説明

インバータの並列運転を行う電力変換装置及び電力変換方法

【課題】複数のインバータの並列運転により1台の単巻線の電動機を駆動する場合に、複数のインバータに対するゲート信号を同期させることが可能な電力変換装置及び電力変換方法を提供する。
【解決手段】電力変換装置1は、2台のインバータの並列運転を行う場合に、商用交流電源101から3相交流電力を入力し、制御回路40が電圧指令を生成し、同期信号及び電圧指令を2台のインバータ30−1,30−2にシリアル通信により送信し、インバータ30−1,30−2が同期信号及び電圧指令を受信してゲート信号Gを生成し、このゲート信号Gにより交流電力を生成し、各インバータ30−1,30−2からの交流電力を合成して、単巻線の電動機102を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PWMインバータの並列運転方式に関し、特に、直流電力を交流電力に変換する複数のPWMインバータを並列に接続し、該複数のPWMインバータの並列運転により、1台の単巻線の電動機を駆動する電力変換装置及び電力変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、1台のインバータの運転を行うための電力変換装置の全体構成を示すブロック図である。この電力変換装置100は、商用交流電源101から3相交流電力を入力し、1台のインバータ130が制御回路300からゲート信号(PWM信号)Gを入力して交流電力を生成し、電動機102を駆動するものである。電力変換装置100は、商用交流電源101からの3相交流電力を直流電力に変換するコンバータ110、この変換された直流電力を平滑にする平滑用コンデンサ120、制御回路300からのゲート信号Gによりスイッチング素子をオン/オフ動作させて直流電力を交流電力に変換するインバータ130、ゲート信号Gを生成する制御回路300、及び、インバータ130と電動機102との間のU相の電流フィードバックIu及びW相の電流フィードバックIwを検出する電流センサ140を備えている。
【0003】
コンバータ110は、商用交流電源101から3相交流電力を入力し、3相交流電力を直流電力に変換する。平滑用コンデンサ120は、コンバータ110により変換された直流電力を平滑する。ここで、平滑用コンデンサ120の一端はコンバータ110の出力正極端子及びインバータ130の入力正極端子に接続され、他端はコンバータ110の出力負極端子及びインバータ130の入力負極端子に接続される。
【0004】
インバータ130は、DC−AC電力変換を行うPWMインバータ回路を備え、半導体スイッチング素子例えば、IGBT(Insulated Gate Bipola Transistor)のスイッチング素子のゲートに入力される制御信号であるゲート信号Gにより、コレクターエミッタ間の導通/遮断を制御する。すなわち、インバータ130は、平滑用コンデンサ120により平滑された直流電力を入力し、制御回路300からゲート信号Gを入力し、内在するスイッチング素子のゲートをゲート信号Gによりオン/オフ動作させ、直流電力を交流電力に変換し、交流電力を電動機102へ供給する。
【0005】
電流センサ140は、例えば、磁電変換素子であるホール素子を利用して、被測定電流を非接触で検出するセンサである。電流センサ140は、インバータ130から電動機102へ供給される負荷電流である電流信号(U相の電流フィードバックIu及びW相の電流フィードバックIw)を検出する。
【0006】
制御回路300は、電流センサ140から電流フィードバックIu,Iwを入力し、速度センサ103から速度フィードバックWrを入力し、予め設定された速度指令Wr*に基づいてゲート信号Gを生成し、このゲート信号Gをインバータ130に出力する。この場合、ゲート信号Gは、インバータ130に備えた6個のスイッチング素子を制御するために、6個の信号が必要になる。
【0007】
図2は、図1に示した制御回路300の構成を示すブロック図である。この制御回路300は、減算器301,303,304、速度制御器302、電流制御器305,306、座標変換器307,308、滑り演算器309、加算器310、乗算器311、積分器312及びPWM回路313を備えている。以下、制御回路300について詳細に説明する。
【0008】
減算器301は、予め設定された速度指令Wr*から、速度センサ103から入力した速度フィードバックWrを減算し、速度偏差を得る。速度制御器302は、減算器301により算出された速度偏差を入力し、速度偏差からトルク指令を算出し、トルク指令からトルク電流指令Iq*を算出する。また、図示しない制御器は、電動機102のパラメータで決められる磁束指令を算出し、磁束指令から励磁電流指令Id*を算出する。
【0009】
滑り演算器309は、図示しない制御器から励磁電流指令Id*を入力し、速度制御器302からトルク電流指令Iq*を入力し、滑り演算処理を行い、周波数Wsを算出する。乗算器311は、速度フィードバックWrを入力し、予め設定された係数を速度フィードバックWrに乗算する。
【0010】
加算器310は、滑り演算器309により算出された周波数Wsと、乗算器311により算出された乗算結果とを加算し、1次角周波数W1を得る。積分器312は、加算器310により算出された1次角周波数W1を入力し、積分処理を行い、位相角θdを算出する。このように算出された位相角θdは、座標変換器307,308に出力される。
【0011】
座標変換器308は、電流センサ140により検出された電流フィードバックIu,Iwを入力し、積分器312から位相角θdを入力し、3相軸からd軸及びq軸への座標変換を行い、励磁電流Id及びトルク電流Iqを算出する。
【0012】
減算器303は、図示しない制御器により算出された励磁電流指令Id*から、座標変換器308により算出された励磁電流Idを減算し、励磁電流偏差を得る。電流制御器305は、減算器303により算出された励磁電流偏差を入力し、d軸電圧指令Vd*を算出する。
【0013】
減算器304は、速度制御器302により算出されたトルク電流指令Iq*から、座標変換器308により算出されたトルク電流Iqを減算し、トルク電流偏差を得る。電流制御器306は、減算器304により算出されたトルク電流偏差を入力し、q軸電圧指令Vq*を算出する。
【0014】
座標変換器307は、電流制御器305からd軸電圧指令Vd*を入力し、電流制御器306からq軸電圧指令Vq*を入力し、積分器312から位相角θdを入力し、d軸及びq軸から3相軸への座標変換を行い、電圧指令(U相電圧指令Vu*、V相電圧指令Vv*、W相電圧指令Vw*)を算出する。
【0015】
PWM回路313は、座標変換器307により算出された電圧指令(U相電圧指令Vu*、V相電圧指令Vv*、W相電圧指令Vw*)を入力し、6個のゲート信号Gを生成する。このように、制御回路300は、予め設定された速度指令Wr*と速度フィードバックWrとの偏差がゼロになるように、電圧指令(U相電圧指令Vu*、V相電圧指令Vv*、W相電圧指令Vw*)を生成する。そして、これらの電圧指令に相当するそれぞれのゲート信号Gがインバータ130に出力され、電動機102の速度制御が行われる。
【0016】
ところで、大容量の電動機をインバータにより駆動するために、複数のインバータを並列に接続して運転する場合がある。図3は、2台のインバータの並列運転を行う場合における、従来の電力変換装置の全体構成を示すブロック図である。この電力変換装置200は、商用交流電源101から3相交流電力を入力し、2台のインバータ130−1,130−2が制御回路400からゲート信号Gを入力して交流電力を生成し、これらのインバータ130−1,130−2の並列運転により、1台の単巻線の電動機102を駆動するものである。
【0017】
電力変換装置200は、コンバータ110−1,110−2、平滑用コンデンサ120−1,120−2、インバータ130−1,130−2、電流センサ140−1,140−2及び制御回路400を備えている。
【0018】
図3において、コンバータ110−1,110−2はそれぞれ図1に示したコンバータ110と同一であり、平滑用コンデンサ120−1,120−2はそれぞれ平滑用コンデンサ120と同一であり、インバータ130−1,130−2はそれぞれインバータ130と同一であり、電流センサ140−1,140−2はそれぞれ電流センサ140と同一である。また、制御回路400は、図2に示した制御回路300の各回路に加えて、電流センサ140−1,140−2により検出されたそれぞれの電流フィードバックIu,Iwを統合する(例えば、電流フィードバックIu,Iwをそれぞれ平均する)統合部を備え、この統合部により統合された電流フィードバックIu,Iwを座標変換器308に出力する。また、制御回路400は、図2に示したPWM回路313の代わりに、入力した電圧指令(U相電圧指令Vu*、V相電圧指令Vv*、W相電圧指令Vw*)を分配する分配機能を有する新たなPWM回路を備え、この新たなPWM回路の分配機能により分配した電圧指令に基づいて、インバータ130−1,130−2用のゲート信号Gをそれぞれ生成する。このように構成された電力変換装置200では、制御回路400により生成されたゲート信号Gを用いることにより、インバータ130−1,130−2の並列運転を実現している。
【0019】
また、複数のインバータを並列に接続して運転する例として、特許文献1,2に記載のものがある。特許文献1の電力変換装置は、制御回路と複数のインバータとがシリアル通信により接続される構成の下で、制御回路が、算出したトルク指令を分配し、この分配したトルク指令をシリアル通信により複数のインバータへそれぞれ送信するものである。
【0020】
また、特許文献2の電力変換装置は、複数のインバータにより複数巻線の電動機を駆動するものであり、複数のインバータに対応した制御回路をそれぞれ備える。マスタの制御回路は、自ら算出したトルク指令等の各信号をスレーブの制御回路へ送信し、スレーブの制御回路は、マスタの制御回路から受信したトルク指令等の各信号に基づいてゲート信号を生成し、インバータにより電動機を駆動する。
【0021】
【特許文献1】特開2005−86918号公報、段落14−16、図2、図3、図7
【特許文献2】特開2003−102188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
図3に示した従来の電力変換装置200では、インバータ1台に対してゲート信号G及び電流フィードバックIu,Iwの8個の信号が必要になるから、並列運転するインバータが増える毎にこれらの信号の数も増え、配線が複雑になるという問題があった。ここで、ゲート信号Gを生成する際に、電流フィードバックIu,Iwに加えて電圧フィードバックVuwも必要とする電力変換装置では、さらに配線が複雑になってしまう。
【0023】
また、ゲート信号G及び電流フィードバックIu,Iwの各信号はアナログ信号であるから、ダイナミックレンジ及びS/N比等により、並列運転が可能なインバータの数が制限されるという問題があった。さらに、制御回路400とインバータ130−1,130−2との間の配線距離及びこれらの設置場所が制限され、許容範囲内で配線距離を延ばした場合にはノイズの影響を受けやすいという問題もあった。この場合、制御回路400とインバータ130−1,130−2との間は、配線距離ができる限り制限されないことが望ましい。また、一般に、並列運転するインバータ130−1,130−2は同一の制御盤内に格納されるから、設置場所ができる限り制限されないことが望ましい。
【0024】
また、図3に示した従来の電力変換装置200において、インバータ130−1,130−2が入力するそれぞれのゲート信号Gのタイミングがズレて同期しない場合には、各インバータ130−1,インバータ130−2が電動機102へ供給する交流電力のタイミングがズレることになり、電動機102を効率的に駆動することができないだけでなく、インバータ130−1,130−2間に横流が発生してしまう。これにより、場合によってはインバータ130−1,130−2の許容範囲を超え、素子が破損してしまう可能性がある。
【0025】
前述した配線が複雑になるという問題、及びインバータの数が制約を受けるという問題を解決するため、特許文献1,2の電力変換装置を用いることができる。しかしながら、特許文献1の電力変換装置では、トルク指令をシリアル通信により送信しているに過ぎないから、ゲート信号が同期しているとは限らない。また、特許文献2に記載された電力変換装置では、複数巻線の電動機を駆動するものであり、ゲート信号の同期を考慮する必要がないことから、単巻線の電動機には適用することができない。
【0026】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数のインバータの並列運転により1台の単巻線の電動機を駆動する場合に、複数のインバータに対するゲート信号を同期させることが可能な電力変換装置及び電力変換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記目的を達成するために、本発明は、単巻線の電動機を駆動するための交流電力をゲート信号により生成するインバータを備え、該インバータが複数並列して構成された電力変換装置において、前記電動機の速度を検出する速度センサから速度フィードバック値を入力し、該速度フィードバック値が所定の速度指令値になるように、電圧指令値を生成する回路、及び、前記電圧指令値と、複数のインバータにおいて同期したゲート信号を生成させるための同期信号とをシリアル通信により、前記複数のインバータへそれぞれ送信する回路を有する制御回路と、前記制御回路から電圧指令値と同期信号とを受信する回路、前記同期信号のタイミングにて、前記電圧指令値に基づいてゲート信号を生成する回路、及び、前記ゲート信号により交流電力を生成するスイッチング素子を有するインバータと、を備えたことを特徴とする。
【0028】
また、本発明は、前記インバータが、該インバータと電動機との間の電流を検出する電流センサから電流フィードバック値を入力し、該電流フィードバック値をシリアル通信により前記制御回路へ送信する回路を有することを特徴とする。
【0029】
また、本発明は、単巻線の電動機を駆動するための交流電力をゲート信号により生成するインバータを備え、該インバータが複数並列して構成された電力変換装置による電力変換方法において、前記電動機の速度を検出する速度センサから速度フィードバック値を入力する工程と、該速度フィードバック値が所定の速度指令値になるように、電圧指令値を生成する工程と、前記電圧指令値と、複数のインバータにおいて同期したゲート信号を生成させるための同期信号とをシリアル通信により前記複数のインバータへそれぞれ送信する工程と、前記インバータにより、前記電圧指令値と同期信号とを受信する工程と、前記同期信号のタイミングにて、前記電圧指令値に基づいてゲート信号を生成する工程と、前記ゲート信号により交流電力を生成し、該交流電力を電動機へ供給する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、複数のインバータの並列運転により1台の単巻線の電動機を駆動する場合に、複数のインバータに対するゲート信号を同期させることが可能な電力変換装置及び電力変換方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
図4は、本発明の実施の形態による電力変換装置の全体構成を示すブロック図である。この電力変換装置1は、2台のインバータの並列運転を行う場合の電力変換装置であり、商用交流電源101から3相交流電力を入力し、制御回路40がゲート信号Gの生成元の電圧指令を生成し、同期信号及び電圧指令を2台のインバータ30−1,30−2にシリアル通信により送信し、インバータ30−1,30−2が同期信号及び電圧指令を受信してゲート信号Gを生成し、このゲート信号Gにより交流電力を生成し、各インバータ30−1,30−2からの交流電力を合成して、1台の単巻線の電動機102を駆動するものである。
【0032】
電力変換装置1は、コンバータ110−1,110−2、平滑用コンデンサ120−1,120−2、インバータ30−1,30−2、電流センサ140−1,140−2、及び制御回路40を備えている。インバータ30−1,30−2と制御回路40と間は、それぞれ3本の光ファイバケーブルにより接続され、シリアル通信により情報の送受信が行われる。インバータ30−1と制御回路40との間において、1本目の光ファイバーケーブルは、制御回路40からインバータ30−1へ同期信号を送信するための通信線であり、2本目の光ファイバケーブルは、制御回路40からインバータ30−1へ電圧指令を送信するための通信線であり、3本目の光ファイバケーブルは、インバータ30−1から制御回路40へ電流フィードバックIu,Iw及びインバータ30−1の状態を送信するための通信線である。詳細については後述する。
【0033】
図3に示した従来の電力変換装置200と図4に示す電力変換装置1とを比較すると、2台のコンバータ110−1,110−2、2台の平滑用コンデンサ120−1,120−2、2台の電流センサ140−1,140−2を備えている点で同一であるが、電力変換装置1は、従来の制御回路400及びインバータ130−1,130−2と異なる制御回路40及びインバータ30−1,30−2を備えている点、インバータ30−1,30−2と制御回路40との間でシリアル通信により情報を送受信する点で相違する。また、従来の電力変換装置200では、制御回路400がゲート信号Gを生成し、このゲート信号Gをインバータ130−1,130−2に出力するのに対し、電力変換装置1では、制御回路40が同期信号及び電圧指令をシリアル通信によりインバータ30−1,30−2に送信し、インバータ30−1,30−2が同期信号及び電圧指令に基づいてゲート信号Gを生成する点で相違する。また、従来の電力変換装置200では、制御回路400が電流センサ140−1,140−2から電流フィードバックIu,Iwを直接的に入力するのに対し、電力変換装置1では、制御回路40が、インバータ30−1,30−2及びシリアル通信を介して間接的に入力する点で相違する。尚、図4において、図3と共通する部分には図3と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0034】
制御回路40は、速度センサ103から速度フィードバックWrを入力し、インバータ30−1からシリアル通信により電流フィードバックIu,Iw及びインバータ30−1の状態を受信し、インバータ30−2からシリアル通信により電流フィードバックIu,Iw及びインバータ30−2の状態を受信し、予め設定された速度指令Wr*に基づいて電圧指令(U相電圧指令Vu*,V相電圧指令Vv*,W相電圧指令Vw*)を生成し、同期信号及び電圧指令を、予め設定された周期の同一タイミングにて、それぞれのインバータ30−1,30−2に送信する。
【0035】
ここで、インバータ30−1から受信する電流フィードバックIu,Iwは、電流センサ140−1により検出された電流信号であり、インバータ30−2から受信する電流フィードバックIu,Iwは、電流センサ140−2により検出された電流信号である。また、同期信号は、各インバータ30−1,30−2において同一タイミングのゲート信号Gを生成するための信号であり、この同期信号により、ゲート信号Gを生成するために必要な三角波が生成される。電圧指令は、インバータ30−1,30−2においてU相、V相及びW相のゲート信号Gを生成するための信号である。詳細については後述する。
【0036】
図5は、図4に示した制御回路40の構成を示すブロック図である。この制御回路40は、減算器301,303,304、速度制御器302、電流制御器305,306、座標変換器307,308、滑り演算器309、加算器310、乗算器311、積分器312及び通信回路41を備えている。
【0037】
図2に示した従来の制御回路300と図5に示す制御回路40とを比較すると、減算器301,303,304、速度制御器302、電流制御器305,306、座標変換器307,308、滑り演算器309、加算器310、乗算器311及び積分器312を備えている点で同一であるが、制御回路40は、PWM回路313を備えておらず、通信回路41を備えている点、この通信回路41によりインバータ30−1,30−2との間でシリアル通信により情報を送受信する点で相違する。以下、制御回路40について詳細に説明する。尚、図5において、図2と共通する部分には図2と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0038】
通信回路41は、座標変換器307により算出された電圧指令(U相電圧指令Vu*、V相電圧指令Vv*、W相電圧指令Vw*)を入力し、この電圧指令をデジタル信号に変換してインバータ30−1,30−2毎に分配し、予め設定された周期にて、同期信号及び電圧指令をそれぞれのインバータ30−1,30−2に送信する。
【0039】
また、通信回路41は、インバータ30−1から電流フィードバックIu,Iw及びインバータ30−1の状態を受信し、インバータ30−2から電流フィードバックIu,Iw及びインバータ30−2の状態を受信し、それぞれの電流フィードバックIu,Iwの平均を算出する等して統合し、統合した電流フィードバックIu,Iwを座標変換器308に出力する。また、インバータ30−1,30−2の状態を示す各情報は、異常処理等に用いられる。
【0040】
図4に戻って、インバータ30−1,30−2は、それぞれ、通信回路31−1,31−2、PWM回路32−1,32−2、状態監視回路33−1,33−2及びPWMインバータ回路34−1,34−2を備えている。インバータ30−1,30−2は、制御回路40から同期信号及び電圧指令(U相電圧指令Vu*,V相電圧指令Vv*,W相電圧指令Vw*)をシリアル通信により受信し、同期信号及び電圧指令に基づいて、U相、V相及びW相のゲート信号Gを生成し、このゲート信号Gにより交流電力を生成して電動機102へ供給する。以下、インバータ30−1について詳細に説明する。尚、インバータ30−2は、インバータ30−1と同一の構成を有するので、説明を省略する。
【0041】
図6は、図4に示したインバータ30−1における信号処理を説明する図である。通信回路31−1は、制御回路40から同期信号及び電圧指令(U相電圧指令Vu*,V相電圧指令Vv*,W相電圧指令Vw*)を受信し、これらの信号をシリアルデータからパラレルデータに変換してPWM回路32−1に出力する。また、通信回路31−1は、電流センサ140−1から電流フィードバックIu,Iwを入力し、状態監視回路33−1からインバータ状態を入力し、これらの信号をシリアルデータに変換して制御回路40に送信する。状態監視回路33−1は、インバータ30−1の運転状態を監視し、その状態を通信回路31−1に出力する。
【0042】
PWM回路32−1は、通信回路31−1から同期信号及び電圧指令(U相電圧指令Vu*,V相電圧指令Vv*,W相電圧指令Vw*)を入力し、U相、V相及びW相のゲート信号Gを生成して、PWMインバータ回路34−1に出力する。PWMインバータ回路34−1は、このゲート信号Gに基づいて交流電力を生成し、電動機102へ供給する。
【0043】
図7は、PWM回路32−1において、同期信号及び電圧指令からゲート信号Gを生成するまでの各信号のタイミングを示すタイムチャート図である。図7に示すように、同期信号(1)は、三角波(3)を生成するための信号であり、2種類の同期信号が、予め設定された周期(125μsec)にて交互に繰り返して送信される。第1の同期信号は、三角波(3)の信号点(カウント値0〜8000)を下降から上昇に切り替える折り返し点(谷の最も低い部分)を生成するための上昇を示す信号であり、第2の同期信号は、三角波(3)の信号点を上昇から下降に切り替える折り返し点(山の頂点の部分)を生成するための下降を示す信号である。このような同期信号(1)は、制御回路40の通信回路41において生成される。また、この同期信号(1)によりPWM回路32−1において生成される三角波(3)は、カウント値0〜8000を繰り返す。
【0044】
電圧指令(2)における電圧指令値(a1,a2,・・・)は、コンパレータ出力信号(4)をオンからオフへ切り替える点、及びオフからオンへ切り替える点を決定するための値である。例えば、a1=4000の場合、三角波(3)の信号点(カウント値0〜8000)において、カウント値が4000になったタイミングで、PWMインバータ回路34−1における上側のスイッチング素子に対応するコンパレータ出力信号(4)がオンからオフに切り替わり、同様に下側のスイッチング素子に対応するコンパレータ出力信号(4)がオフからオンに切り替わる。そして、コンパレータ出力信号(4)に対してオンディレイ処理(5)を施すことにより、ゲート信号G(6)が生成される。このような処理がU相、V相及びW相毎に行われる。
【0045】
このように、PWM回路32−1は、入力した同期信号(1)から三角波(3)を生成し、コンパレータにより、三角波(3)及び入力した電圧指令(2)における電圧指令値(a1,a2,・・・)を用いて比較処理を行ってコンパレータ出力信号(4)のオン/オフ切り替えを行い、遅延回路により、コンパレータ出力信号に対して、予め設定された時間によるオンディレイ処理(5)を施す。これによりゲート信号G(6)が生成される。
【0046】
以上のように、本発明の実施の形態による電力変換装置1によれば、2台のインバータ30−1,30−2の並列運転により1台の単巻線の電動機102を駆動する場合に、制御回路40は、ゲート信号Gを同期させるための同期信号を、電圧指令と共にシリアル通信によりそれぞれ同一のタイミングにてインバータ30−1,30−2に送信するようにした。インバータ30−1,30−2は、それぞれ同じタイミングの同期信号を基準にしてゲート信号Gを生成するから、インバータ30−1,30−2のそれぞれのゲート信号Gのオン/オフタイミングを一致させることができる。したがって、ゲート信号Gが同期するから、横流が発生することはない。
【0047】
また、本発明の実施の形態による電力変換装置1によれば、制御回路40は、ゲート信号Gを生成するための同期信号及び電圧指令をシリアル通信によりインバータ30−1,30−2に送信し、インバータ30−1,30−2は、電流フィードバックIu,Iwをシリアル通信により制御回路40に送信するようにした。この場合、制御回路40とインバータ30−1,30−2との間の通信線はそれぞれ3本で済むから、インバータが増える毎に3本の通信線を増やすだけで良い。このため、図3に示した従来の電力変換装置200ではインバータが増える毎に8個の信号を増やす必要があるのに対し、電力変換装置1では配線が複雑にならないという利点があり、省配線を実現することができる。ここで、ゲート信号Gを生成する際に、電流フィードバックIu,Iwに加えて電圧フィードバックVuwも必要とする場合には、本発明の実施の形態による電力変換装置1によれば、インバータ30−1,30−2は、電流フィードバックIu,Iwに加えて電圧フィードバックVuwもシリアル通信により制御回路40に送信する。この場合、同じ通信線を使用することができるから、配線の複雑さを一層緩和することができる。
【0048】
また、本発明の実施の形態による電力変換装置1によれば、制御回路40とインバータ30−1,30−2との間は光ファイバケーブルにより接続するようにした。これにより、アナログ信号ではなく、シリアル通信によるデジタル信号によって送受信を行うから、ダイナミックレンジ及びS/N比等によるインバータの数が制限されるという問題を解消することができる。また、配線距離及び設置場所の制限を緩和することができると共に、耐ノイズ性の向上を図ることができる。このように、本発明の実施の形態による電力変換装置1によれば、電力変換装置1として大容量ユニットを実現することができるから、生産数量の増加及びコスト低減を実現することができる。
【0049】
以上、実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、図4に示した電力変換装置1では、2台のインバータ30−1,30−2による並列運転の例を示したが、インバータの数はこれに限定するものではなく、3台以上のインバータによる並列運転にも適用することができる。
【0050】
また、図4に示した電力変換装置1では、インバータ30−1,30−2から制御回路40へ電流フィードバックIu,Iwを送信するようにしたが、インバータ30−1,30−2と電動機102との間に電圧センサを設け、インバータ30−1,30−2がその電圧センサから電圧フィードバックVuwを入力し、、インバータ30−1,30−2から制御回路40へ電流フィードバックIu,Iwに加えて電圧フィードバックVuwを送信するようにしてもよい。この場合、制御回路40は、受信した電圧フィードバックVuwを、電圧指令の補正のために用いる。
【0051】
また、図4に示した電力変換装置1は、コンバータ110−1,110−2を備えるようにしたが、必ずしもこれに限定するものではない。コンバータ110−1,110−2の代わりに、AC−DC整流器、平滑用コンデンサ及びDC−DC電力変換器を備えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】1台のインバータの運転を行うための電力変換装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1の制御回路の構成を示すブロック図である。
【図3】従来の、2台のインバータの並列運転を行うための電力変換装置の全体構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態による電力変換装置の全体構成を示すブロック図である。
【図5】図4の制御回路の構成を示すブロック図である。
【図6】図4のインバータにおける信号処理を説明する図である。
【図7】同期信号及び電圧指令からゲート信号を生成するまでの各信号のタイミングを示すタイムチャート図である。
【符号の説明】
【0053】
1,100,200 電力変換装置
30−1,30−2,130,130−1,130−2 インバータ
40,300,400 制御回路
31−1,31−2,41 通信回路
32−1,32−2,313 PWM回路
33−1,33−2 状態監視回路
34−1,34−2 PWMインバータ回路
101 商用交流電源
102 電動機
103 速度センサ
110,110−1,110−2 コンバータ
120,120−1,120−2 平滑用コンデンサ
140,140−1,140−2 電流センサ
301,303,304 減算器
302 速度制御器
305,306 電流制御器
307,308 座標変換器
309 滑り演算器
310 加算器
311 乗算器
312 積分器
Iu,Iw 電流フィードバック
Wr 速度フィードバック
G ゲート信号
Wr* 速度指令
Id 励磁電流
Iq トルク電流
Id* 励磁電流指令
Iq* トルク電流指令
Vd* d軸電圧指令
Vq* q軸電圧指令
Vu* U相電圧指令
Vv* V相電圧指令
Vw* W相電圧指令
Ws 周波数
W1 1次角周波数
θd 位相角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単巻線の電動機を駆動するための交流電力をゲート信号により生成するインバータを備え、該インバータが複数並列して構成された電力変換装置において、
前記電動機の速度を検出する速度センサから速度フィードバック値を入力し、該速度フィードバック値が所定の速度指令値になるように、電圧指令値を生成する回路、及び、前記電圧指令値と、複数のインバータにおいて同期したゲート信号を生成させるための同期信号とをシリアル通信により、前記複数のインバータへそれぞれ送信する回路を有する制御部と、
前記制御部から電圧指令値と同期信号とを受信する回路、前記同期信号のタイミングにて、前記電圧指令値に基づいてゲート信号を生成する回路、及び、前記ゲート信号により交流電力を生成するスイッチング素子を有するインバータと、を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記インバータは、該インバータと電動機との間の電流を検出する電流センサから電流フィードバック値を入力し、該電流フィードバック値をシリアル通信により前記制御部へ送信する回路を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
単巻線の電動機を駆動するための交流電力をゲート信号により生成するインバータを備え、該インバータが複数並列して構成された電力変換装置による電力変換方法において、
前記電動機の速度を検出する速度センサから速度フィードバック値を入力する工程と、
該速度フィードバック値が所定の速度指令値になるように、電圧指令値を生成する工程と、
前記電圧指令値と、複数のインバータにおいて同期したゲート信号を生成させるための同期信号とをシリアル通信により前記複数のインバータへそれぞれ送信する工程と、
前記インバータにより、前記電圧指令値と同期信号とを受信する工程と、
前記同期信号のタイミングにて、前記電圧指令値に基づいてゲート信号を生成する工程と、
前記ゲート信号により交流電力を生成し、該交流電力を電動機へ供給する工程とを含むことを特徴とする電力変換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−228548(P2008−228548A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67816(P2007−67816)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(390014384)日本リライアンス株式会社 (58)
【Fターム(参考)】