説明

インパネメンバの組立方法

【課題】インパネメンバの生産効率を高めることが出来るインパネメンバの組立方法を提供する。
【解決手段】各種取付部品が溶接される小径インパネ筒状メンバと、各種取付部品が溶接される大径インパネ筒状メンバとを互いに組み付け且つ接合して組み立てられるインパネメンバの組立方法であって、小径インパネ筒状メンバと大径インパネ筒状メンバとを互いに接合する前に、それらのインパネ筒状メンバに対して各々スポット溶接用電極を挿入して、各インパネ筒状メンバに対応する所定の各種取付部品をそれぞれ各インパネ筒状部材にスポット溶接する第1溶接ステップS1と、この第1溶接ステップS1後、小径及び大径のインパネ筒状部材を互いに組み付けると共に、スポット溶接よりも溶接強度の高い溶接により小径及び大径のインパネ筒状部材を互いに接合する第2溶接ステップS2と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大径インパネ筒状メンバと小径インパネ筒状メンバとを接合して組み立てられるインパネメンバの組立方法に係り、特に、各種取付部品が溶接される小径インパネ筒状メンバと、各種取付部品が溶接される大径インパネ筒状メンバとを互いに組み付け且つ接合して組み立てられるインパネメンバの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インパネメンバとして、大径インパネメンバ及び小径インパネメンバの主に2つのメンバにより構成されたものが知られている。これらの大径インパネメンバ及び小径インパネメンバは、従来、アーク溶接により互いに接合されていた。また、これらの大径及び小径インパネメンバには、各種取付部品(例えば、ステアリングブラケットなど)が設けられるが、従来、これらの取付部品は、大径及び小径インパネメンバを接合して一体化されたインパネメンバに、アーク溶接により溶接されていた。なお、一般的に、アーク溶接による溶接は、スポット溶接より強度が高いものの、スポット溶接による溶接と比べて溶接にかかる時間が長くかかることが知られている。
【0003】
大径インパネメンバ及び小径インパネメンバを互いに接合して構成されたインパネメンバとして、特許文献1には、大径パイプと小径パイプの連結部の強度を向上させて、大径パイプに設けられたステアリング支持用ブラケットの支持剛性を高めるようにしたものが開示されている。なお、この特許文献1には、その連結部及びブラケットの溶接手法(アーク溶接、スポット溶接、レーザ溶接など)に関する開示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−306083
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来のインパネメンバの組立行程では、大径及び小径インパネメンバを接合して一体化された後に各取付部品を溶接していた上、大径インパネメンバと小径インパネメンバとの接合も、各種取付部品のインパネメンバへの溶接も、全てアーク溶接により行っていたので、溶接時間が多大になると共に生産効率も良くなかった。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、インパネメンバの生産効率を高めることが出来るインパネメンバの組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明は、各種取付部品が溶接される小径インパネ筒状メンバと、各種取付部品が溶接される大径インパネ筒状メンバとを互いに組み付け且つ接合して組み立てられるインパネメンバの組立方法であって、小径インパネ筒状メンバと大径インパネ筒状メンバとを互いに接合する前に、それらのインパネ筒状メンバに対して各々スポット溶接用電極を挿入して、各インパネ筒状メンバに対応する所定の各種取付部品をそれぞれ各インパネ筒状部材にスポット溶接する第1溶接ステップと、この第1溶接ステップ後、スポット溶接よりも溶接強度の高い溶接により所定の溶接を行う第2溶接ステップであって、小径及び大径のインパネ筒状部材を互いに組み付けると共にスポット溶接よりも溶接強度の高い溶接により小径及び大径のインパネ筒状部材を互いに接合することを含む第2溶接ステップと、を有することを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、第1溶接ステップにおいて、各インパネ筒状メンバに対応する所定の各種取付部品をそれぞれ各インパネ筒状部材にスポット溶接するようにしているので、溶接時間の短いスポット溶接により溶接時間を短縮することが出来る。さらに、本発明では、小径インパネ筒状メンバと大径インパネ筒状メンバとを互いに接合する前に、各インパネ筒状メンバにそれぞれ個別に各種取付部品の溶接を行うことが出来るので、スポット溶接による溶接時間の短縮と共に生産工程の短縮も可能である。さらに、小径インパネ筒状メンバと大径インパネ筒状メンバとを互いに接合する前に、それらのインパネ筒状メンバに対して各々スポット溶接用電極を挿入するようにしているので、スポット溶接用電極のシャンクの長さを短くすることが出来、従って、シャンクの撓みに伴うスポット溶接用電極の圧力低下に伴う溶接不良や、各インパネ筒状部材との接触による分流に伴う溶接不良を抑制することが出来る。また、第2溶接ステップにおいて、第1溶接ステップ後、小径及び大径のインパネ筒状部材を互いに組み付けると共に、スポット溶接よりも溶接強度の高い溶接により小径及び大径のインパネ筒状部材を互いに接合するようにしているので、インパネメンバ自体の剛性の低下を抑制することが出来る。これらの結果、本発明のインパネメンバの組立方法によれば、インパネメンバ自体の剛性の低下を抑制しつつ、各種取付部品のスポット溶接により溶接時間を短縮してインパネメンバの生産効率を高めることが出来る。
【0009】
本発明において、好ましくは、第1溶接ステップは、小径及び大径のインパネ筒状部材のそれぞれにおいて、各インパネ筒状部材の両端からスポット溶接用電極をそれぞれ挿入して、各種取付部品をスポット溶接する。
このように構成された本発明においては、小径及び大径のインパネ筒状部材のそれぞれの両端からスポット溶接用電極がそれぞれ挿入されて各種取付部品をスポット溶接されるので、各種取付部品の溶接工程にかかる総時間を短縮することが出来、その結果、インパネメンバの生産効率を高めることが出来る。また、両端からスポット溶接用電極がそれぞれ挿入されるので、スポット溶接用電極用のシャンクの長さをより短くして、シャンクの撓みに伴うスポット溶接用電極の圧力低下に伴う溶接不良や、各インパネ筒状部材との接触による分流に伴う溶接不良をより確実に抑制することが出来る。
【0010】
本発明において、好ましくは、各種取付部品には、大径インパネ筒状メンバへの高い溶接強度が要求される高溶接強度取付部品が含まれ、第2溶接ステップにおける所定の溶接は、高溶接強度取付部品を大径インパネ筒状メンバへ溶接することを含む。
このように構成された本発明においては、高い溶接強度が要求される高溶接強度取付部品の大径インパネ筒状メンバへの溶接をインパネメンバの組立工程において効率的に行うことが出来る。また、高溶接強度取付部品(例えば、電動パワーステアリング用ブラケットなど)は、剛性の高い大径インパネ筒状メンバで支持される。
【0011】
本発明において、好ましくは、第2溶接ステップにおける、スポット溶接よりも溶接強度の高い溶接は、アーク溶接である。
このように構成された本発明においては、より確実に、小径インパネ筒状部材と大径のインパネ筒状部材との接合部の溶接強度、高溶接強度取付部品の大径インパネ筒状メンバへの溶接部の溶接強度を確保できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の、インパネメンバの組立方法によれば、インパネメンバの生産効率を高めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態によるインパネメンバの組立方法により組み立てられたインパネメンバの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるインパネメンバの組立方法に用いられるスポット溶接装置及びこの装置によるインパネメンバへの各種取付部品のスポット溶接を行っている状態を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態によるインパネメンバの組立方法によるインパネメンバの組立工程の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるインパネメンバの組立方法を説明する。
先ず、図1により、本発明の実施形態によるインパネメンバの組立方法により組み立てられたインパネメンバの一例を説明する。
図1は、本発明の実施形態によるインパネメンバの組立方法により組み立てられたインパネメンバの一例を示す斜視図である。
図1に示すように、インパネメンバ1は、車体前部の左右のボディー(図示せず)間を連結するように車幅方向に延びる部材であり、大径インパネメンバ2と小径インパネメンバ4を備えている。これらの大径インパネメンバ2と小径インパネメンバ4は、筒状(パイプ状)に形成され、図1のAで示す部分で、後述するようにアーク溶接により互いに溶接により接合されている。
【0015】
大径インパネメンバ2は、機械的強度が高く、取付けられるステアリング(図示せず)の荷重を支えるために運転席側に設けられる。大径インパネメンバ2及び小径インパネメンバ4は、いずれも、スポット溶接、アーク溶接、レーザ溶接などが可能な機械構造用炭素鋼鋼管製である。小径インパネメンバ4は、大径インパネメンバ2との接合部付近で、その口径が徐々に広がるように形成されて、大径インパネメンバ2の口径と一致するようになっている。
【0016】
図1に示すように、大径インパネメンバ2には、所定の各種取付部品、この例では、コラムEPAS(電動パワーアシストステアリング)(図示せず)が取り付けられるステアリングブラケット6、ステアリング用ボディカウル部(図示せず)が取り付けられるステアリングブラケット8、ボディトンネル部(図示せず)が取り付けられるインパネブラケット10、ニーエアバッグ取付用ブラケット(図示せず)が取り付けられる左ニーボルスター12及び右ニーボルスター14、右ヒンジピラーインナー(図示せず)が取り付けられるサイドブラケット16が、それぞれ溶接されている。これらのブラケット(各種取付部品)のうち、後述するように、ステアリングブラケット6は、アーク溶接により溶接され、他のブラケット8などは、スポット溶接により溶接される。
【0017】
小径インパネメンバ4には、所定の各種取付部品、この例では、グローブヒンジ部(図示せず)が取り付けられるインパネブラケット18、左ヒンジピラーインナー(図示せず)が取り付けられるサイドブラケット20、その他の部品22、24、26が溶接されている。これらのブラケット(各種取付部品)18などは、後述するように、スポット溶接により溶接される。
【0018】
次に、図2により、本発明の実施形態におけるインパネメンバの組立方法に用いられるスポット溶接装置を説明する。図2は、本発明の実施形態におけるインパネメンバの組立方法に用いられるスポット溶接装置及びこの装置によるインパネメンバへの各種取付部品のスポット溶接を行っている状態を示す側面図である。
図2では、例として小径インパネメンバ4を示しているが、大径インパネメンバ2も同様に、以下に説明するように、スポット溶接装置31によりスポット溶接される。
【0019】
図2に示すように、スポット溶接装置31は、左右一対で構成され、それらの基本構成は同一であるので、一方のみ説明する。
スポット溶接装置31は、溶接ガン32と、この溶接ガン32に固定されたアーム側シャンク34と、この溶接ガン32を軸に揺動可能な可動ロッド側シャンク36と、アーム側スポット溶接用電極部38(以下、アーム側電極38という)と、可動ロッド側スポット溶接用電極部40(以下、ロッド側電極40という)と、を有する。
【0020】
溶接ガン32は回転可能に構成され、アーム側シャンク34もその回転に応じて回転して、その先端部のアーム側電極38の位置がインパネメンバ2、4に対して(各種取付部品の位置に応じて)360度回転するように構成されている。
【0021】
一方、可動ロッド側シャンク36も、溶接ガン32の回転と共に回転し且つ揺動し、図2の例では、左方の可動ロッド側シャンク36は上下方向に揺動するように、右方の可動ロッド側シャンク36は奥行き方向に揺動するように構成され、そして、その先端に設けられたロッド側電極40が、インパネメンバ2、4の内方のアーム側電極38と対向する位置に位置決めされるように構成されている
【0022】
所定の各種取付部品を小径インパネメンバ4にスポット溶接する場合、アーム側シャンク34及びアーム側電極38を小径インパネメンバ4の筒の中に向かって水平に挿入する。本実施形態では、左右のスポット溶接装置31を稼働し、小径インパネメンバ4の両端から、シャンク34及びアーム側電極38をそれぞれ挿入し、異なる各種取付部品を並行して溶接することが出来るように構成している。
【0023】
その後、ロッド側電極40の先端部をアーム側電極38と向かい合う位置に位置決めし、電極38、40間で、各種取付部品を溶接しようとする部分に圧力をかけて挟み込みながら電流を流し、その電気抵抗熱で金属を溶かして溶接する。本実施形態では、アーム側シャンク34の剛性が高められ、圧力がかけられても撓むことなく、小径インパネメンバ4と接触しないようにしている。
【0024】
また、スポット溶接装置31を左右2台設けることにより、アーム側シャンク34の長さを、小径インパネメンバ4の長さの少なくとも半分以下にすることができる。従って、スポット溶接時に溶接部分に圧力をかけようとする場合に、アーム側シャンク34の撓みを最小限にし、撓みに伴って生じる溶接部分の圧力の低下による溶接不良、及び、撓みによってシャンク34が小径インパネメンバ4に接触して分流が生じることによる溶接不良を抑制することが出来る。
以上のスポット溶接装置31によるスポット溶接は、大径インパネメンバ2にも同様に行われ、得られる効果も同様である。その説明は省略する。
【0025】
次に、図3により、本発明の実施形態によるインパネメンバの組立方法を説明する。
図3は、本発明の実施形態によるインパネメンバの組立方法によるインパネメンバの組立工程の一例を示すフロー図である。
【0026】
図3に示すように、本実施形態では、スポット溶接工程S1において、大径インパネメンバ2と小径インパネメンバ4は、それぞれ別の溶接工程S11、S12において並行して提供され、それぞれ並行して、各種取付部品がスポット溶接により溶接される。例えば、スポット溶接工程S11、S12は、インパネメンバ1の組立工場において、2つの生産ラインで並行して実施される。
【0027】
溶接工程S11(「大径インパネメンバ溶接工程」)では、上述した、各種取付部品8、10、12、14、16が、図2に示す2台のスポット溶接装置31により、大径インパネメンバ2にスポット溶接される。本実施形態では、上述したように、左右一対のスポット溶接装置31を用いているので、各種取付部品8、10、12、14、16は、例えば、部品8と部品16とを同時に溶接するなど、効率的に溶接することが可能となっている。
なお、この工程S11では、ステアリングブラケット6は、溶接されない。
【0028】
同時に、溶接工程S12(「小径インパネメンバ溶接工程」)では、上述した、各種取付部品18、20、22、24、26が、図2に示す2台のスポット溶接装置31(この場合、溶接工程S11で使用される装置31とは別のラインに設けられた同様の装置31)により、小径インパネメンバ4にスポット溶接される。本実施形態では、この工程S12においても、上述したように、左右一対のスポット溶接装置31を用いているので、各種取付部品18、20、22、24、26は、例えば、部品18と部品26とを同時に溶接するなど、効率的に溶接することが可能となっている。
なお、この工程S1において、溶接工程S11、S12は、同時に行わなれなくても良く、例えば、1つの生産ラインで直列的に工程S11、S12などの順に行われても良い。
【0029】
次に、スポット溶接工程S1でスポット溶接すべき各種取付部品が全て溶接された大径インパネメンバ2及び小径インパネメンバは、アーク溶接工程S2に提供される。このアーク溶接工程S2では、例えば、インパネメンバ1の組立工場において、1つの生産ラインで実施される。
【0030】
このアーク溶接工程S2では、その工程S21において、先ず、大径インパネメンバ2と小径インパネメンバ4とが組み付けられ且つ接合部A(図1参照)において、アーク溶接がなされる。アーク溶接は、スポット溶接より時間がかかるものの、その溶接強度は高いものである。本実施形態では、この工程S21により、大径インパネメンバ2と小径インパネメンバ4との接合にアーク溶接を用いることで、インパネメンバ1自身の剛性、言い換えると、インパネメンバ1全体としての剛性を確保するようにしている。
【0031】
一方、上述した各種取付部品のうち、高い溶接強度が要求されるものもある。例えば、本実施形態では、上述したコラムEPAS(電動パワーステアリング)取付用ステアリングブラケット6は、高い溶接強度が要求される。つまり、ブラケット6に取り付けられる電動パワーステアリングは重量がかさむので、その支持強度が必要とされるのである。
そこで、本実施形態では、工程S21に続き、工程S22において、ステアリングブラケット6を大径インパネメンバ2にアーク溶接により溶接している。本実施形態では、工程S21、S22は、同一のアーク溶接機を用い、連続して行われる。
【0032】
本実施形態において、アーク溶接工程S2における工程S21、S22は、インパネメンバ1の生産効率を高めるために、インパネメンバ1の製造工程全体から見れば、ほぼ同じタイミングで行われる。そして、工程S21と、工程S22とは、逆の順であっても良い。
【0033】
なお、スポット溶接より溶接強度の高い溶接としては、工程S2において、例えばレーザー溶接が用いられても良い。
【0034】
次に、上述した本発明の実施形態によるインパネメンバの組立方法の作用効果を説明する。
【0035】
本発明の実施形態では、スポット溶接工程S1において、大径インパネメンバ2及び小径インパネメンバ4に対応する各種取付部品8、18などをそれぞれ大径インパネメンバ2及び小径インパネメンバ4にスポット溶接するようにしているので、溶接時間の短いスポット溶接により溶接時間を短縮することが出来る。
【0036】
また、スポット溶接工程S1において、大径インパネメンバ2と小径インパネメンバ4は、それぞれ別の溶接工程S11、S12において並行して提供され、それぞれ並行して、各種取付部品8、18などがスポット溶接により溶接されるので、生産効率を確実に高めることが出来る。
【0037】
また、アーク溶接工程S2において、大径インパネメンバ2及び小径インパネメンバ4を互いに接合する前に、大径インパネメンバ2及び小径インパネメンバ4にそれぞれ個別に各種取付部品8、18などをスポット溶接するようにしているので、アーク溶接より溶接時間の短いスポット溶接による溶接時間の短縮と共に生産工程の短縮も可能である。
【0038】
また、大径インパネメンバ2及び小径インパネメンバ4を互いに接合する前に、それらの大径インパネメンバ2及び小径インパネメンバ4に対して各々スポット溶接用電極(アーム側シャンク34、アーム側電極38)を挿入するようにしているので、スポット溶接用電極のシャンク34の長さを短くすることが出来、従って、シャンク34の撓みに伴うスポット溶接用電極38の圧力低下に伴う溶接不良や、その電極38と大径インパネメンバ2及び小径インパネメンバ4との接触による分流に伴う溶接不良を抑制することが出来る。
【0039】
また、スポット溶接工程S1の後のアーク溶接工程S2において、大径インパネメンバ2及び小径インパネメンバ4を互いに組み付けると共に、スポット溶接よりも溶接強度の高いアーク溶接により大径インパネメンバ2及び小径インパネメンバ4を互いに接合するようにしているので、インパネメンバ1自体の剛性の低下を抑制することが出来る。
従って、本発明の実施形態によるインパネメンバの組立方法によれば、インパネメンバ1自体の剛性の低下を抑制しつつ、各種取付部品8、18などのスポット溶接により溶接時間を短縮してインパネメンバ1の生産効率を高めることが出来る。
【0040】
また、大径インパネメンバ2及び小径インパネメンバ4のそれぞれの両端からスポット溶接用電極(アーム側シャンク34、アーム側電極38)をそれぞれ挿入して各種取付部品8、18などをスポット溶接するようにしているので、各種取付部品8、18などの溶接工程にかかる総時間を短縮することが出来、その結果、インパネメンバ1の生産効率を高めることが出来る。
【0041】
また、大径インパネメンバ2及び小径インパネメンバ4のそれぞれの両端からスポット溶接用電極(アーム側シャンク34、アーム側電極38)がそれぞれ挿入されるので、スポット溶接用電極用のシャンク34の長さをより短くして、シャンク34の撓みに伴うスポット溶接用電極38の圧力低下に伴う溶接不良や、その電極38と大径インパネメンバ2及び小径インパネメンバ4との接触による分流に伴う溶接不良をより確実に抑制することが出来る。
【0042】
また、アーク溶接工程S2の工程S22においては、大径インパネメンバ2への高い溶接強度が要求される高溶接強度取付部品であるコラムEPAS(電動パワーステアリング)取付用ステアリングブラケット6が、スポット溶接よりも溶接強度が高いアーク溶接により大径インパネメンバ2に溶接されるので、重量がかさむ電動パワーステアリングなどの支持剛性を高めることが出来る。
【0043】
また、アーク溶接工程S2においては、大径インパネメンバ2及び小径インパネメンバ4を互いにアーク溶接すると共に高溶接強度取付部品であるステアリングブラケット6を大径インパネメンバ2へアーク溶接するようにしているので、高い溶接強度が要求される高溶接強度取付部品をインパネメンバ1の生産工程中において効率的に溶接することが出来る。つまり、生産効率を高めることが出来る。
【0044】
また、アーク溶接工程S2においては、工程S21と、工程S22が連続して行われるので、高い溶接強度が要求される溶接を、インパネメンバ1の組立工程中、効率的に行うことが出来る。なお、工程S21と、工程S22は、その順が逆でも良い。このように、工程S22は、工程S21の前或いは後に連続して行われるので、各種取付部品については、スポット溶接よりも溶接強度の高い溶接を必要とするステアリングブラケット6の大径インパネメンバ2へのアーク溶接を効率的に行うことが出来る。
【0045】
また、高溶接強度取付部品としてのステアリングブラケット6は、剛性の高い大径インパネメンバ2で支持されるので、そのブラケット6に取り付けられる重量のかさむ電動パワーステアリングのぐらつきなども抑制される。
【0046】
また、アーク溶接工程S2においては、スポット溶接よりも溶接強度の高いアーク溶接を採用しているので、より確実に、大径インパネメンバ2及び小径インパネメンバ4との接合部A(図1参照)の接合強度を確保し、また、高溶接強度取付部品としてのステアリングブラケット6の大径インパネメンバ6への溶接部の溶接強度を確保できる。
【0047】
また、アーク溶接工程S2が、高い溶接強度が要求されるステアリングブラケット6の大径インパネメンバ2への溶接と、大径インパネメンバ2と小径インパネメンバ4の互いの接合とが、スポット溶接工程S1の後にまとめて行われる、スポット溶接工程と、アーク溶接工程とを分けて、インパネメンバ1の生産効率を高めることが出来る。
【0048】
また、従来のインパネメンバの組立工程では、各種取付部品は全てアーク溶接により溶接していたが、上述したように、本実施形態では、スポット溶接工程S1において、高い溶接強度が要求される取付部品以外の取付部品をスポット溶接により溶接しており、その分、インパネメンバの組立にかかる時間が短くなる(アーク溶接では4秒程かかる一方、スポット溶接では1秒程で済み、取付部品が多いほど組立時間が短くなる)。
【0049】
また、従来では、全ての工程の溶接にアーク溶接を用いていたので、溶接タレ防止のために溶接方向が同じとなる部材を群として溶接し、溶接工程間で仮置きをする時間も要していたが、本実施形態では、少なくとも各種取付部品の多くをスポット溶接工程S1においてスポット溶接により溶接するので、このような問題がおきず、インパネメンバの生産効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 インパネメンバ
2 大径インパネメンバ
4 小径インパネメンバ
6 コラムEPAS取付用ステアリングブラケット
8 ボディカウル部取付用ステアリングブラケット
10 ボディトンネル部取付用インパネブラケット
12 左ニーボルスター
14 右ニーボルスター
16 右サイドブラケット
18 グローブヒンジ部取付用インパネブラケット
20 サイドブラケット
31 スポット溶接装置
32 溶接ガン
34 アーム側シャンク
36 ロッド側シャンク
38 アーム側スポット溶接用電極部
40 ロッド側スポット溶接用電極部
S1 スポット溶接工程
S11 大径インパネメンバへの各種取付部品のスポット溶接による溶接工程
S12 小径インパネメンバへの各種取付部品のスポット溶接による溶接工程
S2 アーク溶接工程
S22 高溶接強度取付部品の大径インパネメンバへのアーク溶接による溶接工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種取付部品が溶接される小径インパネ筒状メンバと、各種取付部品が溶接される大径インパネ筒状メンバとを互いに組み付け且つ接合して組み立てられるインパネメンバの組立方法であって、
上記小径インパネ筒状メンバと上記大径インパネ筒状メンバとを互いに接合する前に、それらのインパネ筒状メンバに対して各々スポット溶接用電極を挿入して、各インパネ筒状メンバに対応する所定の各種取付部品をそれぞれ各インパネ筒状部材にスポット溶接する第1溶接ステップと、
この第1溶接ステップ後、スポット溶接よりも溶接強度の高い溶接により所定の溶接を行う第2溶接ステップであって、上記小径及び大径のインパネ筒状部材を互いに組み付けると共に上記スポット溶接よりも溶接強度の高い溶接により上記小径及び大径のインパネ筒状部材を互いに接合することを含む第2溶接ステップと、
を有することを特徴とするインパネメンバの組立方法。
【請求項2】
上記第1溶接ステップは、上記小径及び大径のインパネ筒状部材のそれぞれにおいて、各インパネ筒状部材の両端からスポット溶接用電極をそれぞれ挿入して、各種取付部品をスポット溶接する請求項1記載のインパネメンバの組立方法。
【請求項3】
上記各種取付部品には、上記大径インパネ筒状メンバへの高い溶接強度が要求される高溶接強度取付部品が含まれ、
上記第2溶接ステップにおける所定の溶接は、上記高溶接強度取付部品を上記大径インパネ筒状メンバへ溶接することを含む請求項1記載のインパネメンバの組立方法。
【請求項4】
上記第2溶接ステップにおける、スポット溶接よりも溶接強度の高い溶接は、アーク溶接である請求項1又は請求項3記載のインパネメンバの組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−148440(P2011−148440A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12230(P2010−12230)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】