説明

インバータ装置

【課題】サージの発生を抑制しつつ、スイッチング動作の1サイクルにおける動作パターンを少なくして、より高周波の電力を発生させることができるインバータ装置を提供すること。
【解決手段】インバータ回路20と、直流電源11と、コイルL及びコンデンサCで構成される誘導加熱回路30と、インバータ出力電流Iとインバータ出力電圧Vの位相差を制御するとともに、インバータ回路20における第1〜第4スイッチング素子tr1〜tr4のオン・オフ制御を行う制御部40とを有する誘導加熱装置10において、制御部40は、第1スイッチング素子tr1又は第3スイッチング素子tr3をオフしてから第3スイッチング素子tr3又は第1スイッチング素子tr1をオンするまでに、第2スイッチング素子tr2のオンと第4スイッチング素子tr4のオフ、又は第2スイッチング素子tr2のオフと第4スイッチング素子tr4のオンを同時に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング時に発生するサージをスナバ回路を用いずに抑制するインバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ装置に備わるスイッチング素子は、例えばPWM(pulse width modulation)制御などによって間欠駆動される。スイッチング素子に電圧が掛かり、又は電流が流れる状況でのスイッチングはハードスイッチングと称される。ハードスイッチングによれば、スイッチングの際に過渡応答を生じる。この過渡応答は、大きなスイッチングノイズやスイッチング損失を生じさせる。そのため、ハードスイッチングを行うインバータ装置には、サージ電圧、サージ電流を吸収するためのスナバ回路が設けられている。
【0003】
ところが、このようなスナバ回路は、スイッチング素子ごとに設ける必要があるため、回路構成が複雑になってしまう。また、スナバ回路で吸収される分のエネルギー損失が発生するという問題があった。
【0004】
そのため、ハードスイッチングに対して、スイッチング素子に掛かる電圧や流れる電流がほぼゼロの状態でスイッチングさせるソフトスイッチングと称される方式がある。ソフトスイッチングの基本的な構成は、スイッチング素子の外部に、LC共振回路を設けるものである。スイッチング素子のスイッチングタイミングの制御によりLC共振回路に共振を発生させて、スイッチングの際の電圧や電流をゼロの状態とする。これにより、スイッチングに伴うスイッチングノイズやスイッチング損失が、ハードスイッチングに比べて大きく低減されるため、スナバ回路が不要となる。
【0005】
そして、このようなソフトスイッチングを行うインバータ装置として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。このインバータ装置では、上アーム若しくは下アームの2つの半導体スイッチング素子を短時間の間、両方をオンにすることにより電流ゼロの状態でのソフトスイッチングを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−284749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したインバータ装置では、2つの上アーム若しくは下アームの半導体スイッチング素子の両方をオンにするため、例えば図5に示すような順番で半導体スイッチ素子をオン・オフさせる必要がある。そのため、スイッチング動作の1サイクルにおける動作パターンが多くなり、より高周波の電力を発生させることが困難であるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、サージの発生を抑制しつつ、スイッチング動作の1サイクルにおける動作パターンを少なくして、より高周波の電力を発生させることができるインバータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、直列接続され相互にオン・オフする第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、直列接続され相互にオン・オフする第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子とが並列接続されたインバータ回路と、前記インバータ回路に接続された直流電源と、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子の接合点と前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子の接合点との間に接続されたリアクタ及びコンデンサの直列共振回路と、前記直列共振回路を流れるインバータ出力電流が、前記インバータ回路から出力されるインバータ出力電圧に対して、所定の位相だけ遅れるように前記インバータ出力電流と前記インバータ出力電圧の位相差を制御するとともに、前記第1〜第4スイッチング素子のオン・オフ制御を行う制御部と、を有するインバータ装置において、前記制御部は、前記第1スイッチング素子又は前記第3スイッチング素子をオフしてから前記第3スイッチング素子又は前記第1スイッチング素子をオンするまでに、前記第2スイッチング素子のオンと前記第4スイッチング素子のオフ、又は前記第2スイッチング素子のオフと前記第4スイッチング素子のオンを同時に行うことを特徴とする。
【0010】
このインバータ装置では、制御部により、第1スイッチング素子又は第3スイッチング素子がオフされてから第3スイッチング素子又は第1スイッチング素子がオンされるまでに、第2スイッチング素子のオンと第4スイッチング素子のオフ、又は第2スイッチング素子のオフと第4スイッチング素子のオンが同時に行われる。そして、インバータ出力電流がインバータ出力電圧に対して、所定の位相だけ遅れるようにインバータ出力電流とインバータ出力電圧の位相差を制御しているため、インバータ出力電流の流れる向きが逆転するタイミングがある。そのタイミングを調整することにより、従来のように、ソフトスイッチングを実現するために、第1スイッチング素子と第3スイッチング素子、又は第2スイッチング素子と第4スイッチング素子の両方を同時にオンすることなく、各スイッチング素子に電流が流れていない状態又は電圧が印加されていない状態で、各スイッチング素子をオン又はオフすることができる。従って、サージの発生を抑制しつつ、スイッチング動作の1サイクルにおける動作パターンを少なくすることができる。その結果、より高周波の電力を発生させることができる。
【0011】
そして、インバータ出力電流の流れる向きが逆転するタイミングを調整するには、前記制御部は、前記第2スイッチング素子のオンと前記第4スイッチング素子のオフを同時に行った後に前記第3スイッチング素子をオンした状態、及び前記第2スイッチング素子のオフと前記第4スイッチング素子のオンを同時に行った後に前記第1スイッチング素子をオンした状態で、前記インバータ出力電流の流れる方向が逆になるように前記位相差を制御すればよい。
【0012】
このようにインバータ出力電流とインバータ出力電圧の位相差を制御することにより、確実に、各スイッチング素子に電流が流れていない状態又は電圧が印加されていない状態で、各スイッチング素子をオン又はオフすることができる。これにより、確実にサージの発生を抑制しつつ、スイッチング動作の1サイクルにおける動作パターンを少なくして、より高周波の電力を発生させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るインバータ装置によれば、上記した通り、サージの発生を抑制しつつ、スイッチング動作の1サイクルにおける動作パターンを少なくして、より高周波の電力を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係る誘導加熱装置の構成を示す回路図である。
【図2】インバータ出力電圧とインバータ出力電流との関係を示す図である。
【図3】インバータ回路でのスイッチング動作の1サイクルにおけるモード、各モードにおける各スイッチング素子の状態、及び電流の状態を模式的に示す図である。
【図4】各モードへの移行タイミング、及び各スイッチング素子のオン・オフのタイミングを示す図である。
【図5】従来のインバータ装置における1サイクルのスイッチング動作パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の無段変速機を具体化した実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。ここでは、自動車部品などに高周波焼入れを行う誘導加熱装置に本発明を適用した場合を例示する。
【0016】
そこで、本実施の形態に係る誘導加熱装置について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態に係る誘導加熱装置の構成を示す回路図である。図2は、インバータ出力電圧とインバータ出力電流との関係を示す図である。
図1に示すように、誘導加熱装置10には、直流電源11と、インバータ回路20と、誘導加熱回路30と、制御部40とが備わっている。そして、誘導加熱装置10は、直流電源11によって駆動されるようになっている。直流電源11は、商用交流を整流平滑して直流電源としたものである。
【0017】
インバータ回路20は、回路に流れる電流のオン・オフを制御して擬似的に単相交流を作り出すものである。このインバータ回路20は、4つの絶縁ゲート型両極性トランジスタ(IGBT又はMOSFET)で構成されるスイッチング素子tr1〜tr4からなるブリッジ回路である。具体的には、スイッチング素子tr1,tr2の直列接続回路と、スイッチング素子tr3,tr4の直列接続回路とを、並列接続してインバータ回路20が構成されている。
【0018】
誘導加熱回路30には、コイルLとコンデンサCが備わっている。誘導加熱回路30では、コイルLとコンデンサCが直列に接続されている。コンデンサCは、コイルLとで直列共振回路を構成する共振コンデンサである。この誘導加熱回路30は、スイッチング素子tr1とtr2の接合点、及びスイッチング素子tr3とtr4の接合点に接続されている。そして、誘導加熱回路30では、インバータ回路20からのインバータ出力電圧とインバータ出力電流とを共振させることで誘導加熱回路30におけるインバータ出力電流が最大となるようになっている。
【0019】
制御部40は、各スイッチング素子tr1〜tr4のオン・オフを制御するものである。スイッチング素子tr1〜tr4のオン・オフ制御の詳細については後述する。また、制御部40は、インバータ出力電圧とインバータ出力電流との位相差を制御する機能(共振制御機能)も備えている。そして、この制御部40の共振制御機能により、図2に示すように、誘導加熱回路20を流れるインバータ出力電流Iが、インバータ回路20から出力されるインバータ出力電圧Vに対して所定の位相だけ遅れて出力されるようになっている。なお、この位相制御については、例えば、インバータ出力電圧の周波数を変更することで実現することができる。その詳細な方法は、本出願人が出願した特願2010−220963に記載されているので、ここではその説明を省略する。
【0020】
続いて、上記したインバータ回路20におけるスイッチング素子tr1〜tr4のオン・オフ制御について、図3及び図4を参照しながら説明する。図3は、各モードにおける各スイッチング素子の状態、及び電流の状態を模式的に示す図である。図4は、各モードへの移行タイミング、及び各スイッチング素子のオン・オフのタイミングを示す図である。
【0021】
スイッチング素子tr1〜tr4のスイッチング動作の1サイクルは、例示的に、図3に示すような状態遷移(モード(1)〜(6))で表すことができる。そして、各モードへの移行は、図4に示すようなタイミングで行われる。なお、図4において、破線で囲んだスイッチング素子がオンとなっている。
【0022】
[モード(1)]
図3に示すモード(1)では、スイッチング素子tr4のみがオンされた状態である。このモード(1)の状態にされるのは、例えば、図4に示す時刻t1や時刻t9である。モード(1)の状態では、誘導加熱回路30には、コイルLからコンデンサCの方向にインバータ出力電流Iが流れている。
【0023】
[モード(2)]
図3に示すモード(2)では、スイッチング素子tr1とスイッチング素子tr4がオンされた状態である。すなわち、モード(1)から(2)に移行する際に、スイッチング素子tr1がオンされる。このモード(2)への移行は、例えば、図4に示す時刻t2に行われる。
このとき、モード(2)に移行する直前のモード(1)において、図3に示すように、電流はスイッチング素子tr1には流れず、並列に接続された(又は内蔵された)ダイオードに流れている。そのため、モード(2)へ移行する際、スイッチング素子tr1は、コレクタ電流Ic=0の状態でオンされるため、スイッチングノイズやスイッチング損失が生じない。すなわち、インバータ出力電流Iに急激な変化が生じることなくサージ電流の発生を抑制することができる。
【0024】
ここで、モード(2)において、時刻t2にてスイッチング素子tr1がオンされた直後は、誘導加熱回路30には、コイルLからコンデンサCの方向にインバータ出力電流Iが流れている(状態(2a)参照)。その後、時刻t3にて、誘導加熱回路30に流れるインバータ出力電流Iの向きが変わり、誘導加熱回路30には、コンデンサCからコイルLの方向にインバータ出力電流Iが流れる(状態(2b)参照)。この状態(2b)では、スイッチング素子tr2に、直流電源11の電圧(コンデンサCの充電電圧)が印加されており、スイッチング素子tr1には電圧が印加されていない。
【0025】
[モード(3)]
図3に示すモード(3)では、スイッチング素子tr4のみがオンされた状態である。すなわち、モード(2)から(3)に移行する際に、スイッチング素子tr1がオフされる。このモード(3)への移行は、、例えば、図4に示す時刻t4に行われる。
このとき、モード(3)に移行する直前のモード(2)では、スイッチング素子tr1には電圧が印加されていない。そのため、モード(2)から(3)へ移行する際、スイッチング素子tr1は、コレクタ・エミッタ間電圧Vce=0の状態でオフされるため、スイッチングノイズやスイッチング損失が生じない。すなわち、インバータ出力電圧Vに急激な変化が生じることなくサージ電圧の発生を抑制することができる。
【0026】
ここで、モード(3)では、コンデンサCの充電電圧が放電されるため、スイッチング素子tr2に印加される電圧がゼロになる。また、この放電中、電流はスイッチング素子tr2には流れず、並列に接続された(又は内蔵された)ダイオードに流れる。
【0027】
[モード(4)]
図3に示すモード(4)では、スイッチング素子tr2のみがオンされた状態である。すなわち、モード(3)から(4)に移行する際に、スイッチング素子tr2のオンと、スイッチング素子tr4のオフが同時に行われる。このモード(4)への移行は、例えば、図4に示す時刻t5に行われる。
このとき、スイッチング素子tr2には電流が流れておらず、スイッチング素子tr2は、コレクタ電流Ic=0の状態でオンされるため、スイッチングノイズやスイッチング損失が生じない。すなわち、インバータ出力電流に急激な変化が生じることなくサージ電流の発生を抑制することができる。また、スイッチング素子tr4には電圧が印加されていないため、スイッチング素子tr4は、コレクタ・エミッタ間電圧Vce=0の状態でオフされるため、スイッチングノイズやスイッチング損失が生じない。すなわち、インバータ出力電圧Vに急激な変化が生じることなくサージ電圧の発生を抑制することができる。
【0028】
ここで、モード(4)の状態では、図3に示すように、誘導加熱回路30には、コンデンサCからコイルLの方向にインバータ出力電流Iが流れている。そのため、電流はスイッチング素子tr3には流れず、並列に接続された(又は内蔵された)ダイオードを流れている。
【0029】
[モード(5)]
図3に示すモード(5)では、スイッチング素子tr2とスイッチング素子tr3がオンされた状態である。すなわち、モード(4)から(5)に移行する際に、スイッチング素子tr3がオンされる。このモード(4)への移行は、例えば、図4に示す時刻t6に行われる。
このとき、モード(5)に移行する直前のモード(4)において、電流はスイッチング素子tr3には流れていないため、モード(5)へ移行する際、スイッチング素子tr3は、コレクタ電流Ic=0の状態でオンされる。そのため、スイッチングノイズやスイッチング損失が生じない。すなわち、インバータ出力電流Iに急激な変化が生じることなくサージ電流の発生を抑制することができる。
【0030】
ここで、モード(5)において、時刻t6にてスイッチング素子tr3がオンされた直後は、図3に示すように、誘導加熱回路30には、コンデンサCからコイルLの方向にインバータ出力電流Iが流れている(状態(5a)参照)。その後、時刻t7にて、誘導加熱回路30に流れるインバータ出力電流Iの向きが変わり、誘導加熱回路30には、コイルLからコンデンサCの方向にインバータ出力電流Iが流れる(状態(5b)参照)。この状態(5b)では、スイッチング素子tr4に、直流電源11の電圧(コンデンサCの充電電圧)が印加されており、スイッチング素子tr3には電圧が印加されていない。
【0031】
[モード(6)]
図3に示すモード(6)では、スイッチング素子tr2のみがオンされた状態である。すなわち、モード(5)から(6)に移行する際に、スイッチング素子tr3がオフされる。このモード(6)への移行は、例えば、図4に示す時刻t8に行われる。
このとき、モード(6)に移行する直前のモード(5)では、スイッチング素子tr3には電圧が印加されていない。そのため、モード(6)へ移行する際、スイッチング素子tr3は、コレクタ・エミッタ間電圧Vce=0の状態でオフされるため、スイッチングノイズやスイッチング損失が生じない。すなわち、インバータ出力電圧Vに急激な変化が生じることなくサージ電圧の発生を抑制することができる。
【0032】
ここで、モード(6)では、コンデンサCの充電電圧が放電されるため、スイッチング素子tr2に印加される電圧がゼロになる。また、この放電中、電流はスイッチング素子tr4には流れず、並列に接続された(又は内蔵された)ダイオードに流れる。
【0033】
その後、モード(6)から(1)に移行する。すなわち、スイッチング素子tr2のオフと、スイッチング素子tr4のオンが同時に行われる。このモード(1)への移行は、例えば、図4に示す時刻t9に行われる。
このとき、スイッチング素子tr4には電流が流れておらず、スイッチング素子tr4は、コレクタ電流Ic=0の状態でオンされるため、スイッチングノイズやスイッチング損失が生じない。すなわち、インバータ出力電流に急激な変化が生じることなくサージ電流の発生を抑制することができる。また、スイッチング素子tr2には電圧が印加されていないため、スイッチング素子tr2は、コレクタ・エミッタ間電圧Vce=0の状態でオフされるため、スイッチングノイズやスイッチング損失が生じない。すなわち、インバータ出力電圧Vに急激な変化が生じることなくサージ電圧の発生を抑制することができる。
【0034】
以後、上記したようにして、誘導加熱装置10では、順次、モード(1)〜(6)が遷移してスイッチング素子tr1〜tr4のスイッチング動作が制御される。そして、このスイッチング動作では、ソフトスイッチングを実現させるために、スイッチング素子tr1,tr3又はtr2,tr4を同時にオンさせる必要がない。そのため、スイッチング素子tr1,tr3又はtr2,tr4を同時にオンさせるモードが不要となり、スイッチング動作の1サイクルにおける動作パターンを、従来よりも少なくすることができる。従って、より高周波の電力を発生させることができる。また、モード切替時(スイッチング時)において、サージ電圧やサージ電流の発生が抑制されている。そして、ソフトスイッチングが実現されているためスナバ回路も不要である。
【0035】
以上、詳細に説明したように本実施の形態に係る誘導加熱装置10では、制御部40により、第1スイッチング素子tr1又は第3スイッチング素子tr3がオフされてから第3スイッチング素子tr3又は第1スイッチング素子tr1がオンされるまでに、第2スイッチング素子tr2のオンと第4スイッチング素子tr4のオフ、又は第2スイッチング素子tr2のオフと第4スイッチング素子tr4のオンが同時に行われる。そして、第2スイッチング素子tr2のオンと第4スイッチング素子tr4のオフを同時に行った後に第3スイッチング素子tr3をオンした状態、及び第2スイッチング素子tr2のオフと第4スイッチング素子tr4のオンを同時に行った後に第1スイッチング素子tr1をオンした状態で、インバータ出力電流Iの流れる方向が逆になるようにインバータ出力電力Iとインバータ出力電圧Vとの位相差が制御される。
【0036】
これにより、従来のように、第1スイッチング素子tr1と第3スイッチング素子tr3、又は第2スイッチング素子tr2と第4スイッチング素子tr4の両方を同時にオンすることなく、各スイッチング素子tr1〜tr4に電流が流れていない状態又は電圧が印加されていない状態で、各スイッチング素子tr1〜tr4をオン又はオフすることができる。従って、誘導加熱装置10によれば、サージの発生を抑制しつつ、インバータ回路20でのスイッチング動作1サイクルにおける動作パターンを少なくすることができるため、より高周波の電力を発生させることができる。
【0037】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記した実施の形態では、本発明を高周波焼入れを行う誘導加熱装置に適用した場合を例示しているが、その他の誘導加熱装置などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 誘導加熱装置
11 直流電源
20 インバータ回路
30 誘導加熱回路
40 制御部
C コンデンサ
I インバータ出力電流
L コイル
V インバータ出力電圧
tr1〜4 スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続され相互にオン・オフする第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、直列接続され相互にオン・オフする第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子とが並列接続されたインバータ回路と、
前記インバータ回路に接続された直流電源と、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子の接合点と前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子の接合点との間に接続されたリアクタ及びコンデンサの直列共振回路と、
前記直列共振回路を流れるインバータ出力電流が、前記インバータ回路から出力されるインバータ出力電圧に対して、所定の位相だけ遅れるように前記インバータ出力電流と前記インバータ出力電圧の位相差を制御するとともに、前記第1〜第4スイッチング素子のオン・オフ制御を行う制御部と、を有するインバータ装置において、
前記制御部は、前記第1スイッチング素子又は前記第3スイッチング素子をオフしてから前記第3スイッチング素子又は前記第1スイッチング素子をオンするまでに、前記第2スイッチング素子のオンと前記第4スイッチング素子のオフ、又は前記第2スイッチング素子のオフと前記第4スイッチング素子のオンを同時に行う
ことを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載するインバータ装置において、
前記制御部は、前記第2スイッチング素子のオンと前記第4スイッチング素子のオフを同時に行った後に前記第3スイッチング素子をオンした状態、及び前記第2スイッチング素子のオフと前記第4スイッチング素子のオンを同時に行った後に前記第1スイッチング素子をオンした状態で、前記インバータ出力電流の流れる方向が逆になるように前記位相差を制御する
ことを特徴とするインバータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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