説明

インサート成形品の製造方法

【課題】熱交換や湿度交換などの交換効率と生産性とが向上可能なインサート成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】インサート成形品の製造方法は、薄膜状のインサート品111が吸引固定された可動側金型121と、ゲート125が形成された固定側金型122とで対をなして、インサート品111と接触する部分が曲面で構成された突起部分123が、可動側金型121と固定側金型122との間に形成されたキャビティ空間126に沿って、少なくとも可動側金型121と固定側金型122とのいずれかに形成された金型120を使用して、インサート品111を突起部分123で圧縮させた状態で、ゲート125からキャビティ空間126に成形樹脂112を射出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換素子や湿度交換素子などのフィルターとして機能するインサート成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、インサート成形技術や樹脂の開発が進み(例えば、特許文献1参照。)、熱交換素子や湿度交換素子などのフィルターとして機能する部品をインサート成形方法で製造することが主流になってきている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
具体的には、図15に示すように、インサート成形方法では、可動側金型21の吸引穴24を介して、インサートフィルム11を可動側金型21の内面に吸引して固定する。インサートフィルム11を可動側金型21の内面に固定した状態で、金型20を閉める。固定側金型22に形成されたゲート25から、可動側金型21と固定側金型22との間に形成されたキャビティ空間26に、成形樹脂12を射出する。
【0004】
ここで、インサートフィルム11は、可動側金型21と固定側金型22との間に配置されるものであり、成形樹脂12の表面に一体化接着されるものである。少なくとも2種類のシートの積層物であり、成形樹脂12に接着される面側のシートがガス透過性シート11aであり、他方のシートが熱可塑性樹脂シート11bである。これによって、成形樹脂12から発生するガスが成形樹脂12の内部に残留せず、成形樹脂12に対して密着性が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−84973号公報
【特許文献2】特開2007−101053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のインサート成形方法では、インサートフィルム11が薄いために、インサートフィルム11が破れ易かったり、インサートフィルム11の固定が不十分だったりする。例えば、インサートフィルム11が破れると、吸引穴24に成形樹脂12が流れ込み、樹脂詰まりが起こる。また、インサートフィルム11の固定が不十分であると、成形樹脂12に対して密着性が悪くなり、インサート成形品に樹脂バリが生じる。
【0007】
このように、従来のインサート成形方法では、インサートフィルム11の破れや固定不良など、生産上での課題を抱えている。また、熱交換素子や湿度交換素子などのフィルターとして機能するインサート成形品に樹脂バリが生じると、熱交換や湿度交換などの交換効率が低下するという問題も併せ持つことになる。このため、生産現場では、頻繁に金型メンテナンスを行う必要があり、生産性がよくないという問題がある。
【0008】
また、インサートフィルム11の破れは、インサート成形後の収縮バランス不良(反りなどの変形)や、離型バランス不良(キャビ取られ、コア取られ)だけではなく、射出成形時の成形樹脂の樹脂圧と、金型シャープエッジによっても発生する。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みて、熱交換や湿度交換などの交換効率と生産性とが向上可能なインサート成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係わるインサート成形品の製造方法は、下記に示す特徴を備える。
(CL1)本発明に係わるインサート成形品の製造方法は、(a)インサート成形品を製造するインサート成形品の製造方法であって、(b)薄膜状のインサート品が吸引固定された第1の金型と、ゲートが形成された第2の金型とで対をなして、前記インサート品と接触する部分が曲面で構成された突起部分が、前記第1の金型と前記第2の金型との間に形成されたキャビティ空間に沿って、少なくとも前記第1の金型と前記第2の金型とのいずれかに形成された金型を使用して、(c)前記インサート品を前記突起部分で圧縮させた状態で、前記ゲートから前記キャビティ空間に成形樹脂を射出する。
【0011】
(CL2)上記(CL1)に記載のインサート成形品の製造方法は、(a)前記金型が、前記キャビティ空間に存在する前記インサート品の第1の部分が前記ゲートの射出範囲内に入るか否かに応じて、少なくとも前記第1の金型と前記第2の金型とのいずれかに前記突起部分が形成されたものであり、(b)前記第1の部分の近傍で前記第1の金型と前記第2の金型とで挟み込まれる前記インサート品の第2の部分を前記突起部分で圧縮させる。
【0012】
(CL3)上記(CL2)に記載のインサート成形品の製造方法は、前記第1の部分が前記ゲートの射出範囲内に入らない場合において、前記第2の金型に形成された前記突起部分で前記第2の部分を圧縮させた状態で、前記成形樹脂を前記第1の金型に衝突させて、前記第1の部分を前記第2の金型に貼り付ける。
【0013】
(CL4)上記(CL2)に記載のインサート成形品の製造方法は、前記第1の部分が片持ちであって前記ゲートの射出範囲内に入る場合において、前記第1の金型に形成された前記突起部分で前記第2の部分を圧縮させた状態で、前記成形樹脂を前記第1の部分に衝突させて、前記第1の部分を前記第1の金型に貼り付ける。
【0014】
(CL5)上記(CL2)に記載のインサート成形品の製造方法は、前記第1の部分が両持ちであって前記ゲートの射出範囲内に入る場合において、前記第1の金型と前記第2の金型との各々に形成された前記突起部分で前記第2の部分を圧縮させた状態で、前記成形樹脂を前記第1の部分に衝突させて、前記第1の部分を前記第1の金型と前記第2の金型とのいずれかに貼り付ける。
【0015】
(CL6)上記(CL2)−(CL5)のいずれかに記載のインサート成形品の製造方法は、前記インサート品の弾性圧縮量以下で前記第2の部分を圧縮させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、突起部分で圧縮されるインサート品の部分(第2の部分)が隙間なく可動側金型と固定側金型とに密着する。これによって、キャビティ空間に射出された成形樹脂がインサート品の第2の部分から漏れることを防止することができる。交換効率の低下に影響を及ぼす樹脂バリが生じたり、吸引穴が樹脂詰まりを起こしたりすることを回避することができる。
【0017】
さらに、吸引穴の樹脂詰まりが起こり難くなれば、インサート品の固定が安定して、インサート品の固定不良も起こり難くなる。結果として、連続して安定生産をすることができ、同時に、金型のメンテナンス期間を飛躍的に延ばすことができる。金型のメンテナンスも定期的に行うだけでよくなり、メンテナンスの回数も減少する。
【0018】
また、インサート成形後の収縮バランスや離型バランスも改善するので、インサート品の破れを低減することができ、生産時の不良率を低減することができる。さらに、インサート成形品は、従来のインサート成形品と比べて、流路に樹脂バリが無い分、交換効率が高い。
【0019】
また、場所を選ばず、容易に突起部分を形成することができるので、幅広い製品形状に応用することができ、製品の小型化・薄肉軽量化にも対応することができる。更なるインサート品の薄膜化にも適している。これ以外にも、金型開き工程で、圧縮部分が圧縮力から開放されると、反力で圧縮部分が復元するので、成形樹脂との接着強度が向上するといった利点が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態におけるインサート成形品を示す斜視図である。
【図2】実施の形態におけるインサート成形品の金型を示す断面図である。
【図3】実施の形態におけるインサート成形品の可動側金型を示す斜視図である。
【図4】実施の形態におけるインサート成形品の製造方法を示す第1の断面図である。
【図5】実施の形態におけるインサート成形品の製造方法を示す第2の断面図である。
【図6】実施の形態におけるインサート成形品の製造方法を示す第3の断面図である。
【図7】実施の形態におけるインサート成形品とゲートとの位置関係を示す斜視図である。
【図8】実施の形態における第1ゲートから射出される工程を示す第1の断面図である。
【図9】実施の形態における第1ゲートから射出される工程を示す第2の断面図である。
【図10】実施の形態における第2ゲートから射出される工程を示す第1の断面図である。
【図11】実施の形態における第2ゲートから射出される工程を示す第2の断面図である。
【図12】実施の形態における第3ゲートから射出される工程を示す第1の断面図である。
【図13】実施の形態における第3ゲートから射出される工程を示す第2の断面図である。
【図14】実施の形態における第3ゲートから射出される工程を示す第3の断面図である。
【図15】従来の技術におけるインサート成形品の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施の形態)
以下、本発明に係わる実施の形態について説明する。
<概要>
本実施の形態におけるインサート成形品の製造方法では、薄膜状のインサート品が吸引固定された第1の金型と、ゲートが形成された第2の金型とで対をなして、インサート品と接触する部分が曲面で構成された突起部分が、第1の金型と第2の金型との間に形成されたキャビティ空間に沿って、少なくとも第1の金型と第2の金型とのいずれかに形成された金型を使用する。インサート品を突起部分で圧縮させた状態で、ゲートからキャビティ空間に成形樹脂を射出する。
【0022】
<インサート成形品>
具体的には、図1に示すように、インサート成形品110は、紙やフィルムなどのインサート品111を使用して、樹脂によりインサート成形を施したものである。ここでは、一例として、インサート成形品110は、複数枚積層されることで、熱交換素子や湿度交換素子などのフィルターとして機能するものである。インサート品111の外周部分が全て成形樹脂112で覆われている。インサート品111の表裏にリブ113が形成されている。インサート品111の表裏のいずれにおいても、リブ113とリブ113との間に空間が形成されている。これによって、リブ113とリブ113との間に形成された空間に流体が流れて、熱交換や湿度交換などを行うことができる。
【0023】
なお、リブ113とリブ113との間に形成された空間の面積、すなわち、インサート品111の露出面積が製品の交換効率を決める重要な因子となる。
<製造方法>
ここでは、一例として、インサート成形品110は、次の手順で製造される。まず、図2に示す金型120にインサート品111をセットして(セット工程)、金型120を閉めて(金型閉め工程)、成形樹脂112を射出して(射出工程)、冷却後、金型120を開いて(金型開き工程)、インサート成形品110を取り出す(取出工程)。
【0024】
<金型120>
ここで、金型120は、ゲートシール方式(オープンゲート/バルブゲート)のホットランナーシステムが組み込まれたものである。可動側金型121と固定側金型122とを備える。図3に示すように、可動側金型121には、図2に示す固定側金型122に対向する面側に、インサート品111の露出部分に対応するクリアランス部分の縁に沿って、突起部分123が形成されている。突起部分123で囲まれるクリアランス部分に、インサート品111を吸引するための吸引穴124が形成されている。吸引穴124でインサート品111が傷つくのを防止するために、インサート品111と接触する吸引穴124の部分が滑らかな曲面で構成されている。図2に示すように、固定側金型122には、図1に示す黒塗り矢印115の位置に配置される射出成形用のゲート125として、後処理を必要としないピンゲートが形成されている。
【0025】
また、図2に示すように、キャビティ空間126に成形樹脂112が充填されると、キャビティ空間126に存在するインサート品111の部分が成形樹脂112で覆われる。このとき、成形樹脂112で覆われるインサート品111の部分(以下、被覆部分と呼称する。)が樹脂圧aで圧縮される。しかしながら、被覆部分の近傍で可動側金型121と固定側金型122とで挟み込まれるインサート品111の部分が突起部分123で圧縮される。これに伴い、突起部分123で圧縮される力に対する反力bによって樹脂圧aが抵抗される。突起部分123で圧縮されるインサート品111の部分(以下、圧縮部分と呼称する。)が隙間なく可動側金型121と固定側金型122とに密着する。
【0026】
なお、インサート品111の厚みが65μmであり、インサート品111の弾性圧縮量が厚みの20%以下である。クリアランス部分の垂直方向寸法がインサート品111の厚みと同一であるとする。この場合においては、インサート品111の弾性圧縮量以下でインサート品111を圧縮させる必要がある。このため、可動側金型121と固定側金型122との一方に突起部分123が形成される場合には、突起部分123の突起量(垂直方向寸法)が13μm以下である。また、可動側金型121と固定側金型122との両方に突起部分123が形成される場合には、可動側金型121の突起部分123の突起量(垂直方向寸法)と固定側金型122の突起部分123の突起量(垂直方向寸法)との和が13μm以下である。
【0027】
<セット工程>
具体的には、図4に示すように、挿入機130の吸引穴131を介して、インサート品111が挿入機130に吸引される。挿入機130に吸引された状態で、インサート品111が可動側金型121に配置される。インサート品111が可動側金型121に接触した時点で、挿入機130の吸引源がオフにされて、インサート品111が挿入機130から解放される。挿入機130から解放されると、可動側金型121の吸引穴124を介して、インサート品111が可動側金型121に吸引される。可動側金型121に吸引された状態で、インサート品111が可動側金型121に固定される。
【0028】
<金型閉め工程・射出工程・金型開き工程>
次に、図5に示すように、インサート品111が可動側金型121に固定された状態で、金型120が閉められる。可動側金型121と固定側金型122との間に形成されたキャビティ空間126に成形樹脂112が射出される。キャビティ空間126に成形樹脂112が充填されると、キャビティ空間126に充填された成形樹脂112が冷却される。成形樹脂112が冷却されて固化した後に、金型120が開かれる。
【0029】
<取出工程>
次に、図6に示すように、可動側金型121の突き出しピン127で、インサート品111と成形樹脂112との複合部品であるインサート成形品110が突き出される。インサート成形品110が可動側金型121から解放される。可動側金型121から解放されると、取出機140の吸引穴141を介して、インサート成形品110が取出機に吸引される。取出機140に吸引された状態で、インサート成形品110が搬送される。
【0030】
<突起部分123の位置>
ここで、突起部分123でインサート品111を圧縮させることによって、インサート品111の破れが発生し易くなる。このため、突起部分123とゲート125との位置関係が重要になる。ここでは、その位置関係として、大きく分類して、3種類が想定される。例えば、図7に示すように、黒塗り矢印115aの位置に、図8、図9に示す第1ゲート125aが配置されるとする。黒塗り矢印115bの位置に、図10、図11に示す第2ゲート125bが配置されるとする。黒塗り矢印115cの位置に、図12−図14に示す第3ゲート125cが配置されるとする。さらに、第1ゲート125a、第2ゲート125b、第3ゲート125cの各々については、突起部分123との位置関係や射出範囲などが異なる。
【0031】
<第1ゲート125a>
図8に示すように、キャビティ空間126の中央上方の固定側金型122に、第1ゲート125aが形成されている。第1ゲート125aの先端径と先端角度とから特定される射出範囲内(図中の2点鎖線で挟まれる範囲内)に、インサート品111の被覆部分(インサート品111の外周部分)が入る。キャビティ空間126の片側の可動側金型121に突起部分123が形成されている。インサート品111が突起部分123を支点とした片持ち状態になっているとする。
【0032】
この場合において、第1ゲート125aから射出された成形樹脂112がインサート品111に衝突する。図9に示すように、インサート品111に衝突した成形樹脂112がインサート品111を押し下げる。突起部分123を起点にインサート品111が曲げられる。インサート品111が可動側金型121に貼り付けられる。ここで、突起部分123が滑らかな曲面で構成されているので、インサート品111の破れを防止することができる。
【0033】
<第2ゲート125b>
図10に示すように、キャビティ空間126の側部上方の固定側金型122に、第2ゲート125bが形成されている。第2ゲート125bの先端径と先端角度とから特定される射出範囲内(図中の2点鎖線で挟まれる範囲内)に、インサート品111の被覆部分(インサート品111の外周部分)が入らない。キャビティ空間126の片側の固定側金型122に突起部分123が形成されている。インサート品111が突起部分123を支点とした片押さえ状態になっているとする。
【0034】
この場合において、第2ゲート125bから射出された成形樹脂112が可動側金型121に衝突する。図11に示すように、第2ゲート125bから射出された成形樹脂112が、キャビティ空間126の可動側金型121の部分を占めて、インサート品111を押し上げる。突起部分123を起点にインサート品111が曲げられる。インサート品111が固定側金型122に貼り付けられる。ここで、突起部分123が滑らかな曲面で構成されているので、インサート品111の破れを防止することができる。
【0035】
<第3ゲート125c>
図12に示すように、キャビティ空間126の中央上方の固定側金型122に、第3ゲート125cが形成されている。第3ゲート125cの先端径と先端角度とから特定される射出範囲内(図中の2点鎖線で挟まれる範囲内)に、インサート品111の被覆部分(リブ113になる部分)が入る。キャビティ空間126の両側の可動側金型121に突起部分123が形成されている。インサート品111が2つの突起部分123を支点とした両持ち状態になっているとする。
【0036】
この場合において、第3ゲート125cから射出された成形樹脂112がインサート品111に衝突する。図13に示すように、インサート品111に衝突した成形樹脂112がインサート品111を突き破って、可動側金型121に衝突する。図14に示すように、インサート品111を突き破るときに、インサート品111を押し下げる。各突起部分123を起点にインサート品111が曲げられる。インサート品111が可動側金型121に貼り付けられる。
【0037】
しかしながら、第3ゲート125cがピンゲートであることから、広範囲に亘って、インサート品111の被覆部分に成形樹脂112が衝突する訳ではない。このため、第3ゲート125cから射出された成形樹脂112が衝突して破れたインサート品111の部分に成形樹脂が流れ込み、流れ込んだ成形樹脂112がキャビティ空間126の可動側金型121の部分を占めて、再度、インサート品111の別の部分を突き破ると同時に押し上げて、インサート品111を固定側金型122に貼り付ける場合がある。この場合も踏まえると、固定側金型122にも突起部分123が形成されていることが好ましい。
【0038】
<まとめ>
以上、本実施の形態では、突起部分123で圧縮されるインサート品111の圧縮部分が隙間なく可動側金型121と固定側金型122とに密着する。これによって、キャビティ空間126に射出された成形樹脂112が圧縮部分から漏れることを防止することができる。交換効率の低下に影響を及ぼす樹脂バリが生じたり、吸引穴124が樹脂詰まりを起こしたりすることを回避することができる。
【0039】
さらに、吸引穴124の樹脂詰まりが起こり難くなれば、インサート品111の固定が安定して、インサート品111の固定不良も起こり難くなる。結果として、連続して安定生産することができると同時に、金型120のメンテナンス期間を飛躍的に延ばすことができる。金型120のメンテナンスも定期的に行うだけでよくなり、メンテナンスの回数も減少する。
【0040】
また、インサート成形後の収縮バランスや離型バランスも改善するので、インサート品111の破れを低減することができ、生産時の不良率を低減することができる。さらに、インサート成形品110は、従来のインサート成形品と比べて、流路に樹脂バリが無い分、交換効率が高い。
【0041】
また、場所を選ばず、容易に突起部分123を形成することができるので、幅広い製品形状に応用することができ、製品の小型化・薄肉軽量化にも対応することができる。更なるインサート品の薄膜化にも適している。これ以外にも、金型開き工程で、圧縮部分が圧縮力から開放されると、反力bで圧縮部分が復元するので、成形樹脂112との接着強度が向上するといった利点が挙げられる。
【0042】
また、インサート品111の被覆部分がゲートの射出範囲内に入っているか否かによって、下記(1)−(3)のように、少なくとも可動側金型121と固定側金型122とのいずれかに突起部分123が形成される。
【0043】
(1)インサート品111とゲートとの位置関係が第1ゲート125aのような位置関係である場合には、ゲートから射出された成形樹脂112がインサート品111を可動側金型121に押し付ける。このため、可動側金型121に突起部分123が形成される。さらに、可動側金型121に形成された突起部分123の突起量(垂直方向寸法)がインサート品111の弾性圧縮量以下である。
【0044】
(2)インサート品111とゲートとの位置関係が第2ゲート125bのような位置関係である場合には、ゲートから射出された成形樹脂112がインサート品111を固定側金型122に押し付ける。このため、固定側金型122に突起部分123が形成される。さらに、固定側金型122に形成された突起部分123の突起量(垂直方向寸法)がインサート品111の弾性圧縮量以下である。
【0045】
(3)インサート品111とゲートとの位置関係が第3ゲート125cのような位置関係である場合には、ゲートから射出された成形樹脂112がインサート品111を可動側金型121と固定側金型122とのいずれかに押し付ける。このため、可動側金型121と固定側金型122との両方に突起部分123が形成される。さらに、可動側金型121に形成された突起部分123の突起量(垂直方向寸法)と固定側金型122に形成された突起部分123の突起量(垂直方向寸法)との和がインサート品111の弾性圧縮量以下である。この場合においては、インサート品111の被覆部分において可動側金型121に押し付ける範囲と固定側金型122に押し付ける範囲とが混在しており、それらの範囲がインサート品111の外周部分を構成する成形樹脂112の形状や成形条件(射出速度・圧力、温度)に依存するため、それらの範囲を明確にすることができないからである。
【0046】
<補足>
なお、金型加工性や金型コストを考慮すると、インサート品111とゲートとの位置関係が第1ゲート125aや第2ゲート125bのような位置関係であることが望ましい。しかしながら、実際には、製品形状や成形性をも考慮してインサート品111とゲートとの位置関係が決定される。
【0047】
また、可動側金型121の吸引穴124については、穴数を少なく、かつ穴径を大きくする方が好ましい。しかしながら、吸引力を一定にした場合において、吸引穴124が大きすぎると、インサート品111が吸引穴124に入り込み、変形したり、シワになったりする。このため、インサート品111が吸引穴124に入り込まない程度に、穴数と穴径とが決定される。
【0048】
<変形例>
(1)なお、金型120の代わりに、突き出しピン127のような突き出し構造を有する可動側金型を2つ備えたロータリー成形機を使用して、インサート成形品110を取り出すと同時に、インサート品111を金型にセットするとしてもよい。これによって、生産性を上げることができる。
【0049】
(2)なお、突き出しピン127と取出機140とでインサート成形品110を取り出す代わりに、人の手でインサート成形品110を取り出すとしてもよい。
(3)なお、吸引穴124を用いた吸引方式の代わりに、多孔質ピースを用いた吸引方式で吸引するとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、熱交換素子や湿度交換素子などのフィルターとして機能するインサート成形品の製造方法などとして利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
11 インサートフィルム
11a ガス透過性シート
11b 熱可塑性樹脂シート
12 成形樹脂
20 金型
21 可動側金型
22 固定側金型
24 吸引穴
25 ゲート
26 キャビティ空間
110 インサート成形品
111 インサート品
112 成形樹脂
113 リブ
120 金型
121 可動側金型
122 固定側金型
123 突起部分
124 吸引穴
125 ゲート
125a 第1ゲート
125b 第2ゲート
125c 第3ゲート
126 キャビティ空間
127 突き出しピン
130 挿入機
131 吸引穴
140 取出機
141 吸引穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサート成形品を製造するインサート成形品の製造方法であって、
薄膜状のインサート品が吸引固定された第1の金型と、ゲートが形成された第2の金型とで対をなして、前記インサート品と接触する部分が曲面で構成された突起部分が、前記第1の金型と前記第2の金型との間に形成されたキャビティ空間に沿って、少なくとも前記第1の金型と前記第2の金型とのいずれかに形成された金型を使用して、
前記インサート品を前記突起部分で圧縮させた状態で、前記ゲートから前記キャビティ空間に成形樹脂を射出する
ことを特徴とするインサート成形品の製造方法。
【請求項2】
前記金型が、前記キャビティ空間に存在する前記インサート品の第1の部分が前記ゲートの射出範囲内に入るか否かに応じて、少なくとも前記第1の金型と前記第2の金型とのいずれかに前記突起部分が形成されたものであり、
前記第1の部分の近傍で前記第1の金型と前記第2の金型とで挟み込まれる前記インサート品の第2の部分を前記突起部分で圧縮させる
ことを特徴とする請求項1に記載のインサート成形品の製造方法。
【請求項3】
前記第1の部分が前記ゲートの射出範囲内に入らない場合において、前記第2の金型に形成された前記突起部分で前記第2の部分を圧縮させた状態で、前記成形樹脂を前記第1の金型に衝突させて、前記第1の部分を前記第2の金型に貼り付ける
ことを特徴とする請求項2に記載のインサート成形品の製造方法。
【請求項4】
前記第1の部分が片持ちであって前記ゲートの射出範囲内に入る場合において、前記第1の金型に形成された前記突起部分で前記第2の部分を圧縮させた状態で、前記成形樹脂を前記第1の部分に衝突させて、前記第1の部分を前記第1の金型に貼り付ける
ことを特徴とする請求項2に記載のインサート成形品の製造方法。
【請求項5】
前記第1の部分が両持ちであって前記ゲートの射出範囲内に入る場合において、前記第1の金型と前記第2の金型との各々に形成された前記突起部分で前記第2の部分を圧縮させた状態で、前記成形樹脂を前記第1の部分に衝突させて、前記第1の部分を前記第1の金型と前記第2の金型とのいずれかに貼り付ける
ことを特徴とする請求項2に記載のインサート成形品の製造方法。
【請求項6】
前記インサート品の弾性圧縮量以下で前記第2の部分を圧縮させる
ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載のインサート成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−269549(P2010−269549A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124790(P2009−124790)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】