】
請求項3によれば、該封止部は該水切山のある面と同じ面の外周に水切山を備えているので、心出し材をインサートに取り付けた状態でインサートをコンクリート製品の挿入孔に挿入して封止部の外周をコンクリート製品の表面に押し付けた際、この水切山が圧扁されてコンクリート製品の表面に圧接するので、この表面を伝って流下する水滴等がインサート内に浸入するのを防げる。
【0016】
請求項4によれば、該心出し部は複数の脚片となっており、該各脚片は該封止部の軸心に対し等中心角度の配置となっているので、各脚片が均等にインサートを支持し、インサートの開口を挿入孔の中心に適合させるのが容易となる。
【0017】
請求項5によれば、該脚片は該封止部との接続部分に切断用部を備えているので、封止部がコンクリート製品の表面上に突き出ているために取付部品等がコンクリート表面に密接に着座できないとき、この封止部を切断用部で切断して取り除くことにより、密接な着座が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】心出し材の右半分断面の正面図である。
【図2】平面図である。
【図3】心出し材とインサートの斜面図である。
【図4】心出し材をインサートにセットした状態の部分断面図である。
【図5】コンクリート製品にインサートの挿入孔を穿った状態の説明図である。
【図6】挿入孔に接着剤を充填する状態の説明図である。
【図7】心出し材をセットしたインサートを挿入孔に挿入する状態の説明図である。
【図8】挿入完了状態の断面図である。
【図9】コンクリート製品に配置されたインサートを用いて被支持物を支持した状態の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図面は本発明に係る心出し材の具体例と、この心出し材をコンクリート製品に配置するやり方を示すものである。図1は心出し材の右半分断面の正面図、図2は平面図、図3は心出し材とインサートの斜面図、図4は心出し材をインサートにセットした状態の部分断面図である。図5はコンクリート製品にインサートの挿入孔を穿った状態の説明図、図6は挿入孔に接着剤を充填する状態の説明図である。図7は心出し材をセットしたインサートを挿入孔に挿入する状態の説明図、図8は挿入完了状態の断面図、図9はコンクリート製品に配置されたインサートを用いて被支持物を支持した状態の説明図である。
【0020】
本発明に係る心出し材は封止部1と心出し部2を有している。封止部1はリング板状でインサート3の開口31の口径d1に適合する孔径の透孔11と、インサート3の開口31の周面32に対向する環状の水切山12を備えている。心出し部2は弾性があり、封止部1の水切山12のある面側の水切山12の外側から突出し、インサート3の外周面33に対する弾接部21と、コンクリート製品4に穿ったインサート3用の挿入孔41の内壁面42と圧接してインサート3の開口31の心出しをする圧接部22を備えている。
【0021】
インサート3の外周面33にその開口31側から心出し部2を摺嵌し、透孔11をインサート3の開口31と合わせる。心出し部2はその弾性によりインサート3の外周面33に圧接する。締着用のボルト5を封止部1の透孔11及びインサート3の開口31を通してインサート3の雌ねじ34にねじ込む。ボルト5を更に強くねじ込めば、封止部1の心出し部2と反対側の水切山13がボルト5により圧偏されてボルト5に密接し、透孔11を封止する。また、封止部1の心出し部2側の水切山12はインサート3の開口31の周面32により圧偏されてこの周面32に密接し、開口31を封止する。
【0022】
このインサート3を使用に供する場合は、図5から図8に示すように、コンクリート製品4の所定箇所にドリル6でインサート3を埋設する挿入孔41を掘削する。挿入孔41の孔径d2は心出し材1の心出し部2の外寸d3より小さくしておく。この挿入孔41に注入ポンプ7を介して接着剤8を送り込む。心出し材1を取付けたインサート3をボルト5と反対側からこの挿入孔41に挿入する。心出し部2が挿入孔41の内壁面42に当たると、心出し部2の外寸d3が挿入孔41の孔径d2より大きいので、心出し部2は内壁面42によりインサート3の外周面33方向へ弾発され、インサート3を、その開口31の中心を挿入孔41の開口43の中心に合致させて、支持する。
【0023】
インサート3の挿入により、接着剤8の一部は挿入孔41の開口43側に押し出され、インサート3の周りを包み込む。この状態で接着剤8が固化するのを待つ。固化したら、ボルト5をインサート3から抜き取り、インサート3を供用可能とする。
図9は、アングル9をボルト5でインサート3に取付けた状態を示してある。
【0024】
(請求項2)封止部1は水切山12のある面と反対側の面に環状の水切山13が形成されている。
この場合、締着用のボルト5の締め付けによりこの水切山13が押しつぶされて封止部1の透孔11を塞ぐので、異物がこの透孔11を通ってインサート3内にその開口31から入り込むのを防ぐことができる。
【0025】
(請求項3)封止部1は水切山12のある面と同じ面の外周に水切山14を備えている。
この場合、心出し材をインサート3に取り付けた状態でインサート3をコンクリート製品4の挿入孔41に挿入して封止部1の外周をコンクリート製品4の表面に押し付けた際、この水切山14が圧扁されてコンクリート製品4の表面に圧接するので、この表面を伝って流下する水滴等がインサート3内に浸入するのを防げる。
【0026】
(請求項4)心出し部2は複数の脚片23となっており、各脚片23は封止部1の軸心Cに対し等中心角度θの配置となっている。
この場合、各脚片23が均等にインサート3を支持するので、インサート3の開口31の中心を挿入孔41の中心に適合させるのが容易となる。
【0027】
(請求項5)脚片23は封止部1との接続部分に切断用部24を備えている。
この場合、封止部1がコンクリート製品4の表面上に突き出ているため、取付部品等がコンクリート製品4の表面に密接に着座できないときに、この封止部1を切断用部24で切断して取り除くことにより、密接な着座が可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1 封止部
11 透孔
12 水切山
13 水切山
14 水切山
2 心出し部
21 弾接部
22 圧接部
23 脚片
24 切断用部
3 インサート
31 開口
32 周面
33 外周面
34 雌ねじ
4 コンクリート製品
41 挿入孔
42 内壁面
43 開口
5 ボルト
6 ドリル
7 注入ポンプ
8 接着剤
9 アングル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止部(1)と心出し部(2)を有し、
該封止部(1)はリング板状でインサート(3)の開口(31)の口径(d1)に適合する孔径の透孔(11)と、該開口(31)の周面(32)に対向する環状の水切山(12)を備え、
該心出し部(2)は弾性があり、該封止部(1)の該水切山(12)のある面側の該水切山(12)の外側から突出し、該インサート(3)の外壁面(33)に対する弾接部(21)と、コンクリート製品(4)に穿った該インサート(3)用の挿入孔(41)の内壁面(42)と圧接して該インサート(3)の該開口(31)の心出しをする圧接部(22)を備えている
ことを特徴とするインサートの心出し材。
【請求項2】
該封止部(1)は該水切山(12)のある面と反対側の面に環状の水切山(13)が形成されている請求項1に記載のインサート用心出し材。
【請求項3】
該封止部(1)は該水切山(12)のある面と同じ面の外周に水切山(14)を備えている請求項1又は2に記載のインサート用心出し材。
【請求項4】
該心出し部(2)は複数の脚片(23)となっており、該各脚片(23)は該封止部(1)の軸心(C)に対し等中心角度(θ)の配置となっている請求項1に記載のインサート用心出し材。
【請求項5】
該脚片(23)は該封止部(1)との接続部分に切断用部(24)を備えている請求項4に記載のインサート用心出し材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−209563(P2010−209563A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55797(P2009−55797)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(591116885)ジャパンライフ株式会社 (28)
【Fターム(参考)】