説明

インバータ一体型電動圧縮機

【課題】組み立て性やコンパクト性を損なうことなく、高電圧系部品から放出される電磁ノイズによるインバータ回路部へのノイズ干渉を排除でき、しかも高電圧系部品の冷却効率を高めることができるインバータ一体型電動圧縮機を提供することを目的とする。
【解決手段】ハウジング2の外周に設けられたインバータ収容部9内にインバータ装置20が設けられているインバータ一体型電動圧縮機1において、インバータ収容部9は、パワー系基板と、CPU基板とを備えたインバータモジュール21が収容される第1収容部9と、インバータモジュール21に高電圧電源からの直流電力を供給する高電圧ラインに設けられる高電圧系部品が収容される第2収容部40とに分離され、それぞれが別個にハウジング2の外周に設けられており、第2収容部40は、ハウジング2の低圧側部位の吸入ポート8が設けられている側の外周側面に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータと圧縮機構とが内蔵されているハウジングの外周にインバータ装置が一体に組み込まれて構成される車両用空調装置の圧縮機として好適なインバータ一体型電動圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載される空調装置用圧縮機として、インバータ装置が一体に組み込まれたインバータ一体型電動圧縮機が種々提案されている。このインバータ一体型電動圧縮機は、電動モータと圧縮機構とが内蔵されるハウジングの外周にインバータ収容部(インバータボックスやケース、外枠部等)が設けられ、その内部に高電圧電源から供給される直流電力を三相交流電力に変換し、ガラス密封端子を介して電動モータに給電するインバータ装置を組み込むことにより、空調負荷に応じて圧縮機回転数が可変制御される構成とされている。
【0003】
インバータ装置は、直流電力を三相交流電力に変換する複数個の半導体スイッチング素子(例えば、IGBT)が実装されているパワー系基板(台座部、ユニットベース等を含む)と、CPU等の低電圧で動作する素子を有する制御通信回路が実装されているCPU基板(プリント基板)とからなるインバータ回路部と、このインバータ回路部に高電圧電源から供給される直流電力を供給する高電圧ラインに設けられ、インバータのスイッチングノイズや電流リップルを低減するインダクタコイルや平滑コンデンサ等の高電圧系部品等とから構成されている。
【0004】
このようなインバータ一体型電動圧縮機において、インバータ装置を構成するインバータ回路部やインダクタコイルおよび平滑コンデンサ等の高電圧系部品は、ハウジングの外周に設けられるインバータ収容部(インバータボックスやケース、外枠部等)の内部に纏めて収容設置され、一体化されるのが一般的である(例えば、特許文献1,2参照)。これは、車両への搭載性を考慮して、インバータ一体型電動圧縮機をできる限りコンパクトなものとするためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3827158号公報
【特許文献2】特開2003−322082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インバータ回路部を構成するパワー系基板やCPU基板と、高電圧系部品であるインダクタコイルや平滑コンデンサ等とを1つのインバータ収容部(インバータボックスやケース、外枠部等を含む)に纏めて収容設置すると、回路部と高電圧系部品とが互いに接近して設置されることになる。このため、インバータ回路部が高電圧系部品から放出される電磁ノイズの影響を受けやすくなり、インバータ装置が自己ノイズ干渉を起こし、誤動作するおそれがある。
【0007】
かかる高電圧系部品による電磁ノイズ干渉を排除するには、インバータ回路部と高電圧系部品とを分離設置することが考えられるが、このような構成を採用すると、組み立て性が悪化したり、コンパクト化、軽量化が損なわれたりする等の問題が懸念されるので、その対応策が課題となる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、組み立て性やコンパクト性を損なうことなく、高電圧系部品から放出される電磁ノイズによるインバータ回路部へのノイズ干渉を排除することができ、しかも高電圧系部品の冷却効率を高めることができるインバータ一体型電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるインバータ一体型電動圧縮機は、電動モータおよび圧縮機構が内蔵されているハウジングの外周にインバータ収容部が設けられ、その内部に高電圧電源からの直流電力を三相交流電力に変換して前記電動モータに給電するインバータ装置が設けられているインバータ一体型電動圧縮機において、前記インバータ収容部は、半導体スイッチング素子等が実装されたパワー系基板と、制御通信回路等が実装されたCPU基板とを備えたインバータモジュールが収容される第1収容部と、前記インバータモジュールに高電圧電源からの直流電力を供給する高電圧ラインに設けられるコモンモードコイル、ノーマルモードコイル、平滑コンデンサ等の高電圧系部品が収容される第2収容部と、に分離され、それぞれが別個に前記ハウジングの外周に設けられており、前記第2収容部は、前記ハウジングの低圧側部位の吸入ポートが設けられている側の外周側面に設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、インバータ収容部が、パワー系基板とCPU基板とを備えたインバータモジュールが収容される第1収容部と、インバータモジュールに直流電力を供給する高電圧ラインに設けられるコモンモードコイル、ノーマルモードコイル、平滑コンデンサ等の高電圧系部品が収容される第2収容部とに分離され、それぞれが別個にハウジングの外周に設けられているため、コモンモードコイル、ノーマルモードコイル、平滑コンデンサ等の高電圧系部品から放出される電磁ノイズを第2収容部によって遮蔽し、該電磁ノイズが第1収容部に収容されているインバータモジュールへと伝搬するのを遮断することができる。従って、インバータ装置の自己ノイズによる誤動作を防止し、信頼性を向上することができる。また、第2収容部がハウジングの低圧側部位の吸入ポートが設けられている側の外周側面に設けられているため、吸入ポートからハウジング内に吸入される低圧冷媒ガスを冷熱源に、ハウジングをヒートシンクとして高電圧系部品を効率よく冷却し、インバータ装置の冷却性能を高めることができる。
【0011】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上記のインバータ一体型電動圧縮機において、前記第1収容部は、前記ハウジング外周の上面部に設けられ、前記ハウジングと一体に成形されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、第1収容部がハウジング外周の上面部に設けられ、ハウジングと一体に成形されているため、分離された第1収容部と第2収容部とをハウジング外周の上面部と側面部とに互いに隣接して配置することができるとともに、インバータモジュールをハウジングと一体に成形されている第1収容部内に収容設置し、ハウジングの外周に一体的に組み込むことができる。従って、インバータモジュールと高電圧系部品との間の電気的接続手段、例えばバスバー等を短く簡素にすることができるとともに、ハウジングの外周を取り囲むようにインバータ装置をコンパクトに組み込むことができ、しかもインバータモジュールをハウジングと一体成形の第1収容部により堅牢に保護し、第2収容部に収容されている高電圧系部品から遮蔽することができる。
【0013】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上述のいずれかのインバータ一体型電動圧縮機において、前記第2収容部は、前記高電圧系部品の収容ケースとして前記ハウジングとは別体とされ、前記高電圧系部品を収容して前記ハウジングの外周側面に一体的に固定設置されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、第2収容部が高電圧系部品の収容ケースとしてハウジングとは別体とされ、高電圧系部品を収容してハウジングの外周側面に一体に固定設置されるようにしているため、第2収容部をコモンモードコイル、ノーマルモードコイル、平滑コンデンサ等の高電圧系部品を纏めて収容設置し、電磁ノイズを遮蔽するのに最適な構造の収容ケースとすることができる。従って、高電圧系部品を一括してハウジングの外周側面にコンパクトに組み込むことができるとともに、高電圧系部品から放出される電磁ノイズを確実に遮蔽することができる。
【0015】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上記のインバータ一体型電動圧縮機において、前記収容ケースには、前記高電圧系部品および高電圧ケーブルが接続される端子台が収容設置され、該収容ケースが前記高電圧ケーブルと共に一体の組み立て品として前記ハウジングの外周側面に固定設置されていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、収容ケース内に高電圧系部品および高電圧ケーブルが接続される端子台が収容設置され、該収容ケースが高電圧ケーブルと共に一体の組み立て品としてハウジングの外周側面に固定設置されているため、高電圧ケーブル、端子台および高電圧系部品等を纏めて収容ケースに収容設置し、一体の組み立て品としてハウジングの外周側面に組み付けることができる。従って、高電圧ケーブル、端子台および高電圧系部品等の組み立て性を改善することができるとともに、これら部品から放出される電磁ノイズを収容ケースで覆って遮蔽し、インバータ収容部内に設けられているインバータ装置との間での電磁ノイズ干渉を防止することができる。また、比較的大きい高電圧系部品を高電圧ケーブルと共に一体にコンパクトに纏めてハウジングの外周に組み込むことができるため、圧縮機全体としてコンパクト化および軽量化を図ることができる。
【0017】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上述のいずれかのインバータ一体型電動圧縮機において、前記収容ケースは、アルミ製とされ、前記コモンモードコイルおよび前記ノーマルモードコイルは、樹脂製ケースを介して前記アルミ製収容ケース内に収容設置されていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、収容ケースがアルミ製とされ、コモンモードコイルおよびノーマルモードコイルが樹脂製ケースを介してアルミ製収容ケース内に収容設置されているため、高電圧系部品をアルミ製収容ケースにより覆って堅牢に保護することができるとともに、高電圧系部品から放出される電磁ノイズを確実に遮蔽することができる。また、コモンモードコイルおよびノーマルモードコイルを樹脂製ケースに収容して設置しているため、これらのコイルをアルミ製収容ケース内に絶縁性を確保して設置するための作業を容易化することができるとともに、コイルを変更する場合、樹脂製ケースの変更により対応が可能なため、アルミ製収容ケースの共通化を図ることができる。なお、樹脂製ケースは、コイル毎に独立したケースとしてもよいし、1つのケースに仕切りを設けて複数個の収納部を設け、複数個のコイルを収納するようにしてもよい。
【0019】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上述のいずれかのインバータ一体型電動圧縮機において、前記収容ケース内には、前記高電圧系部品の固定と絶縁を兼ねて放熱性を有するシリコン系接着剤が充填されていることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、収容ケース内に高電圧系部品の固定と絶縁を兼ねて放熱性を有するシリコン系接着剤が充填されているため、複数個の高電圧系部品を収容ケースにシリコン系接着剤を介して接着固定することができるとともに、それぞれ絶縁性を確保して収容設置することができる。また、高電圧系部品から放出される熱をシリコン系接着剤および収容ケースを介して放熱することができる。従って、絶縁性能および放熱性能を十分に確保することができる。
【0021】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上述のいずれかのインバータ一体型電動圧縮機において、前記収容ケース内に収容設置された複数個の前記高電圧系部品は、バスバーを介して電気的に接続されていることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、収容ケース内に収容設置された複数個の高電圧系部品がバスバーを介して電気的に接続されているため、バスバーに高電圧系部品の接続端子を溶接することにより、複数個の高電圧系部品間を簡素に接続することができる。従って、収容ケース内に余計なスペースを確保する必要がなく、収容ケースをコンパクトにすることができる。
【0023】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上述のいずれかのインバータ一体型電動圧縮機において、前記収容ケースには、収容部品を設置するためのネジ穴および設置面が設けられていることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、収容ケースに収容部品を設置するためのネジ穴および設置面が設けられているため、それに相当する分のネジ穴や設置面をハウジング側から省略することができる。従って、ハウジング側にネジ穴や設置面を加工することにより増大する冷媒漏れ等のリスクを低減し、信頼性を高めることができる。
【0025】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上述のいずれかのインバータ一体型電動圧縮機において、前記収容ケースには、前記吸入ポートに近い側に前記コモンモードコイルおよび前記ノーマルモードコイルが設置されていることを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、収容ケース内の吸入ポートに近い側にコモンモードコイルおよびノーマルモードコイルが設置されているため、吸入ポートを経てハウジング内に吸入される最も温度の低い低圧冷媒ガスを冷熱源としてコモンモードコイルおよびノーマルモードコイルを効率よく冷却することができる。従って、高電圧系部品の中でも発熱量が多いコモンモードコイルおよびノーマルモードコイルの冷却効果を高めることができる。
【0027】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上述のいずれかのインバータ一体型電動圧縮機において、前記収容ケースは、前記ハウジング外周の固定設置面にメタルタッチ部を残し、Oリングを介して固定設置されていることを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、収容ケースがハウジング外周の固定設置面にメタルタッチ部を残し、Oリングを介して固定設置されているため、収容ケース内に対する防水機能をOリングにより確保することができるとともに、固定設置面のメタルタッチ部を伝熱面としてヒートシンクであるハウジングにより収容ケースを冷却することができる。従って、収容ケースを別体としても防水性および冷却性を十分に確保することができる。なお、冷却効果を上げるには、固定設置面のフランジ面積を大きくすればよい。
【0029】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上述のいずれかのインバータ一体型電動圧縮機において、前記収容ケースの外表面には、その表面積減少手段および/または入熱阻止手段が施されていることを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、収容ケースの外表面に表面積減少手段および/または入熱阻止手段が施されているため、収容ケースに対する外部からの輻射等による入熱を可及的に減少することができる。従って、収容ケースに対する冷却効果を上げることができる。なお、表面積減少手段を施すとは、外表面にリブや減肉部を設けないことであり、入熱阻止手段を施すとは、外表面を研磨加工すること、あるいはダイカスト製品の場合は外表面をショットブラスト処理しないこと等である。
【0031】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上述のいずれかのインバータ一体型電動圧縮機において、前記収容ケースには、前記ハウジングの高圧側部位からモータ軸線方向に沿って前記高電圧ケーブルが接続されていることを特徴とする。
【0032】
本発明によれば、収容ケースにハウジングの高圧側部位からモータ軸線方向に沿って高電圧ケーブルが接続されているため、ハウジングの圧縮機構が内蔵されている高圧側部位の外周スペースを利用してモータ軸線方向に高電圧ケーブルを配線することができる。従って、インバータ一体型電動圧縮機の搭載に必要なスペースをより小さくし、搭載性を高めることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明のインバータ一体型電動圧縮機によると、コモンモードコイル、ノーマルモードコイル、平滑コンデンサ等の高電圧系部品から放出される電磁ノイズを第2収容部によって遮蔽し、該電磁ノイズが第1収容部に収容されているインバータモジュールへと伝搬するのを遮断することができるため、インバータ装置における自己ノイズによる誤動作を防止し、信頼性を向上することができるとともに、第2収容部内に収容設置されている高電圧系部品を、吸入ポートからハウジング内に吸入される低圧冷媒ガスを冷熱源に、ハウジングをヒートシンクとして効率よく冷却することができるため、インバータ装置の冷却性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係るインバータ一体型電動圧縮機のインバータ収容部の蓋部材を取り外した状態の平面図である。
【図2】図1に示すインバータ一体型電動圧縮機のインバータ収容部のインバータモジュールを取り外した状態の平面図である。
【図3】図1に示すインバータ一体型電動圧縮機の縦断面図である。
【図4】図1に示すインバータ一体型電動圧縮機における高電圧系部品を収容する収容ケース組み立て品の平面図である。
【図5】図4におけるA−A断面図である。
【図6】図4における右側面図である。
【図7】図6におけるB−B断面図である。
【図8】図4に示す高電圧系部品を収容する収容ケースの平面図である。
【図9】図8におけるC−C断面図である。
【図10】図8における右側面図である。
【図11】図8における背面図である。
【図12】図1に示すインバータ一体型電動圧縮機のインバータ装置高電圧ラインの電気配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図1ないし図12を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係るインバータ一体型電動圧縮機のインバータ収容部の蓋部材を取り外した状態の平面図が示され、図2には、さらにインバータモジュールを取り外した状態の平面図が示され、図3には、その縦断面図が示されている。
インバータ一体型電動圧縮機1は、その外殻を構成する円筒状のハウジング2を有している。円筒状のハウジング2は、電動モータ3が収容されるモータハウジング4と、図示省略の圧縮機構が収容される圧縮機ハウジング5とをボルト6により一体に締め付け固定して構成されており、これらのハウジング4,5はアルミダイカスト製とされている。なお、本実施形態には、主にモータハウジング4側が図示されている。
【0036】
ハウジング2内に内蔵される電動モータ3および圧縮機構(図示省略)は、モータ軸7を介して連結され、電動モータ3の回転により圧縮機構が駆動されるように構成されている。ハウジング(モータハウジング4)2の後方端側(図1の右側)の外周側部には、低圧冷媒ガスを吸入する吸入ポート8が設けられており、吸入ポート8からハウジング2内に吸入された冷媒ガスは、電動モータ3の周りをモータ軸7の軸線L方向に流通後、圧縮機構に吸い込まれて圧縮される。圧縮機構で圧縮された高温高圧の冷媒ガスは、ハウジング(圧縮機ハウジング5)2内の吐出チャンバに吐出された後、ハウジング(圧縮機ハウジング5)2の前方端側に設けられている図示省略の吐出ポートから外部へと送出されるように構成されている。
【0037】
このため、ハウジング2の電動モータ3が内蔵されているモータハウジング4側は、後方端側に設けられている吸入ポート8から低圧の冷媒ガスが吸入され、それが圧縮機ハウジング5へと流通される低圧側部位とされている。また、モータハウジング4と結合されている圧縮機ハウジング5側は、内蔵される圧縮機構を境にしてその反モータハウジング側が、圧縮された高圧の冷媒ガスが吐出される吐出チャンバが形成されている高圧側部位とされている。
【0038】
ハウジング2には、例えば後方端側の下部および前方端側の下部ならびに上部の計3箇所に図示省略の取り付け脚が設けられている。インバータ一体型電動圧縮機1は、この取り付け脚を介して車両の走行用原動機の側壁等に設けられる片持ち型のブラケットにボルト等で固定設置され、車両に搭載される。なお、インバータ一体型電動圧縮機1は、一般にその一側面を片持ち型のブラケットに沿わせてモータ軸線L方向を車両の前後方向または左右方向に向け、上下3点で片持ち支持されるのが通常である。
【0039】
さらに、ハウジング(モータハウジング4)2の外周には、その上面部位に平面形状が略四方形状とされたインバータ収容部(第1収容部)9が一体に成形されている。このインバータ収容部(第1収容部)9は、上面が開放された所定高さの周囲壁により囲われたボックス構造とされ、インバータ装置20を構成するインバータモジュール(インバータ回路部)21が収容設置された後、上面が図示省略の板状の蓋部材によって密閉されるように構成されている。
【0040】
インバータ収容部(第1収容部)9は、ハウジング2の外周面に対応する部位が略平らな底面とされており、その内部には、インバータモジュール(インバータ回路部)21を構成するパワー系基板の裏面が接触される接触面10、インバータモジュール21が設置される設置ボス11、インバータ装置20で変換された三相交流電力を電動モータ3に給電するガラス密閉端子12が設置される取り付け孔13、後述する高電圧系部品30を介して高電圧の直流電力をインバータモジュール21に供給する中継バスバー14が設置される設置面15等が設けられている。
【0041】
このインバータ収容部9内には、インバータ装置20の回路部を構成するインバータモジュール(インバータ回路部)21が設置ボス11にビス22を介して設置されている。インバータモジュール(インバータ回路部)21は、複数個のIGBT等の半導体スイッチング素子とその駆動回路等が実装されたパワー系基板と、CPU等の低電圧で駆動される制御通信回路等が実装されたCPU基板とを樹脂製ケースを介して一体にモジュール化したものであり、パワー系基板の底面がインバータ収容部(第1収容部)9内の接触面10に接触され、ハウジング(モータハウジング4)2内を流通する低圧冷媒ガスを介して冷却されるように設置されている。
【0042】
上記のインバータモジュール(インバータ回路部)21には、その外周囲から突出するように、高電圧の直流電力が中継バスバー14を介して入力されるP−N端子23A,23Bと、インバータ装置20で変換された三相交流電力を電動モータ3にガラス密閉端子12を介して給電するU−V−W端子24A,24B,24Cと、が設けられている。
【0043】
また、ハウジング(モータハウジング4)2の外周には、その低圧側部位の吸入ポート8が設けられている側の側面に、インバータ装置20の一部を成す高電圧系部品30が収容される収容ケース40を固定設置するための設置面(フランジ面)16が一体成形されている。この設置面(フランジ面)16は、一定の幅を有するフランジが略四方形状を成すように形成されており、収容ケース(第2収容部)40が防水用のOリング17を介してフランジ面とメタルタッチするようにボルト18により締め付け固定される構成とされている。
【0044】
収容ケース(第2収容部)40内に収容設置される高電圧系部品30は、図12に示されるように、高電圧電源ユニットから高電圧ケーブル31,32を介して端子台33に接続され、この端子台33からインバータモジュール21のP−N端子23A,23Bに高電圧の直流電力を供給する高電圧ライン34に設けられるコモンモードコイル35、ノーマルモードコイル36および平滑コンデンサ37等からなり、インバータ装置20のコモンモードノイズやスイッチングノイズ、電流リップル等を低減するためのものである。
【0045】
収容ケース(第2収容部)40は、図8ないし図11に示されるように、高電圧系部品30を収容する空間41を備えたアルミダイカスト製の略四方形状のケースであり、周囲にハウジング2側の設置面(フランジ面)16にOリング17を介して接触(メタルタッチ)されるフランジ面42が設けられているとともに、その四コーナー部にハウジング2に対しボルト18を介して締め付け固定される取り付け部43が一体に形成されている。
【0046】
高電圧系部品30を収容する空間41には、平滑コンデンサ37を収容設置する四角形状の平滑コンデンサ設置部44と、ノーマルモードコイル36を収容設置する楕円形状のノーマルモードコイル設置部45と、コモンモードコイル35を収容設置する楕円形状のコモンモードコイル設置部46と、高電圧ケーブル31,32が接続される端子台33を設置する設置ボス(設置面)47と、コモンモードコイル35、ノーマルモードコイル36、および平滑コンデンサ37間を電気的に接続する高電圧ライン34を構成するバスバーアセンブリ(バスバー)34Aの設置ボス(設置面)48と、が設けられている。
【0047】
上記のノーマルモードコイル設置部45およびコモンモードコイル設置部46は、収容ケース40をハウジング2に設置した状態において、吸入ポート8に近い側の側部(図8の左側)に設けられている。また、平滑コンデンサ設置部44、ノーマルモードコイル設置部45、およびコモンモードコイル設置部46の底面は、それぞれ平らな設置面とされており、さらに、端子台33およびバスバーアセンブリ34Aが設置される設置ボス(設置面)47および48には、それぞれ端子台33およびバスバーアセンブリ34Aをネジ止めするネジ穴49,50が加工されている。
【0048】
また、収容ケース40の圧縮機ハウジング5側に面する側面(図8の右側面)には、高電圧ケーブル31,32に設けられているコネクタ38がボルト39を介して締め付け固定されるコネクタ接続面51が設けられている。このコネクタ接続面51には、高電圧ケーブル31,32が貫通される貫通穴52,53が設けられるとともに、ボルト39を締め付けるネジ穴54が加工されている。また、収容ケース40の外表面は、図11に示されるように、外部からの輻射等による入熱を可及的に減少するため、表面積を増大することになるリブや減肉部を設けないすっきりしたフラットな表面とされるとともに、ダイカスト製品にもかかわらず外表面のショットブラスト処理が省略された構成とされている。
【0049】
上記した収容ケース(第2収容部)40の空間41には、図4ないし図7に示されるように、直方体ケースで外形が包まれた平滑コンデンサ37が四角形状の平滑コンデンサ設置部44にシリコン系接着剤を介して固定設置され、また楕円筒形状のノーマルモードコイル36が樹脂製ケース55に収容されて楕円形状のノーマルモードコイル設置部45にシリコン系接着剤を介して固定設置され、さらに楕円筒形状のコモンモードコイル35が樹脂製ケース56に収容されて楕円形状のコモンモードコイル設置部46にシリコン系接着剤を介して固定設置される。
【0050】
これらのコモンモードコイル35、ノーマルモードコイル36、および平滑コンデンサ37は、設置ボス48に対してネジ57により固定設置されるバスバーアセンブリ34Aを介して、図12に示されるように、電気的に配線接続される。なお、コモンモードコイル35、ノーマルモードコイル36、および平滑コンデンサ37の各端子とバスバーアセンブリ34Aとは溶接により接続される。
【0051】
また、収容ケース(第2収容部)40の空間41には、設置ボス47にネジ58を介して端子台33が固定設置される。この端子台33には、コモンモードコイル35の2本の端子が接続されるとともに、収容ケース40のコネクタ接続面51にコネクタ38がボルト39を介して接続され、貫通穴52,53を通して収容ケース40の内部に延長される高電圧ケーブル31,32に端部に設けられている端子がビス止め等により接続される。
【0052】
上記のように、収容ケース40の空間41内には、コモンモードコイル35、ノーマルモードコイル36および平滑コンデンサ37等の高電圧系部品30と、端子台33と、バスバーアセンブリ34Aと、高電圧ケーブル31,32とが組み込まれ、これらが一体の組み立て品(サブアッシー品)としてハウジング2の設置面(フランジ面)16にOリング17を介してボルト18により締め付け固定される構成とされている。また、収容ケース40の空間41の隙間には、高電圧系部品30を固定するとともに、収容部品間の電気的絶縁を確保するため、放熱性を有するシリコン系接着剤が充填され、該シリコン系接着剤の充填後にハウジング2に組み付けられるようになっている。
【0053】
収容ケース40の圧縮機ハウジング5側に面する側面(図8の右側面)にコネクタ38を介して接続される高電圧ケーブル31,32は、圧縮機ハウジング5の外周側面のスペースを利用してモータ軸線L方向から配線されている。なお、収容ケース40内に設置された高電圧系部品30の出力端(平滑コンデンサ37の出力端)とインバータ収容部9内に設置されたインバータモジュール21のP−N端子23A,23Bとは、上記した中継バスバー14を介して電気的に接続されるようになっている。
【0054】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
車両に搭載されている電源ユニットから高電圧ケーブル31,32を介して電動圧縮機1に供給される高電圧の直流電力は、コネクタ38を介して収容ケース(第2収容部)40内に設置されている端子台33に入力される。この直流電力は、端子台26に接続されているコモンモードコイル35を経由し、その下流にバスバーアセンブリ34Aを介して接続されているノーマルモードコイル36、平滑コンデンサ37を経た後、中継バスバー14を介してインバータモジュール21のP−N端子23A,23Bに入力される。この間に、コモンモードコイル35、ノーマルモードコイル36および平滑コンデンサ37により公知の如くコモンモードノイズやスイッチングノイズ、電流リップルが低減される。
【0055】
インバータモジュール(インバータ回路部)21のP−N端子23A,23Bに入力された直流電力は、図示省略の上位制御装置からCPU基板に送信される指令信号に基づいて制御されるパワー基板上の半導体スイッチング素子のスイッチング動作により、指令周波数の三相交流電力に変換される。この三相交流電力は、インバータモジュール21に設けられているU−V−W端子24A,24B,24Cからガラス密閉端子12を介してハウジング2内の電動モータ3に給電される。これによって、電動モータ3が指令周波数で回転駆動され、圧縮機構が動作される。
【0056】
圧縮機構の動作により、吸入ポート8から低温低圧の冷媒ガスがハウジング(モータハウジング4)2内に吸い込まれる。この冷媒は、電動モータ3の周囲をモータ軸7の軸線L方向に流動されて圧縮機構に吸入され、高温高圧状態に圧縮された後、ハウジング(圧縮機ハウジング5)2内の吐出チャンバに吐き出される。そして、この高圧冷媒は、吐出ポートから外部へと送出される。この間、吸入ポート8からハウジング(モータハウジング4)2の一端側においてその内部に吸い込まれ、モータ軸線L方向に流動される低温低圧の冷媒ガスは、モータハウジング4の壁面を介してインバータ収容部(第1収容部)9内の接触面10に接触されて設置されているインバータモジュール21のパワー系基板上の半導体スイッチング素子(IGBT)等の発熱部品を強制的冷却する。
【0057】
同様に、ハウジング(モータハウジング4)2の外周に設けられている設置面16にフランジ面42がメタルタッチするように固定設置されている収容ケース(第2収容部)40は、フランジ面42を伝熱面としてヒートシンクとなるハウジング(モータハウジング4)2を介して冷却され、内部に収容されているコモンモードコイル35、ノーマルモードコイル36および平滑コンデンサ37等の高電圧系部品30を冷却することができる。
【0058】
特に、収容ケース40は、吸入ポート8が設けられている側の外周側面に設置されているので、吸入ポート8から吸入された温度の低い冷媒ガスによりハウジング2を介して効率よく冷却される。このため、収容ケース40内に収容設置されている高電圧系部品30の冷却効率を一段と高めることができる。また、収容ケース40内において、コモンモードコイル35およびノーマルモードコイル36は、吸入ポート8に近い側に収容されているため、発熱量の多いコモンモードコイル35およびノーマルモードコイル36を効率よく冷却することができ、その冷却効果を高めることができる。
【0059】
従って、インバータ装置20を構成する発熱部品に対して、それぞれを効率よく冷却することができ、各発熱部品の耐熱性能を高め、インバータ装置20の信頼性を向上することができる。また、収容ケース40内には、高電圧系部品30の固定と絶縁を兼ねて放熱性を有するシリコン系接着剤が充填されている。これによって、高電圧系部品30を収容ケース40内にそれぞれ絶縁性を確保して収容設置できるだけでなく、高電圧系部品30から放出される熱をシリコン系接着剤および収容ケース40を介して放熱することができるため、高電圧系部品30の放熱性能を十分に確保することができる。
【0060】
なお、高電圧系部品30の冷却効果は、伝熱面となる設置面16およびフランジ面42の面積の大小により左右される。従って、フランジ面積を大きくし、伝熱面積を増加することによって冷却効果を高めることができる。
【0061】
また、インバータ装置20をハウジング2の外周に一体に組み込むためのインバータ収容部を、パワー系基板とCPU基板とをモジュール化したインバータモジュール21が収容設置されるインバータ収容部(第1収容部)9と、インバータモジュール21に直流電力を供給する高電圧ライン34に設けられるコモンモードコイル35、ノーマルモードコイル36、平滑コンデンサ37等の高電圧系部品30が収容設置される収容ケース(第2収容部)40との2つの収容部に分け、それぞれを別個にハウジング2の外周に設けるようにしているため、コモンモードコイル35、ノーマルモードコイル36、平滑コンデンサ37等の高電圧系部品30から放出される電磁ノイズを収容ケース(第2収容部)40により覆って遮蔽し、該電磁ノイズがインバータ収容部(第1収容部)9に収容設置されているインバータモジュール21へと伝搬するのを遮断することができる。従って、インバータ装置20の自己ノイズによる誤動作を防止し、信頼性を向上することができる。
【0062】
この際、高電圧ケーブル31,32、端子台33、バスバーアセンブリ34A、および高電圧系部品30等を纏めて収容ケース40に収容設置し、一体の組み立て品(サブアッシー品)としてハウジング2の外周に組み付けることができる。従って、高電圧ケーブル31,32、端子台33、バスバーアセンブリ34A、および高電圧系部品30等の組み立て性を改善することができるとともに、これらの部品から放出される電磁ノイズを上記の通り遮蔽し、インバータ収容部9内に設けられているインバータモジュール21との間での電磁ノイズ干渉を防止することができる。また、比較的大きい高電圧系部品30を高電圧ケーブル31,32と共に一体にコンパクトに纏めてハウジング2の外周に組み込むことができるため、圧縮機全体としてコンパクト化および軽量化を図ることができる。
【0063】
さらに、インバータモジュール21が収容されるインバータ収容部9がハウジング2の外周上面部に設けられ、高電圧系部品30等が収容される収容ケース40がハウジング2の外周側面部に設けられているので、インバータ収容部9と収容ケース40とをハウジング2の外周の上面部と側面部とに互いに隣接して配置することができる。このため、インバータ収容部9に収容されるインバータモジュール21と収容ケース40に収容される高電圧系部品30との間を電気的に接続する中継バスバー14の長さを短くすることができるとともに、ハウジング2の外周を取り囲むようにインバータ装置20をコンパクトに組み込むことができる。
【0064】
また、インバータ収容部9がハウジング2と一体に成形されているため、このハウジング2と一体成形されたインバータ収容部9内にインバータモジュール21を組み込むことによって、インバータモジュール21を堅牢に保護し、収容ケース40内に収容されている高電圧系部品30から確実に遮蔽することができる。さらに、収容ケース40が高電圧系部品30を収容するケースとしてハウジング2とは別体とされ、ハウジング2の外周に固定設置される構成としているため、収容ケース40をコモンモードコイル35、ノーマルモードコイル36、および平滑コンデンサ37等を纏めて収容設置し、電磁ノイズを遮蔽するのに最適な構造の収容ケース40とすることができる。従って、高電圧系部品30を一括してハウジング2の外周にコンパクトに組み込むことができるとともに、高電圧系部品30から放出される電磁ノイズを確実に遮蔽することができる。
【0065】
また、収容ケース40がアルミ製とされ、コモンモードコイル35およびノーマルモードコイル36が樹脂製ケース55,56を介してアルミ製の収容ケース40内に収容設置されているため、高電圧系部品30等を軽量でかつ高強度のアルミ製収容ケース40により覆って堅牢に保護することができる。また、コモンモードコイル35およびノーマルモードコイル36を樹脂製ケース55,56に収容して設置しているため、これらのコイルをアルミ製収容ケース40内に絶縁性を確保して設置するための作業を容易化することができるとともに、コイル35,36を変更する場合、樹脂製ケース55,56の変更により対応が可能なため、アルミ製収容ケース40の共通化を図ることができる。
【0066】
なお、樹脂製ケース55,56は、上記のように、コイル35,36毎に独立したケースとしてもよいが、1つのケースに仕切りを設けて複数個の収納部を設け、複数個のコイル35,36を1つのケースに収納する構成としてもよい。この場合、樹脂製ケースの数を減少することができるとともに、樹脂製ケースを接着固定する作業をより簡素化することができる。
【0067】
また、収容ケース40内に収容設置されるコモンモードコイル35、ノーマルモードコイル36、および平滑コンデンサ37をバスバーアセンブリ34Aにより電気的に接続しているため、バスバーアセンブリ34Aに複数個の高電圧系部品30の接続端子を溶接することにより、高電圧系部品30間を簡素に接続することができる。従って、収容ケース40内に余計なスペースを確保する必要がなく、収容ケース40をコンパクトにすることができる。また、収容ケース40に収容部品を設置するためのネジ穴49,50や設置ボス(設置面)47,48を設けているため、それに相当する分のネジ穴や設置面をハウジング2側から省略することができる。これによって、ハウジング2側にネジ穴や設置面を加工することにより増大する冷媒漏れ等のリスクを低減することができる。
【0068】
さらに、収容ケース40の外表面をリブや減肉部を設けずフラットな外表面とし、その表面積を可及的に減少するとともに、ダイカスト製品にもかかわらず外表面をショットブラスト処理しないようにしている。このような表面積減少手段および/または入熱阻止手段を施すことにより、収容ケース40に対する外部からの輻射等による入熱を可及的に減少することができる。これによって、収容ケース40に対する冷却効果を一段と高めることができる。なお、入熱阻止手段として外表面を研磨加工または切削加工してもよい。
【0069】
また、収容ケース40内に収容設置されている高電圧系部品30とインバータ収容部9内に収容設置されているインバータモジュール21とを中継バスバー14を介して電気的に接続しているため、収容ケース40の設置位置を変える場合、中継バスバー14の変更によって容易に対応することができる。従って、収容ケース40のハウジング2に対する設置位置の自由度を上げ、車両に対する搭載性を高めることができる。なお、中継バスバー14を溶接にて接続することにより、特殊ボルトを用いなくても取り外し困難な構成とすることができる。
【0070】
さらに、収容ケース40に対してハウジング2の高圧側部位(圧縮機ハウジング5側)からモータ軸線L方向に沿って高電圧ケーブル31,32が接続されるようにしているため、ハウジング2の圧縮機構が内蔵されている高圧側部位の外周スペースを利用してモータ軸線L方向に高電圧ケーブル31,32を配線することができる。これにより、インバータ一体型電動圧縮機1の周りに確保すべき搭載に必要なスペースを小さくし、車両への搭載性を高めることができる。
【0071】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態において、インバータ一体型電動圧縮機1の圧縮機構は、如何なる形式の圧縮機構であってよい。また、インバータ収容部9をハウジング(モータハウジング4)2と一体に成形した例について説明したが、インバータ収容部9をハウジング2と別体とし、ハウジング2に組み付ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 インバータ一体型電動圧縮機
2 ハウジング
3 電動モータ
4 モータハウジング
5 圧縮機ハウジング
8 吸入ポート
9 インバータ収容部(第1収容部)
14 中継バスバー
16 設置面(フランジ面)
17 Oリング
20 インバータ装置
21 インバータモジュール(インバータ回路部)
30 高電圧系部品
31,32 高電圧ケーブル
33 端子台
34 高電圧ライン
34A バスバーアセンブリ(バスバー)
35 コモンモードコイル
36 ノーマルモードコイル
37 平滑コンデンサ
40 収容ケース(第2収容部)
47,48 設置ボス(設置面)
49,50 ネジ穴
55,56 樹脂製ケース
L モータ軸線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータおよび圧縮機構が内蔵されているハウジングの外周にインバータ収容部が設けられ、その内部に高電圧電源からの直流電力を三相交流電力に変換して前記電動モータに給電するインバータ装置が設けられているインバータ一体型電動圧縮機において、
前記インバータ収容部は、半導体スイッチング素子等が実装されたパワー系基板と、制御通信回路等が実装されたCPU基板とを備えたインバータモジュールが収容される第1収容部と、前記インバータモジュールに高電圧電源からの直流電力を供給する高電圧ラインに設けられるコモンモードコイル、ノーマルモードコイル、平滑コンデンサ等の高電圧系部品が収容される第2収容部とに分離され、それぞれが別個に前記ハウジングの外周に設けられており、
前記第2収容部は、前記ハウジングの低圧側部位の吸入ポートが設けられている側の外周側面に設けられていることを特徴とするインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項2】
前記第1収容部は、前記ハウジング外周の上面部に設けられ、前記ハウジングと一体に成形されていることを特徴とする請求項1に記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項3】
前記第2収容部は、前記高電圧系部品の収容ケースとして前記ハウジングとは別体とされ、前記高電圧系部品を収容して前記ハウジングの外周側面に一体的に固定設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項4】
前記収容ケースには、前記高電圧系部品および高電圧ケーブルが接続される端子台が収容設置され、該収容ケースが前記高電圧ケーブルと共に一体の組み立て品として前記ハウジングの外周側面に固定設置されていることを特徴とする請求項3に記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項5】
前記収容ケースは、アルミ製とされ、前記コモンモードコイルおよび前記ノーマルモードコイルは、樹脂製ケースを介して前記アルミ製収容ケース内に収容設置されていることを特徴とする請求項3または4に記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項6】
前記収容ケース内には、前記高電圧系部品の固定と絶縁を兼ねて放熱性を有するシリコン系接着剤が充填されていることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項7】
前記収容ケース内に収容設置された複数個の前記高電圧系部品は、バスバーを介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項3ないし6のいずれかに記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項8】
前記収容ケースには、収容部品を設置するためのネジ穴および設置面が設けられていることを特徴とする請求項3ないし7のいずれかに記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項9】
前記収容ケースには、前記吸入ポートに近い側に前記コモンモードコイルおよび前記ノーマルモードコイルが設置されていることを特徴とする請求項3ないし8のいずれかに記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項10】
前記収容ケースは、前記ハウジング外周の固定設置面にメタルタッチ部を残し、Oリングを介して固定設置されていることを特徴とする請求項3ないし9のいずれかに記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項11】
前記収容ケースの外表面には、その表面積減少手段および/または入熱阻止手段が施されていることを特徴とする請求項3ないし10のいずれかに記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項12】
前記収容ケースには、前記ハウジングの高圧側部位からモータ軸線方向に沿って前記高電圧ケーブルが接続されていることを特徴とする請求項4ないし11のいずれかに記載のインバータ一体型電動圧縮機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−7390(P2013−7390A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−225674(P2012−225674)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【分割の表示】特願2008−127703(P2008−127703)の分割
【原出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】