説明

インシュレーター

【課題】 設置面が傾斜したり多少波打っていたりしても安定して支持することが出来ると共に、支持している機器・装置が発生する振動を設置面に伝達させることを極力抑制することができる、機器・装置と設置面との間に介在させるインシュレーターを提供する。
【解決手段】 円板状の主体部1bの下側面に、該主体部1bの半径よりも大きな半径とした球面によって載置面1aを形成してインシュレーター1を形成する。必要に応じて、主体部1bの上側面に、振動の抑制対象となる機器・装置に取り付けるための保持ブラケット2を取り付けるために適宜な形状にして具備させる。少なくとも3箇所にインシュレーター1を取り付けて、設置面6に載置させると、インシュレーター1のそれぞれの載置面1aは設置面6と点接触して、安定して支持すると共に、振動を拡散させて設置面6への伝達を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スピーカやアンプリファイヤー、デジタルビデオディスク装置等の音響装置やパーソナルコンピュータその他の各種装置・機器が発生する振動を抑制するインシュレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯機や冷蔵庫等の生活家電やテレビ受像機、デジタルビデオディスクプレーヤー等の映像関連家電、パーソナルコンピュータやその周辺機器、スピーカやアンプリファイヤー等の音響機器・装置等は、それらの動作時には振動の発生源となっている。これら発生した振動が周辺にある機器・装置等に伝搬しては不都合な場合があるので、振動を抑制することが要求される。特に、スピーカ等の音響装置では発生した振動によって出力された音質が影響を受け、音質の低下を招くおそれがあるため、振動の伝搬を遮断する機構であるインシュレーターが採用されている。
【0003】
前記インシュレーターとしては、スピーカの内部に設置された機構その他種々のものがあるが、床面やキャビネットの棚面等の設置面と音響装置との間にインシュレーターを介在させることが広く行われている。
【0004】
この種のインシュレーターとして、特許文献1には、設置面が平らでない設置面に設置する場合に、弾性力の小さな材質で形成しても、設置面とインシュレーターおよび音響機器とインシュレーターとの隙間をなくし、さらに、水平方向の振動も制御できるインシュレーターを提供しようとするもので、インシュレーターを支持対象面に接して対象物を支持する対象面支持体と、設置面に接した状態で置かれる脚体とにより構成し、前記脚体の設置面に接する部分の裏側に、先端により対象を支持する可動部支持部を3つ設け、前記対象面支持体の支持対象面に接する部分の裏側、前記3つの可動部支持部の先端のぞれぞれに接触しつつ前記対象面支持体の前記脚体に対する傾きが変化するように運動することが可能な可動部を備えたインシュレーターが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、音響機器に対して、該機器と設置面との間に介在させて、原音を忠実に再現できるインシュレーターを提供するものとして、上部インシュレーターと下部インシュレーターとからなり、上部インシュレーターは、下方に向けて円錐状の突起を有し、下部インシュレーターは、円錐状の突起を受ける凹部を有するインシュレーターにおいて、円錐状の突起の先端に、窪みを穿設し、該窪みにボールを嵌着し、かつ、下部インシュレーターの、円錐状の突起を受ける凹部に潤滑油を適量注入するインシュレーターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−24067号公報
【特許文献2】特開2006−279178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたインシュレーターは、下部ボディーに保持された前記3つの可動部支持部と、これら3つの可動部支持部のいずれにも接触する可動部を上部ボディーに保持させた構造とされているものである。また、特許文献2に記載されたインシュレーターは、円錐状の突起の先端にボールが嵌着された上部インシュレーターと、円錐状の突起を受ける凹部を有する下部インシュレーターとが組み合わされたものである。
【0008】
前記特許文献1、2のそれぞれに開示されたインシュレーターはいずれも、上部の構造物と下部の構造物とを必要とするものであり、複雑な構造であり部品点数も多いものである。また、これらのインシュレーターでは、設置の際には上側に配されるインシュレーターが一定の姿勢となるように調整する必要があり、設置時における手間がかかっている。
【0009】
そこで、この発明は、振動の遮断を必要とする機器・装置に取り付けることにより、床面やキャビネットの棚面等の設置面に載置させた状態で振動の伝搬を抑制するインシュレーターを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成する技術的手段として、この発明に係るインシュレーターは、振動の抑制対象となる機器・装置に取り付けられて、前記機器・装置と設置面との間に介在させて、前記機器・装置が発生する振動を抑制するインシュレーターにおいて、前記設置面に対向した載置面を球面の一部によって形成し、該球面の一部が設置面と接触することを特徴としている。
【0011】
このインシュレーターが取り付けられた、例えばスピーカやアンプリファイヤー等の音響装置を床面やキャビネットの棚面等の設置面に載置させると、該インシュレーターの球面による載置面の一部が設置面と接触して音響装置を支持する。このため、音響装置が発生する振動が設置面に伝達することが抑制され、該振動の伝搬が抑制される。
【0012】
なお、少なくとも3箇所にこのインシュレーターを取り付けて、3点で支持させれば音響装置が安定する。このとき、設置面に多少の傾きがある場合であっても、球面の一部と設置面との接触は確実に維持されるから、3点での支持状態は維持されて、音響装置の姿勢を安定して保つことができる。
【0013】
また、請求項2の発明に係るインシュレーターは、球面からなる前記載置面を形成した接触体部と、該接触体部を保持して前記機器・装置に取り付ける主体部とからなることを特徴としている。
【0014】
例えば、前記接触体部を円柱であってその端面を球面に形成して載置面とし、前記主体部をこの接触体部の円柱部を収容する円柱状の凹部を形成して、接触体部をこの凹部に嵌合させる構造とする。あるいは、接触体部を円盤状の一方の端面を球面に形成して載置面とし、該接触体部の他方の端面に主体部を接着させる構造とする。すなわち、載置面が形成された部分と振動の抑制対象となる機器・装置への取り付け部分とを別体として構成したものである。このため、機器・装置が発生する振動を良好に減衰させる材質や構造の組み合わせを採用することができる。
【0015】
また、請求項3の発明に係るインシュレーターは、前記接触体部及び主体部が木製であることを特徴としている。
【0016】
例えば、主体部をカエデ材によって形成し、接触体部をヒッコリー材によって形成した構造等としたものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係るインシュレーターによれば、設置面に対して載置面が対向して該載置面の球面の一部が接触するから、点接触となって機器・装置が発生している振動を設置面へ伝達することが抑制され、該振動の伝搬が抑制される。
【0018】
しかも、球面としてあるため、設置面が傾いたとしても確実に載置面と接触させることができ、機器・装置等を、姿勢を安定させた状態で設置させることができる。
【0019】
また、請求項2の発明に係るインシュレーターによれば、金属と合成樹脂や炭素樹脂、繊維樹脂等とを組み合わせた構造とすることにより、良好な振動の減衰性や軽量化等を具備させたインシュレーターを得ることができる。
【0020】
また、請求項3の発明に係るインシュレーターによれば、軽量化と良好な振動吸収性を備えた材料を選択できると共に、加工の自由度が大きいため、任意の形状に形成しやすく、それぞれの機器・装置の外形形状に合わせやすい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の第1の実施形態に係るインシュレーターの平面図である。
【図2】図1に示すインシュレーターの正面図である。
【図3】図1に示すインシュレーターの底面図である。
【図4】図1に示すインシュレーターの、図1上A−Aに沿って切断した断面図である。
【図5】この発明の第2の実施形態に係るインシュレーターの正面図である。
【図6】図5に示すインシュレーターの底面図である。
【図7】図5に示すインシュレーターの中央部縦断面図である。
【図8】この発明に係るインシュレーターの使用状態を説明する図で、アンプリファイヤーに取り付けた状態を示す正面図である。
【図9】図8に示すアンプリファイヤーの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係るインシュレーターを具体的に説明する。
【0023】
図1〜図4にこの発明の第1実施形態に係るインシュレーター1を示しており、例えば、図8と図9に示すように、振動の抑制対象であるアンプリファイヤー20に取り付けるのに適した形状としたものとしてある。図に示すように、このインシュレーター1は底面によって載置面1aとしてあり、この載置面1aは、図2および図4に示すように、球面によって形成されている。載置面1aは円板形の主体部1bの一端面に形成されており、他端面側には前記アンプリファイヤー20を保持させるのに適宜な保持ブラケット2が形成されている。そして、前記載置面1aを形成する球面の半径を、主体部1bの円板形の半径よりも大きくしてあり、曲率が小さくなるようにしてある。
【0024】
前記保持ブラケット2は、図1に示すように、主体部2の外形に沿った外形形状をして該主体部2の前記他端面からアンプリファイヤー20の側壁面と連繋させるのに適宜な高さまで起立させてある。また、保持ブラケット2の内側面2aはアンプリファイヤー20の壁面に合致するよう平面状に形成されている。また、図1〜図4に示すインシュレーター1は、図8および図9に示すように、アンプリファイヤー20の前面端部に取り付けられるものであるため、前壁面と側壁面とにかけて合致する内側面2aを具備するよう、平面視でほぼL字形となるよう前記保持ブラケット2が形成されている。
【0025】
あるいは、図8および図9に示すように、アンプリファイヤー20の背面に取り付けられるインシュレーター3では、保持ブラケット4の内側面は背面壁に合致する形状、すなわち内側面が平面でのみ形成された形状の保持ブラケット4とされている。このインシュレーター3でも、前記保持ブラケット4は主体部3bの上側面に配設され、該主体部3bの下側面には球面による載置面3aが形成されている。
【0026】
また、図1および図3に示すように、主体部1bには載置面1aから該主体部1bの上側面まで貫通させた貫通孔1cが形成されており、この貫通孔1cを貫通させた取付ボルト(図示せず)をアンプリファイヤー20の底面に螺合させることにより、インシュレーター1をアンプリファイヤー20に取り付けるようにしてある。なお、貫通孔1cの載置面1a側は、適宜深さまで座ぐりされて、取付ボルトの頭部が収容されるようにしてある。なお、前記インシュレーター3についも、載置面3aから上側面に貫通する貫通孔(図示せず)が形成されて取付ボルトを貫通させられるようにしてある。
【0027】
以上により構成されたこの発明に係るインシュレーター1、3は、例えば、図8および図9に示すように、振動の抑制を要する機器・装置としてのアンプリファイヤー20に取り付けられる。これらの図に示すように、少なくとも3箇所に取り付けることにより、アンプリファイヤー20を設置面6に載置させた状態で安定して支持させることができる。
【0028】
アンプリファイヤー20が設置面6に載置された状態では、設置面6と載置面1a、3aとが接触する状態となる。この状態では、設置面6と載置面1a、3aとは点接触となっており、しかも、載置面1a、3aの曲率半径が大きく、すなわち曲率が小さいから、載置された荷重が分散する。このため、アンプリファイヤー20が発生した振動がインシュレーター1、3から設置面6に伝達する際に、振動の方向が拡散して、効率よく減衰されることになって、設置面6への振動の伝搬が抑制されることになる。
【0029】
また、載置面1a、3aが球面で形成されているため、設置面6が傾いていたり、僅かに波打った面であったりしても載置面1a、3aと必ず接触することになり、アンプリファイヤー20の姿勢が安定した状態に保たれる。
【0030】
次に、図5〜図7に示す第2の実施形態について説明する。
【0031】
この第2実施形態に係るインシュレーター10は、主体部11と接触体部12とから構成されているものである。主体部11は円柱形に形成されて、その下側面が球面11aで形成されている。球面11aの一部であって、主体部11の軸を中心として円柱状に凹部による収容部11bが形成されている。この収容部11bには、接触体部12が嵌入されて収容されており、接着等によって固定されている。この接触体部12の下側面は、前記主体部11の球面11aと一致する球面による接触面12aが形成されている。すなわち、該接触面12aと球面11aとが共通の球面を形成して載置面10aとされている。そして、この載置面10aの曲率半径を主体部11の円柱の半径よりも大きくして、この載置面10aの曲率を小さくしてある。なお、前記設置面6と接触する部分は、設置面6が傾いた状態にあっても、接触面12a内となるようにすることが好ましく、この接触する部分が接触面12a内となるのであれば、主体部11の球面11aは不要となり、該主体部11は円板形の外形にすることができる。
【0032】
また、図1〜図4に示した第1実施形態の保持ブラケット2と同様に、機器・装置に取り付けるのに適宜な形状や構造とした保持ブラケット(図示せず)を設ければ、任意の機器・装置にこのインシュレーター10を取り付けることができる。
【0033】
以上により構成されたこの発明の第2実施形態に係るインシュレーター10を、例えば、第1実施形態と同様に、アンプリファイヤー20に取り付けて設置面6に載置させる。この状態で、第1実施形態に係るインシュレーター1の場合と同様に、接触面12aの一点が設置面6に接触することになる。しかも、設置面6が傾いている場合であっても、接触面12aの一部が必ず接触した状態となるから、アンプリファイヤー20を安定して支持できると共に、姿勢を維持できる。
【0034】
この第2実施形態に係るインシュレーター10では、前記主体部11と接触体部12とを異なる材料によって構成することができる。例えば、主体部11と接触体部12とを異なる金属で構成したり、主体部11を金属製とし、接触体部12を合成樹脂製や木製としたり、あるいは、主体部11と接触体部12とを異なる種類の木材で構成したりすることができる。これら主体部11と接触体部12との材料は、抑制あるいは遮断することを要する振動の性質に応じて選択することができる。特に、音響装置では、木製のインシュレーター10とし、主体部11にカエデ材を、接触体部12にヒッコリー材を用いることで振動を良好に減衰させることができて好ましい。なお、これらの材質に限らず、振動の抑制対象となる機器・装置に応じて適宜な材質のものを選定することが好ましい。
【0035】
以上に説明した実施形態では、音響装置であるアンプリファイヤーの振動を抑制するものとして説明したが、振動の伝搬を抑制することが要求される機器・装置であれば、パーソナルコンピュータや生活家電等にこのインシュレーターを使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明に係るインシュレーターによれば、設置面と接触する載置面を曲率が小さい球面に形成したから、設置面が傾いたり波打った面であったりしても載置面と点接触するから、振動の抑制対象となる機器・装置を安定して支持して、振動の伝搬を抑制し、例えば、音響装置では音質の低下を防止するのに寄与する。
【符号の説明】
【0037】
1 インシュレーター
1a 載置面
1b 主体部
2 保持ブラケット
3 インシュレーター
3a 載置面
3b 主体部
4 保持ブラケット
6 設置面
10 インシュレーター
10a 載置面
11 主体部
11a 球面
11b 収容部
12 接触体部
20 アンプリファイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動の抑制対象となる機器・装置に取り付けられて、前記機器・装置と設置面との間に介在させて、前記機器・装置が発生する振動を抑制するインシュレーターにおいて、
前記設置面に対向した載置面を球面の一部によって形成し、該球面の一部が設置面と接触することを特徴とするインシュレーター。
【請求項2】
球面からなる前記載置面を形成した接触体部と、該接触体部を保持して前記機器・装置に取り付ける主体部とからなることを特徴とする請求項1に記載のインシュレーター。
【請求項3】
前記接触体部及び主体部が木製であることを特徴とする請求項2に記載のインシュレーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−119947(P2012−119947A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268008(P2010−268008)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(510249461)スペック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】