説明

インダゾール−3−イルメチルホスホン酸誘導体及びその製造法

【課題】 抗腫瘍活性、タンパク質キナーゼ阻害活性等を有するインダゾール誘導体の合成中間体として有用な、インダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩、その製造法等を提供すること。
【解決手段】 式(I)


(式中、R1は置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)で表されるインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩、および例えば3−クロロメチル−1H−インダゾールと亜りん酸エステルとの反応による該化合物の製造法等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍活性、タンパク質キナーゼ阻害活性等を有するインダゾール誘導体の合成中間体として有用な、インダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩、その製造法等を提供することにある。
【背景技術】
【0002】
式(V)
【0003】
【化12】

【0004】
(式中、Arは置換もしくは非置換のアリールもしくは非置換の複素環基を表す)で表されるインダゾール誘導体は、抗腫瘍剤またはタンパク質キナーゼ阻害剤として有用であることが知られている(特許文献1及び2参照)。
特許文献1及び2によると、化合物(V)は市販のインダゾール-3-カルボン酸より、公知の方法(非特許文献1及び2参照)に準じて4工程を経て製造されるインダゾール-3-イルメチルホスホニウム塩と、アルデヒドとのWittig反応を経て製造される。しかし、この方法は、Wittig反応の際に不要な幾何異性体であるシス体が副生するため効率が悪く、またシス体を目的のトランス体から分離しなくてはならないため、工業的な大量製造には適さない。従って、目的のトランス体のみを選択的かつ効率的に製造する方法が求められている。
【特許文献1】国際公開第2005/012257号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/012258号パンフレット
【非特許文献1】「ザ・ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(The Journal of Organic Chemistry)」、1987年、第52巻、19頁
【非特許文献2】「カナディアン・ジャーナル・オブ・ケミストリー(Canadian Journal of Chemistry)」、1973年、第51巻、792頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、抗腫瘍活性、タンパク質キナーゼ阻害活性等を有するインダゾール誘導体の合成中間体として有用な、インダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩、その製造法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の(1)〜(13)に関する。
(1)式(I)
【0007】
【化13】

【0008】
(式中、R1は置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)で表されるインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩。
(2)R1が低級アルキルである前記(1)記載のインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩。
(3)R1がエチルである前記(1)記載のインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩。
(4)式(II)
【0009】
【化14】

【0010】
[式中、Xはハロゲンまたは式(III)
【0011】
【化15】

【0012】
(式中、R2、R3及びR4は、同一または異なって、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表し、Yはハロゲンを表す)を表す]で表される化合物またはその塩、及び式(IV)
【0013】
【化16】

【0014】
(式中、R1は前記と同義である)で表される化合物を反応させることを特徴とする、式(I)
【0015】
【化17】

【0016】
(式中、R1は前記と同義である)で表されるインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩の製造法。
(5)R1が低級アルキルである前記(4)記載のインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩の製造法。
(6)R1がエチルである前記(4)記載のインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩の製造法。
(7)Xが式(IIIa)
【0017】
【化18】

【0018】
(式中、R2a、R3a及びR4aは、同一または異なって低級アルキルを表し、Yaは前記Yと同義である)である前記(4)〜(6)のいずれかに記載のインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩の製造法。
(8)Xが
【0019】
【化19】

【0020】
である前記(4)〜(6)のいずれかに記載のインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩の製造法。
(9)Xが塩素原子である前記(4)〜(6)のいずれかに記載のインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩の製造法。
(10)式(II)
【0021】
【化20】

【0022】
(式中、Xは前記と同義である)で表される化合物またはその塩、及び式(IV)
【0023】
【化21】

【0024】
(式中、R1は前記と同義である)で表される化合物を反応させ、式(I)
【0025】
【化22】

【0026】
(式中、R1は前記と同義である)で表されるインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩を得る工程を含むことを特徴とする、式(V)
【0027】
【化23】

【0028】
(式中、Arは置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)で表されるインダゾール誘導体またはその塩の製造法。
(11)Arが置換もしくは非置換のアリールである前記(10)記載のインダゾール誘導体またはその塩の製造法。
(12)Arが置換もしくは非置換のフェニルである前記(10)記載のインダゾール誘導体またはその塩の製造法。
(13)Arが置換もしくは非置換の芳香族複素環基である前記(10)記載のインダゾール誘導体またはその塩の製造法。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、抗腫瘍活性、タンパク質キナーゼ阻害活性等を有するインダゾール誘導体の合成中間体として有用な、インダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩、その製造法等が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
式(I)、(II)、(III)、(IIIa)及び(IV)の各基の定義において、
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素の各原子を意味する。
低級アルキルとしては、例えば直鎖または分岐状の炭素数1〜10のアルキル、より具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。
【0031】
アリールとしては、例えば炭素数6〜14の単環性、二環性または三環性のアリール、より具体的にはフェニル、ナフチル、インデニル、アントラニル等が挙げられる。
アラルキルとしては、例えば炭素数7〜15のアラルキル、より具体的にはベンジル、フェネチル、ベンズヒドリル、ナフチルメチル等が挙げられる。
置換低級アルキルにおける置換基としては、同一または異なって置換数1〜3の、例えばヒドロキシ、低級アルコキシ、シクロアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル等が挙げられる。ここで、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニルの低級アルキル部分は、前記低級アルキルと同義であり、シクロアルキルとしては、例えば炭素数3〜10のシクロアルキル、より具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、ノルアダマンチル、アダマンチル等が挙げられる。
【0032】
置換アリール及び置換アラルキルにおける置換基としては、同一または異なって置換数1〜3の、例えば前記置換低級アルキルにおける置換基と同一の置換基に加えて、ハロゲン、アミノ、低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノ等が挙げられる。ここで、ハロゲンは前記と同義であり、低級アルキルアミノ及びジ低級アルキルアミノの低級アルキル部分は、前記低級アルキルと同義であり、ジ低級アルキルアミノにおける2つの低級アルキル部分は同一でも異なっていてもよい。
【0033】
式(V)の各基の定義において、アリールは前記と同義である。
複素環基としては、例えば芳香族複素環基、脂環式複素環基等が挙げられる。
芳香族複素環基としては、例えば窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員または6員の単環性芳香族複素環基、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性芳香族複素環基等が挙げられ、より具体的にはピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ベンゾイミダゾリル、2-オキソベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、プリニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾジオキソリル、インダゾリル、インドリル、イソインドリル、プリニル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、ピロリル、ピラゾリル、キナゾリニル、シンノリニル、トリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チエニル、フリル等が挙げられる。
【0034】
脂環式複素環基としては、例えば窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む、単環性脂環式複素環基、2つ以上の環が縮合した縮環性脂環式複素環基等が挙げられ、より具体的にはピロリジニル、2,5-ジオキソピロリジニル、チアゾリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジル、1,2-ジヒドロピリジル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラゾリニル、オキサゾリニル、ジオキソラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロキノキサリニル、オクタヒドロキノリル、ジヒドロインドリル、1,3-ジオキソイソインドリニル等が挙げられる。
【0035】
置換アリール及び置換複素環基における置換基としては、同一または異なって、例えば置換数1〜3の、ハロゲン、ニトロ、ニトロソ、カルボキシ、ヘテロアロイル、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換のシクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換のアリール[該置換アリールにおける置換基は、例えば置換数1〜3のハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、アラルキル、アロイル、置換もしくは非置換の低級アルキル(該置換低級アルキルにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(該置換シクロアルキルにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)、置換もしくは非置換の低級アルコキシ(該置換低級アルコキシにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)等である]、置換もしくは非置換の脂環式複素環カルボニル(該置換脂環式複素環カルボニルにおける置換基は、例えば置換数1〜3のハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、低級アルキル、低級アルコキシ等である)、NR5aR5b{式中、R5a及びR5bは同一または異なって、水素原子、低級アルキルスルホニル、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換のシクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換のアリール[該置換アリールにおける置換基は、例えば置換数1〜3のハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、アラルキル、アロイル、置換もしくは非置換の低級アルキル(該置換低級アルキルにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(該置換シクロアルキルにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)、置換もしくは非置換の低級アルコキシ(該置換低級アルコキシにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)等である]、置換もしくは非置換のアロイル[該置換アロイルにおける置換基は、例えば置換数1〜3のハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、アラルキル、アロイル、置換もしくは非置換の低級アルキル(該置換低級アルキルにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(該置換シクロアルキルにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)、置換もしくは非置換の低級アルコキシ(該置換低級アルコキシにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)等である]または置換もしくは非置換の複素環基[該置換複素環基における置換基は、例えば置換数1〜3のハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、アラルキル、アロイル、置換もしくは非置換の低級アルキル(該置換低級アルキルにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(該置換シクロアルキルにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)、置換もしくは非置換の低級アルコキシ(該置換低級アルコキシにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)等である]を表すか、またはR5a及びR5bが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基[該隣接する窒素原子と一緒になって形成される置換複素環基における置換基は、例えば置換数1〜3のハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、オキソ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、アラルキル、アロイル、ヘテロアロイル、置換もしくは非置換の低級アルキル(該置換低級アルキルにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ、低級アルコキシ等である)、置換もしくは非置換の低級アルコキシ(該置換低級アルコキシにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ、低級アルコキシ等である)、置換もしくは非置換の低級アルカノイル(該置換低級アルカノイルにおける置換基は、例えば置換数1〜3のアミノ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルアミノ、N-低級アルカノイル-N-低級アルキルアミノ等である)、置換もしくは非置換の脂環式複素環カルボニル(該置換脂環式複素環カルボニルにおける置換基は、例えば置換数1〜3のハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、低級アルキル、低級アルコキシ等である)等である]を形成する}、CONR5cR5d(式中、R5c及びR5dはそれぞれ前記R5a及びR5bと同義である)、OR6{式中、R6は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール[該置換アリールにおける置換基は、例えば置換数1〜3のハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、アラルキル、アロイル、置換もしくは非置換の低級アルキル(該置換低級アルキルにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(該置換シクロアルキルにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)、置換もしくは非置換の低級アルコキシ(該置換低級アルコキシにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)等である]または置換もしくは非置換の複素環基[該置換複素環基における置換基は、例えば置換数1〜3のハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、アラルキル、アロイル、置換もしくは非置換の低級アルキル(該置換低級アルキルにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(該置換シクロアルキルにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)、置換もしくは非置換の低級アルコキシ(該置換低級アルコキシにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)等である]等を表す}等が挙げられる。また、置換複素環基における置換基は、前記に加え、オキソまたは-O(CR7aR7b)nO-(式中、R7a及びR7bは、同一または異なって水素原子または低級アルキルを表し、nは2または3を表し、末端の2つの酸素原子は、置換複素環基上の同一炭素原子に結合する)であってもよい。
【0036】
置換アリール及び置換複素環基における置換基の定義において、ハロゲン、低級アルキル、アリール及び複素環基はそれぞれ前記と同義であり、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル、N-低級アルカノイル-N-低級アルキルアミノ及び低級アルキルスルホニルの低級アルキル部分は前記低級アルキルと同義であり、アラルキルのアルキレン部分は前記低級アルキルから水素原子を1つ除いたものと同義であり、アラルキル及びアロイルのアリール部分は前記アリールと同義であり、ヘテロアロイルの芳香族複素環基部分は前記芳香族複素環基と同義であり、脂環式複素環カルボニルの脂環式複素環基部分は前記脂環式複素環基と同義である。
【0037】
シクロアルキル及びシクロアルキルカルボニルのシクロアルキル部分としては、例えば炭素数3〜10のシクロアルキル、より具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、ノルアダマンチル、アダマンチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.0]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル等が挙げられる。
【0038】
低級アルケニルとしては、例えば炭素数2〜10の直鎖または分岐状のアルケニル、より具体的にはビニル、アリル、1-プロペニル、1-ブテニル、3-ブテニル、2-ペンテニル、4-ペンテニル、2-ヘキセニル、5-ヘキセニル、2-デセニル、9-デセニル等が挙げられる。
低級アルキニルとしては、例えば炭素数2〜10の直鎖または分岐状のアルキニル、より具体的にはエチニル、2-プロピニル、3-ブチニル、4-ペンチニル、5-ヘキシニル、9-デシニル等が挙げられる。
【0039】
低級アルカノイル、低級アルカノイルアミノ及びN-低級アルカノイル-N-低級アルキルアミノの低級アルカノイル部分としては、例えば炭素数1〜8の直鎖または分岐状のアルカノイル、より具体的にはホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル等が挙げられる。
【0040】
隣接する窒素原子と一緒になって形成される複素環基としては、例えば少なくとも1個の窒素原子を含む5員または6員の単環性複素環基(該単環性複素環基は、他の窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい)、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で少なくとも1個の窒素原子を含む縮環性複素環基(該縮環性複素環基は、他の窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい)等が挙げられ、より具体的にはピロリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、モルホリノ、チオモルホリノ、ホモピペリジノ、ホモピペラジニル、テトラヒドロピリジル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル等が挙げられる。
【0041】
前記置換アリール及び置換複素環基における置換基の定義において、置換低級アルキル、置換シクロアルキル、置換低級アルケニル、置換低級アルキニル、置換低級アルコキシ、置換低級アルコキシカルボニル、置換低級アルカノイル及び置換シクロアルキルカルボニルにおける置換基としては、同一または異なって、例えば置換数1〜3の、ヒドロキシ、オキソ、カルボキシ、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイルアミノ、N-低級アルカノイル-N-低級アルキルアミノ、ヘテロアロイル、アリールスルホニル、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基は、カルボキシ、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル等である)、置換もしくは非置換の複素環基(該置換複素環基における置換基は、カルボキシ、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル等である)、CONR8aR8b{式中、R8a及びR8bは同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル[該置換低級アルキルにおける置換基は、例えば置換数1〜3のハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、アロイル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ(該置換低級アルコキシにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)等である]または置換もしくは非置換のシクロアルキル[該置換シクロアルキルにおける置換基は、例えば置換数1〜3のハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、アロイル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ(該置換低級アルコキシにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)等である]を表すか、またはR8a及びR8bが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基[該隣接する窒素原子と一緒になって形成される置換複素環基における置換基は、例えば置換数1〜3のハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、アラルキル、アロイル、置換もしくは非置換の低級アルキル(該置換低級アルキルにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)、置換もしくは非置換の低級アルコキシ(該置換低級アルコキシにおける置換基は、例えば置換数1〜3のヒドロキシ等である)等である]を形成する}、NR8cR8d(式中、R8c及びR8dはそれぞれ前記R8a及びR8bと同義である)等が挙げられる。
【0042】
ここで、ハロゲン、低級アルキル、シクロアルキル、低級アルカノイル、低級アルカノイルアミノ及びN-低級アルカノイル-N-低級アルキルアミノの低級アルカノイル部分、アリール、複素環基及び隣接する窒素原子と一緒になって形成される複素環基はそれぞれ前記と同義であり、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル及びN-低級アルカノイル-N-低級アルキルアミノの低級アルキル部分は前記低級アルキルと同義であり、アロイル及びアリールスルホニルのアリール部分は前記アリールと同義であり、ヘテロアロイルの芳香族複素環基部分は前記芳香族複素環基と同義である。
【0043】
以下、式(I)、(II)、(IV)及び(V)で表される化合物をそれぞれ化合物(I)、(II)、(IV)及び(V)という。他の式番号の化合物についても同様である。
化合物(I)、(II)及び化合物(V)の塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩等の酸付加塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等の金属塩、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等のアンモニウム塩、モルホリン付加塩、ピペリジン付加塩等の有機アミン付加塩、グリシン付加塩、フェニルアラニン付加塩、リジン付加塩、アスパラギン酸付加塩、グルタミン酸付加塩等のアミノ酸付加塩等が挙げられる。
【0044】
次に、化合物(I)の製造法について説明する。
製造法1
化合物(I)は、例えば以下の工程により製造することができる。
【0045】
【化24】

【0046】
(式中、R1は前記と同義であり、Zはハロゲンを表す)
化合物(I)は、例えば化合物(IIa)と化合物(IV)を、不活性溶媒中で反応させることにより、得ることができる。
化合物(IV)は、化合物(IIa)に対して0.5〜20当量、好ましくは0.9〜3当量用いられる。化合物(IV)としては、例えばトリメチル亜リン酸、トリエチル亜リン酸、トリプロピル亜リン酸、トリイソプロピル亜リン酸、トリブチル亜リン酸、トリイソブチル亜リン酸、トリ-sec-ブチル亜リン酸、トリペンチル亜リン酸、トリヘキシル亜リン酸等が挙げられる。
【0047】
不活性溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、1-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の非芳香族系有機溶剤、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール、または水等が挙げられ、これら溶媒を単独で、もしくは混合して用いることができる。溶媒の使用量には特に制限はないが、通常化合物(IIa)に対して0.01〜50倍重量用いられる。
【0048】
反応は、20 ℃から用いる不活性溶媒の沸点の間の温度、好ましくは60〜120 ℃の温度で行われ、5分間から24時間で終了する。
なお、化合物(IIa)は、公知の方法 [例えば、ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ (Journal of the American Chemical Society), 79巻, 5242頁 (1957年) 等 ]に記載の方法またはそれに準じた方法によって得ることができ、化合物(IV)は、市販品をそのまま、または精製して用いることができる。
製造法2
また、化合物(I)は、以下の工程により製造することができる。
【0049】
【化25】

【0050】
(式中、R1、R2、R3、R4及びYはそれぞれ前記と同義である)
化合物(I)は、化合物(IIb)と化合物(IV)を、不活性溶媒中で反応させることにより、得ることができる。
化合物(IV)は、化合物(IIa)に対して0.5〜20当量、好ましくは0.9〜4当量用いられる。化合物(IV)としては、例えばトリメチル亜リン酸、トリエチル亜リン酸、トリプロピル亜リン酸、トリイソプロピル亜リン酸、トリブチル亜リン酸、トリイソブチル亜リン酸、トリ-sec-ブチル亜リン酸、トリペンチル亜リン酸、トリヘキシル亜リン酸等が挙げられる。
【0051】
不活性溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルスルホキシド、DMF、DMA、1-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の非芳香族系有機溶剤、ジオキサン、THF、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール、または水等が挙げられ、これら溶媒を単独で、もしくは混合して用いることができる。溶媒の使用量には特に制限はないが、通常化合物(IIb)に対して0.01〜50倍重量用いられる。
【0052】
反応は、20 ℃から用いる不活性溶媒の沸点の間の温度、好ましくは80〜140 ℃の間の温度で行われ、5分間から24時間で終了する。
なお、化合物(IIb)は、公知の方法(例えば、WO2005/012257、WO2005/012258等)またはそれに準じた方法によって得ることができ、化合物(IV)は、市販品をそのまま、または精製して用いることができる。
【0053】
上記各製造法における目的化合物は、有機合成化学で常用される分離精製法、例えば、濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィーなどに付して単離精製することができる。また、特に精製することなく次の反応に供することも可能である。
化合物(I)、(II)、(IV)及び(V)の中には、幾何異性体、光学異性体等の立体異性体が存在し得るものもあるが、本発明は、これらを含め、全ての可能な異性体及びそれらの混合物を包含する。
【0054】
化合物(I)の塩を取得したいとき、化合物(I)が塩の形で得られるときはそのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られるときは、化合物(I)を適当な溶媒に溶解または懸濁し、酸または塩基を加えて単離、精製すればよい。
また、化合物(I)は、水あるいは各種溶媒との付加物の形で存在することもあるが、これらの付加物も本発明に包含される。
【0055】
本発明の化合物(I)の具体例を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
化合物(V)は、上記いずれかの製造法によって得られる化合物(I)から、公知の方法[例えば、ケミカル・レビューズ(Chemical Reviews)、74巻、87頁 (1974年);オルガニック・リアクションズ(Organic Reactions)、25巻、73頁 (1977年);WO2005/012257:WO2005/012258記載の方法]に準じて製造することができる。
以下に、本発明の態様を実施例及び参考例で説明する。しかし、本発明はこれら実施例及び参考例に限定されるものではない。なお、実施例及び参考例において、「ca.」は「約」を意味する。
【実施例1】
【0058】
(1H-インダゾール-3-イルメチル)ホスホン酸ジエチルエステル(化合物1)の合成
参考例1で得られた3-クロロメチル-1H-インダゾール(50 mg, 0.30 mmol)をトルエン (2 mL)に溶解し、トリエチル亜りん酸(62 mL, 0.36 mmol)を加え、80 ℃で2時間撹拌した。減圧下溶媒を留去し、化合物1(47.7 mg, 59%)を得た。
1H-NMR (CDCl3, ppm) δ 1.23 (6H, t, J= 6.9 Hz), 3.60 (2H, d, J = 21.0 Hz), 4.06 (4H, qd, J = 6.9, 8.1 Hz), 7.10 (1H, t, J = ca. 8 Hz), 7.29 (1H, t, J = ca. 7 Hz, 1H), 7.44 (1H, d, J = 8 Hz), 7.79 (1H, d, J = 8.1 Hz).
MS (ESI(+)); m/z 269 (M+H)+.
【実施例2】
【0059】
化合物1の合成
参考例2で得られたヨウ化(1H-インダゾール-3-イルメチル)トリメチルアンモニウム(500 mg, 1.58 mmol)をDMF(5 mL)に溶解し、トリエチル亜りん酸(0.97 mL, 5.68 mmol)を加え、120 ℃で4時間撹拌した。ジイソプロピルエーテル(5 mL)を加え、析出した白色固体をろ去した。濾液を減圧下120 ℃で濃縮し、化合物1(340 mg, 80%)を得た。
【実施例3】
【0060】
(1H-インダゾール-3-イルメチル)ホスホン酸ジメチルエステル(化合物2)の合成
参考例2で得られたヨウ化(1H-インダゾール-3-イルメチル)トリメチルアンモニウム(100 mg, 0.32 mmol)をDMF(1 mL)に溶解し、トリメチル亜りん酸(134 mL, 1.13 mmol)を加え、115 ℃で2時間撹拌した。ジエチルエーテル(2 mL)を加え、析出した白色固体をろ去した。濾液を減圧下120 ℃で濃縮し、残渣を分取薄層クロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=10/1)で精製し、化合物2(52 mg, 68%)を得た。
1H-NMR (CDCl3, ppm) δ 3.62 (2H, d, J = 21.0 Hz), 3.73 (6H, d, J = 10.8 Hz), 7.15 (1H, t, J = ca. 8 Hz), 7.33 (1H, t, J = ca. 8 Hz), 7.41 (1H, d, J = 8.1 Hz), 7.77 (1H, d, J = 8.1 Hz), 10.76 (1H, br).
MS (ESI(+)); m/z 241 (M+H)+.
【実施例4】
【0061】
化合物1を用いた(E)-4-[2-(1H-インダゾール-3-イル)ビニル]安息香酸メチル(化合物3-E)の合成
化合物1(27.0 mg, 0.10 mmol)をTHF(1 mL)に溶解し、氷冷下、リチウムヘキサメチルジシラジド(140.0 μL, 0.14 mmol)及び4-ホルミル安息香酸メチル(37.0 mg, 0.23 mmol)を加え、室温にて5時間攪拌した。反応混合物を水(5 mL)に加えて酢酸エチル(10 mL×2)で抽出し、飽和食塩水(2 mL)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ去し、濃縮し、残渣にメタノールを加え、(E)-4-[2-(1H-インダゾール-3-イル)ビニル]安息香酸メチル(化合物3-E)と(Z)-4-[2-(1H-インダゾール-3-イル)ビニル]安息香酸メチル(化合物3-Z)との生成比をHPLC分析により算出したところ、化合物3-E:化合物3-Z=97:3であった。化合物3-Eと化合物3-Zは、分取薄層クロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=6:4)により分離・精製した。
【0062】
【化26】

【0063】
(E)-4-[2-(1H-インダゾール-3-イル)ビニル]安息香酸メチル(化合物3-E)
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ 3.94 (3H, s), 7.25-7.31 (1H, m), 7.42-7.47 (1H, m), 7.52 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.56 (2H, s), 7.65 (2H, d, J = 8.4 Hz), 8.03-8.09 (1H, m), 8.06 (2H, d, J = 8.4 Hz).
(Z)-4-[2-(1H-インダゾール-3-イル)ビニル]安息香酸メチル(化合物3-Z)
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ 3.88 (3H, s), 6.89 (1H, d, J = 12.6 Hz), 6.95 (1H, d, J = 12.6 Hz), 6.97-7.03 (1H, m), 7.20 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.31-7.36 (1H, m), 7.45 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.49 (2H, d, J = 8.1 Hz), 7.88 (2H, d, J = 8.1 Hz).
なお、HPLCの測定条件は以下の通りである。
HPLC条件
機器:日立製作所製
カラム:Cadenza CD-C-18, 75 mm×4.6 mm(インタクト株式会社製)
移動相:メタノール/リン酸緩衝液=60/40
(リン酸緩衝液は10 mmolのリン酸二水素カリウムと10 mmolのリン酸水素二カリウムを水1 Lに溶解して調製した)
温度:35 ℃
流速:1.0 mL/分
検出:UV(254 nm)
測定時間:30 分
【実施例5】
【0064】
化合物1を用いた化合物3-Eの合成
化合物1(70 mg, 0.26 mmol)をアセトニトリル(2 mL)に溶解し、氷冷下、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ-7-エン(79 μL, 0.52 mmol)、塩化リチウム(22 mg, 0.52 mmol)及び4-ホルミル安息香酸メチル(69 mg, 0.26 mmol)を加え、室温にて終夜攪拌した。反応混合物を水(5 mL)に加えて酢酸エチル(10 mL×2)で抽出し、飽和食塩水(2 mL)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ去し、濃縮し、残渣にメタノールを加え、化合物3-Eと化合物3-Zとの生成比を実施例4と同様にHPLC分析により算出したところ、化合物3-E:化合物3-Z=97:3であった。
【0065】
参考例1:3-クロロメチル-1H-インダゾールの合成
工程1
水素化リチウムアルミニウム(1.4 g, 37.0 mmol)をTHF(15 mL)に懸濁し、氷冷下、市販のインダゾール-3-カルボン酸(2.0 g, 12.3 mmol)のTHF(25 mL)懸濁液を加え、加熱還流下、4時間攪拌した。反応混合物に酢酸エチル(10 mL)、メタノール(10 mL)、2 mol/L塩酸(100 mL)を順次滴下し、酢酸エチル(20 mL×2)で抽出し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(15 mL)、飽和食塩水(15 mL)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ去し、減圧下溶媒を留去して(1H-インダゾール-3-イル)メタノール(1.37 g, 75%)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6, ppm) δ 4.80 (2H, d, J = 5.5 Hz), 5.19 (1H, br), 7.09 (1H, t, J = ca. 8 Hz), 7.33 (1H, t, J = ca. 8 Hz), 7.48 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.85 (1H, d, J= 8.4 Hz).
13C-NMR (DMSO-d6, ppm) δ 56.7, 109.9, 119.6, 120.5, 121.4, 125.8, 140.9, 145.5.
MS (ESI(+)); m/z 149 (M+H)+.
【0066】
工程2
工程1で得られた(1H-インダゾール-3-イル)メタノール(300 mg, 2.02 mmol)に塩化チオニル(3 mL, 41.1mmol)を加え、80 ℃で3時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮した後、ジエチルエーテル(8 mL)を加え、析出した固体をろ別した。この固体を減圧下40 ℃で乾燥し、淡黄色固体を得た。この淡黄色固体を減圧下90 ℃で昇華させ、3-クロロメチル-1H-インダゾール(100 mg, 30%)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6, ppm) δ 5.11 (2H, s), 7.16 (1H, t, J = ca. 8 Hz), 7.37 (1H, t, J = ca. 8 Hz), 7.53 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.83 (1H, d, J = 8.4 Hz), 13.12 (1H, br).
13C-NMR (DMSO-d6, ppm) δ 38.5, 110.5, 119.7, 120.5, 120.8, 126.3, 140.9, 141.0.
【0067】
参考例2:ヨウ化(1H-インダゾール-3-イルメチル)トリメチルアンモニウムの合成
工程1
市販のインダゾール-3-カルボン酸(1.60 g, 9.9 mmol)をTHF(18 mL)に懸濁し、公知の方法[例えば、シンセシス(Synthesis)、1992年、285頁]に準じて得られる1-ヒドロキシベンゾトリアゾールのジメチルアンモニウム塩(2.13 g, 11.8 mmol)及び1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(2.08 g, 10.9 mmol)を加え、室温で13時間撹拌した。反応混合物に水(20 mL)を加えて酢酸エチル(20 mL×2)で抽出し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(5 mL)、飽和食塩水(5 mL)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ去し、減圧下溶媒を留去してN,N-ジメチル-1H-インダゾール-3-カルボキサミド(1.80g, 97 %)を得た。
1H-NMR (CDCl3, ppm) δ 3.22 (3H, s), 3.40 (3H, s), 7.23 (1H, t, J = ca. 8 Hz), 7.39 (1H, t, J = ca. 8 Hz), 7.48 (1H, d, J = 8.3 Hz), 8.13 (1H, d, J = 8.5 Hz).
MS (ESI(+)); m/z 190 (M+H)+.
【0068】
工程2
水素化リチウムアルミニウム(0.70 g, 18.4 mmol)をTHF(15 mL)に懸濁し、室温で工程1で得られたN,N-ジメチル-1H-インダゾール-3-カルボキサミド(1.42 g, 7.5 mmol)のTHF(50 mL)溶液を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物に硫酸ナトリウム十水和物(2.70 g)を加えて室温で1時間撹拌した後、不溶物をろ去した。減圧下溶媒を留去することにより3-ジメチルアミノメチル-1H-インダゾール(0.94 g, 71%)を得た。
1H-NMR (CDCl3, ppm) δ 2.33 (6H, s), 3.89 (s, 2H), 7.11 (1H, t, J = ca. 8 Hz), 7.31 (1H, t, J = ca. 8 Hz), 7.40 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.82 (1H, d, J = 8.0 Hz).
工程3
工程2で得られた3-ジメチルアミノメチル-1H-インダゾール(0.94 g, 5.4 mmol)を酢酸エチル(13 mL)に溶解し、ヨウ化メチル(1.2 mL, 19.3 mmol)を加え、室温で14時間攪拌した。生成した沈殿を濾取することにより、ヨウ化(1H-インダゾール-3-イルメチル)トリメチルアンモニウム(1.31 g, 77%)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6, ppm) δ 3.13 (9H, s), 4.93 (2H, s), 7.26 (1H, t, J = ca. 8 Hz), 7.44 (1H, t, J = ca. 8 Hz), 7.63 (1H, d, J = 8.4 Hz), 8.04 (1H, d, J = 8.4 Hz), 13.65 (s, 1H).
MS (ESI(+)); m/z 190 (M-I)+.
【0069】
参考例3:ヨウ化(インダゾール-3-イルメチル)トリフェニルホスホニウムを用いた化合物3-Eの合成
ヨウ化(インダゾール-3-イルメチル)トリフェニルホスホニウム(150 mg, 0.29 mmol)をDMF(3 mL)に溶解し、4-ホルミル安息香酸メチル(52.0 mg, 0.32 mmol)及び炭酸カリウム(99.5 mg, 0.72 mmol)を加え、室温にて5時間撹拌した。反応混合物を水(10 mL)に加えて酢酸エチル(20 mL×2)で抽出し、飽和食塩水(5 mL)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ去し、濃縮した残渣の化合物3-Eと化合物3-Zとの生成比を、実施例4と同様にHPLC分析により算出したところ、化合物3-E:化合物3-Z=87:13であった。残渣を分取薄層クロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=6:4)にて精製し、化合物3-E(68.0 mg, 85%)及び化合物3-Z(7.8 mg, 10%)を得た。
【0070】
参考例4:ヨウ化(インダゾール-3-イルメチル)トリフェニルホスホニウムを用いた化合物3-Eの合成
ヨウ化(インダゾール-3-イルメチル)トリフェニルホスホニウム(33.0 mg, 63.4 μmol)をメタノール(0.6 mL)に溶解し、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ-7-エン(22.7 μL, 0.152 mmol)及び4-ホルミル安息香酸メチル(11.4 mg, 69.7 μmol)を加え、室温にて5時間攪拌した。反応後にメタノールを加え、化合物3-Eと化合物3-Zとの生成比を実施例4と同様にHPLC分析により算出したところ、化合物3-E:化合物3-Z=65:35であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、R1は置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)で表されるインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩。
【請求項2】
R1が低級アルキルである請求項1記載のインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩。
【請求項3】
R1がエチルである請求項1記載のインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩。
【請求項4】
式(II)
【化2】

[式中、Xはハロゲンまたは式(III)
【化3】

(式中、R2、R3及びR4は、同一または異なって、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表し、Yはハロゲンを表す)を表す]で表される化合物またはその塩、及び式(IV)
【化4】

(式中、R1は前記と同義である)で表される化合物を反応させることを特徴とする、式(I)
【化5】

(式中、R1は前記と同義である)で表されるインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩の製造法。
【請求項5】
R1が低級アルキルである請求項4記載のインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩の製造法。
【請求項6】
R1がエチルである請求項4記載のインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩の製造法。
【請求項7】
Xが式(IIIa)
【化6】

(式中、R2a、R3a及びR4aは、同一または異なって低級アルキルを表し、Yaは前記Yと同義である)である請求項4〜6のいずれかに記載のインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩の製造法。
【請求項8】
Xが
【化7】

である請求項4〜6のいずれかに記載のインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩の製造法。
【請求項9】
Xが塩素原子である請求項4〜6のいずれかに記載のインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩の製造法。
【請求項10】
式(II)
【化8】

(式中、Xは前記と同義である)で表される化合物またはその塩、及び式(IV)
【化9】

(式中、R1は前記と同義である)で表される化合物を反応させ、式(I)
【化10】

(式中、R1は前記と同義である)で表されるインダゾール-3-イルメチルホスホン酸誘導体またはその塩を得る工程を含むことを特徴とする、式(V)
【化11】

(式中、Arは置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)で表されるインダゾール誘導体またはその塩の製造法。
【請求項11】
Arが置換もしくは非置換のアリールである請求項10記載のインダゾール誘導体またはその塩の製造法。
【請求項12】
Arが置換もしくは非置換のフェニルである請求項10記載のインダゾール誘導体またはその塩の製造法。
【請求項13】
Arが置換もしくは非置換の芳香族複素環基である請求項10記載のインダゾール誘導体またはその塩の製造法。

【公開番号】特開2007−51082(P2007−51082A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236472(P2005−236472)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】