インストルメントパネルの小物収納装置
【課題】小物入れに小物を収納する際に手間がかからず、しかも小物入れに収納できない大型携帯品等の載置棚としても利用できるようにする。
【解決手段】インストルメントパネル1に、後方に開口された穴部20が形成されて、穴部20に対して、引き出し部40が前後方向に変位可能に挿入される。引き出し部40は、トレイ状の底面部41と、底面部41の後端部においてリッド面部45とを有する。リッド面部45に形成された中央切欠部46が、前方への押圧力を受けて開かれる遮蔽体47によって開閉される。リッド面部45には、底面部41の左右側壁部41bよりも高くされた上方延長部48が形成される。
【解決手段】インストルメントパネル1に、後方に開口された穴部20が形成されて、穴部20に対して、引き出し部40が前後方向に変位可能に挿入される。引き出し部40は、トレイ状の底面部41と、底面部41の後端部においてリッド面部45とを有する。リッド面部45に形成された中央切欠部46が、前方への押圧力を受けて開かれる遮蔽体47によって開閉される。リッド面部45には、底面部41の左右側壁部41bよりも高くされた上方延長部48が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネルの小物収納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネルには、走行に必要な各種計器類、オーディオ関係機器、空調関係機器等の主要装備品以外に、小物入れを装備することも一般的に行われている。特許文献1には、横長形状の引き出しトレイを設けたものが開示され、特許文献2あるいは特許文献3には、インストルメントパネルの車幅方向端部に小物入れを装備することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−191058号公報
【特許文献2】特開2005−112121号公報
【特許文献3】実開昭58−161752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の小物入れは、小物の出し入れに際しては、小物入れの開動作と閉動作との両方を行う必要があった。すなわち、小物入れに小物を収納する際には、まず小物入れを開き(引き出し式の場合は引き出し動作がまず行われる)、その後小物を小物入れに入れ、最後に小物入れを閉位置にする(引き出し式の場合は収納動作が行なわれる)、という動作が必要であった。また、小物入れから小物を取り出す際には、まず小物入れを開き、その後小物入れから小物を取出し、最後に小物入れを閉位置にする、という動作が必要であった。このように、小物の出し入れに際して、小物入れの開動作と閉動作との両方を行うのは、かなりの面倒になる。とりわけ、運転者は、自動車に乗り込んだ直後に、小物入れに小物を入れることもよく行われており、小物入れへの小物収納を簡単に行うことができれば便利である。
【0005】
一方、運転者の中には、ポーチ類や大型の財布等小物入れには収納できないような大型携帯品等を、運転中に自分の身近な位置においておくことを習慣とする者が多くなっている。例えば、電子料金徴収システム車載器用のカードを大型の財布に常時収納しておき、必要な区間の走行中のみ大型財布からカードを取り出して車載器に差し込んだり、ポーチの中にコンタクトレンズ位置を調整するのに使用する手鏡や目薬を収納しておき、停車中にこれらを取り出して使用するといったことが行われている。しかしながら、従来の小物入れは、その内部に収納できないような大型携帯品については考慮の対象外として設計されており、したがって、運転者は、大型携帯品を身近に位置させておく際には、小物入れとは全く別の適当な位置、例えば運転者の両腿の間にある運転席シートクッションの上等に便宜的に置いておくようにしている、というのが実情である。
【0006】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、小物入れへの小物の収納を簡単に行うことができ、しかも小物入れに収納できない大型携帯品等の載置棚としても利用できるようにしたインストルメントパネルの小物収納装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第1の解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
自動車のインストルメントパネル前面部に、後方に向けた開口された穴部が形成され、
前記穴部に対して前後方向に移動可能に引き出し部が挿入されて、該引き出し部が該穴部に収納された収納状態と、該穴部より後方に突出された引き出し状態とを選択的にとり得るようにされ、
前記引き出し部は、トレイ状の底面部と、該底面部の後部にあって前記収納位置のときに該穴部を遮蔽すると共にインストルメントパネルと略面一となるようにされて実質的にインストルメントパネルの一部を構成するリッド面部と、を有し、
前記リッド面部は、その上辺部の中央部において下方に凸となるように切り欠かれて前記収納状態のときに前記穴部に臨む中央切欠部と、該中央切欠部を開閉する遮蔽体と、を有し、
前記遮蔽体は、前記引き出し部が前記収納状態にあるときに、前方への押圧力を受けたときに前方へ変位されて前記中央切欠部を開く開位置とされ、
前記リッド面部には、前記底面部における左右一対の側壁部の高さよりも高くされた上方延長部を有する、
ようにしてある。
【0008】
上記解決手法によれば、小物入れに小物を入れる際には、引き出し部を収納状態としたままの状態において、小物を把持した指先でもって遮蔽体を前方へ押圧して中央切欠部を開いた後、把持した小物を穴部内つまり底面部上に置けばよく、小物収納を極めて簡単に行うことができる。また、小物入れに収納できない例えばポーチや大型の財布等の大型携帯品は、引き出し部を引き出し状態にして、その底面部の上につまり左右一対の側壁部に跨って載置しておくことができる。この載置状態では、大型携帯品等は、インストルメントパネルとリッド面部の上方延長部との間に挟まれた状態とされるので、走行中の振動を受けた際や加減速の際にも安定して引き出し部上に載置しておくことができる。
【0009】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
前記各側壁部のうち前記リッド面部に近い位置にある上辺部に、側方切欠部が形成されている、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、引き出し状態にある引き出し部上にポーチ等の大型携帯品等を載置する際に、側方切欠部に大型携帯品の下部をはめ込んでおくことにより、大型携帯品等をより安定して引き出し部上に載置しておくことができる。
【0010】
前記リッド面部のうち前記中央切欠部を挟む左右端部に、前記上方延長部が形成され、
前記上方延長部の上端高さ位置が、前記穴部の上縁高さ位置よりも高くされている、
ようにしてある(請求項3対応)。この場合、上方延長部の高さを十分高くして、引き出し状態にある引き出し部上に大型携帯品等を安定して載置しておく上でより好ましいものとなる。また、上方延長部が、リッド面部の左右端部に有するので(左右一対有するので)、上方延長部を利用した大型携帯品等の安定載置の上でより好ましいものとなる。
【0011】
前記引き出し部を前記収納状態に向けて付勢する付勢手段が設けられている、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、引き出し部を収納状態に復帰させる際に、付勢手段の付勢力を利用して簡単に行うことができる。また、引き出し状態にある引き出し部上に大型携帯品等載置した際に、大型携帯品を付勢手段の付勢力を利用してインストルメントパネルと上方延長部との間で弾力的に挟持することができ、大型携帯品等の安定保持の上でより一層好ましいものとなる。
【0012】
前記穴部が、前記インストルメントパネルのうちステアリングコラムと運転席側サイドドアとの間に形成され、
前記引き出し部は、前記引き出し状態のときに、前記運転席側サイドドアに形成されているアームレストに対して干渉しないようにされている、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、小物入れを、運転者からアクセスし易い位置に設けつつ、アームレストとの干渉を防止することができ、また外部から目視しにくくて盗難に対して安全で、かつコラムレバー類の操作の邪魔にならない位置である等、極めて好ましい位置設定とすることができる。
【0013】
前記遮蔽体は、前方へ向けての押圧力を受けない状態では、前記中央切欠部を閉じている閉位置に保持される、ようにしてある(請求項6対応)。この場合、小物入れに触れないときは、中央切欠部を常に閉位置としておくことができる。
【0014】
前記引き出し部を前記引き出し状態としたときに、前記付勢手段の付勢力に抗して該引き出し部を該引き出し状態に保持しておくためのストッパ機構を備えている、ようにしてある(請求項7対応)。この場合、引き出し部を引き出したままの状態に確実に保持しておくことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、小物入れへの小物の収納を簡単に行うことができ、また小物入れに収納できない大型携帯品等を安定して載置しておく載置棚としても有効利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が適用された自動車の簡略側面図。
【図2】本発明が適用された自動車の簡略平面図。
【図3】ステアリング関係機器類を取外した状態で小物入れ部分を車室内側から見た斜視図。
【図4】小物入れの一例を示す分解斜視図。
【図5】図4に示す引き出し部を遮蔽体を開いた状態で示す斜視図。
【図6】図4に示す小物入れをインストルメントパネルに組み込んだときの側面断面図で、引き出し部が引き出し状態とされているときを示す。
【図7】遮蔽体の引き出し部に対する取付例を示す要部断面図。
【図8】引き出し部のガイド機構の一例を示す要部断面図。
【図9】ストッパ機構の一例を示す側面断面図。
【図10】図9に示すストッパ機構を構成するためのストッパ板を示す斜視図。
【図11】引き出し部を収納状態としたときの状態を示す簡略側面断面図。
【図12】図11の状態から遮蔽体を開いた状態を示す簡略側面断面図。
【図13】引き出された引き出し部上に大型携帯品を載置するときの一例を示す簡略側面断面図。
【図14】引き出された引き出し部上に大型携帯品を載置した別の例を示す簡略側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜図3において、1は車幅方向に長く伸びるインストルメントパネル、2はステアリングホイールで、インストルメントパネル1にステアリングコラム3が保持されている。実施形態では、右ハンドル用とされて、ステアリングホイール2(ステアリングコラム3)は、インストルメントパネル1の右側に位置されている。また、図中4は、運転席側のサイドドアで、このサイドドア4は、車室内側に向けて膨出する運転者用のアームレスト5が形成されている。このアームレスト5の前端部上面に、ウインド開閉用スイッチ6が装備されている。
【0018】
インストルメントパネル1のうち、ステアリングコラム3とサイドドア4との間には、小物入れ10が装備されている。図4〜図6にも示すように、小物入れ10は、大別して、インストルメントパネル1に形成されて後方に向けて開口された穴部20と、穴部20と整合するようにインストルメントパネル1に固定されたケーシング30と、ケーシング30に前後方向にスライド可能に嵌合された引き出し部40と、を有する。小物入れ装置10(引き出し状態の引き出し部40)の上端高さ位置は、アームレスト5の上端高さ位置とほぼ同じかやや低い位置とされ、しかも車幅方向において引き出し状態にある引き出し部40がアームレスト5に干渉しない位置とされている。
【0019】
ケーシング30は、図6に示すように、インストルメントパネル1内に配置されている。そして、ケーシング30は、その前面部に形成されたフランジ部30aを、穴部20の周縁部に着座させた状態で、ビス等の固定具31によってインストルメントパネル1に固定されている。なお、ケーシング30は、金属板あるいは合成樹脂によって形成することができる。
【0020】
引き出し部40は、特に図4,図5に示すように、トレイ状の底面部41を有する。この底面部41は、後壁部41aと、左右一対の側壁部41bとを有する。各側壁部41bのうち、後方(自動車の後方)に近い領域には、その上辺に側方切欠部42が形成されている。側方切欠部52は、深く形成されて、底面部41の底壁部41c近くにまで達している。
【0021】
引き出し部40は、底面部41の後端部において、上方に向けて伸びるリッド面部45を有する。リッド面部45は、その上辺中央部において、中央切欠部46を有すると共に、この中央切欠部46を開閉するための遮蔽体47を有する。中央切欠部46は、リッド面部45の上下方向略中間位置にまで伸びる深さとされている。
【0022】
リッド面部45のうち、中央切欠部46を挟む左右端部45aには、上方延長部48が形成されている。この上方延長部48の上端高さ位置は、前述した左右一対の側壁部41bの高さ位置よりも高くされて、なおかつ、穴部20の上縁高さ位置よりも高い位置となるように設定されている。
【0023】
前記遮蔽体47は、車幅方向に伸ばした回動軸α(図4、図5一点鎖線で示す)を中心として、揺動自在として、リッド面部45(の左右端部45a)に保持されている。この回動軸αは、遮蔽体47の上縁部に沿うように設定されて、遮蔽体47を前方へ押圧することにより、遮蔽体47が回動軸αを中心として前方へ揺動変位されて、中央切欠部46が開かれる。
【0024】
遮蔽体47は、外力が作用しないときは、中央切欠部46を閉じる閉位置に復帰するように設定されている。遮蔽体47の閉位置に向けての自動復帰のために、例えば図7に示すように、回動軸αの端部に車幅方向に短く伸びるコイルバネからなるリターンスプリング49を介在させることができる。図9では、リターンスプリング49は破線によって簡単に示されているが、その付勢力によって、遮蔽体47が中央切欠部46を閉じる閉位置に付勢されている。なお、遮蔽体47をゴム等の弾性部材によって形成して、その弾性復帰力によって閉位置へ向けて自動復帰させるようにしてもよく、あるいは自重によって閉位置に向けて自動復帰させることもできる。
【0025】
引き出し部40は、ケーシング30に対して、ガイド機構32を利用して前後方向にスライド可能に保持されている。このガイド機構32は、例えば、引き出し部40の左右外面に前後方向に伸ばして形成されたガイド凸部33と、ケーシング30の左右側壁内面に前後方向に伸ばして形成されたガイド凹部34とから構成することができる。ガイド凸部33をガイド凹部34に嵌合させた状態で、引き出し部40がケーシング30に対して円滑に前後方向にスライド動される。
【0026】
引き出し部40が所定以上後方へ引き出されてしまうのを防止するため、ストッパ機構35が設けられている。ストッパ機構35は、例えば、図9,図10に示すようなストッパ板36を有する。ストッパ板36は、例えばばね鋼を加工することにより形成されて、下方に向けて凸なるように湾曲された係止凸部36aを有する。このようなストッパ板36は、ガイド凹部34の後端部のうちその上壁内面に対して、ビス等の固定具37によって固定されている。
【0027】
係止凸部36aに対応して、ガイド凸部33の前端部上面には、係止凹部38が形成されている(図6,図9参照)。引き出し部40がケーシング30内にもっとも深く挿入された収納状態から、引き出し部40を後方へ引き出していくと、やがて、係止凹部38に係止凸部36aが嵌合されて、それ以上の引き出し部40の後方へ向けての移動が規制される(クリック機構による係止作用)。引き出し部40を、前方へ向けて押圧することにより、係止凸部36aが係止凹部38から抜け出て、元の収納状態へと復帰される。なお、引き出し部40の点検やケーシング30内の点検等の際には、係止凹部38に係止凸部36aが嵌合された状態で引き出し部40を強く後方へ引っ張ることにより、引き出し部40をケーシング30(穴部20)から引き出すことが可能である。
【0028】
図6に示すように、引き出し部40は、ケーシング30内に配設したリターンスプリング51によって、前方へ向けて常時付勢されている。すなわち、コイルスプリングからなるリターンスプリング51の前端部が、ケーシング30の前壁部内面に一体的に設けられた係合部52に係合され、リターンスプリング51の後端部が、引き出し部40の前端部外面に一体的に設けられた係合部53に係合されている。このリターンスプリング51によって、後方へ引き出された引き出し部40は、外力を開放することにより自動的に収納状態に復帰される。ただし、係止凹部38に係止凸部36aが嵌合している状態では、リターンスプリング51の付勢力に抗して、引き出し部40はその引き出し状態が保持される。
【0029】
次に、以上のような構成の作用について、図11以下を参照しつつ説明する。まず、引き出し部40がケーシング30(穴部20)内に深く挿入された収納状態(図11参照)では、リッド面部45がインストルメントパネル1と略面一とされて、リッド面部45が実質的にインストルメントパネル1の一部を構成する。
【0030】
図11の収納状態から、遮蔽体47を前方へ押圧することにより、中央切欠部46が開かれる(図12参照)。すなわち、引き出し部40上に小物(例えばコインやキー類)を収納する際には、引き出し部40が収納状態にある状態のまま、小物を把持した手指でもって遮蔽体47を押圧して図12のように中央切欠部46を開き、この状態で、中央切欠部47を通してケーシング30(穴部20)内に挿入した手指(特に指先部分)から小物を開放することにより、小物が底面部41上に載置されることになる。この後は、手指を中央切欠部46から引き抜けばよい。このように、中央切欠部46を利用して、引き出し部40を収納状態としたまま、小物を収納することができる。なお、小物の種類や大きさ等によっては、引き出し部40を収納状態にしたまま、中央切欠部46を通して底面部41上の小物を取り出すことも可能である。
【0031】
中央切欠部47を通しての小物収納が難しい場合は、引き出し部40を後方へ引き出した引き出し状態として、底面部41上に小物を載置すればよい。この場合、ストッパ機構35による係止作用によって、引き出し状態が保持されるので、小物の収納も容易である。この後は、引き出し部40を前方へ押圧して、ストッパ機構35の係止作用を解除すれば、リターンスプリング51によって引き出し部40が収納状態へと自動復帰されることになる。
【0032】
引き出し部40は、小物入れとしての機能以外に、引き出し部40には収納できない大きさの大型携帯品(例えば化粧道具を入れたポーチや大型の財布等)の載置棚として機能される。すなわち、引き出し部40を図13に示すように引き出し状態とした後、大型携帯品60を底面部41の左右一対の側壁部41bに跨るように載置すればよい。このとき、底面部41上に載置された大型携帯品は、インストルメントパネル1とリッド面部45の上方延長部48とによって前後方向から挟持されて、安定した載置状態が保持されることになる。引き出し部40をストッパ機構35による係止作用が働かない程度にまで引き出した状態で大型携帯品を載置することにより、リターンスプリング51の付勢力を利用して、大型携帯品60をインストルメントパネル1とリッド面部45の上方延長部48との間で弾力的に挟持することができる。
【0033】
大型携帯品60の前後幅が、底面部41の側方切欠部42の前後幅程度であれば、図14に示すように、大型携帯品60の底部を側方切欠部42内に挿入させておく(はめ込む)ことにより、より安定した状態で、大型携帯品60を引き出し部40上に載置しておくことがきる。
【0034】
本小物入れは、運転者の運転時に視界に入りやすい位置にあるために、小物の出し入れの際に視線移動が少なくてすみ、また貴重品を入れることが多いポーチが目の端に見えているため安心して使用できる、といった効果も有する。
【0035】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。小物入れ10は、インストルメントパネル1のうち助手席側(特に助手席側サイドドアに近い側の端部)に設けたり、ステアリングコラム3と車幅方向中央部に位置するトンネル部との間に設ける等、適宜の位置に設けることができる。もっとも、運転席に着座している運転者(の指先)が容易にアクセスできる位置に設けるのが、運転に気を使わざるを得ない運転者の利便性向上の上で好ましいものとなる。遮蔽体47は、その上縁部を中心に揺動される形式に限らず、その下縁部を中心に揺動される形式としたり、その側縁部を中心に揺動される形式とすることもできる。また、遮蔽体47は、全体として一体的な場合に限らず、例えば左右分割構成として、この分割された左右の分割遮蔽体の車幅方向外端部を上下方向軸線を中心にして回動する形式とすることもできる(いわゆる観音開き形式)。ケーシング30を別途設けることなく、インストルメントパネル1に直接的に、引き出し部40を前後方向にガイドするガイド機構を設けるようにしてもよい。上方延長部48は、中央切欠部46を挟んで左右一対設ける場合に限らず、左右いずれか一方のみ設けるようにしてもよい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は自動車のインストルメントパネルに適用して好適である。
【符号の説明】
【0037】
1:インストルメントパネル
2:ステアリングホイール
3:ステアリングコラム
4:運転席側サイドドア
5:アームレスト
10:小物入れ
20:穴部
30:ケーシング
32:ガイド機構
33:ガイド凸部
34:ガイド凹部
35:ストッパ機構
36:ストッパ板
36a:係止凸部
38:係止凹部
40:引き出し部
41:底面部
41b:側壁部
42:側方切欠部
45:リッド面部
46:中央切欠部
47:遮蔽体
48:上方延長部
51:リターンスプリング
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネルの小物収納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネルには、走行に必要な各種計器類、オーディオ関係機器、空調関係機器等の主要装備品以外に、小物入れを装備することも一般的に行われている。特許文献1には、横長形状の引き出しトレイを設けたものが開示され、特許文献2あるいは特許文献3には、インストルメントパネルの車幅方向端部に小物入れを装備することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−191058号公報
【特許文献2】特開2005−112121号公報
【特許文献3】実開昭58−161752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の小物入れは、小物の出し入れに際しては、小物入れの開動作と閉動作との両方を行う必要があった。すなわち、小物入れに小物を収納する際には、まず小物入れを開き(引き出し式の場合は引き出し動作がまず行われる)、その後小物を小物入れに入れ、最後に小物入れを閉位置にする(引き出し式の場合は収納動作が行なわれる)、という動作が必要であった。また、小物入れから小物を取り出す際には、まず小物入れを開き、その後小物入れから小物を取出し、最後に小物入れを閉位置にする、という動作が必要であった。このように、小物の出し入れに際して、小物入れの開動作と閉動作との両方を行うのは、かなりの面倒になる。とりわけ、運転者は、自動車に乗り込んだ直後に、小物入れに小物を入れることもよく行われており、小物入れへの小物収納を簡単に行うことができれば便利である。
【0005】
一方、運転者の中には、ポーチ類や大型の財布等小物入れには収納できないような大型携帯品等を、運転中に自分の身近な位置においておくことを習慣とする者が多くなっている。例えば、電子料金徴収システム車載器用のカードを大型の財布に常時収納しておき、必要な区間の走行中のみ大型財布からカードを取り出して車載器に差し込んだり、ポーチの中にコンタクトレンズ位置を調整するのに使用する手鏡や目薬を収納しておき、停車中にこれらを取り出して使用するといったことが行われている。しかしながら、従来の小物入れは、その内部に収納できないような大型携帯品については考慮の対象外として設計されており、したがって、運転者は、大型携帯品を身近に位置させておく際には、小物入れとは全く別の適当な位置、例えば運転者の両腿の間にある運転席シートクッションの上等に便宜的に置いておくようにしている、というのが実情である。
【0006】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、小物入れへの小物の収納を簡単に行うことができ、しかも小物入れに収納できない大型携帯品等の載置棚としても利用できるようにしたインストルメントパネルの小物収納装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第1の解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
自動車のインストルメントパネル前面部に、後方に向けた開口された穴部が形成され、
前記穴部に対して前後方向に移動可能に引き出し部が挿入されて、該引き出し部が該穴部に収納された収納状態と、該穴部より後方に突出された引き出し状態とを選択的にとり得るようにされ、
前記引き出し部は、トレイ状の底面部と、該底面部の後部にあって前記収納位置のときに該穴部を遮蔽すると共にインストルメントパネルと略面一となるようにされて実質的にインストルメントパネルの一部を構成するリッド面部と、を有し、
前記リッド面部は、その上辺部の中央部において下方に凸となるように切り欠かれて前記収納状態のときに前記穴部に臨む中央切欠部と、該中央切欠部を開閉する遮蔽体と、を有し、
前記遮蔽体は、前記引き出し部が前記収納状態にあるときに、前方への押圧力を受けたときに前方へ変位されて前記中央切欠部を開く開位置とされ、
前記リッド面部には、前記底面部における左右一対の側壁部の高さよりも高くされた上方延長部を有する、
ようにしてある。
【0008】
上記解決手法によれば、小物入れに小物を入れる際には、引き出し部を収納状態としたままの状態において、小物を把持した指先でもって遮蔽体を前方へ押圧して中央切欠部を開いた後、把持した小物を穴部内つまり底面部上に置けばよく、小物収納を極めて簡単に行うことができる。また、小物入れに収納できない例えばポーチや大型の財布等の大型携帯品は、引き出し部を引き出し状態にして、その底面部の上につまり左右一対の側壁部に跨って載置しておくことができる。この載置状態では、大型携帯品等は、インストルメントパネルとリッド面部の上方延長部との間に挟まれた状態とされるので、走行中の振動を受けた際や加減速の際にも安定して引き出し部上に載置しておくことができる。
【0009】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
前記各側壁部のうち前記リッド面部に近い位置にある上辺部に、側方切欠部が形成されている、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、引き出し状態にある引き出し部上にポーチ等の大型携帯品等を載置する際に、側方切欠部に大型携帯品の下部をはめ込んでおくことにより、大型携帯品等をより安定して引き出し部上に載置しておくことができる。
【0010】
前記リッド面部のうち前記中央切欠部を挟む左右端部に、前記上方延長部が形成され、
前記上方延長部の上端高さ位置が、前記穴部の上縁高さ位置よりも高くされている、
ようにしてある(請求項3対応)。この場合、上方延長部の高さを十分高くして、引き出し状態にある引き出し部上に大型携帯品等を安定して載置しておく上でより好ましいものとなる。また、上方延長部が、リッド面部の左右端部に有するので(左右一対有するので)、上方延長部を利用した大型携帯品等の安定載置の上でより好ましいものとなる。
【0011】
前記引き出し部を前記収納状態に向けて付勢する付勢手段が設けられている、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、引き出し部を収納状態に復帰させる際に、付勢手段の付勢力を利用して簡単に行うことができる。また、引き出し状態にある引き出し部上に大型携帯品等載置した際に、大型携帯品を付勢手段の付勢力を利用してインストルメントパネルと上方延長部との間で弾力的に挟持することができ、大型携帯品等の安定保持の上でより一層好ましいものとなる。
【0012】
前記穴部が、前記インストルメントパネルのうちステアリングコラムと運転席側サイドドアとの間に形成され、
前記引き出し部は、前記引き出し状態のときに、前記運転席側サイドドアに形成されているアームレストに対して干渉しないようにされている、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、小物入れを、運転者からアクセスし易い位置に設けつつ、アームレストとの干渉を防止することができ、また外部から目視しにくくて盗難に対して安全で、かつコラムレバー類の操作の邪魔にならない位置である等、極めて好ましい位置設定とすることができる。
【0013】
前記遮蔽体は、前方へ向けての押圧力を受けない状態では、前記中央切欠部を閉じている閉位置に保持される、ようにしてある(請求項6対応)。この場合、小物入れに触れないときは、中央切欠部を常に閉位置としておくことができる。
【0014】
前記引き出し部を前記引き出し状態としたときに、前記付勢手段の付勢力に抗して該引き出し部を該引き出し状態に保持しておくためのストッパ機構を備えている、ようにしてある(請求項7対応)。この場合、引き出し部を引き出したままの状態に確実に保持しておくことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、小物入れへの小物の収納を簡単に行うことができ、また小物入れに収納できない大型携帯品等を安定して載置しておく載置棚としても有効利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が適用された自動車の簡略側面図。
【図2】本発明が適用された自動車の簡略平面図。
【図3】ステアリング関係機器類を取外した状態で小物入れ部分を車室内側から見た斜視図。
【図4】小物入れの一例を示す分解斜視図。
【図5】図4に示す引き出し部を遮蔽体を開いた状態で示す斜視図。
【図6】図4に示す小物入れをインストルメントパネルに組み込んだときの側面断面図で、引き出し部が引き出し状態とされているときを示す。
【図7】遮蔽体の引き出し部に対する取付例を示す要部断面図。
【図8】引き出し部のガイド機構の一例を示す要部断面図。
【図9】ストッパ機構の一例を示す側面断面図。
【図10】図9に示すストッパ機構を構成するためのストッパ板を示す斜視図。
【図11】引き出し部を収納状態としたときの状態を示す簡略側面断面図。
【図12】図11の状態から遮蔽体を開いた状態を示す簡略側面断面図。
【図13】引き出された引き出し部上に大型携帯品を載置するときの一例を示す簡略側面断面図。
【図14】引き出された引き出し部上に大型携帯品を載置した別の例を示す簡略側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜図3において、1は車幅方向に長く伸びるインストルメントパネル、2はステアリングホイールで、インストルメントパネル1にステアリングコラム3が保持されている。実施形態では、右ハンドル用とされて、ステアリングホイール2(ステアリングコラム3)は、インストルメントパネル1の右側に位置されている。また、図中4は、運転席側のサイドドアで、このサイドドア4は、車室内側に向けて膨出する運転者用のアームレスト5が形成されている。このアームレスト5の前端部上面に、ウインド開閉用スイッチ6が装備されている。
【0018】
インストルメントパネル1のうち、ステアリングコラム3とサイドドア4との間には、小物入れ10が装備されている。図4〜図6にも示すように、小物入れ10は、大別して、インストルメントパネル1に形成されて後方に向けて開口された穴部20と、穴部20と整合するようにインストルメントパネル1に固定されたケーシング30と、ケーシング30に前後方向にスライド可能に嵌合された引き出し部40と、を有する。小物入れ装置10(引き出し状態の引き出し部40)の上端高さ位置は、アームレスト5の上端高さ位置とほぼ同じかやや低い位置とされ、しかも車幅方向において引き出し状態にある引き出し部40がアームレスト5に干渉しない位置とされている。
【0019】
ケーシング30は、図6に示すように、インストルメントパネル1内に配置されている。そして、ケーシング30は、その前面部に形成されたフランジ部30aを、穴部20の周縁部に着座させた状態で、ビス等の固定具31によってインストルメントパネル1に固定されている。なお、ケーシング30は、金属板あるいは合成樹脂によって形成することができる。
【0020】
引き出し部40は、特に図4,図5に示すように、トレイ状の底面部41を有する。この底面部41は、後壁部41aと、左右一対の側壁部41bとを有する。各側壁部41bのうち、後方(自動車の後方)に近い領域には、その上辺に側方切欠部42が形成されている。側方切欠部52は、深く形成されて、底面部41の底壁部41c近くにまで達している。
【0021】
引き出し部40は、底面部41の後端部において、上方に向けて伸びるリッド面部45を有する。リッド面部45は、その上辺中央部において、中央切欠部46を有すると共に、この中央切欠部46を開閉するための遮蔽体47を有する。中央切欠部46は、リッド面部45の上下方向略中間位置にまで伸びる深さとされている。
【0022】
リッド面部45のうち、中央切欠部46を挟む左右端部45aには、上方延長部48が形成されている。この上方延長部48の上端高さ位置は、前述した左右一対の側壁部41bの高さ位置よりも高くされて、なおかつ、穴部20の上縁高さ位置よりも高い位置となるように設定されている。
【0023】
前記遮蔽体47は、車幅方向に伸ばした回動軸α(図4、図5一点鎖線で示す)を中心として、揺動自在として、リッド面部45(の左右端部45a)に保持されている。この回動軸αは、遮蔽体47の上縁部に沿うように設定されて、遮蔽体47を前方へ押圧することにより、遮蔽体47が回動軸αを中心として前方へ揺動変位されて、中央切欠部46が開かれる。
【0024】
遮蔽体47は、外力が作用しないときは、中央切欠部46を閉じる閉位置に復帰するように設定されている。遮蔽体47の閉位置に向けての自動復帰のために、例えば図7に示すように、回動軸αの端部に車幅方向に短く伸びるコイルバネからなるリターンスプリング49を介在させることができる。図9では、リターンスプリング49は破線によって簡単に示されているが、その付勢力によって、遮蔽体47が中央切欠部46を閉じる閉位置に付勢されている。なお、遮蔽体47をゴム等の弾性部材によって形成して、その弾性復帰力によって閉位置へ向けて自動復帰させるようにしてもよく、あるいは自重によって閉位置に向けて自動復帰させることもできる。
【0025】
引き出し部40は、ケーシング30に対して、ガイド機構32を利用して前後方向にスライド可能に保持されている。このガイド機構32は、例えば、引き出し部40の左右外面に前後方向に伸ばして形成されたガイド凸部33と、ケーシング30の左右側壁内面に前後方向に伸ばして形成されたガイド凹部34とから構成することができる。ガイド凸部33をガイド凹部34に嵌合させた状態で、引き出し部40がケーシング30に対して円滑に前後方向にスライド動される。
【0026】
引き出し部40が所定以上後方へ引き出されてしまうのを防止するため、ストッパ機構35が設けられている。ストッパ機構35は、例えば、図9,図10に示すようなストッパ板36を有する。ストッパ板36は、例えばばね鋼を加工することにより形成されて、下方に向けて凸なるように湾曲された係止凸部36aを有する。このようなストッパ板36は、ガイド凹部34の後端部のうちその上壁内面に対して、ビス等の固定具37によって固定されている。
【0027】
係止凸部36aに対応して、ガイド凸部33の前端部上面には、係止凹部38が形成されている(図6,図9参照)。引き出し部40がケーシング30内にもっとも深く挿入された収納状態から、引き出し部40を後方へ引き出していくと、やがて、係止凹部38に係止凸部36aが嵌合されて、それ以上の引き出し部40の後方へ向けての移動が規制される(クリック機構による係止作用)。引き出し部40を、前方へ向けて押圧することにより、係止凸部36aが係止凹部38から抜け出て、元の収納状態へと復帰される。なお、引き出し部40の点検やケーシング30内の点検等の際には、係止凹部38に係止凸部36aが嵌合された状態で引き出し部40を強く後方へ引っ張ることにより、引き出し部40をケーシング30(穴部20)から引き出すことが可能である。
【0028】
図6に示すように、引き出し部40は、ケーシング30内に配設したリターンスプリング51によって、前方へ向けて常時付勢されている。すなわち、コイルスプリングからなるリターンスプリング51の前端部が、ケーシング30の前壁部内面に一体的に設けられた係合部52に係合され、リターンスプリング51の後端部が、引き出し部40の前端部外面に一体的に設けられた係合部53に係合されている。このリターンスプリング51によって、後方へ引き出された引き出し部40は、外力を開放することにより自動的に収納状態に復帰される。ただし、係止凹部38に係止凸部36aが嵌合している状態では、リターンスプリング51の付勢力に抗して、引き出し部40はその引き出し状態が保持される。
【0029】
次に、以上のような構成の作用について、図11以下を参照しつつ説明する。まず、引き出し部40がケーシング30(穴部20)内に深く挿入された収納状態(図11参照)では、リッド面部45がインストルメントパネル1と略面一とされて、リッド面部45が実質的にインストルメントパネル1の一部を構成する。
【0030】
図11の収納状態から、遮蔽体47を前方へ押圧することにより、中央切欠部46が開かれる(図12参照)。すなわち、引き出し部40上に小物(例えばコインやキー類)を収納する際には、引き出し部40が収納状態にある状態のまま、小物を把持した手指でもって遮蔽体47を押圧して図12のように中央切欠部46を開き、この状態で、中央切欠部47を通してケーシング30(穴部20)内に挿入した手指(特に指先部分)から小物を開放することにより、小物が底面部41上に載置されることになる。この後は、手指を中央切欠部46から引き抜けばよい。このように、中央切欠部46を利用して、引き出し部40を収納状態としたまま、小物を収納することができる。なお、小物の種類や大きさ等によっては、引き出し部40を収納状態にしたまま、中央切欠部46を通して底面部41上の小物を取り出すことも可能である。
【0031】
中央切欠部47を通しての小物収納が難しい場合は、引き出し部40を後方へ引き出した引き出し状態として、底面部41上に小物を載置すればよい。この場合、ストッパ機構35による係止作用によって、引き出し状態が保持されるので、小物の収納も容易である。この後は、引き出し部40を前方へ押圧して、ストッパ機構35の係止作用を解除すれば、リターンスプリング51によって引き出し部40が収納状態へと自動復帰されることになる。
【0032】
引き出し部40は、小物入れとしての機能以外に、引き出し部40には収納できない大きさの大型携帯品(例えば化粧道具を入れたポーチや大型の財布等)の載置棚として機能される。すなわち、引き出し部40を図13に示すように引き出し状態とした後、大型携帯品60を底面部41の左右一対の側壁部41bに跨るように載置すればよい。このとき、底面部41上に載置された大型携帯品は、インストルメントパネル1とリッド面部45の上方延長部48とによって前後方向から挟持されて、安定した載置状態が保持されることになる。引き出し部40をストッパ機構35による係止作用が働かない程度にまで引き出した状態で大型携帯品を載置することにより、リターンスプリング51の付勢力を利用して、大型携帯品60をインストルメントパネル1とリッド面部45の上方延長部48との間で弾力的に挟持することができる。
【0033】
大型携帯品60の前後幅が、底面部41の側方切欠部42の前後幅程度であれば、図14に示すように、大型携帯品60の底部を側方切欠部42内に挿入させておく(はめ込む)ことにより、より安定した状態で、大型携帯品60を引き出し部40上に載置しておくことがきる。
【0034】
本小物入れは、運転者の運転時に視界に入りやすい位置にあるために、小物の出し入れの際に視線移動が少なくてすみ、また貴重品を入れることが多いポーチが目の端に見えているため安心して使用できる、といった効果も有する。
【0035】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。小物入れ10は、インストルメントパネル1のうち助手席側(特に助手席側サイドドアに近い側の端部)に設けたり、ステアリングコラム3と車幅方向中央部に位置するトンネル部との間に設ける等、適宜の位置に設けることができる。もっとも、運転席に着座している運転者(の指先)が容易にアクセスできる位置に設けるのが、運転に気を使わざるを得ない運転者の利便性向上の上で好ましいものとなる。遮蔽体47は、その上縁部を中心に揺動される形式に限らず、その下縁部を中心に揺動される形式としたり、その側縁部を中心に揺動される形式とすることもできる。また、遮蔽体47は、全体として一体的な場合に限らず、例えば左右分割構成として、この分割された左右の分割遮蔽体の車幅方向外端部を上下方向軸線を中心にして回動する形式とすることもできる(いわゆる観音開き形式)。ケーシング30を別途設けることなく、インストルメントパネル1に直接的に、引き出し部40を前後方向にガイドするガイド機構を設けるようにしてもよい。上方延長部48は、中央切欠部46を挟んで左右一対設ける場合に限らず、左右いずれか一方のみ設けるようにしてもよい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は自動車のインストルメントパネルに適用して好適である。
【符号の説明】
【0037】
1:インストルメントパネル
2:ステアリングホイール
3:ステアリングコラム
4:運転席側サイドドア
5:アームレスト
10:小物入れ
20:穴部
30:ケーシング
32:ガイド機構
33:ガイド凸部
34:ガイド凹部
35:ストッパ機構
36:ストッパ板
36a:係止凸部
38:係止凹部
40:引き出し部
41:底面部
41b:側壁部
42:側方切欠部
45:リッド面部
46:中央切欠部
47:遮蔽体
48:上方延長部
51:リターンスプリング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のインストルメントパネル前面部に、後方に向けた開口された穴部が形成され、
前記穴部に対して前後方向に移動可能に引き出し部が挿入されて、該引き出し部が該穴部に収納された収納状態と、該穴部より後方に突出された引き出し状態とを選択的にとり得るようにされ、
前記引き出し部は、トレイ状の底面部と、該底面部の後部にあって前記収納位置のときに該穴部を遮蔽すると共にインストルメントパネルと略面一となるようにされて実質的にインストルメントパネルの一部を構成するリッド面部と、を有し、
前記リッド面部は、その上辺部の中央部において下方に凸となるように切り欠かれて前記収納状態のときに前記穴部に臨む中央切欠部と、該中央切欠部を開閉する遮蔽体と、を有し、
前記遮蔽体は、前記引き出し部が前記収納状態にあるときに、前方への押圧力を受けたときに前方へ変位されて前記中央切欠部を開く開位置とされ、
前記リッド面部には、前記底面部における左右一対の側壁部の高さよりも高くされた上方延長部を有する、
ことを特徴とするインストルメントパネルの小物収納装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記各側壁部のうち前記リッド面部に近い位置にある上辺部に、側方切欠部が形成されている、ことを特徴とするインストルメントパネルの小物収納装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記リッド面部のうち前記中央切欠部を挟む左右端部に、前記上方延長部が形成され、
前記上方延長部の上端高さ位置が、前記穴部の上縁高さ位置よりも高くされている、
ことを特徴とするインストルメントパネルの小物収納装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記引き出し部を前記収納状態に向けて付勢する付勢手段が設けられている、ことを特徴とするインストルメントパネルの小物収納装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記穴部が、前記インストルメントパネルのうちステアリングコラムと運転席側サイドドアとの間に形成され、
前記引き出し部は、前記引き出し状態のときに、前記運転席側サイドドアに形成されているアームレストに対して干渉しないようにされている、
ことを特徴とするインストルメントパネルの小物収納装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記遮蔽体は、前方へ向けての押圧力を受けない状態では、前記中央切欠部を閉じている閉位置に保持される、ことを特徴とするインストルメントパネルの小物収納装置。
【請求項7】
請求項4において、
前記引き出し部を前記引き出し状態としたときに、前記付勢手段の付勢力に抗して該引き出し部を該引き出し状態に保持しておくためのストッパ機構を備えている、ことを特徴とするインストルメントパネルの小物収納装置。
【請求項1】
自動車のインストルメントパネル前面部に、後方に向けた開口された穴部が形成され、
前記穴部に対して前後方向に移動可能に引き出し部が挿入されて、該引き出し部が該穴部に収納された収納状態と、該穴部より後方に突出された引き出し状態とを選択的にとり得るようにされ、
前記引き出し部は、トレイ状の底面部と、該底面部の後部にあって前記収納位置のときに該穴部を遮蔽すると共にインストルメントパネルと略面一となるようにされて実質的にインストルメントパネルの一部を構成するリッド面部と、を有し、
前記リッド面部は、その上辺部の中央部において下方に凸となるように切り欠かれて前記収納状態のときに前記穴部に臨む中央切欠部と、該中央切欠部を開閉する遮蔽体と、を有し、
前記遮蔽体は、前記引き出し部が前記収納状態にあるときに、前方への押圧力を受けたときに前方へ変位されて前記中央切欠部を開く開位置とされ、
前記リッド面部には、前記底面部における左右一対の側壁部の高さよりも高くされた上方延長部を有する、
ことを特徴とするインストルメントパネルの小物収納装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記各側壁部のうち前記リッド面部に近い位置にある上辺部に、側方切欠部が形成されている、ことを特徴とするインストルメントパネルの小物収納装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記リッド面部のうち前記中央切欠部を挟む左右端部に、前記上方延長部が形成され、
前記上方延長部の上端高さ位置が、前記穴部の上縁高さ位置よりも高くされている、
ことを特徴とするインストルメントパネルの小物収納装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記引き出し部を前記収納状態に向けて付勢する付勢手段が設けられている、ことを特徴とするインストルメントパネルの小物収納装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記穴部が、前記インストルメントパネルのうちステアリングコラムと運転席側サイドドアとの間に形成され、
前記引き出し部は、前記引き出し状態のときに、前記運転席側サイドドアに形成されているアームレストに対して干渉しないようにされている、
ことを特徴とするインストルメントパネルの小物収納装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記遮蔽体は、前方へ向けての押圧力を受けない状態では、前記中央切欠部を閉じている閉位置に保持される、ことを特徴とするインストルメントパネルの小物収納装置。
【請求項7】
請求項4において、
前記引き出し部を前記引き出し状態としたときに、前記付勢手段の付勢力に抗して該引き出し部を該引き出し状態に保持しておくためのストッパ機構を備えている、ことを特徴とするインストルメントパネルの小物収納装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−84240(P2011−84240A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240300(P2009−240300)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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