説明

インターフェロン耐性腫瘍の処置のための方法および組成物

【課題】インターフェロン種をコードする組換えベクターの使用によって、インターフェロン耐性腫瘍を処置するための方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、インターフェロン種をコードする組換えベクターの使用によって、インターフェロン耐性腫瘍を処置するための方法を提供する。特に、組換えベクターによって提供されるインターフェロン種が、組換え産生されたインターフェロンタンパク質に関連しない特性を有することが、注目される。本発明は、インターフェロンをコードする組換えベクターを使用して、インターフェロン耐性腫瘍の処置において有用な組成物を、さらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2003年12月10日に出願された米国仮出願番号第60/528,525号の利益を主張し、その出願は、全ての目的のために、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
インターフェロンタンパク質治療は、種々の癌に対する処置として、臨床的環境において十分に確立されている。組換えDNA技術によって産生される2種の広範に使用される市販のインターフェロン種は、インターフェロンα−2b組換え体(IntronA(登録商標)、Schering Corporation)およびインターフェロンα−2a組換え体(Roferon(登録商標)、Hoffman LaRoche、Inc.)である。IntronAは、外科手術と組み合わせた悪性黒色腫の処置、アントラサイクリン化学療法と組み合わせた攻撃的な濾胞性非ホジキンリンパ腫の処置、尖圭コンジローマの病変内処置、ヘアリーセル白血病の病変内処置、およびAIDS関連カポジ肉腫の病変内処置における使用のために必要とされる。Roferonは、フィラデルフィア染色体陽性の慢性骨髄性白血病(CML)の処置およびAIDS関連カポジ肉腫の処置における使用のために必要とされる。
【0003】
さらに、インターフェロン種をコードする組換えベクターの使用に対する研究アプローチによって、抗腫瘍効果(卵巣癌の処置、腎臓癌の処置、および膀胱癌の処置、多発性骨髄腫の処置、黒色腫の処置、特定のリンパ腫の処置および白血病の処置、ならびにカポジ肉腫の処置を含む)が調べられている。インターフェロン(Ad−IFNα)をコードする複製欠損アデノウイルスの抗腫瘍活性は、直接注入の後、種々のヒト腫瘍異種移植(ヒト移行性膀胱癌(TCC)異種移植を含む(非特許文献1))に対して報告されている(非特許文献2)。これらの研究は、インターフェロンが、宿主効果細胞の活性化、増強されたアポトーシス、および脈管形成の阻害によって特徴付けられる、直接的な抗腫瘍活性および顕著な巻き添え(bystander)効果の両方を媒介し得ることを示す。
【0004】
組換えインターフェロンタンパク質の効果について調べられている1つの特に注目すべき適用は、膀胱癌の処置においてである。表在性膀胱癌が、米国において1年あたり、45,000人を超える患者に診断されている。この疾患は、代表的に、尿路上皮の表面内層に由来する、ゆっくりと進行する悪性腫瘍として特徴付けられる。これらの表在性癌のほとんどは、定期的な経尿道的切除(TUR)および監視によって、適切に管理され得るが、それは、最適なアプローチからかけ離れている。なぜなら、表在性腫瘍のうちの60〜70%は、TUR後、再発し、そして30%までが、より攻撃的で、潜在的に致死性の癌に発達するからである。上記高再発率および進行型の予測不能性によって、上記疾患の局所制御のための膀胱内治療の広範な使用がもたらされている。カルメット−ゲラン桿菌(BCG)を膀胱内に注入する免疫療法は、通常、新しく診断された患者において、疾患の進行を遅らせ得る。不運にも、この治療は、腫瘍の根本的な生物学における定量的変化を生じず、多くの患者は、侵襲性で、生命を危うくする癌に対する最終的な進行の相当なリスクが残ったままである。実際に、精密な監視および追跡調査を用いてでさえ、患者のうちの少なくとも50%は最終的に再発し、そして30%は、最初にインサイチュでの癌腫「のみ」を示していたにもかかわらず、転移性膀胱癌で死ぬ(非特許文献3および非特許文献4)。明らかに、より効果的な膀胱内治療が、生存者全体を改善させて、根治的膀胱切除に代わるものを提供するために、必要である。
【0005】
膀胱内のインターフェロン−α2b(IFNα2b)組換え体(IntronA)は、表在性膀胱癌の患者において、単独療法として十分に許容され、多くの国において、この因子についての承認された指標がある。IntronAは、応答の持続性が限られており、ほとんどの患者が、処置の1年以内に再発するが、BCG不全のシナリオにおいて、救助療法として用量依存性の臨床効果を示している(非特許文献5)。最近、IntronAは、BCGに対する細胞性免疫応答を高めて、治療に対する応答を改善するための試みにおいて、BCGと組み合わされている(非特許文献6)。併用療法は、BCG難治性TCCにおいて効果的であるが、これらの初期段階の応答者の多くは、表在性疾患を再発し、最終的に膀胱切開を必要とする。
インターフェロン種をコードする組換えベクターを用いる遺伝子治療は、難治性の表在性膀胱癌の処置に対して有望な代替のアプローチを提供する。局所送達は、尿路上皮におけるトランスジーン発現を最大化し得、膀胱の外の生命維持に必要な器官へのベクターの分布を最小化し得る。さらに、尿路上皮の正常細胞および悪性細胞の両方へ分泌されたタンパク質(例えば、IFNα2b)をコードする効果的な遺伝子の転移は、尿中の持続性局所タンパク質濃縮と同時に起こる効力のある抗腫瘍巻き添え効果を生じ得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Izawaら、「Clin.Cancer Res.」2002年、第8巻、p.1258−1270
【非特許文献2】Ahmedら、「Cancer Gene Therapy」2001年、第8巻、p.788−95
【非特許文献3】Herrら、「J.Urol」2000年、第163巻、p.60−61
【非特許文献4】Dalbagniら、「Urol.Clin.North Am.」2000年、第27巻、p.137−146
【非特許文献5】Belldegrunら、「J.Urol.」1998年、第159(6)巻、p.1793−801
【非特許文献6】O’Donnellら、「J.Urol.」2001年、第166巻、p.1300−1304
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、インターフェロン種をコードする組換えベクターの使用によって、インターフェロン耐性腫瘍を処置するための方法を提供する。特に、組換えベクターによって提供されるインターフェロン種が、入手可能な組換え産生されたインターフェロンタンパク質と関連しない性質を有することが注目される。本発明は、インターフェロンをコードする組換えベクターを使用して、インターフェロン耐性腫瘍の処置において有用な組成物を、さらに提供する。
例えば、本発明は、以下を提供する。
(項目1)
インターフェロン耐性腫瘍を、インターフェロンをコードする組換えベクターと接触させる工程によって、該腫瘍を処置する方法。
(項目2)
前記組換えベクターは、アデノウイルスである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記アデノウイルスは、複製欠損性である、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記インターフェロンは、インターフェロンαである、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記インターフェロンαは、インターフェロンα2b、インターフェロンα2a、およびインターフェロンα2α1からなる群より選択される、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記腫瘍は、腫瘍性膀胱細胞からなる、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記腫瘍細胞は、増強剤に曝露されている、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記増強剤は、Syn3である、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記ベクターおよび前記増強剤は、膀胱上皮に対して膀胱内に注入される、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記インターフェロンは、インターフェロンα2bである、項目9に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、腫瘍退縮に対する膀胱内のAd−IFN−α2α1/Syn3またはAd−IFN−α2b/Syn3の効果のデータを提供する。パネルの左のグラフは、Ad−IFNα2α1/Syn3またはAd−IFNα2b/Syn3処置(P=0.0024)後、21日の処置前の腫瘍の大きさの顕著な減少を示す。全ての他の処置群(Syn3を含まないAd−IFNα2α1またはIFN−α2α1タンパク質単独を含む)は、進行性腫瘍増殖を示した。右の方は、一連の蛍光顕微鏡写真であり、各処置群における個々のマウス由来の処置前の腫瘍画像および21日後にとられた腫瘍画像の代表的な例を提供する。
【図2】図2は、Ad−IFN/Syn3膀胱内処置後の延長されたIFN発現の実例を提供する。パネルAは、IFNの持続性レベルが、Ad−IFNα2b/Syn3で一度処置した胸腺欠損マウスの膀胱のホモジネートにおいて見られることを示し、それは、2回の曝露後、増加した。対照的に、200,000IUのIntronAタンパク質自体を用いる同様の処置は、そのような高いIFNレベルまたは延長されたIFNレベルのいずれも示さなかった。矢印は、処置1および処置2を与えた時を示す。パネルBは、尿路上皮における同様の高レベルのIFNを示すデータを提供し、付近の膀胱腫瘍は、胸腺欠損マウスにおけるAd−IFNα2α1/Syn3を用いた2回の処置後、2日に免疫組織化学分析によって見られる。矢印は、多くの細胞に存在する強い核周囲のIFN染色を示す。パネルCは、同様の高レベルのIFNが、Ad−IFNα2α1/Syn3またはAd−IFNα2b/Syn3のいずれかを用いた処置後、7日に非近交系のBalb−Cマウスの尿路上皮において見られることを示す。尿路上皮における形態的変化は、組織学的検査またはH&E染色部分によって、見られなかった。
【図3】図3は、100,000IUを超えるIntronAに耐性のある膀胱癌細胞株に対するAd−IFN細胞毒性の比較を提供する。パネルAは、コントロール細胞(倍率10×)におけるネガティブIFN染色およびAd−IFNα2α1で処置した253J−BV細胞(倍率40×)における顕著な核周囲のIFN染色を示す。パネルBは、253J B−V細胞における50MOI Ad−IFNα2α1の処置後、48時間でのサブジプロイド細胞の数の増加を示す、フローサイトメトリー分析から提供されるデータである。赤いバーは、サブジプロイド集団を示す。パネルCは、Ad−IFNα2α1処置後のG2/M細胞の数の増加を示し、60%を超える増加を観測した。パネルDは、同様の50 MOIのAd−IFNα2α1における253J B−V細胞に見られるAd−IFNα2αに対する顕著な細胞毒性を示す。50MOIのAd−βgalもまた、コントロールとしてこれらの研究のために使用し、そして細胞毒性は見られず、100,000IUのIntronAで処置した場合、これらの細胞において観察された変化はなかった。同様の結果を、KU7細胞またはAd−IFN−α2bを使用して観測した。
【図4】図4は、カスパーゼ依存性細胞死が、Ad−IFN処置後、IFNタンパク質に対して耐性のある膀胱癌細胞(IFN染色を示さない細胞を含む)に起こることを示す。パネルAは、Ad−IFN−α2α1で処置したKU7細胞または253J−BV細胞を提供する。IFN(赤)およびDNA(青)(上側のパネル)ならびに活性カスパーゼ−3(緑)およびDNA(青)(下側のパネル)についての細胞の三重染色の2つの光学的なチャネルによる2つの融合された画像を、処置後36時間に示す。カスパーゼ活性化および核の凝縮が、IFN(白の矢印)を発現する細胞において見られる。しかし、カスパーゼ活性化はまた、IFN発現細胞(黄色の矢印)の近くに見出されるIFN非発現細胞においても見られ、2つの異なる細胞集団においてIFN発現の巻き添え効果が示される。パネルBは、同様のMOIでのAd−IFN処置後72時間のBV細胞およびKU7細胞におけるカスパーゼ−3活性化の定量化を提供する。
【図5】図5は、膀胱癌細胞についてのAd−IFNおよびIntronAの比較である。パネルAは、2つのMOIでのAd−IFN処置後のBVおよびKU7由来の上清における高くて、かつ持続性のあるIFNの産生を示す。レベルは、両方の細胞株において10,000,000pg/ml(約2,500,000IUのIFN)に達した。各細胞株の培地への400,0000pg/ml(100,000IU/ml)のIntronAの添加を、比較のために示し、6日間にわたって一定のままであった。パネルBは、2,500,000IU/mlのIntronAまたは50MOIのAd−IFN−α2bの添加後、48時間および72時間に示されるサブジプロイド細胞の割合を示す。パネルCは、パネルBと同様の濃度および時間でIntronA処置後に見られるKU7細胞において形態的変化またはIFN染色がないことを示す。対照的に、数個の小さなアポトーシス出現細胞(矢印)(倍率40×)を有するAd−IFN−α2bでの処置後、大きさが増加して、強い核周囲の染色を有する細胞に留意すること。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の詳細な説明および好ましい実施形態)
本発明は、インターフェロン耐性腫瘍を、インターフェロンをコードする組換えベクターと接触させる工程によって、その腫瘍を処置する方法を提供し、その結果、そのベクターによって形質導入された腫瘍細胞は、そのベクターによってコードされるインターフェロンを発現する。
本明細書中で使用される場合、用語「インターフェロン耐性腫瘍」とは、従来のインターフェロン処置プロトコルに従うインターフェロンタンパク質の投与による処置に対して難治性である腫瘍をいう。膀胱癌の場合において、腫瘍が、約1時間の曝露時間で、約100,000,000ユニットのIntronAの6週までの週に1回の投与の膀胱内投与の治療の過程において縮小しない場合、その腫瘍は、インターフェロン処置に対して難治性とみなされる。悪性黒色腫の場合において、腫瘍が、4週間(誘導期)で1週あたり連続して5日間、約20MIU/mのIntronAの静脈内投与、続いて、48週までの(維持期(maintenance phase))間、1週あたり3回の約10MIU/mの用量での静脈内投与を含む処置レジメン後に応答しない場合、その腫瘍は、インターフェロン処置に対して難治性であるとみなされる。広汎性の疾患(例えば、リンパ腫および白血病)の場合において、概して、局在化した腫瘍塊は存在しないが、むしろそれは、腫瘍性の白血球によって特徴付けられる全身性疾患である。本発明の目的のために、腫瘍性に形質転換された細胞は、腫瘍とみなされ得る。濾胞性リンパ腫の場合において、個体が、18ヶ月までの間、1週間あたり3回の5MIUのIntronAの皮下投与を含む処置レジメンに対して応答しない場合、その腫瘍は、インターフェロン処置に対して難治性とみなされる。Ph陽性慢性骨髄性白血病(CML)の場合において、個体が、5ヶ月から長くても18ヶ月までの処置期間、約9MIUのRoferonの毎日の筋肉内注射または皮下注射からなる処置レジメンに対して応答しない場合、その腫瘍は、処置に対して難治性とみなされる。従来のインターフェロンタンパク質治療に対する臨床評価および応答の代替として、腫瘍は、従来のインビトロアッセイ手順に従ってインビトロで決定される場合、インターフェロンタンパク質の投与に対して難治性であると同定され得る。インターフェロン耐性腫瘍としての腫瘍の特徴付けは、本明細書中の実施例6に記載したMTTアッセイに実質的に従って決定される場合、少なくとも100,000ユニットのIntronAタンパク質との接触による増殖阻害に対して耐性である腫瘍を含むインターフェロン耐性腫瘍細胞の曝露によって決定され得る。
【0010】
用語「腫瘍」とは、腫瘍性細胞の集団をいう。用語「腫瘍性細胞」とは、正常な細胞増殖制御に依存しないことによって特徴付けられる異常な増殖表現型を示す細胞をいう。腫瘍性細胞は、任意の所定の時点において必ずしも複製しないので、用語、腫瘍性細胞は、活発に複製してもよく、または一時的に非複製的な休止状態(G1またはG0)であってもよい細胞を包含する。局在化した腫瘍性細胞の集団とは、新生物または腫瘍をいう(これらの用語は、交換可能とみなされる)。上に記したように、本明細書中で使用される場合、用語、腫瘍とはまた、実質的に局在化した腫瘍塊が存在しない広汎性の腫瘍性疾患(例えば、白血病)をいってもよい。新生物または腫瘍は、悪性であっても、良性であってもよい。悪性腫瘍とはまた、癌もいう。好ましい実施形態において、上記腫瘍は、上皮癌(例えば、胸、肺、前立腺、結腸直腸、腎臓、胃、膀胱または卵巣、あるいは胃腸管の任意の癌)である。
【0011】
ほとんどの腫瘍は、概して、発生源において単クローン性であるが、単クローン性起源由来の腫瘍は、時間が経てば分化し得る。従って、腫瘍(広汎性の腫瘍を含む)は、インターフェロン耐性である個々の細胞または細胞小集団、およびインターフェロン処置に感受性のある細胞または細胞小集団を保有してもよい。用語、インターフェロン耐性腫瘍とは、本明細書中の実施例6に記載したMTTアッセイに従って決定される場合、腫瘍を含む細胞の十分な集団(すなわち、少なくとも20%)の細胞が、インターフェロン耐性である腫瘍をいう。
【0012】
本明細書中で使用される場合、用語「処置」とは、腫瘍性細胞を含む目的の組織を、インターフェロンに曝露する目的のために、患者に対するインターフェロンをコードする核酸の導入をいうことを意図する。従って、例えば、「癌性」組織とは、1つ以上の細胞が、癌性、悪性、腫瘍状、前癌性、形質転換されると分類されるか、あるいは腺腫もしくは癌腫、または、通常、これらの状態に関する分野において使用される他の同義語として分類される組織をいうことを意図する。処置が、腫瘍が存在する被験体の生理的状態または精神状態の改善を示す場合、その処置は、治療とみなされ得る。上記状態の改善は、種々の手段(減少した全身腫瘍組織量、腫瘍進行の減少、腫瘍進行の減速化、生存の増加、腫瘍退縮、全身腫瘍組織量(疲労、食欲不振、疼痛、鬱病、好中球減少および認知機能障害が挙げられるが、これらに限定されない)に関連した改善症状を含む)によって、測定され得る。
【0013】
本明細書中で使用される場合、用語「インターフェロン」(「IFN」と省略される)とは、集合的に、1型インターフェロンおよび2型インターフェロン(それらの欠失改変体、挿入改変体または置換改変体、生物学的に活性なフラグメント、および対立遺伝子形態を含む)をいう。本明細書中で使用される場合、用語、インターフェロン(「IFN」と省略される)とは、集合的に、1型インターフェロンおよび2型インターフェロンをいう。1型インターフェロンとしては、インターフェロン−α、インターフェロン−β、およびインターフェロン−ωならびにそれらのサブタイプが挙げられる。ヒトインターフェロン−αは、少なくとも14種の同定されたサブタイプを有するが、インターフェロン−βは、3種の同定されたサブタイプを有する。特に、好ましいインターフェロン−αとしては、ヒトインターフェロンαサブタイプ(α−1(GenBank登録番号NP076918)、α−1b(GenBank登録番号AAL35223)、α−2、α−2a(GenBank登録番号NP000596)、α−2b(GenBank登録番号AAP20099)、α−4(GenBank登録番号NP066546)、α−4b(GenBank登録番号CAA26701)、α−5(GenBank登録番号NP002160およびCAA26702)、α−6(GenBank登録番号CAA26704)、α−7(GenBank登録番号NP066401およびCAA26706)、α−8(GenBank登録番号NP002161およびCAA26903)、α−10(GenBank登録番号NP002162)、α−13(GenBank登録番号NP008831およびCAA53538)、α−14(GenBank登録番号NP002163およびCAA26705)、α−16(GenBank登録番号NP002164およびCAA26703)、α−17(GenBank登録番号NP067091)、α−21(GenBank登録番号P01568およびNP002166)、ならびにStabinsky、1996年、7月30日に発行された米国特許第5,541,293号、Stabinsky、1990年、1月30日に発行された米国特許第4,897,471号、およびStabinsky、1987年、9月22日に発行された米国特許第4,695,629号(それらの教示は、参考として本明細書中に援用される)に記載されたようなコンセンサスインターフェロン(consensus interferon)、ならびにGoeddelら、1983年、11月8日に発行された米国特許第4,414,150号(その教示は、本明細書中に援用される)に記載されたようなハイブリッドインターフェロン(hybrid interferon)が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる。2型インターフェロンとは、インターフェロンγ(EP77,670AおよびEP146,354A)およびサブタイプをいう。ヒトインターフェロンγは、少なくとも5種の同定されたサブタイプ(インターフェロンω1(GenBank登録番号NP002168))を有する。発現のためのインターフェロンをコードするDNA配列の構築は、上に参照した周知のアミノ酸配列およびGoeddelら、2002年、11月19日に発行された米国特許第6,482,613号(その教示は、本明細書中に参考として援用される)に記載されたような周知のアミノ酸配列に基づいて、従来の組換えDNA技術によって、達成され得る。
【0014】
インターフェロンの「生物学的に活性な」フラグメントは、当該分野における周知の技術(例えば、Openakkerら、前出;Mossman、J.Immunol.Methods、65:55(1983)を参照のこと)によって測定される場合、任意の抗腫瘍活性または抗増殖性活性を有すると認められ得、そして、IFNレセプター媒介機構を介してIFN応答性遺伝子を活性化させる。溶解性のIFN−αタンパク質およびIFN−βタンパク質は、一般に、1型IFNレセプター複合体(GenBank登録番号NP000865)と会合すると認められ、類似の細胞内のシグナル伝達経路を活性化させる。IFN−γは、一般に、II型IFNレセプターと会合すると認められる。両方のIFNレセプターの型のリガンド誘導会合は、Janusキナーゼによって、そのレセプターのリン酸化を生じ、続いて、STAT(シグナルトランスデューサーおよび転写の活性化因子)タンパク質およびIFN誘導性遺伝子に存在するIFN応答エレメントに結合するIFN誘導性転写因子の形成を導くさらなるリン酸化の現象を活性化させる。1型IFNレセプターおよび/または2型IFNレセプターと会合後、IFN経路を活性化させると認められるポリペプチドは、本発明の目的のためのインターフェロンとみなされる。
【0015】
用語「組換えベクター」とは、従来の組換えDNA技術を用いて調製されているインターフェロン発現カセットを含むウイルス性ベクターおよび非ウイルス性ベクターをいう。用語「インターフェロン発現カセット」とは、細胞中のインターフェロンの転写および翻訳を生じるために、配列をコードするインターフェロンに作動可能に連結された調節性エレメントを含むヌクレオチド配列を定義するために本明細書中で使用される。用語「調節性エレメント」とは、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位などをいう。上記発現カセットはまた、インターフェロン遺伝子の発現および/または分泌を援助する他の配列を含んでもよい。調節性エレメントは、特定の細胞型においてのみ、インターフェロンの発現を可能、増強または促進するために、配置され得る。例えば、上記発現カセットは、インターフェロンが、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、または腫瘍特異的プロモーター、あるいは一時性のプロモーターの制御下であるように設計され得る。一般に、インターフェロンは、機能的発現のための適切な間隔で連続して連結される以下のエレメント:プロモーター、転写のための開始部位、3’非翻訳領域、5’mRNAリーダー配列、インターフェロンポリペプチドをコードする核酸配列、およびポリアデニル化シグナルを含む発現ベクター中に提供される。
【0016】
用語「作動可能に連結された」とは、機能的関係におけるポリヌクレオチドエレメントの連結をいう。核酸配列は、別の核酸配列と機能的関係に置かれる場合、「作動可能に連結され」る。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列の転写に影響する場合、コード配列に作動可能に連結される。作動可能に連結されたとは、連結されるヌクレオチド配列が、代表的に隣接することを意味する。しかし、エンハンサーは、一般に、プロモーターから数キロベース離れた場合に機能し、イントロン配列は、可変長であってもよく、いくつかのポリヌクレオチドエレメントは、作動可能に連結され得るが、直接的に隣接し得ず、異なる対立遺伝子または染色体からトランスにおいてさえ機能し得る。
【0017】
用語「誘導性プロモーター」とは、好ましくは(または単に)特定の条件下および/または外部の化学刺激もしくは他の刺激に応答して、インターフェロン導入遺伝子の転写を促進するプロモーターをいう。誘導性プロモーターの例は、科学文献(例えば、Yoshidaら、Biochem.Biophys.Res.Comm.、230:426−430(1997);Iidaら、J.Virol.、70(9):6054−6059(1996);Hwangら、J.Virol.、71(9):7128−7131(1997;Leeら、Mol.Cell.Biol.17(9):5097−5105(1997);およびDreherら、J.Biol.Chem.、272(46):29364−29371(1997))を参照のこと)において公知である。放射線誘導プロモーターの例としては、EGR−1プロモーターが挙げられる(Boothmanら、第138巻、補遺、S68−S71ページ(1994))。
【0018】
組織特異的プロモーターおよび腫瘍特異的プロモーターは、当該分野において周知であ
り、それらとしては、平滑筋において優先的に活性なプロモーター(α−アクチンプロモーター)、膵臓特異的(Palmiterら、Cell、50:435(1987))、肝臓特異的(Rovetら、J.Biol.Chem.267:20765(1992);Lemaigneら、J.Biol.Chem.、268:19896(1993);Nitschら、Mol.Cell.Biol.、13:4494(1993))、胃特異的(Kovarikら、J.Biol.Chem.、268:9917(1993))、下垂体特異的(Rhodesら、Genes Dev.、7:913(1993))、前立腺特異的(Hendersonら、1997年、12月16日に発行された米国特許第5,698,443号)などが挙げられる。
【0019】
用語「一時性のプロモーター」とは、応答エレメントの発現を制御するプロモーターに関連するウイルス性サイクルの後の点で、インターフェロン導入遺伝子の転写を促進するプロモーターをいい、それは、ウイルス性ベクター系と併せて使用される。そのような一時性の調節されたプロモーターの例としては、アデノウイルス主要後期プロモーター(MLP)、および他の後期プロモーターが挙げられる。単純ヘルペスウイルスに関して、一時性プロモーターの例としては、潜在的な活性化されたプロモーターが挙げられる。
【0020】
用語「非ウイルス性ベクター」とは、自発的に複製する染色体外の環状DNA分子をいい、正常なゲノムと区別されて、標的細胞において配列をコードするインターフェロンの発現に影響し得る非選択的条件下で、細胞生存のために必要不可欠でない。プラスミドは、細菌の生成を促進するために、細菌中で自発的に複製するが、配列をコードするインターフェロンを含むそのようなプラスミドが、治療効果を達成するために、標的細胞中で複製する必要はない。さらなる遺伝子(例えば、薬剤耐性をコードする遺伝子)が、組換えベクターの存在に関しての選択またはスクリーニングを可能にするために、含まれ得る。そのようなさらなる遺伝子としては、例えば、ネオマイシン耐性、多剤耐性、チミジンキナーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子が挙げられ得る。
【0021】
特定の組織または器官へのインターフェロン遺伝子の送達を促進するために、細胞標的化を促進する非ウイルス性送達システムにエレメントを組み込むことが、有益であり得る。例えば、液体のカプセル化された発現プラスミドは、標的化を促進するために、改変された表面細胞レセプターリガンドを組み込み得る。単独のリポソーム処方物が投与され得るが、本発明の所望の組成物で充填または装飾されたいずれかのリポソームは、全身に送達され得るか、または目的の組織に方向付けられ得、次いで、そのリポソームは、選択された治療的/免疫原性ペプチド組成物を送達する。そのようなリガンドの例としては、抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、キメラ抗体またはそれらの機能的フラグメント(Fv、Fab、Fab’)が挙げられる。あるいは、非ウイルス性ベクターは、Wuら、1992年、11月24日に発行された米国特許第5,166,320号、およびWuら、1997年、6月3日に発行された米国特許第5,635,383号(それらの教示は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、標的部分にポリリシン部分を介して連結され得る。
【0022】
用語「ウイルスベクター」および「ウイルス」とは、本明細書中で交換可能に使用され、タンパク質合成機構もエネルギー生成機構を有さない任意の偏性細胞内寄生物をいう。ウイルス性ゲノムは、脂質膜のタンパク質のコーティングされた構造を含むRNA、またはDNAであってもよい。用語、ウイルスおよびウイルス性ベクターは、本明細書中で交換可能に使用される。本発明の実施に有用なウイルスとしては、組換え改変されたエンベロープDNAウイルスおよびエンベロープRNAウイルスまたは非エンベロープDNAウイルスおよび非エンベロープRNAウイルスが挙げられ、好ましくは、バキュロウイルス科、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科(picornoviridiae)、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科、またはアデノウイルス科から選択される。上記ウイルスは、天然に存在するウイルスであってもよく、またはそれらのウイルスゲノムは、外因性の導入遺伝子の発現を含むように組換えDNA技術によって改変されてもよく、複製欠損性(条件付きで、複製または複製可能)であるように操作されてもよい。親ベクターの性質の各々の有利なエレメントを利用するキメラウイルスベクター(例えば、Fengら、Nature Biotechnology、15:866−870(1997)を参照のこと)もまた、本発明の実施において有用であり得る。ウイルス骨格が、ウイルスベクターのパッケージングのために必要な配列のみを含み、必要に応じて、導入遺伝子発現カセットを含み得る最小のベクター系は、本発明の実施に従って、産生され得る。一般に、処置される種由来のウイルスを使用することが好ましいが、いくつかの場合において、好ましい病原菌特性を有する異なる種由来のベクターを使用することが有益であり得る。例えば、ヒト遺伝子治療のためのウマヘルペスウイルスベクターは、1998年、8月5日に公開されたPCT国際公開番号WO98/27216に記載されている。上記ベクターは、ウマウイルスが、ヒトに対して病原性がないので、ヒトの処置のために有用であると記載されている。同様に、ヒツジのアデノウイルスベクターもまた、ヒト遺伝子治療において使用され得、それらは、ヒトアデノウイルスベクターに対する抗体を回避すると主張されている。そのようなベクターは、1997年、4月10日に公開されたPCT国際公開番号WO97/06826に記載されている。
【0023】
用語「複製欠損」とは、野生型の哺乳動物細胞において複製に関して非常に弱められるベクターをいう。多数のそのようなベクターを産生する為に、一般に、プロデューサー細胞株が、ヘルパーウイルスを用いた同時トランスフェクションによって作製されるか、または機能性を欠く相補体にゲノム的に改変される。例えば、HEK293細胞は、相補体アデノウイルスE1欠失に操作されており、293細胞においてE1を欠失した複製欠損アデノウイルスベクターの増殖を可能にする。用語「複製コンピテントウイルスベクター」とは、感染、DNA複製、パッケージング、および感染した細胞の溶解をし得るウイルスベクターをいう。用語「条件付きで複製するウイルスベクター」とは、特定の細胞型における選択的発現を達成するために設計される複製コンピテントベクターをいうために本明細書中で使用される。そのような条件付きの複製は、作動的に組織特異的、腫瘍特異的または細胞型特異的、あるいは他の選択的に誘導された調節性コントロール配列を、初期遺伝子(例えば、アデノウイルスベクターのE1遺伝子)に結合することによって、達成され得る。
【0024】
細胞型特異的または細胞型標的化はまた、ウイルスエンベロープタンパク質の改変によって特徴的に広範な感染性を有するウイルス由来のウイルスベクターにおいて達成され得る。例えば、固有の細胞表面レセプターと特異的な相互作用を有する修飾されたノブ(knob)ドメインおよびファイバードメインの発現を達成するために、ウイルスゲノムノブおよびファイバーコード配列の選択的な修飾による細胞標的化は、アデノウイルスベクターを用いて達成された。そのような修飾の例は、Wickhamら、J.Virol.、71(11):8221−8229(1997)(アデノウイルスファイバータンパク質へのRGDペプチドの組み込み);Arnbergら、Virology、227:239−244(1997)(眼および生殖管に対する向性を達成するためのアデノウイルスファイバー遺伝子の修飾);Harrisら、TIG、12(10):400−405(1996);Stevensonら、J.Virol.71(6):4782−4790(1997);Michaelら、Gene Therapy、2:660−668(1995)(アデノウイルスファイバータンパク質へのガストリン放出ペプチドフラグメントの組み込み);およびOhnoら、Nature Biotechnology、15:763−767(1997)(シンドビスウイルスへのタンパク質A−IgG結合ドメインの組み込み)に記載されている。細胞特異的標的化の他の方法は、エンベロープタンパク質への抗体または抗体フラグメントの結合によって達成された(例えば、Michaelら、J.Biol.Chem.、268:6866−6869(1993)、Watkinsら、Gene Therapy、4:1004−1012(1997);Douglasら、Nature Biotechnology、14:1574−1578(1996)を参照のこと)。あるいは、特定の部分が、標的化を達成するために、ウイルス表面に結合され得る(例えば、Nilsonら、Gene Therapy、3:280−286(1996)(レトロウイルスタンパク質へのEGFの結合)を参照のこと)。ベクターの標的化はまた、Murphy、2003年、10月21日に発行された米国特許第6,635,476号(その教示は、本明細書中に参考として援用される)の教示に従って達成され得る。これらの標的化修飾は、ウイルスゲノムに対する他の修飾に加えて、またはそれと組み合わせて本発明のウイルスベクター内に導入され得る。標的化修飾は、複製欠損、複製コンピテントまたは従来の複製ウイルスを用いて使用され得る。
【0025】
あるいは、ウイルスベクターを用いる細胞型標的化は、ウイルス複製のリプレッサーを駆動する経路応答性プロモーターの使用を介して達成され得る。用語「経路応答性プロモーター」とは、正常細胞において、特定のタンパク質に結合し、そして付近の遺伝子をこのタンパク質の結合に転写的に応答させるDNA配列をいう。そのようなプロモーターは、転写因子が結合する配列である応答性エレメントを組み込むことによって作製され得る。そのような応答は一般に、誘導性であるが、増加するタンパク質レベルが転写を減少させるいくつかの場合がある。経路応答性プロモーターは、天然に存在するかまたは合成であり得る。経路応答性プロモーターは代表的に、標的である機能的タンパク質の経路に関して構築される。例えば、天然に存在するp53経路応答性プロモーターは、機能的p53(例えば、p21プロモーターまたはbaxプロモーター)の存在によって活性化される転写制御エレメントを含む。あるいは、最小プロモーター(例えば、SV40 TATAボックス領域)の上流にp53結合部位を含む合成プロモーターが、合成経路応答性プロモーターを作製するために使用され得る。合成経路応答性プロモーターは一般的に、コンセンサス結合モチーフに適合する配列の1つ以上のコピーから構築される。そのようなコンセンサスDNA結合モチーフは、容易に決定され得る。そのようなコンセンサス配列は一般的に、直接反復または数塩基対隔てられた頭−尾反復として配置される。頭−頭反復を含むエレメントは、パリンドロームまたは逆方向反復と呼ばれ、そして尾−尾反復を有するものは外翻(everted)反復と呼ばれる。
【0026】
本発明の好ましい実施において、上記ウイルスベクターは、アデノウイルスである。用語「アデノウイルス」は、用語「アデノウイルスベクター」と同義語(synonomous)であり、アデノウイルス科の属のウイルスをいう。用語、アデノウイルス科とは、ヒト、ウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ブタ、マウスおよびサルのアデノウイルス亜属を含むが、これらに限定されない、マストアデノウイルス属の動物のアデノウイルスを集合的にいう。詳細には、ヒトアデノウイルスとしては、A−F亜属ならびにその個々の血清型が挙げられ、個々の血清型およびA−F亜属は、ヒトアデノウイルス1型、2型、3型、4型、4a型、5型、6型、7型、8型、9型、10型、11型(Ad11AおよびAd11P)、12型、13型、14型、15型、16型、17型、18型、19型、19a型、20型、21型、22型、23型、24型、25型、26型、27型、28型、29型、30型、31型、32型、33型、34型、34a型、35型、35p型、36型、37型、38型、39型、40型、41型、42型、43型、44型、45型、46型、47型、48型、および91型を含むが、これらに限定されない。用語、ウシアデノウイルスは、ウシアデノウイルス1型、2型、3型、4型、7型および10型を含むがこれらに限定されない。用語、イヌアデノウイルスは、イヌ型1(CLL株、Glaxo株、RI261株、Utrect株、Toronto26−61株)および2型を含むがこれらに限定されない。用語、ウマアデノウイルスは、ウマ1型および2型を含むがこれらに限定されない。用語、ブタアデノウイルスは、ブタ3型および4型を含むがこれらに限定されない。用語、ウイルスベクターは、複製欠損ウイルスベクター、複製コンピテントウイルスベクター、および条件付きで複製するウイルスベクターを含む。
【0027】
ヒトアデノウイルス2型および5型に由来するベクターが、より好ましい。それらのベクターは、それらの治療的能力を高めるために特定の改変に組み込まれ得る。例えば、上記ベクターは、E1a遺伝子およびE1b遺伝子の欠失を含み得る。特定の他の領域が、特定の機能を提供するために増強され得るか、または欠失され得る。例えば、E3領域のアップレギュレーションは、ヒト被検体に投与されるヒトアデノウイルスベクターに関する免疫原生を減少させると記載されている。E4領域は、CMVプロモーターからの導入遺伝子の発現に重要に関係しているが、しかしE4orf6タンパク質は、E1b大タンパク質の存在下で標的細胞におけるp53の分解をもたらすと記載されている(Steegengaら、Oncogene、16:345−347(1998))。従って、アデノウイルスベクターのそのような配列の除去が、好ましい。
【0028】
本発明の1つの実施形態において、インターフェロン遺伝子を送達するために、複製コンピテントベクターを使用する場合、E1a CR3ドメインのトランス活性化機能を保持しているが、p300タンパク質およびRbタンパク質に結合するためのE1a遺伝子産物の能力を減少させるために、E1A領域の特定の欠失を含むアデノウイルスベクターを使用することが、好ましい。本発明のベクターは、E1aコード配列の欠失を有し、13Sコード配列においてp300結合部位およびp105−Rb結合部位が除去される。本発明の1つの好ましい実施形態において、p300結合の欠失は、アミノ酸ほぼ4〜ほぼ25、またはアミノ酸ほぼ36〜49の欠失により示される。本発明の1つの好ましい実施形態において、Rb結合の欠失は、アミノ酸ほぼ111〜127、好ましくはアミノ酸ほぼ111〜123の除去により示される。より好ましくは、E1a−p300結合ドメインの欠失が、アデノウイルスE1a遺伝子産物のアミノ酸4〜25についてのコドンの欠失を含む、ベクターである。より好ましくは、E1a−Rb結合ドメインの欠失が、アデノウイルスE1a遺伝子産物のアミノ酸111〜123についてのコドンの欠失を含む、ベクターである。あるいは、pRb結合は、E1A 289Rタンパク質および243Rタンパク質のアミノ酸124〜127を除去するような変異の導入によって除去され得る。本明細書中に例示されるような本発明の最も好ましい実施形態において、上記ベクターは、E1a 13S遺伝子産物のアミノ酸4〜25およびアミノ酸111〜123の欠失を含む。
【0029】
さらに、E1a 289Rタンパク質のアミノ酸ほぼ219〜289およびE1A 243Rタンパク質のアミノ酸ほぼ173〜243の除去が、導入され得る。例えば、ヒトAd5ゲノムの1131位に対応する位置での点変異の導入(すなわち、シトシン1131をグアニンに変化すること)により、終止コドンを作製する。この変異は、E1a 289Rタンパク質のアミノ酸219〜289およびE1A 243Rタンパク質のアミノ酸173〜243の除去を生じる。この変異は、上記のRb結合およびp300結合における欠失に加えて、必要に応じて作製される。
【0030】
本発明の実施は、上記腫瘍を、インターフェロンをコードする組換えベクターと「接触させる工程」を包含する。上記腫瘍細胞の接触は、組換えベクターと腫瘍細胞の曝露によって達成され、その結果、上記腫瘍細胞は、上記ベクターによってコードされるインターフェロンを発現するベクターによって形質導入される。上記腫瘍を、上記ベクターに接触させる特定の手段は、そのベクターが送達される腫瘍の性質に依存して異なる。本発明のいくつかの実施形態において、本発明の組成物は、注射によって組織内に直接か、または目的の組織に供給される血管に投与され得る。本発明のさらなる実施形態において、局所投与が好ましいが、上記腫瘍部位への物理的接近を得ることが難しい場合、上記組成物は、離れた目的の組織(例えば、内部器官)への接近を可能にするために、カテーテルまたは他のデバイスを介して投与される。本発明の組成物はまた、その組成物のゆっくりとした放出または除放を可能にするために、貯蔵型デバイス、ポンプ、移植物、または処方物で投与され得る。本発明のさらなる実施形態において、本発明の組成物は、「移動領域的に(locoregionally)」(すなわち、膀胱内、病巣内、および/または局所内に)投与される。本発明の他の実施形態において、特に、広汎性の腫瘍(例えば、白血病)または転移性疾患を処置する場合、本発明の組成物は、静脈内投与経路または動脈内投与経路によって全身的に投与され得る。
【0031】
本発明の実施を実証するために、ヒトアデノウイルス5型ウイルス由来の組換えベクターを、インターフェロン種をコードするために使用した。IFNα遺伝子を含む2種のアデノウイルスベクターを、これらの研究において評価した。1つのベクターは、ヒトインターフェロンα2b遺伝子(Ad−IFNα2b)を含み、もう一方は、ヒトα1C−末端に結合したヒトα2N−末端からなるキメラヒト「ハイブリッド」インターフェロン遺伝子(Ad−IFNα2α1)を含んだ。IFN活性は、一般に、限定された種であるが、上記ハイブリッドインターフェロン(別名「ユニバーサル(universal)」またはIFN A/D)は、マウスおよびヒトを含む種々の哺乳動物種由来の細胞上で活性である。これらの2種のインターフェロンベクターは、ヒト腫瘍についての組換えIFNαベクター効果、ならびにマウスモデルにおいて存在するヒト腫瘍のマウス細胞および異種移植細胞の両方の細胞において応答を誘発し得るハイブリッドインターフェロンの広範な効果の評価を可能にした。
【0032】
膀胱内のIFN遺伝子に対する応答およびタンパク質治療を評価するために、ヌードマウスにおける垂直向性膀胱腫瘍モデルを使用した。上記モデルは、Watanabeら、Cancer Gene Therapy、7:1575−1580(2000)およびZhouら、Cancer Gene Therapy、9:681−686(2002)に記載されている。処置後21日に得た膀胱の組織学的部分に見出される腫瘍の量は、画像化によって計算された全身腫瘍組織量と非常に相関していた。膀胱内処置の前に、各マウスの膀胱内のKU7細胞の全身腫瘍組織量を、上記癌細胞を、Watanabeらの教示に従って注入した後、2週間、画像化して、定量した。膀胱内注入のために、上記ベクターを、Syn3とともに投与した(実施例1)。次いで、上記マウスに、本明細書中の実施例に記載したように、2日間連続して1時間、種々の膀胱内処置を与えた。3週間後、膀胱を、全身腫瘍量の変化のために再び画像化した。添付の図面の図1に示したように、Ad−IFNα2α1/Syn3またはAd−IFNα2b/Syn3のいずれかを使用した場合、顕著な腫瘍退縮を観察した(P<0.0024)。対照的に、腫瘍は、コントロールAd−βgal/Syn3、Ad−IFNα2α1、またはSyn3単独での処置後、急速に増殖した。これらの結果は、Syn3が、IFNαをコードするアデノウイルスベクターの効果を著しく高めたことを示す。
【0033】
膀胱内のIFNαタンパク質を、表在性膀胱癌のための臨床試験において、単独またはBCGと組み合わせて使用するので、インターフェロンタンパク質治療に対するAd−IFNの活性の差異をさらに詳細にするために実験を行った。ハイブリッドインターフェロンタンパク質の効果を、上記の同所性腫瘍モデルにおけるAd−IFNα2α1と比較した。200,000ユニット(2MIU/ml)のIFNα2α1タンパク質を、2日間連続して1時間、膀胱内に与えた場合、有意な腫瘍退縮は示さなかった。IFNα2α1タンパク質を、1日、7日および14日に注入した場合、いずれも抗腫瘍効果を検出せず、最初の処置後、21日に全身腫瘍組織量を評価した。これらの結果は、図1に示したようなAd−IFNα2α1/Syn3治療後に観測された効果に対して対照的である。尿路上皮は、最初の腫瘍細胞付着を促進するために必要とされる尿路上皮の最初のトリプシン処理に関連した軽度の過形成を含む、全ての処置群において同様であるようであった。
【0034】
膀胱内のAdIFNα/Syn3後、インターフェロン発現のレベルおよび期間を評価するために、前述の効果の研究のために利用したAd−IFNα2b/Syn3の同じ濃度を用いて、腫瘍を持たない胸腺欠損マウスを使用して一連の実験を行い、2日連続の1時間曝露に対する単一の膀胱内処置を比較した。膀胱組織中のIFNタンパク質を、処置後、種々の時間におけるマウスの膀胱を得ることによって評価して、ELISAアッセイを用いて組織ホモジネートに存在するIFNタンパク質についてアッセイした。処置後1日、膀胱は、約50,000pg/mgのIntronAを含み、それは、添付の図面の図2、パネルAに示すように7日目までに5,000−10,000pg/mgにゆっくりと減少した。2回目のAd−IFNα2b/Syn3処置を与えたマウスにおいて、組織濃度は、100,000pg/mgに達し、単一の曝露と比較して7日間にわたって高いままであった。対照的に、200,000IUのIFNタンパク質を注入した場合、処置後、1時間の組織ホモジネートにおいて測定したIFN濃度は、1000pg/mgより低く、その後の時間にIFNタンパク質を検出しなかった。IFNタンパク質の高濃度を、Ad−IFNα2α1/Syn3処置またはAd−IFNα2b/Syn3処置のいずれかの後、2日間の免疫組織化学的分析によって、多数の尿路上皮細胞において見出した(図2、パネルB)。同様の染色が、多くの隣接したヒト腫瘍細胞において見られた(図2、パネルB)。非近交系のBalb/Cマウスにおいて、強いIFN染色もまた、Ad−IFNα2α1/Syn3またはAd−IFNα2b/Syn3のいずれかを用いて2日間連続した処置後5日間に、多くの尿路上皮細胞において見ることができた(図2、パネルC)。さらに、膀胱は、組織学的試験に対して局所毒性の形跡をほとんど示さないように見えた(図2、パネルC)。このことは、上記ハイブリッドIFNが、マウス細胞において活性であるため、Ad−IFNα2α1/Syn3で処置したマウスにおいて特に重要である。
【0035】
インターフェロン耐性腫瘍の処置においてインターフェロンをコードするベクターの効果をより完全に示すために、一連の実験を、インターフェロン耐性腫瘍細胞株においてインターフェロンをコードするベクターを評価するために行った。いくつかのヒト膀胱癌細胞株は、本明細書中に記載したMTTアッセイに従って、100,000IU/mlより多いインビトロでのIFNαまたはIFNαタンパク質のいずれかに曝露した後でさえ、細胞死を誘発するインターフェロンに対して耐性である。特定の細胞インターフェロン耐性腫瘍細胞株としては、KU7細胞(前述の効果研究において使用した)および253JB−V細胞が挙げられる。インターフェロンをコードする組換えベクターに曝露した場合、これらのインターフェロン耐性腫瘍細胞株は、Ad−IFNα処置に対して感受性を示した。例えば、50MOIのAd−IFN−α2α1またはAd−IFN−α2bを用いたKU7細胞または253J−BV細胞の形質導入は、IFNタンパク質について免疫細胞化学染色によって決定した場合、細胞の約50%において向上したIFNα発現を生じた。多くの場合の強い核周囲のIFN染色が、形態的変化(例えば、サイズの増加および有糸分裂の数の顕著な減少)に伴って見られた(図3、パネルA)。これは、G/Mにおいて有意な細胞周期の停止(図3、パネルBおよびC)、DNA断片化特性のアポトーシス(図3、パネルBおよびC)、および細胞性塞栓(図3、パネルD)を生じる。
【0036】
Ad−IFNへの曝露後のこれらのインターフェロン耐性腫瘍細胞株の細胞死の誘導の根底にある機構(mechanismまたはmechanisms)をより完全に明らかにするための、アポトーシスのための独立マーカーとしてのカスパーゼ−3活性化に対するAd−IFNαの効果。Ad−IFNαを用いた形質導入は、両方の細胞株におけるカスパーゼ−3の著しい活性化を刺激した(図4、パネルAおよびB)。カスパーゼ−3染色が、高レベルのIFN−α発現を示す細胞ならびにIFN−α発現の形跡を示さなかった多くの隣接した細胞において見られた(図4a)。さらに、カスパーゼ−3陽性細胞の割合を、同様の50MOIでAd−IFN処置後、72時間の253J−BV細胞株およびKU7細胞株の両方において定量すると、70%を超える細胞が、カスパーゼ−3陽性であった(図4、パネルB)。Ad−IFNαへの曝露は、長期間にわたって培養した場合、細胞集団が再生しなかったため、かなりの量の細胞毒性を生じた。これらの結果は、IFNαタンパク質に対して耐性である全ての細胞株を含む、評価した膀胱癌細胞株において同様であった。そのような変化は、同様のMOIで100,000IU/mlまでのIFNαタンパク質またはAd−βgalを用いた処置後、これらの細胞株において見られなかった。50%以下の細胞が、このMOIで形質導入されるため、このことはまた、巻き添え効果を誘発した強いAd−IFNを支持するためのさらなる証拠を提供した。
【0037】
時間に対するAd−IFNによる培養で作製されるIFNタンパク質の量を調べるために、KU7細胞および253JB−V細胞の両方を、2.5時間、50MOIおよび100MOIのAd−IFNα2bまたは100,000IU/mlのIntronAを用いて処理した。上清におけるIFNタンパク質の濃度は、IntronA(約4pg/IU)処理後、約400,000pg/mlで一定のままであったが、50MOIのAd−IFNα2bを用いた処理後、濃度は6日間でほとんど10,000,000pg/ml(約2,500,000IU)に達し、同様のレベルを、100MOIのAd−IFNα2bへの曝露後、2日までに記録した(図5、パネルA)。
【0038】
これらの結果に基づいて、2,500,000IU/mlのIntronAの添加後の効果を、48時間および72時間での50MOIのAd−IFNα2bを用いた処理後に見られる効果と比較した。サブジプロイド細胞の数の増加が、特に感染後72時間で、以前に示したようなAd−IFN処理細胞において見出されたが、一方で、増加は、そのような高濃度に対するIntronA曝露後の細胞において見出されなかった(図5、パネルB)。同様に、形態的変化またはIFN染色が、コントロール細胞と比較して、IntronA曝露後、48時間および72時間の細胞において見られなかったが、一方で、代表的な形態的変化およびIFN染色が、Ad−IFN処理細胞において見出された(図5、パネルC)。それにもかかわらず、IntronA処理後、48時間および72時間でG2/M細胞の割合の有意な増加が存在して、これは、Ad−IFN曝露後に見られる変化と同等であった。例えば、KU7細胞において、コントロール群、IntronA群およびAd−IFN群についての処理後、48時間でG2/M集団は、それぞれ9.7、23.4および33.4、ならびに72時間で7.4、21.3および19.5であった。
【0039】
IFNα2bおよびハイブリッドインターフェロンの両方をコードするベクターは、膀胱内のAd−IFNαが、強力な抗腫瘍活性を有することを明らかに示す。全身腫瘍組織量を、処置前と処置後に比較した場合、Syn3処方物においてAd−IFNα2α1またはAd−IFNα2bのいずれかを受けた腫瘍は、腫瘍サイズの著しい減少を示したが、膀胱の腫瘍は、Ad−β−gal/Syn3ならびにAd−IFNα2α1、Syn3またはIFNα2α1タンパク質単独で処置したマウスにおいて急速に増殖した。最小の局所毒性をまた、任意の処置で観測した。
【0040】
本発明のインビボでの実験に使用したKU7細胞を含む、種々の膀胱癌細胞株は、培養物中の高レベルのIFNαタンパク質自体に耐性であったが、それらは、50%以下の細胞のみの形質導入を生じる粒子濃度でのカスパーゼ依存様式におけるAd−IFNαによって細胞培養物中で均一に死滅した。これらの結果は、インターフェロン種(例えば、Ad−IFNα)をコードするベクターが、強い巻き添え効果およびIFNタンパク質に対する耐性を克服する能力を有することを確かにする。
【0041】
要約すると、上記の実験は、インターフェロンを送達された組換えベクターが、市販の組換えIFNタンパク質とは異なる独自の性質を有すること、そしてIFNをコードするベクターが、IFNタンパク質に対する耐性を克服し得ることを示す。膀胱癌に関して、研究は、連続した日で1時間、Ad−IFN−α2α1/Syn3またはAd−IFN−α2b/Syn3の膀胱内の注入が、処置後3週間に全身腫瘍組織量を測定した場合、胸腺欠損マウスにおけるヒト表在性膀胱腫瘍の増殖において顕著な退縮を引き起こすことを、はっきりと示す。1日あたり200,000IUのIFN−α2α1タンパク質を用いた同様の処置は、任意の長期のIFN組織レベルを生じず、腫瘍の増殖への影響がなかった。Ad−IFN−α2α1/Syn3およびAd−IFN−α2b/Syn3は、インビトロでの細胞毒性およびインビボでの腫瘍退縮を引き起こす際に同程度であるため、IFNの持続性発現の直接的な効果は、このモデルにおける腫瘍の微環境に対するその効果というよりむしろ、腫瘍退縮における実質的な要因であった。なぜなら、IFNα2bは、マウス細胞およびヒト細胞の両方において産生され得るが、ヒト細胞においてインターフェロンシグナル伝達経路のみを活性化するからである。上記データはまた、Ad−IFNαが、高濃度のIFNタンパク質に対して耐性のある膀胱癌細胞においてカスパーゼ依存細胞毒性を誘発し得ることを示す。アポトーシスは、免疫化学的染色によって高い細胞内レベルのIFNαを示す膀胱癌細胞においてだけではなく、IFNα発現を示さなかった隣接した細胞においても現れた。これらの結果は、Ad−IFNαを用いる処置が、Ad−IFNαによる感染を免れた腫瘍細胞を標的とし得る隣接した細胞において強い巻き添え効果を引き起こし得ることを示す。
【0042】
任意の薬剤の臨床適用への潜在的な懸念は、その潜在的な毒性副作用である。しかし、これらの研究は、上記ベクターによって産生された高く、持続性のあるインターフェロンレベルが存在したとしても、インターフェロンをコードする組換えベクターの投与に関連した毒性がないことをはっきりと示す。上記の研究からの結果は、胸腺欠損マウスを、Ad−IFNα2α1/Syn3処置後、3週間調べた場合、正常な尿路上皮において有意な形態的変化がないことを示した。さらに、腫瘍を持たない正常な非近交系マウスを、Ad−IFNα2α1/Syn3を用いて同様に処置して、曝露後、21日まで膀胱における急性の病変について調べた場合、有意な変化を、膀胱の組織学的検査において確認しなかった。さらに、ラットにおけるパイロット実験は、インターフェロン導入遺伝子発現が、ラットの尿において高かったが、血清濃度は、膀胱内Ad−IFN処置後、低い全身曝露を表して、最小であったことを示した。これらの初期の結果および毒性は、Ad−IFNα2b/Syn3が、十分に許容されるという示唆に帰着する。
【0043】
本発明はさらに、本発明のベクターを含有する薬学的処方物を提供する。本発明の組成物は、哺乳動物の被検体、好ましくはヒトへの投与のために受容可能な当該分野において公知の様式による投与のために処方される。特に、送達システムは、筋肉内投与、静脈内投与、注入物質貯蔵型デバイス投与または局所投与のために処方され得る。
【0044】
非ウイルス遺伝子送達システムを使用する場合において、インターフェロン遺伝子を含む発現プラスミドが、リポソーム中にカプセル化され得る。リポソームとしては、エマルジョン、泡、ミセル、不溶性の単層、液晶、リン脂質分散物、ラメラ層などが挙げられる。リポソームキャリアを使用する標的細胞へのDNA配列の送達は、当該分野において周知である。種々の方法が、例えば、Szokaら、Ann.Rev.Biophys.Bioeng.、9:467(1980)、Szokaら、1983年、7月19日に発行された米国特許第4,394,448号ならびに米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号、および同第5,019,369号(それらは本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、リポソームを調製するために利用可能である。本発明の実施に有用なリポソームは、一般に、中性で負に荷電したリン脂質およびステロール(例えば、コレステロール)を含む、1つ以上の標準的な小胞形成脂質から形成され得る。そのような小胞形成脂質の例としては、米国特許第5,650,096号に開示されるような、DC−chol、DOGS、DOTMA、DOPE、DOSPA、DMRIE、DOPC、DOTAP、DORIE、DMRIE−HP、n−スペルミジンコレステロールカルバメート、および他のカチオン脂質が挙げられる。脂質の選択は、一般に、例えばリポソームサイズ、酸不安定性および血流中でリポソームの安定性を考慮して導かれる。血清半減期を増加させるために、さらなる成分(例えば、1991年、5月7日に発行された米国特許第5,013,556号、および1993年、5月25日に発行された同第5,213,804号に記載されるようなポリエチレングリコールコーティング(「PEG化」といわれる))が、リポソーム処方物に添加され得る。
【0045】
本発明の組成物は、哺乳動物の被験体、好ましくはヒトへの投与のために受容可能な当該分野において公知の様式による投与のために処方される。本発明のいくつかの実施形態において、本発明の組成物は、注射によって組織内に直接か、または目的の組織に供給される血管に投与され得る。本発明のさらなる実施形態において、本発明の組成物は、「移動領域的に(locoregionally)」(すなわち、膀胱内、病巣内、および/または局所的に)投与される。本発明の他の実施形態において、本発明の組成物は、注射、吸入、坐剤、経皮送達などによって全身的に投与される。本発明のさらなる実施形態において、上記組成物は、離れた目的の組織(例えば、内部器官)への接近を可能にするために、カテーテルまたは他のデバイスを介して投与される。
【0046】
本発明の組成物はまた、その組成物のゆっくりとした放出または持続性放出を可能にするために、局所的な処方物またはポリマーマトリックス、ヒドロゲルマトリックス、ポリマーインプラント、あるいはカプセル化された処方物で投与され得る。上記送達システムが、溶液または懸濁液として処方される場合、その送達システムは、受容可能なキャリア、好ましくは水性キャリア中である。種々の水性キャリア(例えば、水、緩衝化水、0.8%生理食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸など)が、使用され得る。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術により滅菌され得るか、または滅菌濾過され得る。得られた水性溶液は、そのままでの使用のためにパッケージングされ得るか、または凍結乾燥され得、この凍結乾燥調製物は、投与前に滅菌溶液と組み合わせられる。
【0047】
上記組成物は、生理学的条件に近づけるために必要とされる場合、薬学的に受容可能な補助物質(例えば、pH調節および緩衝化剤、張度調節剤、湿潤剤など(例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエートなど))を含み得る。
【0048】
上記薬学的処方物中の本発明の組成物の濃度は、広範に変化し得(すなわち、約0.1重量%未満から通常は、約2重量%または少なくとも2重量%から多くとも20重量%から50重量%またはそれ以上)、そして液体の容量、粘度などによって、選択される投与の特定の様式に従って主に選択される。
【0049】
いくつかの適用において、上記標的細胞へのインターフェロンをコードする核酸の転移を促進する増強剤と併せて上記組換えベクターを投与することが好ましい。そのような送達増強剤の例としては、界面活性剤(detergent)、アルコール、グリコール、界面活性剤(surfactant)、胆汁酸塩、ヘパリンアンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼインヒビター、高張性塩溶液およびアセテートが挙げられる。アルコールとしては例えば、脂肪族アルコール(例えば、エタノール、N−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、アセチルアルコール)が挙げられる。グルコールとしては、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよび他の低分子量グリコール(例えば、グリセロールおよびチオグリセロール)が挙げられる。アセテート(例えば、酢酸、グルコン酸、および酢酸ナトリウム)は、送達増強剤のさらなる例である。1M
NaClのような高張性塩溶液もまた、送達増強剤の例である。胆汁酸塩(例えば、タウロコール酸塩、タウロ−デオキシコール酸ナトリウム(sodium tauro−deoxycholate)、デオキシコール酸塩、ケノデオキシコール酸塩、グリココール酸、グリコケノデオキシコール酸)および他の収斂薬(例えば、硝酸銀)が使用され得る。第4級アミン(例えば、硫酸プロタミン)のようなヘパリン−アンタゴニストもまた、使用され得る。アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤もまた、遺伝子の転移を増強するために使用され得る。例示的な界面活性剤としては、タウロコレート、デオキシコレート、タウロデオキシコレート、セチルピリジウム、ベナルコニウムクロライド(benalkonium chloride)、両性洗浄剤3−14界面活性剤、CHAPS(3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオール]−1−プロパンスルホン酸水和物)、Big CHAP、Deoxy Big CHAP、Triton−X−100界面活性剤、C12E8、オクチル−B−D−グルコピラノシド、PLURONIC−F68界面活性剤、Tween 20界面活性剤およびTWEEN 80界面活性剤(CalBiochem Biochemicals)が挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい増強剤および方法は、Englerら、2001年、11月6日に発行された米国特許第6,312,681号、Englerら、2000年、12月26日に発行された米国特許第6,165,779号、およびEnglerら、2002年、5月21日に発行された米国特許第6,392,069号(それらの全教示は、本明細書中に参考として援用される)に記載されている。本発明の実施に有用な特に好ましい増強剤は、式I:
【0050】
【化1】

のSyn3と呼ばれる化合物である。
【0051】
本発明の実施に有用なさらなる増強剤としては、式II、式III、式IV、および式V:
【0052】
【化2】

の化合物ならびにそれらの薬学的に受容可能な塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
アデノウイルスベクターを使用して尿路上皮を形質導入するための最初の試みは、感染に対して防御する抗付着性バリアの存在に一部起因して、限定的な成果を有した(Pagliaroら、J.Clin.Oncol.、15:2247−2253(2003))。尿路上皮のアデノウイルスの形質導入を劇的に増加させる賦形剤のSyn3が、確認されている(Connorら、Gene Ther.、8:41−8(2001);Yamashitaら、Cancer Gene Therapy、9:687−691(2002))。動物モデルにおいて、Syn3処方物におけるアデノウイルスベクターの膀胱内投与
は、正常な尿路上皮および表在性膀胱腫瘍の両方において顕著に導入遺伝子の発現を増加させた。Syn3の増強効果は、約1時間の時間帯にわたって持続する。従って、本発明の組換えベクターは、Syn3と併せて使用される場合、同時および概して、Syn3に対する膀胱の曝露後、約1時間以内に投与されることが好ましい。
【0054】
本発明は、インターフェロンをコードする組換えベクターを含む薬学的処方物を、哺乳動物生物体に投与する工程によって、腫瘍を含む哺乳動物生物体を処置する方法をさらに提供する。用語「哺乳動物生物体」としては、ヒト、ブタ、ウマ、ウシ、イヌおよびネコが挙げられるが、これらに限定されない。上記ベクターが、組換えアデノウイルスベクターである場合、好ましくは、処置される哺乳動物の型に内在性のアデノウイルスベクターが使用される。処置されるべき種由来のウイルスを使用することが一般に好ましいが、いくつかの場合において、有利な病原性特性を有する異なる種から誘導されたベクターを用いることが有利であり得る。例えば、ヒトアデノウイルスベクターの免疫応答特性を最小限にするために、ウシのアデノウイルスベクターが、ヒト遺伝子治療において使用され得ることが報告されている(1997年、4月10日に公開されたPCT国際公開番号WO97/06826)。初期の免疫応答を最小限にすることにより、ベクターの迅速な全身的クリアランスが回避され、そのベクターのより長い作用持続時間を生じる。ウイルスベクターのインビボでの反復投与に対する、前から存在するか、または誘導された免疫学的応答は、多数の投与過程を介して全身的に投与されるウイルスベクターの減少された治療効果に関連している。これは、投薬量の調節によって克服され得るが、また、免疫抑制剤と組み合わせて本発明のベクターを投与され得る。免疫抑制剤の例としては、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロホスファミド、リンパ球免疫グロブリン、CD3複合体に対する抗体、副腎皮質ステロイド、スルファサラジン(sulfasalzaine)、FK−506、メトキサレン、およびサリドマイドが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、抗ウイルス抗体の一時的な除去が、La Faceら、2002年、10月15日に発行された米国特許第6,464,976号(その教示は本明細書中に参考として援用される)の教示に従って達成され得る。
【0055】
疾患の処置のための最適な投薬レジメンの決定は、主治医の医療介護提供者の思慮内である種々の要因(例えば、処置時の疾患の進行、年齢、体重、性別、用いられるベクターの型、送達増強剤とともに処方されるか否か、投与の頻度など)に基づく。しかし、組換えアデノウイルスベクターは、数週間の期間にわたる複数回投与レジメンにおいて一用量あたり1×10と1×1012との間のウイルス粒子の投薬範囲で、ヒトにおいて安全でかつ効果的であることが実証されている。従って、インターフェロンをコードする組換えアデノウイルスベクターの投与は、そのような投薬範囲において使用され得る。
【0056】
ヒトにおける表在性膀胱癌の処置のための本発明の好ましい実施において、処置過程は、約100mlの容積においてインターフェロンα2bをコードする1×1010/ml〜1×1012/ml(最も好ましくは約1×1011/ml)の組換えアデノウイルス粒子の用量が、約1時間の期間、膀胱内に注入される工程を包含する。代わりの処置過程は、約100mlの容積においてインターフェロンα2bをコードする1×1010/ml〜1×1012/ml(最も好ましくは約1×1011/ml)の組換えアデノウイルス粒子の用量が、約1時間の期間、膀胱内に注入され、続いて2回目に、最初の投与の後、7日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内または連続した日に実質的に等価な用量が注入される工程を包含する。各処置過程は反復可能であり、疾患進行の過程に依存している。膀胱癌の処置のために、膀胱内に投与された組換えベクターの場合において、最適なインターフェロン遺伝子発現は概して、処置過程が少なくとも14日、より好ましくは約30日、および最も好ましくは約90日、間隔をあけている場合に観測される。
【0057】
ヒトにおける肝細胞癌の処置のための本発明の好ましい実施において、投薬レジメンは、細胞内のインターフェロン種を発現する約1×1010〜1×1012粒子の複製欠損組換えアデノウイルスベクターを、腫瘍内または5日〜7日連続した期間、肝臓動脈を経由して投与する工程を包含する。この投薬レジメンは、約3週間〜6週間の治療過程にわたって反復され得る。肝細胞癌を罹患するヒト被験体における肝細胞癌の処置のための特に好ましい投薬レジメンは、約5日間連続して、AFPプロモーターの制御下でインターフェロンα2bを発現する約1×1010〜1×1012の粒子の複製欠損組換えアデノウイルスベクターの肝臓内の動脈投与を提供する。最も好ましくは、この投薬レジメンは、他の化学療法レジメンと並行して行われる。
【0058】
上記ベクターが、複製コンピテントベクターである状況において、上記投薬レジメンは、減少され得る。例えば、複製コンピテントアデノウイルスベクターが構築され得、その複製は、(例えば)AFPプロモーターを用いることによって、肝細胞癌の細胞に実質的に制限されて、天然のE1プロモーターの代わりにE1タンパク質の発現を駆動する。そのようなベクターは、腫瘍細胞において優先的に複製し、インターフェロンを発現し、そして周囲の細胞に分散させるための所望の能力を有し、治療効果を広げて、減少された投薬量またはより短い処置期間を可能にする。
【0059】
本発明の組成物および方法は、単独あるいは従来の化学療法剤または処置レジメンと組み合わせて実施され得る。そのような化学療法剤の例としては、プリン合成のインヒビター(例えば、ペントスタチン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、メトトレキサート)またはピリミジン合成のインヒビター(例えば、Pala、アザリビン(azarbine))、リボヌクレオチドからデオキシリボヌクレオチドへの変換のインヒビター(例えば、ヒドロキシ尿素)、dTMP合成のインヒビター(5−フルオロウラシル)、DNA損傷因子(例えば、照射、ブレオマイシン、エトポシド、テニポシド、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ミトザントロン、アルキル化剤、マイトマイシン、シスプラチン、プロカルバジン)、ならびに微小管機能のインヒビター(例えば、ビンカアルカロイドおよびコルヒチン)が挙げられる。化学療法処置レジメンとは、放射線療法のような新生物細胞を除去するために設計された非化学的な手順を主にいう。これらの化学療法剤は、別々に投与され得るか、または同時投与のために本発明の処方物とともに含まれ得る。本発明はまた、従来の免疫療法処置レジメン(例えば、表在性膀胱癌の場合におけるBCG)と組み合わせて実施され得る。
【実施例】
【0060】
以下の実施例は、本発明の実施の例示とみなされ、それらの範囲に制限されるとみなされるべきではない。
【0061】
(実施例1.細胞株、ベクターおよび試薬)
膀胱癌細胞株として、KU7/GFPクローン6および253J−B−Vを、これらの研究のために使用した。KU7/GFPクローン6を、緑色蛍光タンパク質で、安定にトランスフェクトして、全てのインビボでの研究のために使用した。これらの細胞株は、Watanabeら、Cancer Gene Therapy、7:1575−1580(2000)に記載されている。上記細胞を、10%FCSを補充した改変した最小必須培地中で増殖させ、5%COおよび95%空気中で37℃にてインキュベーションした。
【0062】
インターフェロンα2α1をコードする組換えアデノウイルスベクターを、Ahmedら、Interferon Cytokine Res.、21(6):399−408(2001)の教示に実質的に従って調製した。IFN−α2bおよびβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)をコードする組換えアデノウイルスベクターを、Ahmedら、Hum.Gene Ther.、10(1):77−8(1999)の教示に実質的に従って調製し、そしてそれらはまた、Gregoryら、2001年、4月3日に発行された米国特許第6,210,939号(その全教示は、本明細書中に参考として援用される)に記載されている。
【0063】
IntronAタンパク質(インターフェロンα−2b組換え体)は、Schering Corporationから市販されている。
【0064】
Syn3を、前に援用したEnglerら、米国特許第6,392,069号の教示に実質的に従って調製した。
【0065】
(実施例2.表在性腫瘍形成、処置および画像化)
胸腺欠損マウスにおける表在性KU7−GFPヒト膀胱腫瘍を増殖させるための方法およびそれらの画像化を、Izawaら、Clin.Cancer Res、8:1258−1270(2002)およびZhouら、Cancer Gene Therapy、9:681−686(2002)において以前に記載したように実施した。つまり、上記腫瘍細胞を注入後、2週間、膀胱をGFP含有腫瘍の存在について画像化した。次いで、マウスに1時間、100μlのAd−IFN−α2α1/Syn3、Ad−IFN−α2b/Syn3、Ad−IFN−α2α1、Ad−β−gal/Syn3、Syn3またはIFN−α2α1タンパク質のいずれかの膀胱内注入を与えた。巾着縫合糸で尿道の周りを縛り、上記手順の間、確実に保持した。ウイルス、Syn3およびインターフェロンタンパク質の濃度は、それぞれ、1×1011P/ml、1mg/mlおよび2×10IU/100μlであった。それぞれ14匹と16匹のマウスを処置したAd−IFN−α2α1/Syn3およびAd−IFN−α2α1の群を除いて、1つの群あたり6匹と8匹との間のマウスを処置した。
【0066】
最初の処置後、3週間に膀胱を再曝露して画像化した。安楽死後、続いて各々の膀胱に、100μlの10%ホルマリンを膀胱内に注入して、尿道を縫合した。次いで、膀胱を除去し、10%ホルマリンで固定して、パラフィンブロック内に包埋した。次いで、腫瘍の存在または非存在を立証するため、ならびにその腫瘍画像化を、腫瘍の組織学的証拠と関連付けるために、H&E染色のための切片を、膀胱全体から得た。
【0067】
(実施例3.ホモジネート遺伝子発現研究)
雌性胸腺欠損マウスを麻酔し、カテーテル処置して、単一の100μlのIntronA(2×10IU/ml)の膀胱内投与または上記のように1時間、Ad−IFN/Syn3(1×1011P/ml:1mg/ml)を用いて1〜2日の処置のいずれかを与えた。種々の間隔で、膀胱を収集して凍結した。後で、膀胱を解凍して溶解緩衝液(Promega)に移した。サンプルを20秒間ホモジナイズした(Fast Prep、Q−BIOgene)。次いで、上記ホモジネートを、ELISA(Endogen)を使用して、ヒトインターフェロンαタンパク質濃度に関してアッセイした。インターフェロンタンパク質濃度を、pg IFN/mg膀胱組織として表した。
【0068】
(実施例4.免疫化学的分析)
インビボでの研究のために、インターフェロン免疫組織化学を、上記のIzawaらの教示に実質的に従って実施した。陽性反応が、茶色の染色によって示された。同様に、培養物中の細胞についてのインターフェロン染色を、使用した主要な抗体が、ヒトインターフェロンα(Hu−IFN−α、PBL)に対するウサギのポリクローナル抗体の1:500の希釈であった以外は、Xuら、Oncogene、4:807−812(1989)の教示に実質的に従って実施した。
【0069】
(実施例5.統計分析)
統計分析を、Windows(登録商標)用のImage−Pro(登録商標)Plusバージョン4.0ソフトウェア(Media Cybernetics、Inc.、8484 Georgia Avenue、Suite200、Silver Spring、MD20910−5611 USAから市販される)を用いて実施して、処置前の膀胱領域、処置前のGFP領域、処置後の膀胱領域および処置後のGFP領域の画素を計算した。続いて、処置前の膀胱領域に対する処置前のGFP領域、および処置後の膀胱領域に対する処置後のGFP領域の割合を計算した。本発明者らは、ノンパラメトリック検定(Kruskal−Wallis検定)を行い、KruskalおよびWallis、Journal of the American Statistical Association、47:583−621、Conover WJ、Practical Nonparametric Statistics.第3版、John Wiley &
Sons、Inc.、New York(1952)に記載されるように7つの処置の間で、腫瘍サイズの割合の変化の差異を評価した。本発明者らは、試験のためのp値を決定するために、Monte−Carloシミュレーションを使用した。本発明者らが、各処置を他の処置と比較するために、多くの試験を実施しているという事実を調整するために、本発明者らは、Bonferroni補正を使用して、これらの試験の各々についての有意なレベルを調べた(0.05/21=0.0024)。MTTの結果に関して、上記分析を、General Lineal Models of the Statisticaソフトウェア(StatSoft、Inc.、2300 East 14th Street、Tulsa、OK 74104から市販される)を使用して行った。
【0070】
(実施例6.上清におけるMTT、フローサイトメトリー、カスパーゼ活性、およびIFNの測定)
MTTアッセイを、Zhangら、Cancer Res.、63:760−765(2003)の教示に実質的に従って実施した。つまり、膀胱腫瘍細胞を、2.5時間、50MOIおよび100MOIにて所定のアデノウイルスで感染させた。異なる時点において、上記培地を除去して、1mg/ml MTTを含んでいる200μlの培地を添加した。3時間後、この反応を200μlのN,N−ジメチルホルムアミド溶解緩衝液で停止させ、得られた溶液を、マイクロプレートリーダーを用いてA595にて読み取った。さらに60mmのディッシュを、同様またはIntronAを用いて処理して、フローサイトメトリーおよびカスパーゼ活性のために収集した。複製ディッシュからの上清を、Ad−IFN−α2bまたはIntronAに暴露された細胞についてのIFNの濃度を測定するために毎日得た。細胞周期分析として、サブジプロイド細胞およびカスパーゼ活性の割合を、Williamsら、Mol.Cancer Ther.、2:835−843(2003)の教示に実質的に従って決定した。IntronAの濃度を、製造業者の説明書に実質的に従ってPierce Biotechnology、Inc.、P.O.Box117,3747N.Meridian Road、Rockford、IL61105から提供されるカタログ番号EHIFNAとして市販のEndogen Brand Human IFNa ELISAキットを用いてFujisawaら、J.Interferon Cytokine Research、16:555−559(19996)の教示に従ってELISAを使用して測定した。
【0071】
(実施例7.活性カスパーゼおよびIFN 局在化に関する共焦点顕微鏡分析ならびに核の形態的変化とのそれらの関係)
ヒト膀胱細胞株を、10%ウシ胎仔血清を補充したDMEM中のカバーガラス上で培養して、次いで50MOIおよび100MOIにてAd−α−gal、IFN−α2α1またはAd−IFN−α2bで感染させた。感染後36時間、氷冷したメタノール中で細胞を固定し、次いで、PBS中の10%ヤギ血清中でブロックし、そして一晩、それぞれ、1:1,000と1:500の希釈にて抗活性カスパーゼ−3モノクローナルウサギ(Research Diagnostics Inc.、Pleasant Hill Road、Flanders NJ 07836から提供されるカタログ番号RDI−CASP3ACTabRmとして市販されている)と抗IFN−αモノクローナルマウス(PBL Biomedical Laboratories、131 Ethel Road West、Suite 6、Piscataway、NJ 08854から提供されるカタログ番号31101−1として市販されている)の抗体とともにインキュベーションした。次いで、Alexa−488標識化したヤギ抗ウサギおよびAlexa−546標識化したヤギ抗マウス抗体(Molecular Probes、29851 Willow Creek Road、Eugene、OR 97402から提供され、それぞれ、カタログ番号11101および11010として市販されている)を、もう1時間、DNA色素、633−Topro−3(Molecular Probesから市販されている)と一緒に添加した。検鏡板に取り付けた(mounted)スライドを、共焦点顕微鏡(ZeissモデルLSM−510)を使用して画像化し、適切な光学フィルターを備えたArgonおよびHe/Neレーザーを使用して各チャネルにおいて画素を分析した。この画像化を、各条件について分析した少なくとも10個の顕微鏡視野について表した。各実験を、2連で実施して、少なくとも3回繰り返した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−148834(P2011−148834A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−103283(P2011−103283)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2006−543988(P2006−543988)の分割
【原出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(399025284)カンジ,インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】