説明

インシュリン抵抗性及び心筋ミオパチーを治療する化合物及び方法

【課題】インシュリン抵抗性及び心筋ミオパチーを治療する化合物及び方法を提供する
【解決手段】新規化合物、化合物を含む組成物及び化合物を製造及び使用するための方法のための方法がここに記載される。インシュリン抵抗性、膵臓β細胞アポトーシス、肥満、血栓形成促進状態、心筋梗塞、高血圧、異常脂質血症、シンドロームXの発現、鬱血性心不全、心血管系の炎症性疾患、アテローム性動脈硬化症、敗血症、I型糖尿病、肝臓障害及び悪液質を含む種々の状態を治療又は改善する方法であって、ここに記載された化合物を投与することによる方法。ここに示される化合物はセリンパルミトイルトランスフェラーゼ活性を調節するために使用し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
ここに記載される全ての刊行物は、本発明の背景と共に読者に把握させる目的のために引用される。本記載の何れも、これらの文献がここに記載された発明に関連する先行技術であることの承認と解釈されるべきでない。
【背景技術】
【0002】
II型糖尿病(即ち、T2D、糖尿病、インシュリン非依存性糖尿病、成人発症糖尿病)は高血糖により引き起こされる疾患として考えられる傾向にあるが、最近の考えは、血糖レベルを主に異常調節された脂肪代謝に関連する内在する疾患の症状とみなしている。従って高脂肪酸濃度は、様々な脂肪毒性:インシュリン抵抗性、膵臓β細胞アポトーシス及び“メタボリックシンドローム”と呼ばれる障害、を導く。インシュリン抵抗性は以下の兆候により発見され得る:血中インシュリンの高濃度、経口的グルコース負荷試験(OGTT)に応答するグルコースの高い血中濃度、インシュリン投与に応答するリン酸化タンパク質キナーゼB(AKT)の低濃度等。インシュリン抵抗性は、細胞中のインシュリン受容体関連のシグナル伝達系の低下した感受性及び/又はアポトーシスを介した膵臓中のβ細胞の損失により引き起こされ得る。インシュリン抵抗性が、内在する炎症性成分を有するものとして特徴付けられ得る証拠も存在する。
【0003】
座りがちの生活スタイル及び肥満がT2Dの発生増加の原因となる。治療行為は耐糖能異常(IGT)の人々を対象としてきた。IGTはグルコース負荷に続く高血糖(健常人と糖尿病患者間の中間のグルコース値を伴う)として定義され、世界中で少なくとも2億人に発症している。IGTに苦しむ人々は、糖尿病の発症に関し、一般集団よりも高い将来的なリスクを有する。IGTの人々の約40%が5ないし10年間に糖尿病へ進展するが、幾らかは正常へ戻るか又はIGTのままである。
【0004】
更にIGTの人々はまた、高血圧、異常脂質血症及び中心性肥満のような心臓血管疾患発症の高度なリスクを有する。従って、IGTの診断は、特に見掛けは健康そうで、歩行可能な個人において、重要な予測的意味あいを有する。更に詳細な総説のために、その開示が参照としてここに組み込まれるZimmet P,等,Nature,414:783−7頁(2001年)参照。
【0005】
最近、空腹時血糖異常(IFG)が異常糖代謝の別の範疇として導入された。IGTは空腹時血糖濃度に基づいて特定され、IGTのように、心臓血管疾患及び将来的な糖尿病のリスクにも関連する。
【0006】
T2Dは種々の要因により引き起こされ得る。加えて、該疾患はまた、多様な症状を示す。以前、T2Dは比較的明確な疾患とみなされていたが、現時点での理解は、T2D(及びそれに関連する高血糖又は糖代謝異常)は、しばしばメタボリックシンドロームを含むより広範な内在する障害の発現であることが示されている。このシンドロームは時々シンドロームXとして言及され、耐糖能異常に加えて、高インシュリン血症、異常脂質血症、高血圧、内臓型肥満、凝固性亢進及び微量アルブミン尿を含む心臓血管疾患の危険因子の一群である。
【0007】
T2Dに導く要因の最近の理解は、該疾患の現行の治療に影響してきた。II型糖尿病における、高血糖症並びに高血圧、異常脂質血症及び中心性肥満のような他の危険因子を治療するための、より積極的なアプローチが続けられてきた。加えて、危険な状態にある
個人のより簡単で包括的なスクリーニングが米国糖尿病協会のような保険機関によって推奨されてきた。
【0008】
セラミドは、インシュリン抵抗性及びβ細胞アポトーシスのようなT2Dに関連する要因の幾つかにおいて活性を示すと報告されてきた。例えば、Schimitz−Pfiffer等は、パルミチン酸又はセラミドを細胞に供給することがインシュリン抵抗性を誘導することを報告している(Schimitz−Pfiffer C等,J.Biol.Chem.,274:2402−10頁(1999年))。細胞中での増加したパルミチン酸の濃度は、デノボセラミド合成経路中に供給されるパルミトイル−CoAの濃度増加を介して直接的にセラミドの高濃度を誘導する。研究は、フミノシン(fuminosin)を用いるセラミドシンターゼの阻害がβ細胞アポトーシスを阻止するため、セラミドのデノボセラミド合成が重要な要因であることを示唆する(Shimabukuro M等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:2498−2502頁(1998年))。同様に、セラミドシンターゼのためのデノボ経路の律速段階に関わる酵素、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)がβ細胞アポトーシスの阻止のための実行可能な標的であり得ると認識されてきた。例えば、シマブクロ等はシクロセリンを用いるSPTの阻害が、糖尿病のズッカー(Zucker)脂肪ラットモデルにおいて、部分的なβ細胞保護効果(〜50%活性)を有することを報告している(Shimabukuro等,J.Biol.Chem.,273:32487−90頁(1998年)、この開示は参照としてここに組み込まれる)。
【0009】
よく知られた炎症性のシグナル、腫瘍壊死因子α(TNF)は、培養中の細胞におけるセラミド濃度を上昇させることが示されてきた(Sawada,M,等,Cell Death Differ.,11:997−1008頁(2004年);Meyer,SG,等,Biochim Biophys Acta.1643(1−3):1−4頁(2003年))。TNF投与は脂肪細胞中のPPAR−γ濃度を減少するが、これはセラミドと関わりがあることを示す(Kajita,K,等,Diabetes.Res.Cli.Pract.,66Suppl 1:S79−83頁(2004年))。TNFはまた、肝臓細胞においてアポトーシスを導き、ウイルス性肝炎、アルコール依存症、虚血及び劇症肝炎に起因する傷害に関与してきた(Ding,WX及びYin,XM,J.Cell.Mol.Med.8:445−54頁(2004年);Kanzler S.,等,Semin Cancer Biol.10(3):173−84頁(2000年))。同様に、TNF及びIL−6は、エフェクターとしてセラミドと関わる炎症性成分の強力な証拠を有する別のシンドロームである悪液質に関与する。アテローム性動脈硬化症は炎症性成分を有することが知られている。アミロイドによる酸化的ストレスの誘導は、神経細胞中のセラミド濃度を増加するカスケードの誘導を併う(Ayasolla K.,等,Free Radic.Biol.Med.,37(3):325−38頁(2004年))。従って、変化したセラミド濃度は、アルツハイマー病及びHIV認知症のような認知症における原因となり得、またSPT阻害剤を用いるこれらの濃度の調節は治療として有望であると考えられる(Cutler RG,等,Proc Natl.Acad.Sci.,101:2070−5頁(2004年))。TNFは敗血症中に関与することが知られ、また、インシュリンが保護効果を有する(Esmon,CT.Crosstalk between inflammation and thrombosis,Maturitas,47:305−14頁(2004年))。デノボセラミド濃度は、多くの疾患及び状態の中核をなす炎症プロセスにおける主要なエフェクター機構として働く可能性がある。しかし、炎症プロセスにおけるエフェクターとしてのセラミドの関与に関連する疾患及び状態のための治療剤としてのSPTの調節剤の使用の可能性はこれまで示されてこなかった。
【0010】
脂肪酸の高濃度は心筋ミオパチー(即ち、心不全)の病変に類似したシンドロームを導
き得る。この致命的状態の病因はよく解っていないが、脂肪毒性に関係するようである。研究は、心筋細胞における脂質の過負荷が心筋ミオパチーの内在する原因であろうことを示唆する。加えて、最近の研究は、心不全のヒトの心臓において低いレベルの筋細胞アポトーシス(105個の細胞核当たり80−250個の筋細胞)を確認した。しかし、この
細胞死が保護過程の偶然の発見であるのか、疾患発症における原因成分であるのかは不明確のままである(例えば、Wencker D,等,J.Clin.Invest.,111:1497−1504頁(2003年)参照、この開示は参照としてここに組み込まれる。)。細胞における脂肪酸濃度の増加は、直接デノボセラミド合成の高い速度をもたらす。TNFはCHFに関与し、そのため、TNFシグナル伝達の関連エフェクターであるセラミドは独立した方向を介して関与する(McTiernan,CF,等,Curr
Cardiol Rep.2(3):189−97頁(2000年))。しかし、心筋ミオパチーにおける心筋の進展を阻止し及び心筋の治癒を可能にするための薬剤としての、デノボセラミド合成調節剤の有用性は、未だ明示されていない。
【0011】
悪液質は、骨格筋質量及び脂肪組織の損失を伴う消耗性シンドロームである(Frost RA及びラングLang CH.;Curr.Opin.Clin.Nutrit.Metab.Care.,255−263頁(2005年))。このシンドロームは、感染症、炎症、癌(Tisdale MJ;Langenbecks Arch Surg.,389:299−305頁(2004年))又は関節リュウマチのような幾つかの慢性疾患(Rall LC及びRoubenoff,R,Rheumatol 43:1219−23頁(2004年))に対応して見出される。種々のサイトカインの放出がこのシンドロームにおいて関与し、TNFとIL−6の双方が主要プレイヤーとして認識されている。従って、悪液質は慢性炎症状態として考えることができる。セラミドはよく知られたTNFシグナル伝達の主要エフェクターである。加えて、セラミドはIL−6の発現を調節することが知られている(Shinoda J,Kozawa O,Tokuda
H,Uematsu,T.Cell Signal.,11:435−41頁(1999年);Coroneos,E;Wang,Y;Panuska,JR;Templeton,DJ;Kester,M.;Biochem J;316:13−7頁(1996年))。既存のデータは、デノボセラミド合成がこの炎症状態に付いても同様にシグナルとして中心的な役割を演じていることを我々に信じらせるに至った。従って我々は、セラミドを介するTNF及び/又はIL−6シグナル伝達の阻害はこの消耗性シンドロームを有する患者に臨床的有益性を提供するであろうことを確信する。
【0012】
Rosenberg等は、移植のための、例えば、糖尿病の治療における使用のための膵島の分離は、分離の結果として得られる低い生産性により困難であることを示し、そしてこれらの低い生産性は主にβ細胞アポトーシスによるものであることを示した。膵島分離の結果として生じる構造的及び機能的な変化は膵島細胞死を導く(Rosenberg
L,Wang R,Paraskevas S,Maysinger D.;Surgery,126:39398頁(1999年)。分離されたヒト膵島における細胞損失はアポトーシスにより生じる。Paraskevas S,Maysinger D,Wang R,Duguid TP,Rosenberg L;Pancreas,20(3):270−76頁(2000年)。I型糖尿病の治療のための膵島移植が直面する課題。Rother KI,Harlan DM,J.Clin.Invest.114:877−83頁(2004年))。
【0013】
Beattie等は、種々の治療(例えば、トレハロース、培地からのアルギニン(Arg)の除去等)が移植可能な膵島の収量を改善し得ることを報告するが、実質的な細胞死は残される(Beattie GM,Leibowitz G,Lopez AD,Levine F,Hayek A,Cell Transplant.9:431−38頁)(2000年))。カスパーゼ阻害剤による細胞及び組織の処理は、種々の代謝的損
傷への応答において、アポトーシスの部分的な阻止を導くが、アポトーシスは、多くの機構により引き起こされ得るものであり、カスパーゼ阻害剤は、研究されている具体的な事例次第で有用な効果又は限界的効果を有し得るものである。哺乳類細胞培養中の細胞死の制限のためのカスパーゼ阻害剤の研究。Sauerwald TM,Oyler GA,Betenbaugh MJ.)(Biotechnol.Bioeng.,81:329−40頁(2003年))。
【0014】
セラミドのデノボ合成阻害の研究は、そのような阻害が多くの重要な状況において抗アポトーシス効果を有するよう思われることを示した。遊離パルミチン酸及び/又はグルコースの高濃度の組み合わせでの治療に応答するβ細胞アポトーシスは、例えば、フモニシンB1(セラミドシンターゼの阻害剤)での治療により阻止され得る(Maedler,K.Diabetes,52:726−33頁(2003年))。従って、デノボセラミド合成の阻害がアポトーシスの事象の予防に適用され得ることは可能である。しかし、セラミドシンターゼを阻害する薬剤を用いた治療は、フモニシンB1の摂取により観られたように、結果として毒性効果を生じることを示してきた(Bennett JW及びKlich M.,Clin.Microbiol.Rev.,16:497−516頁(2003年))。SPTの阻害は膵臓β細胞のアポトーシスを予防するためのもう一つの方法を提供するが、SPTの調節剤が、移植に先立って培養中の膵臓β細胞の損失を予防することは示されてこなかった。
【0015】
従って、デノボセラミド合成の調節剤は、エフェクター薬剤としてセラミドを使用して、炎症成分を併うさまざまなヒト及び動物疾患のための重要な新規の治療剤を提供し得る。しかし、デノボセラミド合成経路の幾つかの点における障害(例えば、フモニシンB1を用いたと同様に)は、毒性を導くことが知られている。セリンパルミトイルトランスフェラーゼの濃度における阻害は、しかしながら、無毒な細胞成分セリン及びパルミトイルCoAを構築することを導く。
【0016】
公知のSPTの阻害剤は、シクロセリン、D−セリン、ミリオシン、スフィンゴフンギンB、ビリディオフンギン(viridiofunngin)A、及びリポキサマイシン(lipoxamycin)を含む。ミリオシンのような、これらの天然生成物の多くは、許容不能な毒性を有することが示されてきた。更に、これらのセラミドは、部分的な保護活性しか付与しない。加えて、シクロセリンのような幾つかのSPT阻害剤は、弱い阻害しか示さず、低い特異性しか提示しない。構造的な研究は、天然のセラミドが出発物質又は生成物の活性部位で結合する形に類似していることを示唆する(Hanada K.,等、Biochem.Biopys.Acta,1632:16−30頁(2003年))。
【0017】
SPT阻害剤ミリオシンは強力な免疫抑制分子であることが知られている。多数の類似体がその構造に基づいて設計されてきた。以下で説明する化合物FTY720に関連するもののようなミリオシンの免疫抑制活性を有する構造は、SPTを阻害しない。加えて、化合物2として以下に示される、FTY720のカルボン酸誘導体は、FTY720様活性についての免疫抑制アッセイにおいて提示されたようにSPTに対する活性を示さず(Kiuchi M.等、J.Med.Chem.,43:2946−61頁(2000年))、そしてそれは、結合親和性それ自体が欠如しているわけではないにしろ、極端に低い溶解性のため不活性となることが示唆された。
【化1】

【0018】
SPTの調節はインシュリン抵抗性を弱めるための、及び、膵臓β細胞の損失を予防するための魅力的な手段を提示する。SPTの阻害剤は、特に、T2Dの治療のための新規療法を提示する。これらの薬剤は、膵島移植及び肝臓移植のような移植のための組織の保護のために有益であり得る。上記のように、そのような阻害剤は、心筋ミオパチー、アテローム性動脈硬化症、肝臓障害、再かん流傷害、アルツハイマー病、アポトーシスが一因となるI型糖尿病及び他の炎症性疾患の治療においても有益に使用され得る。強力で選択的なSPTの阻害剤である生物学的に利用可能な薬剤は、これまで入手可能ではなかった。非毒性の、生物学的に利用可能な、強力で及び選択的なSPTの調節剤は、ここで開示されたような疾患及び状態並びにアポトーシスに関連し、当業者に公知のようにTNFが一因となる他の疾患及び状態の治療のための重要な新規薬剤であることが立証され得る。そのような化合物の創出及びこれらの適応症の治療のためのそれらの有用性は、これ以前に示されてこなかった。
【非特許文献1】Zimmet P,等,Nature,414:783−7頁(2001年)
【非特許文献2】Schimitz−Pfiffer C等,J.Biol.Chem.,274:2402−10頁(1999年)
【非特許文献3】Shimabukuro M等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:2498−2502頁(1998年)
【非特許文献4】Shimabukuro等,J.Biol.Chem.,273:32487−90頁(1998年)
【非特許文献5】Sawada,M,等,Cell Death Differ.,11:997−1008頁(2004年)
【非特許文献6】Meyer,SG,等,Biochim Biophys Acta.1643(1−3):1−4頁(2003年)
【非特許文献7】Kajita,K,等,Diabetes.Res.Cli.Pract.,66Suppl 1:S79−83頁(2004年)
【非特許文献8】Ding,WX及びYin,XM,J.Cell.Mol.Med.8:445−54頁(2004年)
【非特許文献9】Kanzler S.,等,Semin Cancer Biol.10(3):173−84頁(2000年)
【非特許文献10】Ayasolla K.,等,Free Radic.Biol.Med.,37(3):325−38頁(2004)
【非特許文献11】Cutler RG,等,Proc Natl.Acad.Sci.,101:2070−5頁(2004年)
【非特許文献12】Esmon,CT.Crosstalk between inflammation and thrombosis,Maturitas,47:305−14頁(2004年)
【非特許文献13】Wencker D,等,J.Clin.Invest.,111:1497−1504頁(2003年)
【非特許文献14】McTiernan,CF,等,Curr Cardiol Rep.2(3):189−97頁(2000年)
【非特許文献15】Frost RA及びLang CH.;Curr.Opin.Clin.Nutrit.Metab.Care.,255−263頁(2005年)
【非特許文献16】Tisdale MJ;Langenbecks Arch Surg.,389:299−305頁(2004年)
【非特許文献17】Rall LC及びRoubenoff,R,Rheumatol 43:1219−23頁(2004年)
【非特許文献18】Shinoda J,Kozawa O,Tokuda H,Uematsu,T.Cell Signal.,11:435−41頁(1999年)
【非特許文献19】Coroneos,E;Wang,Y;Panuska,JR;Templeton,DJ;Kester,M.;Biochem J;316:13−7頁(1996年)
【非特許文献20】Rosenberg L,Wang R,Paraskevas S,Maysinger D.;Surgery,126:39398頁(1999年)
【非特許文献21】Paraskevas S,Maysinger D,Wang R,Duguid TP,Rosenberg L;Pancreas,20(3):270−76頁(2000年)
【非特許文献22】Rother KI,Harlan DM,J.Clin.Invest.114:877−83頁(2004年)
【非特許文献23】Beattie GM,Leibowitz G,Lopez AD,Levine F,Hayek A,Cell Transplant.9:431−38頁)(2000年)
【非特許文献24】Sauerwald TM,Oyler GA,Betenbaugh MJ.,Biotechnol.Bioeng.,81:329−40頁(2003年)
【非特許文献25】Maedler,K.Diabetes,52:726−33頁(2003年)
【非特許文献26】Bennett JW及びKlich M.,Clin.Microbiol.Rev.,16:497−516頁(2003年)
【非特許文献27】Hanada K.,等、Biochem.Biopys.Acta,1632:16−30頁(2003年)
【非特許文献28】Kiuchi M.等、J.Med.Chem.,43:2946−61頁(2000年)
【発明の開示】
【0019】
発明の詳細
ここに示されるものは新規な化合物及び使用方法である。好ましい態様において、ここで提供される化合物は、酵素、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)に対応する活性を提示する。
【0020】
ここで提供される化合物は種々のヒトの疾患及び状態の治療において使用され得る。好ましい態様において、化合物は、T2D、インシュリン抵抗性、膵臓β細胞アポトーシス又は肥満のような疾患を治療するために使用される。別の好ましい態様において、化合物は、血栓形成促進状態、鬱血性心不全、心筋梗塞、高血圧、異常脂質血症又はメタボリックシンドロームの他の症状(即ち、シンドロームX)を治療するために使用される。更なる別の好ましい態様において、化合物は、心臓血管系、敗血症及び悪液質の炎症性疾患のような炎症性疾患を治療するために使用される。心臓血管系の例示的な炎症性疾患には、アテローム性動脈硬化症が含まれる。更なる別の好ましい態様において、これらの化合物は、上記のような、ウイルス性の、アルコール関連の、再かん流傷害からの肝臓障害を予防するために使用される。更なる別の好ましい態様において、これらの化合物は、単独で
又は現在承認されているカクテル及び/又はカスパーゼ阻害剤と組み合わせて、膵臓肝臓細胞及び/又は肝臓移植を保護し及び収量を増加させるために使用される。
【0021】
同様に提供されるものは、別の活性薬剤の治療有効量との組み合わせにおける、ここで示された化合物を含む組成物である。例示的な薬剤には、インシュリン、インシュリン類似体、インクレチン、インクレチン類似体、グルカゴン様ペプチド、グルカゴン様ペプチド類似体、エキセンディン、エキセンディン類似体、PACAP及びVIP類似体、スルホニルウレア、ビグアニド、α−グルコシダーゼ阻害剤、アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤、カスパーゼ阻害剤、δ3不飽和脂肪酸、ポリ不飽和脂肪酸及びPPARリガンドが含まれる。従って、種々の疾患を治療するための方法の態様には、ここに示される化合物と別の活性薬剤の治療有効量の同時投与又はここで提供される組み合せ組成物の投与が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
詳細な記載
本明細書中で使用されるように、“a”及び“an”は1又はそれ以上を意味する。請求項において使用されるように、用語“含む(comprising)”と組み合せて使用される場合、用語“a”及び“an”は1又はそれ以上を意味する。ここで使用されるように、“別の(another)”は少なくとも2番目又はそれ以上を意味する。
【0023】
今、本発明の種々の態様及び特定の適用に対し詳細に言及する。本発明が種々の態様及び用途と組み合せて記載されるが、そのような態様及び用途は本発明を限定することを意図しないことが理解される。むしろ、本発明は、本発明の精神及び範囲内において含まれ得る変形物、改良物及び等価物を網羅することを意図する。加えて、この開示の全範囲にわたり、種々の特許、特許出願、ウェブサイト、が参照され、そして他に指示がない限り、それぞれはその全てが参照としてここに組み込まれる。ここに記述される全ての刊行物は、本発明の試薬、方法論及びコンセプトの記載及び開示目的のために示される。本記載のいずれも、これらの文献がここに記載された本発明に関連する先行技術であるとの承認として解釈されるものではない。
【0024】
I.化合物
ここに示されるものは、式(I):
【化2】

{式中、R1は、H又は所望により置換された低級アルキル基、アリール基、アラルキル
基又はアルキルオキシアルキル基を表し;
各R2は独立して、H、保護基又は−C(=O)−CHRa−NHRb(式中、Raはアルキル基、アリール基、アシル基、ケト基、アジド基、ヒドロキシル基、ヒドラジン基、シアノ基、ハロゲン原子、ヒドラジド基、アルケニル基、アルキニル基、エーテル基、チオール基、セレノ基、スルホニル基、ボレート基、ボロネート基、ホスホ基、ホスホノ基、ホスフィン基、複素環基、エノン基、イミン基、アルデヒド基、エステル基、チオ酸基、ヒドロキシルアミン基、アミノ基及びそれらの組み合せからなる群より選択され;及び
bはH又はアミノ保護基を表す。)を表し;
各V及びZは独立して、(CRcdn、O、NRe、S、Ar、CRcdAr、OAr、NR4Ar、SAr又はAr(式中、各Rc及びRdは独立して、H、低級アルキル基、O
H、O−低級アルキル基を表すか又はRc及びRdは一緒になって、=O、=N−OH、=N−O−低級アルキル基又は=N−O−CH2CH2−O−CH3を表し;
eはH、低級アルキル基又は−CH2CH2−O−CH3を表し;及び
nは1ないし7を表す。)を表し;
qは0ないし3を表し;
Arは、所望により置換されたアリール基又はヘテロアリール基を表し;
uは0又は1を表し;
各Xは独立して、H又はハロゲン原子を表し;及び
mは4ないし12を表す。}に対応する新規化合物及びその医薬的に許容可能な塩である。
【0025】
本発明の幾つかの態様において、式(I)で表される化合物は、
【化3】

を含まない。
【0026】
好ましい式(I)で表される化合物は、R1がメチル基、エチル基、イソプロピル基等
のような低級アルキル基であるものを含む。更なる好ましい態様は、R1がCH3−O−CH2−CH2−のようなアルキルオキシアルキル基、HO−CH2−CH2−O−、HO−(CH2−CH2−O−)p−、ヒドロキシエチルアルコール、ヒドロキシプロピルアルコー
ル、ヒドロキシエチルオキシエチルアルコール、及びポリエチレングリコール又はそれらの誘導体である化合物を含む。他の好ましい式(I)で表される化合物は、Xがフッ素原子のようなハロゲン原子である。更なる好ましい式(I)で表される化合物は、ZがNR4、O又はSであるものを含む。別の好ましい態様は、Arが任意に置換されたヘテロア
リール基である式(I)で表される化合物を含む。別の好ましい態様は、Arが、5−5、5−6又は6−6環系のような、任意に置換された縮合環系である式(I)で表される化合物を含む。
【0027】
一つの態様において、式(I)で表される化合物は、式(II)
【化4】

{式中、LはCH2、CHRf、CRfg、O、NRh、S、Ar、CH2Ar、CHRf
r、CRfgAr、OAr、NRhAr、SAr又はArAr(式中、RfはH、低級アル
キル基、OH、O−低級アルキル基を表し、
gはHを表すか又はRf及びRgは一緒になって、=O、=N−OH、=N−O−低級ア
ルキル基又は=N−O−CH2CH2−O−CH3を表し、及び
hはH、低級アルキル基又は−CH2CH2−O−CH3を表す。)を表す。}に対応する。
【0028】
一つの態様において、式(I)で表される化合物は、式(IIA)
【化5】

(式中、それぞれのYは、独立して、C、CH、O、S、N又はNHを表す。)に対応する。
【0029】
別の態様において、式(I)で表される化合物は、式(IIB)
【化6】

(式中、それぞれのWは、独立して、C、CH、N又はNHを表す。)に対応する。
【0030】
更なる別の態様において、式(I)で表される化合物は、式(IIC)
【化7】

(式中、それぞれのYは、独立して、C、CH、O、S、N又はNHを表す。)に対応す
る。
【0031】
別の態様において、式(I)で表される化合物は、式(IID)
【化8】

に対応する。
【0032】
別の態様において、式(I)で表される化合物は、式(IIE)
【化9】

に対応する。
【0033】
別の態様において、式(I)で表される化合物は、式(IIF)
【化10】

に対応する。
【0034】
更なる態様において、式(I)で表される化合物は、式(III)
【化11】

に対応する。
【0035】
別の態様において、式(I)で表される化合物は、式(IIIA)
【化12】

に対応する。
【0036】
別の態様において、式(I)で表される化合物は、式(IIIB)
【化13】

に対応する。
【0037】
別の態様において、式(I)で表される化合物は、式(IIIC)
【化14】

(式中、それぞれのYは、独立して、C、CH、O、S、N又はNHを表す。)に対応する。
【0038】
別の態様において、式(I)で表される化合物は、式(IIID)
【化15】

(式中、それぞれのYは、独立して、C、CH、O、S、N又はNHを表す。)に対応する。
【0039】
別の態様において、式(I)で表される化合物は、式(IIIE)
【化16】

(式中、それぞれのYは、独立して、C、CH、O、S、N又はNHを表す。)に対応する。
【0040】
別の態様において、式(I)で表される化合物は、式(IIIF)
【化17】

(式中、それぞれのWは、独立して、C、CH、N又はNHを表す。)に対応する。
【0041】
別の態様において、式(I)で表される化合物は、式(IIIG)
【化18】

(式中、それぞれのWは、独立して、C、CH、N又はNHを表す。)に対応する。
【0042】
別の態様において、式(I)で表される化合物は、式(IIIH)
【化19】

(式中、それぞれのWは、独立して、C、CH、N又はNHを表す。)に対応する。
【0043】
別の態様において、式(I)で表される化合物は、式(IIIJ)
【化20】

(式中、それぞれのYは、独立して、C、CH、O、S、N又はNHを表す。)に対応する。
【0044】
別の態様において、式(I)で表される化合物は、式(IIIK)
【化21】

(式中、それぞれのYは、独立して、C、CH、O、S、N又はNHを表す。)に対応する。
【0045】
別の態様において、式(I)で表される化合物は、式(IIIL)
【化22】

(式中、それぞれのYは、独立して、C、CH、O、S、N又はNHを表す。)に対応する。
【0046】
更なる別の態様において、式(I)で表される化合物のプロドラッグ形態が提示される。化合物のプロドラッグ形態は、経口投与のために最適であり、典型的には酸活性種のエステルに対応する。プロドラッグの活性種は、活性薬剤化合物を製造するために使用され得る。
【0047】
一つの態様において、プロドラッグ化合物は式(IIIM)
【化23】

(式中、Raは、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、
グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、ピロリジン及びセレノシステインの側鎖を表す。)に対応する。
【0048】
式(IIIM)に対応する代表的なプロドラッグ化合物は、式(IIIN)
【化24】

に対応する化合物を含む。
【0049】
別の態様において、プロドラッグ化合物は、式(IIIP)
【化25】

(式中、Raは、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、
グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、ピロリジン及びセレノシステインの側鎖を表す。)に対応する。
【0050】
式(IIIP)に対応する代表的なプロドラッグ化合物は、式(IIIQ)
【化26】

に対応する化合物を含む。
【0051】
ここで提供される例示的な化合物を以下の表1に列記した。
表1−代表的な化合物
【表1A】

【表1B】

【表1C】

【0052】
II.定義
ここで示される化合物は同位体で標識された化合物を包含し、それらは1個以上の原子が、天然において通常観察される原子量又は質量数とは異なる原子量又は質量数を有する原子によって置換されていること以外は、式(I)で提示されるものと同一である。本発明の化合物中に組み込まれ得る同位体の例には、それぞれ2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、35S、18F、36Clのような、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、フッ素原子及び塩素原子の同位体が含まれる。前述の同位体及び/又は他の原子の他の同位体を含む、ここに示される化合物、そのプロドラッグ及び前記化合物又は前記プロドラッグの医薬的に許容可能な塩は、本発明の範囲内である。本発明の、同位体で標識された特定の化合物、例えば、3H及び14Cのような放射性同位体が組み込まれたものは、薬剤
及び/又は基質組織分布試験において有用である。3H及び14Cは、それらの製造の容易
さ及び検出能において好ましい。更に、重水素、即ち、2Hのようなより重い同位体での
置換は、より大きな代謝安定性に起因する特定の治療的利点を提供することができ、例えば、インビボ半減期を増大するか又は必要薬量を減少し、従って、ある状況において好ましいものであり得る。ここで示される同位体で標識された化合物及びそのプロドラッグは、一般に、同位体で標識されていない試薬を容易に入手できる同位体で標識された試薬に置き換えることにより、以下に示すスキーム中及び/又は実施例中で開示された手順を行
うことにより製造することができる。
【0053】
ここで示される化合物の幾つかは不斉炭素原子を有し、そのため、光学異性体又は立体異性体として存在する。立体異性体の混合物は、公知の方法により、例えば、クロマトグラフィー及び/又は分別結晶化により、それらの物理化学的差異に基づいて、各々の立体異性体へ分離され得る。光学異性体は、光学異性体の混合物を適当な光学活性化合物(例えば、アルコール)との反応により立体異性体の混合物へと変換し、該立体異性体を分離し、それぞれの立体異性体を対応する純粋な光学異性体へ変換する(例えば、加水分解)ことにより分離され得る。光学異性体は、不斉試薬を用いても合成することができ、例えば、ミリオシン及びその類似体のαアルキルアミノ酸頭部基を製造できる(例えば、Seebach,D.等、Helv.Chim.Acta.,70:1194−1216頁(1987年);Hale,JJ,等、Bio−org.Med.Chem.Lett.,12:4803−07頁(2004年);Kobayashi,S.等、J.Am.Chem.Soc.,120:908−19頁(1998年))。そのほかにも、天然物からのキラルシントンを用いる不斉中心の不斉合成は、そのような合成、例えば、d−マンノースからのミリオシンの合成(Oishi,T.等、Chemical Commun.1932−33頁(2001年);及びその中でのミリオシン合成への参照)及び単離された天然ミリオシンからのミリオシン類似体の合成(Chen,JK,等、Chem Biol.6,221−35頁(1999年);Fujita,T.等J.Med.Chem.39、4451−59頁(1996年))に対する簡易な手法である。加えて、不斉中心の一つを優先的に修飾し、それにより光学異性体の分離又は相互変換を可能にする酵素(遊離の又は担持された)の使用が本技術において周知であり(例えば、Wang,Y.,−F.,等(1988年)J.Am.Chem.Soc.110、7200−5頁)、医薬品の製造において大きな有用性を有する。立体異性体、光学異性体及びそれらの混合物を含む全てのそのような異性体は、本発明の一部分として考慮される。
【0054】
当業者は、ここに示された化合物幾つかが、数種の互変異性体で存在し得ることを理解するだろう。全てのそのような互変異性体は、本発明の一部分として考慮される。例えば、ここに示されるあらゆる化合物の全てのエノール−ケト体もまた、本発明に含まれる。
【0055】
本発明の化合物の幾つかは酸性であり、医薬的に許容可能なカチオン(陽イオン)と塩を形成し得る。本発明の化合物の幾つかは塩基性であり、従って、医薬的に許容可能なアニオン(陰イオン)と塩を形成し得る。二価塩を含む全てのそれらの塩は、本発明の範囲内のものであり、それらは慣用の方法により製造され得る。例えば、塩は単に、水性の、非水性の又は部分的に水性の媒体の何れかの中で、酸性及び塩基性物を接触させることにより製造し得る。塩は、濾過、無溶媒での沈殿に続く濾過、溶媒の留去、又は水性溶液の場合において、適当ならば、凍結乾燥の何れかにより回収される。
【0056】
加えて、ここで示される化合物は、それらの代謝物、水和物又は溶媒和物を包含し、それらの全ては本発明の範囲内のものである。
【0057】
用語“置換された(substituted)”は、化学的に実現可能な何れかの置換基での、何れかの炭素原子又はヘテロ原子における置換を言及する。代表的な置換には、ハロゲン置換又は何れかのヘテロ原子含有基、例えば、アルコキシ基、ホスホリル基、スルフヒドリル基等での置換が含まれる。
【0058】
用語“アルキル”は、直鎖、分岐又は環状炭化水素基を言及する。そのようなアルキル基(指定された鎖長が特定の例を含むと前提して)の例示は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、第三ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基
、3−メチルブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基である。用語“低級アルキル基”は、炭素原子数1ないし20を含む、上記で定義された通りのアルキル基を言及する。“置換されたアルキル基”は、上記のように置換されたアルキル基を言及し、ハロアルキル基、例えば、CF3、CHF2、CH2F他により例示される。
【0059】
用語“アリール”は炭素原子数3ないし20を含む如何なる芳香族基をも言及する。アリール基はまた、5−5、5−6及び6−6環系のような縮合環系も包含する。代表的なアリール基には、フェニル基、ビフェニル基、アントラシル基、ノルボルニル基等が含まれる。アリール基は、上で規定された定義に従って置換され得る。
【0060】
用語“ヘテロアリール”は、芳香環の中に少なくとも1個以上のヘテロ原子を含む如何なるアリール基をも言及する。ヘテロアリール基はまた、5−5、5−6及び6−6環系のような縮合環系も包含する。代表的なヘテロアリール基は、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、フェニル基、ピリジニル基、ピリミジル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、ベンズチアゾリル基又はベンズオキサゾリル基等である。ヘテロアリール基は、上で規定された定義に従って置換され得る。
【0061】
用語“アラルキル”又は“アリールアルキル”は、上記のようなアルキル基を含有するアリール基を言及する。アラルキル又はアリールアルキル基は、アルキル部分又はアリール部分から付加され得る。
【0062】
用語“アルコキシ”は酸素原子を介して結合されたアルキル基を言及する。例示的なアルコキシ基(指定された鎖長が特定の例を含むと前提して)は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、第三ブトキシ基、ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、第三ペントキシ基、ヘキソキシ基、イソヘキソキシ基、ヘプトキシ基及びオクトキシ基である。アルコキシ基は、上で規定された定義に従って置換され得る。
【0063】
用語“アルコキシアルキル”は、上記のようにアルキル基を含有するアルコキシ基を言及する。アルコキシアルキル基は、上で規定された定義に従って置換され得る。
【0064】
用語“ハロゲン”は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又はフッ素原子を言及する。
【0065】
用語“調節剤”は直接的又は間接的に標的物と相互作用する分子を意味する。該相互作用は、アゴニスト、アンタゴニスト等を含むが、それらに限定されるものではない。
【0066】
用語“アゴニスト”は、別の分子の活性又は受容体部位の活性を増加させる、化合物、薬剤、酵素活性化剤又はホルモンのような分子を意味する。
【0067】
用語“アンタゴニスト”は、別の分子の作用又は受容体部位の活性を減少又は阻止する、化合物、薬剤、酵素阻害剤又はホルモンのような分子を意味する。
【0068】
用語“有効量”又は“治療有効量”は、望ましい生物学的結果を提供するのに十分な薬剤の量を言及する。その結果は、疾患の徴候、症状又は原因の減少及び/又は緩和或いは他の望ましい如何なる生物系の変化でもあり得る。例えば、治療的な使用のための“有効量”は、疾患における臨床的に明白な減少を提供するために要求される、ここで開示されたような化合物を含む組成物の量である。全ての個々の場合における適当な“有効”量は、経常的な実験を使用して当業者により決定され得る。
【0069】
ここで使用されるように、用語“治療(treat)”又は“治療(treatment)”は同じ意味で使用され、疾患の発症の延期及び/又は今後又は現在発症することが見込まれる症状の重篤度の減少を示すことを意味する。用語“更なる”は、現在の症状を改善すること、更なる症状を予防すること及び内在する代謝的な症状の原因を改善又は予防することを含む。
【0070】
“医薬的に許容可能な”又は“薬理的に許容可能な”は、生物学的に又はその他に望ましくないものでない材料、即ち、該材料は、如何なる望ましくない効果も起こすことなく、又は含まれる如何なる組成物の成分とも有害な様式で相互作用することなく患者に投与され得る材料であることを意味する。
【0071】
III.化合物の製造
ここで提供される化合物は当業者に周知の合成方法により製造され得る。使用され得る代表的な製造方法が論じられる例示的な文献は、Kiuchi,等、J.Med.Chem.,43:2946−61頁(2000年);Seidel G.等、J.Org.Chem.,69:3950−52頁(2004年);Clemens J.J.等、Bioorg.Med.Chem.Lett.,14:4903−06頁(2004年);Durand,P.等、Synthesis,506:6頁(2000年);Hale等、Bioorg.Med.Chem.Lett.,14:3351−55頁(2004年);Seebach,D.等、Helv.Chim.Acta.,70:1194−1216頁(1987年);Oishi,T,等(2001年)、Chem.Commun.1932−3頁;Wang,Y.−F.等、J.Am.Chem.Soc.110,7200−05頁(1988年);Pipik,B,等、Synth.Commun.34,1863−70頁(2004年);を含み、それらの全ての開示は参照としてここに組み込まれる。
【0072】
合成の一般法、特にエステルの合成は“Comprehensive Organic
Transformations”第2版、Larock,RC,Wiley,ニューヨーク、1999年及び“Protective Group in Organic Synthesis”,Greene T and Wuts PGM,第3版、Wiley,ニューヨーク、1999年において提供される。
【0073】
Kiuchi等(Kiuchi M,等、J.Med,Chem.,43:2946−61頁(2000年))は、化合物2の合成のための手順を論じている。本明細書における化合物の代表的な製造方法は、該文献に報告された合成前駆体を含み得る。ハロゲン化アルキルからCα−置換セリン部分を製造する(又は対応するヒドロキシル又はアルデヒド構造から変換によりハロゲン化アルキルにする)ための一般的な手順(スキーム1)は本発明の化合物を製造するために広範に使用し得る。以下の合成スキームにおいて示されるものは、本発明の化合物を製造するための例示的な方法である。
【0074】
以下のスキーム1は、化合物2を製造するためのKiuchi等において報告された製造ルートを示す。
【化27】

【0075】
スキーム2は、向上した水溶性を有する類似体の製造のための類似の合成手順を示す。
【化28】

【0076】
以下のスキーム3で示されるように、頭部基のα及びβに2つのヒドロキシル官能基を
含むミリオシンの類似体は、Chen,JK,等(1999年)により報告された手法の変形を用いて本来のミリオシンから製造され得る。以下に示されるのは、ヨウ化アルキル化合物とのWittigタイプの反応を使用することにより、R´において種々の官能基を有する広範な類似体を得るために、Chen等において報告された出発物質を用いる例示的な合成手順である。例えば、R´は、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、アラルキル基等であり得る。スキーム3は不斉製造であり、対応する光学異性体は、一級のOH及びNH/CO2H官能基を保護し、続いて二級のOH基における反転化学によりこ
の手法を用いて製造し得る。例示的な化合物、13、17、18及び19は、以下に示される手法を用いて対応するヨウ化アルキル化合物から容易に製造される。
【化29】

【0077】
セリン頭部基のα位に1個のヒドロキシル官能基を有する化合物は、以下のスキーム4中で示された合成方法で合成され得る。類似の試薬が、実際に使用される基質に依存して、より多い又はより少ない収率を伴ってこれらの合成工程を行うために使用され得る。例示的な化合物、14、19及び20がスキーム4を使用して容易に製造される。
【化30】

【0078】
同様に、セリン様頭部基のβ位に1個のヒドロキシル官能基を有する化合物(例えば、化合物20)は、スキーム5に従う、容易に入手可能な、対応するα−ハロケトン又はα−ヒドロキシケトンから開始される経路を介して製造される。
【化31】

【0079】
IV.医薬組成物
ここに示される組成物はここで提供される化合物及び医薬的に許容可能なキャリアを含む。
【0080】
A.処方
本発明の化合物を含む医薬的に有用な組成物は、医薬的に許容可能なキャリアの混合によるような公知の方法に従って処方され得る。処方のそのようなキャリア及び方法の例は、Remington´s Pharmaceutical Science中に見出さ
れ得る。効果的な投与のために好適な医薬的に許容可能な組成物を形成するために、そのような組成物は化合物、例えば、本発明のプロドラッグ又は活性種(例えば、エステル又はプロドラッグの対応する酸)の有効量を含む。
【0081】
本発明の化合物を投与するための好適な製剤は、局所の、経皮の、経口の、全身の及び非経口の医薬製剤を含む。ここで示される化合物含む組成物は、投与のための慣用の賦形剤において多種多様の治療的な剤形において投与され得る。例えば、化合物又は調節剤は、錠剤、カプセル剤(それぞれ徐放及び持続放出処方を含む)、丸薬(pills)、粉剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、液剤、懸濁剤、シロップ及び乳剤のような経口剤形において、又は経皮デリバリー若しくは注入により投与され得る。同様にそれらはまた、静脈内の(急速静注及び輸液の両方)、腹腔内の、皮下の、血管閉塞を伴うか又は伴わない局所の、経皮の又は筋肉内の様式で投与され得、使用される全ての様式は医薬分野の当業者に周知である。本発明の化合物は、経皮デリバリー又は注射器若しくは無針注入手段による注入を含むがそれらに限定されない、広範な機構によりデリバリー(送達)され得る。
【0082】
B.薬量
態様には、ここに示された化合物の有効量を含む医薬組成物が含まれる。ここに開示された化合物の有効量は、全ての潜在的な毒性を最小化しながら、セリンパルミトイルトランスフェラーゼの最適な阻害を得るための日常的な試験により特定され得る。
【0083】
当業者に周知のように、有効量は日常的に決定され得、患者個人の状態、体重、性別、年齢、患者の病状、治療される状態の重篤度、投与経路、患者の腎機能及び肝機能及び使用される特定の化合物のような種々の要因に従って変化し得る。通常の技術を有する医師又は獣医は、状態の進行を予防し、対抗し又は阻むの必要な薬剤の有効量を容易に決定して処方することができる。毒性を伴わない効果が得られる範囲内の、薬剤の濃度の達成における最適な精密性は、標的部位への薬剤利用の動力学に基づくレジメを必要とする。これは、薬剤の分布、平衡及び排泄の考慮を含む。
【0084】
要求される化合物の有効で、しかし非毒性の量は、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ調節剤として使用され得る。本発明化合物の投与のために意図される薬量は、患者1人、1日当たり0.01ないし1,000mgの範囲である。経口投与のため、組成物は、好ましくは、治療される患者へ投与される症状調節のための活性成分が0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0及び50.0mg含まれる分割錠又は非分割錠の形態で提供される。薬量もまた、体重により変化し、例えば、1日当たり体重の約0.0001mg/kgないし約100mg/kg、好ましくは、1日当たり体重の0.001mg/kgないし約10mg/kgの範囲である。
【0085】
化合物は1日1回投与で投与され得るか又は総1日薬量が1日2回、3回又は4回の分割投与で投与され得る。経皮デリバリーシステムの形態で投与するために、薬量投与は投与レジメの間中、断続的よりもむしろ連続的である。
【0086】
本発明の化合物の薬量は、他の治療剤と組み合わされる場合調整される。これらの種々の薬剤の薬量は、何れかの薬剤が単独で使用されるよりも病状が減少されるところの相乗的結果を達成するために、独立して最適化されて組み合わされ得る。加えて、他の薬剤の同時投与又は連続投与が望ましい。
【0087】
C.誘導体
ここに示される化合物の態様は“化学的誘導体”を含む。化学的誘導体は、ここに示さ
れた化合物及び該化合物の溶解性、半減期、吸収等を改善する更なる部分を有するものを含む。化学的誘導体はまた、望ましくない副作用を少なくするか又は毒性を減少させる部分を含有する。そのような部分の例は、Remington´s Pharmaceutical Scienceのような種々のテキスト中に記載されており、また、当業者に周知である。
【0088】
D.キャリア及び賦形剤
ここに示される化合物は、経口錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、シロップ等である、対象とする投与形態に関して好適に選択され、慣用の医薬実務に合致する、好適な医薬の希釈剤、賦形剤又はキャリア(ここではまとめて「キャリア材料」として言及する。)と混合されて投与され得る。
【0089】
錠剤又はカプセル剤の形態における経口投与のために、活性薬剤成分は、エタノール、グリセロール、水等のような、経口の、非毒性の医薬的に許容可能な不活性キャリアと組み合され得る。更に、望ましいか又は必要な場合、好適な結合剤、潤滑剤、崩壊剤及び着色剤もまた、混合物中へ添加され得る。好適な結合剤は、限定されないが、デンプン、ゼラチン、グルコース又はβ−ラクトースのような天然糖、トウモロコシ甘味料、アカシア、トラガカント又はアルギン酸ナトリウムのような天然及び合成ガム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングルコール、ワックス等を含む。これらの投与形態において使用される潤滑剤は、限定されないが、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等を含む。崩壊剤は、限定されないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム等を含む。
【0090】
液体形態のために、活性薬剤成分は、合成及び天然のガム、例えば、トラガカント、アカシア、メチルセルロース等のような、好適には香りの付いた懸濁剤又は分散剤と組み合わせられ得る。使用され得る他の分散剤は、グリセリン等を含む。
【0091】
非経口投与のために、無菌の懸濁液又は溶液が望ましい。静脈内投与が望まれる場合、一般に好適な防腐剤を含む等浸透圧の配合物が使用される。
【0092】
本発明の化合物を含む局所配合物は、アルコール、アロエベラゲル、アラントイン、グリセリン、ビタミンA及びE油、鉱油、PPG2ミリスチルプロピオネート等のような当該分野において周知の種々のキャリア材料と混合して、例えば、アルコール溶液、局所クレンザー、洗顔クリーム、スキンゲル、スキンローション及びクリーム又はゲル配合物におけるシャンプーを形成し得る。
【0093】
化合物はまた、小さな単層ベシクル、大きな単層ベシクル及び複層ベシクルのようなリポソームデリバリーシステムの形態において投与され得る。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリンのような種々のリン脂質から形成され得る。
【0094】
ここに示される化合物はまた、該化合物が結合された個別のキャリアとしてのモノクローナル抗体の使用によりデリバリーされ得る。化合物は、目標設定可能な薬剤キャリアとしての可溶性ポリマーと結合され得る。そのようなポリマーは、パルミトイル残基で置換された、ポリビニル−ピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリル−アミドフェノール、ポリヒドロキシ−エチルアスパルタミドフェノール又はポリエチル−エンオキシドポリリジンを含み得る。更に、化合物は、ポリ乳酸、ポリεカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロ−ピラン、ポリシアノアクリレート、架橋された又は両親媒性のハイドロゲルのブロックコポリ
マー及び他の好適な当業者に公知のポリマーのような、薬剤の放出制御の達成において有用な生物分解性ポリマーと結合され得る。
【0095】
経口投与のために、化合物は、カプセル、錠剤又はボーラス形態において投与され得る。前記カプセル、錠剤及びボーラスは、デンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム又は第二リン酸カルシウムのような、適当なキャリアビヒクルを含む。
【0096】
単位投与形態は、均一な混合物が得られるように、化合物を、希釈剤、充填剤、崩壊剤及び/又は結合剤を含む好適な微細に粉末化された不活性成分と密に混合することにより製造される。活性成分は化合物と不利に反応しないものである。好適な不活性成分は、デンプン、乳糖、タルク、ステアリン酸マグネシウム、植物ガム及び植物油等を含む。化合物は、破砕、攪拌、製粉又は回転により不活性キャリアと密に混合され得る。
【0097】
注入可能な製剤は、適当な不活性液体キャリアと混合されたここに示された化合物を含む。許容可能な液体キャリアは、ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油等のような植物油並びにソルケタール、グリセロールホルマール等のような有機溶媒を含む。代替物として、水性の非経口製剤がまた使用され得る。植物油が好ましい液体キャリアである。該製剤は液体キャリア中で化合物を溶解又は懸濁させることによって製造される。
【0098】
化合物の局所適用は、例えば、本発明化合物を含む液体ドレンチ又はシャンプーの使用を介して或いは水溶液又は懸濁液としての調節剤における使用を介して可能である。これらの製剤は、ベントナイトのような懸濁剤及び所望による消泡剤を含み得る。
【0099】
E.投与様式
投与量に影響を及ぼす他の要因は投与様式である。本発明の医薬組成物は、皮下、筋肉内、静脈内、局所、経皮、経口及び如何なる他の非経口の又は非経口でない(non−parenteral)経路を含むが限定されない種々の経路により個々の患者に提供され得る。更に、化合物は、好適な経鼻ビヒクルの局所使用を介する経鼻形態で又は当業者に周知の経皮の皮膚用パッチ剤の形態を使用する経皮経路を介して投与し得る。
【0100】
化合物又は調節剤は、不活性液体キャリア中に溶解された活性成分からなる製剤の注入を介して、択一的に非経口的に投与され得る。注入は、注射器又は無針手段の何れかによる、筋肉内、胃内、気管内又は皮下の何れかであり得る。
【0101】
F.医薬的に許容可能な塩
態様は、遊離塩基又は医薬的に許容可能な塩の形態におけるここに示される化合物を含む。例示的な医薬的に許容可能な塩は、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、塩酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ヒドロエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シクロヘキサンスルファミン酸塩及び糖酸塩を含む。要求される塩形態を形成するために、イオン交換、メタセシス又は中和工程が使用され得る。
【0102】
G.併用
態様は別の活性薬剤との組み合わせにおけるここに示される化合物を含む組成物を含む。使用され得る例示的な活性薬剤は、インシュリン、インシュリン類似体、インクレチン、インクレチン類似体、グルカゴン様ペプチド、グルカゴン様ペプチド類似体、エキセンディン、エキセンディン類似体、PACAP及びVIP類似体、スルホニルウレア、ビグアニド、α−グルコシダーゼ阻害剤及び全ての種類のペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPARs)のリガンドを含む。
【0103】
1種以上の活性薬剤(ここで活性薬剤は別々の投与製剤である)を用いる併用治療のために、該活性薬剤は同時に投与され得るか又はそれらはそれぞれ別々のずれた時間で投与され得る。
【0104】
本発明の化合物の薬量は、他の治療剤と組み合わされる場合調整される。これらの種々の薬剤の薬量は、何れかの薬剤が単独で使用されるよりも病状が減少されるところの相乗的結果を達成するために、独立して最適化されて組み合わされ得る。加えて、他の薬剤の同時投与又は連続投与が望ましい。
【0105】
H.キット
好ましい態様において、ここで示される化合物はキットにおいてパッケージ化される。そのようなキットの例は、いわゆるブリスター包装と呼ばれる。ブリスター包装は、包装産業において周知であり、医薬単位投与形態のパッケージ化のために広範に使用されている(錠剤、カプセル剤等)。ブリスター包装は、一般に、好ましくは透明なプラスチック材料からなるホイルで覆われた比較的堅いシートである。パッケージ化加工の間に、プラスチックホイル中に窪みが形成される。該窪みは包装される錠剤又はカプセル剤の大きさ及び形状を有する。次に、錠剤又はカプセル剤は窪みの中に置かれ、比較的堅い材料のシートは、窪みが形成される方向とは反対であるホイルの面でプラスチックホイルに対して密封される。結果として、該錠剤又はカプセル剤はプラスチックホイルとシートの間の窪みの中に密封される。好ましくはシートの強度は、錠剤又はカプセル剤が、窪み上に手圧力を加え、それにより開口部が窪みの場所でシート中に形成されることにより、ブリスター包装から取り除くことができる程度である。錠剤又はカプセル剤はその後、前記開口部を介して取り除かれ得る。
【0106】
キット上に、例えば、番号が錠剤又はカプセル剤が摂取されるよう特定されたレジメの日に対応するところの錠剤又はカプセル剤の隣に番号の形式態の記憶補助を設けることが望ましいだろう。そのような記憶補助の別の例は、カード上に印刷されたカレンダー、例えば、次の“第1週、月曜、火曜、・・・他・・・第2週、月曜、火曜、・・・”他、のようなものである。他の記憶補助のバリエーションは容易に見出せる。“1日薬量”は、1日に摂取される1個の錠剤又はカプセル剤であるか或いは幾つかの錠剤又はカプセル剤である。同様に、式(I)で表される化合物の1日薬量は、1個の錠剤又はカプセル剤からなり得、一方、2番目の化合物の1日薬量は幾つかの錠剤又はカプセル剤からなり得るが、逆もまたある。記憶補助はこれを反映すべきである。
【0107】
本発明の別の特別な態様において、1日薬量が使用される順番で1度に1回分が分配されるように設計された分配器が提供される。好ましくは、分配器は記憶補助を備えており、それにより、更にレジメへの遵守(コンプライアンス)を容易にする。そのような記憶補助の例は、分配された1日薬量の番号を表示する機械的計数器である。そのような記憶補助の別の例は、液晶読み出しと一緒になった、電池を動力源とするマイクロチップメモリー又は、例えば、最後に1日薬量が摂取された日付を読み上げる及び/又は次の投与が摂取される時を指摘する可聴式の催促信号である。
【0108】
V.治療方法
本発明の重要な特徴は、炎症過程におけるシグナル分子としてのセラミドの関与に関連する。T2Dに関連するβ細胞のアポトーシスにおけるその効果に加えて、デノボセラミドは、ヒトの健康における広範なアポトーシス効果を有し得る。セラミドの濃度に影響を及ぼすことは、インビトロの及び移植後の膵島の生存率を改善する意図での、移植のための単離の間の培養において、ヒトの膵島又は他の商業的に若しくは医薬的に重要な供給源からの膵島の新規な治療を誘導し得る。SPT阻害剤は、単独及び/又は相乗的な方法の
何れかで、アポトーシスの及び/又はネクローシスの過程に起因する膵島及びβ細胞の損失を阻害するために、現在使用されているか又は承認されている治療プロトコールに追加され得る。
【0109】
改善されるそのような基本的なプロトコールは、Beattie等、2000年(上記及びここでの参照)中に及び“Edmonton Protocol”(Diabetes.2001年;50:710−9頁. Clinical outcomes and
insulin secretion after islet transplantation with the Edmonton protocol. Ryan EA,Lakey JR,Rajotte RV,Korbutt GS,Kin T,Imes S,Rabinovitch A,Elliott JF,Bigam D,Kneteman NM,Warnock GL,Larsen I,Shapiro AM,及びここでの参照)を記載する公報中に記載されている。これらのプロトコールは、トレハロース抗凍結剤の添加及びArg(Diabetes.46:519−23頁(1997年). Trehalose:a cryoprotectant that enhances recovery and preserves function
of human pancreatic islets after long−term storage. Beattie GM,Crowe JH,Lopez AD,Cirulli V,Ricordi C,Hayek A.)、ウシ胎児血清、トランスフェリン、セレン(Cell Tissue Bank.,4(2/4):85−93頁(2003年)。A comparative evaluation of culture conditions for short−term maintenance(<24hr) of human islets isolated using the Edmonton protocol. Matsumoto S,Goel S,Qualley S,Strong DM,Reems JA.)、又はZ−VAD−FMK及びB−D−FMKのような種々のカスパーゼ阻害剤(Biotechnol.Bioeng.,81(3):329−40頁(2003年). Study of caspase inhibitors for limiting death in mammalian cell culture. Sauerwald T.M.,Oyler G.A.,Betenbaugh M.J.;Nephron.Exp.Nephrol.,96(2):e39−51頁(2004年). Inhibitors directed towards caspase−1 and −3 are less effective than pan caspase inhibition in preventing renal proximal tubular cell apoptosis. Yang B,El Nahas AM,Fisher M,Wagner B,Huang L,Storie I,Barnett D,Barratt J,Smith AC,Johnson TS.)、ニコチンアミド、酪酸ナトリウム(Transplantation.,68(11):1674−83頁(1999年). Differentiation and maturation of porcine fetal islet cell in vitro and
after transplantation. Otonkoski T,Ustinov J,Rasilainen S,Kallio E,Korsgren O,Hayry P.)、セルレイン、IBMX(Pancreas.6:625−30頁(1991年). Survival and B−cell Function of neonatal pig pancreatic islet−like cell clusters in an extracellular matrix. Ohgawara H,Mochizuki N,Karibe S,Omori Y.)、IGF−II(J Endocrinol.161:357−64頁(1999年). Pancreatic islet cell survival following islet isolation:the role of cellular inte
ractions in the pancreas. Ilieva A,Yuan S,Wang RN,Agapitos D,Hill DJ,Rosenberg L.)、等の除去を含み得る。
【0110】
デノボセラミド合成の阻止は、本発明の化合物、例えば、SPT阻害剤の、上に列挙されたプロトコール等への追加が含まれる場合、細胞生存における相乗的な改善を示す。I型糖尿病における膵島の損失はまた、アポトーシス及びネクローシスを誘導する炎症過程の証拠を示す。
【0111】
本発明の態様は、本発明の化合物、例えば、SPT阻害剤の現行の治療プロトコールへの追加を含む、進展しているI型糖尿病及び/又は移植(ヒトの又は生体異物の膵島細胞移植)に続く更なる膵島の損失を治療するための方法を含む(IUBMB Life.2004年7月、56:387−94頁. Protecting pancreatic
beta−cells. Pileggi A,Fenjves ES,Klein D,Ricordi C,Pastori RL.)。本発明の方法における使用のために意図される生体異物細胞は、限定されないが、豚、牛、ネズミ及び他の哺乳類細胞系を含む。デノボセラミド合成の阻害は、単独で又は現存するプロトコールへの追加として使用された場合、有利な効果を示す。そのような治療は、β細胞の量又は機能の損失の検出後すぐに開始し得、単独で又は免疫抑制のレジメ(例えば、シクロスポリン、ミコフェノール酸剤、FTY720等)と供に使用され得る。これは、結果としてアポトーシス及びネクローシスを生じるさまざまな傷害からβ細胞を保護するための広範にわたる機構である。
【0112】
本発明の更なる態様において、本発明の化合物は、例えば、アルツハイマー病又は脳梗塞における脊髄傷害及びCNSニューロンの損失に続く神経細胞のアポトーシスの阻止のために使用される。SPTの阻害剤を用いるこの治療は、単独の又は抗酸化剤、カスパーゼ阻害剤(Neurochem Res.,28:143−52頁(2003年). Protection of mature oligodendrocytes by inhibitors of caspases and calpains. Benjamins JA,Nedelkoska L,George EB)及び/又は当業者に周知である脳梗塞の遅発効果からの保護のための他の治療剤のような他の治療剤との併用において、効果的に使用され得る。
【0113】
ここに示される化合物及び組成物は、種々の疾患の治療において患者に投与され得る。好ましくは、ここに示される治療の方法は、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)の活性又は活動過剰を伴った障害又は状態を有する患者(即ち、ヒト及び他の哺乳類)を対象とする。従って、インシュリン抵抗性及び心筋ミオパチーの治療方法が提供される。心筋ミオパチーの治療において有効な化合物は心筋ミオパチー発症の過程を妨害し得る。本発明の化合物は、悪液質及び敗血症を治療するために使用され得る。
【0114】
治療方法において使用される好ましい化合物は、望ましい生物学的利用能特性を示す。例示的化合物は、改善された溶解性、作用持続時間及びインビボ効能を有するプロドラッグの形態として機能し得るエステルである。治療方法において使用される好ましい化合物は、水における改善された溶解性及び変化した摂食行動のような副作用を引き起こす血管脳関門の横断に対するより弱い可能性を示す。
【0115】
医薬組成物は、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ活性の調節が必要とされる障害を治療又は診断するのに十分な量において患者個人に投与される。セリンパルミトイルトランスフェラーゼにより仲介される公知の又は疑われる疾患又は障害の例は、限定されないが、インシュリン抵抗性、II型糖尿病及びその合併症、肥満、血栓形成促進状態、心
筋梗塞、鬱血性心不全、高血圧、異常脂質血症及び一般に“メタボリックシンドローム”及び“シンドロームX”として認められている他の徴候を含む。ここに示される治療方法において有効な化合物は、強力に及び特異的に酵素セリンパルミトイルトランスフェラーゼを調節する。
【0116】
上記の記載は、説明的なもので及び限定しないことを意図していることが理解されるべきである。従って、本発明の範囲は、上記の記載を参照してではなく、むしろ、添付の請求項並びにそれらの等価物の全範囲を参照して決定されるべきである。
【実施例】
【0117】
本発明を説明するために、以下の実施例が包含される。これらの実施例は本発明を限定しない。それらは、ここに示された方法及び化合物を例示的に説明することのみを意図する。化学合成及びセリンパルミトイルトランスフェラーゼが関連する障害の治療における知識を有する者は本発明の実施の他の方法を見出し得る。しかしながら、これらの方法は、本発明の範囲内であるとみなされる。
【0118】
実施例1 化合物2のメチルエステルの合成
丸底フラスコ中、MeOH 500mLを−5℃に冷却し、攪拌しながら滴下の様式においてSOCl2 0.11モルで処理された。粉末状の化合物2(0.1モル)が冷却
及び攪拌しながら早急に添加された。溶液を2時間かけて室温までゆっくり暖めた。過剰のMeOHの留去により、望まれる化合物(R1=Me)がHCl塩として、白色結晶と
して高収率で得られた。好適な溶媒(MeOH/Et2O)からの再結晶により、望まれ
る化合物が白色ワックス状の固体として高純度で得られた。同様の方法で、ここに示された化合物の更なるエステル形態が製造され得る。化合物2の合成はKiuchi等、2000年(上記)中に記載されている。
【0119】
実施例2 化合物2のエチルエステルの合成
丸底フラスコ中、MeOH 500mLを、EtOAc中のHCl0.01モルで処理し、粉末状の化合物2(0.1モル)が冷却及び攪拌しながら早急に添加された。溶液を還流するまで暖め、24時間加熱した。過剰のEtOHの留去により、望まれる化合物(R1=Me)がHCl塩として、白色結晶として高収率で得られた。好適な溶媒(EtO
H/Et2O)からの再結晶により、望まれる化合物が、ゆっくりとワックス状の固体を
形成する無色のオイルとしてとして高純度で得られた。同様の方法で、ここで示された化合物の更なるエステル形態が製造され得る。もう一つの方法として、EtOH中の等量のHCl及びH2SO4の添加及び2日間の還流により生成物が高収率で得られる。
【0120】
実施例3 化合物23の合成
化合物23は、4−(3−ヒドロキシプロピル)フェノール(アルドリッチケミカルカンパニー)から出発し、スキーム2中に概説された経路を用いて製造された。得られた収率はスキーム2中に報告されている。化合物23はオフホワイトの固体として得られ、融点は広範囲であった。
【0121】
(M−1)分子イオンは、322.3a.m.u.であった。1H NMR(CD3OD)δ:0.95(3H、tr)、1.37(4H、m)、1.45(2H、m)、1.75(6H、m)、2.55(2H、m)、3.7(2H、dd)、3.9(2H、t)、6.9(4H、dd)
【0122】
実施例4 化合物24の合成
化合物24は、4−(4−ヒドロキシブチル)フェノールから出発し、スキーム2中に概説された経路を用いて製造された。化合物24はオフホワイトの固体として得られ、融
点は広範囲であった。
【0123】
(M−1)分子イオンは、336.3a.m.u.であった。1H NMR(D6−DMSO)δ:0.93(3H、t)、1.4(12H、ブロードm)、2.45(2H、d)、3.5(2H、q)、3.9(2H、t)、6.9(4H、dd)
【0124】
実施例5 β細胞アポトーシス試験
ラット膵島
生物試験は、ある程度の変更をして、Shimabukuro等、J.Biol.Chem.,273:32487−90頁(1998年)に従って行われた。ズッカー肥満ラット(Zucker Diabetic Fatty rats)はここに示された化合物を用いた腹腔内注射により2週間処理された。膵島は単離され、アポトーシスの程度は電気泳動により評価された。顕著な程度の保護が対照ラットとの比較において処理されたラットで示された。この保護は、SPT経路を介するセラミドのデノボ合成が特異的に阻害され、結果としてアポトーシスからβ細胞が保護されたことを提示した。
【0125】
ヒトの膵島
β細胞アポトーシスの検出のためのもう一つの試験は、Maedler,K,等、(2003年).Diabetes 52,726−33頁に従って行われた。この試験において、高濃度のパルミチン酸又は高濃度のグルコースを用いる培養はアポトーシスの増加引き起こし、セラミドシンターゼの阻害剤の保護効果は有利な効果を示した。この試験からの結果は、SPTの阻害のような酵素経路において、異なった早期の地点でデノボセラミド合成を阻害する本発明化合物の有利な効果を提示した。
【0126】
膵島単離及び培養−
膵島は、Oberholzer J,等、Transplantation 69:1115−23頁(2000年)中に記載されるようにして、臓器提供者の膵臓から単離された。ジチゾン染色により決定される膵島純度は、>95%であった。この純度の程度が日常的な単離により最初に達成されない場合、膵島が厳選された。提供者は、典型的には、以前に糖尿病又は代謝性障害の病歴を有さない脳死状態の臓器提供者であった。
【0127】
Maedler等、(2003年)により報告されたように、長期間のインビトロ研究の間、膵島はウシの角膜内皮細胞(Novamed、エルサレム、イスラエル)から導かれた細胞外マトリックスで被覆されたプレート上で培養され、細胞はそれらの機能の完全性を保存するために、ディッシュに結合され展開された。4日後の培養における導管細胞による汚染は、5及び15%の間であると推定されたが、殆ど全ての導管細胞は膵島の周辺で観察され、β細胞と共局在化していなかった。膵島は、ペニシリン 100ユニット/mL、ストレプトマイシン 100μg/mL及び10%FCS(Gibco,ゲイサーズバーグ、メリーランド州)を含むCMRL 1066媒体中で培養され、該媒体は以後、培養媒体として言及する。
【0128】
殆どの膵島が結合され平坦化し始めた平板培養2日後、媒体は、5.5又は33.3mmol/Lのグルコースを含み、脂肪酸が補われるか又は補われない培養媒体に交換された(Sigma Chemical、セントルイス、ミズーリ州;パルミチン酸[16:0]、パルミトレイン酸[16:1]、オレイン酸[18:1]、又は脂肪酸の混合物[16:0/16:1,16:0/18:1])。脂肪酸は、窒素雰囲気下で、11%の脂肪酸のないBSA(Sigma)を含む培養媒体中に10mmol/Lで溶解され、37℃で1晩振とうし、15分超音波で振動され、殺菌濾過された(貯蔵溶液)。対照実験のために、脂肪酸の存在しないBSAが上記のようにして製造された。有効なFFA濃度は市販で入手可能なキット(Wako chemicals、ノイス、ドイツ)を用いて、
殺菌濾過の後に決定され得た。アルブミンが結合していないFFAの計算された濃度は、Spector AA,等、Biochemistry、10:3226−32頁(1971年)中で報告された段階的平衡モデルを用いて全てのFFA(0.5mmol/L)及びアルブミン(0.15mmol/L)のモル比から導かれた。FFAの最終濃度0.5mmol/Lに関して、パルミチン酸、パルミトレイン酸及びオレイン酸の結合していない濃度は、それぞれ0.832μmol/L、0.575μmol/L及び2.089μmol/Lであった。幾つかの実験において、膵島は、15μmol/L C2−セラミド、15μmol/L C2−ジヒドロセラミド(Biomol、プリマスミーティング、ペンシルベニア州)、15μmol/L フモニシン B1(Sigma)又は、10nmol/Lないし100μmol/Lの種々の濃度の試験化合物を用いるか又は用いずに培養された。それらの全ては最初に、37℃に前加温したDMSO(Fluka、ブーフス、スイス)中に5mmol/Lで溶解された。対照実験のために膵島は溶媒単独(0.3%DMSO)に曝された。
【0129】
細胞アポトーシス
Maedler等、(2003年)により報告されたように、DNA分解の結果として生じる遊離3−OH鎖の分解は、末端デオキシヌクレオチド転移酵素を媒介するdUTPニック末端標識(TUNEL)技術により検出された(Gavrieli Y,等、J.Cell Biol.119:493−501頁(1992年))。膵島培養物はPBSで洗浄され、4%パラホルムアルデヒド中に固定され(30分、室温)、続いて0.5%トリトン(Triton)X−100で透過化され(4分、室温)、続いてTUNEL試験が製造者の指示に従って行われた(In Situ Cell Death Detection Kit,AP;Boehringer Mannheim、ドイツ)。該調製物はその後、トリス(Tris)で緩衝された食塩水ですすがれ、5−ブロモ−4−クロロ−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム液体基質システム(Sigma)でインキュベートされた(10分、室温)。活性化されたカスパーゼ3の染色のために、固定化及び透過化の後に、膵島は、ウサギの抗開裂カスパーゼ3抗体(1:50希釈、D175;Cell Signaling、ベバリー、マサチューセッツ州)で、3
7℃で2時間インキュベートされ、続いてCy3−縮合ロバ抗ウサギ抗体(1:100希釈;Jackson ImmunoResearch Laboratories,ウエストグローブ、ペンシルバニア州)でインキュベート(30分、37℃)された。その後、膵島は上記のモルモット抗インシュリン抗体でインキュベートされ、続いて、ストレプトアビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ錯体(Zymed)を用いるか又はフルオレセイン結合のウサギ抗−モルモット抗体(Dako)の1:20希釈で30分インキュベートされることにより検出された。TUNEL試験は、アポトーシス性の及びネクローシス性の細胞死の両方と関連するDNA断片化を検出する;従って、膵島はまた、製造者の指示に従って蛍光性のアネキシンVプローブ(Annexin−V−FLUOS染色キット、Boehringer Mannheim)で処理された。ヨウ化プロピジウム及びアネキシンVを用いる細胞の二重染色は、ネクローシス細胞からアポトーシス細胞を区別することを可能にする。
【0130】
実施例7 抗炎症用途
Shimabukuro等に従って、ズッカー肥満ラット(Zucker Diabetic Fatty rats)を解剖し、膵島を採った。培養において、これらの膵島は、腫瘍壊死因子αの有効量で処理された。セラミドのデノボ合成は、実施例8に記載されるように、トリチウム化したセリン添加により評価された。ここに示される化合物の有効な濃度での処理は、対照群との比較において、顕著に減少したセラミドの濃度を生じた。このことは、抗炎症用途において、概して、化合物の有効性及びSPTに対する特異的な阻害活性を提示する。
【0131】
実施例8 セリンパルミトイルトランスフェラーゼ活性
試験A
この試験は、Merrill等、Anal.Biochem.,171:373−381(1988年)により報告された方法を僅かに変更して行った。
【0132】
凍結されたラット又は他の哺乳類の肝臓は、pH7.4で、DTT(5mL)、スクロース(0.25M)及びEDTAを含む標準HEPES緩衝系中で均質化された。ホモジネートは0.5時間30kgで回転され、上澄みが除去された。試験は、上記の上澄み(50−150μgのタンパク質のために十分な)を用いて、しかし、均質化の緩衝液と類似であるがpH8.3での緩衝液中の、ピリドキサール50μM、パルミトイルCoA 200μM及び3H−L−セリン1mMを添加して行われた。放射性標識生成物、3−ケ
トスフィンガニンがCHCl3/CH3OH中に抽出され、放射活性が液体シンチレーション計数管で計数された。
【0133】
セリンパルミトイルトランスフェラーゼの阻害は、脂質生成物へのトリチウム標識の組み込みにより評価された。CTLL−2細胞系における化合物の活性の更なる提示は、Nakamura,S.等、J.Biol.Chem.,271:1255−57頁(1996年)中に記載されている試験を用いて行うことができる。
【0134】
試験B
普通に培養細胞中に存在する酵素であるSPTの阻害を評価するためのもう一つの試験は、CHO細胞系又はヒトの細胞系を用いて行われた。細胞は、氷冷のリン酸で緩衝された食塩水(PBS)で3回洗浄された。総量0.5mLの溶解緩衝液[エチレンジアミン四酢酸(EDTA)5mM及びジチオスレイトール(DTT)5mMを含むHepes(pH8.0)50mM]が各皿に添加された。細胞はラバーポリスマンを用いて擦り取られ、その後、氷上の試験管へ移された。細胞懸濁液は、氷上で、1ないし2分間隔で5秒間を3回、超音波で振動された。細胞ホモジネート中のタンパク質濃度はBradfordタンパク質試験キット(Bio−Rad)を用いて測定された。SPT活性を測定するために、細胞ホモジネート0.1mLが反応緩衝液[EDTA 5mM、DTT 10mM、ピリドキサール−5´−ホスフェート50μM、パルミトイルCoA 0.4mM、L−セリン2mM、[3H]セリン 10μCi及び試験化合物又は標準阻害剤(ミリオ
シン)を含むHepes(pH8.0)20mM]0.1mLに添加された。37℃で20分間振り混ぜながらのインキュベーションの後、反応はL−セリン10mMを含む0.5N NH4OH 0.5mLで終結された。脂質生成物は溶媒系:クロロホルム/メタ
ノール(1:2)3mL、キャリアとしてのスフィンゴシン(エタノール中、1mg/mL)25μL、クロロホルム2mL及び0.5N NH4OH 3.8mL、を用いて抽
出された。激しく混合した後、5分間2500rpmで遠心分離することにより相が分離した。水層が吸引により除去され、下のクロロホルム層は4.5mLの水で3回洗浄された。クロロホルム層はシンチレーション瓶に移され、溶媒がN2ガス下で留去された。放
射活性が、LS6000TA液体シンチレーション計数管(Beckman)を用いて測定された。[3H]セリンのクロロホルムに可溶な種への非特異的な転換が、パルミトイ
ルCoAの非存在下における試験を行うことにより決定された。バックグラウンドの計数は100%活性の計数の約1/6であった。
【0135】
試験C
Smedes(Smedes,F.,Analyst 124:1711−18頁(1999年))において報告されたBlye and Dyer脂質抽出法の非塩素化溶媒への変法を用いるもう一つの試験が、例示的な化合物を評価するために使用された。このアプローチにおいて、細胞は氷冷のリン酸で緩衝された食塩水で3回洗浄され、溶解緩衝液0.5mLが各皿に添加された。細胞は、ラバーポリスマンを用いて擦り取られ、氷上
の試験管へ移された。細胞懸濁液は、氷上で1−2分間隔で5秒間を3回、超音波で振動された。細胞ホモジネートのサンプル0.1mLは、適当な濃度の試験物質と[3H]セ
リン 10μCiを含む試験管中の反応緩衝液0.1mLに添加された。反応混合物は、37℃で20分間振り混ぜながらインキュベーションされ、反応は未標識のL−セリン10mMを含む0.05N NH4OH停止溶液0.5mLで終結された。全ての脂質は、
試験管の内容物を:キャリアとしてのスフィンゴシン(エタノール中、1mg/mLであり、イソプロパノール/シクロヘキサン混合物中にと希釈される)25μLを含むイソプロパノール/シクロヘキサン(4:5)4.5mLを含む15mLの遠心分離管へ移すことにより抽出された。内容物は激しく混合され、0.5N NH4OH 4mLが添加さ
れた。5分間2500rpmでの遠心分離により相が分離された。正確に測量された分量の有機層(4.0mL)が1mLの水と一緒にシンチレーション瓶に添加された。Ultima Gold F(5mL)が添加され、該瓶はボルテックスされ、静置されて分離した層となった。脂質中へ添加された[3H]セリンの放射活性の量がシンチレーション
計数管で定量化された。非特異的な計数は、パルミトイルCoAを含まない対照サンプルを用いた試験を行うことにより決定された。下の表2に示されるように、陽性対照であるISP−1(即ち、ミリオシン)は強力であるが非特異的なSPTの阻害を示した。例示的な化合物12はこの試験中で評価され、表2中に示されるように、示される薬量で程々の活性を示した。
【表2】

【0136】
表3は、10nM及び100nMで、この試験において試験された例示的化合物23及び24のデータを提供する。
【表3】

【0137】
実施例9 SPT阻害剤による膵島の保護
例示的化合物による膵島の保護はEitel,K,等(2002年)に従う試験において評価され、この試験において得られた結果は下の表4中で報告されている。ラット膵島は3日間、対照媒体(10%ウシ胎児血清及び抗生物質で補助され、グルコースが8%とされたRPMI1640)で培養されるか又はパルミチン酸ナトリウム(脂肪酸媒体)1mmolが補足された媒体中で培養された。該培養媒体は2日後に適当なウェルにおいて、新しい阻害剤を加えた同一組成の培養媒体に代えた。細胞はヨウ化プロピジウム(PI)で染色され、洗浄され、細胞のプロピジウム染色(細胞内DNA含有量の測定として)はフローサイトメトリーにより評価された。PI染色の通常量よりも少ない染色を有する細胞の百分率がアポトーシス細胞であると考えられた(Eitel,K,等(2002年))。
【0138】
この試験において、例示的化合物12を用いた処理は、この試験における脂肪酸処理から完全に細胞を保護するように見え、対照媒体での処理との比較において驚くべき利点を付与する。
【表4】

【0139】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

{式中、R1は、H又は所望により置換された低級アルキル基、アリール基、アラルキル
基又はアルキルオキシアルキル基を表し;
各R2は独立して、H、保護基又は−C(=O)−CHRa−NHRb(式中、Raはアルキル基、アリール基、アシル基、ケト基、アジド基、ヒドロキシル基、ヒドラジン基、シアノ基、ハロゲン原子、ヒドラジド基、アルケニル基、アルキニル基、エーテル基、チオール基、セレノ基、スルホニル基、ボレート基、ボロネート基、ホスホ基、ホスホノ基、ホスフィン基、複素環基、エノン基、イミン基、アルデヒド基、エステル基、チオ酸基、ヒドロキシルアミン基、アミノ基及びそれらの組み合せからなる群より選択され;及び
bはH又はアミノ保護基を表す。)を表し;
各V及びZは独立して、(CRcdn、O、NRe、S、Ar、CRcdAr、OAr、NR4Ar、SAr又はAr(式中、各Rc及びRdは独立して、H、低級アルキル基、O
H、O−低級アルキル基を表すか又はRc及びRdは一緒になって、=O、=N−OH、=N−O−低級アルキル基又は=N−O−CH2CH2−O−CH3を表し;
eはH、低級アルキル基又は−CH2CH2−O−CH3を表し;及び
nは1ないし7を表す。)を表し;
qは0ないし3を表し;
Arは、所望により置換されたアリール基又はヘテロアリール基を表し;
uは0又は1を表し;
各Xは独立して、H又はハロゲン原子を表し;及び
mは4ないし12を表す。}に対応する化合物及びその医薬的に許容可能な塩。
【請求項2】
式(II)
【化2】

{式中、LはCH2、CHRf、CRfg、O、NRh、S、Ar、CH2Ar、CHRf
r、CRfgAr、OAr、NRhAr、SAr又はArAr(式中、RfはH、低級アルキル基、OH、O−低級アルキル基を表し、
gはHを表すか又はRf及びRgは一緒になって、=O、=N−OH、=N−O−低級ア
ルキル基又は=N−O−CH2CH2−O−CH3を表し、及び
hはH、低級アルキル基又は−CH2CH2−O−CH3を表す。)を表す。}に対応するところの請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式(III)
【化3】

に対応するところの請求項1記載の化合物。
【請求項4】
式(IIIA)
【化4】

に対応するところの請求項1記載の化合物。
【請求項5】
式(IIIB)
【化5】

に対応するところの請求項1記載の化合物。
【請求項6】
Arが所望により置換されたフェニル基、ピリジニル基、ピリミジル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、トリアゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、ベンズチアゾリル基又はベンズオキサゾリル基であるところの請求項1記載の化合物。
【請求項7】
Arがフェニル基、ピリジニル基又はオキサゾリル基であるところの請求項6記載の化合物。
【請求項8】
Xがハロゲン原子であるところの請求項1記載の化合物。
【請求項9】
Xがフッ素原子であるところの請求項8記載の化合物。
【請求項10】
1が炭素原子数2ないし3のアルキル基であるところの請求項1記載の化合物。
【請求項11】
1がCH3−O−CH2−CH2−、HO−CH2−CH2−、HO−CH2−CH2−O−CH2−CH2−又はCH3−O−CH2−CH2−O−CH2−CH2−であるところの請求項
1記載の化合物。
【請求項12】
nが2であるところの請求項1記載の化合物。
【請求項13】
mが7であるところの請求項1記載の化合物。
【請求項14】
前記化合物がセリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)を調節するところの請求項1記載の化合物。
【請求項15】
前記化合物がセリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)を阻害するところの請求項14記載の化合物。
【請求項16】
請求項1記載の化合物及び医薬的に許容可能なキャリアを含む組成物。
【請求項17】
請求項1記載の化合物、並びに、インシュリン、インシュリン類似体、インクレチン、インクレチン類似体、グルカゴン様ペプチド、グルカゴン様ペプチド類似体、エキセンディン、エキセンディン類似体、PACAP及びVIP類似体、スルホニルウレア、ビグアニド、α−グルコシダーゼ阻害剤、アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤、カスパーゼ阻害剤及びPPARリガンドからなる群より選択される少なくとも1種の活性剤の治療有効量を含む組成物。
【請求項18】
インシュリン抵抗性の治療方法であって、該方法は請求項1記載の化合物を、これを必要とする患者へ投与することを含む方法。
【請求項19】
膵臓β細胞アポトーシスを治療する方法であって、該方法は請求項1記載の化合物を、これを必要とする患者へ投与することを含む方法。
【請求項20】
肥満を治療する方法であって、該方法は請求項1記載の化合物を、これを必要とする患者へ投与することを含む方法。
【請求項21】
血栓形成促進状態、心筋梗塞、高血圧、異常脂質血症又はその他のシンドロームXの症状発現を治療する方法であって、該方法は請求項1記載の化合物を、これを必要とする患者へ投与することを含む方法。
【請求項22】
鬱血性心不全を治療する方法であって、該方法は請求項1記載の化合物を、これを必要とする患者へ投与することを含む方法。
【請求項23】
炎症性疾患(該炎症性疾患は心血管系、アテローム性動脈硬化症又は敗血症の疾患である。)を治療する方法であって、該方法は請求項1記載の化合物を、これを必要とする患者へ投与することを含む方法。
【請求項24】
培養液中のヒト細胞又は生体異物の膵島細胞の欠損又は死を予防する方法であって、該方法は請求項1記載の化合物を前記培養液に添加することを含む方法。
【請求項25】
培養液中の肝臓組織を保存する方法であって、該方法は請求項1記載の化合物を前記培養液に添加することを含む方法。
【請求項26】
I型糖尿病の治療又は予防方法であって、該方法は請求項1記載の化合物を、これを必要とする患者へ投与することを含む方法。
【請求項27】
肝臓障害の治療又は予防方法であって、該方法は請求項1記載の化合物を、これを必要とする患者へ投与することを含む方法。
【請求項28】
悪液質の治療又は予防方法であって、該方法は請求項1記載の化合物を、これを必要とする患者へ投与することを含む方法。
【請求項29】
更に、インシュリン、インシュリン類似体、インクレチン、インクレチン類似体、グルカゴン様ペプチド、グルカゴン様ペプチド類似体、エキセンディン、エキセンディン類似体、PACAP及びVIP類似体、スルホニルウレア、ビグアニド、α−グルコシダーゼ阻害剤、アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤、カスパーゼ阻害剤、不飽和脂肪酸、ポリ不飽和脂肪酸及びPPARリガンドからなる群より選択される少なくとも1種の活性剤の治療有効量を同時投与することを含む請求項18記載の方法。

【公表番号】特表2008−515987(P2008−515987A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536845(P2007−536845)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/036702
【国際公開番号】WO2006/042278
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(507115849)フォーブス メディ−テック(リサーチ) インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】