説明

インサート成型品の製造装置

【課題】インサート部品との干渉を長期にわたって防止することができるインサート成型品の製造装置を提供する。
【解決手段】スライド金型31,32をスライド可能に保持する保持部51と、保持部51と独立して昇降する昇降部101と、保持部51に対する昇降部101の動きに応じてスライド金型をスライドして開閉するスライド駆動手段と、スライド金型が閉じきる寸前まで固定金型から離間した状態に維持した後、この閉状態にあるスライド金型を固定金型の上面に着地させる緩衝機構71と、スライド金型が開くまで保持部の上昇を禁止した後、保持部の上昇を許容するロック手段を設ける。緩衝機構71を、スライド金型31,32に先行して固定金型13に当接する当接部72と、当接部72を後退可能に付勢するバネ73で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート部品をインサート成型するインサート成型品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インサート成型品を製造する際には、製造装置が用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
製造されるインサート成型品は、形状が複雑なため、例えば図5に示すように、スライド機構を備えた製造装置801が用いられている。
【0004】
この製造装置801には、装置本体に固定された固定金型811と、該固定金型811と共にインサート成型部品を形成する為のキャビティを形成する一対のスライド金型812,812とを備えており、両スライド金型812,812は、保持部813によってスライド自在に保持されている。
【0005】
該保持部813上方には、昇降部814が設けられおり、該昇降部814には、一対のスライド駆動バー821,821が設けられている。各スライド駆動バー821,821は、対応したスライド金型812,812に係合して各スライド金型812,812を横方向にスライドするように構成されている。
【0006】
そして、前記保持部813の下面には、凹部831,831が凹設されており、前記固定金型811には、前記凹部831,831と対を成すプラロック832,832が設けられている。
【0007】
この製造装置801でインサート成型品を成型する際には、前記固定金型811に金属のインサート部品841を予めセットした後、前記保持部813を下降して前記両スライド金型812,812を前記固定金型811の上面に配置する。この状態で、前記昇降部813を下降して前記各スライド駆動バー821,821を、対応したスライド金型812,812に係合するとともに、両スライド金型812,812を横方向にスライドして閉作動して、前記固定金型811と共にキャビティを形成する。
【0008】
そして、このキャビティに樹脂を流し込んで固化するとともに、前記スライド金型812,812をスライドして開いた後に上昇し、インサート成型部品を取り出す。
【特許文献1】特開2006−289661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来にあっては、前記スライド金型812,812を閉じる際に、当該スライド金型812,812が前記固定金型811にセットされたインサート部品841と干渉してしまうことがあり得る。
【0010】
この場合、前記インサート部品841に傷付きが発生したり、スライド金型812,812の端部に凹みが生じ得る。この破損状態でインサート成型品の成型を行うと、スライド金型812,812に形成された凹み部分に樹脂が流れ込み、バリが発生してしまう。
【0011】
そこで、前記プラロック832,832を用いることによって前記スライド金型812,812と前記インサート部品841との干渉を防止できるように構成したが、金型が高温となる成型時において、前記プラロック832,832に劣化やへたりが発生してしまう。すると、前述した干渉による問題がすぐに発生してしまう。
【0012】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、インサート部品との干渉を長期にわたって防止することができるインサート成型品の製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために本発明の請求項1のインサート成型品の製造装置にあっては、インサート部品をインサート成型するインサート成型品の製造装置において、前記インサート部品がセットされるキャビティが上面に開口した固定金型と、該固定金型と共にキャビティを形成する一対のスライド金型と、前記固定金型に対して昇降され、前記各スライド金型をスライド可能に保持する保持部と、該保持部の上部に設けられ、前記固定金型に対して前記保持部と独立して昇降可能な昇降部と、該昇降部を前記保持部に近接する従って前記各スライド金型をスライド方向へ閉じ、前記昇降部を前記保持部から離間するに従って前記各スライド金型をスライド方向に開くスライド駆動手段と、前記昇降部を前記保持部に近接して前記両スライド金型をスライド方向に閉じきる寸前まで前記両スライド金型が前記固定金型から離間した状態を維持した後、この閉状態にある前記両スライド金型を前記固定金型の上面に着地させる下降時間隙維持手段と、前記昇降部を前記保持部から離間して前記両スライド金型をスライド方向に開くまで前記保持部の上昇を禁止した後、前記保持部の上昇を許容するロック手段と、を備え、前記下降時間隙維持手段を、前記保持部に設けられた緩衝機構で構成するとともに、該緩衝機構を、前記保持部を下降する際に前記スライド金型より先行して前記固定金型に当接する当接部、及び該当接部を後退可能に前記固定金型へ向けて付勢するバネで構成した。
【0014】
すなわち、インサート成型品の製造装置でインサート部品がインサートされたインサート成型品を製造する際には、固定金型にインサート部品をセットした後、昇降部を保持部に近接することによって該保持部に保持された両スライド金型をスライド方向に移動して両スライド金型を閉じる。
【0015】
このとき、前記両スライド金型は、前記保持部に設けられた緩衝機構の当接部が前記スライド金型より先行して前記固定金型に当接するすることによって、前記固定金型から離間した状態が維持されており、前記両スライド金型は、前記固定金型から離れた位置にて閉じられる。
【0016】
そして、前記昇降部で前記保持部を下方に付勢して下降することにより前記緩衝機構のバネを縮小して前記当接部を後退させ、閉状態にある両スライド金型を前記固定金型上に下降して、該固定金型と前記両スライド金型とによってキャビティを形成する。
【0017】
このとき、前記固定金型の上方から下降される前記両スライド金型は、閉じられている。このため、前記固定金型にセットされた前記インサート部品が前記固定金型の上面より突出していた場合であっても、前記スライド金型を前記固定金型上面に沿ってスライドする恐れのある従来と比較して、前記スライド金型とインサート部品との干渉が防止される。
【0018】
次に、このキャビティに樹脂を流し込んで固化する等して、前記インサート部品がインサートされたインサート成型品を形成する。
【0019】
このインサート成型品を取り出す際には、前記保持部に対して前記昇降部を上昇し、該昇降部を前記保持部から離間することによって前記両スライド金型をスライド方向に開く。このとき、前記両スライド金型が開くまで前記保持部の上昇が禁止されている。このため、前記両スライド金型は、前記固定金型の上面に配置された状態でスライドされる。
【0020】
そして、前記保持部の上昇を許容した後、前記固定金型に対して前記保持部を上昇し、前記インサート成型品を取り出す。
【0021】
また、請求項2のインサート成型品の製造装置においては、前記緩衝機構を前記保持部の複数箇所に設け、各緩衝機構の前記当接部が前記固定金型に当接した際の前記保持部と前記固定金型との離間距離が前記各緩衝機構が設けられた各所で一定となるとともに、前記各緩衝機構の前記バネを縮小した際の前記固定金型に接する前記各スライド金型の接触面の面圧が一定となるように前記各緩衝機構の前記バネのバネ長を同寸法に設定した。
【0022】
すなわち、前記保持部には、複数箇所に緩衝機構が設けられており、これらの緩衝機構によって、前記両スライド金型をスライド方向に閉じきる寸前まで前記両スライド金型が前記固定金型から離間した状態を維持した後、この閉状態にある前記両スライド金型を前記固定金型の上面に着地させることができる。
【0023】
そして、前記各緩衝機構の前記バネのバネ長は同寸法に設定されており、各緩衝機構が前記固定金型に接した際の前記保持部と前記固定金型との離間距離を、前記各緩衝機構が設けられた各所で一定にすることができるとともに、前記各緩衝機構の前記バネを縮小した際の前記固定金型に接する前記各スライド金型の接触面の面圧を一定にすることができる。
【0024】
これにより、型開閉時での金型のかじりや、動作の安定化が図られる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明の請求項1のインサート成型品の製造装置にあっては、対を成すスライド金型と固定金型を合わせてキャビティを形成する際に、前記保持部に設けられた緩衝機構の当接部を前記スライド金型より先行して前記固定金型に当接するすることによって、前記スライド金型を前記固定金型から離間した状態に維持することができ、この離間状態で前記両スライド金型をスライドして閉じた後、この閉状態にある両スライド金型を前記固定金型に合わせることができる。
【0026】
このため、前記固定金型にセットされた前記インサート部品が前記固定金型の上面より突出していた場合であっても、前記スライド金型を前記固定金型上面に沿ってスライドする恐れのある従来と比較して、前記スライド金型とインサート部品との干渉を防止することができる。
【0027】
これにより、インサート部品へのスライド金型の干渉に起因したインサート部品の傷付きや、スライド金型の破損等、インサート部品との干渉に起因した不具合を防止することができる。
【0028】
このとき、前記緩衝機構は、前記スライド金型より先行して前記固定金型に当接する当接部と、該当接部を後退可能に前記固定金型へ向けて付勢するバネで構成されている。
【0029】
このため、成形時の高温に晒されても、劣化やへたりが生ずることがなく、長期に渡って効果を持続することができ、前述した干渉による問題の発生を防止することができる。
【0030】
したがって、インサート部品との干渉を長期にわたって防止することができるインサート成型品の製造装置となり得る。
【0031】
また、請求項2のインサート成型品の製造装置においては、保持部の複数箇所に前記緩衝機構が設けられており、これらの緩衝機構によって、前記両スライド金型をスライド方向に閉じきる寸前まで前記両スライド金型が前記固定金型から離間した状態を維持した後、この閉状態にある前記両スライド金型を前記固定金型の上面に着地させることができる。
【0032】
そして、前記各緩衝機構の前記バネのバネ長は同寸法に設定されており、各緩衝機構が前記固定金型に接した際の前記保持部と前記固定金型との離間距離を前記各緩衝機構が設けられた各所で一定とすることができるとともに、前記各緩衝機構の前記バネを縮小した際の前記固定金型に接する前記各スライド金型の接触面の面圧を一定にすることができる。
【0033】
これにより、型開閉時での金型のかじりを防止できるとともに、金型作動時の安定化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。図1は、本実施の形態にかかるインサート成型品の製造装置1を示す図である。該インサート成型品の製造装置1は、インサート部品2がインサート成型されたインサート成型品3を製造する装置であり、その一例として、上部に形成されたボビン3aと下部に形成されたノズル3bとの間にインサート部品2を構成する金属プレートがインサートされたインサート成型品3を製造する装置が示されている(図4参照)。
【0035】
このインサート成型品の製造装置1の装置本体11のベース12には、矩形状の固定金型13が固定されており、該固定金型13の上面14には、インサート成型品3のノズル3b部分を形成する下部キャビティ構成部15が凹設されている。この下部キャビティ構成部15の上部には、大径部16が形成されており、該大径部16に、リング状の金属板からなる前記インサート部品2をセットできるように構成されている。
【0036】
この固定金型13の両側面には、ロックバー21,21が設けられており、該ロックバー21,21は、上方へ向けて延出されている。
【0037】
この固定金型13の上部には、対を成す第一スライド金型31と第二スライド金型32とが設けられている。両スライド金型31,32は、横方向にスライドされるように構成されており、各スライド金型31,32の対向した端面は、互いに突き合わせられる合わせ面を構成している。両合わせ面には、ボビン3aを形成する為の上部キャビティ構成部33が凹設されており、該上部キャビティ構成部33は、前記固定金型13の前記下部キャビティ構成部15と共に前記インサート成型品3のキャビティを形成するように構成されている。
【0038】
前記第一スライド金型31には、図2にも示すように、上面から下面へ向かうに従って図2中、左方へ向けて延在する第一スライド穴41が開設されており、前記第二スライド金型32には、上面から下面へ向かうに従って図2中、右方へ向けて延在する第二スライド穴42が開設されている。
【0039】
前記両スライド金型31,32は、前記固定金型13の上部に配置された保持部51にスライド自在に保持されている。該保持部51は、前記両スライド金型31,32を両側部から保持する一対のブロック52で構成されており(一方のブロック52のみ図示)、図外の昇降機構によって前記固定金型13に対して昇降されるように装置本体11に支持されている。
【0040】
この保持部51の側面には、図1に示したように、前記ロックバー21,21に対応するロック機構61,61が設けられており、前記ロックバー21,21とロック機構61,61とによってパーティングロック62,62が構成されている。前記各ロック機構61,61は、図3に示すように、当該保持部51を下降して前記スライド金型31,32を前記固定金型13に面接させた状態で、対応するロックバー21,21が挿入されるように構成されており、この挿入状態において、挿入されたロックバー21,21の抜けを阻止したパーティングロック状態63を形成するように構成されている。
【0041】
前記保持部51を構成する各ブロック52の両端には、図1に示したように、緩衝機構71,・・・が設けられており、この緩衝機構71,・・・は、前記保持部51の四隅に配置されるように構成されている。各緩衝機構71,・・・は、前記保持部51を下降する際に前記各スライド金型31,32より先行して前記固定金型13に当接する当接部72と(図2参照)、該当接部72が前記保持部51より下方へ延出するように前記固定金型13へ向けて付勢するとともに上方へ向けた後退を許容するバネ73とで構成されている。
【0042】
すなわち、前記ブロック52の端部には、下部大径穴81と、該下部大径穴81に連通した小径穴82と、該小径穴82に連通した上部大径穴83とが設けられており、前記当接部72は、前記上部大径穴83に保持された大径の頭部85と、該頭部85より下方へ延出し前記小径穴82を挿通する小径のシフト86と、該シャフト86の下端に設けられ前記下部大径部81より出入り自在に保持された大径の面接部87とによって構成されている。
【0043】
この当接部72の前記シャフト86には、金属製のコイルスプリングで構成された前記バネ73が装着されており、該バネ73は、前記下部大径穴81及び前記小径穴82間の段差部と前記面接部87との間に弾持され、当該当接部72を下方へ向けて付勢している。
【0044】
前記各緩衝機構71,・・・における各バネ73,・・・のバネ長は、同寸法に設定されており、図2に示すように、前記保持部51を下降して前記各緩衝機構71,・・・の前記当接部72,・・・を前記固定金型13の上面14に当接した状態で、前記保持部51と前記固定金型13との離間距離が前記各緩衝機構71,・・・が設けられた各所で一定となるよるに構成されている。
【0045】
また、図3に示したように、前記保持部51を下降して前記各スライド金型31,32の接触面91を前記固定金型13の上面14に面接して前記各緩衝機構71,・・・の前記バネ73,・・・を縮小した状態では、前記固定金型13に接する前記各スライド金型31,32の前記接触面91の面圧が各所で一定となるように構成されている。
【0046】
この保持部51の上部には、図1に示したように、前記固定金型13に対して前記保持部51と独立して昇降可能な昇降部101が設けられている。該昇降部101は、前記保持部51と同幅の下部構成部102と、該下部構成部102より幅広の上方構成部103とからなり、前記下方構成部102の両端部からは、下方へ向けてリリースバー104,104が延出している。
【0047】
また、前記各リリースバー104,104は、図2に示したように、前記保持部51の側面に設けられた前記各ロック機構61,61に対応する位置に設けられており、前記昇降部101の下面を前記保持部51の上面に面接した状態で、該保持部51の側面に設けられた対応するロック機構61,61を挿通するように構成されている。
【0048】
そして、前記各リリースバー104,104は、図4に示すように、前記昇降部101を上昇して前記保持部51から離間した際に、該保持部51に設けられた前記各ロック機構61,61から抜けるように構成されており、各ロック機構61,61は、対応したリリースバー104,104が抜かれた際に、挿入されたロックバー21,21の抜けを許容して、前記固定金型13から前記保持部51の上昇を許容したパーティングロック解除状態111を形成できるように構成されている。
【0049】
これにより、前記昇降部101が前記保持部か51ら十分に離間して前記両スライド金型31,32をスライド方向に開くまで前記固定金型13からの前記保持部51の上昇を禁止した後、前記保持部51の上昇を許容するロック手段が前記パーティングロック62,62によって構成されている。
【0050】
この昇降部101には、図1に示したように、第一スライド駆動バー121と第二スライド駆動バー122とが前記下部構成部102の中央部に設けられており、両スライド駆動バー121,122は、下方へ向けて延出している。
【0051】
前記第一スライド駆動バー121は、下方向かうに従って図1中、左方へ向けて延出するように傾斜して設けられており、当該第一スライド駆動バー121は、前記第一スライド金型31に設けられた前記第一スライド穴41に抜き差し自在に挿入できるように構成されている。また、前記第二スライド駆動バー122は、下方向かうに従って図1中、右方へ向けて延出するように傾斜して設けられており、当該第二スライド駆動バー122は、前記第二スライド金型32に設けられた前記第二スライド穴42に抜き差し自在に挿入できるように構成されている。
【0052】
これにより、前記昇降部101を前記保持部51に近接する従って前記両スライド駆動バー121,122を前記各スライド金型31,32の各スライド穴41,42へ挿入して各スライド金型31,32を近接するスライド方向へスライドして閉じる一方、前記昇降部101を前記保持部51から離間するに従って前記両スライド駆動バー121,122を前記各スライド金型31,32の各スライド穴41,42から抜いて前記各スライド金型31,32が離間するスライド方向へスライドして開くスライド駆動手段が構成されている。
【0053】
また、前記昇降部101が前記保持部51に当接して該保持部51の下降を開始するまでは、前記昇降部101の前記保持部51への近接に伴って前記両スライド金型31,32が近接するスライド方向にスライドし、両スライド金型31,32が閉じきる寸前まで両スライド金型31,32をスライドするように構成されており、このとき、図2に示したように、前記各緩衝機構71,・・・の前記当接部72,・・・が前記固定金型13の上面14に当接することによって、前記両スライド金型31,32が前記固定金型13から離間した状態で閉じられるように構成されている。
【0054】
その後、前記昇降部101が前記保持部51に当接して該保持部51の下降を開始することによって、この閉状態にある前記両スライド金型31,32を前記固定金型13の上面14に着地できるように構成されている。
【0055】
以上の構成にかかる本実施の形態において、このインサート成型品の製造装置1でインサート部品2がインサートされたインサート成型品3を製造する際には、図2に示したように、ホームポジション201において、固定金型13の下部キャビティ構成部15に設けられた大径部16に、リング状の金属板からなるインサート部品2をセットした後、スライド閉工程202で、図外の昇降機構で昇降部101を下降することで、該昇降部101を保持部51に近接する。
【0056】
すると、前記昇降部101が前記保持部51に近接する従って、前記両スライド駆動バー121,122が前記各スライド金型31,32の各スライド穴41,42へ挿入され、各スライド金型31,32が近接するスライド方向へスライドされることによって、前記両スライド金型31,32が閉じられる。
【0057】
このとき、前記両スライド金型31,32は、前記保持部51に設けられた緩衝機構71,・・・の当接部72,・・・が前記スライド金型31,32より先行して前記固定金型13の上面14に当接する。これにより、前記スライド金型31,32は、前記固定金型13から離間した状態が維持されており、前記両スライド金型31,32は、前記固定金型13から離れた位置にて閉じられる。
【0058】
そして、図3に示したように、スライド金型下降工程211において、前記昇降部101の下面が前記保持部51の上面に当接し、該保持部51を下方に付勢することによって当該保持部51の下降が開始された際には、前記緩衝機構71,・・・のバネ73,・・・が縮小して前記当接部72,・・・が保持部51内に後退し、前記閉状態にある両スライド金型31,32を前記固定金型13上に下降した後、前記両スライド金型31,32にコッター151,151で閉じきることで、前記固定金型13と前記両スライド金型31,32とによってキャビティを形成する。
【0059】
このとき、前記固定金型13の上方から下降される前記両スライド金型31,32は、閉じられている。このため、前記固定金型13にセットされた前記インサート部品2が前記固定金型13の上面14より突出していた場合であっても、前記スライド金型31,32を前記固定金型13上面14に沿ってスライドする恐れのある従来と比較して、前記スライド金型31,32とインサート部品2との干渉を確実に回避することができる。
【0060】
次に、成型工程において、前記固定金型13の下部キャビティ構成部15と前記両スライド金型31,32の上部キャビネット構成部33とで構成されたキャビティに樹脂を流し込んで固化する等して、前記インサート部品2がインサートされたインサート成型品3を形成する。
【0061】
このとき、成型中に前記スライド金型31,32が受ける射出圧を前記コッター151,151で受けることができる。
【0062】
固化後、前記インサート成型品3を取り出す際には、スライド開き工程212において、前記保持部51に対して前記昇降部101を上昇し、該昇降部101を前記保持部51から離間するに従って前記両スライド駆動バー121,122を前記各スライド金型31,32の各スライド穴41,42から抜いて前記各スライド金型31,32が離間するスライド方向へスライドし、前記両スライド金型31,32をスライド方向に開く。
【0063】
このとき、前記固定金型13に設けられたロックバー21,21は、前記保持部51に設けられたロック機構61,61によって抜けが阻止されており、前記ロックバー21,21及び前記ロック機構61,61からなるパーティングロック62,62によって、前記両スライド金型31,32が開くまで、前記固定金型13に対する前記保持部51の上昇が禁止されたパーティングロック状態63が形成されている。
【0064】
このため、前記両スライド金型31,32は、前記固定金型13の上面14に配置された状態でスライドされる。
【0065】
そして、図4に示したように、スライド金型上昇行程221において、前記昇降部101を上昇して前記保持部51から離間した際には、前記保持部51の前記各ロック機構61,61を挿通した前記各リリースバー104,104が対応するロック機構61,61から抜けることによって、このロック機構61,61に挿入された前記固定金型13のロックバー21,21の抜けが許容され、前記固定金型13からの前記保持部51の上昇を許容したパーティングロック解除状態111が形成される。
【0066】
これにより、前記昇降部101が前記保持部51から十分に離間して前記両スライド金型31,32をスライド方向に開いた後において、前記固定金型13に対して前記保持部51を上昇して、前記ホームポジション201を形成することができる。そして、この状態において、前記インサート成型品3を取り出す。
【0067】
このように、対を成すスライド金型31,32と前記固定金型13を合わせてキャビティを形成する際に、前記保持部51に設けられた各緩衝機構71,・・・の当接部72,・・・を前記スライド金型31,32より先行して前記固定金型13に当接するすることで、前記スライド金型31,32を前記固定金型13から離間した状態に維持することができ、この離間状態で前記両スライド金型31,32をスライドして閉じた後、この閉状態にある両スライド金型31,32を前記固定金型13に合わせることができる。
【0068】
このため、前記固定金型13にセットされた前記インサート部品2が前記固定金型13の上面14より突出していた場合であっても、前記スライド金型31,32を前記固定金型13上面14に沿ってスライドする恐れのある従来と比較して、前記スライド金型31,32とインサート部品2との干渉を確実に防止することができる。
【0069】
これにより、インサート部品2へのスライド金型31,32の干渉に起因したインサート部品2の傷付きや、スライド金型31,32の破損等、インサート部品2との干渉に起因した不具合を防止することができる。
【0070】
このとき、前記緩衝機構71,・・・は、前記スライド金型31,32より先行して前記固定金型13に当接する当接部72,・・・と、該当接部72,・・・を後退可能に前記固定金型13へ向けて付勢するバネ73,・・・で構成されている。
【0071】
このため、成形時の高温に晒されても、劣化やへたりが生ずることがなく、長期に渡って効果を持続することができ、前述した干渉による問題の発生を防止することができる。
【0072】
したがって、インサート部品2との干渉を長期に渡って防止することができるインサート成型品の製造装置1となり得る。
【0073】
また、前記保持部51の四隅に前記緩衝機構71,・・・が設けられており、これらの緩衝機構71,・・・によって、前記両スライド金型31,32をスライド方向に閉じきる寸前まで前記両スライド金型31,32が前記固定金型13から離間した状態を維持した後、この閉状態にある前記両スライド金型31,32を前記固定金型13の上面14に着地させることができる。
【0074】
そして、前記各緩衝機構71,・・・の前記バネ73,・・・のバネ長は同寸法に設定されており、各緩衝機構71,・・・が前記固定金型13に接した際の前記保持部51と前記固定金型13との離間距離を前記各緩衝機構71,・・・が設けられた各所で一定に保つことができるとともに、前記各緩衝機構71,・・・の前記バネ73,・・・を縮小した際の前記固定金型13に接する前記各スライド金型31,32の接触面91の面圧を一定にすることができる。
【0075】
これにより、型開閉時での各金型13,31,32のかじりを防止できるとともに、金型作動時の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図である。
【図2】同実施の形態の動作を示す説明図である。
【図3】図2に続く動作を示す説明図である。
【図4】図3に続く動作を示す説明図である。
【図5】従来のインサート成型品の製造装置を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
1 インサート成型品の製造装置
2 インサート部品
3 インサート成型品
13 固定金型
14 上面
15 下部キャビネット構成部
31 第一ススライド金型
32 第二スライド金型
33 上部キャビネット構成部
41 第一スライド穴
42 第二スライド穴
51 保持部
62 パーティングロック
71 緩衝機構
72 当接部
73 バネ
91 接触面
101 昇降部
121 第一スライド駆動バー
122 第二スライド駆動バー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサート部品をインサート成型するインサート成型品の製造装置において、
前記インサート部品がセットされるキャビティが上面に開口した固定金型と、
該固定金型と共にキャビティを形成する一対のスライド金型と、
前記固定金型に対して昇降され、前記各スライド金型をスライド可能に保持する保持部と、
該保持部の上部に設けられ、前記固定金型に対して前記保持部と独立して昇降可能な昇降部と、
該昇降部を前記保持部に近接する従って前記各スライド金型をスライド方向へ閉じ、前記昇降部を前記保持部から離間するに従って前記各スライド金型をスライド方向に開くスライド駆動手段と、
前記昇降部を前記保持部に近接して前記両スライド金型をスライド方向に閉じきる寸前まで前記両スライド金型が前記固定金型から離間した状態を維持した後、この閉状態にある前記両スライド金型を前記固定金型の上面に着地させる下降時間隙維持手段と、
前記昇降部を前記保持部から離間して前記両スライド金型をスライド方向に開くまで前記保持部の上昇を禁止した後、前記保持部の上昇を許容するロック手段と、を備え、
前記下降時間隙維持手段を、前記保持部に設けられた緩衝機構で構成するとともに、該緩衝機構を、前記保持部を下降する際に前記スライド金型より先行して前記固定金型に当接する当接部、及び該当接部を後退可能に前記固定金型へ向けて付勢するバネで構成したことを特徴とするインサート成型品の製造装置。
【請求項2】
前記緩衝機構を前記保持部の複数箇所に設け、
各緩衝機構の前記当接部が前記固定金型に当接した際の前記保持部と前記固定金型との離間距離が前記各緩衝機構が設けられた各所で一定となるとともに、前記各緩衝機構の前記バネを縮小した際の前記固定金型に接する前記各スライド金型の接触面の面圧が一定となるように前記各緩衝機構の前記バネのバネ長を同寸法に設定したことを特徴とする請求項1記載のインサート成型品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−126025(P2009−126025A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302342(P2007−302342)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000220505)日本電産トーソク株式会社 (189)
【Fターム(参考)】