説明

インターネットファクシミリ装置及び画像形成装置

【課題】通信モードがプロセス後応答モードに設定されているときに、大容量の画像データを受信する場合であっても、通信タイムアウトによる通信不能に陥ることなく、正常な通信を遂行可能なインターネットファクシミリ装置を得る。
【解決手段】デコード処理が律速となって応答を返すまでに所定値以上の時間を要するような大容量の画像データを受信したとき、通信制御部79は、当該受信データに係るデコード処理完了を待つことなく、当該受信データの発信端末69宛に、一時的エラーを表すエラーコードを返す通信をSMTP通信部71に行わせることにより、当該受信データに係る通信セッションを一旦切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子メールに添付された画像データの通信をダイレクトSMTP方式に従って遂行可能なインターネットファクシミリ装置に係り、特に、通信モードがプロセス後応答モードに設定されているときに、大容量の画像データを受信する場合であっても、通信タイムアウトによる通信不能に陥ることなく、正常な通信を遂行可能なインターネットファクシミリ装置、及びかかるインターネットファクシミリ装置を搭載した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コピー、プリンタ、スキャナ、並びにファクシミリ等の諸機能を併せ持つ、いわゆるMFP(Multi Function Peripheral)とも呼ばれる画像形成装置が普及している。
【0003】
かかるMFPでは、例えば会社内等の限定された範囲での情報通信を実現するために構築されたイントラネットなどと呼ばれるネットワークにて、電子メールに添付された画像データの通信をダイレクトSMTP方式に従って遂行可能なインターネットファクシミリ機能を有するものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
ここで、ダイレクトSMTP方式とは、メールサーバを経由することなしに端末装置間でSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)プロトコルを用いてファクシミリ通信を実現する通信方式をいう。
【0005】
特許文献1に係るダイレクトSMTP方式に従う通信では、データ送信開始を意味するDATAコマンドの後に送られてきた画像データを受信した受信端末は、受信成功を示す応答を送信端末に返信する。かかる応答のタイミングを制御するための通信モードとしては、データ受信完了直後に受信成功を応答する即時応答モードと、受信した画像データを印刷した後又は印刷用にデコードした後に応答するプロセス後応答モードと、がある。
【0006】
このうち、通信モードが後者のプロセス後応答モードに設定されているとき、通信成功に係る応答を受信した送信端末は、その印刷にも成功したであろう旨を認識することができる。このため、プロセス後応答モードは、受信端末での確実な印刷出力を望む画像データの送信時などに重用されている。
【0007】
ところが、通信モードがプロセス後応答モードに設定されているときに、大容量の画像データを受信する場合、受信した画像データを印刷用にデコードする等の処理に時間がかかり過ぎて、受信端末が通信成功に係る応答を送信するまでの間に送信端末側で予め定められた待ち時間を超えてしまい、通信タイムアウトによる通信不能に陥ることが懸念されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−208712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、通信モードがプロセス後応答モードに設定されているときに、大容量の画像データを受信する場合、通信タイムアウトによる通信不能に陥ることが懸念される点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、通信モードがプロセス後応答モードに設定されているときに、大容量の画像データを受信する場合であっても、通信タイムアウトによる通信不能に陥ることなく、正常な通信を遂行可能なインターネットファクシミリ装置を得ることを目的として、電子メールに添付された画像データの通信をダイレクトSMTP方式に従って遂行するSMTP通信部と、装置の通信モードが、受信した前記画像データのデコード処理完了後における所定のタイミングで応答を返すプロセス後応答モードに設定されているときに、前記画像データを受信する毎に、当該受信データに係るデコード処理を遂行させる制御を行うデコード処理制御部と、前記受信データに係る容量相関値を評価する容量相関値評価部と、前記容量相関値評価部で評価された前記受信データに係る容量相関値に基づいて、当該受信データに対する応答を返すまでに所定値以上の時間を要するか否かに係る判定を行う応答時間判定部と、前記応答時間判定部で所定値以上の時間を要する旨の判定が下されたとき、前記受信データに係るデコード処理完了を待つことなく、当該受信データの発信端末宛に、一時的エラーを表すエラーコードを返す通信を前記SMTP通信部に行わせる通信制御部と、を備えたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るインターネットファクシミリ装置では、本装置の通信モードが、受信した画像データのデコード処理完了後における所定のタイミングで応答を返すプロセス後応答モードに設定されているときに、前記画像データを受信する毎に、デコード処理制御部は、当該受信データに係るデコード処理を遂行させる制御を行う。また、容量相関値評価部は、前記受信データに係る容量相関値を評価する。前記容量相関値評価部で評価された前記受信データに係る容量相関値に基づいて、応答時間判定部は、当該受信データに対する応答を返すまでに所定値以上の時間を要するか否かに係る判定を行う。この判定の結果、前記応答時間判定部で所定値以上の時間を要する旨の判定が下されたとき、通信制御部は、前記受信データに係るデコード処理完了を待つことなく、当該受信データの発信端末宛に、一時的エラーを表すエラーコードを返す通信を前記SMTP通信部に行わせる。
【0012】
要するに、本発明に係るインターネットファクシミリ装置では、デコード処理が律速となって応答を返すまでに所定値以上の時間を要するような大容量の画像データを受信したときには、当該受信データに係るデコード処理完了を待っていたのでは通信タイムアウトによる通信不能に陥る懸念があることに鑑みて、当該受信データに係るデコード処理完了を待つことなく、当該受信データの発信端末宛に、一時的エラーを表すエラーコードを返す通信をSMTP通信部に行わせることにより、当該受信データに係る通信セッションを一旦切断することとした。ただし、当該受信データに係るデコード処理は通常通り遂行されるので、例えばデコードエラー等といったエラーが生じない限り、通信に支障を来すことはない。
【0013】
従って、通信モードがプロセス後応答モードに設定されているときに、大容量の画像データを受信する場合であっても、通信タイムアウトによる通信不能に陥ることなく、正常な通信を遂行可能なインターネットファクシミリ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明実施例に係るインターネットファクシミリ装置が搭載された画像形成装置の概略ブロック図である。
【図2】本発明実施例に係る画像形成装置の操作パネル部を表す外観図である。
【図3】本発明実施例に係る画像形成装置の通信モードがプロセス後応答モードに設定されているときに、大容量の画像データを受信したときの、ダイレクトSMTP通信手順を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
通信モードがプロセス後応答モードに設定されているときに、大容量の画像データを受信する場合であっても、通信タイムアウトによる通信不能に陥ることなく、正常な通信を遂行可能なインターネットファクシミリ装置を得るといった目的を、前記応答時間判定部で当該受信データに対する応答を返すまでに所定値以上の時間を要する旨の判定が下されたとき、前記受信データに係るデコード処理完了を待つことなく、当該受信データの発信端末宛に、一時的エラーを表すエラーコードを返す通信を前記SMTP通信部に行わせる通信制御部によって実現した。
【実施例】
【0016】
以下、本発明に係るインターネットファクシミリ装置及び画像形成装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下において、本発明に係るインターネットファクシミリ装置の一例として、インターネットファクシミリ装置を、デジタル複合機(画像形成装置)に組み込み搭載し、所要の画像データの通信に適用した例をあげて説明してゆく。
【0017】
[インターネットファクシミリ装置が搭載されたデジタル複合機(画像形成装置)]
図1は、本発明に係るインターネットファクシミリ装置が搭載されたデジタル複合機(画像形成装置)の主要部を示す機能ブロック図である。
【0018】
本発明実施例に係るデジタル複合機(画像形成装置)10は、例えば、コピージョブ、Fax送信ジョブ、印刷ジョブ、又はネットワーク通信(メール通信、データ通信、インターネットファクシミリ通信)ジョブを含む諸機能が利用可能である。
【0019】
このうち、本発明実施例において主題となるインターネットファクシミリ通信機能は、T.37勧告に準拠したものであり、本機10は、後述するように、例えば会社内等の限定された範囲での情報通信を実現するために構築された、イントラネットなどと呼ばれるローカルエリアネットワーク(LAN)67に接続され、このLAN67にて、電子メールに添付された画像データの通信をダイレクトSMTP方式に従って遂行可能に構成されている。また、本機10は、マイクロコンピュータ及び専用のハードウェア回路等から構成され、マルチタスク処理を実行可能な主制御部11によって制御される。
【0020】
この主制御部11に接続され諸機能を担う入出力機器として、本機10は、スキャナ部21、画像処理部31、エンジン部41、操作パネル部51、ファクシミリ通信部61、HDD(ハードディスクドライブ)63、並びに、ネットワークI/F(インタフェース)部65を備える。
【0021】
主制御部11は、スキャナ機能を実現するための動作制御を行うスキャナコントローラ13と、ファクシミリ機能を実現するための動作制御を行うファクシミリコントローラ15、プリンタ機能を実現するための動作制御を行うプリンタコントローラ17、並びに、コピー機能を実現するための動作制御を行うコピーコントローラ19を内蔵し、本装置全体の動作を統括制御する。
【0022】
スキャナ部21は、図示しないスキャナを構成する画像照射ランプ23及びCCD(電荷結合素子:Charge Coupled Device)センサ25を含む。スキャナ部21は、画像照射ランプ23により原稿を照射し、その反射光をCCDセンサ25で受光することにより、原稿から画像を読み取り、読み取った画像に対応する画像データを画像処理部31へ出力する。
【0023】
画像処理部31は、補正部33、画像加工部35及び画像メモリ37を含む。画像処理部31は、スキャナ部21で読み取られた画像データを必要に応じて補正部33及び画像加工部35により処理し、処理された画像データを画像メモリ37に記憶したり、エンジン部41、ファクシミリ通信部61等へ出力する。補正部33は、スキャナ部21で読み取られた画像データに対してレベル補正、ガンマ補正等の所定の補正処理を行う。画像加工部35は、画像データの圧縮又は伸張処理、及び拡大又は縮小処理等の種々の加工処理を行う。
【0024】
エンジン部41は、図示しない給紙カセットや給紙ローラ等から構成される記録紙搬送部43、図示しない感光体ドラム、露光装置、現像装置等から構成される画像形成部45、図示しない転写ローラ等から構成される転写部47、及び図示しない定着ローラ等から構成される定着部49を含む。エンジン部41は、スキャナ部21で読み取られた画像データ、ネットワークI/F部65を介してLAN(Local Area Network)によりクライアントPC(パーソナルコンピュータ)等から送信されてきた画像データ、或いは、ファクシミリ通信部61によって外部のファクシミリ装置等から受信したファクスデータ等の画像データに基づく画像を記録紙上に印刷する役割を果たす。具体的には、記録紙搬送部43は記録紙を画像形成部45へ搬送し、画像形成部45は上記の画像データに対応するトナー像を形成し、転写部47はトナー像を記録紙に転写し、定着部49はトナー像を記録紙に定着させて画像を形成する。
【0025】
操作パネル部51は、タッチパネル部53及び操作キー部55を含む。操作パネル部51は、ユーザがスキャナ機能、ファクシミリ機能、プリンタ機能、コピー機能等に関する操作を行うために使用され、ユーザによる操作指令等を主制御部11に与える。
【0026】
タッチパネル部53は、タッチパネルとカラーLCD(Liquid Crystal Display)とを組み合わせたタッチパネルユニット等から構成されている。タッチパネル部53は、種々の設定画面、例えば、インターネットファクシミリ機能の実行時には、通信モードの選択設定などの各種項目に係る情報を表示する一方、種々の入力操作画面を表示する役割を果たす。また、タッチパネル部53は、ユーザが該当部分をタッチすることにより種々の操作指令を入力するための操作ボタン類を表示する際、或いは、送信対象となる原稿画像を表示する際にも用いられる。
【0027】
操作キー部55は、ユーザの操作入力を受付けるための複数の操作キーを備えており、例えば、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能など諸機能のなかから、所要機能のキー入力操作をユーザが選択的に実行する際、又は、ユーザが複写部数やコピー実行指令などを操作入力する際などに用いられる。なお、操作キー部55には、所要のジョブ遂行に係る指示を行う際に用いられるスタートキー57が備えられている。
【0028】
ファクシミリ通信部61は、符号化/復号化部(図示省略)、変復調部(図示省略)及びNCU(Network Control Unit)(図示省略)を含む。ファクシミリ通信部61は、スキャナ部21によって読み取られた原稿の画像データを電話回線を介してファクシミリ装置等へ送信したり、ファクシミリ装置等から送信された画像データを受信する。
【0029】
HDD(ハードディスクドライブ)63は、スキャナ部21によって読み取られた画像データ及び同画像データに設定されている出力形式等の種々のデータ等を記憶する。HDDに記憶されている画像データは、画像形成装置、プログラム及び記録媒体内部で使用されるだけでなく、必要に応じて、ネットワークI/F部65を介してクライアントPC等から確認したり、クライアントPCやFTPサーバ等の所定のフォルダへ転送される。
【0030】
ネットワークI/F部65は、ネットワークインタフェース(10/100Base−TX)等を用い、LAN67を介して接続された外部装置(本発明の「発信端末」に相当する。)69に対する種々のデータの送受信を制御する。なお、外部装置69は、パーソナルコンピュータであってもよいし、又は、本機10と同様のインターネットファクシミリ機能を搭載したデジタル複合機(画像形成装置)であってもよい。
【0031】
さて、通信モードがプロセス後応答モードに設定されているときに、大容量の画像データを受信する場合であっても、通信タイムアウトによる通信不能に陥ることなく、正常な通信を遂行可能とするために、主制御部11は、電子メールに添付された画像データの通信をダイレクトSMTP方式に従って遂行するSMTP通信部71と、本装置10の通信モードが、受信した前記画像データのデコード処理完了後における所定のタイミングで応答を返すプロセス後応答モードに設定されているときに、前記画像データを受信する毎に、当該受信データに係るデコード処理を遂行させる制御を行うデコード処理制御部73と、前記受信データに係る容量相関値を評価する容量相関値評価部75と、容量相関値評価部75で評価された前記受信データに係る容量相関値に基づいて、当該受信データに対する応答を返すまでに所定値以上の時間を要するか否かに係る判定を行う応答時間判定部77と、応答時間判定部77で当該受信データに対する応答を返すまでに所定値以上の時間を要する旨の判定が下されたとき、前記受信データに係るデコード処理完了を待つことなく、当該受信データの発信端末69宛に、一時的エラーを表すエラーコードを返す通信をSMTP通信部71に行わせる通信制御部79と、画像データを受信する毎に、前記エラーコードを返した画像データの再送を受信したか否かに係る再送判定を行う再送判定部81と、を備えて構成されている。通信制御部79は、再送判定部81で画像データの再送を受信した旨の判定が下され、かつ、前記受信データに係るデコード処理が完了しているとき、再送に係る画像データの発信端末69宛に、正常応答を即時に返す通信をSMTP通信部71に行わせるように動作する。
【0032】
なお、本発明実施例でいう「ダイレクトSMTP方式」とは、端末装置間でSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)プロトコルを用いてメールサーバを経由することなしに電子メールに添付された画像データの通信を遂行するための通信方式をいう。
【0033】
[インターネットファクシミリ装置が搭載された画像形成装置の動作]
図3は、本発明実施例に係る画像形成装置10の通信モードがプロセス後応答モードに設定されているときに、発信端末69から大容量の画像データを受信したときの、ダイレクトSMTP通信手順を示すシーケンス図である。なお、発信端末69が通信開始を意味する”HELO”コマンドを送った後、電子メールの本文の送信を意味する”DATA”コマンドを送る以前の通信手順については、従来技術と同様であるため、その説明を省略する。また、図3において括弧付き番号はシーケンス番号を示す。
【0034】
図3に示すように、発信端末69から送られてきた”DATA”コマンドを受信(シーケンス番号(以下、「sq」と省略する。)11)した受信端末10は、電子メールに添付された画像データの入力開始を意味するコード”354”を返した後(sq12)、メール添付データ(画像データ)を受信する(sq13)。
【0035】
このメール添付データの受信処理と並行して、受信端末10におけるデコード処理制御部73は、当該受信データに係るデコード処理を遂行させる。
【0036】
メール添付データの送信を終えた発信端末69は、DATA終端である旨を受信端末10宛に通知する(sq14)。
【0037】
この通知を受けて、受信端末10における容量相関値評価部75は、前記受信データに係る容量相関値を評価する。この評価は、受信した画像データに係るファイルサイズ若しくは総ページ数、又はこれらの組合せ(容量相関値)に基づいて行うことができる。
【0038】
次に、受信端末10における応答時間判定部77は、容量相関値評価部75で評価された前記受信データに係る容量相関値に基づいて、当該受信データに対する応答を返すまでに所定値(例えば5分間などの、適宜変更可能な値)以上の時間を要するか否かに係る判定を行う。ここでは、受信データに対する応答を返すまでに10分間を要するものとし、応答時間判定部77は、所定値(5分間)以上の時間を要する旨の判定を下すものとする。
【0039】
すると、受信端末10における通信制御部79は、前記受信データに係るデコード処理完了を待つことなく、当該受信データの発信端末69宛に、一時的エラーを表すエラーコード”4XX”を返す通信をSMTP通信部71に行わせる(sq15)。
【0040】
このエラーコード”4XX”を受けた発信端末69は、通信終了を意味する”QUIT”コマンドを送る(sq16)。
【0041】
この”QUIT”コマンドを受けた受信端末10は、サービス終了を意味するコード”221”を返す(sq17)ことによって、通信セッションが中断される。
【0042】
なお、受信端末10におけるデコード処理制御部73は、通信セッションの中断後であっても、前記受信データに係るデコード処理が完了するまで遂行させる。デコード処理完了後の受信済みデータは、例えば画像メモリ37(図1参照)などの適宜の記憶手段に記憶保持されて、その後の印刷処理等の利用の用途に供される。
【0043】
さて、エラーコード”4XX”は、一般に、受信端末ビジー、メモリフル、デコードエラーなどの、受信端末10の都合により返されるコードである。かかる400番台のコードを受けた端末装置では、再送を行うことがT.37勧告によって推奨されている。
【0044】
そこで、エラーコード”4XX”を受けた発信端末69は、所定時間(例えば30分間などの、適宜変更可能な時間)の待機後に、前記画像データの再送信を行う。
【0045】
すなわち、発信端末69から送られてきた”DATA”コマンドを受信(sq18)した受信端末10は、電子メールに添付された画像データの入力開始を意味するコード”354”を返した後(sq19)、メール添付データ(画像データ)を受信する(sq20)。
【0046】
メール添付データの送信を終えた発信端末69は、DATA終端である旨を受信端末10宛に通知する(sq21)。
【0047】
この通知を受けて、受信端末10における再送判定部81は、前述のエラーコード”4XX”を返した画像データの再送を受信したか否かに係る再送判定を行う。この再送判定は、前記デコード処理完了後の受信済みデータと、再送に係る画像データとの両データに係るファイルサイズが一致するか否か、若しくは前記両データに係る電子メールのヘッダ部におけるメッセージ識別子が一致するか否か、又はこれらの組合せに基づいて行うことができる。
【0048】
この再送判定の結果、前述のエラーコード”4XX”を返した画像データの再送を受信した旨の判定が下され、かつ、前記受信データに係るデコード処理が完了しているとき、通信制御部79は、前記再送に係る画像データの発信端末69宛に、正常応答を即時に返す通信をSMTP通信部71に行わせる。具体的には、受信端末10は、要求された電子メールの処理完了を意味するコード”250”を返す(sq22)。
【0049】
このコード”250”を受けた発信端末69は、通信終了を意味する”QUIT”コマンドを送る(sq23)。
【0050】
この”QUIT”コマンドを受けた受信端末10は、サービス終了を意味するコード”221”を返す(sq24)ことによって、一連の通信セッションが終了する。
【0051】
[実施例の効果]
以上説明したように、本発明実施例に係る画像形成装置(インターネットファクシミリ装置)10では、本装置の通信モードが、受信した画像データのデコード処理完了後における所定のタイミングで応答を返すプロセス後応答モードに設定されているときに、画像データを受信する毎に、デコード処理制御部73は、当該受信データに係るデコード処理を遂行させる制御を行う。また、容量相関値評価部75は、前記受信データに係る容量相関値を評価する。容量相関値評価部75で評価された前記受信データに係る容量相関値に基づいて、応答時間判定部77は、当該受信データに対する応答を返すまでに所定値以上の時間を要するか否かに係る判定を行う。この判定の結果、応答時間判定部77で所定値以上の時間を要する旨の判定が下されたとき、通信制御部79は、前記受信データに係るデコード処理完了を待つことなく、当該受信データの発信端末69宛に、一時的エラーを表す400番台のエラーコードを返す通信をSMTP通信部71に行わせる。
【0052】
要するに、本発明に係る画像形成装置(インターネットファクシミリ装置)10では、デコード処理が律速となって応答を返すまでに所定値以上の時間を要するような大容量の画像データを受信したときには、当該受信データに係るデコード処理完了を待っていたのでは通信タイムアウトによる通信不能に陥る懸念があることに鑑みて、当該受信データに係るデコード処理完了を待つことなく、当該受信データの発信端末69宛に、一時的エラーを表す400番台のエラーコードを返す通信をSMTP通信部71に行わせることにより、当該受信データに係る通信セッションを一旦切断することとした。ただし、当該受信データに係るデコード処理は通常通り遂行されるので、例えばデコードエラー等といったエラーが生じない限り、通信に支障を来すことはない。
【0053】
従って、通信モードがプロセス後応答モードに設定されているときに、大容量の画像データを受信する場合であっても、通信タイムアウトによる通信不能に陥ることなく、正常な通信を遂行可能なインターネットファクシミリ装置を得ることができる。
【0054】
また、画像データを受信する毎に、再送判定部81は、前述のエラーコードを返した前記画像データの再送を受信したか否かに係る再送判定を行い、再送判定部81で前記画像データの再送を受信した旨の判定が下され、かつ、前記受信データに係るデコード処理が完了しているとき、通信制御部79は、前記再送に係る画像データの発信端末69宛に、正常応答を即時に返す通信をSMTP通信部71に行わせる構成を採用した場合には、通信モードがプロセス後応答モードに設定されているときに、大容量の画像データを受信する場合であっても、初送及び再送の都合二回の通信セッションを経ることによって、プロセス後応答モードに係る本来の応答を返すことができる。
【0055】
そして、再送判定部81で画像データの再送を受信した旨の判定が下され、かつ、前記受信データに係るデコード処理が完了しているとき、デコード処理制御部73は、当該再送に係る画像データのデコード処理を遂行させない構成を採用した場合には、既にデコード処理が完了している受信済みデータのデコード処理を重複して行うことを抑制することができる結果として、効率的なジョブ管理及びデータ管理を促進することができる。
【0056】
[その他]
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは技術思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うインターネットファクシミリ装置及び画像形成装置もまた、本発明における技術的範囲の射程に包含される。
【符号の説明】
【0057】
10 インターネットファクシミリ装置を搭載したデジタル複合機(画像形成装置)
11 主制御部
37 画像メモリ
71 SMTP通信部
73 デコード処理制御部
75 容量相関値評価部
77 応答時間判定部
79 通信制御部
81 再送判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子メールに添付された画像データの通信をダイレクトSMTP方式に従って遂行するSMTP通信部と、
装置の通信モードが、受信した前記画像データのデコード処理完了後における所定のタイミングで応答を返すプロセス後応答モードに設定されているときに、前記画像データを受信する毎に、当該受信データに係るデコード処理を遂行させる制御を行うデコード処理制御部と、
前記受信データに係る容量相関値を評価する容量相関値評価部と、
前記容量相関値評価部で評価された前記受信データに係る容量相関値に基づいて、当該受信データに対する応答を返すまでに所定値以上の時間を要するか否かに係る判定を行う応答時間判定部と、
前記応答時間判定部で所定値以上の時間を要する旨の判定が下されたとき、前記受信データに係るデコード処理完了を待つことなく、当該受信データの発信端末宛に、一時的エラーを表すエラーコードを返す通信を前記SMTP通信部に行わせる通信制御部と、
を備えたことを特徴とするインターネットファクシミリ装置。
【請求項2】
請求項1記載のインターネットファクシミリ装置であって、
前記画像データを受信する毎に、前記エラーコードを返した前記画像データの再送を受信したか否かに係る再送判定を行う再送判定部を備え、
前記通信制御部は、前記再送判定部で前記画像データの再送を受信した旨の判定が下され、かつ、前記受信データに係るデコード処理が完了しているとき、前記再送に係る画像データの発信端末宛に、正常応答を即時に返す通信を前記SMTP通信部に行わせる、
ことを特徴とするインターネットファクシミリ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインターネットファクシミリ装置であって、
前記デコード処理制御部は、前記再送判定部で前記画像データの再送を受信した旨の判定が下され、かつ、前記受信データに係るデコード処理が完了しているとき、当該再送に係る画像データのデコード処理を遂行させない、
ことを特徴とするインターネットファクシミリ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のインターネットファクシミリ装置であって、
前記応答時間判定部は、前記容量相関値評価部で評価された前記画像データに係るファイルサイズに基づいて、前記受信データに対する応答を返すまでに所定値以上の時間を要するか否かに係る判定を行う、
ことを特徴とするインターネットファクシミリ装置。
【請求項5】
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のインターネットファクシミリ装置であって、
前記応答時間判定部は、前記容量相関値評価部で評価された前記画像データに係る総ページ数に基づいて、前記受信データに対する応答を返すまでに所定値以上の時間を要するか否かに係る判定を行う、
ことを特徴とするインターネットファクシミリ装置。
【請求項6】
請求項2に記載のインターネットファクシミリ装置であって、
前記再送判定部は、前記デコード処理完了後の受信済みデータと、前記再送に係る画像データとの両データに係るファイルサイズが一致するか否かに基づいて前記再送判定を行う、
ことを特徴とするインターネットファクシミリ装置。
【請求項7】
請求項2に記載のインターネットファクシミリ装置であって、
前記再送判定部は、前記デコード処理完了後の受信済みデータと、前記再送に係る画像データとの両データに係る電子メールのヘッダ部におけるメッセージ識別子が一致するか否かに基づいて前記再送判定を行う、
ことを特徴とするインターネットファクシミリ装置。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか一項に記載のインターネットファクシミリ装置が搭載された画像形成装置であって、
前記インターネットファクシミリ装置を、所要の画像データの通信に適用した、
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−206674(P2010−206674A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51682(P2009−51682)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】