説明

インダクタンス素子

【課題】インダクタンス値を調整するためのトリミングを行う際に、レーザーパワーの厳密な調整を必要としないインダクタンス素子を提供する。
【解決手段】複数の誘電体基板を積層してなる積層基板に作製されたインダクタンス素子であって、前記積層基板の最外層上面又は内層に直方形状の最上導体パターンを形成し、各層ごとに最下層まで前記最上導体パターンに重なるような導体パターンを順次形成して前記最上導体パターンとこれらの導体パターンとを全て電気的に接続したインダクタンス素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、無線LAN,GPS受信器等、高周波を用いる各種無線通信機器に搭載される小型の発振器に用いられるトリミング調整可能なインダクタンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、一般的によく用いられている、コルクピッツ発振回路を示している。712,714は、C1,C2の値を持つコンデンサーであり、711は、L3の値を持つインダクターであり、713は、バイポーラートランジスターである。数1は、この発振器の発振周波数F0とC1,C2,L3の関係を示している。数1に従って、発振周波数の調整は、インダクター711のインダクタンスL3を調整して行う。
【0003】
【数1】

【0004】
このような発振回路をセラミック多層基板に形成すれば、小型の高周波発振器を実現することができる。このような発振器の発振周波数は、発振回路を構成するインダクタンス素子として形成された回路パターンの一部を、サンドブラスターやレーザー光などによって切除して調整する(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0005】
図7に、従来のトリマブルインダクターの構成図を示す。図7(a)は上面図であり、図7(b)は上面図の線B−B'の断面図、図7(c)は上面図の線A−A'の断面図である。図7において、600はインダクンス素子であり、誘電体層と導体層を積層した積層基板で形成されている。623は誘電体層であり、621は誘電体層623の表面に形成された導体パターンである。また、622は誘電体層623の下面に形成されたGNDパターンである。
【0006】
641と642とは、各々インダクンス素子の入出力端子であり、611、612、613、614とは、各々トリミングのためのレーザー光を照射するトリミング部である。図中の615は、照射したレーザー光により切断された導体パターン621と掘削された穴の断面とを示している。トリミングは、図中の矢印のようにレーザー光をトリミング部611の点631から照射し始め、点632まで照射する。その後、期待されるインダクタンス値になるまで、順次レーザー光をトリミング部613、614と移動して611と同様に端から照射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−7642号公報(第11頁、図18、図4)
【特許文献2】特開平10−189340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の構成では、基板を多層化した場合に次の問題が生じる。表面反射率は誘電体表面と導体パターン表面とでは異なるので、レーザー光を基板に照射すると、基板表面の反射率により基板の掘削量が異なる。多層基板では、内層にも回路パターンが作製されているため、トリミング時のレーザーパワーは、表面の導体パターンのみを掘削して、その直下にある層の回路パターンを切断しないようにしなければならない。ところが、トリミング開始時の基板表面とトリミングすべき導体パターンの反射率が異なるため、レーザーパワーの厳密な調整が必要であるという課題があった。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、インダクタンス値を調整するためのトリミングを行う際に、レーザーパワーの厳密な調整を必要としないインダクタンス素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明のインダクタンス素子は、複数の誘電体基板を積層してなる積層基板に作製されたインダクタンス素子であって、前記積層基板の最外層上面又は内層に直方形状の最上導体パターンを形成し、各層ごとに最下層まで前記最上導体パターンに重なるような導体パターンを順次形成して前記最上導体パターンとこれらの導体パターンとを全て電気的に接続したことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のインダクタンス素子によれば、トリミングを行うレーザーパワーの厳密な調整を必要としないインダクタンス素子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)本発明の実施の形態1におけるインダクタンス素子の上面図(b)線B−B’断面図(c)線A−A’断面図
【図2】(a)本発明の実施の形態1における作製したインダクタンス素子の上面図(b)調整の様子を示すための線A−A’断面図
【図3】(a)本発明の実施の形態2におけるインダクタンス素子の上面図(b)線B−B’断面図(c)線A−A’断面図
【図4】(a)本発明の実施の形態2における作製したインダクタンス素子の上面図(b)調整の様子を示すための線A−A’断面図
【図5】(a)本発明の実施の形態3におけるインダクタンス素子の上面図(b)線B−B’断面図(c)線A−A’断面図
【図6】コルピッツ発振回路を示した図
【図7】(a)従来のインダクタンス素子の上面図(b)線B−B'断面図(c)線A−A'断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明のトリマブルインダクターの実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1に、本発明の第1の実施の形態におけるインダクタンス素子の構成図を示す。図1(a)は, 本発明のインダクタンス素子の上面図であり、図1(b)は上面図の線B'−B間の断面図、図1(c)は上面図の線A'−Aによる断面図を示す。100は、インダクタンス素子であり、本実施例では、6枚の誘電体基板を積層した6層の積層基板で形成されている。111は、この積層基板の最上層である第1誘電体層であり、順次112、113、114、115、116と、第2から第6の誘電体層が第1誘電体層112の下層に形成されている。
【0015】
131は最上導体パターンであり、幅の狭い線路状の導体パターンとして第1誘電体層111の上部表面、つまり積層基板の最外層上面に形成されている。図1(a)に示すように、前記最上導体パターン131とコの字を成すように、導体パターン141と142とが最上導体パターン131の両端に接続されている。この141と142とは、インダクタンス素子の入出力端子である。
【0016】
ここで、最上導体パターンとは、インダクタンス素子を形成する導体素子の中で一番上の層に形成された導体素子のことである。また、後述される積層基板の最下層とはインダクタンス素子を形成する導体素子の中で一番下の層に形成された導体パターンの直下に形成された誘電体基板のことである。本実施例では最上導体パターンは積層基板の最外層に形成されているが、内層に形成されても良い。また本実施例では最下層は積層基板の一番下の誘電体基板であるが、必ず一番下の誘電体基板である必要は無い。
【0017】
次に132は、131と同形状の導体パターンであり、第1誘電体層111と第2誘電体層112との間、つまり積層基板の内層に形成されており、最上導体パターン131と重なり合う位置に配置している。以下同様に、図1(a)に示すように、導体パターン133、134、135、136が、最上導体パターン131を基準として、お互いに重なり合うように各誘電体層間に順次形成配置されている。
【0018】
これらの導体パターン132、133、134、135、136と最外層の最上導体パターン131とを、互いに電気的に接続するため、導体パターン131の両端に、図1(a)に示した導体ビア孔12と13が全ての導体パターンを貫通するように設けられている。導体ビア孔12では、121が、前記導体パターン131と前記導体パターン132を電気的に導通させる前記ビア孔に導電ペーストを充填した導体ビアであり、以下同様に123及び125で示す導体ビアで131から136までの導体パターンは相互に電気的に接続している。導体ビア孔13においても、図中に符号は示していないが、導体ビア孔12で説明した導体ビアで131から136までの導体パターンは相互に電気的に接続している。最下層の第6誘電体層116の下面には、グランド導体137が形成されている。
前記グランドパターンは、前記積層基板の上面から見て前記最上導体パターンを内包するように配置されている。このような構成により、131の最上導体パターン及び132から136までの導体パターンが全体としてインダクタンス値を決定する。
【0019】
以上の構成をもとに、図6のコルピッツ発振回路で周波数2GHz帯の発振を行うためのインダクタンス素子を作製した。作製したインダクタンス素子を図2に示す。211はトリミング部であり、従来に比べて1個になっている。誘電体基板は、厚みは100μm、比誘電率を7.8のものを使用した。トリミング部211の幅200μmである。導体パターン131〜136の線路幅を150μm、その長さを500μm、入出力端子となる141および142の線路幅を150μm、その長さ500μmとした。
【0020】
図2を利用して、本発明の第1の実施の形態におけるインダクタンス素子の調整方法を説明する。図2(a)は, 本発明のインダクタンス素子の上面図であり、図2(b)は上面図のA'−A方向の断面図である。215はレーザー光であり、211は、トリミングのためのトリミング部であり、位置は導体ビア孔12と13との間であればよい。212,213,214は、照射したレーザーにより形成される穴を示している。インダクタンス素子の値調整に応じて、トリミング部211に、レーザー215を複数回照射する。この操作により、212、213、214とより深く掘削するので、次々と導体パターンが切断され、インダクタンス値は徐々に増加する。このようにして、所望のインダクタンス値に調整することが出来る。これは、レーザー光で深く掘削するに従い、インダクタンス値を構成する導体パターンの電流密度が増加し、更に電流経路も長くなるためである。
【0021】
一般に、レーザー光を照射した際に、基板表面の反射率により掘削するパワーの強弱が生じる。この反射率は誘電体表面と導体パターン表面とでは異なる。すなわち、レーザー光が弱いと導体パターンを掘削できず、レーザー光が強いと深く掘削してしまし内層パターンを切断しまうため、トリミング時のレーザーパワーは細かく調整しなければならない。すなわち、このような素子のトリミングは、導体パターンのみを掘削して、その直下にある層の回路パターンを切断しないようにしなければならない。従って、トリミングする際のレーザーパワー調整は厳密に行う必要があった。
【0022】
本発明では、このような厳密なレーザー光の強さの調整は必要なく、1回の照射で1層目の導体パターンが切断されるより弱めに設定し、調整後のインダクタンス値に応じて、照射回数を増やせばよい。このようにすれば、トリミングによる調整値のばらつきの少ない安定したトリミングを実現することができる。これは、本発明のようにトリミング部を一箇所にして多層基板の厚み方向に揃えて配置することにより、はじめて実現できるものである。
【0023】
製作したインダクタンス素子を順次トリミングしながらインダクタンス値を計測すると周波数2GHzで1.29から1.61nHの値を示した。この値は、図6で示したコルピッツ発振回路のC1とC2を各々9pFとすると、発振周波数は1.87GHzから2.09GHzまで調整ができる(数1)。
【0024】
本発明でインダクタンス素子を構成すると、縦横1.1mmx1mmの寸法で構成できる。ところが、図7で示した従来の構成でインダクタンス素子を構成すると本発明より広い面積が必要になる。事実、厚みが600μmで比誘電率7.8の誘電体623を使用すると、導体パターン621の線路幅は800μmで線路長は3300μmとなる。このとき、本発明と同様に調整値を周波数2GHzで1.29〜1.61nHの範囲にするためには、トリミング部611から614は、それぞれ幅200μm、長さ550μmが必要となる。その結果、従来技術によるインダクタンス素子のサイズは、縦横1.2mmx3.7mmとなり、本発明の約4倍の表面積を必要とする。
【0025】
以上のように本実施の形態では、最外層に形成した最上導体パターンを基準に、互いに重なり合うように各誘電体層間に順次導体パターンを形成配置してインダクタンス素子を構成している。そのため、最外層に形成した最上導体パターンのビア孔を除いた位置にレーザーを複数回当ることにより、順次、積層基板内部の導体パターンを切断できる。従って、インダクタンス値を徐々に増すことが出来、期待されるインダクタンス値に調整ができる小型のインダクタンス素子を実現できる。
【0026】
なお、本実施の形態では、最上導体パターンを第1誘電体層の上部面である積層基板の最外層上面に形成したが、第1誘電体層の下部面である積層基板の内層に形成しても良い。その場合、トリミング部がわからないので、レーザー光を当てるトリミング部を示す目印導体パターンを積層基板の最外層上面に形成しても良い。
【0027】
また、本実施の形態では、積層基板の最下層の下面にグランドパターンを形成したが、無くても本発明は実施できる。
【0028】
さらに、本実施の形態では、最上導体パターンの両端にコの字を成すように、導体パターンを形成し入出力端子としたが、入出力端子用に特別な導体パターンを形成しないで、最上導体パターン又は、積層基板の内層に形成した導体パターンの両端を入出力端子とし電気回路を形成しても良い。また、2つの入出力端子は、同じ層の導体パターンでなくても良い。
【0029】
レーザー光などの光学的手段により、積層基板に穴を掘削するとしたが、サンドブラスターや超音波による機械的手段により、穴を掘削しても良い。
【0030】
なお、本実施の形態では、レーザー光などの光学的手段により、積層基板に穴を掘削するとしたが、サンドブラスターや超音波による機械的手段により、穴を掘削しても良い。
【0031】
(実施の形態2)
図3は、本発明の第2の実施の形態におけるインダクタンス素子300の構成図を示す。
実施の形態1との構造の違いは、入出力端子を同一平面状に構成していない点が異なる。図3(a)は、本発明のインダクタンス素子の上面図であり、図3(b)は上面図の線B'−B方向の断面図、図3(c)は上面図の線A'−A方向の断面図である。インダクタンス素子300は、6層の誘電体基板からなる積層基板で構成されている。311は、この積層基板の最上層に形成された第1誘電体層であり、この第1誘電体層の下部に312、313、314、315、316と各々第2、第3、4、5、6誘電体層が、順次積層されている。
【0032】
331は、第1誘電体層311の上層、すなわち積層基板の最外層上面に形成された方形状の最上導体パターンである。332は、最上導体パターン331と上面から見て図の斜線の位置で重なり合うように配置された方形状の導体パターンであり、第1誘電体層311と第2誘電体層312との間に形成されている。同様に、333も方形状の導体パターンであり、図の斜線の位置で導体パターン332と重なり合うように、第2誘電体層312と第3誘電体層313との間に形成されている。
【0033】
同様にして、導体パターン332の下層には、導体パターン334から336が図3のように順次形成されている。すなわち、前記最上導体パターンと重なる領域をもつ導体パターンを各層ごと最下層まで順次形成している。更に、本実施例は、隣接層に形成された前記導体パターン間の重なる領域351が、全て等しく配置されている。従って、導体パターン332の直上隣接層に形成された最上導体パターン331との重なり領域と、導体パターン332の直下隣接層に形成された導体パターン333との重なり領域とが、同じ重なり領域351となるように構成されている。最下層の第6誘電体層316の下面にはグランド導体が形成されている。前記グランドパターンは、前記積層基板の上面から見て前記最上導体パターンを内包するように配置されている。
【0034】
また、ビア孔31が、図3に示すように第1誘電体層の最上導体パターン331上に、ビア孔32が第2誘電体層に導体パターン332上に形成されている。このように、ビア孔31と32が、第1誘電体層から第5誘電体層に渡って交互に形成されている。最上導体パターン331と導体パターン332とはビア孔31の位置で導電ペーストを充填した導体ビア321によって、また導体パターン332と導体パターン333とは、ビア孔32の位置で導体ビア322によって電気的に導通されている。
【0035】
このようにして図3(c)に示すとおり、最上導体パターン331から導体パターン336までが、導通ビアによって電気的に接続されている。341は最上導体パターン331に接続された第一の入出力端子であり、342は前記最下層の導体パターン336に接続された第二の入出力端子である。
【0036】
以上の構成をもとに、図6のコルピッツ発振回路で周波数2GHz帯の発振を行うためのインダクタンス素子を作製した。作製したインダクタンス素子を図4に示す。411はトリミング部である。誘電体基板は、厚みが100μm、比誘電率が7.8のものを使用した。トリミング部411の幅200μmで長さ400μmである。最上導体パターン331及び導体パターン332〜336は、すべて同じ寸法であり、縦800μmx横500μmとした。最上導体パターン331及び導体パターン332〜336の重なり部分の寸法は、縦800μmx横200μm、入出力端子341、342の寸法は、縦200μmx横150μmとした。
【0037】
図4を利用して、本発明の第2の実施の形態におけるインダクタンス素子の調整方法を説明する。図4(a)は、本発明のインダクタンス素子の上面図であり、図4(b)は上面図のA'−A方向の断面図である。415はレーザー光であり、411は、トリミング部であり、位置は重なり部351で導体ビア孔31と32との間であればよい。412、413、414は、照射したレーザーにより形成される穴を示している。インダクタンス素子の値調整に応じて、トリミング部411に、レーザーを複数回照射する。この操作により、412、413、414とより深く掘削するので、次々と導体パターンが切断され、インダクタンス値は徐々に増加する。このようにして、所望のインダクタンス値に調整することが出来る。照射するレーザー光のパワー調整は、実施の形態1と同様に1回の照射で1層の導体パターンが切れるより少し弱めに設定し、インダクタンス値を観察しながら、照射される回数を増やせばよい。そのため、従来のような厳密なレーザーパワー調整が不要である。
【0038】
本発明でインダクタンス素子を構成すると、縦横1.3mmx1.2mmの寸法で実現できる。製作したインダクタンス素子をトリミングしながら順次インダクタンス値を計測すると、周波数1GHzで1.23〜2.54nHのインダクタンス値を示した。この値は、図6で示したコルピッツ発振回路のC1とC2を各々23pFとすると、発振周波数は0.93GHzから1.34GHzまで調整が出来る(数1)。
【0039】
本発明でインダクタンス素子を構成すると、縦横1.3mmx1.2mmの寸法で構成できる。ところが、図7で示した従来の構成でインダクタンス素子を構成すると本発明より広い面積が必要になる。事実、厚みが600μmで比誘電率7.8の誘電体623を使用すると、導体パターン621の線路幅は1100μmで線路長は4700μmとなる。このとき、本発明と同様に調整値を周波数1GHzで0.93〜1.34GHzの範囲にするためには、幅200μm、長さ550μmのトリミング部が6箇所必要となる。その結果、従来技術によるインダクタンス素子のサイズは、縦横1.7mmx5.1mmとなり、本発明の約5.5倍の表面積を必要とする。
【0040】
実施の形態2のインダクタンス素子は、実施の形態1よりもサイズが広がるが、より大きなインダクタンス値を得ることが出来る。従って、実施の形態1と比べて、低い発振周波数で用いる際に、必要とされるインダクタンス調整量を得ることができる。
【0041】
以上のように、実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、最外層に形成した最上導体パターンを基準に、互いに重なり合うように各誘電体層間に順次導体パターンを形成配置したインダクタンス素子を構成している。そのため、最上導体パターンに形成したビア孔を除いた位置にレーザーを複数回当ることにより、順次、積層基板内部の導体パターンを切断できる。従って、インダクタンス値を徐々に増すことが出来、期待されるインダクタンス値に調整ができる小型のインダクタンス素子を実現できる。
【0042】
なお、本実施の形態では、最上導体パターンを第1誘電体層の上部面である積層基板の最外層上面に形成したが、第1誘電体層の下部面である積層基板の内層に形成し、レーザー光を当てる位置を示す目印導体パターンを積層基板の最外層上面に形成しても良い。
【0043】
なお、本実施の形態では、電体基板の最下層の下面にグランドパターンを形成したが、無くても本発明は実施できる。
【0044】
なお、本実施の形態では、最上導体パターンに接続された第一の入出力端子用の導体パターンを形成し、最下層の導体パターンに接続された第二の入出力端子用の導体パターンを形成したが、入出力端子用に特別な導体パターンを形成しないで、最上導体パターンの一端を第一の入出力端子し、最下層の導体パターンの一端を第二の入出力端子し、電気回路を形成しても良い。
【0045】
(実施の形態3)
図5は、本発明の第3の実施の形態におけるインダクタンス素子の構成図を示す。実施の形態2との構造の違いは、インダクタンスを構成する積層基板の最外層上面に形成した最上導体パターンと各層導体パターンの形状が同じもので構成されていることである。
【0046】
図5(a)は,本発明のインダクタンス素子の上面図であり、図5(b)は上面図での線B'−B方向の断面図、図5(c)は上面図での線A'−A方向の断面図である。500は、内部に誘電体層と導体層を有する積層基板で形成されたインダクタンス素子である。511は、この積層基板の最上層に形成された第1誘電体層であり、この下に順に512、513、514、515、516の第2から第6の誘誘層が積層されている。
【0047】
531は、第1誘電体層511の上層に形成された方形状の最上導体パターンである。532は、最上導体パターン531と上面から見て重なり合う位置551に合わせて配置された同形状の導体パターンであり、第1誘電体層511と第2誘電体層512との間に形成されている。同様に、533、534、535、536も最上導体パターン531と同形状の導体パターンであり、532と同様に531と重なり合うように、図5に示した各誘電体層間に形成されている。つまり、最上導体パターン531と一致する導体パターンを各層ごと最下層まで順次形成する。最下層の第6誘電体層516の下面にはグランド導体537が形成されている。
【0048】
また、最上導体パターン531にはビア孔51が設けられており、最上導体パターン531の下層に配置された導体パターン532にはビア孔52が設けられている。以下、図5(c)に示すように、各層の導体パターンにビア孔が交互に設けられており、前記ビア孔に導電ペーストを充填した導通ビア521、522、523、524および525を通じて全ての導体パターンが電気的に導通している。つまり前記最上導体パターン531の一端に前記最上導体パターン531の直下の誘電体基板を貫通するビア孔を設け、各層ごとに最下層までその直上の層の導体パターンのビア孔とは異なる他端に直下の誘電体基板を貫通するビア孔を設け、前記ビア孔に導電ペーストを充填している。541と542は入出力端子であり、各々導体パターン531と536に接続されている。
【0049】
561はトリミング部であり、ビア孔51及び52を除いた最上導体パターン531上に設けられている。このトリミング部にレーザーを照射することで、実施の形態1および2と同様に、インダクタンス値の調整を行うことができる。レーザー光の強さの調整は、厳密さを要求されず、1回の照射で1層の導体パターンが切れるより少し弱めに設定し、インダクタンス値を観察しながら、照射される回数を増やせばよい。そのため、従来のようにトリミング時に、厳密なレーザーパワー調整を行う必要がない。
【0050】
実施の形態3のインダクタンス素子は、実施の形態2と比べると、交互に重ね合わせる構造ではないので、インダクタンス値を大きくすることが出来ないが、サイズを半分にできる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明にかかるインダクタンス素子は、積層された導体パターンをレーザー光より掘削することによって、インダクタンス値を安定にトリミングをすることができ、発振器、特に電圧制御型発振器において小型化が可能となり、携帯電話、無線LAN,GPS等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0052】
12、13 ビア孔
100 インダクタンス素子
111〜116 第1〜6誘電体層
121〜125 導体ビア
131 最上導体パターン
132〜136 導体パターン
137 グランド導体
141、142 入出力端子
211 トリミング部
212〜214 レーザー光照射による穴
215 レーザー光
31、32 ビア孔
300 インダクタンス素子
311〜316 第1〜6誘電体層
321、323、325 導体ビア
322、324 導体ビア
331 最上導体パターン
333、335、332、334、336 導体パターン
337 グランド導体
341、342 入出力端子
351 重なり部
411 トリミング部
412〜214 レーザー光照射による穴
415 レーザー光
51、52 ビア孔
500 インダクタンス素子
511〜516 第1〜6誘電体層
521、523、525 導体ビア
522、524 導体ビア
531 最上導体パターン
532〜536 導体パターン
537 グランド導体
541、542 入出力端子
551 重なり部
561 トリミング部
600 インダクタンス素子
623 多層誘電体層
621 導体パターン
622 グランド導体
641、642 入出力端子
611〜614 トリミング部
615 レーザー光照射による穴
711 L3値を持つインダクター
712 C1値を持つコンデンサー
713 C2値を持つコンデンサー
714 バイポーラートランジスター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体基板を積層してなる積層基板に作製されたインダクタンス素子であって、
前記積層基板の最外層上面又は内層に直方形状の最上導体パターンを形成し、
各層ごとに最下層まで前記最上導体パターンに重なるような導体パターンを順次形成して前記最上導体パターンとこれらの導体パターンとを全て電気的に接続したインダクタンス素子。
【請求項2】
前記最上導体パターン上に前記インダクタンス素子の値を調整するためのトリミング部を設けた請求項1に記載のインダクタンス素子。
【請求項3】
前記誘電体基板の最下層の下面にグランドパターンを形成し、前記グランドパターンは、前記積層基板の上面から見て前記最上導体パターンを内包するように配置された請求項1に記載のインダクタンス素子。
【請求項4】
複数の誘電体基板を積層してなる積層基板に作製されたインダクタンス素子であって、
前記積層基板の最外層上面又は内層に矩形状の最上導体パターンを形成し、
各層ごとに最下層まで前記最上導体パターンと同寸法の導体パターンを前記最上導体パターンと一致するように順次形成して前記最上導体パターンとこれらの導体パターンとを全て電気的に接続し、
前記最上導体パターン又は、前記導体パターンの両端を入出力端子としたインダクタンス素子。
【請求項5】
前記最上導体パターン上に前記インダクタンス素子の値を調整するためのトリミング部を設けた請求項4に記載のインダクタンス素子。
【請求項6】
前記最上導体パターンの両端に前記最上導体パターンと前記導体パターンを電気的に接続する様に前記誘電体基板を貫通するビア孔を設け、
前記ビア孔に導電ペーストを充填した請求項4に記載のインダクタンス素子。
【請求項7】
前記誘電体基板の最下層の下面にグランドパターンを形成し、前記グランドパターンは、前記積層基板の上面から見て前記最上導体パターンを内包するように配置された請求項4に記載のインダクタンス素子。
【請求項8】
複数の誘電体基板を積層してなる積層基板に作製されたインダクタンス素子であって、
前記積層基板の最外層上面又は内層に方形状の最上導体パターンを形成し、
前記最上導体パターンと重なる領域をもつ導体パターンを各層ごと最下層まで順次形成して、前記最上導体パターンとこれらの導体パターンとを全て電気的に接続し、
前記最上導体パターンの一端を第一の入出力端子とし、
前記最下層の導体パターンの一端を第二の入出力端子としたインダクタンス素子。
【請求項9】
前記最上導体パターン上に前記インダクタンス素子の値を調整するためのトリミング部を設けた請求項8に記載のインダクタンス素子。
【請求項10】
隣接層に形成された前記導体パターン間の重なる領域が、全て等しく配置された請求項8に記載のインダクタンス素子。
【請求項11】
前記最上導体パターンから前記最下層の導体パターンまで全て電気的に接続する方法として、
前記最上導体パターンの前記重なり領域の一端に前記最上導体パターンの直下の誘電体基板を貫通するビア孔を設け、
各層ごとに最下層までその直上の層の重なり領域のビア孔とは異なる他端に直下の誘電体基板を貫通するビア孔を設け、
前記ビア孔に導電ペーストを充填した請求項8に記載のインダクタンス素子。
【請求項12】
前記誘電体基板の最下層の下面にグランドパターンを形成し、前記グランドパターンは、前記積層基板の上面から見て前記最上導体パターンを内包するように配置された請求項8に記載のインダクタンス素子。
【請求項13】
複数の誘電体基板を積層してなる積層基板に作製されたインダクタンス素子であって、
前記積層基板の最外層上面又は内層に方形状の最上導体パターンを形成し、
前記最上導体パターンと一致する導体パターンを各層ごと最下層まで順次形成して、前記最上導体パターンとこれらの導体パターンとを全て電気的に接続し、
前記最上導体パターンの一端を第一の入出力端子とし、
前記最下層の導体パターンの一端を第二の入出力端子としたインダクタンス素子。
【請求項14】
前記最上導体パターン上に前記インダクタンス素子の値を調整するためのトリミング部を設けた請求項13に記載のインダクタンス素子。
【請求項15】
前記最上導体パターンから前記最下層の導体パターンまで全て電気的に接続する方法として、
前記最上導体パターンの一端に前記最上導体パターンの直下の誘電体基板を貫通するビア孔を設け、
各層ごとに最下層までその直上の層の導体パターンのビア孔とは異なる他端に直下の誘電体基板を貫通するビア孔を設け、
前記ビア孔に導電ペーストを充填した請求項13に記載のインダクタンス素子。
【請求項16】
前記誘電体基板の最下層の下面にグランドパターンを形成し、前記グランドパターンは、前記積層基板の上面から見て前記最上導体パターンを内包するように配置された請求項13に記載のインダクタンス素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−82337(P2011−82337A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233309(P2009−233309)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】