説明

インバータ装置

【課題】制御基板の固定方法を最適化してインバータ装置の更なる小型化を実現することが望まれる。
【解決手段】複数のスイッチング素子14と電気的に接続されるバスバーモジュール20を備え、制御基板41が、バスバーモジュール20を挟んで複数のスイッチング素子14とは反対側に配置され、バスバーモジュール20が、当該バスバーモジュール20に設けられたモジュール固定部27を介してインバータケース5に固定され、制御基板41が、バスバーモジュール20に設けられた基板固定部26に固定されているインバータ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータケースと、前記インバータケース内において所定の素子配置面に沿って配置され、直流電力と交流電力との間の電力変換を行う複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子を制御する制御基板と、を備えたインバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなインバータ装置としては、例えば、ハイブリッド車両用のインバータ装置などがあり、当該インバータ装置において小型化は重要な課題である。インバータ装置の小型化に関する技術として、例えば下記の特許文献1の図4及び図6には、スイッチング素子(パワー半導体素子)が配置された素子配置面に直交する方向に沿って、コンデンサモジュール、冷却水流路、パワーモジュール、バスバーモジュール(積層導体板)、制御基板(制御回路基板)の順に配置する技術が開示されている。
【0003】
しかし、特許文献1の技術では、制御基板とパワーモジュールとをそれぞれケースに対して固定する必要があるために、これらの素子配置面に沿った方向にインバータ装置が大きくなる上、制御基板とバスバーモジュールやパワーモジュールとの相対位置精度を上げることが難しいという問題があった。また、特許文献1の技術では、インバータ装置は回転電機のケースに固定できるほどには小型化されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−183748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、制御基板の固定方法を最適化してインバータ装置の更なる小型化を実現することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインバータケースと、前記インバータケース内において所定の素子配置面に沿って配置され、直流電力と交流電力との間の電力変換を行うための複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子を制御する制御基板と、を備えたインバータ装置の特徴構成は、前記複数のスイッチング素子と電気的に接続されるバスバーモジュールを備え、前記制御基板が、前記バスバーモジュールを挟んで前記複数のスイッチング素子とは反対側に配置され、前記バスバーモジュールが、当該バスバーモジュールに設けられたモジュール固定部を介して前記インバータケースに固定され、前記制御基板が、前記バスバーモジュールに設けられた基板固定部に固定されている点にある。なお、「バスバーモジュールが、当該バスバーモジュールに設けられたモジュール固定部を介してインバータケースに固定される」とは、モジュール固定部がインバータケースに接する状態で固定される構成の他にも、モジュール固定部が別の部材を介してインバータケースに固定される構成も含む。例えば、スイッチング素子が配置されたベースプレートなどの他の部材がインバータケースに固定されており、当該他の部材にモジュール固定部が固定されることにより、バスバーモジュールが間接的にインバータケースに固定される構成も含む。
【0007】
この特徴構成によれば、制御基板はバスバーモジュール上に固定されるため、インバータケースに、制御基板を固定するための固定部を設ける必要がない。よって、ケースに設ける固定部を小さくすることができるため、インバータ装置の更なる小型化が容易となる。また、バスバーモジュールと制御基板とが一体的に固定されるため、バスバーモジュールと制御基板との相対位置の精度を高くすることが容易となる。
【0008】
ここで、前記バスバーモジュールは、複数のバスバーと、当該複数のバスバーを一体保持する保持部材と、を備え、前記モジュール固定部及び前記基板固定部が、前記素子配置面に直交する方向に見て前記保持部材における前記バスバーが配置されたバスバー配置領域とは異なる領域に設けられていると好適である。
【0009】
この構成によれば、モジュール固定部及び基板固定部を前記素子配置面に沿って見てバスバーと重複する位置に設けることができる。従って、モジュール固定部及び基板固定部が前記素子配置面に直交する方向に大きく突出することを抑制でき、バスバーモジュールの小型化を図ることが容易となる。
【0010】
また、前記保持部材は、前記複数のバスバーを内部に保持する絶縁材料の成形体であり、前記モジュール固定部及び前記基板固定部が一体的に成形されていると好適である。
【0011】
この構成によれば、モジュール固定部と基板固定部とを、保持部材を構成する絶縁材料の成形体によって一体的に形成することができ、製造コストを抑えることができる。また、モジュール固定部と基板固定部とが保持部材に一体的に成形されることから、モジュール固定部と基板固定部との相対位置の精度を高くすることが容易となる。よって、バスバーモジュールと制御基板との相対位置の精度を高くすることが容易となる。
【0012】
また、前記制御基板に前記バスバーを流れる電流を検出するコアレス電流センサが配置されていると好適である。
【0013】
上記のとおり、本発明の構成によれば、バスバーモジュールと制御基板との相対位置の精度を高くすることができるため、制御基板に配置されたコアレス電流センサと検出対象となるバスバーとの相対位置の精度も高くでき、高精度に電流を計測することが可能となる。
【0014】
また、前記バスバーモジュール内の正極及び負極のバスバーに電気的に接続されたPN端子が、前記バスバーモジュールから前記制御基板側へ向けて延びるように設けられ、前記制御基板に電圧センサが配置され、前記制御基板が前記基板固定部に固定された状態で、前記電圧センサと前記PN端子とが電気的に接続されると好適である。
【0015】
上記のとおり、本発明の構成によれば、バスバーモジュールと制御基板との相対位置の精度を高くすることができるため、正極及び負極のバスバーに電気的に接続されたPN端子を、バスバーモジュールから制御基板側へ向けて延びるように設け、制御基板に電圧センサを配置するとともにPN端子との接続部を設けておくだけで、正極及び負極のバスバーと電圧センサとを容易に電気的に接続できる。よって、PN端子と電圧センサとを接続するための接続配線等を別途設ける必要がなく、配線の手間等を抑制して製造コストを抑えることが可能となる。
【0016】
また、前記バスバーモジュールを挟んで配置される前記スイッチング素子と前記制御基板とを電気的に接続するフレキシブルプリント基板を備え、
前記バスバーモジュールは、前記フレキシブルプリント基板の延在方向の一部において、前記フレキシブルプリント基板の周囲を囲む貫通孔を備えていると好適である
ここで、「フレキシブルプリント基板」とは、可撓性を有するプリント基板であり、本願においては、単に配線として機能するフレキシブルケーブルをも含む概念として用いている。
【0017】
この特徴構成によれば、前記貫通孔の壁面によってバスバーモジュールと交差する方向へのフレキシブルプリント基板の移動を規制することができる。よって、フレキブルプリント基板が、振動などによりインバータケースの壁面やその他の部材と擦れて損傷することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】車両に搭載される車両用駆動装置及びインバータ装置の斜視図である。
【図2】インバータ回路の構成を示す模式図である。
【図3】インバータ装置の分解斜視図である。
【図4】インバータモジュールの分解斜視図である。
【図5】インバータ装置を冷却面に直交する方向から見た平面図である。
【図6】インバータ装置の断面図である。
【図7】インバータ装置を車両に搭載した状態を示す模式図である。
【図8】インバータ装置を冷却面に直交する方向から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るインバータ装置の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、ハイブリッド車両Vの車輪の駆動力源として機能する回転電機3を制御するシステムにおけるインバータ装置1を例として説明する。ハイブリッド車両V(以下では、「車両V」と呼ぶ。)は、図7に示すように、内燃機関61と、回転電機3を有する車両用駆動装置62と、インバータ装置1と、バッテリ2と、を備えている。
【0020】
インバータ装置1はインバータ回路7(図2参照)を備え、当該インバータ装置1から見て外部機器となる回転電機3を制御する。なお、本例では、回転電機3は、三相交流で駆動される交流電動機とされている。この回転電機3は、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能との双方を果たすことが可能とされている。本実施形態では、図7に示すように、車両用駆動装置62は、内燃機関61を収容する内燃機関ケース63と、回転電機3を収容する回転電機ケース64とを備えている。
【0021】
図1に示すように、インバータ装置1は、回転電機ケース64に一体的に固定されている。本例では、インバータ装置1は、インバータモジュール6を含むインバータの構成部品を収容するインバータケース5(以下、「ケース5」と呼ぶ。)を備えている。本例では、当該ケース5は回転電機ケース64とは別体として形成されるとともに、回転電機ケース64に対して一体的に固定可能に構成されている。
【0022】
図7に示すように、インバータ装置1は、車両Vの駆動力源としての回転電機3及びそのエネルギ源となる直流電源としてのバッテリ2に接続されている。本例では、さらに、インバータ装置1は、車両Vに備えられた電装部品101及びラジエータ102に接続されている。
【0023】
1.インバータ回路の構成
まず、インバータ回路7の構成について説明する。本実施形態に係るインバータ回路7は、複数(本例では6つ)のスイッチング素子14を用いて構成されている。スイッチング素子14は、直流電力と交流電力との間の電力変換を行うための電子素子であり、インバータ回路7及びインバータ装置1の中核をなしている。図2に示すように、インバータ回路7は、ブリッジ回路により構成されており、バッテリ2の正極P側とバッテリ2の負極N側(例えばクランド側)との間に2つのスイッチング素子14が直列に接続され、この直列回路が3回線並列に接続されている。すなわち、インバータ回路7は、正極P側に接続される上段アームを構成するスイッチング素子14と負極N側に接続される下段アームを構成するスイッチング素子14とを有するレッグを3つ有する3レッグ構成とされている。各レッグは、回転電機3のコイル3b(ステータコイル)の三相(U相、V相、W相)のそれぞれに対応している。
【0024】
図2において、符号14aはU相用上段側スイッチング素子であり、符号14bはV相用上段側スイッチング素子であり、符号14cはW相用上段側スイッチング素子である。また、符号14dはU相用下段側スイッチング素子であり、符号14eはV相用下段側スイッチング素子であり、符号14fはW相用下段側スイッチング素子である。ここで、「上段側」は正極P側のアームであることを表し、「下段側」は負極N側のアームであることを表す。
【0025】
各相の上段側スイッチング素子14a,14b,14cのコレクタは第四バスバー23dを介して正極P側に接続され、エミッタはバスバー23a,23b,23cを介して各相の下段側スイッチング素子14d,14e,14fのコレクタに接続されている。また、各相の下段側スイッチング素子14d,14e,14fのエミッタは第五バスバー23eを介して負極N側に接続されている。各スイッチング素子14のエミッタ−コレクタ間には、ダイオード素子15が並列接続されている。ダイオード素子15は、アノードがスイッチング素子14のエミッタに接続され、カソードがスイッチング素子14のコレクタに接続されている。ダイオード素子15はFWD(Free Wheel Diode)として用いられている。
【0026】
対となるスイッチング素子(14a,14d)、(14b,14e)、(14c,14f)と、それぞれ対応するバスバー23a,23b,23cとを含んで構成される各アームは、回転電機接続端子25a,25b,25cを介して回転電機3の各相のコイル3bに接続されている。そして、各スイッチング素子14のゲートは、フレキシブルプリント基板19を介して、制御基板41に設けられた駆動回路(図示省略)に接続されており、それぞれ個別にスイッチング制御される。
【0027】
このようなインバータ回路7を含むインバータ装置1は、回転電機3に要求される要求回転速度や要求トルクに基づいて各スイッチング素子14を制御(例えば、パルス幅変調制御等)することで、バッテリ2からの直流電力を三相交流電力に変換して回転電機3に供給する。これにより、回転電機3を要求回転速度及び要求トルクに応じて力行させる。一方、回転電機3が発電機として機能し、回転電機3側から電力の供給を受ける場合には、インバータ装置1は、各スイッチング素子14を制御することで、発電された三相交流電力を直流電力に変換してバッテリ2に充電させる。
【0028】
2.インバータ装置の全体構成
次に、インバータ装置1の全体構成について、図3を参照して説明する。インバータ装置1は、インバータモジュール6と直流電力の平滑用のコンデンサ31とスイッチング素子14などの動作を制御するための制御基板41とを備えている。これらは直方体状に形成されたケース5内に収容されている。インバータモジュール6は、インバータ回路7が実装されたモジュールであり、図2に示すように、バッテリ2と回転電機3との間の電気回路に介挿されている。バッテリ2とインバータモジュール6との間には、コンデンサ31がさらに介挿されている。
【0029】
図4に示すように、インバータ装置1の構成部品であるインバータモジュール6は、複数のスイッチング素子14と、これら複数のスイッチング素子14が載置される素子載置面11aを有するベースプレート11と、複数のバスバー23を有するバスバーモジュール20とを主要な構成部品として備えている。ここで、スイッチング素子14は、直流電力と交流電力との間の電力変換を行うための部材であり、バスバー23は、複数のスイッチング素子14を電気的に接続してインバータ回路7を形成するための部材である。なお、本実施形態における素子載置面11aが、本発明における「素子配置面」に相当する。
【0030】
2−1.インバータモジュール
2−1−1.ベースプレート
図3に示すように、ベースプレート11は、スイッチング素子14を載置するためのベースとなる板状の部材である。ベースプレート11は、銅やアルミニウム等の金属材料で構成されている。図4等に示すように、ベースプレート11の素子載置面11aには、絶縁部材12及び素子基板13が互いに平行な状態で積層されている。この積層方向は素子載置面11aに直交する方向Z(以下、単に「直交方向Z」と呼ぶ。また、この直交方向Zにおいて、素子載置面11aから制御基板41に向かう方向を直交第一方向Z1と呼び、その反対方向を直交第二方向Z2と呼ぶ。)に一致している。
【0031】
絶縁部材12は、電気的絶縁性及び熱伝導性の双方を備えるシート状部材で構成され、本例では樹脂製のシート部材とされている。素子基板13は、導電性の材料(例えば、銅やアルミニウム等の金属材料)で構成され、絶縁部材12を介して熱圧着によりベースプレート11に接着固定されている。本例では、素子基板13は、ベースプレート11と別部材として異なる材料で構成されている。この素子基板13は、ヒートスプレッダとしても機能する。
【0032】
図4に示すように、本実施形態ではベースプレート11上に1つの絶縁部材12が配置され、絶縁部材12上に複数(本例では6つ)の素子基板13が配置されている。本例では、これら複数の素子基板13は、一方向(後述する長辺方向Y)に沿って一列に6つ並ぶように配置されている。この際、複数の素子基板13は、各素子基板13の短辺方向が、複数の素子基板13の配列方向(長辺方向Y)と平行になる向きで、すなわち、複数の素子基板13の長辺が互いに平行になる向きで配列されている。
【0033】
また本実施形態では、各素子基板13の上面には、スイッチング素子14及びダイオード素子15がそれぞれ1つずつ載置されている。これにより、本例では、ベースプレート11の素子載置面11aに、絶縁部材12及び素子基板13を介して6つのスイッチング素子14と6つのダイオード素子15とが設けられる。そして、これらのスイッチング素子14及びダイオード素子15を含んでインバータ回路7が構成される。スイッチング素子14として、本実施形態ではIGBT(insulated gate bipolar transistor)を用いている。なお、スイッチング素子14として、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)等を用いることも可能である。また、本例では、図4等に示すように、同一の素子基板13に載置されたスイッチング素子14とダイオード素子15とは、一方向(後述する短辺方向X)に沿って並ぶように互いに隣接して配置されている。
【0034】
図5に示すように、スイッチング素子14は、ケース5内において、素子載置面11aに沿って当該素子載置面11aの所定の長方形状領域R内に配置されている。長方形状領域Rは、回転電機接続端子25とコンデンサ接続端子33との間に設けられている。図5中では、長方形状領域Rの長辺方向をY、短辺方向をXで表している。以下では、長方形状領域Rの各辺の方向を「短辺方向X」、「長辺方向Y」と呼ぶ。また、短辺方向Xにおいて図5における右側を「短辺第一方向X1」と呼び、左側を「短辺第二方向X2」と呼ぶ。また、長辺方向Yにおいて図5における上側を「長辺第一方向Y1」と呼び、下側を「長辺第二方向Y2」と呼ぶ。本例では、6つのスイッチング素子14が、長辺方向Yに沿って6つ並ぶように配置されている。
【0035】
図4に示すように、スイッチング素子14の上面(エミッタ電極)とダイオード素子15の上面(アノード電極)とを電気的に接続する状態で、第一電極部材17が配置されている。第一電極部材17は、本例では一定幅の帯状部材(板状部材)を用いて屈曲成形されている。また、素子基板13の上面に第二電極部材18が載置されている。第二電極部材18は、素子基板13を介してスイッチング素子14の下面(コレクタ電極)とダイオード素子15の下面(カソード電極)とを電気的に接続する。第二電極部材18は、本例ではブロック状部材とされている。第一電極部材17及び第二電極部材18の双方は、導電性の材料(例えば、銅やアルミニウム等の金属材料)で構成される。
【0036】
図5に示すように、本実施形態では、対となるスイッチング素子(14a,14d)、(14b,14e)、(14c,14f)と、それぞれ対応するダイオード素子15、第一電極部材17、第二電極部材18、及びバスバー23a,23b,23c(以下、単に「ダイオード素子15等」と略称する場合がある)とにより、インバータ回路7の各レッグが構成される。このうち、スイッチング素子14a,14b,14cと、それぞれ対応するダイオード素子15等とにより、インバータ回路7の各上段アームが構成される。また、スイッチング素子14d,14e,14fと、それぞれ対応するダイオード素子15等とにより、インバータ回路7の各下段アームが構成される。
【0037】
図6に示すように、ベースプレート11の素子載置面11aとは反対側には、放熱フィン11bが設けられている。本例では、放熱フィン11bはベースプレート11と一体的に形成されている。この放熱フィン11bは、素子基板13及び絶縁部材12を介してベースプレート11に伝達されるスイッチング素子14の熱(スイッチング動作に伴って発生する熱)をその表面から放熱させる。図示は省略するが、本例では、放熱フィン11bは、ベースプレート11の素子載置面11aとは反対側の面から当該面に直交する方向Z(以下、単に「直交方向Z」と呼ぶ)に向って立設するフィンからなる。具体的には、放熱フィン11bは、直交方向Zに向かって、複数の棒状部材が立設して構成されるピンフィンである。ただし、放熱フィン11bは、直交方向Zに突出するとともに、一方向(後述する長辺方向Y)に沿って延びる平板状に形成してもよい。
【0038】
本実施形態では、ベースプレート11は、ケース5内に設けられた冷却路構成部材110に接するように配置される。冷却路構成部材110は、ベースプレート11の素子載置面11aに平行な面に沿って延在する部材であり、ケース5と一体的に形成されている。ただし、冷却水通流部110を、ケース5と別体として形成し、ケース5の内壁に固定する構造としても構わない。そして、冷却路構成部材110は、ベースプレート11が接する側の面に凹部111を備えている。凹部111は、冷却路構成部材110にベースプレート11が取り付けられた状態で、冷却水の流通経路となる。そのため、凹部111は、ベースプレート11の放熱フィン11bが収容可能な空間を有するように形成されている。凹部111には、ケース5外からの冷却水流通管路112a、112bが接続されている。そして、これらの冷却水流通管路112a、112bの一方から凹部111内に冷却水が導入されるとともに、他方からケース5外に冷却水が排出される。このような構成により、ベースプレート11を冷却水により冷却できる。
【0039】
2−1−2.バスバーモジュール
図4に示すように、インバータ装置1の構成部品であるバスバーモジュール20は、複数のバスバー23と、当該複数のバスバー23を一体保持する接続支持体21と、を主要な構成部品として備え、さらにスイッチング素子14と回転電機3とを電気的に接続する回転電機接続端子25、及び少なくともコンデンサ31とスイッチング素子14とを電気的に接続するコンデンサ接続端子33を備えている。回転電機接続端子25及びコンデンサ接続端子33は、バスバー23と一体的に形成されており、バスバーモジュール20の一部を構成している。
本実施形態における接続支持体21は、本発明における「保持部材」に相当する。
【0040】
図6に示すように、バスバーモジュール20は、複数のスイッチング素子14に対してベースプレート11とは反対側に配置されている。すなわち、これらの構成部品は、直交方向Zに沿って回転電機3側から、バスバーモジュール20、スイッチング素子14、ベースプレート11の順に配置される。
【0041】
図4〜図6に示す接続支持体21は、複数のバスバー23を一体的に支持する構造体である。本実施形態では、接続支持体21は、複数のバスバー23を内部に保持する絶縁材料の成形体で構成されている。そして、接続支持体21は、ケース5に直接固定されている。ただし、この接続支持体21は、ボルト等の締結部材によりベースプレート11の素子載置面11a側に固定され、当該ベースプレート11がケース5に固定されることで、ケース5に対して間接的に固定されてもよい。
【0042】
本例では、接続支持体21には、モジュール固定部27が備えられており、モジュール固定部27が、ボルト等の締結部材によりケース5に直接固定される。また、接続支持体21には、基板固定部26が備えられており、制御基板41がボルト等の締結部材により、基板固定部26に固定される。すなわち、制御基板41は、接続支持体21を介して、ベースプレート11及びケース5に固定される。
【0043】
本実施形態では、バスバーモジュール20は、第一バスバー23a、第二バスバー23b、第三バスバー23c、第四バスバー23d、及び第五バスバー23eの5つのバスバー23を備えている。各バスバー23は、導電性の材料(例えば、銅やアルミニウム等の金属材料)で構成され、本例では平板状部材を用いて所定形状に屈曲形成されている。
【0044】
図2及び図5に示すように、第一バスバー23a、第二バスバー23b、及び第三バスバー23cは、それぞれ第一電極部材17(図4参照)を介して上段アームのスイッチング素子14及びダイオード素子15と回転電機接続端子25との間を電気的に接続するとともに、第二電極部材18(図4参照)を介して下段アームのスイッチング素子14及びダイオード素子15と回転電機接続端子25との間を電気的に接続する電気的接続部材である。バスバー23a,23b,23cは、全体として短辺方向Xに沿って延在している。第四バスバー23dは、第二電極部材18(図4参照)を介して上段アームのスイッチング素子14及びダイオード素子15と正極P側の直流端子34である正極側直流端子34aとの間を電気的に接続する電気的接続部材である。第五バスバー23eは、第一電極部材17(図4参照)を介して下段アームのスイッチング素子14及びダイオード素子15と負極N側の直流端子34である負極側直流端子34bとの間を電気的に接続する電気的接続部材である。バスバー23d,23eは、全体として長辺方向Yに沿って延在している。
【0045】
本例では、各バスバー23と第一電極部材17及び第二電極部材18との間の電気的な接続は、各バスバー23と一体的に形成され、接続支持体21に支持された複数の接合部24が、第一電極部材17の上面及び第二電極部材18の上面に対して押圧された状態で接合されることによって実現される。本例では、各バスバー23と第一電極部材17及び第二電極部材18とは、YAGレーザ、CO2レーザ、半導体レーザ等を利用したレーザ溶接により接合される。
【0046】
回転電機接続端子25は、車両Vの駆動力源としての回転電機3との間で交流電力の入出力を行うための端子である。本実施形態では、このような回転電機接続端子25として、三相用の回転電機接続端子25a,25b,25cを備えている。本例では、U相用回転電機接続端子25aは、第一バスバー23aの短辺第一方向X1側の端部において当該第一バスバー23aと一体的に形成されている。同様に、V相用回転電機接続端子25bは第二バスバー23bの短辺第一方向X1方向側の端部と一体的に形成され、W相用回転電機接続端子25cは第三バスバー23cの短辺第一方向X1方向側の端部と一体的に形成されている。これら3つの回転電機接続端子25a,25b,25cは、インバータ回路7を構成する3つのレッグの配列に応じて長辺方向Yに平行な方向に沿って順に配列されている。なお、本実施形態では、後述するように長辺方向Yは回転電機3の回転軸3aに対して直交する方向に一致しており、従って3つの回転電機接続端子25a,25b,25cは、当該回転軸3aに対して直交する方向に沿って順に配列されていることになる。
【0047】
2−2.コンデンサ
コンデンサ31は、バッテリ2とインバータモジュール6との間に並列に設けられ、これらの間の直流電力を平滑する。図3に示すように、コンデンサ31は、ケース部31aとコンデンサ素子31bとにより構成されている。ケース部31aは、短辺方向Xの両側、長辺方向Yの両側、及び直交方向Zの一方側を覆うように形成されている。具体的には、直交方向Zから見て、長方形状となるバスタブ状に形成されている。ケース部31aには、バッテリ2との間で直流電力の入出力を行う電源端子と、スイッチング素子14との間で直流電力の入出力を行う直流端子35とがケース部31aに対して所定位置に配置されている。これらの部材は、ケース部31aの所定位置に配置された状態で、ケース部31a内に樹脂が充填されることで、ケース部31aに固定されている。これらの電源端子と直流端子35との間は、図2に示すように電気的に接続される。
【0048】
図6に示すように、コンデンサ31は、ベースプレート11を挟んで複数のスイッチング素子14とは反対側に配置されている。すなわち、これらの構成部品は、直交方向Zに沿って回転電機3側から、スイッチング素子14、ベースプレート11、コンデンサ31の順に配置される。
【0049】
2−3.制御基板
制御基板41は、主にスイッチング素子14の動作を制御するための機能を有する。そのため、制御基板41には、少なくともスイッチング素子14を個別にスイッチング制御するための駆動回路(図示省略)が設けられている。また本実施形態では、制御基板41には、バスバー23dとバスバー23eとの間の両極間の電圧を検出するための電圧検出回路も設けられている。その他、制御基板41には、バスバー23a,23b,23cを流れる交流電流を検出するための電流検出回路や、スイッチング素子14の温度を検出するための温度検出回路等も設けられている。
【0050】
図6に示すように、制御基板41は、バスバーモジュール20を挟んで複数のスイッチング素子14とは反対側に配置されている。すなわち、これらの構成部品は、素子載置面11aに直交する直交方向Zに沿って回転電機3側から、制御基板41、バスバーモジュール20、スイッチング素子14の順に配置される。
【0051】
また、図4に示すように、制御基板41には、当該制御基板41をバスバーモジュール20上に固定するための被支持部82が複数設けられている。被支持部82は、直交方向Zに見て、バスバーモジュール20の基板固定部26に対応する位置に設けられている。本実施形態においては、被支持部82として直交方向Zの貫通孔が複数(本例では9つ)設けられており、制御基板41は、当該貫通孔を介して、固定部材(例えば、ボルト)によりバスバーモジュール20に固定される。
【0052】
これら被支持部82の一部は、制御基板41の短辺第一方向X1側において、長辺方向Yに沿って設けられている。具体的には、制御基板41の短辺第一方向X1側に、4つの被支持部82a〜82dが均等な間隔で設けられており、これら4つの被支持部82の間に、後述するセンサやコネクタが配置されている。
【0053】
3.バスバーモジュールと制御基板の配置関係
3−1.バスバーモジュールと制御基板との固定
図3〜5に示すように、バスバーモジュール20は、当該バスバーモジュール20に設けられたモジュール固定部27を介してケース5に固定されている。本例では、モジュール固定部27は、直交方向Zの貫通孔を備えた円筒状部である。当該貫通孔を介して支持部材(例えば、ボルト)によりケース5に固定される。本例では、モジュール固定部27の直交第一方向Z1側の面は、基板固定部26の直交第一方向Z1側の面に対して所定距離以上(ここではボルト頭部の直交方向Zの厚さ以上)直交第二方向Z2側に位置するよう形成されている。このような構成により、本例では、固定部材としてボルトを用いた場合でも、ボルトの頭部が基板固定部26の直交第一方向Z1側の面より直交第一方向Z1側に飛び出ないようになっている。
【0054】
図5に示すように、本例では、モジュール固定部27は、バスバーモジュール20の短辺第一方向X1側及び短辺第二方向X2側において長辺方向Yに沿って複数(本例では合計7つ)設けられている。
【0055】
モジュール固定部27は、バスバーモジュール20の短辺第一方向X1側において、長辺方向Yに沿って回転電機接続端子25を挟むように複数設けられている。具体的には、バスバーモジュール20の短辺第一方向X1側に、4つのモジュール固定部27が長辺方向Yに沿って均等な間隔で複数設けられており、これら4つのモジュール固定部27の間に回転電機接続端子25a〜25cが1つずつ配置されている。
【0056】
また、モジュール固定部27は、バスバーモジュール20の短辺第二方向X2側において、長辺方向Yに沿って、コンデンサ接続端子33を挟むように複数設けられている。具体的には、バスバーモジュール20の短辺第二方向X2側に、3つのモジュール固定部27が設けられており、これら3つのモジュール固定部27の間に、コンデンサ接続端子33が2つずつ配置されている。
【0057】
また、図4に示すように、バスバーモジュール20には、制御基板41を当該バスバーモジュール20上に固定するための基板固定部26が設けられている。制御基板41は、この基板固定部26に固定されている。本例では、基板固定部26として、バスバーモジュール20に対して直交第一方向Z1に突出する円筒状部が設けられている。当該円筒状部は制御基板41が固定された状態で、制御基板41とバスバーモジュール20との間に隙間が生じるように形成されている。このため、制御基板41の直交第二方向Z2側の面に、電流センサなどの各種素子を実装することが可能となっている。本例では、基板固定部26には、直交方向Zのネジ穴が設けられており、固定部材(例えば、ボルト)により制御基板41が固定される。
【0058】
本例では、基板固定部26は、バスバーモジュール20において、直交方向Zに見てモジュール固定部27とは異なる位置に複数(本例では9つ)設けられている。
【0059】
図5に示すように、基板固定部26は、バスバーモジュール20の短辺第一方向X1側において、長辺方向Yに沿って複数設けられている。また、基板固定部26は、短辺第一方向X1側において長辺方向Yに沿って均等な間隔で複数配置されている。本例では、バスバーモジュール20の短辺第一方向X1側において、複数の基板固定部26のそれぞれがモジュール固定部27の短辺第二方向X2側に隣接していると共に、長辺方向Yに沿って一列に並んで配置されている。具体的には、バスバーモジュール20の短辺第一方向X1側に、モジュール固定部27と同数である4つの基板固定部26が設けられており、これら4つの基板固定部26の間に回転電機接続端子25a〜25cが1つずつ配置されている。
【0060】
また、基板固定部26は、バスバーモジュール20の短辺第二方向X2側に5つ設けられている。
【0061】
これらの基板固定部26及びモジュール固定部27は、直交方向Zに見て、接続支持体21においてバスバー23(23a〜23e)が配置されたバスバー配置領域とは異なる領域に設けられている。図示の例では、基板固定部26及びモジュール固定部27は、バスバー23と干渉しないようにバスバー配置領域を囲む外側に分散して配置されている。
【0062】
また、図4に示すように、本実施形態においては、接続支持体21は、複数のバスバー23a〜25eを内部に保持する絶縁材料の成形体である。そして、基板固定部26及びモジュール固定部27は、接続支持体21と一体的に成形されている。具体的には、接続支持体21は、複数のバスバー23a〜25eが内部に配置されるようにこれらのバスバー23a〜25eの周囲に合成樹脂を射出成形することにより形成される。この際、本例では、基板固定部26及びモジュール固定部27のそれぞれに対応する位置に、円筒状部材やナット部材等を埋め込んだ状態で射出成形を行い、基板固定部26及びモジュール固定部27を接続支持体21に一体成形する。
【0063】
以上のような構成により、バスバーモジュール20に制御基板41を高精度に固定することができる。
【0064】
3−2.バスバーモジュール及び制御基板上の構成部品
本実施形態に係るインバータ装置1では、以上のように、バスバーモジュール20と制御基板41との相対位置の精度を高くすることができることを利用し、さらに、バスバーモジュール20と制御基板41上に実装される構成部品に関して、以下に述べる特徴構成を備えている。
【0065】
<電流センサ>
図4及び図8に示すように、制御基板41には、バスバー23を流れる電流を検出するコアレス電流センサ91が配置されている。コアレス電流センサ91は、制御基板41の直交第二方向Z2側の面において、バスバーモジュール20に設けられた回転電機接続端子25に繋がるバスバー23の位置に対応して配置されている。本例では、U、V、W各相の回転電機接続端子25a〜25cに繋がるバスバー23a〜23cに対して1つずつ電流センサ91a〜91cが備えられている。各電流センサ91は、各バスバー23と所定間隔を空けて直交方向Z視で重複するように配置されている。
【0066】
本実施形態においては、コアレス電流センサ91は、長辺方向Yに沿って被支持部82a〜82dの間に1つずつ配置されている。上記のとおり、被支持部82及び被支持部82に対応する基板固定部26は、長辺方向Y方向に沿って均等な間隔で複数配置されている。よって、コアレス電流センサ91a〜91cが配置された制御基板41は、被支持部82a〜82dの間に1つずつ配置されたコアレス電流センサ91a〜91cそれぞれの長辺方向Yの両側においてバスバーモジュール20に支持されている。
【0067】
ところで、電流センサ91a〜91cとバスバー23a〜23cとの間隔が変動すると、バスバー23a〜23cを流れる電流に対する電流センサ91a〜91cの出力信号の感度が変化し、電流の検出誤差が生じる。ここでは、上記のように、各電流センサ91a〜91cは、長辺方向Yの両側においてバスバーモジュール20に支持されている。そのため、各電流センサ91a〜91cが取り付けられた制御基板41の部分の直交方向Zのたわみを低減することができる。よって、電流センサ91a〜91cとバスバー23a〜23cとの間隔が変動することを抑制でき、電流の検出誤差が生じることを抑制できる。また、図5から明らかなように、本実施形態の構成では、複数の被支持部82a〜82dが均等な間隔で配置されていると共に、複数の電流センサ91a〜91cのそれぞれが隣接する2つの被支持部82の中間に配置されている。これにより、車両の振動等によって制御基板41にたわみが発生した場合にも、複数の電流センサ91a〜91cの全てについて同程度の大きさのたわみが発生するような構成となっている。これにより、複数の電流センサ91a〜91cの間での検出値のばらつきを低減することが可能となっている。
【0068】
なお、本実施形態においては、コアレス電流センサ91は、シャント抵抗などを用いることなく、バスバー23a、23b、23cなどの交流電力線に対して非接触で交流電流を検出する非接触電流センサである。また、コアレス電流センサ91は、バスバー23を周回する集磁コアを用いずに交流電流を検出するセンサである。
【0069】
<電圧センサ>
図4及び図5に示すように、本実施形態においては、バスバーモジュール20内の正極のバスバー23dに電気的に接続された正極電圧検出端子36、及び負極のバスバー23eに電気的に接続された負極電圧検出端子37とが、直交第一方向Z1に延びるように設けられている。本実施形態における正極電圧検出端子36及び負極電圧検出端子37は、本発明における「PN端子」に相当する。
【0070】
図4に示すように、正極電圧検出端子36及び負極電圧検出端子37は、バスバー23d、23eから直交第一方向Z1側に延出する棒状の導電部材である。一方、制御基板41には、正極接続部87及び負極接続部88が設けられている。本実施形態では、正極接続部87及び負極接続部88は、制御基板41を直交方向Zに貫通する貫通孔(スルーホール)とされている。正極電圧検出端子36及び負極電圧検出端子37は、正極接続部87及び負極接続部88と直交方向Z視で重なる位置に設けられていると共に、これらの先端は、接続支持体21よりも直交第一方向Z1側に突出している。これにより、正極電圧検出端子36及び負極電圧検出端子37の先端部は、制御基板41がバスバーモジュール20の基板固定部26に固定された状態で、制御基板41に設けられた正極接続部87及び負極接続部88に挿入されるように形成されている。そして、正極接続部87に正極電圧検出端子36がはんだづけされ、負極接続部88に負極電圧検出端子37がはんだづけされる。
【0071】
制御基板41には、図示しない電圧センサが配置されており、正極接続部87及び負極接続部88は、当該電圧センサと電気的に接続されている。このため、制御基板41が基板固定部26に固定された状態で、正極電圧検出端子36及び負極電圧検出端子37の先端が正極接続部87及び負極接続部88に電気的に接続されると、正極電圧検出端子36及び負極電圧検出端子37と電圧センサとが電気的に接続される。このような構成により、バスバー23の電圧を、バスバー23d、23eから制御基板41上の電圧センサに最短距離で入力することができる。この電圧センサの出力信号に基づいて、インバータ回路7に印加される直流電圧を検出することができる。
【0072】
<フレキシブルプリント基板>
図4に示すように、インバータ装置1は、バスバーモジュール20を挟んで配置されるスイッチング素子14と制御基板41に配置された接続端子95とを電気的に接続するためのフレキシブルプリント基板19を備えている。フレキシブルプリント基板19は、その一方側端がスイッチング素子14と電気的に接続されるとともに、他方側端が制御基板41に配置された接続端子95に接続されている。本実施形態では、インバータ装置1は、6つのスイッチング素子14a〜14fそれぞれに対応し、6本のフレキシブルプリント基板19a〜19fと6つの接続端子95a〜95fとを備えている。
【0073】
各スイッチング素子14の制御端子(ゲート端子)は、フレキシブルプリント基板19を介して、制御基板41に接続されており、当該制御基板41に設けられたドライブ回路からの信号に応じて、それぞれ個別にスイッチング制御される。また、本実施形態のスイッチング素子14は、素子温度や過電流などの素子異常を検出するための異常検出センサが設けられた複合素子であり、制御基板41には、異常検出センサに対応する異常検出回路が設けられている。すなわち、制御基板41に配置された接続端子95は、当該異常検出回路とスイッチング素子14とを電気的に接続する役割も果たしている。
【0074】
図4、図5及び図8に示すように、本実施形態においては、バスバーモジュール20は、フレキシブルプリント基板19の延在方向の一部において、フレキシブルプリント基板19の周囲を囲む貫通孔28を備えている。すなわち、本実施形態においては、フレキシブルプリント基板19は、貫通孔28を通って、スイッチング素子14と接続端子95とを接続する。
【0075】
貫通孔28は、バスバーモジュール20の短辺第一方向X1側において、長辺方向Yに沿って複数設けられている。貫通孔28は、直交方向Zに見て、基板固定部26及びバスバー23が配置された領域とは異なる領域に設けられている。また、貫通孔28a〜28fはそれぞれ、短辺方向Xに見て、対応するスイッチング素子14a〜14fと重複する位置に設けられている。
【0076】
また、接続端子95は、バスバーモジュール20の短辺第一方向X1側において、長辺方向Yに沿って複数設けられている。接続端子95は、直交方向Zに見て、被支持部82及びコアレス電流センサ91が配置された領域とは異なる領域に設けられている。さらに、接続端子95a〜95fと貫通孔28a〜28fとはそれぞれ、直交方向Zに見て、重複するように配置されている。
【0077】
このように、本実施形態に係るインバータ装置1は、バスバーモジュール20に設けられた貫通孔28の壁面により、短辺方向X及び長辺方向Yへのフレキシブルプリント基板19の移動を規制しながら、スイッチング素子14と接続端子95a〜95fとを短い距離で接続することが可能な構成となっている。
【0078】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0079】
(1)上記の実施形態においては、インバータケース5が、回転電機ケース64とは別体として形成される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、インバータケース5の少なくとも一部が、回転電機ケース64と一体的に構成されても構わない。
【0080】
(2)上記の実施形態においては、基板固定部26及びモジュール固定部27が、直交方向Zに見て接続支持体21におけるバスバー23が配置されたバスバー配置領域とは異なる領域に設けられている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、基板固定部26及びモジュール固定部27の少なくとも一方が、直交方向Zに見て接続支持体21におけるバスバー23が配置されたバスバー配置領域と重複する領域に設けられていても構わない。
【0081】
(3)上記の実施形態においては、接続支持体21と基板固定部26とモジュール固定部27とが一体的に成形されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、基板固定部26及びモジュール固定部27の少なくとも一方が、接続支持体21と別部材で形成されていても構わない。
【0082】
(4)上記の実施形態においては、制御基板41にコアレス電流センサ91が配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、コアレス電流センサ91に代えて、バスバー23を周回する集磁コアを備えたコアあり電流センサを用いる構成としても良い。この場合において、電流センサが制御基板41に配置されていてもよいが、制御基板41と別れて配置されていてもよい。
【0083】
(5)上記の実施形態においては、正極接続部87及び負極接続部88として、制御基板41に貫通孔を備える場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、正極接続部87及び負極接続部88として、制御基板41の直交第二方向Z2側の面に正極電圧検出端子36及び負極電圧検出端子37に対応する接続端子を備える構成としても構わない。また、このような正極電圧検出端子36及び負極電圧検出端子37を備えず、他の方法によって直流電圧を検出する構成としてもよい。
【0084】
(6)上記の実施形態においては、バスバーモジュール20が貫通孔28を備える場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、バスバーモジュール20が貫通孔28を備えず、フレキシブルプリント基板19がバスバーモジュール20とケース5の壁面との間を通るように構成しても構わない。また、スイッチング素子14と制御基板41との接続を、フレキシブルプリント基板19以外の配線等によって接続する構成としても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
インバータケースと、前記インバータケース内において所定の素子配置面に沿って配置され、直流電力と交流電力との間の電力変換を行うための複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子を制御する制御基板と、を備えたインバータ装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 :インバータ装置
5 :インバータケース
11a :素子載置面(素子配置面)
14 :スイッチング素子
19 :フレキシブルプリント基板
20 :バスバーモジュール
21 :接続支持体(保持部材)
23 :バスバー
26 :基板固定部
27 :モジュール固定部
28 :貫通孔
36 :正極電圧検出端子(PN端子)
37 :負極電圧検出端子(PN端子)
41 :制御基板
91 :コアレス電流センサ
Z :直交方向(素子配置面に直交する方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータケースと、
前記インバータケース内において所定の素子配置面に沿って配置され、直流電力と交流電力との間の電力変換を行うための複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子を制御する制御基板と、
を備えたインバータ装置であって、
前記複数のスイッチング素子と電気的に接続されるバスバーモジュールを備え、
前記制御基板が、前記バスバーモジュールを挟んで前記複数のスイッチング素子とは反対側に配置され、
前記バスバーモジュールが、当該バスバーモジュールに設けられたモジュール固定部を介して前記インバータケースに固定され、
前記制御基板が、前記バスバーモジュールに設けられた基板固定部に固定されているインバータ装置。
【請求項2】
前記バスバーモジュールは、複数のバスバーと、当該複数のバスバーを一体保持する保持部材と、を備え、
前記モジュール固定部及び前記基板固定部が、前記素子配置面に直交する方向に見て前記保持部材における前記バスバーが配置されたバスバー配置領域とは異なる領域に設けられている請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項3】
前記保持部材は、前記複数のバスバーを内部に保持する絶縁材料の成形体であり、
前記モジュール固定部及び前記基板固定部が一体的に成形されている請求項1又は2に記載のインバータ装置。
【請求項4】
前記制御基板に前記バスバーを流れる電流を検出するコアレス電流センサが配置されている請求項1から3のいずれか一項に記載のインバータ装置。
【請求項5】
前記バスバーモジュール内の正極及び負極のバスバーに電気的に接続されたPN端子が、前記バスバーモジュールから前記制御基板側へ向けて延びるように設けられ、
前記制御基板に電圧センサが配置され、
前記制御基板が前記基板固定部に固定された状態で、前記電圧センサと前記PN端子とが電気的に接続される請求項1から4のいずれか一項に記載のインバータ装置。
【請求項6】
前記バスバーモジュールを挟んで配置される前記スイッチング素子と前記制御基板とを電気的に接続するフレキシブルプリント基板を備え、
前記バスバーモジュールは、前記フレキシブルプリント基板の延在方向の一部において、前記フレキシブルプリント基板の周囲を囲む貫通孔を備えている請求項1から5のいずれか一項に記載のインバータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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