インバータおよびそれを搭載した電力変換装置
【課題】高調波歪を低減した交流電力を出力するインバータを提供する。
【解決手段】制御部は、それぞれ電圧が異なる複数の直流電源からの電源電圧と、2つの電源電圧の電位差とからなる複数の階調電圧を用いて、擬似正弦波を発生させる。具体的に制御部は、正弦波電圧が2つの階調電圧となる時間の範囲内で、一方の階調電圧および他方の階調電圧をそれぞれローレベルおよびハイレベルとするPWM信号を生成して、擬似正弦波を発生させる。PWM信号の切替タイミングは、正弦波電圧が2つの階調電圧となる時間の範囲内に一方の階調電圧および他方の階調電圧をそれぞれローレベルおよびハイレベルとする三角波を生成し、その三角波と正弦波の交点を用いることで決定される。
【解決手段】制御部は、それぞれ電圧が異なる複数の直流電源からの電源電圧と、2つの電源電圧の電位差とからなる複数の階調電圧を用いて、擬似正弦波を発生させる。具体的に制御部は、正弦波電圧が2つの階調電圧となる時間の範囲内で、一方の階調電圧および他方の階調電圧をそれぞれローレベルおよびハイレベルとするPWM信号を生成して、擬似正弦波を発生させる。PWM信号の切替タイミングは、正弦波電圧が2つの階調電圧となる時間の範囲内に一方の階調電圧および他方の階調電圧をそれぞれローレベルおよびハイレベルとする三角波を生成し、その三角波と正弦波の交点を用いることで決定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力を交流電力に変換するインバータ、およびそれを搭載した電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システムが急速に普及している。太陽光発電システムでは、太陽電池モジュールで発電された電力を、効率よく利用するためのパワーコンディショナを設置する必要がある。パワーコンディショナには、直流電力を交流電力に変換するためのインバータが搭載される。太陽光発電システムでより多くの電力を得るには、太陽電池セルでのエネルギー変換効率の向上と、パワーコンディショナでの電力変換効率の向上が重要である。またパワーコンディショナを系統につなぐためには、高調波および高調波歪を可能な限り除去することのできるインバータが求められる。
【0003】
従来、高調波歪の除去を目的として、PWM(Pulse Width Modulation)を利用する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−61887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、PWM信号によりスイッチ手段をオンオフし、高調波成分を除去する技術を開示しているが、PWM信号の切替タイミングについては考慮がなされていないため、高調波成分を十分に取り除くことができない。本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、高調波歪を低減した交流電力を出力するインバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のインバータは、それぞれ電圧が異なる複数の直流電源からの直流電力を交流電力に変換するインバータであって、それぞれの直流電源からの電源電圧を少なくとも含む複数の階調電圧を用いて、擬似正弦波を発生させる制御部を備える。制御部は、正弦波電圧が2つの階調電圧となる時間の範囲内で、一方の階調電圧および他方の階調電圧をそれぞれローレベルおよびハイレベルとするPWM(パルス幅変調)信号を生成して、擬似正弦波を発生させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高調波歪を低減した交流電力を出力するインバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係るインバータの回路構成を示す図である。
【図2】電源電圧と電位差の関係を示す図である。
【図3】階調制御により生成される擬似正弦波を示す図である。
【図4】十三種類の階調電圧を生成する際の、スイッチのオンオフ状態を示す図である。
【図5】実施の形態のインバータの実装回路を示す図である。
【図6】図5に示すインバータにより七種類の階調電圧を生成する際の、スイッチのオンオフ状態を示す図である。
【図7】生成したい理想的な正弦波の1/4周期と、階調電圧の関係を示す図である。
【図8】ウィンドウを説明するための図である。
【図9】PWM制御を説明するための図である。
【図10】ウィンドウの変形例を示す図である。
【図11】シミュレーション結果を示す図である
【図12】太陽光発電システムのシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施の形態に係るインバータ200の回路構成を示す図である。図1には、説明の便宜上、直流電源部100および負荷300も描いているが、直流電源部100および負荷300は、インバータ200の構成要素には含まれない。インバータ200は、直流電源部100に含まれる複数の直流電源からの直流電力を交流電力に変換する。直流電源部100は、それぞれ電源電圧の異なる第1の直流電源V1、第2の直流電源V2および第3の直流電源V3とを含む。インバータ200は、複数のHブリッジ回路および制御部20を備える。制御部20は、それぞれの直流電源からの電源電圧と、2つの電源電圧の差分電圧(以下、「電位差」ともよぶ)を用いて、擬似正弦波を発生させる。
【0010】
複数のHブリッジ回路は、それぞれ電圧が異なる複数の直流電源ごとに設けられ、当該複数の直流電源のそれぞれから負荷300に順方向電圧および逆方向電圧を供給するための回路である。制御部20は、複数のHブリッジ回路を制御することにより擬似正弦波を発生させる。
【0011】
実施の形態では、三種類の直流電源(第1の直流電源V1、第2の直流電源V2、第3の直流電源V3)が設けられており、インバータ200には、三つのHブリッジ回路が設けられている。また実施の形態では、第1の直流電源V1の電源電圧E1>第2の直流電源V2の電源電圧E2>第3の直流電源V3の電源電圧E3の関係に設計されている。なお、別の実施の形態では、二種類の直流電源および二つのHブリッジ回路が設けられてもよく、また四種類以上の直流電源および四つ以上のHブリッジ回路が設けられてもよい。
【0012】
第1のHブリッジ回路は、第1の直流電源V1から負荷300に順方向電圧および逆方向電圧を供給するための回路であり、第1−1スイッチS11、第1−2スイッチS12、第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4を備える。第1−1スイッチS11および第1−2スイッチS12は、第1の直流電源V1の高電位側と負荷300との間に並列に設けられる。第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4は、第1の直流電源V1の低電位側と負荷300との間に並列に設けられる。
【0013】
より具体的には、第1−1スイッチS11は、第1の直流電源V1の高電位側端子と負荷300の高電位側端子とを結ぶ経路に挿入され、第1−2スイッチS12は、第1の直流電源V1の高電位側端子と負荷300の低電位側端子とを結ぶ経路に挿入される。第1共通スイッチS3は、第1の直流電源V1の低電位側端子と負荷300の高電位側端子とを結ぶ経路に挿入され、第2共通スイッチS4は、第1の直流電源V1の低電位側端子と負荷300の低電位側端子とを結ぶ経路に挿入される。
【0014】
第1のHブリッジ回路は、第1の直流電源V1から負荷300に順方向電圧を印加する場合、制御部20により第1−1スイッチS11および第2共通スイッチS4がオンに、第1−2スイッチS12および第1共通スイッチS3がオフに制御される。一方、第1の直流電源V1から負荷300に逆方向電圧を印加する場合、第1−1スイッチS11および第2共通スイッチS4がオフに、第1−2スイッチS12および第1共通スイッチS3がオンに制御される。
【0015】
第2のHブリッジ回路は、第2の直流電源V2から負荷300に順方向電圧および逆方向電圧を供給するための回路であり、第2−1スイッチS21、第2−2スイッチS22、第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4を備える。第2−1スイッチS21および第2−2スイッチS22は、第2の直流電源V2の高電位側と負荷300との間に並列に設けられる。第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4は、第2の直流電源V2の低電位側と負荷300との間に並列に設けられる。
【0016】
第3のHブリッジ回路は、第3の直流電源V3から負荷300に順方向電圧および逆方向電圧を供給するための回路であり、第3−1スイッチS31、第3−2スイッチS32、第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4を備える。第3−1スイッチS31および第3−2スイッチS32は、第3の直流電源V3の高電位側と負荷300との間に並列に設けられる。第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4は、第3の直流電源V3の低電位側と負荷300との間に並列に設けられる。
【0017】
このように、本実施の形態では、第1のHブリッジ回路を構成する第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4と、第2のHブリッジ回路を構成する第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4と、第3のHブリッジ回路を構成する第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4とが共通化されている。すなわち、第1のHブリッジ回路を形成する二本の低電位側経路と、第2のHブリッジ回路を形成する二本の低電位側経路と、第3のHブリッジ回路を形成する二本の低電位側経路と、が共通化されている。
【0018】
本実施の形態では第1の直流電源V1の低電位側電圧、第2の直流電源V2の低電位側電圧および第3の直流電源V3の低電位側電圧を所定の固定電圧(たとえば、グラウンド電圧)で共通にすることにより、両者の低電位側の配線を共通化することができる。これにより、インバータ200に含まれるスイッチの数を減らすことができる。
【0019】
第2のHブリッジ回路に含まれる第2−1スイッチS21、第2−2スイッチS22、第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4の詳細な接続関係およびオンオフ動作は、第1のHブリッジ回路に含まれる第1−1スイッチS11、第1−2スイッチS12、第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4と同様であるため、その説明を省略する。また、第3のHブリッジ回路に含まれる第3−1スイッチS31、第3−2スイッチS32、第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4の詳細な接続関係およびオンオフ動作についても、第1のHブリッジ回路に含まれる第1−1スイッチS11、第1−2スイッチS12、第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4と同様であるため、その説明を省略する。
【0020】
第1−1スイッチS11、第1−2スイッチS12、第2−1スイッチS21、第2−2スイッチS22、第3−1スイッチS31、第3−2スイッチS32、第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4には、それぞれパワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、GaNトランジスタ、SiC−FETなどを採用することができる。
【0021】
本実施の形態において、制御部20は、第1のHブリッジ回路、第2のHブリッジ回路および第3のHブリッジ回路を制御することにより擬似正弦波を発生させる。より具体的には、第1のHブリッジ回路、第2のHブリッジ回路および第3のHブリッジ回路を制御することにより、負荷300に供給される電圧を時分割に切り換える。
【0022】
三つの直流電源および三つのHブリッジ回路を用いるインバータ200では、正負合わせて六種類の階調電圧(E1,E2,E3,−E3,−E2,−E1)を生成することができる。負荷300に電圧を供給しない状態のゼロ電圧を加えると、七種類の階調電圧を生成することができる。本実施の形態では、直流電源およびHブリッジ回路を増やさずに、さらに別の六種類の階調電圧を生成する。したがって、合計十三種類の階調電圧を生成する。
【0023】
以下、別の六種類の階調電圧の生成方法について説明する。制御部20は、第1のHブリッジ回路を形成する二本の高電位側経路および第2のHブリッジ回路を形成する二本の高電位側経路を有効とし、ならびに第1のHブリッジ回路を形成する二本の低電位側経路、第2のHブリッジ回路を形成する二本の低電位側経路および第3のHブリッジ回路のすべての経路を無効とすることにより、第1及び2のHブリッジ回路を形成する。すなわち、第1及び2のHブリッジ回路は、第1のHブリッジ回路の高電位側の半分と、第2のHブリッジ回路の高電位側の半分とを組み合わせた回路である。
【0024】
当該第1及び2のHブリッジ回路は、第1の直流電源V1と第2の直流電源V2との電位差を、負荷300に対して順方向および逆方向に供給する回路であり、第1−1スイッチS11、第1−2スイッチS12、第2−1スイッチS21および第2−2スイッチS22を含む。
【0025】
第1及び2のHブリッジ回路は、第1の直流電源V1と第2の直流電源V2との電位差(E1−E2)を、負荷300に対して順方向に供給する場合、制御部20により第1−1スイッチS11および第2−2スイッチS22がオンに、第1−2スイッチS12、第2−1スイッチS21、第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4がオフに制御される。一方、第1の直流電源V1と第2の直流電源V2との電位差(E1−E2)を、負荷300に対して逆方向に供給する場合、第1−2スイッチS12および第2−1スイッチS21がオンに、第1−1スイッチS11、第2−2スイッチS22、第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4がオフに制御される。
【0026】
また、制御部20は、第1のHブリッジ回路を形成する二本の高電位側経路および第3のHブリッジ回路を形成する二本の高電位側経路を有効とし、ならびに第1のHブリッジ回路を形成する二本の低電位側経路、第3のHブリッジ回路を形成する二本の低電位側経路および第2のHブリッジ回路のすべての経路を無効とすることにより、第1及び3のHブリッジ回路を形成する。すなわち、第1及び3のHブリッジ回路は、第1のHブリッジ回路の高電位側の半分と、第3のHブリッジ回路の高電位側の半分とを組み合わせた回路である。
【0027】
当該第1及び3のHブリッジ回路は、第1の直流電源V1と第3の直流電源V3との電位差を、負荷300に対して順方向および逆方向に供給する回路であり、第1−1スイッチS11、第1−2スイッチS12、第3−1スイッチS31および第3−2スイッチS32を含む。
【0028】
また、制御部20は、第2のHブリッジ回路を形成する二本の高電位側経路および第3のHブリッジ回路を形成する二本の高電位側経路を有効とし、ならびに第2のHブリッジ回路を形成する二本の低電位側経路、第3のHブリッジ回路を形成する二本の低電位側経路および第1のHブリッジ回路のすべての経路を無効とすることにより、第2及び3のHブリッジ回路を形成する。すなわち、第2及び3のHブリッジ回路は、第2のHブリッジ回路の高電位側の半分と、第3のHブリッジ回路の高電位側の半分とを組み合わせた回路である。
【0029】
当該第2及び3のHブリッジ回路は、第2の直流電源V2と第3の直流電源V3との電位差を、負荷300に対して順方向および逆方向に供給する回路であり、第2−1スイッチS21、第2−2スイッチS22、第3−1スイッチS31および第3−2スイッチS32を含む。
【0030】
第1及び3のHブリッジ回路に含まれる第1−1スイッチS11、第1−2スイッチS12、第3−1スイッチS31および第3−2スイッチS32のオンオフ動作と、第2及び3のHブリッジ回路に含まれる第2−1スイッチS21、第2−2スイッチS22、第3−1スイッチS31および第3−2スイッチS32のオンオフ動作は、それぞれ、第1及び2のHブリッジ回路に含まれる第1−1スイッチS11、第1−2スイッチS12、第2−1スイッチS21および第2−2スイッチS22のオンオフ動作と同様であるため、その説明を省略する。
【0031】
図2は、第1の直流電源V1の電圧E1、第2の直流電源V2の電圧E2、第3の直流電源V3の電圧E3、第1の直流電源V1の電圧E1と第2の直流電源V2の電圧E2との第1電位差(E1−E2)、第1の直流電源V1の電圧E1と第3の直流電源V3の電圧E3との第2電位差(E1−E3)、および第2の直流電源V2の電圧E2と第3の直流電源V3の電圧E3との第3電位差(E2−E3)の関係を示す図である。
【0032】
図2では、第1の直流電源V1の電圧E1と、第2の直流電源V2の電圧E2と、第3の直流電源V3の電圧E3との比を、7:5:4に設定する例を描いている。その場合、第1電位差(E1−E2)と、第2電位差(E1−E3)と、第3電位差(E2−E3)との比は、2:3:1となる。全体では、第1の直流電源V1の電圧E1と、第2の直流電源V2の電圧E2と、第3の直流電源V3の電圧E3と、第2電位差(E1−E3)と、第1電位差(E1−E2)と、第3電位差(E2−E3)との比が7:5:4:3:2:1となる。
【0033】
図3は、階調制御のみにより生成される擬似正弦波を示す図である。上述したように、実施の形態では十三種類の擬似電圧を生成することができる。制御部20は、ゼロ電圧、第3電位差(E2−E3)(正)、第1電位差(E1−E2)(正)、第2電位差(E1−E3)(正)、第3の直流電源V3の電圧E3(正)、第2の直流電源V2の電圧E2(正)、第1の直流電源V1の電圧E1(正)、第2の直流電源V2の電圧E2(正)、第3の直流電源V3の電圧E3(正)、第2電位差(E1−E3)(正)、第1電位差(E1−E2)(正)、第3電位差(E2−E3)(正)、ゼロ電圧、第3電位差(E2−E3)(負)、第1電位差(E1−E2)(負)、第2電位差(E1−E3)(負)、第3の直流電源V3の電圧E3(負)、第2の直流電源V2の電圧E2(負)、第1の直流電源V1の電圧E1(負)、第2の直流電源V2の電圧E2(負)、第3の直流電源V3の電圧E3(負)、第2電位差(E1−E3)(負)、第1電位差(E1−E2)(負)、第3電位差(E2−E3)(負)、ゼロ電圧の順番に、負荷300に供給する電圧を切り換えることにより、擬似正弦波を生成する。このように階調電圧を用いることで、擬似正弦波を生成できる。なお図3に示すように、階調制御のみにより生成される擬似正弦波は、高調波成分を含んでいるため、本実施の形態では、階調制御と、PWM(Pulse Width Modulation)制御とを組み合わせることで、高調波成分を効果的に除去した擬似正弦波を生成することを目的とする。
【0034】
図4は、十三種類の階調電圧を生成する際の、スイッチのオンオフ状態を示す図である。階調レベル0はゼロ電圧、階調レベル1は第3電位差(E2−E3)(正)、階調レベル2は第1電位差(E1−E2)(正)、階調レベル3は第2電位差(E1−E3)(正)、階調レベル4は第3の直流電源V3の電圧E3(正)、階調レベル5は第2の直流電源V2の電圧E2(正)、階調レベル6は第1の直流電源V1の電圧E1(正)、階調レベル−1は第3電位差(E2−E3)(負)、階調レベル−2は第1電位差(E1−E2)(負)、階調レベル−3は第2電位差(E1−E3)(負)、階調レベル−4は第3の直流電源V3の電圧E3(負)、階調レベル−5は第2の直流電源V2の電圧E2(負)、階調レベル−6は第1の直流電源V1の電圧E1(負)に、それぞれ対応する。制御部20は、図4に示すように、第1−1スイッチS11、第1−2スイッチS12、第1共通スイッチS3、第2共通スイッチS4、第2−1スイッチS21、第2−2スイッチS22、第3−1スイッチS31および第3−2スイッチS32をオンオフ制御する。
【0035】
図5は、実施の形態のインバータ200の実装回路を示す。第1の直流電源V1の電源電圧E1を96V、第2の直流電源V2の電源電圧E2を82V、第3の直流電源V3の電源電圧E3を32Vに設定する。図1と比較すると、図5において、第1−1スイッチS11はスイッチSW0、第1−2スイッチS12はスイッチSW2、第1共通スイッチS3はスイッチSW1、第2共通スイッチS4はスイッチSW3、第2−1スイッチS21はスイッチSW4、SW5、第2−2スイッチS22はスイッチSW6、SW7、第3−1スイッチS31はスイッチSW8、SW9、第3−2スイッチS32はスイッチSWS10、SW11に、それぞれ対応する。
【0036】
図6は、図5に示すインバータ200により七種類の階調電圧を生成する際の、スイッチのオンオフ状態を示す図である。階調レベル0はゼロ電圧、階調レベル1は電位差(E1−E2)(正)、階調レベル2は第3の直流電源V3の電圧E3(正)、階調レベル3は電位差(E2−E3)(正)、階調レベル4は電位差(E1−E3)(正)、階調レベル5は第2の直流電源V2の電圧E2(正)、階調レベル6は第1の直流電源V1の電圧E1(正)に、それぞれ対応する。制御部20は、七種類の階調電圧を生成する際、図6に示すように、スイッチSW0〜SW11をオンオフ制御する。
【0037】
以下では、インバータ200が、複数の直流電源からの電源電圧と、2つの電源電圧の電位差とからなる複数の階調電圧を生成できることを利用して、高調波成分を低減した滑らかな擬似正弦波を生成する手法を説明する。
【0038】
図7は、生成したい理想的な正弦波の1/4周期と、階調電圧の関係を示す。縦軸yは電圧であり、横軸xは時間である。正弦波の振幅を最大の階調電圧(96V)とし、正弦波の周期をTとすると、正弦波は、y=96×sin(2π×x/T)で表現される。各階調電圧をy0〜y6で表現すると、y0=0V、y1=14V、y2=32V、y3=50V、y4=64V、y5=82V、y6=96Vとなる。このとき、各階調電圧となる時間は、x0=0、x1=arcsin(14/96)×T/2π、x2=arcsin(32/96)×T/2π、x3=arcsin(50/96)×T/2π、x4=arcsin(64/96)×T/2π、x5=arcsin(82/96)×T/2π、x6=arcsin(96/96)×T/2πで表現される。
【0039】
本実施の形態において、制御部20は、正弦波電圧が2つの階調電圧となる時間の範囲内で、一方の階調電圧および他方の階調電圧をそれぞれローレベルおよびハイレベルとするPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成して、擬似正弦波を発生させる。図7を参照して、交流出力(正弦波出力)の1/4周期の間において、正弦波電圧が階調電圧となる時間は、x0〜x6であり、制御部20は、任意の2つの時間の範囲内で、一方の階調電圧をローレベルとし、他方の階調電圧をハイレベルとするPWM信号を生成する。なお制御部20は、隣り合う階調電圧となる時間の範囲内で、PWM信号を生成して、擬似正弦波を発生させることが好ましい。具体的に、隣り合う階調電圧となる時間の組み合わせは、x0とx1、x1とx2、x2とx3、x3とx4、x4とx5、x5とx6である。
【0040】
図8は、制御部20によるPWM制御を説明するための図である。図8では、隣り合う階調電圧と、正弦波電圧がそれぞれの階調電圧となる時間とを枠線で結んでおり、以下では、説明の便宜上、枠線で囲まれた領域をウィンドウと表現する。図示されるように、正弦波の1/4周期には、7つの階調電圧(y0〜y6)が存在するため、6つのウィンドウ30a〜30fが形成される。制御部20は、各ウィンドウ30において、PWM信号を生成して、擬似正弦波を発生させる。
【0041】
各ウィンドウ30の枠線において、下線は、PWM信号のローレベル、上線はPWM信号のハイレベルを表現し、また左線は、そのウィンドウ30におけるPWM制御の開始時間、右線はPWM制御の終了時間を表現する。PWM信号のレベルの切替タイミングは、ウィンドウ30において一方の階調電圧および他方の階調電圧をそれぞれローレベルおよびハイレベルとする三角波を生成し、その三角波と正弦波の交点を用いて決定される。PWM信号の切替タイミングは、動的に決定されてもよいが、予め決定されてテーブルに格納されていてもよい。
【0042】
図9(a)は、ウィンドウ30内に仮想的に三角波を生成した状態を示す。本実施の形態では、三角波と正弦波が交差する時間を抽出し、その時間をPWM信号の電圧切替タイミングとして決定する。図9(a)には、ウィンドウ30eにおいて三角波を生成した状態が示されているが、他のウィンドウ30においても同様に三角波と正弦波が交差する時間を抽出し、PWM信号の電圧切替タイミングとして設定される。
【0043】
図9(b)は、ウィンドウ30eにおけるPWM制御によるローレベルとハイレベルの出力電圧を示す。この出力電圧は、ウィンドウ30eの時間範囲における擬似正弦波を構成する。図9(a)を参照して、制御部20は、正弦波電圧よりも三角波電圧が高い場合に、ローレベルの階調電圧を出力し、正弦波電圧の方が三角波電圧よりも高い場合に、ハイレベルの階調電圧を出力するように、PWM電圧を生成する。このように制御部20は、ウィンドウ30における一方の階調電圧をローレベル、他方の階調電圧をハイレベルとする三角波を生成したときに、三角波と正弦波の交点でPWM制御の電圧切替を行うことで、ウィンドウ30の時間範囲内の平均電圧を、正弦波の平均電圧と同じにすることが可能となる。
【0044】
なお、図9(a)および図9(b)においては、ウィンドウ30eについて説明したが、他のウィンドウ30についても同様にPWM制御における電圧切替のタイミングを決定する。以上のように電圧の階調制御とPWM制御を組み合わせることで、制御部20は、正弦波の振幅を最大の階調電圧で出力するとともに、高調波歪を低減した擬似正弦波を出力することが可能となる。
【0045】
また、図9(a)においては、ウィンドウ30において一方の階調電圧および他方の階調電圧をそれぞれローレベルおよびハイレベルとする三角波を生成したが、2つの階調電圧の中間電圧を中心に振幅する三角波を生成してもよい。この場合であっても、生成した三角波と正弦波の交点を用いて、図9(b)に関して説明したように、PWM信号のレベル切替タイミングが決定される。
【0046】
図10は、生成するウィンドウの変形例を示す。図8と比較すると、図10では、ウィンドウ30a、30bをまとめてウィンドウ30gとし、ウィンドウ30c、30dをまとめてウィンドウ30hとしている。ウィンドウ30の時間幅をある程度長くすることで、PWM制御を簡略化でき、スイッチングロスを低減しつつ、安定したPWM制御を実現できるようになる。図8および図10のいずれの場合であっても、交流出力の1/4周期において、複数のウィンドウ30内でPWM制御を行うことにより、高調波成分を大幅に低減することが可能となる。なお、PWM制御の各ウィンドウ30の電圧切替パターンは、予め作成されて、テーブルに保持されてもよく、この場合、制御部20は、テーブルの電圧パターンを参照して、各SWのオンオフ制御を行う。なお、図8および図10は、交流出力の0〜1/4周期を示しているが、1/4周期〜1周期の間についても同様に各ウィンドウの電圧切替パターンが導出され、テーブルに保持される。
【0047】
図11は、階調制御とPWM制御とを組み合わせたときのシミュレーション結果を示す図である。図中、点線は正弦波を示し、実線はインバータ200が生成した擬似正弦波を示す。このシミュレーションによると、信号に占める39次の高調波歪が1.52%、変換効率が98.1%という結果を得ることができ、擬似正弦波における高調波成分が低減されていることが確認された。
【0048】
図12は、実施の形態に係るインバータ200を搭載したパワーコンディショナ210を含む太陽光発電システム500のシステム構成図である。太陽光発電システム500は、太陽電池モジュール100a、接続箱100bおよびパワーコンディショナ210を備える。パワーコンディショナ210は直流電力を交流電力に変換する電力変換装置として機能する。
【0049】
太陽電池モジュール100aは、複数の太陽光パネルを含み、建物の屋根などに設置される。太陽電池モジュール100aは、太陽光を直流電力に変換して接続箱100bに出力する。
【0050】
接続箱100bは、太陽電池モジュール100aに含まれる複数の太陽光パネルからの配線をまとめる。接続箱100bは、実施の形態に係るインバータ200で使用される直流電源の数に応じた複数の直流電圧を、パワーコンディショナ210に供給する。複数の太陽光パネルから当該複数の直流電圧を直接取得できる場合、そのままパワーコンディショナ210に供給することができる。複数の太陽光パネルから当該複数の直流電圧のすべてを取得できない場合、昇圧回路を用いて直接取得できない直流電圧を生成する。
【0051】
パワーコンディショナ210は、実施の形態に係るインバータ200、およびフィルタ205を備える。インバータ200は、接続箱100bから供給される複数の直流電圧を用いて、擬似正弦波を生成する。フィルタ205は、インバータ200により生成された擬似正弦波を平滑化する。
【0052】
パワーコンディショナ210により生成された交流電力は、負荷300に供給される。たとえば、家庭用の太陽光発電システム500では、分電盤を通じて、家庭内の電気機器に供給されるか、送電線網に供給される。
【0053】
以上説明したように、実施の形態に係るインバータ200を、太陽光発電システム500用のパワーコンディショナ210に適用することにより、エネルギー変換効率の高い太陽光発電システム500を構築することができる。
【0054】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0055】
実施の形態では、インバータ200が、複数の直流電源からの電源電圧と、2つの電源電圧の電位差とからなる複数の階調電圧を用いて、擬似正弦波を生成した。別の実施の形態では、インバータ200が、複数の直流電源からの電源電圧のみからなる複数の階調電圧を用いて擬似正弦波を生成してもよく、また、2つの電源電圧の和電圧を生成できる場合には、複数の直流電源からの電源電圧と、2つの電源電圧の和電圧を用いて擬似正弦波を生成してもよい。またインバータ200は、複数の電源電圧、2つの電源電圧の差電圧、および2つの電源電圧の和電圧を含む複数の階調電圧を用いて、擬似正弦波を生成してもよい。
【0056】
実施の形態に係るインバータ200を太陽光発電システム500用のパワーコンディショナ210に適用する例を説明したが、それに限定されることになく、瞬低保護装置、無停電電源装置(Uninterruptible Power Supply:UPS)、その他の装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
100 直流電源部、 200 インバータ、 V1 第1の直流電源、 V2 第2の直流電源、 V3 第3の直流電源、 S11 第1−1スイッチ、 S12 第1−2スイッチ、 S21 第2−1スイッチ、 S22 第2−2スイッチ、 S31 第3−1スイッチ、 S32 第3−2スイッチ、 S3 第1共通スイッチ、 S4 第2共通スイッチ、 20 制御部、 100a 太陽電池モジュール、 100b 接続箱、 205 フィルタ、 210 パワーコンディショナ、 300 負荷、 500 太陽光発電システム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力を交流電力に変換するインバータ、およびそれを搭載した電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システムが急速に普及している。太陽光発電システムでは、太陽電池モジュールで発電された電力を、効率よく利用するためのパワーコンディショナを設置する必要がある。パワーコンディショナには、直流電力を交流電力に変換するためのインバータが搭載される。太陽光発電システムでより多くの電力を得るには、太陽電池セルでのエネルギー変換効率の向上と、パワーコンディショナでの電力変換効率の向上が重要である。またパワーコンディショナを系統につなぐためには、高調波および高調波歪を可能な限り除去することのできるインバータが求められる。
【0003】
従来、高調波歪の除去を目的として、PWM(Pulse Width Modulation)を利用する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−61887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、PWM信号によりスイッチ手段をオンオフし、高調波成分を除去する技術を開示しているが、PWM信号の切替タイミングについては考慮がなされていないため、高調波成分を十分に取り除くことができない。本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、高調波歪を低減した交流電力を出力するインバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のインバータは、それぞれ電圧が異なる複数の直流電源からの直流電力を交流電力に変換するインバータであって、それぞれの直流電源からの電源電圧を少なくとも含む複数の階調電圧を用いて、擬似正弦波を発生させる制御部を備える。制御部は、正弦波電圧が2つの階調電圧となる時間の範囲内で、一方の階調電圧および他方の階調電圧をそれぞれローレベルおよびハイレベルとするPWM(パルス幅変調)信号を生成して、擬似正弦波を発生させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高調波歪を低減した交流電力を出力するインバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係るインバータの回路構成を示す図である。
【図2】電源電圧と電位差の関係を示す図である。
【図3】階調制御により生成される擬似正弦波を示す図である。
【図4】十三種類の階調電圧を生成する際の、スイッチのオンオフ状態を示す図である。
【図5】実施の形態のインバータの実装回路を示す図である。
【図6】図5に示すインバータにより七種類の階調電圧を生成する際の、スイッチのオンオフ状態を示す図である。
【図7】生成したい理想的な正弦波の1/4周期と、階調電圧の関係を示す図である。
【図8】ウィンドウを説明するための図である。
【図9】PWM制御を説明するための図である。
【図10】ウィンドウの変形例を示す図である。
【図11】シミュレーション結果を示す図である
【図12】太陽光発電システムのシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施の形態に係るインバータ200の回路構成を示す図である。図1には、説明の便宜上、直流電源部100および負荷300も描いているが、直流電源部100および負荷300は、インバータ200の構成要素には含まれない。インバータ200は、直流電源部100に含まれる複数の直流電源からの直流電力を交流電力に変換する。直流電源部100は、それぞれ電源電圧の異なる第1の直流電源V1、第2の直流電源V2および第3の直流電源V3とを含む。インバータ200は、複数のHブリッジ回路および制御部20を備える。制御部20は、それぞれの直流電源からの電源電圧と、2つの電源電圧の差分電圧(以下、「電位差」ともよぶ)を用いて、擬似正弦波を発生させる。
【0010】
複数のHブリッジ回路は、それぞれ電圧が異なる複数の直流電源ごとに設けられ、当該複数の直流電源のそれぞれから負荷300に順方向電圧および逆方向電圧を供給するための回路である。制御部20は、複数のHブリッジ回路を制御することにより擬似正弦波を発生させる。
【0011】
実施の形態では、三種類の直流電源(第1の直流電源V1、第2の直流電源V2、第3の直流電源V3)が設けられており、インバータ200には、三つのHブリッジ回路が設けられている。また実施の形態では、第1の直流電源V1の電源電圧E1>第2の直流電源V2の電源電圧E2>第3の直流電源V3の電源電圧E3の関係に設計されている。なお、別の実施の形態では、二種類の直流電源および二つのHブリッジ回路が設けられてもよく、また四種類以上の直流電源および四つ以上のHブリッジ回路が設けられてもよい。
【0012】
第1のHブリッジ回路は、第1の直流電源V1から負荷300に順方向電圧および逆方向電圧を供給するための回路であり、第1−1スイッチS11、第1−2スイッチS12、第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4を備える。第1−1スイッチS11および第1−2スイッチS12は、第1の直流電源V1の高電位側と負荷300との間に並列に設けられる。第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4は、第1の直流電源V1の低電位側と負荷300との間に並列に設けられる。
【0013】
より具体的には、第1−1スイッチS11は、第1の直流電源V1の高電位側端子と負荷300の高電位側端子とを結ぶ経路に挿入され、第1−2スイッチS12は、第1の直流電源V1の高電位側端子と負荷300の低電位側端子とを結ぶ経路に挿入される。第1共通スイッチS3は、第1の直流電源V1の低電位側端子と負荷300の高電位側端子とを結ぶ経路に挿入され、第2共通スイッチS4は、第1の直流電源V1の低電位側端子と負荷300の低電位側端子とを結ぶ経路に挿入される。
【0014】
第1のHブリッジ回路は、第1の直流電源V1から負荷300に順方向電圧を印加する場合、制御部20により第1−1スイッチS11および第2共通スイッチS4がオンに、第1−2スイッチS12および第1共通スイッチS3がオフに制御される。一方、第1の直流電源V1から負荷300に逆方向電圧を印加する場合、第1−1スイッチS11および第2共通スイッチS4がオフに、第1−2スイッチS12および第1共通スイッチS3がオンに制御される。
【0015】
第2のHブリッジ回路は、第2の直流電源V2から負荷300に順方向電圧および逆方向電圧を供給するための回路であり、第2−1スイッチS21、第2−2スイッチS22、第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4を備える。第2−1スイッチS21および第2−2スイッチS22は、第2の直流電源V2の高電位側と負荷300との間に並列に設けられる。第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4は、第2の直流電源V2の低電位側と負荷300との間に並列に設けられる。
【0016】
第3のHブリッジ回路は、第3の直流電源V3から負荷300に順方向電圧および逆方向電圧を供給するための回路であり、第3−1スイッチS31、第3−2スイッチS32、第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4を備える。第3−1スイッチS31および第3−2スイッチS32は、第3の直流電源V3の高電位側と負荷300との間に並列に設けられる。第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4は、第3の直流電源V3の低電位側と負荷300との間に並列に設けられる。
【0017】
このように、本実施の形態では、第1のHブリッジ回路を構成する第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4と、第2のHブリッジ回路を構成する第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4と、第3のHブリッジ回路を構成する第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4とが共通化されている。すなわち、第1のHブリッジ回路を形成する二本の低電位側経路と、第2のHブリッジ回路を形成する二本の低電位側経路と、第3のHブリッジ回路を形成する二本の低電位側経路と、が共通化されている。
【0018】
本実施の形態では第1の直流電源V1の低電位側電圧、第2の直流電源V2の低電位側電圧および第3の直流電源V3の低電位側電圧を所定の固定電圧(たとえば、グラウンド電圧)で共通にすることにより、両者の低電位側の配線を共通化することができる。これにより、インバータ200に含まれるスイッチの数を減らすことができる。
【0019】
第2のHブリッジ回路に含まれる第2−1スイッチS21、第2−2スイッチS22、第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4の詳細な接続関係およびオンオフ動作は、第1のHブリッジ回路に含まれる第1−1スイッチS11、第1−2スイッチS12、第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4と同様であるため、その説明を省略する。また、第3のHブリッジ回路に含まれる第3−1スイッチS31、第3−2スイッチS32、第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4の詳細な接続関係およびオンオフ動作についても、第1のHブリッジ回路に含まれる第1−1スイッチS11、第1−2スイッチS12、第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4と同様であるため、その説明を省略する。
【0020】
第1−1スイッチS11、第1−2スイッチS12、第2−1スイッチS21、第2−2スイッチS22、第3−1スイッチS31、第3−2スイッチS32、第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4には、それぞれパワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、GaNトランジスタ、SiC−FETなどを採用することができる。
【0021】
本実施の形態において、制御部20は、第1のHブリッジ回路、第2のHブリッジ回路および第3のHブリッジ回路を制御することにより擬似正弦波を発生させる。より具体的には、第1のHブリッジ回路、第2のHブリッジ回路および第3のHブリッジ回路を制御することにより、負荷300に供給される電圧を時分割に切り換える。
【0022】
三つの直流電源および三つのHブリッジ回路を用いるインバータ200では、正負合わせて六種類の階調電圧(E1,E2,E3,−E3,−E2,−E1)を生成することができる。負荷300に電圧を供給しない状態のゼロ電圧を加えると、七種類の階調電圧を生成することができる。本実施の形態では、直流電源およびHブリッジ回路を増やさずに、さらに別の六種類の階調電圧を生成する。したがって、合計十三種類の階調電圧を生成する。
【0023】
以下、別の六種類の階調電圧の生成方法について説明する。制御部20は、第1のHブリッジ回路を形成する二本の高電位側経路および第2のHブリッジ回路を形成する二本の高電位側経路を有効とし、ならびに第1のHブリッジ回路を形成する二本の低電位側経路、第2のHブリッジ回路を形成する二本の低電位側経路および第3のHブリッジ回路のすべての経路を無効とすることにより、第1及び2のHブリッジ回路を形成する。すなわち、第1及び2のHブリッジ回路は、第1のHブリッジ回路の高電位側の半分と、第2のHブリッジ回路の高電位側の半分とを組み合わせた回路である。
【0024】
当該第1及び2のHブリッジ回路は、第1の直流電源V1と第2の直流電源V2との電位差を、負荷300に対して順方向および逆方向に供給する回路であり、第1−1スイッチS11、第1−2スイッチS12、第2−1スイッチS21および第2−2スイッチS22を含む。
【0025】
第1及び2のHブリッジ回路は、第1の直流電源V1と第2の直流電源V2との電位差(E1−E2)を、負荷300に対して順方向に供給する場合、制御部20により第1−1スイッチS11および第2−2スイッチS22がオンに、第1−2スイッチS12、第2−1スイッチS21、第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4がオフに制御される。一方、第1の直流電源V1と第2の直流電源V2との電位差(E1−E2)を、負荷300に対して逆方向に供給する場合、第1−2スイッチS12および第2−1スイッチS21がオンに、第1−1スイッチS11、第2−2スイッチS22、第1共通スイッチS3および第2共通スイッチS4がオフに制御される。
【0026】
また、制御部20は、第1のHブリッジ回路を形成する二本の高電位側経路および第3のHブリッジ回路を形成する二本の高電位側経路を有効とし、ならびに第1のHブリッジ回路を形成する二本の低電位側経路、第3のHブリッジ回路を形成する二本の低電位側経路および第2のHブリッジ回路のすべての経路を無効とすることにより、第1及び3のHブリッジ回路を形成する。すなわち、第1及び3のHブリッジ回路は、第1のHブリッジ回路の高電位側の半分と、第3のHブリッジ回路の高電位側の半分とを組み合わせた回路である。
【0027】
当該第1及び3のHブリッジ回路は、第1の直流電源V1と第3の直流電源V3との電位差を、負荷300に対して順方向および逆方向に供給する回路であり、第1−1スイッチS11、第1−2スイッチS12、第3−1スイッチS31および第3−2スイッチS32を含む。
【0028】
また、制御部20は、第2のHブリッジ回路を形成する二本の高電位側経路および第3のHブリッジ回路を形成する二本の高電位側経路を有効とし、ならびに第2のHブリッジ回路を形成する二本の低電位側経路、第3のHブリッジ回路を形成する二本の低電位側経路および第1のHブリッジ回路のすべての経路を無効とすることにより、第2及び3のHブリッジ回路を形成する。すなわち、第2及び3のHブリッジ回路は、第2のHブリッジ回路の高電位側の半分と、第3のHブリッジ回路の高電位側の半分とを組み合わせた回路である。
【0029】
当該第2及び3のHブリッジ回路は、第2の直流電源V2と第3の直流電源V3との電位差を、負荷300に対して順方向および逆方向に供給する回路であり、第2−1スイッチS21、第2−2スイッチS22、第3−1スイッチS31および第3−2スイッチS32を含む。
【0030】
第1及び3のHブリッジ回路に含まれる第1−1スイッチS11、第1−2スイッチS12、第3−1スイッチS31および第3−2スイッチS32のオンオフ動作と、第2及び3のHブリッジ回路に含まれる第2−1スイッチS21、第2−2スイッチS22、第3−1スイッチS31および第3−2スイッチS32のオンオフ動作は、それぞれ、第1及び2のHブリッジ回路に含まれる第1−1スイッチS11、第1−2スイッチS12、第2−1スイッチS21および第2−2スイッチS22のオンオフ動作と同様であるため、その説明を省略する。
【0031】
図2は、第1の直流電源V1の電圧E1、第2の直流電源V2の電圧E2、第3の直流電源V3の電圧E3、第1の直流電源V1の電圧E1と第2の直流電源V2の電圧E2との第1電位差(E1−E2)、第1の直流電源V1の電圧E1と第3の直流電源V3の電圧E3との第2電位差(E1−E3)、および第2の直流電源V2の電圧E2と第3の直流電源V3の電圧E3との第3電位差(E2−E3)の関係を示す図である。
【0032】
図2では、第1の直流電源V1の電圧E1と、第2の直流電源V2の電圧E2と、第3の直流電源V3の電圧E3との比を、7:5:4に設定する例を描いている。その場合、第1電位差(E1−E2)と、第2電位差(E1−E3)と、第3電位差(E2−E3)との比は、2:3:1となる。全体では、第1の直流電源V1の電圧E1と、第2の直流電源V2の電圧E2と、第3の直流電源V3の電圧E3と、第2電位差(E1−E3)と、第1電位差(E1−E2)と、第3電位差(E2−E3)との比が7:5:4:3:2:1となる。
【0033】
図3は、階調制御のみにより生成される擬似正弦波を示す図である。上述したように、実施の形態では十三種類の擬似電圧を生成することができる。制御部20は、ゼロ電圧、第3電位差(E2−E3)(正)、第1電位差(E1−E2)(正)、第2電位差(E1−E3)(正)、第3の直流電源V3の電圧E3(正)、第2の直流電源V2の電圧E2(正)、第1の直流電源V1の電圧E1(正)、第2の直流電源V2の電圧E2(正)、第3の直流電源V3の電圧E3(正)、第2電位差(E1−E3)(正)、第1電位差(E1−E2)(正)、第3電位差(E2−E3)(正)、ゼロ電圧、第3電位差(E2−E3)(負)、第1電位差(E1−E2)(負)、第2電位差(E1−E3)(負)、第3の直流電源V3の電圧E3(負)、第2の直流電源V2の電圧E2(負)、第1の直流電源V1の電圧E1(負)、第2の直流電源V2の電圧E2(負)、第3の直流電源V3の電圧E3(負)、第2電位差(E1−E3)(負)、第1電位差(E1−E2)(負)、第3電位差(E2−E3)(負)、ゼロ電圧の順番に、負荷300に供給する電圧を切り換えることにより、擬似正弦波を生成する。このように階調電圧を用いることで、擬似正弦波を生成できる。なお図3に示すように、階調制御のみにより生成される擬似正弦波は、高調波成分を含んでいるため、本実施の形態では、階調制御と、PWM(Pulse Width Modulation)制御とを組み合わせることで、高調波成分を効果的に除去した擬似正弦波を生成することを目的とする。
【0034】
図4は、十三種類の階調電圧を生成する際の、スイッチのオンオフ状態を示す図である。階調レベル0はゼロ電圧、階調レベル1は第3電位差(E2−E3)(正)、階調レベル2は第1電位差(E1−E2)(正)、階調レベル3は第2電位差(E1−E3)(正)、階調レベル4は第3の直流電源V3の電圧E3(正)、階調レベル5は第2の直流電源V2の電圧E2(正)、階調レベル6は第1の直流電源V1の電圧E1(正)、階調レベル−1は第3電位差(E2−E3)(負)、階調レベル−2は第1電位差(E1−E2)(負)、階調レベル−3は第2電位差(E1−E3)(負)、階調レベル−4は第3の直流電源V3の電圧E3(負)、階調レベル−5は第2の直流電源V2の電圧E2(負)、階調レベル−6は第1の直流電源V1の電圧E1(負)に、それぞれ対応する。制御部20は、図4に示すように、第1−1スイッチS11、第1−2スイッチS12、第1共通スイッチS3、第2共通スイッチS4、第2−1スイッチS21、第2−2スイッチS22、第3−1スイッチS31および第3−2スイッチS32をオンオフ制御する。
【0035】
図5は、実施の形態のインバータ200の実装回路を示す。第1の直流電源V1の電源電圧E1を96V、第2の直流電源V2の電源電圧E2を82V、第3の直流電源V3の電源電圧E3を32Vに設定する。図1と比較すると、図5において、第1−1スイッチS11はスイッチSW0、第1−2スイッチS12はスイッチSW2、第1共通スイッチS3はスイッチSW1、第2共通スイッチS4はスイッチSW3、第2−1スイッチS21はスイッチSW4、SW5、第2−2スイッチS22はスイッチSW6、SW7、第3−1スイッチS31はスイッチSW8、SW9、第3−2スイッチS32はスイッチSWS10、SW11に、それぞれ対応する。
【0036】
図6は、図5に示すインバータ200により七種類の階調電圧を生成する際の、スイッチのオンオフ状態を示す図である。階調レベル0はゼロ電圧、階調レベル1は電位差(E1−E2)(正)、階調レベル2は第3の直流電源V3の電圧E3(正)、階調レベル3は電位差(E2−E3)(正)、階調レベル4は電位差(E1−E3)(正)、階調レベル5は第2の直流電源V2の電圧E2(正)、階調レベル6は第1の直流電源V1の電圧E1(正)に、それぞれ対応する。制御部20は、七種類の階調電圧を生成する際、図6に示すように、スイッチSW0〜SW11をオンオフ制御する。
【0037】
以下では、インバータ200が、複数の直流電源からの電源電圧と、2つの電源電圧の電位差とからなる複数の階調電圧を生成できることを利用して、高調波成分を低減した滑らかな擬似正弦波を生成する手法を説明する。
【0038】
図7は、生成したい理想的な正弦波の1/4周期と、階調電圧の関係を示す。縦軸yは電圧であり、横軸xは時間である。正弦波の振幅を最大の階調電圧(96V)とし、正弦波の周期をTとすると、正弦波は、y=96×sin(2π×x/T)で表現される。各階調電圧をy0〜y6で表現すると、y0=0V、y1=14V、y2=32V、y3=50V、y4=64V、y5=82V、y6=96Vとなる。このとき、各階調電圧となる時間は、x0=0、x1=arcsin(14/96)×T/2π、x2=arcsin(32/96)×T/2π、x3=arcsin(50/96)×T/2π、x4=arcsin(64/96)×T/2π、x5=arcsin(82/96)×T/2π、x6=arcsin(96/96)×T/2πで表現される。
【0039】
本実施の形態において、制御部20は、正弦波電圧が2つの階調電圧となる時間の範囲内で、一方の階調電圧および他方の階調電圧をそれぞれローレベルおよびハイレベルとするPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成して、擬似正弦波を発生させる。図7を参照して、交流出力(正弦波出力)の1/4周期の間において、正弦波電圧が階調電圧となる時間は、x0〜x6であり、制御部20は、任意の2つの時間の範囲内で、一方の階調電圧をローレベルとし、他方の階調電圧をハイレベルとするPWM信号を生成する。なお制御部20は、隣り合う階調電圧となる時間の範囲内で、PWM信号を生成して、擬似正弦波を発生させることが好ましい。具体的に、隣り合う階調電圧となる時間の組み合わせは、x0とx1、x1とx2、x2とx3、x3とx4、x4とx5、x5とx6である。
【0040】
図8は、制御部20によるPWM制御を説明するための図である。図8では、隣り合う階調電圧と、正弦波電圧がそれぞれの階調電圧となる時間とを枠線で結んでおり、以下では、説明の便宜上、枠線で囲まれた領域をウィンドウと表現する。図示されるように、正弦波の1/4周期には、7つの階調電圧(y0〜y6)が存在するため、6つのウィンドウ30a〜30fが形成される。制御部20は、各ウィンドウ30において、PWM信号を生成して、擬似正弦波を発生させる。
【0041】
各ウィンドウ30の枠線において、下線は、PWM信号のローレベル、上線はPWM信号のハイレベルを表現し、また左線は、そのウィンドウ30におけるPWM制御の開始時間、右線はPWM制御の終了時間を表現する。PWM信号のレベルの切替タイミングは、ウィンドウ30において一方の階調電圧および他方の階調電圧をそれぞれローレベルおよびハイレベルとする三角波を生成し、その三角波と正弦波の交点を用いて決定される。PWM信号の切替タイミングは、動的に決定されてもよいが、予め決定されてテーブルに格納されていてもよい。
【0042】
図9(a)は、ウィンドウ30内に仮想的に三角波を生成した状態を示す。本実施の形態では、三角波と正弦波が交差する時間を抽出し、その時間をPWM信号の電圧切替タイミングとして決定する。図9(a)には、ウィンドウ30eにおいて三角波を生成した状態が示されているが、他のウィンドウ30においても同様に三角波と正弦波が交差する時間を抽出し、PWM信号の電圧切替タイミングとして設定される。
【0043】
図9(b)は、ウィンドウ30eにおけるPWM制御によるローレベルとハイレベルの出力電圧を示す。この出力電圧は、ウィンドウ30eの時間範囲における擬似正弦波を構成する。図9(a)を参照して、制御部20は、正弦波電圧よりも三角波電圧が高い場合に、ローレベルの階調電圧を出力し、正弦波電圧の方が三角波電圧よりも高い場合に、ハイレベルの階調電圧を出力するように、PWM電圧を生成する。このように制御部20は、ウィンドウ30における一方の階調電圧をローレベル、他方の階調電圧をハイレベルとする三角波を生成したときに、三角波と正弦波の交点でPWM制御の電圧切替を行うことで、ウィンドウ30の時間範囲内の平均電圧を、正弦波の平均電圧と同じにすることが可能となる。
【0044】
なお、図9(a)および図9(b)においては、ウィンドウ30eについて説明したが、他のウィンドウ30についても同様にPWM制御における電圧切替のタイミングを決定する。以上のように電圧の階調制御とPWM制御を組み合わせることで、制御部20は、正弦波の振幅を最大の階調電圧で出力するとともに、高調波歪を低減した擬似正弦波を出力することが可能となる。
【0045】
また、図9(a)においては、ウィンドウ30において一方の階調電圧および他方の階調電圧をそれぞれローレベルおよびハイレベルとする三角波を生成したが、2つの階調電圧の中間電圧を中心に振幅する三角波を生成してもよい。この場合であっても、生成した三角波と正弦波の交点を用いて、図9(b)に関して説明したように、PWM信号のレベル切替タイミングが決定される。
【0046】
図10は、生成するウィンドウの変形例を示す。図8と比較すると、図10では、ウィンドウ30a、30bをまとめてウィンドウ30gとし、ウィンドウ30c、30dをまとめてウィンドウ30hとしている。ウィンドウ30の時間幅をある程度長くすることで、PWM制御を簡略化でき、スイッチングロスを低減しつつ、安定したPWM制御を実現できるようになる。図8および図10のいずれの場合であっても、交流出力の1/4周期において、複数のウィンドウ30内でPWM制御を行うことにより、高調波成分を大幅に低減することが可能となる。なお、PWM制御の各ウィンドウ30の電圧切替パターンは、予め作成されて、テーブルに保持されてもよく、この場合、制御部20は、テーブルの電圧パターンを参照して、各SWのオンオフ制御を行う。なお、図8および図10は、交流出力の0〜1/4周期を示しているが、1/4周期〜1周期の間についても同様に各ウィンドウの電圧切替パターンが導出され、テーブルに保持される。
【0047】
図11は、階調制御とPWM制御とを組み合わせたときのシミュレーション結果を示す図である。図中、点線は正弦波を示し、実線はインバータ200が生成した擬似正弦波を示す。このシミュレーションによると、信号に占める39次の高調波歪が1.52%、変換効率が98.1%という結果を得ることができ、擬似正弦波における高調波成分が低減されていることが確認された。
【0048】
図12は、実施の形態に係るインバータ200を搭載したパワーコンディショナ210を含む太陽光発電システム500のシステム構成図である。太陽光発電システム500は、太陽電池モジュール100a、接続箱100bおよびパワーコンディショナ210を備える。パワーコンディショナ210は直流電力を交流電力に変換する電力変換装置として機能する。
【0049】
太陽電池モジュール100aは、複数の太陽光パネルを含み、建物の屋根などに設置される。太陽電池モジュール100aは、太陽光を直流電力に変換して接続箱100bに出力する。
【0050】
接続箱100bは、太陽電池モジュール100aに含まれる複数の太陽光パネルからの配線をまとめる。接続箱100bは、実施の形態に係るインバータ200で使用される直流電源の数に応じた複数の直流電圧を、パワーコンディショナ210に供給する。複数の太陽光パネルから当該複数の直流電圧を直接取得できる場合、そのままパワーコンディショナ210に供給することができる。複数の太陽光パネルから当該複数の直流電圧のすべてを取得できない場合、昇圧回路を用いて直接取得できない直流電圧を生成する。
【0051】
パワーコンディショナ210は、実施の形態に係るインバータ200、およびフィルタ205を備える。インバータ200は、接続箱100bから供給される複数の直流電圧を用いて、擬似正弦波を生成する。フィルタ205は、インバータ200により生成された擬似正弦波を平滑化する。
【0052】
パワーコンディショナ210により生成された交流電力は、負荷300に供給される。たとえば、家庭用の太陽光発電システム500では、分電盤を通じて、家庭内の電気機器に供給されるか、送電線網に供給される。
【0053】
以上説明したように、実施の形態に係るインバータ200を、太陽光発電システム500用のパワーコンディショナ210に適用することにより、エネルギー変換効率の高い太陽光発電システム500を構築することができる。
【0054】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0055】
実施の形態では、インバータ200が、複数の直流電源からの電源電圧と、2つの電源電圧の電位差とからなる複数の階調電圧を用いて、擬似正弦波を生成した。別の実施の形態では、インバータ200が、複数の直流電源からの電源電圧のみからなる複数の階調電圧を用いて擬似正弦波を生成してもよく、また、2つの電源電圧の和電圧を生成できる場合には、複数の直流電源からの電源電圧と、2つの電源電圧の和電圧を用いて擬似正弦波を生成してもよい。またインバータ200は、複数の電源電圧、2つの電源電圧の差電圧、および2つの電源電圧の和電圧を含む複数の階調電圧を用いて、擬似正弦波を生成してもよい。
【0056】
実施の形態に係るインバータ200を太陽光発電システム500用のパワーコンディショナ210に適用する例を説明したが、それに限定されることになく、瞬低保護装置、無停電電源装置(Uninterruptible Power Supply:UPS)、その他の装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
100 直流電源部、 200 インバータ、 V1 第1の直流電源、 V2 第2の直流電源、 V3 第3の直流電源、 S11 第1−1スイッチ、 S12 第1−2スイッチ、 S21 第2−1スイッチ、 S22 第2−2スイッチ、 S31 第3−1スイッチ、 S32 第3−2スイッチ、 S3 第1共通スイッチ、 S4 第2共通スイッチ、 20 制御部、 100a 太陽電池モジュール、 100b 接続箱、 205 フィルタ、 210 パワーコンディショナ、 300 負荷、 500 太陽光発電システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ電圧が異なる複数の直流電源からの直流電力を交流電力に変換するインバータであって、それぞれの直流電源からの電源電圧を少なくとも含む複数の階調電圧を用いて、擬似正弦波を発生させる制御部を備え、
前記制御部は、正弦波電圧が2つの階調電圧となる時間の範囲内で、一方の階調電圧および他方の階調電圧をそれぞれローレベルおよびハイレベルとするPWM信号を生成して、擬似正弦波を発生させることを特徴とするインバータ。
【請求項2】
複数の階調電圧には、2つの電源電圧の差電圧または和電圧が含まれることを特徴とする請求項1に記載のインバータ。
【請求項3】
前記制御部は、正弦波電圧が隣り合う階調電圧となる時間の範囲内で、PWM信号を生成して、擬似正弦波を発生させることを特徴とする請求項1または2に記載のインバータ。
【請求項4】
PWM信号の切替タイミングは、正弦波電圧が2つの階調電圧となる時間の範囲内に、2つの階調電圧の中間電圧を中心に振幅する三角波を生成し、その三角波と正弦波の交点を用いることで決定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインバータ。
【請求項5】
正弦波電圧が2つの階調電圧となる時間の範囲内に、前記三角波のローレベルおよびハイレベルが、一方の階調電圧および他方の階調電圧になることを特徴とする請求項4に記載のインバータ。
【請求項6】
前記制御部は、正弦波の振幅を最大の階調電圧で出力することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインバータ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のインバータを備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項1】
それぞれ電圧が異なる複数の直流電源からの直流電力を交流電力に変換するインバータであって、それぞれの直流電源からの電源電圧を少なくとも含む複数の階調電圧を用いて、擬似正弦波を発生させる制御部を備え、
前記制御部は、正弦波電圧が2つの階調電圧となる時間の範囲内で、一方の階調電圧および他方の階調電圧をそれぞれローレベルおよびハイレベルとするPWM信号を生成して、擬似正弦波を発生させることを特徴とするインバータ。
【請求項2】
複数の階調電圧には、2つの電源電圧の差電圧または和電圧が含まれることを特徴とする請求項1に記載のインバータ。
【請求項3】
前記制御部は、正弦波電圧が隣り合う階調電圧となる時間の範囲内で、PWM信号を生成して、擬似正弦波を発生させることを特徴とする請求項1または2に記載のインバータ。
【請求項4】
PWM信号の切替タイミングは、正弦波電圧が2つの階調電圧となる時間の範囲内に、2つの階調電圧の中間電圧を中心に振幅する三角波を生成し、その三角波と正弦波の交点を用いることで決定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインバータ。
【請求項5】
正弦波電圧が2つの階調電圧となる時間の範囲内に、前記三角波のローレベルおよびハイレベルが、一方の階調電圧および他方の階調電圧になることを特徴とする請求項4に記載のインバータ。
【請求項6】
前記制御部は、正弦波の振幅を最大の階調電圧で出力することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインバータ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のインバータを備えることを特徴とする電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−17262(P2013−17262A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146731(P2011−146731)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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