説明

インパルス雑音のモニタリングの方法、関連ネットワーク端末、ネットワークノードおよびネットワークマネジャ

デジタルデータパケットを伝送するネットワークにおいて、受信されたデータパケットの受信クオリティが、遠隔端末101によって検知される111。その後、検知された受信クオリティを表示するビット列が生成される112。このビット列またはこのビット列の圧縮版は、ビット列がコンパクト化または処理されるネットワークノード102の中の第1の中央処理装置121へ管理チャネルを介してリアルタイムで転送される114。第1の中央処理装置121は、ビット列を処理することによって、インパルス雑音の特徴を特定することができる。あるいは、ビット列またはその圧縮版もしくはコンパクト化版は、ビット列を処理してインパルス雑音の特徴を特定するネットワークマネジャ103の中の第2の中央処理装置131へ転送することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、デジタルデータ通信におけるインパルス雑音のモニタリング、すなわち、受信されたデータパケットの中のインパルス雑音の検出および特徴付けに関する。インパルス雑音は、外部の雑音源によって通信回線で電磁結合により誘発される、比較的短い時間の雑音である。たとえば、ライトのスイッチをオン/オフにすることは、供給電圧および電流に一時的影響を与え、その結果、電話回線がDSLループとして配置されている場合に、たとえば離散マルチトーン(DMT)シンボルでパックされたデジタルデータを伝送できる電話回線に雑音インパルスを生じさせることがある。インパルス雑音は、インパルスの振幅および時間に応じて、受信されるデータパケットのクオリティ劣化および/またはエラーをもたらす。本特許出願の文脈内では、データパケットは、単一の実体として転送される、データバイトまたはデータビットのあらゆる固定長または可変長の集まりを含むよう広く解釈される必要があることが認められる。つまりこれは、データフレーム、データセル、データワード、データシンボル、データセグメントなどを含む。データパケットの1つの例は、たとえば、ADSL(非対称デジタル加入者回線)またはVDSL(超高速デジタル加入者回線)のループを介して送信されるDMTシンボルである。
【0002】
デジタル通信回線の近くに調光器、蛍光灯、クリスマスロープライト、切り替え型の電源ユニット(PSU)のテレビまたはパソコン、ビデオレコーダ、電子変圧器、セキュリティライトなどがある場合、その通信回線でのデジタルデータ転送を阻害する雑音インパルスは、反復性を有することがある。かかる反復する雑音インパルスは、なお時間が短く、そのため反復電気インパルス雑音(repetitive electrical impulse noise)(REIN)と呼ばれる。典型的には、2つの連続した雑音インパルスの間の時間は、欧州では10ミリセカンド(ms)、米国では8.3msと短く、その理由は、雑音インパルスが通常、電力の周波数に基づく割合でのオン/オフの移行の結果であり、欧州では50ヘルツ(Hz)、米国では60Hzであることにある。たとえば、調光器の例では、ライトの強さは、ライトのスイッチをオンおよびオフにする電気回路を介して制御される。このオンの時間とオフの時間との割合が、ライトの強さを決める。それぞれのオン/オフの移行は、隣接する通信回線に雑音インパルスをもたらす。ライトのスイッチをオン/オフにするトリガは、電力グリッドの周波数から生まれ、その結果、雑音インパルスは、10ms(欧州)または8.3ms(米国)ごとに発生する。
【0003】
トリプルプレーサービスの提供、すなわち、高速インターネット(HSI)アクセス、VoIPまたは会話型IPマルチメディアサービスなどの会話型二地点間サービス、およびブロードキャストTV(BTV)などのクライアントサーバに基づくサービスの同時提供の開始にあたり、インパルス雑音の特徴付けは、たとえばDSLオペレータにとって非常に重要になっている。高速インターネットアクセスが最善努力型のサービスであったのに対し、会話型またはクライアントサーバ型の音声およびビデオサービスは、サービスの終端間のクオリティを要求する。オペレータは、これらの新たなサービスを効果的かつ確実に提供することができる安定した高クオリティの広帯域接続を必要としている。
【背景技術】
【0004】
インパルス雑音によるデジタルデータ伝送のエラーを減らす既存のメカニズムは、再送メカニズム、前方向誤り訂正(FEC)メカニズム、または障害処理のいずれかに分類することができる。
【0005】
再送メカニズムでは、再送要求が受信されたデータパケットを再送信することによって、破損したデータパケットを修復する。この再送要求は、回復できないくらい影響を受けたデータパケットを受信した受信機によって出すことができ(このような実施形態はしばしば、ARQまたは自動再送要求メカニズムと呼ばれる)、あるいは、受信機がデータパケットの受信を確認するのを待つも、そのデータパケットの送信から所定の時間内にかかる確認を受信しないタイマによって出すことができる。両者の組み合わせ、すなわち、回復できないくらい損傷を受けたパケットについて受信機が出す再送要求、または未確認のもしくは失われたデータパケットについて送信機の中もしくは近くにあるタイマが出す再送要求についても、文献(literature)で説明されている。
【0006】
再送は通常、より高い層、すなわち、TCP層または伝送制御プロトコル層などのPMD(物理媒体依存)層より上のプロトコルスタック層で実施される。
【0007】
再送はまた、たとえば、「Impulse Noise Correction in SDSL Using Retransmission Request」と題するフランステレコムによるETSI SDSL標準寄稿(standard contribution)054t34において、物理層に関して勧められている。この標準寄稿では、最近伝送されたデータセグメントを記録するSDSL(対称デジタル加入者回線)送信機のPMD(物理媒体依存)層において実施することが提案されている。SDSL受信機は、再送信されるべきデータセグメントのセグメント番号を示すことによって、銅線の組(copper pair)におけるインパルス雑音の発生によって破損したデータセグメントの再送を要求することができる。再送要求を受信したSDSL送信機は、その要求を優先的に処理する。
【0008】
他の再送スキームは、A.S.Tanenbaumの「Computer Networks」第4版2003年、より具体的にはセクション3.3および3.4に見出すことができる。
【0009】
TCP再送などの既存の再送メカニズムは、VoIP(IP上での音声)またはブロードキャストTVサービスなどのリアルタイムサービスでは、再送メカニズムが固有の待ち時間による相当な遅延を被るため役に立たない。さらに、再送メカニズムは、再送に固有の帯域拡大によりREINから高頻度の反復的損失が生じる通信リンクでは、不十分だったり役に立たなかったりする。
【0010】
前方向誤り訂正(FEC)メカニズムは、FECコード、すなわち、各データパケットに加えられた冗長ビットまたは冗長バイトの大きさの計算に基づいており、受信機のデコーダで使用されることでインパルス雑音によるエラーなどの伝送エラーを限られた数だけ回復することができる。よく知られているFECメカニズムには、たとえば、リードソロモン符号化、パリティに基づく(Parity−Based)符号化、Harris Ascent符号化などがある。
【0011】
たとえば、リードソロモン(RS)符号化が使用されることでインパルス雑音の影響を相殺する場合、デジタルデータワードは、伝送前に冗長リードソロモン符号で拡張される。受信後、冗長リードソロモン符号により、デコーダは雑音によって誘発されたデジタルデータワードのエラーを検出し訂正することができる。オーバーヘッドをある程度犠牲にして、リードソロモン符号化により、あらゆる種類のインパルス雑音から生じたエラーを解決することができる。リードソロモン符号化は通常、複数のデータワードに雑音インパルスから生じるエラーを拡散するためにインターリーブ技法と結び付いており、その結果、リードソロモンデコーダが雑音インパルスによって誘発されたすべてのエラーを訂正する性能が向上する。
【0012】
リードソロモン符号化およびインターリーブのような前方向誤り訂正メカニズムは、典型的には、INPまたはインパルス雑音保護と呼ばれるパラメータを使用して構成される。INP値が高くなればなるほど、リードソロモンのオーバーヘッドも高くなり、その結果、回線上の有効データ率は低くなる。INP値が低くなればなるほど、保護が提供されているインパルス雑音バースト(impulse noise burst)の時間が短縮される。INPパラメータの最適な構成は、インパルス雑音のモニタリングおよび正確な特徴付けを要求する。つまり、デジタル通信回線で前方向誤り訂正パラメータを最適に構成するためには、インパルス雑音とそれがデータパケット、たとえばDMTシンボルにどのように影響を与えるかについて正確な状況が把握される必要がある。
【0013】
インパルス雑音のモニタリングの知られている方法は、ITU−Tが同意した基本テキストTD158R1(WP1/15)の「G.ploam:G.vdsl:Report of ad−hoc session on Impulse Noise Monitoring」と題する、2006年11月3日に開かれた臨時セッションの結果として発表された暫定的文書で説明されている。そこで説明され、最初の図で示されているインパルス雑音のモニタリング方法では、遠隔端末が受信されたDMTシンボルのクオリティ劣化を検知し、非常に劣化したDMTシンボルの表示を生成する。このインパルス雑音表示は、その後、インパルスの長さ(IL)およびインパルスの到着時間間隔(IAT)の異常ヒストグラム(anomaly histograms)のような基本的統計情報にコンパクト化される。INPパラメータの設定の知られている方法でなお入手可能なこれらの統計データは、一部の記憶容量を占める。しかし、検知されたインパルス雑音に関する情報の一部は、統計データ生成の結果、従来技術のインパルス雑音のモニタリング方法では回復できないくらい失われる。たとえば、個々の雑音パルス、個々のエラーの長さ、個々の到着時間間隔、エラーの長さと到着時間間隔との間の相互相関などに関するタイミング情報は失われ、その結果、FECパラメータ構成のためにインパルス雑音を正確に特徴付ける可能性も失われる。さらに、遠隔端末のソフトウェアまたはハードウェアでコンパクト化機能が実施される結果、INPパラメータ設定を改善できる他のヒストグラムまたは統計、たとえば、2次元のインパルスの長さ、到着時間間隔のヒストグラム、フーリエ変換、スライディングウィンドウに基づくヒストグラム、パルスギャップのブリッジングに基づくヒストグラム、またはこれらの解釈もしくは組み合わせなどを導入することは、遠隔端末のソフトウェア/ハードウェアのアップグレードを必要とするため、ほぼ不可能である。このようなアップグレードは、典型的には国際標準の設定または事実上の業界標準に対する市場主導の需要のため、すべての製造業者に製品の変更を要求する緩やかなプロセスである。
【0014】
同じ弱点を持つ同様のインパルス雑音モニタリング方法は、国際特許出願の「Impulse Noise Management」と題するWO2005/086405および「Method and Apparatuses of Measuring Impulse Noise Parameters in Multi−Carrier Communication Systems」と題するWO2006/102225で説明されている。
【0015】
最後に、前方向誤り訂正メカニズムが利用できない場合、またはすべてのインパルス雑音エラーを訂正するための十分に高いINP値がない場合、インパルス雑音に対処する解決策は、障害処理、すなわち、顧客の家の中に原因を見つけ、インパルス雑音の原因を除去するための措置を講じることであり得る。たとえばDSL回線の場合、家の中の配線の一部を除去してそれをより優れた電線に置き換えることで、インパルス雑音の影響を容認できる水準まで減らすことができる。インパルス雑音の原因を特定し診断し、それにより是正措置を講じて原因を除去するか問題を軽減するために、オペレータは、物理的現象にできるだけ接近してインパルス雑音のモニタリングおよび特徴付けを行う解決策を要求する。
【0016】
障害処理の目的でインパルス雑音をモニターし特徴付ける知られている方法は、シングルエンド回線テスト(Single−Ended Line Testing)(SELT)に基づいている。たとえば、ITU−T標準寄稿のブリティッシュテレコムによるCD−047およびAT&TによるCD−021に例が示されている。しかしSELTは、サービス中断を伴うオフライン方法である。特に、比較的長い時間、たとえば1日または数日にわたって観察が必要な場合のインパルス雑音の特徴付けでは、知られているSELTに基づく手法は、望ましくないか容認できないほどの長時間のサービス中断をもたらす。加えて、知られているSELT手法は、中央で実行される測定方法と見なされる。顧客構内またはその近くで誘発されたインパルス雑音を診断するために中央サイドでインパルス雑音を測定することは、明らかに非効率的である。知られているSELTベースの測定手法を、中央サイドから遠隔の顧客構内設備に移すことは、中央サイドへ情報の検索に関する問題を提起している。さらに、知られているSELTベースの方法は、振幅、時間および到着時間間隔の分布を測定するが、これらはインパルス雑音の原因を特定するには不十分なパラメータである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第2005/086405号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2006/102225号パンフレット
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】フランステレコムETSI SDSL標準寄稿(standard contribution)054t34「Impulse Noise Correction in SDSL Using Retransmission Request」
【非特許文献2】A.S.Tanenbaum「Computer Networks」第4版2003年、セクション3.3および3.4
【非特許文献3】ITU−Tが同意した基本テキストTD158R1(WP1/15)「G.ploam:G.vdsl:Report of ad−hoc session on Impulse Noise Monitoring」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、前述の従来技術の方法の欠点を克服する、インパルス雑音をモニターする方法を提供することである。より具体的には、目的は、サービス中断も遠隔端末から情報を収集する問題も伴わずに、オンラインでのインパルス雑音の詳細な特徴付けおよび/またはインパルス雑音の原因の特定を可能にするインパルス雑音のモニタリング方法を開示することである。さらなる目的は、インパルス雑音の特徴付けおよびインパルス雑音の原因の特定のために入手できる情報を改善することである。他の目的は、インパルス雑音のモニタリングを通じて収集される情報を解釈する、コンパクト化および処理するソフトウェア/ハードウェアのアップグレード可能性を単純化することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、上に定めた目的が実現され、知られている従来技術の解決策の弱点が、請求項1に定めるインパルス雑音をモニターする方法によって克服される。請求項1は以下のステップを含む:
−受信されたデータパケットの受信クオリティを検知するステップ、
−検知された受信クオリティを表示するビット列を生成するステップであって、ビット列が、受信されたデータパケット1つにつき少なくとも1つのビットを含むステップ、および
−ビット列またはビット列の圧縮版をそのコンパクト化および/または処理のためにネットワークにおける第1の中央処理装置に管理チャネルを通じてリアルタイムで転送するステップ。
【0021】
こうして、データパケットの検知された受信クオリティを表示するビット列を、リアルタイムで、最終的にはいくらか遅延する形で、最新の利用可能なアルゴリズムを用いて格納、コンパクト化、視覚化および/または処理が可能なネットワーク内の中央処理装置へ送信することによって、パラメータを条件付ける膨大な量のインパルス雑音が計算される際の源となる検知された受信クオリティを表示する未加工の一連の情報を、ネットワーク内の中央処理装置が利用できるようになる。管理チャネルの使用を通じて、ビット列はエンドユーザへのサービスを中断することなく第1の中央処理装置へオンラインで転送される。コンパクト化および/または処理が第1の中央処理装置において(または後述する、ビット列を選択的に転送することができる第2の処理装置において)中央で実行されるため、受信クオリティを検出し転送し、好ましくは遠隔の顧客構内設備に存在する機器のソフトウェア/ハードウェア、たとえばADSLのCPEモデムを更新する必要はない。
【0022】
エラーは比較的まれにしか生じないため、データパケット内のインパルス雑音の存在を表示するビット列は密度が低いと予想することができ、ビット列は選択的に、当初の未加工ビット列に含まれている情報を失うことなく、第1の中央処理情報に転送する前に圧縮できることが認められる。
【0023】
本発明による方法で受信されたデータパケットの受信クオリティを検知することは、受信されたデータパケット内のエラーまたは消去を検出する、現在のデータ率でのサービスではエラーをもたらすとは限らないが、より高いデータ率を要求する将来のサービスではエラーを生じさせかねない雑音水準の増加を測定する、信号対雑音比(SNR)、ビットエラー率(BER)、または受信クオリティの劣化を表示する代替パラメータを測定する、知られているか将来の手法に依存することができることがさらに認められる。
【0024】
請求項1に定めるインパルス雑音をモニターする方法に加えて、本発明は、請求項29に定める対応するネットワーク端末、請求項30および31に定める対応するネットワークノード、ならびに請求項32に定める対応するネットワークマネジャに関する。
【0025】
請求項2から4に示すとおり、ビット列またはビット列の圧縮版は、物理層の管理チャネルを通じて第1の中央処理装置に転送することができる。DSLネットワークの場合の例は、デジタル加入者回線の内部オペレーションチャネル(EOC)、またはTR−069プロトコルに基づく管理チャネルを通じた帯域内転送である。
【0026】
請求項5にさらに示すとおり、最も単純な版のビット列は、受信されたデータパケット1つにつき1つのビットを含むことができ、たとえば、DSL受信機内の受信されたDMTシンボル1つにつき1つのビットで、そのビットは、DMTシンボルの受信クオリティが一定の基準を上回った場合には1を設定し、DMTシンボルの受信クオリティがその基準を下回った場合には0を設定するか、その逆とする。あるいは、請求項6で示すとおり、ビット列は、受信されたデータパケット1つにつき複数のビットを含み、これらのビットが受信されたデータパケットのクオリティに関する量的表示である場合がある。
【0027】
データパケット1つにつき単一のビットで実施すると、検知されたクオリティに関する十分な情報が得られない場合、複数のビットが、インパルス雑音に関するあらゆる種類の統計的分析を可能にする検知されたクオリティまたはクオリティ劣化に関する十分な情報を提供することができる。
【0028】
本発明による方法は、デジタル加入者回線顧客構内設備(DSL CPE)によって有利に実施することができ、その場合、受信されたデータパケットは、離散マルチトーン(DMT)シンボルに対応する。これは請求項7に定めている。ADSLの下流のDMTシンボルは1秒あたり約4000DMTシンボルのペースで送信されるため、本発明によるビット列は低いスピード、たとえば、様々なADSL標準で定められているPMD EOCチャネルを通じて毎秒4キロビットで転送することができる。VDSLでは、約4000DMTシンボルまたは約8000DMTシンボルが毎秒下流に送信され、その結果、本発明によるビット列は、毎秒約4キロビットまたは毎秒約8キロビットの割合で上流へ転送することができる。
【0029】
選択的に、請求項8に定めるとおり、ビット列または当該ビット列の圧縮版は、デジタル加入者回線中央局(DSL CO)にある第1の中央処理装置、たとえば、全く同一のDSLAMで終わるすべてのDSL回線のためにこの情報を集める単一のCPU、または、請求項9に示すように、DSLAM内の全く同一の回線終端(LT)ボードで終わるすべてのDSL回線のためにこの情報を集めるデジタル加入者回線中央局(DSL CO)にある各LTボード上のCPUに転送することができる。
【0030】
請求項10に定める、本発明による方法のオプション機能では、ビット列またはビット列の圧縮版は、遠隔のネットワーク端末から第1の中央処理装置へ規則的、自律的に転送することができる。
【0031】
請求項11に定める、本発明による方法の代替的な実施形態では、ビット列またはビット列の圧縮版の転送は、第1の中央処理装置によって規則的、自律的に要求される。
【0032】
請求項12に定める、本発明による方法のさらに別の代替的な実施形態では、表示信号がビット列の生成後に第1の中央処理装置に送信され、ビット列またはビット列の圧縮版は、第1の中央処理装置の要求に応じて第1の中央処理装置に送信される。
【0033】
要約すると、第1の中央処理装置への圧縮されたまたは圧縮されていないビット列の転送は、インパルス雑音のモニタリング機能をホスティングする遠隔端末の主導で、第1の中央処理装置の要求に応じて、またはビット列が生成されて第1の中央処理装置が処理する準備ができていることを示す通信が遠隔端末と第1の中央処理装置との間で行われた後、独立して実施することができる。第2および第3の変形形態は、遠隔端末と第1の中央処理装置をホスティングするノードとの間のさらなるシグナリング、およびビット列を少なくとも第1の中央処理装置によって要求されるまで格納する遠隔端末の記憶容量を明確に要求する。
【0034】
選択的に、請求項13に定めるとおり、本発明による方法は、以下のさらなるステップを含む:
−1つか複数の後続ビット列を生成するステップ、および
−ビット列および後続ビット列またはその圧縮版を、遠隔のネットワーク端末における先入れ先出し記憶装置に格納するステップ。
【0035】
遠隔端末におけるFIFO(先入れ先出し)記憶装置の実行は、ビット列が第1の中央処理装置の要求に応じてのみ転送される場合に好ましい。
【0036】
請求項14にさらに示すとおり、遠隔端末における先入れ先出し記憶装置を使用した本発明の変形形態では、ビット列および後続ビット列の1つか複数またはその圧縮版は、先入れ先出し記憶装置から第1の中央処理装置へ一度に転送することができる。
【0037】
請求項15に明示するとおり、転送されたビット列またはその圧縮版は、第1の中央処理装置へ転送された後、遠隔端末の先入れ先出し記憶装置から除去することができる。
【0038】
こうして、先入れ先出し記憶装置の記憶容量は、さらなる後続ビット列のために可能な限り速やかに解放される。
【0039】
請求項16に定める、本発明による方法のより進んだ代替的実施形態では、転送されたビット列および後続ビット列またはその圧縮版は、第1の中央処理装置により適切に受信したことを確認して初めて、遠隔端末の先入れ先出し記憶装置から除去される。
【0040】
こうして、適切な受信が確認されるまで、ビット列および後続ビット列は、先入れ先出し記憶装置で再送のために引き続き入手できるため、上流の管理チャネルを通じたビット列および後続ビット列の1つか複数の不適切な転送による情報の喪失を避けることができる。
【0041】
請求項17に定める、本発明のFIFOベースの実施のさらなるオプションでは、ビット列および後続ビット列またはその圧縮版は、先入れ先出し記憶装置のオーバーフローに伴い先入れ先出し記憶装置から除去することができる。
【0042】
典型的には、FIFO記憶装置内のビット列および後続ビット列の最も古いものが、オーバーフローを予期して新たな後続ビット列のために記憶領域を解放することによって除去される。しかし、それは必要ではなく、本発明は明らかに、オーバーフローを予期してFIFO記憶装置内の最も古いビット列を除去することに限定されない。
【0043】
さらに別のオプションでは、本発明による方法は、ビット列またはビット列の圧縮版またはコンパクト化されたビット列を第1の中央処理装置からネットワークマネジャ内の第2の中央処理装置へ規則的、自律的に転送することを含むことができる。このオプションは、請求項18に定めている。
【0044】
あるいは、請求項19に定めるとおり、本発明による方法は、ネットワークマネジャの第2の中央処理装置によりビット列またはビット列の圧縮版またはコンパクト化されたビット列の転送を第1の中央処理装置へ規則的、自律的に要求することを含むことができる。
【0045】
請求項20に定める、本発明による方法のさらに別の代替的実施形態では、ビット列またはビット列の圧縮版をコンパクト化または処理する第1の中央処理装置によるイベント検出の後、表示信号がネットワークマネジャの第2の中央処理装置へ送信され、ビット列またはビット列の圧縮版またはビット列のコンパクト化版が第2の中央処理装置の要求に応じて第1の中央処理装置から第2の中央処理装置へ転送される。既に述べたとおり、ビット列またはその圧縮版もしくはコンパクト化版は、たとえばDSLAMのようなネットワークノード内に存在する第1の中央処理装置から、たとえば1人または複数のオペレータのネットワークを管理するために使用されるネットワークマネジャ内に存在する第2の中央処理装置へ転送することができる。ビット列のコンパクト化版は、第1の中央処理装置によってビット列またはビット列の圧縮版から抽出されたヒストグラムまたは統計情報からなることができる。また、ビット列が第2の中央処理装置へ転送されるペースは、ビット列が遠隔端末から第1の中央処理装置へ転送される頻度を下回ってよい。特に、第2の中央処理装置をホスティングするネットワークマネジャが大きなネットワーク、さらには複数のネットワークを管理する場合、この方法でネットワークマネジャへの負担のかけ過ぎを回避することができる。
【0046】
さらに要約すると、ビット列、その圧縮版またはコンパクト化版は、第1の中央処理装置の主導で、第2の中央処理装置へ独立して送信することができ、第2の中央処理装置が要求に応じてのみ送信することができ、またはインパルス雑音バーストなどのイベントを示す通信が第1の中央処理装置と第2の中央処理装置との間で行われた後に送信することができる。後者2つの実施形態は、第1の中央処理装置と第2の中央処理装置との間のさらなるシグナリングのほか、ビット列を第2の中央処理装置によって要求されるまで記憶するため第1の中央処理装置における十分な記憶容量を明らかに必要とする。
【0047】
選択的に、請求項21に定めるとおり、本発明によるインパルス雑音をモニターする方法は、以下のさらなるステップを含む:
−1つか複数の後続ビット列を生成するステップ、
−後続ビット列またはその圧縮版をさらに第1の中央処理装置へ転送するステップ、および
−ビット列および1つか複数の後続ビット列またはその圧縮版を第1の中央処理装置の先入れ先出し記憶装置に格納するステップ。
【0048】
こうして、第1の処理装置の中または近くでFIFOを実施することによって、遠隔端末におけるビット列の記憶要件を軽減することができる。よって、エラー、またはより一般的には、検知された受信クオリティを表示する情報は、最終的にタイムスタンプが行われる記録でグループ化することができる。これらの記録は、後続ビット列として第1の中央処理装置へ転送され、記憶装置に格納される。このように記録を中央に格納することで、遠隔端末の記憶要件が最小化される。第1の中央処理装置の中または近くでFIFOを実施することはまた、ビット列が第2の中央処理装置の要求に応じて第2の中央処理装置に転送される場合に好ましい。
【0049】
請求項22に示すとおり、ビット列を第1の中央処理装置からネットワークマネジャに存在する第2の中央処理装置に転送する際、ビット列および後続ビット列の1つか複数を一度に転送することができる。その後、転送されたビット列は、請求項23が明示するとおり、第1の中央処理装置の中または近くのFIFO記憶装置からただちに除去することができ、または、請求項24に定めるとおり、第2の中央処理装置により適切に受信したことを確認して初めて、FIFO記憶装置から除去することができる。請求項25に定めるとおり、FIFO記憶装置のオーバーフローを予期して、最も古いビット列(または選択した他のビット列)をFIFO記憶装置から除去することができる。これらのオプション機能の利点は、ビット列および後続ビット列を遠隔端末から第1の中央処理装置へ転送する前に格納する遠隔装置におけるFIFO記憶装置の存在との関係で既に説明した利点と類似する。
【0050】
請求項26に定めるとおり、本発明によるインパルス雑音をモニターする方法の他のオプション機能では、ビット列を前述の第1の中央処理装置へ転送する前に可逆的圧縮アルゴリズムによって圧縮することができる。明らかに本発明を限定しない、このような可逆的圧縮アルゴリズムの例は、請求項27で言及するランレングス符号化アルゴリズムである。
【0051】
さらに、本発明による方法の選択的態様は、ビット列またはビット列の圧縮版が第1の中央処理装置によって処理され、それにより、インパルス雑音の特徴を特定することができる。この態様は請求項28で言及している。
【0052】
この処理は、インパルス雑音の長さおよび/またはインパルスの到着時間間隔のヒストグラムの生成、パルスギャップブリッジングメカニズムの有無、フーリエ変換の有無、スライディングウィンドウに基づくメカニズムの有無、インパルス雑音の長さとインパルス到着時間間隔との相互相関を伴い、最適なINPパラメータ設定などを決定する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明によるネットワーク端末101、ネットワークノード102およびネットワークマネジャ103を備えるDSLネットワークにおける、本発明によるインパルス雑音のモニタリング方法の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、DSL回線104を介してDSL CO(デジタル加入者回線中央局)102に接続されたDSL CPE(デジタル加入者回線顧客構内設備)モデム101を示している。DSL CPE101は、たとえばADSLモデムまたはVDSLモデムとすることができ、DSL CO102は、DSLAM(デジタル加入者回線アクセスマルチプレクサ)、DSLAM内の回線終端ボード、または1つか複数の中央局DSLモデムを組み込んでいるASIC(アプリケーション専用集積回路)とすることができる。従来のDSL CPE機能に加えてDSL CPE101は、DMTシンボル受信クオリティセンサ、SENSまたは111、DMTシンボルクオリティビット列ジェネレータ、SQ−GENまたは112、先入れ先出し記憶装置、FIFO1または113、およびDMTシンボルクオリティビット列転送装置、TRANSFまたは114を備える。従来のDSL CO機能に加えてDSL CO102は、同様に先入れ先出し記憶装置、FIFO2または122を有する第1の中央処理装置、CPU1または121を備える。図1はさらに、第2の中央処理装置、CPU2または131を備えたDSLネットワークマネジャ、NETWORK MNGRまたは103を示している。
【0055】
下流方向では、DMTシンボルはDSL回線104を介してDSL CO102からDSL CPE101へ送信される。DSL CPE101でこれらのDMTシンボルを受信すると、シンボル受信クオリティセンサ111は、受信されたDMTシンボルそれぞれにつき、たとえば消去検出、SNR(信号対雑音比)測定、またはBER(ビットエラー率)の計算を通じてDMTシンボルのクオリティ劣化を検知する。検知されたDMTシンボルのクオリティに基づき、シンボルクオリティビット列ジェネレータ112は、それぞれのDMTシンボルの劣化を表示するDMTシンボル1につき1つのビットを生成する。かかるビットは、以下のパラグラフでシンボルクオリティビットまたはSQビットと呼ぶ。よって、シンボルクオリティビット列ジェネレータ112は、検知されたDMTシンボルクオリティが一定の基準未満にとどまった場合には劣化シンボルビットまたはDESYビット(たとえば1に設定したビット)を生成し、対応するDMTシンボルの受信クオリティがその基準を上回った場合には非劣化シンボルビットまたはNODESYビット(たとえば0に設定したビット)を生成する。これらのSQビットが現存するサービスのため生成されるか、将来のサービスのために生成されるかにかかわりなく、ADSLの場合にこうして生成されたビット列は、SQストリームと呼ばれる、毎秒約4キロビットのデータストリームを表す。
【0056】
SQビットは先入れ先出し記憶装置113に格納され、そこから読み出される。その後、SQストリームは、転送装置114によってEOC(内部オペレーションチャネル)管理チャネルを介してDSL CO102へと上流に送信される。これは、転送装置114または図1に示していない制御装置によって生成されるSQスタート命令およびSQストップ命令に基づき、独立して実施することができ、その場合、いくつかのSQビットはグループ化されてSQビット列を形成する。後述するとおり、ヘッダーが事前に付けられ(pre−pended)、一定の間隔でSQビット列は送信される。あるいは、これは、DSL CO102によって、より具体的には内蔵する中央処理装置121によって出される要求に基づいて実施することができる。後者の場合、DSL CPEの先入れ先出し記憶装置113は、SQビット列の格納を、中央処理装置121によってその転送が要求されるまで回避することができない。先入れ先出し記憶装置113の規模は、たとえば4バイトの32倍に固定することができる。
【0057】
一般に、DSL CO102が転送装置114によるSQビット列の転送を要求するために、2種類の要求メッセージを区別することができる。以下のパラグラフでSQ_newと呼ばれる、第1の種類の要求メッセージは、新たなSQビット列を求める。SQ_newの要求に応じて、転送装置114は、既に送信されたSQビット列の後にFIFO1に格納されたSQビット列のみを送信する。以下のパラグラフでSQ_allと呼ぶ、第2の種類の要求メッセージは、すべてのSQビット列、すなわち、前回の要求で求められたSQビット列と新たなSQビット列との両方の転送を要求する。
【0058】
FIFO1は、前回のSQ_newの要求と今回の要求との間のオーバーフローをモニターされる。FIFO1の規模が新たなビット列、すなわち、前回のSQ_newの要求の後に生成されたビット列を格納するには不十分になった場合にはただちに、古いSQビット列が新しいSQビット列によって上書きされる。つまり、最も新しいビット列がFIFO1に記録され、古いビット列が除去される。あるいは、最も古いビット列とは限らない他の一連のビット列が、オーバーフローを予期してFIFO1から除去される。
【0059】
本明細書で前述したDMTシンボル1つあたりの単一ビットの代わりに、シンボルクオリティビット列ジェネレータ112によって生成されるSQビット列は、DMTシンボル1つにつき固定数のSQビット、固定数のSQビットを有するタイムスタンプ、連続的なDESYビットのカウント(DESYカウント)および/もしくは連続的なNODESYビットのカウント(NODESYカウント)を有するタイムスタンプ、またはタイムスタンプ、カウントおよびビットの組み合わせを含むことができる。
【0060】
本明細書で前述した第2のオプション、すなわち、タイムスタンプを含む場合は、図1に示すシステムで実施することが想定されている。この実施形態では、NODESYビットを含んでいるだけのすべてのビット列を読み飛ばすことができる。回線がREINによって影響を受ける場合でも、DSL回線上の連続的なNODESYビットの量は、典型的には30程度である。16ビットのタイムスタンプでは、かなりのデータ削減を実現することができる。
【0061】
ビット列を固定規模にすると、FIFO記憶装置の複雑性が低下し、大半の事象は少数の連続的なDESYビットを有するにすぎないため、DESYカウントを実施することは有用ではない可能性があることが認められる。したがって、DESYビットの発生時には、新たなビット列がシンボルクオリティビット列ジェネレータ112によって作られる。タイムスタンプは、SQストリームにおけるDESYビットの連続番号を示す。固定規模のビット列を得るために、16の後続SQビットのみがタイムスタンプとともにビット列に入れられる。
【0062】
有利なことに、SQビット列の一部をなすタイムスタンプは、前回のSQビット列における最後のSQビットと比較した連続番号の差として符号化することができる。現在のビット列については、それは、前回のビット列に含まれているSQビットの数を差し引いた前回のビット列のタイムスタンプとして現れる。この値はSQ_offsetと呼ばれる。前述の例では、SQ_offsetは17である。タイムスタンプは最大カウントで飽和状態になることがさらに認められる。
【0063】
タイムスタンプはまた、DSL CO102から来る要求のために作ることができることが認められる。このタイムスタンプを以下のパラグラフでSQ_request_timeと呼ぶ。
【0064】
DSL CPE101の転送装置114から中央処理装置CPU1にビット列を転送するために、ビット列をより大きなパケットにグループ化することができる。かかるパケットは、たとえば、パケット内のビット列の数を特定するヘッダーを有することができる。ヘッダーは、たとえば、FIFO1が32ビット列:0から32まで格納可能とされている場合、6ビットを有することができる。オーバーフローの場合、ヘッダーは、パケットには32ビット列だけあるがFIFO1でオーバーフローがあったことを示す特別な値(たとえば33)を含むことができる。パケットは明らかに、最も古いもので始まるSQビット列をも含む。パケットはさらに選択的に、最大カウントで飽和状態となる2つの32ビットのカウンタを含み、1つのSQビットの細分性を有することができる。第1のカウンタは、現在のパケットの要求時間SQ_request_timeと比較した最後のSQビット列の最後のSQビット以降の時間を示す。第2のカウンタは、現在のパケットの要求時間SQ_request_timeと比較した新たな要求SQ_newに対する応答となった前回のパケットの最後のSQビット列の最後のSQビット以降の時間を示す。
【0065】
さらに、FIFO1が最後のSQ_newの要求以降に新たなSQビット列を有することを示す表示ビットを生成することができる。この表示ビットは、フレーミングオーバーヘッド、たとえばITU−T仕様G.993.2 IB1−2のTable9−5で定義されているフレーミングオーバーヘッドにおける予備のビット領域を占めることができる。この表示ビットは、たとえば、管理カウンタ読み取り命令のような頻繁に実行されるEOC命令に付加することもできる。応答がこの表示ビットである命令を作ることができる。
【0066】
第1の中央処理装置CPU1では、受信されたSQビット列は第2の先入れ先出し記憶装置122に格納される。このビット列は、CPU1によって処理またはコンパクト化することができる。この処理またはコンパクト化は、インパルス雑音の長さおよび/またはインパルスの到着時間間隔のヒストグラムの生成、パルスギャップブリッジングメカニズムの有無、フーリエ変換の有無、スライディングウィンドウに基づくメカニズムの有無、インパルス雑音の長さとインパルス到着時間間隔との相互相関を伴い、最適なINPパラメータ設定などを決定する。
【0067】
さらに、格納されたSQビット列は、1人または複数のDSLオペレータのDSLAMベース全体または1人のDSLオペレータのDSLAMベースの一部を管理するネットワークマネジャまたはネットワークアナライザ103の第2の中央処理装置131に、チャネル105を介して転送することができる。ここでも、SQビット列の転送は、独立して(プッシュモデル)またはCPU2の明示的要求に応じて(プルモデル)実行することができ、FIFO1と同様に、第2の先入れ先出し記憶装置131には、SQビット列がCPU2によって要求されるペースに十分に対処するため読み取り、書き込み、除去およびオーバーフロー管理の機能を付加することができる。
【0068】
ネットワークマネジャ103は、典型的には数千から数百万のDSL回線を管理するため、オペレータがインパルス雑音の問題にDSL回線上で修復措置を講じることができるよう、SQビット列を視覚化し処理し、診断情報を生成するために、比較的低い頻度で、たとえば15分おきに限られた数の回線につきSQビット列を要求するようCPU2を構成することができる。異なるDSL回線でINPパラメータを適応可能な形で構成するため、SQビット列の大量処理は、DSL回線の近く、すなわち、回線終端ボード上またはDSLAM内のCPU1によって実行される。
【0069】
最初の所見は、前述の好ましい実施形態がDSLネットワークで実施されるが、本発明の適用がDSL回線として配置された銅ループを介したデジタルデータ転送に限定されないことである。通信業者は、受信されたシンボルの検知されたクオリティを示すシンボルクオリティビット列を生成すること、およびかかるビット列をネットワークの中央に位置するCPUに転送することは、インパルス雑音に悩まされる非DSLループで同様に有効に行うことができることを理解されよう。例は、有線または無線のLAN接続、アクセス加入者回線、伝送回線などである。
【0070】
もう1つの所見は、本明細書では既に、ネットワークノードにおける第1の中央処理装置、ネットワークマネジャ内にある選択的な第2の中央処理装置に言及したが、第1の中央処理装置がネットワーク管理プラグラム内にある場合を排除するものではないことである。つまり、第1の中央処理装置をホスティングするネットワークノードは、ネットワークマネジャまたはネットワークアナライザであり得る。
【0071】
さらにもう1つの所見は、国際DSL標準による上で言及したDMTシンボルまたは離散マルチトーンシンボルが、データシンボルおよびSYNCシンボルを含むことである。しかし、本発明により生成されるビット列は明らかに、DMTシンボルまたはデータシンボルのみまたは非SYNCシンボルのみに基づくことができるため、かかる厳格な解釈は、本発明に適用されないことが認められる。本特許申請の冒頭部分で既に述べたように、ビット列は、代替種類のデータパケット、セル、ワード、シンボルなどで計算することもできる。
【0072】
本発明の原則によるネットワーク内でのSQビット列生成およびCPUへの転送は、持続的に行う必要はないことも認められる。たとえば、パルス幅およびパルス到着時間間隔などの標準的な統計が各回線で実行中に集められる場合、およびSQビット列がネットワーク内で生成されCPUへ転送されるインパルス雑音モニタリングモードが、たとえば回線終端ボード1つにつき1つまたは2つの回線で使用可能/使用禁止である場合の実施形態を考えることができる。こうして、より高度な診断を、たとえば、SQストリームの転送先となり得る中央局またはネットワーク管理システムでSQビットストリームを処理することによって、前述の1つまたは2つの回線で行うことができる。こうして、標準的な統計を用いてすべての回線をモニターすることができ、問題の検出、たとえば基準超えの警告があった場合、オペレータの注意が喚起され、オペレータは、SQビットストリームモードを使用可能にすることによって、問題の回線を調査することができる。統計および/またはすべてのデータを集めるこうした賢明な方法では、回線終端ボードまたはCPUをホスティングしているネットワーク領域上の必要なRAMメモリが少なくなる。
【0073】
さらに、通信機器業者には、図1に示す機能ブロックと上の説明がソフトウェア、ハードウェア、またはソフトウェアとハードウェアとの組み合わせで実行できることが明らかであろう。
【0074】
本発明はDSLネットワークの領域における特定の実施形態を参照して例示しているが、本発明は前述の例示的実施形態の詳細に限定されず、本発明はその精神と範囲から逸脱することなく様々な変更、修正を加えて具現することができることが当業者には明らかであろう。よって、本実施形態は、あらゆる点で例示的であり、限定的ではないと考えるべきであり、本発明の範囲は上の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、そのため特許請求の範囲と同等の意味および範囲内にあるすべての変更は本発明に含まれることが意図されている。つまり、基本的原則の精神および範囲の中にあり、本特許申請においてその本質的特性が請求対象となる一切の修正、変形または同等物を含むと考えられる。さらに、「備える、含む(comprisingまたはcomprise)」という語が他の要素またはステップを排除せず、「1つの(aまたはan)」という語が複数を排除せず、コンピュータシステム、プロセッサ、または他の統合装置などの単一の要素が特許請求の範囲で挙げる複数の手段の機能を満たすことができることが、本特許申請の読者によって理解されよう。特許請求の範囲におけるあらゆる参照の表示は、それぞれの特許請求の範囲を限定するものと解釈されるものではない。用語「第1」、「第2」、「第3」、「a」「b」、「c」などは、説明または特許請求の範囲で使用される場合は、類似の要素またはステップを区別するために導入され、連続的、時間的順序を示すとは限らない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルデータパケットの伝送のためにネットワーク内のインパルス雑音をモニターする方法であって、
受信されたデータパケットの受信クオリティを検知する(111)ステップと、
検知された前記受信クオリティを表示するビット列を生成する(112)ステップであって、前記ビット列が、受信されたデータパケット1つにつき少なくとも1つのビットを含むステップとを含む方法において、
前記ビット列または前記ビット列の圧縮版を、そのコンパクト化および/または処理のために前記ネットワークにおける第1の中央処理装置(121)に管理チャネルを通じてリアルタイムで転送する(114)ステップをさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ビット列または前記ビット列の前記圧縮版が前記第1の中央処理装置(121)に物理層の管理チャネルを通じて転送されることを特徴とする、請求項1に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項3】
前記ビット列または前記ビット列の前記圧縮版がデジタル加入者回線の内部オペレーションチャネル(EOC)を通じて転送されることを特徴とする、請求項2に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項4】
前記ビット列または前記ビット列の前記圧縮版がTR−069プロトコルに基づく管理チャネルを通じて転送されることを特徴とする、請求項2に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項5】
前記ビット列が、受信されたデータパケット1つにつき1つのビットを含み、前記1つのビットが一定の基準を超える前記受信されたデータパケット内の前記受信クオリティを表示することを特徴とする、請求項1に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項6】
前記ビット列が、受信されたデータパケット1つにつき複数のビットを含み、前記複数のビットが前記受信されたデータパケットのクオリティ表示であることを特徴とする、請求項1に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項7】
デジタル加入者回線顧客構内設備(DSL CPE、101)によって実施され、前記受信されたデータパケットが離散マルチトーン(DMT)シンボルに対応することを特徴とする、請求項1に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項8】
前記ビット列または前記ビット列の前記圧縮版がデジタル加入者回線中央局(DSL CO、102)における第1の中央処理装置(121)に転送されることを特徴とする、請求項7に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項9】
前記ビット列または前記ビット列の前記圧縮版が前記デジタル加入者回線中央局(DSL CO、102)における回線終端ボード上にある第1の中央処理装置(121)に転送されることを特徴とする、請求項8に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項10】
前記ビット列または前記ビット列の前記圧縮版を遠隔のネットワーク端末(101)から前記第1の中央処理装置(121)に規則的、自律的に転送するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項11】
前記第1の中央処理装置(121)により前記ビット列または前記ビット列の前記圧縮版の転送を規則的、自律的に要求するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項12】
前記ビット列の生成後に前記第1の中央処理装置(121)に表示信号を送信するステップと、
前記第1の中央処理装置(121)の要求に応じて、前記ビット列または前記ビット列の前記圧縮版を前記第1の中央処理装置(121)に転送するステップとをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項13】
前記ビット列に類似した1つか複数の後続ビット列を生成するステップと、
前記ビット列および前記1つか複数の後続ビット列または前記ビット列および前記1つか複数の後続ビット列の圧縮版を、遠隔のネットワーク端末(101)における先入れ先出し記憶装置(113)に格納するステップとをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項14】
前記ビット列および前記後続ビット列の1つか複数または前記ビット列および前記後続ビット列の1つか複数の圧縮版を、前記先入れ先出し記憶装置(113)から前記第1の中央処理装置(121)へ一度に転送するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項15】
前記ビット列および前記後続ビット列の1つか複数または前記ビット列および前記後続ビット列の前記1つか複数の圧縮版を、前記第1の中央処理装置(121)へそれを転送した後に前記先入れ先出し記憶装置(113)から除去するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項14に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項16】
前記ビット列および前記後続ビット列の前記1つか複数または前記ビット列および前記後続ビット列の前記1つか複数の圧縮版を、前記第1の中央処理装置(121)により個別に前記ビット列および前記後続ビット列の前記1つか複数または前記ビット列および前記後続ビット列の前記1つか複数の圧縮版を適切に受信したことを確認した後に前記先入れ先出し記憶装置(113)から除去するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項14に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項17】
前記ビット列および前記後続ビット列の1つか複数または前記ビット列および前記後続ビット列の1つか複数の圧縮版を、前記先入れ先出し記憶装置(113)のオーバーフローに伴い前記先入れ先出し記憶装置(113)から除去するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項18】
前記ビット列または前記ビット列の前記圧縮版またはコンパクト化されたビット列を前記第1の中央処理装置(121)からネットワークマネジャ(103)における前記第2の中央処理装置(131)へ規則的、自律的に転送するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項19】
ネットワークマネジャ(103)における第2の中央処理装置(131)により前記ビット列または前記ビット列の前記圧縮版またはコンパクト化されたビット列の転送を前記第1の中央処理装置(121)に規則的、自律的に要求するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項20】
前記ビット列または前記ビット列の前記圧縮版をコンパクト化または処理する前記第1の中央処理装置(121)によるイベント検出の後にネットワークマネジャ(103)における第2の中央処理装置(131)に表示信号を送信するステップと、
前記第2の中央処理装置(131)の要求に応じて、前記ビット列または前記ビット列の前記圧縮版または前記ビット列のコンパクト化版を前記第1の中央処理装置(121)から前記第2の中央処理装置(131)に転送するステップとをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項21】
前記ビット列に類似した1つか複数の後続ビット列を生成するステップと、
前記1つか複数の後続ビット列または前記1つか複数の後続ビット列の圧縮版をも前記第1の中央処理装置(121)へ転送するステップと、
前記ビット列および前記1つか複数の後続ビット列または前記ビット列および前記1つか複数の後続ビット列の前記圧縮版を前記第1の中央処理装置(121)における先入れ先出し記憶装置(122)に格納するステップとをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項22】
前記ビット列および前記後続ビット列の1つか複数または前記ビット列および前記1つか複数の後続ビット列の圧縮版または前記ビット列および前記1つか複数の後続ビット列のコンパクト化版を、前記第1の中央処理装置(121)における前記先入れ先出し記憶装置(122)から前記第2の中央処理装置(131)へ一度に転送するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項21および請求項18から20のいずれか一項に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項23】
前記ビット列および前記後続ビット列の前記1つか複数または前記ビット列および前記後続ビット列の前記1つか複数の圧縮版を、個別に前記ビット列および前記後続ビット列の前記1つか複数または前記ビット列および前記後続ビット列の前記1つか複数の圧縮版または前記ビット列および前記後続ビット列の前記1つか複数のコンパクト化版を前記第2の中央処理装置(131)へ転送した後に前記先入れ先出し記憶装置(122)から除去するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項22に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項24】
前記ビット列および前記後続ビット列の前記1つか複数または前記ビット列および前記後続ビット列の前記1つか複数の圧縮版を、前記第2の中央処理装置(131)により個別に前記ビット列および前記後続ビット列の前記1つか複数または前記ビット列および前記後続ビット列の前記1つか複数の圧縮版または前記ビット列および前記後続ビット列の前記1つか複数のコンパクト化版を適切に受信したことを確認した後に前記先入れ先出し記憶装置(122)から除去するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項22に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項25】
前記ビット列および前記後続ビット列の1つか複数または前記ビット列および前記後続ビット列の1つか複数の圧縮版を、前記先入れ先出し記憶装置(122)のオーバーフローに伴い前記先入れ先出し記憶装置(122)から除去するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項21に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項26】
可逆的圧縮アルゴリズムによって前記ビット列を圧縮し、それにより前記第1の中央処理装置(121)への転送の前に前記ビット列の前記圧縮版を生成するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項27】
前記ビット列がランレングス符号化アルゴリズムを使用して圧縮されることを特徴とする、請求項26に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項28】
前記第1の中央処理装置(121)により前記ビット列または前記ビット列の前記圧縮版を処理し、それによりインパルス雑音の特徴を特定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のインパルス雑音をモニターする方法。
【請求項29】
デジタルデータパケットを伝送するネットワーク端末(101)であって、受信されたデータパケットにおけるインパルス雑音をモニターすることが可能で、
受信されたデータパケットの受信クオリティを検知する手段(111)と、
検知された前記受信クオリティを表示するビット列を生成する手段(112)であって、前記ビット列が、受信されたデータパケット1つにつき少なくとも1つのビットを含む手段とを備えるネットワーク端末(101)において、
前記ビット列または前記ビット列の圧縮版を、そのコンパクト化および/または処理のために前記ネットワークにおける第1の中央処理装置(121)に管理チャネルを通じてリアルタイムで転送する手段(114)をさらに備えることを特徴とする、ネットワーク端末(101)。
【請求項30】
デジタルデータパケットの伝送のためネットワーク内で使用するネットワークノード(102)であって、
データパケットの検知された受信クオリティを表示するビット列であって、データパケット1つにつき少なくとも1つのビットを含むビット列、または前記ビット列の圧縮版を、管理チャネルからリアルタイムで受信する手段と、
前記ビット列または前記ビット列の前記圧縮版をコンパクト化および/または処理する第1の中央処理装置(121)とを備えることを特徴とする、ネットワークノード(102)。
【請求項31】
前記第1の中央処理装置(121)が前記ビット列または前記ビット列の前記圧縮版を処理するように構成され、それによりインパルス雑音の特徴を特定することを特徴とする、請求項30に記載のネットワークノード(102)。
【請求項32】
デジタルデータパケットを伝送するためネットワーク内で使用するネットワークマネジャ(103)であって、
データパケットの検知された受信クオリティを表示するビット列であって、データパケット1つにつき少なくとも1つのビットを含むビット列、または前記ビット列の圧縮版もしくは前記ビット列のコンパクト化版を、管理チャネルからリアルタイムで受信する手段と、
前記ビット列または前記ビット列の前記圧縮版もしくは前記ビット列の前記コンパクト化版を処理し、それによりインパルス雑音の特徴を特定する第2の中央処理装置(131)とを備えることを特徴とする、ネットワークマネジャ(103)。

【図1】
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【公表番号】特表2010−524275(P2010−524275A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545141(P2009−545141)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000108
【国際公開番号】WO2008/083958
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(391030332)アルカテル−ルーセント (1,149)
【Fターム(参考)】