説明

インテグリンα10β1を結合することができる新規モノクローナル抗体

本発明は、インテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片、およびドイチェ・ザムルング・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルテューレン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフツング(Deutsche Sammlung von Microorganismen und Zellkulturen GmbH)に受託番号DSM ACC2583で寄託されたハイブリドーマ細胞系を提供する。更に、本発明は、寄託したハイブリドーマ細胞系によって産生されるインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片も提供する。治療目的の軟骨形成性の細胞の同定および選択における、特に軟骨の組織工学のための軟骨細胞、間葉原細胞および胚幹細胞の同定および単離のための、またはインテグリンα10β1とその様々な細胞外マトリックスリガンドの生物学的役割および構造上/機能的関連性の研究における診断および治療手段の同定のための、上記抗体またはその断片の方法および使用も包含される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、インテグリンα10鎖(a10)のI-ドメインに対する新規なモノクローナル抗体またはその断片の生成、およびそのような抗体を発現するハイブリドーマ細胞系、並びに診断、分析および治療目的のための抗体またはその断片の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
インテグリン
インテグリンは、共有的に会合したαおよびβサブユニットを含む糖タンパク質ヘテロ二量体である。インテグリンサブユニットは、細胞外マトリックスと相互作用するための細胞外ドメイン、細胞膜にわたる膜貫通ドメイン、および1個以上の骨格成分と相互作用するための細胞質ドメインを有する膜貫通タンパク質である。これまでに、8個の既知βサブユニットと結合することができる18個のαサブユニットが知られており(Gullberg and Lundgren-Akerlund, 2002)、少なくとも24種類の異なるインテグリン分子を生じる。インテグリンはそれらが含むβサブユニットによってサブファミリーに分類することができ、あるいはこの分類はα鎖の共有された構造的特徴に基づくことができ、すなわちインテグリンはI(挿入)-ドメインとして知られている追加領域の存在を特徴とすることができる。この群には9個が含まれ、従って、現在知られているインテグリンα鎖のとなる(Velling 1999)。
【0003】
インテグリンα10β1
最近、本発明者らは、α10と呼ばれる新規なα鎖を含む新規なコラーゲンと結合するインテグリンヘテロ二量体を見出した(Camper et al 1998)。このα鎖はβl サブユニットと会合しており(α10β1)、I-ドメインを含むインテグリンの一部である。現在のところ、4種類のコラーゲン結合I-ドメインを含むインテグリンであるα1β1、α2β1、α10β1およびα11β1が知られている(Gullberg and Lundgren-Akerlund 2002)。
【0004】
配列分析は、α10はα11と最高の同一性(43%)を有し、α1とは33%およびα2とは31%の同一性を有する。
【0005】
インテグリンα10β1の発現
インテグリンα10β1は、主として関節軟骨、脊柱、気管および気管支を支持する軟骨の軟骨細胞上で発現する(Camper et al 2001)。インテグリンは、ランヴィエの骨形成溝および心臓の大動脈および房室弁における骨格筋および腱の筋膜のような特殊化した繊維状組織にも見出される(Camper et al 2001)。
【0006】
軟骨におけるインテグリンα10β1の機能
軟骨細胞は関節軟骨における唯一の細胞の種類であり、組織の細胞外マトリックス(ECM)成分の協調合成および代謝回転に関与している。水を除くECMの2種類の主成分は、様々なタイプのコラーゲンと大型の集合性プロテオグリカンアグリカンである。軟骨細胞の細胞表面上のインテグリンα10β1はコラーゲンの軟骨細胞への結合を媒介し、他のインテグリン-細胞外マトリックスタンパク質相互作用(Heino 2000, Boudreau and Jones 1999, Hering 1999)と同様に細胞に対する周囲のマトリックスの動的状態のシグナル形成に関与していると思われる。コラーゲンII型はα10β1の重要なリガンドと思われるが、α10β1はコラーゲンII型を欠いている組織にも存在するので、これはα10β1発現の前提条件ではない。このことは、α10β1が、イン・ビボではコンドロアドヘリンおよび他のタイプのコラーゲン、例えば、I型およびVI型のような他の重要な細胞外マトリックスリガンドに結合することができることを示唆している(Tulla et al. 2001)。
【0007】
従って、生物学的役割およびこのインテグリンとその様々な細胞外マトリックスリガンドとの構造的/機能的関連性を研究するための同定手段は、重要である。このような手段はα10β1の存在を検出するための診断的性質のものであってもよく、またはα10β1の活性を遮断または刺激する治療的価値を有するものであってもよい。
【0008】
インテグリンα10に対する抗体
Camper et al. (1998)には、インテグリンα10β1の細胞質ドメインに対するポリクローナル抗体の生成が記載されている。細胞質ドメインは、膜貫通ドメインから伸びている16アミノ酸(Armulik 2000)配列からなっている。従って、このドメインは理想的免疫源であり、配列が細胞質ドメイン内の領域に相当するペプチドにより免役することによるこのドメインに対するポリクローナル抗体の産生は、抗体を産生する目的で日常的に行われている比較的単純でまっすぐな手続である(Harlow and Lane 1988)。ウサギに生じたCamper et al. (1998)のポリクローナル抗体は、細胞を貫通することができないため生存細胞には使用することができないので用途が限定されている。
【0009】
天然に存在する抗体の一般構造
天然に存在する抗体はジスルフィド結合によって互いに連結された2本の重鎖と2本の軽鎖であって、1本の軽鎖がジスルフィド結合によってそれぞれの重鎖に連結しているものを含んでなる。それぞれの重鎖は、一端において可変ドメイン(VH)とその後に多数の定常ドメインを有している。それぞれの軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)と他端に定常ドメインを有している。
【0010】
抗原への抗体の結合に直接関与しているのは、軽および重鎖のそれぞれの対の可変ドメインである(Harlow and Lane (1999))。天然の軽および重鎖のドメインは同じ一般構造を有し、それぞれのドメインは、配列が幾分保存されている4個の枠組構造(Fr)領域であって、3個の超可変または相補性決定領域(CDR)によって結合されているものを含んでなる。
【0011】
治療応用における非ヒト起源のモノクローナル抗体
ネズミ由来のモノクローナル抗体はヒト患者で免疫原性応答を引き起こし、その治療への応用可能性を減少させることがある。従って、この問題を回避するため、ネズミ抗原結合性可変ドメインをヒト定常ドメインにカップリングさせているヒト化抗体が開発されている(Morrison et al (1984), Boulianne et al (1984), Neuberger et al (1985))。
【0012】
抗体の抗原結合機能を解決し且つヒト抗体での異種配列の使用をできるだけ少なくするための更なる努力において、ネズミ抗体のCDRまたはCDR配列をヒト可変領域枠組構造に移植している(Jones et al 1986, Riechmann et al 1988, Verhoeyen et al 1988)。この方法の治療効果は、以前に明らかにされている(Reichmann et al (1988)、およびHale et al(1989))。
【0013】
関節疾患におけるモノクローナル抗体
成熟した関節軟骨には血管がなく、神経が分布しておらず、損傷部位への細胞の漸増など組織修復の正常な機構は起こらない。このことは、軟骨では損傷に対する修復応答が極めて乏しく、その修復不能な崩壊が変性関節疾患に共通した特徴である。このような損傷の修復は、組織の病理学的に変更した構造および機能を回復することができる細胞の送達またはイン・ビボでの起動などの様々な組織工学の方法に集中している。軟骨についての組織工学の方法は、現在では軟骨内の健康な部位からの生験によって誘導された単離された自己細胞が用いられる(自己由来軟骨細胞移植; ACT)(Brittberg 1999)。ACTにとって重要なものは、関節に移植される細胞の品質であり、すなわち、細胞はヒアリン様軟骨を産生することができる軟骨細胞である必要がある(Jobanputra et al 2001)。
【0014】
自己由来軟骨細胞を用いる別の方法は、新たな軟骨を修復しまたは生成する目的でイン・ビボで用いることができる間葉幹細胞のような軟骨形成性分化能を有する幹細胞の使用である(図1)(Jorgensen et al 2001, Johnstone and Yoo 2001)。MSCが骨形成、軟骨形成性、脂肪形成および心筋細胞系列に分化する固有の潜在能力を有することは詳しく報告されているが、現在のところこれらの様々な系列に誘導する前駆細胞を同定する手段はない。マーカーは、この細胞が軟骨表現型、すなわちコラーゲンIIおよびアグリカンを発現することができるかどうかを示すために存在しているが、しかしこれらのタンパク質は合成後に細胞外で発現し、軟骨形成細胞型を単離するのに用いることはできない。
【0015】
細胞内インテグリンエピトープとは対照的に細胞外インテグリンエピトープに対する抗体は、一般的には免疫原能が低いかまたはないため生成が困難である。通常は、この問題は、目的とする抗原と平行してアジュバントを投与することによって熟練技術者によって解決されている。様々なアジュバントが存在しており、一方または他方、またはこれらの組合せを用いることによって、宿主の免疫系が包括的に多少活性化される。更に、今日現在、アジュバントの既知の蓄積された知識をもってしても、インテグリンα10β1の細胞外部分に対するモノクローナル抗体は生成していない。従って、関節疾患の治療、診断およびイン・シテュー研究に有用な抗体は、現在のところこのような抗体の生成において確認される困難により欠けている。
【0016】
一次コラーゲン結合インテグリンに共通する一つの識別できる特徴は、αサブユニットのN-末端におけるI(「挿入」)ドメインの存在である。I-ドメインを含む4個のコラーゲン結合インテグリンのみが存在する(インテグリンα1β1、α2β1、α10β1およびα11β1)。これらのI-ドメインは、全般的同一性が最大60%に過ぎない。インテグリンα10のI-ドメインは他のコラーゲン結合インテグリンのI-ドメインと比較して独特な構造上の差異を含むので、このドメインは特に興味深い。これらの差異としては、システイン残基の数、高度の陽性アミノ酸、および別個のコラーゲンサブタイプの認識が挙げられる(Gullberg and Lundgren-Akerlund 2002, Tulla et al 2001)従って、I-ドメインはユニークリガンド結合部分を含んでなり、従って、インテグリンα10およびインテグリンα10β1のI-ドメインに対してモノクローナル抗体を生成するのが極めて望ましい。
【0017】
更に、治療目的の、特に軟骨の組織工学のための軟骨細胞、間葉前駆細胞および胚幹細胞の単離のための軟骨形成性の細胞を同定して選択することができる手段を提供することが特に望ましい。
【0018】
更に、上記問題点を考慮すれば、インテグリンα10β1とその様々な細胞外マトリックスリガンドの生物学的役割と構造/機能上の関連性の検討における診断および治療手段を同定するための手段および方法を開発することが極めて望ましい。更に、遮断、または中和および刺激因子、特に軟骨細胞、間葉幹細胞、およびインテグリンα10β1を発現する他の細胞を同定するための未解決の要望もある。この点で、本発明はこれらの要望や関心事を扱うものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
発明の概要
治療目的、特に軟骨細胞、間葉前駆細胞、および軟骨の組織工学のための胚幹細胞の同定および単離、またはインテグリンα10β1とその様々な細胞外マトリックスリガンドとの生物学的役割および構造/機能上の関連性の検討における診断および治療手段の同定のための軟骨形成性の細胞を同定し、選択するときに当該技術分野で知られている上記の不都合な点を考慮して、本発明は、インテグリンα10β1のI-ドメインに特異的なモノクローナル抗体またはその断片、上記モノクローナル抗体を産生する細胞系、並びに関節、軟骨アテローム性動脈硬化症に関係した様々な疾患に対する方法および使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一つの目的は、インテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するための極めて特異的な抗体を提供することである。
【0021】
例えば、本発明は、インテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片を提供する。
【0022】
また、本発明は、ドイチェ・ザムルング・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルテューレン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフツング(Deutsche Sammlung von Microorganismen und Zellkulturen GmbH)に受託番号DSM ACC2583で寄託されたハイブリドーマ細胞系を提供する。
【0023】
更に、本発明は、ドイチェ・ザムルング・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルテューレン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフツング(Deutsche Sammlung von Microorganismen und Zellkulturen GmbH)に受託番号DSMACC2583で寄託されたハイブリドーマ細胞系によって産生されるインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片も提供する。
【0024】
更に、本発明は、哺乳類間葉幹細胞の個体群を単離する方法も提供する。この方法は、
a) 哺乳類間葉幹細胞を含んでなる細胞懸濁液を提供し、
b) a)の細胞懸濁液をインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片と上記モノクローナル抗体またはその断片がインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下で接触させ、
c) b)のモノクローナル抗体またはその断片に結合する細胞を分離し、且つ場合によっては、
d) c)のモノクローナル抗体またはその断片に結合する細胞を上記抗体またはその断片から回収することによって、
場合によっては上記抗体またはその断片を含まない哺乳類間葉幹細胞の個体群を産生する
工程を含んでなる。
【0025】
同様に、本発明は、哺乳類軟骨細胞の個体群を単離する方法を提供する。この方法は、
a) 軟骨細胞を含んでなる細胞懸濁液を提供し、
b) a)の細胞懸濁液をインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片と上記モノクローナル抗体またはその断片がインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下で接触させ、
c) b)のモノクローナル抗体またはその断片に結合する細胞を分離し、且つ場合によっては、
d) c)のモノクローナル抗体またはその断片に結合する細胞を上記抗体またはその断片から回収することによって、
場合によっては上記抗体またはその断片を含まない軟骨細胞の個体群を産生する
工程を含んでなる。
【0026】
同様に、本発明は、哺乳類ES細胞の下位個体群を単離する方法を提供し、この方法は、
a) ES細胞を含んでなる細胞懸濁液を提供し、
b) a)の細胞懸濁液をインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片と上記モノクローナル抗体またはその断片がインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下で接触させ、
c) b)のモノクローナル抗体またはその断片に結合する細胞を分離し、且つ場合によっては
d) c)のモノクローナル抗体またはその断片に結合する細胞を上記抗体またはその断片から回収することによって、
場合によっては上記抗体またはその断片を含まない軟骨細胞の個体群を産生する
工程を含んでなる。
【0027】
上記の方法の他の態様は、インテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片がドイチェ・ザムルング・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルテューレン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフツング(Deutsche Sammlung von Microorganismen und Zellkulturen GmbH)に受託番号DSM ACC2583で寄託されたハイブリドーマ細胞系によって産生されるインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片であるものである。
【0028】
この方法の別の態様は、モノクローナル抗体またはその断片が固相に連結しているものである。
【0029】
本発明は、上記の方法によって得ることができる哺乳類間葉幹細胞の個体群、哺乳類軟骨細胞の個体群、および哺乳類胚幹細胞の下位個体群も提供する。
【0030】
本発明は、関節疾患またはアテローム性動脈硬化症の治療のための医薬組成物の調製を目的とするインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片の使用も提供する。
【0031】
他の方法および使用も、以下において提供され、詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
定義
本明細書で用いられる「間葉幹細胞」という用語は、骨、軟骨、筋肉、腱および靱帯、脂肪組織、および結合組織を形成する細胞など様々な種類の分化細胞に分化することができる細胞を表す。
【0033】
本明細書で用いられる「軟骨細胞」という用語は、軟骨を含んでなる細胞を表す。
【0034】
本明細書で用いられる「軟骨形成性」という用語は、軟骨細胞になる潜在的可能性を有する細胞を表す。
【0035】
本明細書で用いられる「医薬組成物」とは、本発明による治療上有効な組成物を意味する。
【0036】
本明細書で用いられる「治療上有効量」または「有効量」、または「治療上有効な」とは、所定の疾患および投与法について治療効果を提供する量を表す。これは、必要とされる添加剤および希釈剤、すなわちキャリヤーまたは投与ビヒクルに関連して所望な治療効果を生じるのに計算された活性材料の所定量である。更に、それは、宿主の活性、機能および応答における臨床的に有意な欠損を減少させ、最も好ましくは予防するのに十分な量を意味しようとするものである。あるいは、治療上有効量は、宿主における臨床的に有意な疾患において改良を引き起こすのに十分である。当業者であれば理解されるように、化合物の量はその特有の活性によって変化することができる。適当な投薬量は、必要とされる希釈剤、すなわちキャリヤーまたは添加剤に関連して所望な治療効果を生じるのに計算された活性材料の所定量を含むことができる。本発明の組成物を製造するための方法および使用において、活性成分の治療上有効量が提供される。治療上有効量は、当該技術分野で周知のように、年齢、体重、性別、疾患、合併症、他の疾患などのような患者の特徴に基づいて通常の熟練した医療または獣医従事者が決定することができる。
【0037】
本明細書で用いられる「調節する」という用語は、細胞のシグナル形成効果に直接または間接的に影響する能力を意味するものと解釈される。例えば、調節するとは、拮抗薬として作用する、すなわち部分的にまたは完全に阻害し、減少し、緩和し、遮断しまたは防止すること、または増加または刺激する、すなわち作動薬として作用することを意味する。調節は、直接または間接的であってもよい。「間接的調節」とは、効果が天然のリガンド結合部位を介さず、同一分子状の別の部位を介するかまたは別の第二の分子を介するものである。これは、天然のリガンド結合部位を介して作用する「直接調節」とは対照的である。
【0038】
ハイブリドーマ細胞系
上記で明らかにされているように、本発明は、インテグリンα10β1の細胞外リガンド結合ドメインに特異的な抗体、およびこのような抗体を産生するハイブリドーマに関する。
【0039】
更に具体的には、本発明は、インテグリンα10β1の細胞外リガンド結合I-ドメインに特異的な抗体を産生する一つの生成したハイブリドーマ細胞系に関する。例えば、ドイチェ・ザムルング・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルテューレン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフツング(Deutsche Sammlung von Microorganismen und Zellkulturen GmbH)に受託番号DSM ACC2583で寄託されたハイブリドーマ細胞系が開示されている。
【0040】
α10β1の細胞外リガンド結合I-ドメインに特異性を有するモノクローナル抗体 (mAb)またはその断片は、このインテグリンを発現する細胞、特に間葉幹細胞、軟骨形成性細胞、軟骨細胞、繊維芽細胞、腱細胞、筋原細胞、骨芽細胞、単球またはマクロファージの発生、機能、シグナル形成および分化を理解する上で極めて重要である。
【0041】
図1は、全能性胚幹(ES)細胞の神経、造血、上皮および間葉幹細胞(MSC)を形成することができる多分化能成人幹細胞への系列分化の表を示す。ES細胞からMSC、更には軟骨細胞への分化は、インテグリンα10β1を発現することができる細胞の経路を示す。
【0042】
従って、本発明の寄託番号DSM ACC2583を有するハイブリドーマ細胞系mAb 365によって産生される抗体365のようなインテグリンサブユニットα10のI-ドメインに特異的な抗体を用いて、研究および治療応用での受容体機能を調節することもできる。例えば、本明細書に記載の抗体は、(a) 例えば、リガンドの受容体への結合、(b) 受容体シグナル形成機能、および/または(c) 刺激機能を阻害する、すなわち減少させまたは防止する拮抗薬として作用することも、または作動薬として、すなわち増加させまたは刺激する作用を行うこともできる。受容体機能の作動薬またはまたは拮抗薬として作用することができる抗体は、例えば、コンホメーション変化を引き起こすことによって直接または間接的にリガンド結合を遮断することができる。例えば、抗体は、リガンドの結合を阻害することによって、またはリガンドの結合を阻害しまたは阻害することなく、脱感作によって受容体機能を阻害することができる。受容体に結合する抗体は、受容体のシグナル形成および/または刺激機能のような受容体機能を誘発しまたは刺激する、例えば、細胞外マトリックス(ECM)ターンオーバーを調節し、ECM合成を刺激する受容体機能の作動薬として作用することもできる。
【0043】
更に一層重要なことは、インテグリンα10β1を発現する細胞に結合する調節、例えば、刺激、遮断または阻害mAbは、治療薬としての大きな潜在的可能性を有する。
【0044】
更に、インテグリンα10β1のI-ドメインに特異的なmAbは、薬剤送達ビヒクルとしてまたは既知の薬剤送達ビヒクルと組み合わせて用いることができる。
【0045】
更に、インテグリンα10β1のI-ドメインに特異的なmAbを用いて、遺伝子療法においてインテグリンα10β1を発現する細胞の細胞表面をターゲッティングすることができる。
【0046】
インテグリンα10 サブユニットのI-ドメインに特異的なmAbの生成
インテグリンα10 サブユニットのI-ドメインに特異的なmAbの生成における問題により、モノクローナル抗体を生成するための特定のプロトコールを生み出して、評価した。このプロトコールは、抗体365を産生する細胞系mAb 365の発生によって下記に例示される。
【0047】
細胞外α10β1のI-ドメインに結合する抗体を産生するハイブリドーマ細胞系mAb 365を生成するため、インテグリンα10β1の遺伝子ノックアウトマウスを用いた。ノックアウトマウスは、参考として本明細書に包含されている2002年4月12日出願のスウェーデン国特許出願第0201130-2号明細書に記載されている。
【0048】
免疫および追加免疫投与の後、脾臓細胞をNSO細胞と融合させ、生成するハイブリドーマ細胞をクローニングした。クローンmAb 365は、α10β1に特異性を有するモノクローナル抗体365を分泌した。特異性に関する限り、モノクローナル抗体はヒトおよびネズミ起源のいずれのα10β1にも結合する。
【0049】
実施例1において、細胞系mAb 365の生成を更に詳細に記載する。
【0050】
本発明によれば、受託番号DSM ACC2583を有するハイブリドーマ細胞系 mAb 365によって産生されるインテグリンα10β1の細胞外領域に対するモノクローナル抗体またはその断片が開示される。
【0051】
モノクローナル抗体365
インテグリンα10β1は、4種類のコラーゲンに結合するI-ドメインを含むインテグリンの構成要素の一つである。他のI-ドメインを含むコラーゲン結合インテグリンと同様に、α10 I-ドメインはいわゆるMIDAS(金属イオン依存性接着部位)モティーフを含む。このモティーフは、I-ドメインへのリガンド結合に重要な役割を有すると考えられる。リガンドが結合したならば、I-ドメインのコンホメーションが変化し、このドメインの二次および三次構造に大規模な変化が起こる(Emsley et al 2000)。
【0052】
α2 I-ドメイン結晶構造に基づくα10 I-ドメインの分子モデリングにより、他のI-ドメインと比較してMIDASモティーフの附近に一層高度の正に帯電したアミノ酸が明らかとなった(Tulla et al 2001, Plow et al 2000)。他の結合インテグリンのI-ドメインでは存在しないと思われるこのクラスターは、特異的機能特性を有するα10を提供し、従ってα10β1を独特なものとすることがある。従って、α10β1のI-ドメインは、抗体生成の非常に興味深いターゲットである。
【0053】
本発明によるモノクローナル抗体またはその断片は、例えば、ヒトまたはネズミ起源の哺乳類細胞同定し、単離し、列挙し、起源を突き止め、調節する、すなわち阻害しまたは刺激するのに用いることができる。これらの細胞は、例えば、間葉幹細胞、軟骨形成性細胞、軟骨細胞、繊維芽細胞、腱細胞、筋原細胞、骨芽細胞、筋細胞、脂肪細胞、単球またはマクロファージであることができる。
【0054】
抗体365またはその断片のような本発明によるモノクローナル抗体またはその断片を、任意の既知の分析または診断アッセイまたは方法、例えば、当業者に知られている様々な免疫法に用いることができる。例は、免疫沈殿、イムノアフィニティー精製、免疫ブロット法、免疫局在化、競合的結合測定法、直接および間接サンドイッチ分析法、および免疫蛍光法である。他の例は、Zola 1987およびSites et al 1982に示されており、それらの文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている。
【0055】
更に、モノクローナル抗体またはその断片は、様々な医薬生成物およびそれらを必要とする哺乳類での治療目的に用いることができる。このような医薬生成物としては、抗体365またはその断片のような本発明によるモノクローナル抗体またはその断片と例えば関節疾患に影響を及ぼす、例えば予防、治療または緩和することが当該技術分野で知られている様々な薬剤との接合体が挙げられる。例は、関節疾患、例えば変形性関節症、慢性関節リウマチの治療用の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)、苦痛処置の治療の目的で整形外科手術の後に手術後に使用する局所麻酔薬への接合体、治療で使用するための医薬生成物を生成するためのアテローム性動脈硬化症プラークの治療を目的とする低脂肪血症薬への接合体、またはマトリックス合成を調節するための増殖因子のような因子である。
【0056】
本明細書で用いられるモノクローナル抗体の「その断片」という用語としては、その機能的部分が挙げられ、例えばFv、Fab、Fab'、F (ab')2断片などこれらに限定されない抗原結合断片、一本鎖抗体、およびキメラ、ヒト化または霊長類化(primatized)(CDRグラフティングした)抗体、並びにキメラまたはCDRグラフティングした一本鎖抗体など、様々な種から誘導される部分を含んでなるものも本発明および「抗体およびその断片」という用語に包含される。このような断片は、酵素開裂によってまたは組換え技術によって産生することができる。例えば、パパインまたはペプシン開裂は、それぞれFabまたはF(ab')2断片を生成することができる。1個以上の終結コドンを天然の終結部位の上流に導入した抗体遺伝子を用いて、抗体を様々な切り詰めた形態で産生させることもできる。例えば、F (ab')2重鎖部分をコードするキメラ遺伝子をデザインして、重鎖のCH.sub.Iドメインおよびヒンジ領域をコードするDNA配列を挙げることができる。これらの抗体の様々な部分を常法によって化学的に互いに接合させることができ、または遺伝子工学技術を用いて隣接タンパク質として調製することができる。
【0057】
ネズミ由来のモノクローナル抗体はヒト患者で免疫原性応答を引き起こし、その治療効力を減少させることがある。従って、この問題点を回避するため、ネズミの抗原結合可変ドメインがヒト定常ドメインにカップリングしているヒト化抗体を開発した(Morrison et al (1984), Boulianne et al (1984), Neuberger et al (1985))。
【0058】
ヒトで免疫学適応等を引き起こすことがあるヒト抗体での異種配列の使用をできるだけ少なくするため、ネズミ抗体のCDRまたはCDR配列をヒト可変領域枠組構造(Fr)にグラフトする(例えば、Jones et al 1986, Riechmann et al 1988, Verhoeyen et al 1988を参照されたい。上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)。この方法の治療効力は、例えば、Reichmann et al (1988)およびHale et al (1989)によって以前に明らかにされており、上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている。
【0059】
本明細書で用いられる「ヒト化免疫グロブリン」という用語は、異なる起源の免疫グロブリンの部分を含んでなり、少なくとも一部分がヒト起源である免疫グロブリンを表す。ヒト化抗体を構築するための効率的手順が開発されている(Funaro et al 1996, Vaμghan et al 1998, いずれの文献の内容も、その開示の一部として本明細書に引用されている)。従って、本発明は、哺乳類インテグリンα10β1のI-ドメインに結合するヒト化免疫グロブリンであって、非ヒト起源、例えばネズミのような齧歯類の抗原結合領域とヒト起源の免疫グロブリンの少なくとも一部分、例えばヒト枠組構造領域、ヒト定常領域またはその部分を含んでなる免疫グロブリンに関する。例えば、ヒト化抗体は、マウスのような必須の特異性を有する非ヒト起源の免疫グロブリン由来の部分とヒト起源の免疫グロブリン配列由来の部分、例えばキメラ免疫グロブリンであって、互いに常法、例えば、合成によって化学的に接合しまたは遺伝子工学の手法を用いて隣接ポリペプチドとして調製したものを含んでなり、例えば、キメラ抗体のタンパク質部分をコードするDNAを発現させて隣接ポリペプチド鎖を産生することができる。
【0060】
本発明のヒト化免疫グロブリンのもう一つの例は、非ヒト起源のCDR、例えば非ヒト起源の抗体由来の1種類以上のCDRを含んでなる1本以上の免疫グロブリン鎖とヒト起源の軽および/または重鎖由来の枠組構造領域、例えば枠組構造変化を有するまたはのないCDRグラフティングした抗体を含む免疫グロブリンである。一態様では、ヒト化免疫グロブリンの抗原結合領域は、ヒト抗体の重および軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3を含んでなる本発明に開示されている抗体365から誘導される。キメラまたはCDRグラフティングした一本鎖抗体も、ヒト化免疫グロブリンという用語によって包含される。
【0061】
ヒト化免疫グロブリンは、合成および/または組換え核酸を用いて産生し、所望なヒト化した鎖をコードする遺伝子、例えば、cDNAを調製することができる。例えば、ヒト化可変領域をコードする核酸、例えばDNAの配列を、PCR突然変異誘発法を用いて構築して、以前にヒト化した可変領域からのDNA鋳型のようなヒトまたはヒト化鎖をコードするDNA配列を変更することができる(例えば、Kamman, M., et al. , Nucl. Acids Res., 17: 5404 (1989); Sato, K., et al., Cancer Research, 53: 851-856 (1993); Daμgherty, B. L. et al., Nucleic Acids Res., 19 (9): 2471-2476 (1991);およびLewis, A. P. and J. S. Crowe, Gene, 101: 297-302 (1991)を参照されたい。上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)。これらまたは他の適当な方法を用いて、変異体を容易に産生することもできる。一態様では、クローニングした可変領域を突然変異誘発することができ、所望な特異性を有する変異体をコードする配列をファージライブラリーなどから選択することができる(例えば、Krebber et al., 米国特許第5,514,548号明細書; Hoogenboom et al., WO 93/06213号明細書, 1993年4月1日公表を参照されたい)。上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている。
【0062】
キメラまたはヒト化鎖をコードする核酸を発現させて、隣接タンパク質を産生することができる。例えば、Cabilly et al., 米国特許第4,816,567号明細書; Cabilly et al, 欧州特許第0,125, 023 B1号明細書; Boss et al., 米国特許第4,816,397号明細書; Boss et al., 欧州特許第0,120,694 B1号明細書; Neuberger, M. S. et al., WO 86/01533号明細書; Neuberger, M. S. et al., 欧州特許第0,194,276 B1号明細書; Winter, 米国特許第5,225,539号明細書; Winter, 欧州特許第0,239,400 B1号明細書; およびQueen et al., 米国特許第5,585,089号明細書、第5,698,761号明細書および第5,698,762号明細書を参照されたい。また、霊長類化抗体に関しては、Newman, R. et al., BioTechnology, 10: 1455-1460 (1992)を、一本鎖抗体に関しては、Ladner et al., 米国特許第4,946,778号明細書、およびBird, R. E. et al., Science, 242: 423-426 (1988)も参照されたい。上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている。
【0063】
本発明の一態様では、抗体365のような本発明による抗体の断片をコードする枠組構造領域またはCDRまたはCDR配列は、適当なヒト抗体に置換される。
【0064】
更に、機能的断片、すなわちキメラ、ヒト化、霊長類化したまたは一本鎖抗体の断片などの抗体の抗原結合断片を産生することもできる。上記抗体の機能的断片は、それらが誘導される完全長抗体の少なくとも1個の結合機能および/または調節機能を保持している。好ましい機能的断片は、相当する完全長抗体の抗体結合機能、すなわち哺乳類インテグリンα10またはインテグリンα10β1のI-ドメインを結合する能力を保持する。特に好ましい機能的断片は、哺乳類のインテグリンα10またはインテグリンα10β1のI-ドメインに特徴的な1以上の機能、例えば、結合活性、シグナル形成活性、および/または細胞応答の刺激を阻害する能力を保持する。例えば、一態様では、機能的断片は、哺乳類インテグリンα10またはインテグリンα10β1のI-ドメインとそのリガンドの1個以上、例えば、細胞外マトリックス分子のような細胞マトリックスリガンド、例えばコラーゲンI-VI、IX、X、XI型および/またはコンドロアドヘリンのような他の細胞外マトリックスタンパク質、および他のロイシンリッチな反復タンパク質(LRRタンパク質)、マトリリン、ラミニン、およびテネイシンとの相互作用を調節、すなわち阻害または刺激することができ、コラーゲンターンオーバーの調整、マトリックスメタロプロテイナーゼ発現の調整、ECM分子ターンオーバーの調整などの1以上の受容体依存性機能を調節することができる。
【0065】
抗体365またはその断片のような本発明によるマウスモノクローナル抗体またはその断片のヒト化は、下記の方法で行うことができる。
1) RNAを本発明のマウスハイブリドーマクローンから回収する。
2) マウスリーダー配列の5'末端およびマウス定常領域の5'末端にハイブリダイズするPCRプライマーを、κ軽鎖可変領域と重鎖可変領域のクローニングのためにデザインする。
3) 相補的DNA(cDNA)を全RNAから合成した後、軽および重鎖特異的プライマーを用いるPCR増幅を行う。
4) マウスモノクローナル抗体可変領域を含む陽性菌コロニーをスクリーニングする。
5) クローニングしたマウスモノクローナル抗体リーダー可変領域をPCRプライマーを用いて5'-および3'-末端で変更し、効率的な真核生物翻訳のための配列を組込み且つ可変および定常領域のRNAスプライシングのためのスプライスドナー部位を組込むための発現ベクターへの挿入を目的とする制限酵素部位を作成する。
6) 適合したマウスモノクローナル抗体の軽および重鎖リーダー-可変領域を、例えば、転写のためのヒトサイトメガロウイルスエンハンサーおよびプロモーター、ヒト軽または重鎖定常領域、形質転換細胞の選択のためのネオマイシン遺伝子、およびCOS細胞における複製のシミアンウイルス40起源を含むベクターに挿入する。
【0066】
上記ベクターは、哺乳類細胞におけるキメラまたは新形態にしたヒト軽および重鎖を発現するようにデザインされる。遺伝子工学処理したヒト抗体のデザインおよび構築には、抗原結合部位の形成に極めて重要な残基を同定するための以下に更に記載されるマウスモノクローナル抗体可変領域の一次アミノ酸配列の分析が必要である。
【0067】
次に、マウスCDRを選択されたヒト可変領域からのFRに接合させて、ヒト化抗体を形成する。
【0068】
モノクローナル抗体の一次アミノ酸配列
遺伝子工学処理したヒト抗体またはその断片のデザインおよび構築には、一次アミノ酸配列の分析が必要である。ハイブリドーマによって産生される抗体のDNA配列およびそれによる一次アミノ酸配列の誘導は、今日では熟練技術者にとって容易に行われている。抗体365のようなマウスモノクローナル抗体可変領域から引き出される情報を用いて、上記抗体の抗原結合部位の形成に極めて重要な残基を同定する。
【0069】
例えば、抗体またはその部分の重および/または軽鎖をコードする核酸は、様々な宿主細胞またはイン・ビトロでの翻訳系における特異的免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそれらの変異体、例えば、ヒト化免疫グロブリンの産生を目的とする組換えDNA技術によって得て、使用することができる。例えば、cDNA、またはヒト化免疫グロブリンまたは免疫グロブリン鎖のような変異体をコードするその誘導体などの核酸を適当な原核生物または真核生物ベクター、例えば、発現ベクター中に置き、適当な方法、例えば、形質転換、トランスフェクション、電気穿孔、感染によって適当な宿主細胞中に導入し、核酸をベクターにおけるなどの1個以上の発現制御要素に操作可能に接合させまたは宿主細胞ゲノムに結合させるようにすることができる。
【0070】
本明細書で用いられる「組換え発現ベクター」または「発現ベクター」は、(1)例えば、プロモーターまたはエンハンサーのような遺伝子発現において調節の役割を有する遺伝子要素または複数の要素、(2)mRNAに転写されてタンパク質に翻訳される構造またはコード配列、および(3)適当な転写および終止配列のアセンブリーを含んでなる転写単位を表す。真核生物発現系での使用を目的とする構造単位としては、宿主細胞による翻訳されたタンパク質の細胞外分泌を可能にするリーダー配列が挙げられる。あるいは、組換えタンパク質がリーダーまたは輸送配列なしで発現される場合には、組換えタンパク質はN末端メチオニン残基を包含することがある。この残基は、後で発現した組換えタンパク質から開裂され、最終生成物を提供することがありまたはない。
【0071】
産生には、宿主細胞は、例えば、インデューサー、適当な塩を補足した適当な培地、増殖因子、抗生物質、栄養補給物などの存在下で発現に適する条件下に保持することによって、コートとされたポリペプチドを産生することができる。所望ならば、コードタンパク質を、例えば、宿主細胞、または培地または乳から回収しおよび/または単離することができる。産生の方法は、トランスジェニック動物の宿主細胞での一過性または定常的発現を包含する。
【0072】
下記のものは、抗体365のようなJarrin and Andrieux (1999)によって更に記載されているマウスモノクローナル抗体を配列決定の方法の一例であり、上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている。簡単に説明すれば、
1) RNAを、標準的方法、例えば、Gough (1988)の方法によって本発明のハイブリドーマ細胞系から抽出する。上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている。

2) 逆転写酵素を、RNAをネズミ抗体の免疫グロブリン重および軽鎖のそれぞれに特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプライマーとインキュベーションすることによって、または一般的なオリゴd(T)-プライマーによって行う。
3) PCRを行ってcDNAを増幅し、増幅産物をアガロースゲル上で分析する。
4) 免疫グロブリン鎖のそれぞれの可変領域に相当するPCR産物を、軽鎖についてはBmaHl/EcoRlおよび重鎖についてはPstl/Clalのような制限酵素で消化する。
5) ベクター、例えば、pBlueScriptを、マウスモノクローナル抗体のそれぞれの鎖のクローニングに必要なものに相当する制限酵素で消化する。
6) 消化した免疫グロブリン鎖を消化したベクターとインキュベーションして、連結反応を行う。
7) DH5α細菌のようなエレクトロコンピテント(electrocompetent)細菌を、電気穿孔により連結産物と共に形質転換する。
8) 細菌を、例えば、アンピシリン、X-GalおよびIPTGを含むLB寒天プレート上で選択する。効率的に形質転換された細菌とベクターインサートのみが、白色コロニーを生成する。
9) プラスミドDNAを精製し、適当なキットを用いて配列決定を行う。抗体の重および軽鎖可変領域のアミノ酸配列を、このようにして上記で決定したヌクレオチド配列から推定することができる。
【0073】
抗体またはその断片を用いる細胞の調節
本発明によるモノクローナル抗体またはその断片、例えば抗体365を用いて、前節で記載したα10β1を発現する細胞の活性を調節することができる。「細胞の活性を調節する」とは、α10β1の機能または生物学的活性を活性化すること、またはα10β1の機能または生物学的活性を例えば部分的にまたは完全に遮断しまたは中和することによって実質的に阻害しまたは除去することによって阻害することを意味する。典型的には、抗体またはその断片の遮断または中和により、コラーゲンI-VI、IX、X、XI型のような細胞マトリックスリガンドおよび/またはコンドロアドヘリンおよび他のロイシンリッチな反復タンパク質(LRRタンパク質)、マトリリン、ラミニン、およびテネイシンのような他の細胞外マトリックス分子へのα10β1の結合が阻害される。
【0074】
調節される細胞は、インテグリンα10β1を発現する細胞であり、間葉幹細胞、胚幹(ES)細胞、軟骨細胞、繊維芽細胞、脂肪細胞、筋細胞、腱細胞、筋原細胞、骨芽細胞、単球およびマクロファージでよいが、これらに限定されない。
【0075】
細胞外マトリックス分子の結合の阻害において、モノクローナル抗体は、これが結合して増殖因子、サイトカイン、転写因子、および/またはECM分子のような1以上の因子の発現および/または合成を刺激する細胞を誘導することができる。
【0076】
調節は、一般にはイン・ビボまたはイン・ビトロでの目的とする細胞を経験的に決定した量の抗体365のようなモノクローナル抗体とインキュベーションすることによって行われる。次に、この効果を、適当な方法でアッセイまたは決定する。イン・ビトロでは、典型的な濃度は0.1μg/ml-100μg/mlの範囲とすることができるが、他の濃度処方計画が有用なことがあり、除外されない。イン・ビボでは、問題とする疾患の種類および重篤度によって、約0.015-15mgの抗体またはその断片/患者の体重1Kgが患者に投与するための最初の候補投薬量である。
【0077】
抗体またはその断片のELISA分析法での使用
競合的結合分析法は、α10β1またはI-ドメインのようなその免疫学的に反応性部分でもよい標識標準物の試験試料分析質、すなわちα10β1またはα10と限定された量の抗体の結合について競合する能力に依存している。次に、試験試料、例えば、ヒト血液、ヒト滑液、腱の周囲の流体、すなわち腱滑液中のα10またはα10β1の量を、抗体に結合する標準物の量に逆比例するものとして分析する。
【0078】
サンドイッチ分析法は、2種類の抗体であって、それぞれが検出を行うタンパク質の異なる免疫原性部分またはエピトープに結合することができるものの使用を含む。サンドイッチ分析法では、試験試料分析質を固形支持体上に固定されている第一の抗体またはその断片によって結合した後、第二の抗体またはその断片が分析質に結合することによって、不溶性三部分複合体を形成する。第二の抗体またはその断片自身は、直接サンドイッチ分析法における検出可能な部分で標識することができ、または間接サンドイッチ分析法で検出可能な部分で標識している抗免疫グロブリン抗体またはその断片を用いて測定することができる。例えば、サンドイッチ分析法の一種類はELISA(固相酵素免疫検定法)であって、その場合には、検出可能な部分は酵素である。
【0079】
本発明によるモノクローナル抗体またはその断片を、上記分析法に用いることができる。使用する本発明によるモノクローナル抗体の一例は、抗体365である。
【0080】
インテグリンα10β1のI-ドメインの細胞外部分に結合する抗体またはその断片を用いて単離したMSCの使用
追加の態様では、本発明は、治療および/または診断目的で本発明によって産生されるES細胞、MSC、軟骨形成性または軟骨細胞を有するMSC、またはネズミまたはヒト起源のような哺乳類のα10β1を発現する他の前駆細胞およびインテグリンα10β1のI-ドメインの細胞外部分に結合するモノクローナル抗体またはその断片、例えば、抗体365またはその断片を用いる方法および使用に関する。例えば、ヒトMSCまたは前駆細胞は、
1) 急性損傷、異常遺伝子発現または後天性疾患によって損傷した間葉組織の再生、
2) 例えば、骨髄の小部分を除去することによる損傷した間葉組織またはMSCなどの任意の他の組織による宿主の処理、それらのMSCの単離、およびMSCを損傷した組織部位(1または複数)に送達するのに適する生物適合性キャリヤーと結合したMSCによる損傷した組織の治療
に使用することができる。
【0081】
MSCまたは軟骨形成性を有するMSCまたは軟骨細胞を含む本発明による組成物は、結合組織欠損の修復、再構成および/または再生を促進するのに特に有用である。本明細書で用いられる結合組織としては、軟骨、骨、靱帯、腱、支質および筋が挙げられる。結合組織の欠損としては、正常な結合組織と比較して任意の損傷または不整であって、外傷、疾病、年齢、出生時欠損、手術時の介入などによって起こる可能性があるものが挙げられる。例えば、抗体365のような本明細書に開示される本発明による抗体の使用は、整形外科手術手順に用いるのに特に適している。
【0082】
インテグリンα10β1のI-ドメインの細胞外部分に結合するモノクローナル抗体またはその断片を用いて単離した軟骨細胞の使用
追加の態様では、本発明は、軟骨細胞および治療および/または診断目的で産生されるインテグリンα10β1のI-ドメインの細胞外部分に結合するモノクローナル抗体またはその断片を用いる様々な方法に関する。例えば、ヒト軟骨細胞は、
1) 急性損傷、異常遺伝子発現または後天性疾患によって損傷した軟骨の再生、
2) 小さな軟骨生験の除去、軟骨細胞の単離、イン・ビトロでの軟骨細胞の培養、およびヒト患者の軟骨損傷部位(1または複数)への展開した軟骨細胞の再導入による損傷した軟骨細胞を有する宿主の治療
に用いることができる。
【0083】
軟骨欠損としては、正常な軟骨組織と比較して任意の損傷または不整であって、外傷、機械的負荷、疾病、年齢、出生時欠損、手術時の介入などによって起こる可能性があるものが挙げられる。例えば、抗体365またはその断片のようなインテグリンα10β1のI-ドメインの細胞外部分に結合するモノクローナル抗体またはまたはその断片の使用は、本発明では整形外科手術手順に用いるのに特に適している。
【0084】
インテグリンα10β1のI-ドメインの細胞外部分に結合するモノクローナル抗体またはまたはその断片を用いて単離した胚幹細胞の使用
追加の態様では、本発明はES細胞、および治療および/または診断目的で産生されるインテグリンα10β1のI-ドメインの細胞外部分に結合するモノクローナル抗体またはその断片を用いる様々な方法に関する。例えば、ヒトES細胞は、
a) 急性損傷、異常遺伝子発現または後天性疾患によって損傷した間葉組織の再生、および/または
b) 4-6日齢のヒト胚の胚盤胞の内細胞塊(ICM)からES細胞を単離し、これらの細胞をイン・ビトロでマウス胚繊維芽細胞支持細胞上で培養して細胞を増殖させることによる間葉組織が損傷した宿主の治療。培地から増殖因子または繊維芽細胞増殖因子-2(FGF-2)を除去すると、細胞が分化し、この時点でインテグリンα10β1を発現する細胞の個体数を抗体365を用いることによって同定することができる。このような細胞を生物適合性キャリヤーと組み合わせて、損傷組織部位(1または複数)に外科的に挿入することができる
などに使用することができる。
【0085】
哺乳類間葉幹細胞の個体群の単離方法
本発明によれば、哺乳類間葉幹細胞(MSC)の個体群を単離する方法が開示される。この方法は、
a) 哺乳類間葉幹細胞を含んでなる細胞懸濁液を提供し、
b) a)の細胞懸濁液とインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合する本発明によるモノクローナル抗体またはその断片を、上記モノクローナル抗体またはその断片がインテグリンα10β1の細胞外ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下で接触させ、
c) b)のモノクローナル抗体またはその断片に結合する細胞を分離し、場合によっては
d) c)のモノクローナル抗体またはその断片に結合する細胞を上記抗体またはその断片から回収する
ことによって、場合によっては上記抗体またはその断片を含まない哺乳類間葉幹細胞の個体群を産生する
段階を含んでなる。
【0086】
上記のa)で提供された哺乳類MSCを含んでなる細胞懸濁液は、骨髄、末梢血、臍帯血、肝臓、骨、軟骨、筋肉、軟骨膜、骨膜、滑液組織、脂肪、またはMSCを含んでなる任意の組織から単離することができる。細胞懸濁液は、哺乳類の腸骨稜、大腿骨、脛骨、棘、肋骨または他の髄腔から単離することもできる。ヒトMSCの他の供給源としては、胚卵黄嚢、胎盤、および臍帯が挙げられる。
【0087】
細胞の個体群をBMから回収するときには、出発個体群または「粗製個体群」の0.01-0.001%のみがMSCである。とはいっても、これは異なるドナー間で変化する可能性がある。
【0088】
もう一つの態様では、哺乳類MSCはヒトMSCである。
【0089】
もう一つの態様では、哺乳類MSCはネズミMSCである。
【0090】
もう一つの態様では、モノクローナル抗体またはその断片は本発明による抗体365である。
【0091】
もう一つの態様では、上記の培養は2-4週間の培養である。
【0092】
一態様では、MSCの個体群を単離する方法は、
a) 骨髄吸引液(5-30ml)をヒト患者から凝血を防止する目的でヘパリン6000単位を含む注射器に採取し、
b) 骨髄試料を例えばDulbeccoのリン酸緩衝食塩水(DPBS)または任意の同様な食塩溶液で洗浄し、900gで遠心分離した後に細胞を回収し、この手順を再度繰り返し、
c) 細胞を50ml遠沈管中で密度が1.073g/mlのPercoll 25mlに加えて、細胞を1100gで20℃にて30分間遠心分離することによって分離し、
d) 凝集した細胞を界面から回収し、DPBS 2容で希釈し、900gで遠心分離することによって回収する。細胞を再懸濁し、細胞を計数し、細胞を所要密度、適当には200,000個/cm2で培養し、
e) 細胞をDulbeccoの改良Eagle培地(DMEM)または10%ウシ胎仔血清(FBS)を含む任意の他の適当な培地(低グルコース)中で培養する。培地を24および72時間およびその後3または4日毎に取り換え、
f) 10-14日に対称コロニーとして成長するhMSCを0.05%トリプシンおよび0.53 mM EDTAで5分間処理することによって継代培養し、基質から結晶含有培地で洗浄し、800gで5分間遠心分離することによって回収し、新たなフラスコに5000-6000個/cm2で播種する
段階をも含んでなる。
【0093】
MSCの分離は、同定したMSCを分離するための選択および単離段階である。当業者に知られている様々な手法を用いて、MSC以外の他の系統に供される細胞を最初に除去することによって細胞を分離することができる。
【0094】
本発明による抗体またはその断片を固形支持体に接着させて、高度に特異的な分離を行うことができる。用いる分離のための特定の手順、例えば遠心分離、カラム、膜または磁気分離のような機械的分離は、回収される画分の生育力を最大にするものであるべきである。当業者に知られている異なる効力の様々な手法を用いることができる。用いられる特定の手法は、分離の効率、その方法の細胞毒性、作業の容易さおよび速度、および精巧な装置および/または技術的技能の必要性によって変化する。
【0095】
本発明による抗体またはその断片によって促進される細胞懸濁液からMSCの分離の手順は、例えば抗体コーティングしたビーズを用いる磁気分離、本発明による抗体またはその断片に基づくアフィニティークロマトグラフィー、および固形マトリックス、例えばプレートに接着した上記抗体またはその断片を用いる「パンニング」を挙げることができる。磁気細胞ソーティングは当業者に周知であり、例えばHaukanes and Kvam (1993) Biotechnology 11(1): 60-63、およびQuirici et al (2002) Exp. Hematol 30: 783-791に記載されている。
【0096】
正確な分離を行う手法としては、本発明による抗体またはその断片を用いることによる蛍光活性化細胞ソーターであって、例えば複数のカラーチャンネル、光散乱検出チャンネル、インピーダンスチャンネルなど当業者に知られている様々な程度の精巧さを有することができるものが挙げられる。
【0097】
一態様では、提供される細胞個体群におけるMSCの第一の濃縮化段階を作成する。この第一の選択はMSCの負の選択であることができ、すなわち他の系列が関わった細胞を、細胞の初期個体群から涸渇させまたは除去する。
【0098】
更にもう一つの態様では、第一の濃縮化はMSCの正の選択であり、MSCの所望な純度が得られるまで繰り返すことができる。
【0099】
あるいは、MSC細胞は骨髄から単離することができる。幹細胞は、標準的方法によってヒト骨髄から単離することができる(Quirici et al (2002) Exp. Hematol 30(7): 783-791)。あるいは、市販のMSCを用いることができる(Poietics)。
【0100】
骨髄から単離するときには、骨髄は健康な同種骨髄移植ドナーから採取し、ヘパリン処理した試験管に回収し、製造業者の記載に従ってLymphoprep(商品名)(密度 1.077g/ml, Nycomed, ノルウェー)上に積層することができる。次に、低密度単層細胞(LD-MNC)を、遠心分離によってヒト骨髄細胞から単離する。LD-MNCをPBSで二回洗浄し、MSCGM (間葉幹細胞増殖培地) (Poetics, Cambrex Bio Science Walkersville, Inc.)に再懸濁する。
【0101】
次に、間葉幹細胞を、下記の標準的方法、すなわちプラスチックへの接着(Pittenger et al (1999) Science 184.-143)、CD45-/α-グリコフォリンA- (Reyes et al (2001) Blood. 98(9): 2615-25)、CD105+ (Conrad et al. (2002). Exp Hematol. 30(8): 887-95)、およ゛ひNGFR+単離(Quirici et al. (2002) Exp Hematol. 30(7): 783-91)によって精製することができる。
【0102】
哺乳類軟骨細胞の個体群の単離方法
本発明によれば、哺乳類軟骨細胞の個体群を単離する方法が開示される。この方法は、
a) 軟骨細胞を含んでなる細胞懸濁液を提供し、
b) a)の細胞懸濁液をインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合する本発明によるモノクローナル抗体またはその断片と、上記モノクローナル抗体またはその断片がインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下で接触させ、
c) b)のモノクローナル抗体またはその断片に結合する細胞を分離し、且つ場合によっては、
d) c)のモノクローナル抗体またはその断片に結合する細胞を上記抗体またはその断片から回収することによって、
場合によっては上記抗体またはその断片を含まない哺乳類軟骨細胞の個体群を産生する
工程を含んでなる。
【0103】
上記a)で提供される哺乳類軟骨細胞を含んでなる細胞懸濁液は、軟骨から単離することができる。
【0104】
もう一つの態様では、モノクローナル抗体またはその断片は抗体365またはその断片である。
【0105】
もう一つの態様では、哺乳類軟骨細胞はヒト軟骨細胞である。
【0106】
もう一つの態様では、哺乳類軟骨細胞はネズミ軟骨細胞である。
【0107】
もう一つの態様では、軟骨細胞の個体群を単離する方法は、
1) 例えば、ヒト標本の大腿顆および/または脛骨プラトーから健康な軟骨を採取し、
2) 軟骨を細胞培地(ウシ胎仔血清(FCS)、ペニシリン/ストレプトマイシンおよびL-グルタミンを含むDulbeccoの改良Eagles培地(DMEM))中で37℃で1時間プロナーゼまたはヒアルロニダーゼのような酵素で酵素的に消化し、
3) プロナーゼまたはヒアルロニダーゼ消化の後に上清を廃棄し、更に軟骨をDMEM中で37℃にて3時間コラゲナーゼで消化し、
4) 消化物を沈降させ、上清を消化物から除去し、75μMフィルターで濾過し、
5) 上清を1800gで8分間遠心分離し、上清を5% FCSを含むPBS (Ca2+およびMg2+を含まない)で洗浄し、
6) 洗浄した細胞をDMEMに再懸濁し、5%CO2雰囲気下で37℃にてインキュベーションし、
7) 残っている組織をDMEM中で総ての組織が消化されてしまうまで再度消化し、
8) 段階5を繰り返し、消化によって得られた総ての軟骨細胞をプールし、遠心分離し、DMEMに再懸濁して細胞系数を行い、
9) しかるべく補足を行ったDMEMで軟骨細胞を培養する
段階を含んでなる。
【0108】
軟骨細胞の分離は、同定した軟骨細胞を分離するための選択および単離段階である。様々な手法を用いて、他の既知の軟骨細胞マーカーであるアグリカンおよびコラーゲンIIを発現しない軟骨細胞以外の細胞を最初に除去することによって細胞を分離することができる。
【0109】
上記MSCの単離の方法で記載したのと同様に、本発明による抗体またはその断片を固形支持体に接着させて、高度に特異的な分離を行うことができる。用いる分離のための特定の手順、例えば遠心分離、カラム、膜または磁気分離のような機械的分離は、回収される細胞画分の生育力を最大にするものであるべきである。当業者に知られている異なる効力の様々な手法を用いることができる。用いられる特定の手法は、分離の効率、その方法の細胞毒性、作業の容易さおよび速度、および精巧な装置および/または技術的技能の必要性によって変化する。
【0110】
一態様では、提供される細胞個体群における軟骨細胞の第一の濃縮化段階を作成する。この第一の選択は軟骨細胞の負の選択であることができ、すなわち軟骨細胞ではない他の細胞を、細胞の初期個体群から涸渇させまたは除去する。
【0111】
更にもう一つの態様では、第一の濃縮化は軟骨細胞の正の選択であり、軟骨細胞の所望な純度が得られるまで繰り返すことができる。
【0112】
あるいは、軟骨細胞へ分化するためのインテグリンα10に正の細胞個体群の単離を行うことができる。
【0113】
インテグリンα10に正の細胞は、下記の方法によって単離することができる。すなわち、細胞を10μg/mlのmAb365 (α10インテグリン受容体)で4℃で20分間標識し、洗浄して、ヤギ抗マウスIgGマイクロビーズ(Miltenyi Biotec, ドイツ)で4℃で20分間標識する。α10に正の細胞を、LS midiMACSカラム(Miltenyi Biotec, ドイツ)を用いる正の選択によって単離した。この手順は、製造業者の指示に従って行う。
【0114】
更にもう一つの方法では、LD-MNCを採取して、CD45/α-グリコフォリンA涸渇キット(Miltenyi Biotec, ドイツ)を用いる。次に、負の(マークされていない)細胞を10μg/mlのmAb365 (α10インテグリン受容体)で4℃で20分間標識し、洗浄して、ヤギ抗マウスIgGマイクロビーズ(Miltenyi Biotec, ドイツ)で4℃で20分間標識する。次に、α10に正の細胞を、LS midiMACSカラム(Miltenyi Biotec, ドイツ)を用いる正の選択によって単離する。
【0115】
更にもう一つの方法では、CD105 (Miltenyi Biotec, ドイツ)マイクロビーズを用いて、細胞を拡張し、10μg/mlのmAb365 (α10インテグリン受容体)で4℃で20分間標識し、洗浄して、ヤギ抗マウスIgGマイクロビーズ (Miltenyi Biotec, ドイツ)で4℃で20分間標識する。次に、α10に正の細胞を、LS midiMACSカラム(Miltenyi Biotec, ドイツ)を用いる正の選択によって単離する。
【0116】
更にもう一つの態様では、ヒト軟骨細胞の個体群をヒト関節軟骨からの抽出によって提供する。One way of extracting a軟骨細胞がリッチな個体群を抽出する一つの方法は、Brittberg et al (1994) in N. Engl. J. Med. (331: 889-895)に記載されている。次に、MAb365を用いて、本発明によるα10に正の軟骨細胞を更に濃縮化し、上記に開示したように哺乳類軟骨細胞の個体群を単離する。
【0117】
軟骨細胞は、コラーゲンII型のmRNA産生を測定することによってまたは実際のコラーゲンII型産生を測定することによって同定することができる。MRNAは、RT- PCR (逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)について当業者に知られている一般的手順によって測定することができる。コラーゲンII型に特異的なプライマーはである。
【0118】
コラーゲン含量の測定のため、コラーゲンの全量をヒドロキシプロリン分析法(Woessner J. F 1976 「結合組織研究の方法(The 方法ology of Connective 組織 Research)」Hall D監修, pp227-233)を用いて決定することができ、またはコラーゲン合成を3Hプロリンで放射能標識することによって測定することができる(Scutt et al (1992) Anal. Biochem 203: 290-294)。当業者に知られている他の同様な方法を用いることもできる。
【0119】
一例として、ヒドロキシプロリン含量の測定は、下記のやり方で行うことができる。すなわち、コラーゲン(典型的には、コラーゲンII型)を6.0M HClで110℃にて16時間加水分解して、ヒドロキシプロリンを遊離させる。
【0120】
中和の後、それぞれの試料を少なくとも15倍に希釈し、塩濃度が分析法に影響を及ぼすのを防止する。次に、試料を真空乾燥する。
【0121】
用いることができる一つの方法の例
a. 試料(ヒドロキシプロリン1-5μg)を、分析緩衝液で2.0mlとする。
b. クロラミン-T試薬1.0mlを加え、室温にて20分間放置する。
c. 新たに調製したジメチルアミノベンズアルデヒド試薬1.0mlを加え、十分に混合する。
d. 試験管を60℃で15分間インキュベーションし、水道水で5分間冷却する。
e. 550nmでの吸光度を45分以内に測定する。
注記: 必要ならば、加水分解生成物をDowex-50-x-8 (H+型, 200-400メッシュ)のショートカラムを通し、着色物質および不純物を除去することができる。
【0122】
試薬:
1. 貯蔵緩衝液は、1.0リットルの溶液中にクエン酸(H2O) 50g、氷酢酸12ml、酢酸ナトリウム,3H2O 120g、およびNaOH 34gを含む。トルエン数滴を、防腐剤として加える。
2. 分析緩衝液: 貯蔵緩衝溶液をH2Oで10倍に希釈する。
3. クロラミン-T試薬。クロラミン-T 1.41gをH2O 20.7mlに溶解し、 n-プロパノール 26mlおよび貯蔵緩衝液 53.3mlと混合する(この試薬は、4℃で2週間安定である)。
4. ジメチルアミノベンズアルデヒド試薬。p-ジメチルアミノベンズアルデヒド15gをn-プロパノール60mlに懸濁し、過塩素酸(60%) 26mlを徐々に加える(注記: 保護眼鏡の付いた発煙フードを使用のこと)。この試薬は、新たに調製しなければならない。
【0123】
インテグリンα10に正の細胞の分化
関節軟骨には、自己修復能はほとんどまたは全くない。この低修復洗剤能の理由は知られていないが、血液供給の欠落、周囲のマトリックスによる低細胞移動性、および前駆細胞の数が限定されていることが、寄与する因子である可能性がある。軟骨についての組織工学的方法は、これまではイン・ビボで新しい軟骨を修復または生成するために用いることができる間葉幹細胞のような軟骨形成性分化能を有する幹細胞の使用に焦点が当てられてきた(Jorgensen et al (2001) Ann Rheum Dis. 60 (4): 305-309; Johnstone and Yoo (2001) Expert Opin Biol Ther. 2001 1(6): 915-21)。MSCは骨形成、軟骨形成性、脂肪形成および心筋細胞系列へ分化する固有の潜在能力を有することは詳細に報告されているが、現在のところこれらの異なる系列へと導く前駆細胞を同定する手段はない。細胞が軟骨表現型、すなわちコラーゲンIIおよびアグリカンを発現することができるかどうかを示すマーカーは存在するが、これらのタンパク質は合成後に細胞外で発現し、軟骨形成性の細胞型の単離に用いることはできない。
【0124】
上記方法のいずれかによるα10に正の細胞個体群の同定の後、これらの細胞を軟骨形成性表現型に分化させることができ且つ他の既知の表現型と識別することができるのが極めて望ましい(Yoo et al (1998) J. Bone J. Surgery Am 80: 1745-1757)。従って、当業者に知られている下記の方法(Tallheden et al J. Bone. J. Surgery 85A (Suppl2): 93-100) を用いて、mAb365抗体を用いて同定したα10に正の細胞を軟骨細胞表現型に分化させることができるかどうかを決定することができる。他の分化条件は、コントロールとして用いることができる。
【0125】
軟骨形成性分化
細胞を、DMEM (GibcoBRL, Paisley, 英国)、インスリントランスフェリン亜セレン酸ナトリウム(Sigma, スウェーデン)、0.1μMデキサメタゾン(Sigma, スウェーデン)、80μMアスコルビン酸-2-ホスフェート(Sigma, スウェーデン)、1mg/mlリノール酸-ウシ血清アルブミン(Sigma, スウェーデン)、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン(GibcoBRL, Paisley, 英国)および10ng/ml TGF-β3 (R&D Systems Europe Ltd., 英国)中でペレット塊として培養する。軟骨形成性分化を決定するため、ペレット培養物をコラーゲンI型およびII、アグリカンおよびバーシカン発現についてQ-PCRを用いて試験する。
【0126】
骨形成分化
骨形成分化を誘導するため、細胞をDMEM-LG (GibcoBRL, Paisley, 英国)、10% FCS (Sigma, St. Louis, ミズーリー)、50μMアスコルビン酸-2-ホスフェート(Sigma, スウェーデン)、0.10μM デキサメタゾン (Sigma, スウェーデン)、100U/mlペニシリンおよび100 μg/mlストレプトマイシン(GibcoBRL, Paisley, 英国)中で培養する。11日目に、2mMβ-グリセロホスフェート(Sigma, スウェーデン)を培養物に加える。コントロール細胞は、デキサメタゾンおよびβ-グリセロホスフェートなしで培養する。培地を、培養の21または28日中に4日毎に交換する。骨形成分化細胞の無機化能を、Von Kossa染色によって可視化する。
【0127】
脂肪形成分化
脂肪形成分化を誘導するため、細胞をDMEM-LG (GibcoBRL, Paisley, 英国)、10% FCS (Sigma, St. Louis, ミズーリー)、1μM デキサメタゾン (Sigma, スウェーデン)、60μMインドメタシン(Sigma, スウェーデン)、0.5mM 3-イソブチル-メチル-キサンチン(Sigma, スウェーデン)、5μg/mlインスリン(Sigma, スウェーデン)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(Gibco, Invitrogen)中で培養する。4日毎に、細胞をDMEM-LG、10% FCS (Sigma, St. Louis, ミズーリー)、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン(GibcoBRL, Paisley, 英国)および5μg/mlインスリン(Sigma, スウェーデン)中で1日中培養する。負のコントロール細胞は、DMEM-LG (GibcoBRL, Paisley, 英国)、10% FCS、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(GibcoBRL, Paisley, 英国)中で培養する。細胞を分化培地で14日間培養し、分化細胞はOil Red O染色で可視化することができる脂質液胞を含む。
【0128】
哺乳類ES細胞の下位個体群の単離方法
本発明によれば、哺乳類ES細胞の下位個体群の単離方法が開示される。この方法は、
a) ES細胞を含んでなる細胞懸濁液を提供し、
b) a)の細胞懸濁液をインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合する本発明によるモノクローナル抗体またはその断片と、上記モノクローナル抗体またはその断片がインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下で、接触させ、
c) b)のモノクローナル抗体またはその断片に結合する細胞を分離し、場合によっては
d) 上記抗体またはその断片からc)のモノクローナル抗体またはその断片に結合する細胞を回収する
ことによって、場合によっては上記抗体またはその断片を含まない哺乳類ES細胞の下位個体群を産生する
段階を含んでなる。
【0129】
上記のa)で提供された哺乳類ES細胞を含んでなる細胞懸濁液は、4-6日齢のヒト胚の胚盤胞の内部細胞塊(ICM)から単離することができる。ES細胞を調製する他の方法は、Talts et al. (1999)によって記載されている。
【0130】
もう一つの態様では、モノクローナル抗体またはその断片は抗体365である。
【0131】
もう一つの態様では、哺乳類ES細胞はヒトES細胞である。
【0132】
もう一つの態様では、哺乳類ES細胞はネズミES細胞である。
【0133】
一態様では、哺乳類ES細胞の下位個体群を単離する方法は、ES細胞の誘導および増殖の段階をも含んでなる。
【0134】
ES細胞の誘導および増殖は、下記の手順によって行うことができる。追加の情報は、Fong C. Y., and Bongso A. (1999)、Fong C. Y., et al., (1997),およびSolter, D and Knowles, B. (1975)に記載されており、上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている。
【0135】
簡単に説明すれば、受精卵母細胞を、胚盤胞段階(授精6日後)まで一連の培地で標準的共培養フリープロトコールによって培養する(Fong and Bongso 1999)。透明帯は、例えばプロナーゼ(Sigma, St. Louis, ミズーリー)によって消化する(Fong et al 1997)。内部細胞塊(ICM)を、例えば抗ヒト血清抗体(Sigma)を用いる免疫手術に続いて補体(Life Technologies, Gaithersburg,メリーランド)によるリーシスによって単離する(Solter, D and Knowles, B 1975)。
【0136】
次に、ICMを、ゼラチンをコーティングした組織培養皿のマイトマイシンCで有糸分裂的に不活性化したマウス胚繊維芽細胞支持細胞層(75,000個/cm2)上で培養することができる。培地は、20%ウシ胎仔血清 (Hyclone, Logan, ユタ)、0.1mMβ-メルカプトエタノール、1%非必須アミノ酸、2mMグルタミン、50U/mlペニシリンおよび50μg/mlストレプトマイシン(Life Technologies)を補足したDMEM (Gibco,ピルビン酸ナトリウムなし、グルコース4500mg/L)からなることができる。ES細胞培養の単離および初期段階中に、培地にヒト組換え白血病阻害因子hLIFを2000U/ml (Amrad, Melbourne,オーストラリア)を補足することができる。
【0137】
初期平板培養の6-8日後、ICM様凝集塊を分化細胞枝からマイクロピペットによって機械的に取り出して、新鮮な支持細胞層上で再培養することができる。生成するコロニーは、約7日毎にマウス支持細胞層上で約100個の幹細胞様細胞の凝集塊に更に増殖させることができる。凝集塊を、機械的にまたは5回の機械的スライシングに続いてジスパーゼ(10mg/ml, Life Technologies)に暴露することによる組合せ法を用いて分離する。
【0138】
単離した凝集塊は、新鮮なヒト/マウス繊維芽細胞支持細胞層上で再培養することができる。
【0139】
支持細胞の非存在下では、霊長類の多分化能幹細胞の典型的形態を有するコロニーが培養の2週間後に発生することができる。
【0140】
MSC、ES細胞または軟骨細胞の正の選択のためのインテグリンα10β1のI-ドメインの細胞外部分に結合するモノクローナル抗体結合または断片
本発明によれば、開示されたモノクローナル抗体またはその断片を用いて、α10β1を含んでなる分子のインテグリンα10鎖の細胞外I-ドメインを同定する。
【0141】
一態様では、抗体またはその断片は、ドイチェ・ザムルング・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルテューレン(Deutsche Sammlung von Microorganismen und Zellkulturen)に受託番号DSM ACC2583で寄託されたmAb 365と呼ばれる細胞系によって産生されるモノクローナル抗体365である。本発明によるモノクローナル抗体またはその断片は、ポリクローナル抗体に比較して多数の利点を有する。モノクローナル抗体は無制限の供給量で入手可能であり、高親和性のモノクローナル抗体は大きな比率の利用可能な抗原に結合することができる。総ての抗体は同一であり、同じエピトープに結合するので、総ての抗原相互作用は同様な条件下で遮断することができる。ポリクローナル抗体は通常は抗原上の多数の部位に結合し、従って高アビディティーで結合する。ポリクローナル抗体またはその断片を分離手順で用いる目的でカラムにカップリングさせるときには、高アビディティーは抗原の溶出が困難である可能性があることを意味する。抗原を溶出するのに要する過酷な条件はカラムを損傷したりまたは少なくとも部分的に抗原を変性することがある。従って、抗体365のような本発明によるモノクローナル抗体またはその断片を用いることによって、これらの問題点を回避する。
【0142】
正の選択、例えば精製は、本発明によるモノクローナル抗体またはその断片のProtein AまたはProtein Gのような適当な固相マトリックスへの接合によって、または磁気ビーズまたはアガロースビーズのようなビーズへカップリングすることによって行うことができる。分離のための接合手段は、当業者に知られている。プロトコールは、例えばHarlow and Lane 1999に記載されており、上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている。
【0143】
更に、モノクローナル抗体である抗体365またはその断片を、懸濁液中で磁気ビーズにカップリングさせ、ビオチンでビオチン化してアビジンまたはストレプトアビジンにカップリングさせ、および/または適当な支持体にカップリングさせ、または問題とする細胞の種類の分離を容易にするための蛍光活性化セルソーター(FACS)で使用するための蛍光マーカーを標識することができる。MSC、ES細胞または軟骨細胞の生育力にとって過度に有害でない任意の手法を用いることができる。
【0144】
一態様では、分離は哺乳類MSCについてである。同定および選択を包含する分離は、例えば蛍光活性化セルソーター(FACS(登録商標))または特異性の高い任意の他の方法を用いることによる蛍光セルソーティングによって行うことができる。多色分析をFACSと共に用いることができ、これは特に好都合である。MSCは、特定の抗原についての染色の水準に基づいて分離することができる。第一の分離では、一つの蛍光色素で標識した他のマーカーに対する抗体を用いることができるが、本発明による抗体またはその断片を(複数の)異なる蛍光色素に接合させることができる。用いられる他のマーカーは、他の態様では、MSCが発現することができるSH-2、SH-3、CD29、CD44、CD71、CD90、CD106、CD120a、CD124、CD105、およびStro-1であることができる。MSC上で発現しないマーカーはCD14、CD34およびCD45であり、それらの発現またはその欠損は他の態様では、インテグリンα10β1のI-ドメインに結合する本発明による抗体またはその断片と共に評価することもできる。
【0145】
MSCではない他の系列または細胞個体群を一段階で除去しようとするときには、このような系列特異的なマーカーに対する様々な抗体を包含することができる。多色分析で用いることができる蛍光色素としては、フィコビリタンパク質、例えば、フィコエリトリンおよびアロフィコシアニン、フルオレセイン、テキサスレッドなど当業者に周知のものが挙げられる。
【0146】
MSCは、死細胞(ヨウ化プロピジウム, LDS)と会合した色素を用いて死細胞に対して選択することができる。細胞は、ウシ胎仔血清を含んでなる培地で回収することができる。
【0147】
MSCは、本発明による抗体またはその断片を用いる同定と組み合わせて様々な細胞表面抗原の光散乱特性およびそれらの発現に基づいて選択することもできる。
【0148】
一態様では、分離は哺乳類軟骨細胞についてである。
【0149】
同定および選択を包含する分離は、例えば蛍光活性化セルソーター(FACS(登録商標))または特異性の高い任意の他の方法を用いることによる蛍光セルソーティングによって行う。FACSを用いる多色分析を用いることができる。軟骨細胞は、α10β1発現に対する染色のレベルに基づいて分離することができる。第一の分離では、非軟骨形成細胞上で発現した他のマーカーについての抗体を、軟骨細胞の負の選択段階として用いることができる。本発明による抗体またはその断片は、正の選択段階で用いられる様々な蛍光色素(1または複数)に接合させることができる。
【0150】
軟骨細胞ではない他の系列または細胞個体群を一段階で除去しようとするときには、このような系列に特異的なマーカーに対する様々な抗体を挙げることができる。多色分析で用いることができる蛍光色素としては、フィコビリタンパク質、例えばフィコエリトリンおよびアロフィコシアニン、フルオレセイン、テキサスレッドなど、当業者に周知のものが挙げられる。
【0151】
軟骨細胞は、死細胞(ヨウ化プロピジウム, LDS)または他の非軟骨細胞、例えば脱分化細胞と会合した色素を用いて死細胞に対して選択することができる。細胞は、ウシ胎仔血清を含んでなる培地で回収することができる。
【0152】
一態様では、分離は、α10β1を発現する哺乳類ES細胞の下位個体群である。
【0153】
同定および選択を包含する分離は、例えば蛍光活性化セルソーター(FACS(登録商標))または特異性の高い任意の他の方法を用いることによる蛍光セルソーティングによって行うことができる。FACSを用いる多色分析を用いることができる。ヒトES細胞マーカーとしては、発生段階特異的胎児性抗原-3(SSEA-3)、SSEA-4、GCTM-2、アルカリホスファターゼ、TRA-1-60、TRA-1-81が挙げられる(文献Pera et al (2000); www. nih. gov/news/stemcell/scireport. htm) 。
【0154】
MSC、ES細胞および軟骨細胞の正または負の選択についての他の手法を用いることができる。用いられる手法は、アフィニティーカラム、磁気ビーズ、または本発明による抗体のようなI-ドメインに結合する抗体と容易に接合する他の種類のビーズ、または同様な種類の手法のような正確な分離を行うことができるものであるべきである。
【0155】
分離の特定の順序は本発明にとって重要ではないと考えられるが、下記の態様で示される順序は一つの具体的態様である。
【0156】
MSC、ES細胞または軟骨細胞の正の選択についての一態様としては、提供される細胞懸濁液中の細胞を遠心分離、負の選択、または両方のような最初に粗雑な分離によって分離した後、精密分離によって分離することが挙げられる。精密分離は、MSC、ES細胞または軟骨細胞上のインテグリンα10β1のI-ドメインに結合する抗体365またはその断片のような本発明によるモノクローナル抗体またはその断片を用いる正の選択である。更に、他の系列に掛かり合った細胞と会合したマーカーについての負の選択、およびMSC、ES細胞または軟骨細胞ではない他の幹細胞個体群も挙げられる。
【0157】
(複数の)単離細胞個体群を、以下において更に説明する。
【0158】
一態様では、正の選択に用いられる抗体365またはその断片のような本発明によるモノクローナル抗体またはその断片を固相に連結させる。用いられる固相の例は、Protein AまたはProtein G、アガロースビーズのような活性化ビーズ、架橋アガロースビーズ、ポリアクリルアミドビーズ、ポリアクリルアミドとアガロースビーズまたはポリアクリル酸ビーズのコポリマーである。
【0159】
一態様では、固相はビーズである。ビーズの例は、Protein AまたはProtein G、アガロースビーズのような活性化ビーズ、架橋アガロースビーズ、ポリアクリルアミドビーズ、ポリアクリルアミドとアガロースビーズまたはポリアクリル酸ビーズのコポリマーを含んでなるビーズである。ビーズは、例えばカルボニルジイミダゾール、臭化シアンなどでおよび当業者に周知であり且つHarlow and Lane, 1988によって更に例示されている他の同様な方法によって活性化され、上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている。
【0160】
一態様では、固相は磁気ビーズのようなビーズである。次に、細胞を、MACS(登録商標)系のような磁気セルソーティングを用いてソーティングすることができる。
【0161】
更にもう一つの態様では、選択され単離された哺乳類間葉幹細胞、ES細胞または軟骨細胞はヒト細胞である。
【0162】
更にもう一つの態様では、選択され単離された哺乳類間葉幹細胞、ES細胞または軟骨細胞はネズミ細胞である。
【0163】
場合によっては、本発明によるモノクローナル抗体またはその断片に結合する細胞、例えば抗体365またはその断片を回収することができる。「回収する」とは、本明細書では、選択した細胞をそれらが結合されているモノクローナル抗体またはその断片から放出することによって、上記抗体またはその断片を含まない細胞の個体群、例えばMSC、ES細胞または軟骨細胞を産生することを意味する。
【0164】
例えば、インテグリンα10β1のI-ドメインの細胞外部分に結合するモノクローナル抗体またはその断片、例えば抗体365またはその断片は、軟骨細胞、ES細胞またはMSC個体群の更なる評価および濃縮化に極めて重要である。
【0165】
MSC上の他のマーカー
本発明の他の態様では、MSCの同定を、MSCによって発現することが知られている他のマーカーと組み合わせることができる。このような他のマーカーは、SH-2、SH-3、CD29、CD44、CD71、CD90、CD106、CD120a、CD124、CD105、およびMSCが発現することができるStro-1である。MSC上で発現しないマーカーは、CD14、CD34およびCD45であり、それらの発現は他の態様においても、本発明による抗体またはその断片の結合と共に評価することができる。
【0166】
軟骨の他のマーカー
今日のところ、インテグリンα10β1を除き、軟骨細胞についての他の細胞表面マーカーは存在しない。従って、α10のIドメインに反応する本発明による抗体、例えば本発明に開示されている抗体365は、独特のものである。軟骨マトリックス上のマーカーは、本発明による抗体と組み合わせて用いることもできる。軟骨マトリックスのマーカーの例は、アグリカン、コラーゲンII型、およびHering and JohnstoneのUS2003/0039966号明細書に開示されているマーカーであり、上記特許明細書の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている。
【0167】
ES細胞上の他のマーカー
本発明の他の態様では、ヒトES細胞の同定を、ヒトES細胞によって発現されることが知られている他のマーカーと組み合わせることができる。ヒトES細胞上のこのような他のマーカーとしては、発生段階特異的胎児性抗原-3 (SSEA-3)、SSEA-4、GCTM-2、アルカリホスファターゼ、TRA-1-60、TRA-1-81 (文献Pera et al (2000); www. nih. gov/news/stemcell/scireport. htm)が挙げられる。
【0168】
哺乳類間葉幹細胞の個体群
哺乳類間葉幹細胞の個体群は、本発明による方法によって得ることができる。この個体群は、インテグリンα10β1のI-ドメインの細胞外部分に結合するモノクローナル抗体またはその断片、例えば抗体365またはその断片に結合する間葉幹細胞であることを特徴としている。
【0169】
一態様では、哺乳類幹細胞はヒト間葉幹細胞である。
【0170】
もう一つの態様では、哺乳類幹細胞はネズミ間葉幹細胞である。
【0171】
ヒト間葉幹細胞を得るには、微量の多分化能間葉幹細胞、例えば骨髄、または他のMSC供給源の他の細胞、例えばES細胞から、100,000個の核形成細胞当たり1個に過ぎないMSCを単離する必要がある(Bruder et al 1997を参照、上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)。哺乳類MSCは、骨髄、末梢血、臍帯血、肝臓、骨、軟骨、筋肉、軟骨膜、骨膜、脂肪、またはMSCを含んでなる任意の組織から単離することができる。細胞懸濁液は、更に哺乳類腸骨稜、大腿骨、脛骨、棘、肋骨、または他の髄腔から単離することができる。ヒトMSCの他の供給源としては、胚卵黄嚢、胎盤、臍帯、胎児および青年期の皮膚が挙げられる。
【0172】
上記の間葉幹細胞は、特定の種類の間葉または結合組織、例えば特殊化した要素を支持する身体の組織、特に骨、軟骨、筋肉、腱、靱帯、骨髄支質、脂肪のいずれかに分化することができる形成的多分化能芽細胞である。
【0173】
単離したMSC個体群の使用
抗体365またはその断片のようなインテグリンα10β1のI-ドメインの細胞外部分に結合するモノクローナル抗体またはその断片を用いて特異的に単離したMSCの個体群は、組織修復および軟骨の再生に用いることができるが、単独でまたは誘導鋳型の支持体として作用する生体適合物質骨格に固定された骨、筋肉、腱、および靱帯の修復にも用いることができる。
【0174】
骨格の種類としては、ポリ乳酸(PLLA)、ポリグリコール酸(PGA)およびコポリマー(PLGA)のような生体再吸収性ポリ(α-ヒドロキシエステル)骨格が挙げられる。
【0175】
他の態様としては、ヒアルロン酸、コラーゲン、アルギン酸塩、およびキトサンのようなポリマー性ゲルから誘導される骨格が挙げられる。
【0176】
他の態様としては、リン酸三カルシウムおよび/またはヒドロキシアパタイトセラミックブロック(Luyten et al 2001)のような多孔性キャリヤーから誘導される骨格が挙げられる。
【0177】
MSCの導入および固定のための様々な手順としては、単離した細胞を骨格欠損の部位に注入し、単離した細胞を場合によっては抗体365と共にインキュベーションして細胞を適当なゲルの定位置に保持し、移植し、生体再吸収性骨格と共にインキュベーションすることなどが挙げられる。例えば、一態様は、抗体365の生体再吸収性骨格へ接合して、損傷または欠損部位、例えば骨格欠損の部位への移植の前に細胞を固定することである。骨格によって、MSCの3D固定が可能となる。適当な生体適合物質骨格は、上記に例示されている。これらの例は、特定の用途に一層適当な場合に当業者が選択するべく明らかな他の適当な骨格の使用に限定されない。
【0178】
抗体365のような本発明によるモノクローナル抗体またはその断片で単離したMSCは、骨格欠損の損傷部位に直ちに注入することもできる。
【0179】
更にもう一つの態様では、注入した細胞は、注入後に、本発明によるモノクローナル抗体に接合した生体適合物質骨格に捕捉され固定されて、更に損傷部位に配置される。細胞はこのようにして捕捉され、損傷部位の正確な位置に保持される。
【0180】
哺乳類軟骨細胞の個体群
軟骨細胞の細胞表面におけるα10β1の発現により、軟骨細胞の同定および単離のための有用な手段が提供される。例えば、本発明によるモノクローナル抗体またはその断片は、軟骨細胞または表面でインテグリンα10β1を発現する他の細胞の同定し、治療目的、特に軟骨細胞および軟骨形成性細胞、例えば、組織工学処理のための患者の滑液内層からの滑液細胞の単離に極めて重要である。
【0181】
一態様では、モノクローナル抗体またはその断片は抗体365またはその断片である。
【0182】
軟骨細胞を単離するために抗体365またはその断片のようなインテグリンα10β1のI-ドメインの細胞外部分に結合するモノクローナル抗体またはその断片を用いるときには、病的または損傷した軟骨を修復する手順において自己由来細胞を用いることができる。
【0183】
成熟した関節軟骨では損傷に対する修復応答が乏しく、その修復不能な崩壊は、例えば、変形性関節症や慢性関節リウマチなどの関節炎のような退行性関節疾患に共通した特徴である。このような損傷の修復は、自己由来軟骨細胞を用いる細胞移植の使用などの様々な組織工学的方法に集中してきた。これらの手法にとって重要なことは、ガラス軟骨を産生する軟骨細胞の同定および/または単離である。
【0184】
例えば、本発明による抗体を用いて、軟骨細胞の単離並びに軟骨細胞表現型を有する細胞、すなわちガラス軟骨を産生する軟骨細胞を同定することができ、従って抗体またはその断片をイン・ビボ移植の前に品質コントロールとして用いて、ガラス軟骨産生細胞のみが病的または損傷した部分に置き換わることができるようにすることができる。
【0185】
単離した軟骨細胞の使用
具体的には、インテグリンα10β1のI-ドメインの細胞外部分に結合するモノクローナル抗体またはその断片、例えば抗体365またはその断片を用いて、軟骨形成性細胞表現型を有する細胞、特に軟骨細胞を同定し、単離することができる。抗体365またはその断片を用いて具体的に単離したこのような細胞の個体群を用いて、単独でまたは支持体としての生体適合物質骨格のような任意の組織骨格と組み合わせて自己由来組織修復および軟骨の再生を行うことができる。
【0186】
用いる骨格は、前節に記載されている。
【0187】
自己由来軟骨細胞移植のため、インテグリンα10β1のI-ドメインの細胞外部分に結合するモノクローナル抗体またはその断片、例えば365またはその断片を用いて単離した軟骨細胞を用いる自己由来組織修復法を開示する。他の方法は、Brittberg et al.によって報告されており、この文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている。この方法の他の態様は、
a) ヒト被験者、例えば患者由来の健康な軟骨の軟骨を含んでなる生験試料を関節鏡処置を行いながら採取し、
b) 最初にプロナーゼまたはヒアルロニダーゼのような酵素を用いて、次にコラゲナーゼを用いて軟骨を酵素的に消化して、軟骨細胞を含んでなる細胞個体群抽出し、
c) 軟骨細胞を含んでなる細胞個体群を適当な培地、例えばDMEM、F12などで2-4週間培養し、
d) 本発明による抗体またはその断片を用いて約2-4週間培養した後に、細胞個体群からの軟骨細胞を、FACS、ビーズ、例えば磁気ビーズのような機械的精製、または下記に更に記載されているキットを用いることによって精製し、
e) ヒト患者の外科手術を行って損傷軟骨を露出させ、同時に同一ヒト患者の内側脛骨由来の骨膜を除去し、骨膜弁を損傷または障害軟骨部分上に抱合し、
f) 抗体またはその断片で精製した軟骨細胞を同一ヒト患者の間接に移植し、精製した軟骨細胞を骨膜弁下に注入し、または代替法では、
g) 軟骨細胞を、生体適合物質支持体(上記の例)であって、モノクローナル抗体またはその断片をカップリング/接合しているものと組み合わせて精製し、細胞を固定する
段階を含んでなる。
【0188】
胚幹細胞の個体群
哺乳類胚幹(ES)細胞の個体群は、本発明による方法によって得ることができる。この個体群は、インテグリンα10β1のI-ドメインの細胞外部分に結合するモノクローナル抗体またはその断片、例えば抗体365またはその断片に結合する分化ES細胞を特徴とする。
【0189】
一態様では、ES細胞はヒトES細胞である。
【0190】
もう一つの態様では、哺乳類幹細胞はネズミES細胞である。ヒトES細胞は4-6日齢のヒト胚の胚盤胞の内部細胞塊(ICM)から誘導することができ、更に例えばマウス胚繊維芽細胞支持細胞上でイン・ビトロで培養して細胞を増殖させることもできる。培地から増殖因子または繊維芽細胞増殖因子-2(FGF-2)を除去すると、細胞が分化を引き起こし、この時点でインテグリンα10β1を発現する細胞の個体群を抗体365を用いることによって同定することができる。
【0191】
ES細胞の使用
具体的には、インテグリンα10β1のI-ドメインの細胞外部分に結合するモノクローナル抗体またはその断片、例えば抗体365またはその断片を用いて、分化ES細胞を同定して単離することができる。抗体365またはその断片を用いて具体的に単離したこのような細胞の個体群を用いて、単独でまたは支持体としての生体適合物質骨格のような任意の組織骨格と組み合わせて自己由来組織修復および間葉由来組織の再生を行うことができる。
【0192】
用いる骨格は、上節に記載されている。本発明によるモノクローナル抗体またはその断片、例えば抗体365を用いて単離したES細胞は、骨格欠損の損傷部位に直接注入することもできる。
【0193】
更にもう一つの態様では、注入した細胞は、注入後に本発明によるモノクローナル抗体に接合した生体適合物質骨格に捕捉されて固定され、更に損傷部分に配置される。例えば、細胞は捕捉され、損傷部位の正確な所定位置に保持される。
【0194】
哺乳類MSCの同定方法
試料中のMSCを同定する方法を開示する。この方法は、
a) 間葉幹細胞を含んでなる試料細胞懸濁液を提供し、
b) 上記試料細胞懸濁液を、本発明による細胞系によって産生されるインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合する本発明によるモノクローナル抗体またはその断片と接触させ、
c) 試料細胞懸濁液とモノクローナル抗体またはその断片を、上記モノクローナル抗体またはその断片が間葉幹細胞上のインテグリンα10β1の細胞外ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下でインキュベーションし、
d) 場合によっては、第二の標識抗体またはその断片を試料に加え、第二の標識抗体またはその断片がb)の本発明によるモノクローナル抗体またはその断片に結合し、
e) 試料b)のインテグリン α10β1の細胞外ドメインに結合したモノクローナル抗体またはその断片を検出し、または場合によっては、モノクローナル抗体またはその断片に結合したc)の第二の標識抗体またはその断片を検出する
段階を含んでなる。
【0195】
哺乳類MSCは、骨髄、末梢血、臍帯血、肝臓、骨、軟骨、筋肉、軟骨膜、骨膜、脂肪、またはMSCを含んでなる任意の組織から単離することができる。細胞懸濁液は、更に哺乳類腸骨稜、大腿骨、脛骨、棘、肋骨、または他の髄腔から単離することができる。ヒトMSCの他の供給源としては、胚卵黄嚢、胎盤、臍帯、胎児および青年期の皮膚が挙げられる。
【0196】
試料細胞懸濁液は、ヒト、マウスまたはラットのような系統発生上齧歯目の総ての成員などの齧歯類のような様々な哺乳類から提供される。
【0197】
上記試料細胞懸濁液と本発明によるモノクローナル抗体またはその断片は、Dulbeccoの改良Eagle培地(DMEM)、Hams F12栄養混合物のような任意の適当な細胞を培養する培地で、または場合によってはウシ胎仔血清(FCS)またはウシ血清アルブミン(BSA)を含む好ましくは緩衝したリン酸緩衝食塩水(PBS)のような任意の生理食塩溶液中で接触させることができる。
【0198】
細胞懸濁液とモノクローナル抗体またはその断片は、上記モノクローナル抗体またはその断片が間葉幹細胞上のインテグリンα10β1の細胞外ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下でインキュベーションすべきである。
【0199】
場合によっては試料に添加される第二の標識抗体またはその断片は、MSCによって発現されることが知られている分子に結合する抗体であることができる。このような他の分子またはマーカーは、SH-2、SH-3、CD29、CD44、CD71、CD90、CD106、CD120a、CD124、CD105、およびMSCが発現することができるStro-1である。MSC上で発現しないマーカーはCD14、CD34およびCD45であり、それらの発現は、他の態様では本発明による抗体またはその断片の結合と組み合わせて評価することもできる。
【0200】
哺乳類軟骨細胞の同定方法
試料中の軟骨細胞を同定する方法を開示する。この方法は、
a) 軟骨細胞を含んでなる試料細胞懸濁液を提供し、
b) 上記試料細胞懸濁液を、本発明による細胞系によって産生されるインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合する本発明によるモノクローナル抗体またはその断片と接触させ、
c) 試料細胞懸濁液とモノクローナル抗体またはその断片を、上記モノクローナル抗体またはその断片が軟骨細胞上のインテグリンα10β1の細胞外ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下でインキュベーションし、
d) 場合によっては、第二の標識抗体またはその断片を試料に加え、第二の標識抗体またはその断片がb)の本発明によるモノクローナル抗体またはその断片に結合し、
e) 試料b)のインテグリン α10β1の細胞外ドメインに結合した本発明によるモノクローナル抗体またはその断片を検出し、または場合によっては、モノクローナル抗体またはその断片に結合したc)の第二の標識抗体またはその断片を検出する
段階を含んでなる。
【0201】
試料細胞懸濁液は、軟骨から単離することができる。
【0202】
試料細胞懸濁液は、ヒト、マウスまたはラットのような系統発生上齧歯目の総ての成員などの齧歯類のような様々な哺乳類から提供される。
【0203】
上記試料細胞懸濁液と本発明によるモノクローナル抗体またはその断片は、Dulbeccoの改良Eagle培地(DMEM)、Hams F12栄養混合物のような任意の適当な細胞を培養する培地で、または場合によってはウシ胎仔血清(FCS)またはウシ血清アルブミン(BSA)を含む好ましくは緩衝したリン酸緩衝食塩水(PBS)のような任意の生理食塩溶液中で接触させることができる。
【0204】
細胞懸濁液とモノクローナル抗体またはその断片は、上記モノクローナル抗体またはその断片が軟骨細胞上のインテグリンα10β1の細胞外ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下でインキュベーションすべきである。
【0205】
場合によっては試料に添加される第二の標識抗体またはその断片は、上記のように本発明による軟骨マトリックス抗体によって発現されることが知られている分子に結合する抗体であることができる。
【0206】
哺乳類ES細胞の下位個体群の同定方法
試料中の哺乳類ES細胞の下位個体群を同定する方法を開示する。この方法は、
a) 分化したES細胞を含んでなる試料細胞懸濁液を提供し、
b) 上記試料細胞懸濁液を、本発明による細胞系によって産生されるインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合する本発明によるモノクローナル抗体またはその断片と接触させ、
c) 試料細胞懸濁液とモノクローナル抗体またはその断片を、上記モノクローナル抗体またはその断片が分化したES細胞上のインテグリンα10β1の細胞外ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下でインキュベーションし、
d) 場合によっては、第二の標識抗体またはその断片を試料に加え、第二の標識抗体またはその断片がb)の本発明によるモノクローナル抗体またはその断片に結合し、
e) 試料b)のインテグリン α10β1の細胞外ドメインに結合したモノクローナル抗体またはその断片を検出し、または場合によっては、モノクローナル抗体またはその断片に結合したc)の第二の標識抗体またはその断片を検出する
段階を含んでなる。
【0207】
試料細胞懸濁液は、4-6日齢のヒト胚の胚盤胞の内部細胞塊(ICM)から単離することができる。
【0208】
試料細胞懸濁液は、ヒト、マウスまたはラットのような系統発生上齧歯目の総ての成員などの齧歯類のような様々な哺乳類から提供される。
【0209】
上記試料細胞懸濁液と本発明によるモノクローナル抗体またはその断片は、Iscoveの改良Dulbecco培地(IMDM)で、または場合によってはウシ胎仔血清(FCS)またはウシ血清アルブミン(BSA)を含む好ましくは緩衝したリン酸緩衝食塩水(PBS)のような任意の生理食塩溶液中で接触させることができる。
【0210】
細胞懸濁液とモノクローナル抗体またはその断片は、上記モノクローナル抗体またはその断片が分化したES細胞上のインテグリンα10β1の細胞外ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下でインキュベーションすべきである。
【0211】
場合によっては試料に添加される第二の標識抗体またはその断片は、ES細胞によって発現されることが知られている分子に結合する抗体であることができる。このような他の分子またはマーカーとしては、発生段階特異的胎児性抗原-3(SSEA-3)、SSEA-4、GCTM-2、アルカリホスファターゼ、TRA-1-60、TRA-1-81が挙げられる。ES細胞上で発現しないマーカーは、CD14、CD34およびCD45であり、それらの発現は、他の態様において本発明による抗体またはその断片の結合と組み合わせて評価することもできる。
【0212】
組織試料中のインテグリンα10β1の発現を検出する方法
組織試料中のインテグリンα10β1の発現を検出する方法を開示する。この方法は、
a) 組織試料を提供し、
b) 請求項1に記載の細胞系によって産生されるインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合する本発明によるモノクローナル抗体またはその断片を提供し、
c) 組織試料とモノクローナル抗体またはその断片を、上記モノクローナル抗体またはその断片がインテグリンα10β1の細胞外ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下でインキュベーションし、
d) 場合によっては、第二の標識抗体またはその断片を試料に加え、第二の標識抗体またはその断片がb)の本発明によるモノクローナル抗体またはその断片に結合し、
e) 試料b)のインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合した本発明によるモノクローナル抗体またはその断片を検出し、または場合によっては、モノクローナル抗体またはその断片に結合したc)の第二の標識抗体またはその断片を検出する
段階を含んでなる。
【0213】
哺乳類におけるインテグリンα10β1の発現をイン・ビボで画像化する方法
哺乳類におけるインテグリンα10β1の発現をイン・ビボで画像化する方法を開示する。発現の画像化によって、α10β1の分布および定量を行うことができる。この方法は、
a) 哺乳類を提供し、
b) 請求項1に記載の細胞系によって産生されるインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片を提供し、
c) モノクローナル抗体またはその断片を哺乳類に投与して、上記モノクローナル抗体またはその断片が上記哺乳類の細胞のインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合するようにし、
d) 場合によっては、第二の標識抗体またはその断片を試料に加え、第二の標識抗体またはその断片がc)のモノクローナル抗体またはその断片に結合し、
e) c)の上記細胞のインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合したモノクローナル抗体またはその断片を検出し、または場合によっては、モノクローナル抗体またはその断片に結合したd)の第二の標識抗体またはその断片を検出し、
f) 検出した抗体またはその断片の画像を作成することによって、イン・ビボでの哺乳類の細胞上のインテグリンα10β1の発現を画像化する
段階を含んでなる。
【0214】
一態様では、上記抗体またはその断片に、放射性不透明化剤または放射性同位体のような検出可能な成分を標識する。
【0215】
上記c)のモノクローナル抗体またはその断片は、抗体またはその断片が上記哺乳類の細胞のインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合するように投与しなければならない。投与は、血流中、例えば静脈内、滑液中、筋肉内、腹腔内、関節内、皮下、腱の周囲の腔部中、または直接血管に形成されたプラークに投与することによって行うことができる。宿主における標識抗体またはその断片の存在および位置は、画像化などによって分析される。
【0216】
上記の方法を用いる画像化によって得られる情報は、例えば、変形性関節症および慢性関節リウマチのような関節疾患などの内科療法の際の進行、退縮または修復を研究するときに有用である。他の疾患は、腱炎、例えば腱鞘炎、腱滑膜炎、インサーティティス(insertitis)、腱滑液嚢炎および骨端症であり、アテローム性動脈硬化症では、例えば血管におけるアテローム性動脈硬化症プラークの検出である。
【0217】
抗体365のような本発明による抗体またはその断片に、宿主で検出可能な任意の成分または手段を標識することができる。適当な検出手段は、任意の画像化法のようなイン・ビボでの任意の非侵襲的方法である。このような方法の例は、磁気共鳴画像化(MRI)、血管内超音波(IVUS)のような超音波、電子ビームコンピューター断層撮影法(EBCT)およびマルチスライス・トモグラフィック・スキャンニング(multislice tomographic scanning)のようなコンピューター断層撮影法、並びに血管造影法である。Narayanan et al 2000に記載されている手段のような当業者に知られている任意の他の適当な手段を用いることもでき、上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている。
【0218】
組成物
本発明によれば、本発明のハイブリドーマ細胞系によって産生される抗体365またはその断片のようなインテグリンα10β1のI-ドメインの細胞外部分に結合するモノクローナル抗体またはその断片を含んでなる組成物を開示する。
【0219】
もう一つの態様では、本発明によるモノクローナル抗体またはその断片を接合する。David et al (1974)、Pain et al (1981)およびNygren et al (1982)に記載の方法などの抗体またはその断片を検出可能な成分に別々に接合するための当該技術分野で知られている任意の方法を用いることができる。
【0220】
診断用途のため、本発明によるモノクローナル抗体またはその断片を検出可能な成分と接合させ、標識する。検出可能な成分は、検出可能なシグナルを直接または間接的に生成することができる任意の成分であることができる。
【0221】
一態様では、上記モノクローナル抗体またはその断片は、蛍光色素、例えばフルオレセイン、イソチオシアネート、ローダミンまたはルシフェリン、またはフィコビリタンパク質、例えばフィコエリトリンおよびアロフィコシアニン、フルオレセイン、テキサスレッドなどの当業者に周知の多色分析で用いることができる任意の蛍光色素のような蛍光または化学発光化合物などの検出可能な標識と結合してそれを含んでなる。蛍光色素は、蛍光活性化細胞ソーターなどと共に用いることができ、特定の細胞型を容易に分離することができる。
【0222】
もう一つの態様では、モノクローナル抗体またはその断片を適当な放射性または酵素標識と常法によって接合させまたは標識することができ、および/または当業者に知られている適当な固相に結合させることができる。酵素の例は、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ、3H、14C、32P、35S、125I、またはヒト被験者の体内で有用であり且つ111I、99Tc、67Ga、186Reおよび132Iなどの放射性同位体標識である。
【0223】
もう一つの態様では、モノクローナル抗体またはその断片は、細胞の分離手段を含んでなり、例えばアビジンに結合するビオチンまたはストレプトアビジンを直接または間接的に分離することができる。分離手段は、ビーズ、例えば磁気ビーズ、アガロースまたは当業者に知られている他の同様な種類のビーズのような固形支持体に結合することができる。細胞の分離に適当な任意の手段は、この分離が細胞の生育力に過度に有害ではないという条件で用いることができる。
【0224】
もう一つの態様では、モノクローナル抗体またはその断片は、ビオチンおよびその類似体(例えば、イミノビオチン)、アビジンおよびその類似体(ストレプトアビジン)、アルカリホスファターゼ、またはMSC、ES細胞または軟骨細胞の同定および/または定量、および上記細胞の直接/間接的分離のための他の同様なマーカーのような免疫化合物と組み合わせて用いることができ、またはこれにカップリングさせることができる。
【0225】
医療での使用
治療を必要とする哺乳類における関節疾患、例えば変形性関節症および慢性関節リウマチなどの関節炎を治療するための医薬組成物を調製するための、抗体365のような本発明による細胞系によって産生されるインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片の使用を開示する。他の疾患は、腱炎、例えば腱鞘炎、腱滑膜炎、インサーティティス(insertitis)、腱滑液嚢炎および骨端症、およびアテローム性動脈硬化症である。
【0226】
もう一つの態様では、関節疾患、例えば変形性関節症および慢性関節リウマチなどの関節炎に作用する追加の薬学上許容可能な薬剤が医薬組成物に含まれる。他の疾患は、腱炎、例えば腱鞘炎、腱滑膜炎、インサーティティス(insertitis)、腱滑液嚢炎および骨端症、およびアテローム性動脈硬化症である。
【0227】
インテグリンα10β1のI-ドメインの細胞外部分に結合するモノクローナル抗体またはその断片、例えば抗体365またはその断片は、インテグリンα10β1のαサブユニットのI-ドメインと特異的に免疫反応し、それによってリガンド含有タンパク質との相互作用によってそのリガンドに特異的に結合するインテグリンの能力を阻害する能力を有することを特徴とする。従って、この抗体またはその断片は、この抗体またはその断片が免疫反応するインテグリンα10β1を含む細胞の機能性をイン・ビボまたはイン・ビトロで阻害し、刺激し、それによって調節するのに有用である。
【0228】
治療および処置用途のため、抗体またはその断片を薬学上許容可能な投薬形態で哺乳類、好ましくはヒトに投与する。抗体またはその断片を、ボーラス量として静脈内に、または経時的連続輸液により、筋肉内、皮下、関節内、滑液包内、髄腔内、経口、局所または吸入経路によって投与することができる。
【0229】
本発明による細胞系によって産生されるインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合する投薬形態でのモノクローナル抗体またはその断片、薬学上許容可能なキャリヤー、および関節疾患、例えば変形性関節症および慢性関節リウマチなどの関節炎に作用する薬学上許容可能な薬剤を含んでなる投与ビヒクルを開示する。他の疾患は、腱炎、例えば腱鞘炎、腱滑膜炎、インサーティティス(insertitis)、腱滑液嚢炎および骨端症、およびアテローム性動脈硬化症である。
【0230】
投薬形態は、本来的に毒性がなく且つ治療に役立たない薬学上許容可能なキャリヤーを包含する。このようなキャリヤーの例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク質、リン酸塩またはグリシンのような緩衝剤、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、またはプロタミン硫酸塩、塩化ナトリウム、金属塩のような電解質、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースポリマー、およびポリエチレングリコールが挙げられる。抗体またはその断片の局所またはゲル基剤の形態のキャリヤーとしては、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはメチルセルロースのような多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および木ロウアルコールが挙げられる。通常の貯蔵形態としては、例えばリポソーム、マイクロカプセル、ナノカプセル、膏薬、舌下錠、およびポリ(オルトエステル)、ポリアクチド:ポリグリコリドポリマーのようなポリマーマトリックスが挙げられる。
【0231】
抗体またはその断片が凍結乾燥されているよりはむしろ水性投薬形態で存在するときには、その抗体またはその断片を典型的には、約0.1mg/ml-100mg/mlの濃度で処方することができるが、これらの範囲外での広汎な変動が可能である。
【0232】
疾患の予防または治療のためには、抗体365の適当な投薬量は、治療を行う疾患の種類、疾患の重篤度および経過、抗体またはその断片を予防または治療目的に投与するかどうか、以前の治療の経過、および患者の臨床履歴および抗体またはその断片に対する応答によって変化する。抗体またはその断片は、一度にまたは一連の治療中に患者に適宜投与される。
【0233】
疾患の種類および重篤度によっては、約0.015-15mgの抗体またはその断片/Kg患者体重が患者に投与するための初期投薬量の候補である。投与は、例えば1回以上の別々の投与によることもまたは連続輸液によることもできる。症状によっては数日間以上の反復投与のためには、疾患症状の所望な抑制または緩解が見られるまで治療を繰り返す。しかしながら、他の投薬法が有用であることがあり、除外されない。
【0234】
本発明の他の態様によれば、症状の緩解、疾患の予防または治療におけるモノクローナル抗体またはその断片の有効性は、本発明による抗体またはその断片を、連続的にまたは本発明による抗体とは異なるエピトープに対して指定した別の抗体またはその断片のような同じ臨床目的に有効な薬剤、または目的とする治療適応症、例えば変形性関節症および慢性関節リウマチなどの関節炎について知られている1種類以上の通常の治療薬と組み合わせて投与することによって改良することができる。他の疾患は、腱炎、例えば腱鞘炎、腱滑膜炎、インサーティティス(insertitis)、腱滑液嚢炎および骨端症、およびアテローム性動脈硬化症である。
【0235】
これらの適応症に作用する適当な薬学上許容可能な薬剤は、抗炎症薬、例えば、関節疾患、例えば変形性関節症、慢性関節リウマチの治療のための非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)、抗サイトカイン薬、例えば抗TNF抗体、インターロイキン受容体拮抗薬、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害薬または骨誘導因子(BMP)、疼痛処置の治療のための整形外科手術後に使用する局所麻酔薬またはアテローム性動脈硬化症プラークの治療用の低脂血症薬、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP's)阻害薬、または骨誘導因子(BMP)であることができる。
【0236】
送達のための用いることができる薬剤とAbとの組合せ
本発明のもう一つの態様では、インテグリンα10β1のI-ドメインの細胞外部分に結合するモノクローナル抗体またはその断片、例えば抗体365またはその断片、またはその医薬組成物は、他の既知の治療薬をα10β1を発現する細胞へ標的送達することができるビヒクルとして用いられる。このような細胞としては、軟骨細胞、MSC、マクロファージ、単球、滑液細胞、腱細胞、筋原細胞、骨芽細胞、および繊維芽細胞が挙げられる。
【0237】
外来遺伝子材料のイン・ビボでの発現は、「遺伝子療法」と呼ばれることが多い。このような治療法が適用される疾患状態および進行としては、遺伝子異常および関節疾患が挙げられる。形質転換細胞の細胞送達は様々な方法を用いて行うことができ、関節、骨膜、骨髄および皮下部位への輸液および直接的蓄積注射が挙げられる。
【0238】
一態様では、医薬組成物を、上記モノクローナル抗体またはその断片を他の遺伝子または生体送達系と組み合わせて含んでなる投与ビヒクルとして投与する。上記モノクローナル抗体またはその断片を含んでなる組合せ投与ビヒクルを他の遺伝子または生体送達系と組み合わせて用いて、インテグリンα10β1発現細胞を選択的にターゲッティングする。
【0239】
このようなビヒクルは、抗体またはその断片の、例えばウイルス、リポソーム、マイクロカプセル、ナノカプセル、膏薬、舌下錠、およびポリ(オルトエステル)、ポリラクチド:ポリグリコリドポリマーなどの送達ビヒクルへのカップリング、および治療薬の抗体またはその断片または送達ビヒクルへのカップリングを伴う。カップリングすることができる薬剤の例は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)、局所麻酔薬、サイトカイン拮抗薬、例えばインターロイキン-1受容体拮抗薬、インターロイキン-1のII型可溶性受容体、抗TNF-αモノクローナル抗体、可溶性TNF-α受容体、IL-4, IL-10,IL-11のような抗炎症性サイトカイン、増殖因子、例えば繊維芽細胞増殖因子、インスリン増殖因子、形質転換増殖因子-β、肝細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、副甲状腺関連ペプチド、骨誘導因子、インディアン・ヘッジホッグ、ソニック・ヘッジホッグ、SOXタンパク質、例えばSOX5-6およびSOX9、BMP、例えばBMP2および7、またはメタロプロテイナーゼの阻害薬である。
【0240】
もう一つの態様では、抗体またはその断片を、薬剤のα10β1発現細胞への遺伝子送達のターゲッティングを行うことができるビヒクルとして用いる。遺伝子送達のターゲッティングを行う細胞としては、軟骨、骨、腱、靱帯および筋肉含んでなる骨格系の細胞、またはアテローム性動脈硬化症プラークの細胞が挙げられる。
【0241】
遺伝子療法に現在利用可能なベクターの一つの欠点は、遺伝子送達における軟骨細胞、MSCおよびES細胞のような細胞上に特異的細胞表面ターゲットを欠いていることである。従って、本発明の抗体またはその断片、例えば抗体365のような抗体またはその断片を用いることによって、目的とする細胞、例えば軟骨細胞をターゲッティングすることができると、極めて有利である。
【0242】
一態様では、その抗体またはその断片をウイルスまたは非ウイルス送達系と共に用いて、遺伝子またはその一部を目的とするターゲット組織または細胞、例えば軟骨のα10発現細胞に直接イン・ビボ送達することができる。
【0243】
もう一つの態様では、遺伝子をα10β1発現細胞、好ましくはMSCまたは軟骨細胞にウイルスを用いて送達し、ウイルスベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純疱疹ウイルス、およびレンチウイルスが挙げられる。
【0244】
特に、遺伝子は、アデノウイルスとmAb365抗体のような本発明によるモノクローナル抗体を用いてインテグリンα10β1を介して軟骨細胞に導入することができる。これは、Barry et al 2003およびParrott et al 2003に記載の方法で行うことができる。
【0245】
一態様では、1個の遺伝子または遺伝子の組合せを、非ウイルス的方法によってMSCまたは軟骨細胞に送達する。非ウイルス送達系としては、裸のDNA、カチオン性リポソーム、カチオン性脂質およびポリマー、並びにDNA/カチオン性リポソーム/ポリカチオン複合体の使用が挙げられる。
【0246】
送達を行う目的の適当な遺伝子
送達を行う適当な遺伝子の例としては、インスリン様増殖因子-1(IGF-1)、形質転換増殖因子-β(TGF-β)、繊維芽細胞増殖因子および骨誘導因子のような増殖因子、SOX-9、SOX-5、SOX-6のような転写因子、SMADおよびBCL-2などのアポトーシスを阻害する分子のようなある種のシグナル形成分子、メタロプロテイナーゼ阻害薬のような酵素阻害薬、コラーゲン、例えばコラーゲンII型のような細胞外マトリックス分子の遺伝子のプロモーターが挙げられる。
【0247】
方法は、マウス、ラット、ウサギなどの齧歯類、並びにヒトに応用することができる。
【0248】
もう一つの態様では、本発明による抗体またはその断片、例えば抗体365またはその断片を用いて単離したα10β1を発現する細胞、例えば軟骨細胞は、自己由来軟骨細胞移植に有用である。次に、細胞を、培養において拡大を行いながら、遺伝学的に変更する。レトロウイルス、アデノウイルス、AAV、およびレンチウイルスのようなウイルスベクターは、これらの細胞を容易に軽質導入することができる。本発明による抗体またはその断片をウイルス送達系と共に用いて、α10β1を発現する軟骨細胞をターゲッティングすることができる。
【0249】
更にもう一つの態様では、組織修復に用いる本発明によるモノクローナル抗体またはその断片を用いて単離した間葉幹細胞を、レトロウイルス、アデノウイルス、AAVおよびレンチウイルスのようなウイルスベクターおよび当業者に知られている他のウイルスベクターを用いて遺伝学的に変更する。抗体365をウイルス送達系と共に用いて、α10β1を発現するMSCをターゲッティングすることができる。
【0250】
一態様では、その抗体またはその断片をウイルスまたは非ウイルス送達系と共に用いて、遺伝子(1または複数)を例えば軟骨、腱、骨、靱帯、筋などの損傷組織に直接イン・ビボ導入させることができる。抗体365またはその断片と目的とする遺伝子(1または複数)を組織損傷の部位に局所送達することができる。
【0251】
もう一つの態様では、自己由来軟骨細胞移植で用いるための本発明による抗体またはその断片を用いて単離した軟骨細胞を、培養において拡大、すなわちエクス・ビボでの遺伝子導入を行いながら、遺伝学的に変更する。次に、抗体またはその断片をウイルス/非ウイルス送達系と共に用いて、脱分化せず、従ってその軟骨細胞の表現型を喪失しなかった細胞をターゲッティングすることができる。次に、これらの細胞を、患者の関節に関節内注射して、細胞を回収する。
【0252】
更にもう一つの態様では、ウイルス/非ウイルスベクターを用いて目的とする遺伝子にカップリングしまたは変更した本発明による抗体またはその断片を有するMSCを、適当な組織骨格またはマトリックスと共に移植することができる。適当な組織骨格は、上記されている。
【0253】
更にもう一つの態様では、目的とする遺伝子にカップリングした本発明による抗体またはその断片を有するMSCは、損傷組織、例えば上記したものなどの損傷組織に直接移植することができる。
【0254】
更にもう一つの態様では、目的とする遺伝子にカップリングした本発明による抗体またはその断片を有するMSCを、適当な組織骨格またはマトリックスと共に移植することができる。適当な組織骨格は、上記されている。
【0255】
更にもう一つの態様では、遺伝子導入のため本発明による抗体またはその断片を用いる非ウイルス法を用いる。このような方法は、例えばカチオン性脂質またはポリプレックス接合体に基づいていることがある。
【0256】
カチオン性脂質およびポリマー基剤系のような様々な種類の合成ベクターを、遺伝子導入の目的で開発した。カチオン性脂質/DNA複合体、すなわちリポプレックスを用いることができ、本発明による抗体またはその断片は目的とする遺伝子のDNAを含むリポソームと複合体形成することができる。このような遺伝子は上記の通りであり、例えば増殖因子を包含する。
【0257】
一態様では、本発明による抗体またはその断片を目的とする遺伝子のDNAと共にリポソームに組込み、ポリプレックスまたは分子状接合体の形態で関節中に局所投与する。
【0258】
欠損哺乳類
本発明によれば、欠損哺乳類は欠損しているヒトであることがある。欠損しているヒトの例は、骨または関節疾患、例えば変形性関節症および慢性関節リウマチ、骨粗鬆症またはクル病などの関節炎のヒトである。他の疾患は、腱炎、例えば腱鞘炎、腱滑膜炎、インサーティティス(insertitis)、腱滑液嚢炎および骨端症およびアテローム性動脈硬化症である。
【0259】
更に、欠損哺乳類は、ウマ、ウシ、ブタまたは子ブタ、イヌまたは霊長類のような任意の哺乳類であることができる。
【0260】
更に、欠損哺乳類は、ウサギ、マウス、モルモットまたはラットのような系統発生上齧歯目の総ての成員を包含する齧歯類であることができる。
【0261】
投与経路
本発明の抗体またはその断片は、単独で、または別の薬剤または化合物と組み合わせてその前に、同時に、または後に、適当な経路によって患者に投与することができる。例えば、本発明の抗体を他のモノクローナルまたはポリクローナル抗体と組み合わせて、関節疾患の予防または治療処置に用いられる市販製品のような現存製品と共に用いることもできる。本発明の抗体または断片は、抗生物質および/または抗微生物薬と共に投与される別個に投与される組成物として用いることができる。
【0262】
抗体またはその断片の有効量を投与する。有効量は、投与条件下で予防などの所望な治療効果を得るのに十分な量であり、例えばα10β1の阻害または刺激に十分な量であり、これにより関節疾患の予防、緩和または治療のような調節を行う。
【0263】
治療を行う関節疾患または症状によって、経口、食餌、局所、非経口、例えば静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、関節内、または腹腔内など様々な投与経路が可能であるが、必ずしもこれらに限定されない。他の適当な投与法としては、最重点可能なまたは生物分解性装置および徐放ポリマー性装置を挙げることもできる。本発明の医薬組成物は、他の薬剤との組合せ療法の一部として投与することもできる。
【0264】
本発明のキット
本発明は、モノクローナル抗体、本発明による抗体またはその断片、またはその断片を含んでなるキットも開示する。
【0265】
生物学的試料における哺乳類インテグリンα10β1の存在を検出するためのキットを調製することもできる。このようなキットは、哺乳類インテグリンα10β1のI-ドメインに結合する抗体365またはその断片のような本発明による抗体またはその断片、並びに抗体またはその断片とインテグリンα10β1またはその部分との間に複合体の存在を検出するのに適当な1種類以上の補助試薬を含む。本発明の抗体組成物は、単独で、または他のエピトープに特異的な追加抗体と組み合わせて、凍結乾燥形態で提供することができる。
【0266】
標識または未標識のことがある抗体を、添加物成分、例えばTris、リン酸塩およびカーボネートのような緩衝剤、安定剤、賦形剤、殺生物剤および/または不活性タンパク質、例えばウシ血清アルブミンと共にキットに含むことができる。例えば、抗生物質を添加物成分と共に凍結乾燥混合物として提供することができ、または添加物成分を使用者が組み合わせるように別個に提供することができる。一般に、これらの添加物酢酸は活性抗体の量に対して約5重量%未満で存在し、通常は抗体濃度に対して少なくとも約0.001重量%の総量で存在する。
【0267】
モノクローナル抗体に結合することができる第二の抗体を用いる場合には、このような抗体を別個のガラス瓶または容器などのキットで提供することができる。第二の抗体が存在する場合には、これは典型的には標識されており、上記した抗体処方物に類似の方法で処方することができる。
【0268】
キットは、少なくとも1回の単離に十分な量では、本発明のモノクローナル抗体またはその断片を、別個に包装された試薬として、またはもう一つの態様では、固相支持体またはビーズと組み合わせた試薬として含む。包装された試薬の使用説明書も、典型的には包含される。
【0269】
一態様では、本発明は、ヒト被験者からES細胞、MSCまたは軟骨細胞を単離するためのキットに関する。
【0270】
もう一つの態様では、モノクローナル抗体またはその断片は検出可能な標識を含んでなる。
【0271】
もう一つの態様では、このキットは、本発明による抗体またはその断片と、抗免疫グロブリンを標識した抗体またはその断片、例えばFACS分析で用いるのに適当なPE標識ヤギ抗マウスIgGを含んでなる。
【0272】
もう一つの態様では、このキットは、固相支持体またはビーズにカップリングした本発明による抗体またはその断片を含んでなる。固形支持体またはビーズの例は、上節に挙げられている。
【0273】
もう一つの態様では、本発明による抗体は溶液で提供される。
【0274】
もう一つの態様では、本発明による抗体は、使用時に溶解される凍結乾燥状態で提供される。
【0275】
更に、抗体365またはその断片のような本発明による抗体またはその断片を産生するためのキットであって、本発明によるハイブリドーマ細胞系mAb365のようなハイブリドーマ細胞系を含んでなるものを開示する。
【0276】
本発明による抗体またはその断片、例えば抗体365またはその断片を産生するためのキットの一態様では、上記ハイブリドーマ細胞系の細胞培地が含まれる。
【0277】
本発明を幾つかの態様に関して説明してきたが、熟練者であれば他の記載されていない態様、変異または組合せを予見することができ、これらも特許請求の範囲内にある。
【0278】
本明細書で用いられる「含んでなる」という表現は、述べられた項目を含むが、それらに限定されないと理解する。
【0279】
本発明を、下記の非制限的例によって説明する。
【実施例1】
【0280】
実施例1. クローン365の生成
目的
この実施例の目的は、α10の細胞外ドメインのI-ドメインに対するモノクローナル抗体を生成することである。
【0281】
材料および方法
抗原
α10インテグリンに特異的なモノクローナル抗体を産生するために、α10ノックアウトマウスにα10 I-ドメイン発現細胞系から精製した組換えα10 I-ドメインを免役した。この細胞系は、HEK 293-EBNA細胞をHis標識α10 I-ドメインを単独でまたはアルカリホスファターゼ(AP)に融合したものをコードする発現ベクターpCEP4でトランスフェクションすることによって生成した。
【0282】
組換えタンパク質は、NiNTAアガロース(Qiagen)上でアフィニティー精製された培地に分泌されるようにデザインした。純度は電気泳動によって確認した。
【0283】
免疫化
マウスの筋肉内に、マウスアジュバントImmuneasy (Qiagen)と混合した2-10μgのα10 I-ドメイン-アルカリホスファターゼ融合タンパク質を免役した。15日後、マウスに同じ抗原を追加免疫した。ELISAおよびFACSのいずれにおいても、所望な特異性応答に達するには、α10 I-ドメイン(4μg)を2週間毎に尾の基部への更に2または3回追加免疫の皮下投与が必要であった。
【0284】
最後の免疫化の2日後、マウスの脾臓細胞をNSO骨髄腫細胞とポリエチレングリコールを用いて融合した。融合細胞を96穴マイクロプレートに播種し、 BM Condimed H1 (Roche)およびHAT (ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン混合物, Sigma)選択を含むDMEM/F12 (Invitrogen)培地で増殖した。
【0285】
ハイブリドーマ細胞クローンの上清を、ELISA、およびFACS分析でα10β1を発現する細胞系への結合により固定したα10 I-ドメインへ結合する能力によって抗α10抗体産生について試験した。
【0286】
総数で29のα10 I-ドメイン陽性クローンをELISAによって同定し、抗体365と呼ばれるそれらの一つがα10β1に特異的に結合することをFACSによって見出した。陽性ハイブリドーマ細胞系を、限定希釈法によって3回サブクローニングした。
【0287】
Isostripによるクローン365によって分泌される抗体のアイソタイピングでは、Roche(スイス)製のマウスモノクローナル抗体アイソタイピングキットで抗体がIgG2aκであると同定された。
【0288】
結果
ハイブリドーマクローン365は、サブクローニングの後は安定であった。ハイブリドーマによって産生したモノクローナル抗体を、更に以下で特性決定する。
【実施例2】
【0289】
実施例2. 抗体365によるインテグリンα10β1の免疫沈殿
目的
この実施例の目的は、全インテグリン(α10β1)に対する抗体365の特異性を免疫沈殿(IP)によって明らかにすることである。
【0290】
材料および方法
下記の実験では、インテグリンサブユニットα10およびα11の細胞質ドメインに対するポリクローナル抗体を、コントロール抗体として用いた。これらのポリクローナル抗体は、細胞溶解物からのそれぞれインテグリンα10β1およびα11β1を特異的に免疫沈殿することが以前に示されている。
【0291】
インテグリンサブユニットα1 0またはα11 (ネガティブコントロール)でトランスフェクションしたC2C12細胞を10% FCSを含むDMEM培地で増殖させた。プレートに接着した細胞をPBSで1回洗浄した後、氷上で4mlのPBS中0.5mg/ml Sulfo-NHS-LC-ビオチン (Pierce)を用いて表面を20分間ビオチン化した。次に、細胞をPBSで1回洗浄し、10ml 0.1 Mグリシン/PBSを氷上で5分間加えた。PBSで1回洗浄した後、細胞を氷上で1mlリーシス緩衝液(1% NP-40、10%グリセロール、20mM Tris/HCl、150mM NaCl、1mM MgCl2、1mM CaCl2、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche), pH7.5)でリーシスを行った。細胞溶解物をプラスチックへらで回収し、15,000gで10分間遠心分離した。上清を取り出し、1μlのα10前免疫血清とインキュベーションした後、20μl Prot G Sepharose (Amersham)/100μlリーシス緩衝液を加えた。4℃で1時間回転した後、溶解物を8000 rpmで1分間遠心分離し、上清を取り出した。それぞれの免疫沈殿のため、150μlの細胞溶解物上清をエッペンドルフ試験管に採取し、抗血清またはモノクローナル抗体溶液1μlを加えた。用いた抗体は、それぞれマウス抗体365、ウサギ抗ヒトα10血清およびウサギ抗ヒトα11血清であった(いずれの血清もインテグリンの細胞質ドメインに対するものであった)。4℃で2時間回転した後、20μl Prot G Sepharose (Amersham)/100μlリーシス緩衝液を加え、混合物を更に45分間回転した。Sepharose-ビーズを短時間遠心分離し、リーシス緩衝液で3回洗浄した。20μl SDS PAGE試料緩衝液(100mM DTTを含む)をSepharoseビーズに加え、試料を5分間煮沸した。それぞれの試料5μlを8%ストレート・ゲル(Novex)上で展開した後、PVDF膜上に電気導入した。膜を2% BSA/TBST中で1時間遮断し、TBSTで1回洗浄した後、2μlエクストラアビジン-ペルオキシダーゼ(Sigma)/8ml遮断緩衝液とインキュベーションした。1時間後、エクストラアビジン-ペルオキシダーゼ溶液を除去し、膜をTBSTで3x20分間洗浄した。次に、表面がビオチン化したタンパク質をECL (Amersham)で検出し、写真用フィルム上に可視化した。
【0292】
結果
図2の結果は、抗体365が全インテグリンα10β1を免疫沈殿することができ(レーン3)、細胞質ポリクローナルα10抗体をポジティブコントロールとして用いて、α10をトランスフェクションしたC2C12細胞の表面上のインテグリンα10β1の存在を確認した(レーン1)。抗体365は、α11をトランスフェクションしたC2C12細胞 (レーン6)または任意の他のタンパク質からα11β1を免疫沈殿しなかったので、α10β1インテグリンに特異的であった。インテグリンα11 サブユニットの細胞質ドメインに対する血清(レーン5)を、α11をトランスフェクションした細胞のポジティブコントロールとして用いた。
【実施例3】
【0293】
実施例3. ELISA
目的
この実施例の目的は、インテグリンα10鎖のI-ドメインに対する抗体365の特異性をELISA (酵素免疫測定法)によって明らかにすることであった。
【0294】
材料および方法
α10、α11、α1またはコントロールタンパク質(アルカリホスファターゼ)の可溶性組換えI-ドメイン(10μg)を、PBS中で一晩で96穴ELISAプレート(Maxisorp Nunc)をコーティングした。
【0295】
抗体365を約1μl/ml含むハイブリドーマ培養上清を加えて、α10 Iドメインに対する抗体の特異結合を西洋ワサビペルオキシダーゼと接合したヤギ抗マウスIgGに続いてペルオキシダーゼ基質(OPD SigmaFast, Sigma)によって検出した。比色計変化の吸光度は、492nmで測定した。
【0296】
結果
図3の結果は、抗体365がインテグリンサブユニットα10のI-ドメインを特異的に認識することを示している。コントロール(AP)またはインテグリンα1およびα11のI-ドメインでは反応性は観察されなかった。
【実施例4】
【0297】
実施例4. 細胞接着分析
目的
実施例4の目的は、抗体365がα10β1のコラーゲンII型への結合を調節することができることを示すことである。
【0298】
材料および方法
48穴プレート(Nunc)にPBS中4℃で一晩コラーゲンII型またはBSA (10μg/ml, 150μl/ウェル)をコーティングした後、2%BSA/PBSで室温にて1時間遮断した。細胞をトリプシン化し、洗浄した後、抗体の存在下または非存在下にて特定のイオン濃度でコラーゲンまたはBSAコーティングしたウェルに播種した。細胞を50,000個/ウェルで播種し、37℃で1時間接着させた。ウェルを、PBSで2回洗浄した。接着細胞の細胞数は、下記のようにヘキソサミニダーゼ試験を用いて決定した。すなわち、接着した細胞を、150μl基質溶液(7.5mM p-ニトロフェニル-N-アセチル-β-D-グルコースアミン、0.05M酢酸ナトリウム pH 5、0.25% TritonX-100)でリーシスした。プレートを37℃で2.5時間インキュベーションした。60μlの細胞溶解物をマイクロタイタープレート(Nunc)に移し、90μlの展開緩衝液(5mM EDTA、50 mMグリシン、pH 10.4)と混合した。
【0299】
405nmの吸光度を読み取り、細胞数の尺度として用いた。用いたそれぞれの細胞系について、細胞数標準を作成した。それぞれの実験は3回行った。
【0300】
結果
図4aには、抗体365が、1mM Mg2+および1mM Ca2+の存在下において、α10β1発現C2C12細胞のコラーゲンIIへの結合を阻害することが示されている。コントロール(Abなし)および1B4 (イソタイプコントロール)は、結合の阻害を示さなかった。
【0301】
図4bには、α11β1を発現するC2C12細胞のII型コラーゲンへの結合は抗体365によって阻害されないことが示されている。コントロール(Abなし)および1B4 (アイソタイプコントロール)は、結合の阻害を示さなかった。
【実施例5】
【0302】
実施例5. α10インテグリンを発現する細胞のFACSによる同定
目的
この実施例の目的は、抗体365を用いてヒトα10β1インテグリンを発現する細胞を同定することである。
【0303】
材料および方法
α10およびα11をトランスフェクションしたC2C12およびトランスフェクションしていないC2C12をトリプシン化し、PBSで洗浄した後、1μg抗体365/ml 1%BSAを補足したPBSと20分間インキュベーションした。標識した細胞をPBS/1% BSAで2回洗浄した後、1μg/ml PBS/1%BSAの濃度のPE標識ヤギ抗マウスIg (Pharmingen, BD Biosciences)と共に20分間インキュベーションした。その後、細胞をPBS/1%BSAで2回洗浄し、Cell Questソフトウェアプログラム(Becton-Dickinson)で10,000回の結果を収集することによってFAC Sort(登録商標)(Becton-Dickinson)上で分析した。
【0304】
結果
図5は、FACS分析における抗体365を用いるα10を発現する細胞の同定を示す。FACS分析法では、C2C12細胞に結合した抗体365を上の中央パネルに示されるヒトα10インテグリン-サブユニットでトランスフェクションした。これは、FACSヒストグラムにおける右への置換として見られた。抗体365は、上右パネルに示されるように、ヒトα11インテグリン-サブユニットでトランスフェクションしたC2C12細胞、または上左パネルに示されるように、トランスフェクションしていないC2C12細胞には結合しなかった。下のパネルは二次抗体を表し、単独では、試験した細胞のいずれにも結合しなかった。
【実施例6】
【0305】
実施例6. 抗体365に結合する細胞のMACS(登録商標)による選択
目的
この実施例の目的は、α10β1を発現する細胞をMACS(登録商標)ビーズにより正の選択をすることである。
【0306】
材料および方法
HEK 293-EBNA細胞を発現するおよび発現しないα10β1を含む細胞個体群混合物を、磁気ビーズ分離 MACSを用いることによってα10発現細胞について正の選択を行った。細胞をトリプシン化し、PBSで洗浄した後、氷上で1μg/ml 2mM EDTAおよび0.5% BSAを補足したPBS (MACS緩衝液)の抗体365と共に15分間インキュベーションした。その後、インキュベーションした細胞をPBSで2回洗浄した後、80μl MACS緩衝液および20μlヤギ抗マウスIgG Microbeads (Miltenyi Biotec, ドイツ)に再懸濁した。氷上で15分間インキュベーションした後、標識細胞をMACS緩衝液で2回洗浄し、500μl MACS緩衝液に再懸濁した。懸濁液を磁石(Miltenyi Biotec, ドイツ)を含むLS分離カラムを通過させ、カラムを3ml MACS緩衝液で3回洗浄し、非標識細胞を除去した。
【0307】
カラムを磁石から除き、標識細胞をMACS緩衝液で溶出し、遠心分離によって回収した。
【0308】
3個の異なる細胞画分(選択前の細胞、フロー・スルーおよび正の選択した細胞)を、抗体365 1μg/ml 1% BSAを補足したPBSと共に20分間インキュベーションした。次に、細胞をPBS/1% BSAで2回洗浄した後、PE標識ヤギ抗マウスIg (Pharmingen, BD Biosciences)を1μg/mlの濃度でPBS/1%BSA中で20分間インキュベーションした。その後、細胞をPBS/1% BSAで2回洗浄した後、FACSort(登録商標)(Becton-Dickinson)上で分析した。
結果
選択の有効性をフロー・サイトメトリー分析FACSによって測定し、図6に示す。選択前の細胞、フロー・スルーおよび溶出細胞を、抗体365で染色した。α10陽性個体群は、ヒストグラムに示されるように右に移動する。出発個体群中の1300万個の細胞から、1.48百万、すなわち11%に相当するものが正に選択された。正に選択された細胞画分は、α10β1-ネガティブ細胞ほとんど全く含まなかった。フロー・スルー画分は、α10-ポジティブ細胞をほとんど全く含まず、MACS分離は出発材料として用いた細胞個体群混合物からα10-ポジティブ細胞を効率的に除去したことが確認された。
【実施例7】
【0309】
実施例7. 抗体365に結合するhMNCの個体群の同定
目的
この実施例の目的は、ヒト単核細胞の下位個体群を抗体365を用いて同定することである。
【0310】
材料および方法
ヒト単核細胞(hMNC)を、正常な成人の腸骨稜の骨髄から単離した。約20-30mlの骨髄吸引液を、凝血を防止するためにヘパリン6000単位を含む注射器に採取した。骨髄試料を、Iscoveの改良Dulbecco培地(IMDM)+5%FCSで1:1に希釈した。骨髄懸濁液を50μm細孔メッシュを通して濾過し、Lymphoprep(Roche)15mlを50ml試験管に加えた。骨髄細胞(25ml)を、Lymphoprep層の最上部に混合しないように注意しながら積層した。次に、細胞を400xgで室温にて30分間遠心分離した。次に、界面からの細胞を25mlのIMDM+5%FCSを含む50ml試験管に移した後、4℃で500xgにて15分間遠心分離した。上清を除去し、緩衝液5.0mlを加えた(Ca2+およびMg2+を含まない5% FCSを含む2mM EDTAを補足した滅菌PBS)。
【0311】
hMNCの個体群のフロー・サイトメトリーによる同定
上記から精製した単核細胞を2本の試験管に分割し、1%ウシ胎仔血清(FCS)を含むPBS中で抗体365(lμg/ml)と共にまたはなしで氷上で20分間インキュベーションした。
【0312】
標識した細胞をPBS/1% FCSで1回洗浄した後、氷上でPE標識ヤギ抗マウスIgG(1μg/ml Pharmingen BD Biosciences)と共に20分間インキュベーションした後、PBS/1% FCSでもう一回洗浄した。次に、細胞を氷上でFITC標識マウス抗ヒトCD45 (1.2μg/ml, BD Biosciences)と共に20分間インキュベーションして単核調製物中のリンパ球を同定した後、PBS/1% FCSで1回洗浄した。
【0313】
標識細胞を、Cell Quest(登録商標)ソフトウェアプログラム(Becton-Dickinson)で総数が1,000,000回の結果を収集することによってFACS Calibur(登録商標)(Becton-Dickinson)上で分析した。
【0314】
結果
図7は、MACS分析におけるインテグリンα10発現hMNCの個体群の抗体365を用いる同定を示す(下パネル)。上パネルは、抗体365の非存在下でのMACS分析を示す。
【実施例8】
【0315】
実施例8. 免疫組織化学
目的
この実施例の目的は、抗体365のヒト関節軟骨へのイン・シテューでの結合を示すことである。
【0316】
材料および方法
組織切片を室温で30分間加温した後、組織をPAPペン(Histolab)で囲み、アセトン(Merck)で-20℃にて10分間固定した。次に、組織をPBS (Gibco/Invitrogen)で室温にて15分間PBSを1回取り換えながら洗浄した後、2mg/mlヒアルロニダーゼ(Sigma EC 3.2.1.35)で37℃にて30分間消化した。消化した組織をPBSで15分間インキュベーションしながら2回洗浄した後、PBS中で2%ロバ血清(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.)を用いて室温にて30分間遮断した。一次抗体である抗体365を、2%ロバ血清/PBSで1:400に希釈し、試料を室温にて75分間インキュベーションした。試料をPBSで室温にて15分間インキュベーションした後、二次抗体であるロバ抗マウスCy3(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.)を室温で60分間添加した。試料をPBSで室温にて15分間インキュベーション中に2回洗浄し、スライドにVectashield Mounting Medium (Vector Laboratories)を取り付けた。組織切片を、Cy3フィルターを備えた顕微鏡で観察した。
【0317】
結果
図8は、抗体365を用いるヒト関節軟骨のインテグリンα10βの免疫局在化を示す(上パネル)。二次抗体のみが、軟骨細胞に結合しなかった(下パネル)。
【実施例9】
【0318】
実施例9. α10+-軟骨細胞の個体群の同定のためのmAb365の使用
目的
この実施例の目的は、α10+-軟骨細胞の個体群を同定することである。
【0319】
材料および方法
ヒト軟骨細胞を、ヒトの正常な軟骨からコラゲナーゼ消化によって単離した(下記のプロトコール参照)。
【0320】
ヒト軟骨細胞の抽出
ヒト軟骨細胞のヒト関節軟骨からの抽出は、下記の方法で行った。プロトコールは、Brittberg et al., (1994) N. Engl. J. Med 331: 889-895に記載されている。
1. ヒト軟骨を受け取ったならば、PBS (-/-) + 1:100ペニシリン/ストレプトマイシン(PEST) + 1:250ファンギゾンで3回洗浄する。
2. 切開を行わない軟骨を培地(DMEM、37℃15cm皿)に置く。
3. 軟骨を1-2mm3の細片に切断する。
4. プロナーゼ(700IU/ml =10mg/ml)を秤量し、血清なしの培地(+ 1:100 PEST + 1:250ファンギゾン)に溶解し、滅菌フィルターを通し、使用前に溶液を37℃に予熱する。
5. プロナーゼ中で37℃で極めて緩やかに回転させながら30分間インキュベーションする。
6. 細片を沈降させ、上清を除いて廃棄する。
7. 細片をPBS-/- (+ 1:100 PEST + 1:250ファンギゾン)で3回洗浄し、総てのプロナーゼを除去する。
8. コラゲナーゼ(350IU/ml)を秤量し、血清なしの培地(+ 1:100 PEST + 1:250ファンギゾン)に溶解し、滅菌フィルターを通し、溶液を予熱(37℃)する。
9. 軟骨を37℃で一晩回転させながら消化する。
10. 総ての残っている細片を沈降させた後、上清を70pm細胞濾過器を介して採取し、1500rpmで10分間遠心分離する。
11. 遠心分離の後に細胞について上清をチェックし、必要ならば再度遠心分離する。多くの細片が残っている場合には、新しいコラゲナーゼ(上記)で37℃で回転させながら再度消化する。
12. 総てのコラゲナーゼを除去するため、細胞をPBS(-/-) + PEST (1:100) +ファンギゾン(1:250) + 10%血清で3回洗浄する(細胞をPBSに再懸濁した後、1500rpmで10分間遠心分離)。
13. 10%血清を含む培地に再懸濁し、計数する - トリパンブルーの排除を使用。
14. 遠心分離し、必要な密度で培養し、または凍結のため調製する。
【0321】
細胞の培養
単離した細胞は、下記の方法を用いて培養した。
1. 細胞を計数の後、無血清培地に再懸濁し、2-3時間培養する。
2. 培地を細胞から除き、10%血清を含む培地を加える。
3. 培養密度: -T75 高密度8-10x106個/12ml: 低密度5-6x106個/12ml。
4. 細胞の密度によって、2-3日毎に培地を交換する。
【0322】
細胞を、10%FCS、PESTおよびアスコルビン酸50ng/mlを補足したDMEM/F12培地で培養した。細胞を1日目までに、または1、2および6週間後にトリプシン/EDTAで分離し、1% BSAを含むPBS中で1200rpmでの遠心分離によって5分間洗浄した。
【0323】
培養した細胞のFACS分析
細胞をmAb365 (1μg/ml)またはイソタイプコントロールIgGで染色した。インキュベーションが終了したならば、細胞を再度上記のように洗浄し、結合した抗体を、細胞をPEに接合したヤギ抗マウス抗体(Pharmingen)と20分間インキュベーションした後、上記のように再度洗浄した。細胞を再懸濁し、FACSort (Becton Dickinson FACS系)を用いるフロー・サイトメトリーによって分析した。
【0324】
結果
図9の結果は、分析後に集めたFACSデーターの概要を示しており、FACS分析においてmAb365抗体によって同定されたα10ポジティブ細胞の割合を示している。
【0325】
細胞のFACS分析は、1日目、または1、2および6週間後に分離した細胞について行った。細胞はPEに接合したヤギ抗マウス抗体とインキュベーションすることによって検出した。培養期間中に、α10ポジティブ細胞の割合は、培養の1日目の約70%から6週間後の10%まで減少した。
【実施例10】
【0326】
実施例10. mAb365による磁気セルソーティングを用いるα10-ポジティブ軟骨細胞の単離
目的
この実施例の目的は、mAb365をα10-ポジティブ細胞の分離のための固相セルソーティングに用いることができることを示すことである。
【0327】
材料および方法
実施例9で単離したヒト軟骨細胞画分を、更に磁気セルソーティングを用いることによってα10 ポジティブおよびα10ネガティブ細胞に分画した。
【0328】
ヒト軟骨細胞に、10μg/mlのmAb365(α10インテグリン受容体の抗-I-ドメイン)を4℃で20分間標識し、洗浄し、ヤギ抗マウスIgGマイクロビーズ (Miltenyi Biotec, ドイツ)を4℃で20分間標識した。
【0329】
α10ポジティブ細胞は、LS midiMACSカラム(Miltenyi Biotec, ドイツ)を用いる正の選択によって単離した。この手順は、製造業者の指示に従って行う。
【0330】
正の選択後からα10ネガティブ画分中の残っているポジティブ細胞を、LD涸渇カラム(Miltenyi Biotec, ドイツ)を用いて涸渇させた。
【0331】
ポジティブおよびネガティブ画分の1.6x105個の細胞を用いて、mRNAを単離した。次に、これらの細胞をcDNA合成に用いた。
【0332】
cDNAを定量的PCRに用い、これは、下記の条件を用いるFastStart DNA Master SYBR Green Iを用いるLight Cycler (Roche)上で行った。すなわち、95℃で10分間変性後、それぞれの転写体(GAPDH、コラーゲンIおよびコラーゲンII)について特異的プライマーを用いる65℃のアニーリング温度での40サイクル。総てのPCRデーターは、GAPDHに対して規格化した。
【0333】
使用したコラーゲンプライマー:
ヒトコラーゲンI
COL I 前進3'-5'gCTTCCCTggTCTTCCTg
COL I 復帰3'-5'TCTCACCACggTCACCCT
ヒトコラーゲンII
COL II 前進3'-5'CAggggTgAACgAggTTT
COL II 復帰 3'-5'gAggTCCAACTTCTCCCTTCT
【0334】
コラーゲンII型産生の測定
コラーゲン含量を測定するため、コラーゲンの総量をヒドロキシプロリン分析法 (Woessner J. F 1976:「結合組織研究の方法(The Methology of Connective Tissue Research)」Hall D監修, pp227-233)を用いて測定することができ、またはコラーゲン合成を3Hプロリンの放射能標識によって測定することができる(Scutt et al (1992) Anal. Biochem 203: 290-294)。
【0335】
一例として、ヒドロキシプロリン含量の測定を下記の方法で行う。すなわち、コラーゲン(典型的には、コラーゲンII型)を含む試料を6.0M HCl中で16時間110℃で加水分解して、ヒドロキシプロリンを遊離する。
【0336】
中和の後、それぞれの試料を少なくとも15倍に希釈して、塩濃度が分析に影響するのを防止する。
【0337】
次に、試料を真空乾燥する。
【0338】
方法:
a. 試料(ヒドロキシプロリン1-5μg)を、分析用緩衝液で2.0mlとする。
b. クロラミン-T試薬1.0mlを加え、室温にて20分間放置する。
c. 新たに調製したジメチルアミノベンズアルデヒド試薬1.0mlを加え、十分に混合する。
d. 試験管を60℃で15分間インキュベーションし、水道水で5分間冷却する。
e. 550nmの吸光度を45分以内に測定する。
注記: 必要ならば、加水分解生成物Dowex-50-x-8 (H+型, 200-400メッシュ)のショートカラムを通過させ、着色物質および不純物を除去することができる。
【0339】
試薬:
1. 貯蔵緩衝液は、溶液1リットル中にクエン酸(H2O) 50g、氷酢酸12ml、酢酸ナトリウム(3H2O) 120g、およびNaOH 34gを含む。トルエン数滴を防腐剤として加える。
2. 分析緩衝液: 貯蔵緩衝溶液をH2Oで10倍に希釈する。
3. クロラミン-T試薬。クロラミン-T 1.41gをH2O 20.7mlに溶解し、n-プロパノール26mlおよび貯蔵緩衝液53.3mlと混合する(この試薬は4℃で2週間安定である)。
4. ジメチルアミノベンズアルデヒド試薬。p-ジメチルアミノベンズアルデヒド15gをn-プロパノール60mlに懸濁し、過塩素酸(60%) 26mlを徐々に加える(注記: 保護眼鏡の付いた発煙フードを使用のこと)。この試薬は、新たに調製しなければならない。
【0340】
結果
図10の結果は、インテグリンα10β1の発現に基づくmAb365を用いる磁気細胞分離によって分離したヒト軟骨細胞のコラーゲンII型およびコラーゲンI型RNAのレベルを示している。この結果は、
i) コラーゲンII型の発現は、インテグリンα10β1を発現する、すなわちα10ポジティブな細胞におけるコラーゲンI型の発現より大きい。
ii) コラーゲンI型の発現は、インテグリンα10β1を発現しない、すなわちα10ネガティブな細胞におけるコラーゲンII型の発現より大きい。
【0341】
検討
この結果は、α10発現細胞が細胞外マトリックス成分、すなわち軟骨様マトリックスに伝導性であるコラーゲンII型をコードするmRNAを産生することを示している。
【0342】
逆に、α10を欠く細胞は、一層多くの「繊維軟骨様」マトリックスと会合した細胞外マトリックス成分である一層多くのコラーゲンI型mRNAを産生する。
【実施例11】
【0343】
実施例11. mAb365によるネズミα10の同定
目的
この実施例の目的は、軟骨細胞上で発現したネズミα10を同定するかどうかを試験することである。
【0344】
材料および方法
軟骨細胞は、Bengtsson et al. (Matrix Biology 2001 20 (8): 565-76)によって記載されている下記のプロトコールを用いて新しく生まれた野生型またはα10ノックアウト突然変異体マウスの肋骨軟骨から単離した。
1. マウスからの全胸郭を切開する。
2. 組織を、氷上のペトリ皿のDMEM-PS (DMEM + 1:50 PEST)に入れる。
3. 肋骨(約3匹分/皿)を2mg/mlコラゲナーゼ+2% FCSを含んでいる3ml DMEM-PSが入っている小型ペトリ皿に移す。
4. 一度に1個の皿を37℃で30分間インキュベーションする。
5. 肋骨から軟骨膜を除き、肋骨をDMEM-PS+2mg/mlコラゲナーゼ+2%FCSの入っている新しい小型ペトリ皿に移す。
6. 細胞が再懸濁するまで37℃でインキュベーションする。
7. 細胞懸濁液を70μm細胞濾過器を介して50mlファルコン(Falcon)に入れる。
8. コラゲナーゼをDMEM-PS + 20% FCSで不活性化する。
9. 2000rpmで10分間遠心分離する。
10. 10ml DMEM-PS + 20% FCSで再度洗浄し、回転させながら細胞を計数する。
11. Freeze in細胞培養冷凍培地中で約1x106個/試験管で冷凍する。-80℃で保管。
【0345】
軟骨細胞を、10%FCS、PESTおよびアスコルビン酸50μg/mlを補足した培地DMEM/F12で一晩増殖した後、FACS分析を行った。
【0346】
細胞をトリプシン/EDTAで分離し、1200rpmで5分間遠心分離することによって1%BSAを含むPBSで洗浄した。
【0347】
細胞をmAb365、1μg/mlの濃度のイソタイプコントロールIgG、またはマウスβ1インテグリンを認識する抗体であるFITCに接合した抗CD29を用いてインキュベーションした。
【0348】
インキュベーションの終了時に、細胞を再度上記のように洗浄し、イソタイプコントロールまたはmAb365と共に更にインキュベーションし、PEに接合したヤギ抗マウス抗体(Pharmingen)で20分間対比染色した後、洗浄した。
【0349】
細胞を再懸濁して、FACSort (BectonDickinson FACS系) を用いるフロー・サイトメトリーによって分析した。
【0350】
結果および検討
図11は、FACS分析において抗体mAb365を用いるインテグリンα10発現マウス軟骨細胞の同定を示す(上図パネル)。
【0351】
下図パネルは、インテグリンα10ノックアウトマウスから単離したマウス軟骨細胞について行ったコントロールFACS分析を示す(WO 03/101497号明細書並びにBengtsson et al. Matrix Biology 2001 20 (8): 565-76に記載)。
【0352】
この結果は、mAb365がネズミα10にも結合することを示している。
【実施例12】
【0353】
実施例12. ヒト間葉幹細胞上におけるα10の存在
目的
この実施例の目的は、mAb365を用いてヒト間葉幹細胞上にα10が存在することを示すことである。
【0354】
材料および方法
ヒト間葉幹細胞はPoieticsから入手することができ、あるいは骨髄から単離することができる。
【0355】
次に、α10+ve個体群を単離して、更に分化させ、下記のような様々な分化条件により軟骨細胞になることができるかどうかを見ることができる。
【0356】
成人の正常な骨髄から得たヒト間葉幹細胞は、Poietics/Cambrexから購入した(カタログ番号PT-2501)。mAb365は、CD105、CD166、CD44、CD14、CD34およびCD45のような幹細胞に対して余り特異的でない他のマーカーと組み合わせて分析した(Pieternella et al (2003) J. Haematol 88 (08): 845-852; Kirschstein, R and Skirboll, L. R (2001) Stem Cells: Scientific Progress and Future Directions. NIH Report. Department of Health and Human Services)。
【0357】
購入した細胞を融解させ、定義された培地(カタログ番号PT-3001)中でPoieticsの推奨に従って6日間培養した。細胞をトリプシン/EDTAで分離し、1% BSAを含むPBSで1200rpmで5分間遠心分離することによって洗浄した。
【0358】
細胞は、典型的にはmAb365(1-10μg/ml)、イソタイプコントロールIgGまたはインテグリンのβl鎖を認識する抗体であるP4C10で染色した。インキュベーションが終了したならば、細胞を上記のように再度洗浄し、結合した抗体を、細胞をPEに接合したヤギ抗マウス抗体(Pharmingen)と20分間インキュベーションした後、再度上記のように洗浄することによって検出した。
【0359】
細胞を再懸濁し、FACSort (BectonDickinson FACS系)を用いるフロー・サイトメトリーによって分析した。細胞をCD105、CD44、CD14およびCD45(総ての抗体はBD Biosciences/Pharmingen製である)の存在についても検討し、間葉幹細胞表現型を決定した。
【0360】
ヒト骨髄からMSCの単離
Poietics製間葉幹細胞を用いることの代替法として、間葉幹細胞を、標準的方法によってヒト骨髄から単離する(Quirici et al (2002) Exp. Hematol 30 (7): 783-791)。骨髄を健康な同種骨髄移植ドナーから採取し、ヘパリン処理した試験管に集め、製造業者の説明に従ってLymphoprep(商品名)(密度1.077g/ml, Nycomed, ノルウェー)に積層する。
【0361】
次に、低密度単核細胞(LD-MNC)を、遠心分離によってヒト骨髄細胞から単離する。LD-MNCをPBSで2回洗浄し、MSCGM(間葉幹細胞増殖培地)(Poetics, Cambrex Bio Science Walkersville, Inc. )に再懸濁する。
【0362】
次に、間葉幹細胞を、LD-MNCから下記の標準的方法によって、すなわちプラスチックへの接着(Pittenger et al(1999) Science184. 143)、CD45--グリコフォリンA- (Reyes et al (2001) Blood. 98(9): 2615-25)、CD105+ (Conrad et al. (2002). Exp Hematol. 30(8): 887-95)およびNGFR+単離(Quirici et al. (2002) Exp Hematol. 30(7): 783-91)によって精製する。
【0363】
インテグリンα10 ポジティブ細胞個体群の単離
インテグリンα10 ポジティブ細胞を、下記の方法によって単離する。すなわち、細胞を1-10μg/mlの濃度のmAb365(αl0インテグリン受容体)で4℃で20分間標識し、洗浄し、ヤギ抗マウスIgGマイクロビーズ(Miltenyi Biotec, ドイツ)を4℃で20分間標識する。次に、αl0 ポジティブ細胞を、LS midiMACSカラム(Miltenyi Biotec, ドイツ)を用いて正の選択によって単離する。この手順は、製造業者の指示に従って行う。インテグリンα10ネガティブ細胞は、コントロールとして保持する。
【0364】
インテグリンα1 0 ポジティブ(およびネガティブ)細胞の分化
α10 ポジティブ細胞個体群(および相当ネガティブ個体群)するを上記方法のいずれかによって同定した後、これらの細胞を軟骨形成性表現型に分化することができ(および他の既知の表現型と例えばYoo et al (1998) J. Bone J. Surgery Am 80: 1745-1757によって識別することができ)ることが望ましい。
【0365】
従って、当業者に知られている下記の方法(Tallheden et al J. Bone. J. Surgery 85A (Suppl2): 93-100)を用いて、mAb365抗体を用いて同定したα10 ポジティブ細胞を軟骨細胞表現型に分化することができるかどうかを決定することができる。他の分化条件は、コントロールとして用いる。脱分化の例を、以下に示す。
【0366】
軟骨形成分化
細胞を、DMEM (GibcoBRL, Paisley, 英国)、インスリントランスフェリン亜セレン酸ナトリウム(Sigma, スウェーデン)、0.1μMデキサメタゾン(Sigma,スウェーデン)、80μMアスコルビン酸-2-ホスフェート(Sigma, スウェーデン)、1mg/mlリノール酸-ウシ血清アルブミン(Sigma, スウェーデン)、100U/mlペニシリン、 100μg/mlストレプトマイシン(GibcoBRL, Paisley, 英国)および10ng/ml TGF-β3 (R&D Systems Europe Ltd. , 英国)中でペレットマスとして培養する。軟骨形成性分化を測定するため、ペレット培養物をコラーゲンI型およびII、アグリカンおよびバーシカン発現についてQ-PCRを用いて試験する。
【0367】
骨形成分化
骨形成分化を誘発するため、細胞を、DMEM-LG (GibcoBRL, Paisley, 英国)、10% FCS (Sigma, St. Louis, ミズーリー)、50μMアスコルビン酸-2-ホスフェート(Sigma, スウェーデン)、0.10μMデキサメタゾン(Sigma, スウェーデン)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(GibcoBRL, Paisley, 英国)中で培養する。11日目に、2mM P-グリセロホスフェート(Sigma, スウェーデン)を培養物に添加する。コントロール細胞は、デキサメタゾンおよびβ-グリセロホスフェートなしで培養する。培地は、21または28日の培養期間中4日毎に交換する。骨形成分化細胞の無機化能を、Von Kossa染色によって可視化する。
【0368】
脂肪形成分化
脂肪形成分化を誘発するため、細胞を、DMEM-LG (GibcoBRL, Paisley, 英国)、10% FCS (Sigma, St. Louis, ミズーリー)、1μM デキサメタゾン(Sigma, スウェーデン)、60μMインドメタシン(Sigma, スウェーデン)、0.5mM 3-イソブチルメチル-キサンチン(Sigma, スウェーデン)、5μg/mlインスリン(Sigma, スウェーデン)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(Gibco, Invitrogen)中で培養する。4日毎に、細胞を一日中DMEM-LG、10% FCS (Sigma, St. Louis, ミズーリー)、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン(GibcoBRL, Paisley, 英国)および5μg/mlインスリン(Sigma, スウェーデン)で培養する。ネガティブコントロール細胞は、DMEM-LG (GibcoBRL, Paisley, 英国)、10% FCS、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(GibcoBRL, Paisley, 英国)中で培養する。細胞を分化培地で14日間培養し、分化細胞はOil Red O染色で可視化することができる脂質液胞を含んでいる。
【0369】
結果
総ての細胞は、フローサイトメトリーによって測定したところ、CD105、CD166およびCD44についてはポジティブであり、CD14およびCD45についてはネガティブであり、間葉幹細胞表現型を示していた。
【0370】
これらの幹細胞上でのインテグリンα10の発現をmAb365抗体を用いるFACS分析によって検討したところ、細胞の30%はα10 ポジティブであることが分かった。結果を図12に示す。
【0371】
これらの結果は、ヒト間葉幹細胞の下位個体群がインテグリンα10を発現することを示している。
【実施例13】
【0372】
実施例13. mAb365はマウス軟骨細胞でのコラーゲンII型産生を刺激する。
目的
この実施例の目的は、α10を介するmAb365のシグナル形成機能を検討することである。
【0373】
材料および方法
C57bl6マウスからのマウス肋骨軟骨細胞を実施例11に上記したプロトコールを用いて単離し、10% FCS、PESTおよびアスコルビン酸50μg/mlを補足したDMEM/F12で2日間培養した。細胞をトリプシン化し、15ml試験管に播種した。細胞を150xgで5分間遠心分離し、下記の方法、すなわちコントロール(抗体なし)、mAb365 (10μg/ml)およびコントロール抗体(IgG2akappa)(10μg/ml)で処理した。
【0374】
抗体処理した細胞を37℃、5%CO2で細胞インキュベーターに4日間入れて、ペレット培養物を形成した。次に、細胞を再度コントロール(抗体なし)、mAb365 (10μg/ml)およびコントロール抗体(IgG2akappa)(10μg/ml)で24時間処理した。
【0375】
RNAは、RNeasyキット(Qiagen)を用いて総てのペレットから抽出した。cDNA合成は、Superscript(商品名)II Rnase H-Reverse Transcriptase (Invitrogen)を用いて行った。
【0376】
定量的PCRは、Light Cycler (Roche)中でFastStart DNA Master SYBR Green Iを用いて下記の条件、すなわち、95℃で10分間変性した後、それぞれの転写体について特異的プライマーを用いてアニーリング温度65℃で40サイクルで行った。
【0377】
結果
図13は、mAb365抗体がコラーゲンII型mRNAの発現を刺激することを示している。コントロール培地またはコントロール抗体(IgG2akappa)は、コラーゲンmRNA合成に影響しなかった。
【実施例14】
【0378】
実施例14. MAb365はヒト組織試料のインテグリンα10β1を検出する
目的
この実施例の目的は、mAb365をもちいて、組織試料、例えば関節軟骨またはアテローム性動脈硬化症プラークのインテグリンα10β1の発現を検出することができることを示すことである。
【0379】
材料および方法
組織試料、例えば関節軟骨またはアテローム性動脈硬化症プラークにおけるインテグリンα10β1の存在を検出するため、下記の方法を用いる。
1. 組織をOCTに埋設し、5μm切片を切断する。
2. 切片を室温まで加温し、PAPペンで囲み、次にアセトン中で-20℃で10分間固定する。
3. スライドをPBSで15分間洗浄した後、ヒアルロニダーゼ(2mg/ml in PBS; Sigma)を用いて37℃で30分間インキュベーションする。
4. PBSで再度15分間洗浄した後、切片をPBSで希釈した2%ロバ血清 (Jackson, West Grove, ペンシルバニア)で30分間インキュベーションして遮断した。次に、切片を2%ロバ血清/PBSで1:400に希釈したmAb365で室温にて60分間インキュベーションした後、PBSで15分間洗浄する。
5. PBSで希釈したロバ抗マウスCy3 (Jackson)によるインキュベーションを室温で60分間行った後、最後にPBSで15分間洗浄する。次に、スライドにVectashieldを設置することができ、蛍光顕微鏡下で観察する。
【0380】
結果
mAb365抗体を用いる免疫組織化学による正常なヒト関節軟骨の分析は、インテグリンα10β1を19歳および53歳の2種類の異なるヒト標本によって表される図14の組織で検出することができることを示している。
【実施例15】
【0381】
実施例15. イン・ビボで抗体を検出するためのmAb365のビオチン標識
目的:
この実施例の目的は、mAb365をビオチンなどで標識することである。次に、標識した抗体を、イン・ビトロおよびイン・ビボで抗体を検出する方法に用いる。
【0382】
材料および方法
mAb365のビオチン化: mAb365を、4μlの5mg/mlビオチンNHS (Vector Labs) + 10μgのmAb365抗体と総容積が50μlの100mM Hepes (pH 8.5)中で室温にて2 時間反応させる。
【0383】
次に、試料を、500mlの容積で30分間透析し、100mM Hepesを1回交換した。透析は、Pierce製のスライド・ア・ライザー・ミニ透析ユニット(10,000 MWCO)で行う。次に、mAb365を回収して、使用準備をする。
【0384】
ビオチン化mAb365の投与
1週齢のC57マウスに、60μl(=60μg)のmAb-BIOT (ビオチン化mAb365)を腹腔内投与した後(25G針)、6-8時間後に50μl(=50μg)のmAb-BIOTを再度投与する。抗体力価を血清中でELISAによってチェックする。
【0385】
後肢を切開し、Current Protocols in Molecular Biology. Vol2 Chl4. Ed: Ausubel et al (1991)のような標準的方法を用いてOCTに埋設する。組織を、中央側部ダウンまたは足底側部ダウンを有するプラスチック金型に入れる。次に、金型にOCTを満たして、組織を冷凍するためにドライアイス上の銅プレートに入れる前に組織が完全に覆われるようにする。組織ブロックを-20℃で保管する。切片(5μm)をクリオスタット上で切断し、切片を-20℃で保管する。
【0386】
染色
スライドを30分間室温になるようにさせ、次いでアセトン中で-20℃で10分間固定する。PBSで7 + 8分間洗浄した後、切片を2%ロバ血清(PBSで希釈)で室温で30分間遮断する。次に、切片をSA-Cy3 (2%ロバ血清で1:200に希釈)と共に室温で60分間インキュベーションした。スライドを7+8分間PBSで洗浄し、カバーグラスをVectashieldで設置した。
【0387】
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【図面の簡単な説明】
【0388】
【図1】全能性胚幹(ES)細胞の神経、造血、上皮および間葉幹細胞(MSC)を形成することができる多分化能成人幹細胞への系列分化の一覧。ES細胞からMSCへのおよび軟骨細胞への分化は、インテグリンα10β1を発現することができる細胞の経路を示す。
【図2】抗体365とインテグリンα10β1のI-ドメインを用いる免疫沈殿。抗体365は、α10をトランスフェクションしたC2C12細胞の表面に発現した全インテグリンα10β1を免疫沈殿することができ(レーン3)、細胞質性のポリクローナルα10抗体をポジティブコントロールとして用い(レーン1)、細胞質性ポリクローナルα11抗体をネガティブコントロールとして用いた(レーン2)。抗体365は、α11-をトランスフェクションしたC2C12細胞からインテグリンα11β1を免疫沈殿しなかったので、α10β1インテグリンに特異的であった(レーン6)。インテグリンα11 サブユニットの細胞質ドメインに対するポリクローナル血清(レーン5)をポジティブコントロールとして用い、細胞質ポリクローナルα10抗体をネガティブコントロールとして用いた(lane4)。
【図3】ELISAにおけるα10に対する抗体365の特異性試験。α1またはα11への結合は見られない。比色変化の吸光度は、492nmで測定した。
【図4】細胞接着アッセイの結果。mAb365は、定義された条件下でα10β1インテグリンのII型コラーゲンへの結合を調節する。a) mAb365は、1mM Mg2+および1mM Ca2+の存在下におけるα10β1発現C2C12細胞のコラーゲンIIへの結合を阻害する。コントロール(Abなし)および1B4 (イソタイプコントロール)は、結合の阻害を示さなかった。b) α11β1発現C2C12細胞のII型コラーゲンへの結合は、mAb365によって阻害されない。コントロール(Abなし)および1B4 (イソタイプコントロール)は、結合の阻害を示さなかった。
【図5】FACS-分析によるα10インテグリンを発現する細胞の同定。抗体365は、ヒト α10インテグリン-サブユニットでトランスフェクションしたC2C12細胞に結合した。(上中央パネル)。これは、FACSヒストグラムでは右への移動として見られる。抗体365は、ヒト α11インテグリン-サブユニットでトランスフェクションしたC2C12細胞(上右パネル)またはトランスフェクションしていないC2C12細胞(上左パネル) に結合しなかった。下のパネルは二次抗体のみを示し、試験した細胞のいずれにも結合しなかった。
【図6】フロー・サイトメトリー分析FACSによって測定したα10-発現細胞のMACSによる正の選択の結果。 選択前の細胞、フロー・スルーおよび溶出細胞を365とインキュベーションし、PE標識ヤギ抗マウスIgGで染色した。α10ポジティブ個体群は、ヒストグラム5Bに示されるように右へ移動する。
【図7】MACS(登録商標)分析における抗体365を用いるインテグリンα10発現hMNCの個体群の同定(下パネル)。上パネルは、抗体365の非存在下におけるMACS分析を示す。
【図8】抗体365を用いるヒト関節軟骨におけるα10の検出。ヒト関節軟骨切片を、Cy3で標識したロバ抗マウス二次抗体を用いて検出した抗体365と共に免疫局在化した(図8a)。ヒト軟骨細胞上のインテグリンα10β1発現は、抗体365を用いるときにはクリアであることを明らかに示している。コントロール(二次抗体のみ)は、インテグリンα10β1に結合しない(図8b)。
【図9】FACS分析においてmAb365で検出されるα10+およびα10-細胞の割合。細胞を1日目、または1、2および6週間後に分析した。
【図10】mAb365および磁気セルソーティングを用いてα10、すなわちα10 +veまたはα10-veの発現に基づいて分離したヒト軟骨細胞におけるコラーゲンII型およびコラーゲンI型mRNAレベル。
【図11】mAb365はマウス軟骨細胞上でのα10インテグリンの発現を認識することを示す。ヒストグラムは、マウス軟骨細胞上のα10およびβ1インテグリンのレベルを示す。点線は、イソタイプコントロール抗体で染色した細胞、ベタ塗りヒストグラムはmAb365で染色したα10、実線はβlを示している。
【図12】ヒトMSC上のα10インテグリン発現。ヒストグラムは、hMSC上のα10およびβ1のレベルを示す。点線は、イソタイプコントロール抗体で染色した細胞、ベタ塗りヒストグラムはα10を発現するmAb365で染色した細胞、実線はインテグリンβlサブユニットを示している。
【図13】コラーゲンII型mRNAレベルがmAb365の存在下で刺激されることを示す。試料は、コントロール(抗体なし)、mAb365およびイソタイプコントロール(IgG2akappa)である。
【図14】mAb365抗体を用いる免疫組織化学による正常なヒト関節軟骨の染色後の結果。インテグリンα10β1は、組織、個々では19歳および53歳の2名の異なるヒト標本によって表されるもので検出することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドイチェ・ザムルング・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルテューレン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフツング(Deutsche Sammlung von Microorganismen und Zellkulturen GmbH)に受託番号DSM ACC2583で寄託されたハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体によって特異的に認識されるタンパク質に結合することができるモノクローナル抗体、またはその断片。
【請求項2】
ドイチェ・ザムルング・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルテューレン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフツング(Deutsche Sammlung von Microorganismen und Zellkulturen GmbH)に受託番号DSMACC2583で寄託されたハイブリドーマ細胞系。
【請求項3】
インテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合する、請求項1に記載のモノクローナル抗体、またはその断片。
【請求項4】
請求項2に記載のハイブリドーマ細胞系によって産生されるインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合する請求項1に記載のモノクローナル抗体またはその断片。
【請求項5】
哺乳類間葉幹細胞の個体群を単離する方法であって、
a) 哺乳類間葉幹細胞を含んでなる細胞懸濁液を提供し、
b) a)の細胞懸濁液をインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片と、上記モノクローナル抗体またはその断片がインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下で、接触させ、
c) b)のモノクローナル抗体またはその断片に結合する細胞を分離し、且つ場合によっては、
d) c)のモノクローナル抗体またはその断片に結合する細胞を上記抗体またはその断片から回収することによって、
場合によっては上記抗体またはその断片を含まない哺乳類間葉幹細胞の個体群を産生する
工程を含んでなる、方法。
【請求項6】
哺乳類軟骨細胞の個体群を単離する方法であって、
a) 軟骨細胞を含んでなる細胞懸濁液を提供し、
b) a)の細胞懸濁液をインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片と、上記モノクローナル抗体またはその断片がインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下で接触させ、
c) b)のモノクローナル抗体またはその断片に結合する細胞を分離し、且つ場合によっては、
d) c)のモノクローナル抗体またはその断片に結合する細胞を上記抗体またはその断片から回収することによって、
場合によっては上記抗体またはその断片を含まない軟骨細胞の個体群を産生する
工程を含んでなる、方法。
【請求項7】
哺乳類ES細胞の下位個体群を単離する方法であって、
a) ES細胞を含んでなる細胞懸濁液を提供し、
b) a)の細胞懸濁液をインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片と、上記モノクローナル抗体またはその断片がインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下で接触させ、
c) b)のモノクローナル抗体またはその断片に結合する細胞を分離し、且つ場合によっては
d) c)のモノクローナル抗体またはその断片に結合する細胞を上記抗体またはその断片から回収することによって、
場合によっては上記抗体またはその断片を含まない軟骨細胞の個体群を産生する
工程を含んでなる、方法。
【請求項8】
インテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片が請求項1に記載のハイブリドーマ細胞系によって産生されるインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片である、請求項5-7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
モノクローナル抗体またはその断片が固相に連結している、請求項5-8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
固相がビーズである、請求項5-9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
哺乳類細胞がヒト細胞である、請求項5-10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
哺乳類細胞がネズミ細胞である、5-11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項5および8-12のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる哺乳類間葉幹細胞の個体群。
【請求項14】
ヒト間葉幹細胞である、請求項13に記載の哺乳類幹細胞の個体群。
【請求項15】
ネズミ間葉幹細胞である、請求項13に記載の哺乳類幹細胞の個体群。
【請求項16】
請求項6および8-12のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる哺乳類軟骨細胞個体群。
【請求項17】
ヒト軟骨細胞である、請求項16に記載の哺乳類軟骨細胞の個体群。
【請求項18】
ネズミ軟骨細胞である、請求項16に記載の哺乳類軟骨細胞の個体群。
【請求項19】
請求項7および8-12のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、哺乳類ES細胞の下位個体群。
【請求項20】
ヒト軟骨細胞である、請求項19に記載の哺乳類軟骨細胞の個体群。
【請求項21】
ネズミ軟骨細胞である、請求項19に記載の哺乳類軟骨細胞の個体群。
【請求項22】
試料中の間葉幹細胞を検出する方法であって、
a) 間葉幹細胞を含んでなる試料の細胞懸濁液を提供し、
b) 上記試料細胞懸濁液をインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片と接触させ、
c) 間葉幹細胞上のインテグリンα10β1の細胞外ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下で、試料細胞懸濁液とモノクローナル抗体またはその断片をインキュベーションし、
d) 場合によっては第二の標識抗体またはその断片を試料に添加し、第二の標識抗体またはその断片はb)のモノクローナル抗体またはその断片に結合し、
e) b)の試料のインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合したモノクローナル抗体またはその断片を検出し、または場合によっては、モノクローナル抗体またはその断片に結合したc)の第二の標識抗体またはその断片を検出する
ことによって間葉幹細胞を検出する
工程を含んでなる方法。
【請求項23】
試料中の軟骨細胞を検出する方法であって、
a) 軟骨細胞を含んでなる試料細胞懸濁液を提供し、
b) 上記試料細胞懸濁液をインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片と接触させ、
c) 試料細胞懸濁液とモノクローナル抗体またはその断片を、上記モノクローナル抗体またはその断片が軟骨細胞上のインテグリンα10β1の細胞外ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下でインキュベーションし、
d) 場合によっては、第二の標識抗体またはその断片を試料に添加し、第二の標識抗体またはその断片がb)のモノクローナル抗体またはその断片に結合し、
e) b)の試料のインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合したモノクローナル抗体またはその断片を検出し、または場合によっては、モノクローナル抗体またはその断片に結合したc)の第二の標識抗体またはその断片を検出する
ことによって間葉幹細胞を検出する
工程を含んでなる方法。
【請求項24】
試料中のES細胞を検出する方法であって、
a) ES細胞を含んでなる試料細胞懸濁液を提供し、
b) 上記試料細胞懸濁液をインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片と接触させ、
c) 試料細胞懸濁液とモノクローナル抗体またはその断片を、上記モノクローナル抗体またはその断片がES細胞上のインテグリンα10β1の細胞外ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下でインキュベーションし、
d) 場合によっては、第二の標識抗体またはその断片を試料に添加し、第二の標識抗体またはその断片がb)のモノクローナル抗体またはその断片に結合し、
e) 試料b)のインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合したモノクローナル抗体またはその断片を検出し、または場合によっては、モノクローナル抗体またはその断片に結合した第二の標識抗体またはその断片を検出する
ことによってES細胞を検出する
工程を含んでなる、方法。
【請求項25】
細胞外マトリックス分子(ECM)への軟骨細胞の結合を遮断する方法であって、
a) インテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片を提供し、
b) 上記モノクローナル抗体またはその断片がインテグリンα10β1の細胞外ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下で、上記モノクローナル抗体を上記軟骨細胞と接触させ、
c) 上記b)の抗体-抗原複合体をインキュベーションすることによって、上記ECM分子への軟骨細胞の結合を遮断する
工程を含んでなる、方法。
【請求項26】
哺乳類間葉幹細胞、ES細胞または軟骨細胞上のα10β1のシグナル形成を調節する方法であって、
a) インテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片を提供し、
b) 上記幹細胞または軟骨細胞を、上記モノクローナル抗体またはその断片が上記細胞上のインテグリンα10β1の細胞外ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下で接触させ、
c) 上記抗体-抗原複合体をインキュベーションすることによって、
ヒト間葉幹細胞、ES細胞または軟骨細胞上のα10β1のシグナル形成を調節する
工程を含んでなる、方法。
【請求項27】
組織試料中または細胞表面上のインテグリンα10β1の発現を検出する方法であって、
a) 組織試料または細胞を提供し、
b) 組織試料または細胞中のインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片を提供し、
c) 上記モノクローナル抗体またはその断片がインテグリンα10β1の細胞外ドメインと抗体-抗原複合体を形成する条件下で組織試料または細胞とモノクローナル抗体またはその断片をインキュベーションし、
d) 場合によっては、第二の標識抗体またはその断片を試料に添加し、第二の標識抗体またはその断片がb)のモノクローナル抗体またはその断片に結合し、
e) 試料b)のインテグリンα10β1の細胞外ドメインに結合したモノクローナル抗体またはその断片を検出し、または場合によっては、モノクローナル抗体またはその断片に結合したc)の第二の標識抗体またはその断片を検出する
工程を含んでなる、方法。
【請求項28】
哺乳類におけるインテグリンα10β1の発現をイン・ビボで画像化する方法であって、
a) 哺乳類を提供し、
b) インテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片を提供し、且つ上記モノクローナル抗体またはその断片が場合によっては接合しており、
c) モノクローナル抗体またはその断片を哺乳類に投与して、その抗体またはその断片を上記哺乳類のインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合させ、
d) 場合によっては第二の標識抗体またはその断片を試料に添加し、第二の標識抗体またはその断片がc)のモノクローナル抗体またはその断片に結合し、
e) c)の上記細胞のインテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合したモノクローナル抗体またはその断片を検出し、または場合によっては、モノクローナル抗体またはその断片に結合したd)の第二の標識抗体またはその断片を検出し、
f) 検出した抗体またはその断片の画像を作り出すことによって、哺乳類の細胞上でイン・ビボでインテグリンα10β1の発現を画像化する
工程を含んでなる、方法。
【請求項29】
インテグリンα10β1の細胞外I-ドメインが血管におけるアテローム性動脈硬化症プラークの細胞上にある、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
インテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片が請求項1に記載の細胞系によって産生される、請求項22-29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
ドイチェ・ザムルング・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルテューレン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフツング(Deutsche Sammlung von Microorganismen und Zellkulturen GmbH)に受託番号DSM ACC2583で寄託されたハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体によって特異的に認識されるタンパク質に結合することができるモノクローナル抗体またはその断片を含んでなる、組成物。
【請求項32】
インテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片を含んでなる、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
インテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片が請求項2に記載の細胞系によって産生される、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
モノクローナル抗体またはその断片が更に検出可能な標識を含んでなる、請求項31-33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
ドイチェ・ザムルング・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルテューレン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフツング(Deutsche Sammlung von Microorganismen und Zellkulturen GmbH)に受託番号DSM ACC2583で寄託されたハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体によって特異的に認識されるタンパク質に結合することができるモノクローナル抗体またはその断片を含んでなる、投与ビヒクル。
【請求項36】
インテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片、薬学上許容可能なキャリヤー、および関節疾患またはアテローム性動脈硬化症に作用する薬学上許容可能な薬剤を含んでなる、請求項35に記載の投与ビヒクル。
【請求項37】
インテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片が請求項2に記載の細胞系によって産生される、請求項36に記載の投与ビヒクル。
【請求項38】
筋骨格疾患、関節炎またはアテローム性動脈硬化症の治療用の医薬組成物の調製を目的とする、インテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片の使用。
【請求項39】
インテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片が、請求項2に記載の細胞系によって産生される、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
筋骨格疾患、関節炎またはアテローム性動脈硬化症の遺伝子療法による治療用の医薬組成物の調製を目的とする、インテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片の使用。
【請求項41】
インテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片が請求項2に記載の細胞系によって産生される、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
医薬組成物が関節炎遺伝子療法による治療のためのアデノウイルスを含んでなる、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
ドイチェ・ザムルング・フォン・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルテューレン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフツング(Deutsche Sammlung von Microorganismen und Zellkulturen GmbH)に受託番号DSM ACC2583で寄託されたハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体によって特異的に認識されるタンパク質に結合することができるモノクローナル抗体またはその断片を含んでなる、キット。
【請求項44】
インテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体を含んでなる、請求項43に記載のキット。
【請求項45】
インテグリンα10β1の細胞外I-ドメインに結合するモノクローナル抗体またはその断片が請求項2に記載の細胞系によって産生される、請求項44に記載のキット。
【請求項46】
モノクローナル抗体またはその断片が固相に結合している、請求項43-45のいずれか一項に記載のキット。
【請求項47】
モノクローナル抗体またはその断片が検出可能な標識を含んでなる、請求項43-46のいずれか一項に記載のキット。
【請求項48】
請求項2に記載のハイブリドーマ細胞系と上記ハイブリドーマ細胞系の細胞培地を含んでなる、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2007−528841(P2007−528841A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508020(P2006−508020)
【出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000580
【国際公開番号】WO2004/089990
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(500460450)カルテラ、アクチボラグ (3)
【氏名又は名称原語表記】CARTELA AB
【Fターム(参考)】