説明

インフレーションフィルム

【課題】特定のシンジオタクティックプロピレン重合体およびプロピレン・α-オレフィ
ン共重合体を含むプロピレン系重合体組成物を空冷インフレーション成形することにより、透明性、表面光沢および成形加工性に優れたインフレーションフィルムを提供する。
【解決手段】シンジオタクティックプロピレン重合体(A)100〜50重量部と、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)0〜50重量部(ただし、(A)と(B)との合
計を100重量部とする。)とを含むプロピレン系重合体組成物を空冷インフレーション成形して得られるインフレーションフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンジオタクティックプロピレン重合体およびプロピレン・α-オレフィン
共重合体を含むプロピレン系重合体組成物から得られるインフレーションフィルムに関し、より詳しくは、該プロピレン系重合体組成物を空冷インフレーション成形して得られるインフレーションフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ポリプロピレンのインフレーションフィルムは、安価で透明性、剛性、耐湿性および耐熱性に優れているため各種の包装材料に広く使用されている。
アイソタクティックポリプロピレンフィルムは安価で剛性、耐湿性および耐熱性に優れているため各種用途に使用されているが透明性が不十分という問題があり、その改良のために結晶性エチレン・プロピレンランダム共重合体が使用されているが、未だ十分でなく、さらなる改良が要望されている。アイソタクティックポリプロピレンフィルムをインフレーション法により製造する場合、通常は水冷、すなわち急冷することにより、ポリプロピレンの結晶化度を低くしてフィルムの透明性を高める必要がある。空冷、すなわち徐冷すると、結晶化が進行してフィルムの柔軟性が失われて耐衝撃性が低下し、透明性が低下するためである。したがって、ポリエチレンなどの加工法としては、通常の空冷のインフレーション法はほとんど使用できないのが現状である。
【0003】
一方、近年、J.A.Ewenらにより非対称な配位子を有する遷移金属触媒およびアルミノキサンからなる触媒によって、シンジオタクティックペンタッド分率が0.7を超えるタクティシティの高いポリプロピレンが得られることが発見された(非特許文献1参照)。このシンジオタクティックポリプロピレンは、従来のアイソタクティックポリプロピレンに比べて極めて透明性および表面光沢が高く、また柔軟性にも優れるため、透明かつ軟質なフィルムとしての用途が期待されている。また、その成形方法として、従来のアイソタクティックポリプロピレンフィルムと同様の成形方法、例えばT−ダイ押出法や水冷インフレーション法(特許文献1参照)を用いることができる。
【0004】
シンジオタクティックポリプロピレンからなるフィルムは、アイソタクティックポリプロピレンから得られるフィルムに比べて、透明性および表面光沢などの性質が良好であり、その用途の展開が期待される。しかしながら、シンジオタクティックポリプロピレンはアイソタクティックポリプロピレンに比べて結晶化速度が遅く、また結晶化度も低いため、インフレーション法によりフィルムを加工する場合、ダイより押し出されたチューブが水冷リングに巻き付いたり、ピンチロールにて折り畳まれる際に融着しやすく、開口性が十分ではないという問題点があった。
【特許文献1】特開平3−81130号公報
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc., Vol.110, 6255-6256 (1988)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特定のシンジオタクティックプロピレン重合体およびプロピレン・α-オレ
フィン共重合体を含むプロピレン系重合体組成物を空冷インフレーション成形することにより、透明性、表面光沢および成形加工性に優れたインフレーションフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定のシンジオタクティックプロ
ピレン重合体およびプロピレン・α−オレフィン共重合体を含むプロピレン系重合体組成物を空冷方式でインフレーション成形することにより、透明性および表面光沢が極めて高く、また機械強度にも優れたインフレーションフィルムを提供し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明には以下の事項が含まれる。
〔1〕シンジオタクティックプロピレン重合体(A)100〜50重量部と、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)0〜50重量部(ただし、(A)と(B)との合計を1
00重量部とする。)とを含むプロピレン系重合体組成物を空冷インフレーション成形して得られるインフレーションフィルムであって、該シンジオタクティックプロピレン重合体(A)が下記要件(a)を充足し、該プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)が下
記要件(b)を充足することを特徴とするインフレーションフィルム。
【0008】
(a):13C-NMRにより測定されるシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr分
率)が85%以上であり、DSCより求められる融点(Tm)が145℃以上であり、プロピレンから導かれる構成単位を90モル%(ただし、該シンジオタクティックプロピレン重合体(A)中の構成単位の全量を100モル%とする。)を超える量で含有する。
【0009】
(b):プロピレンから導かれる構成単位を55〜90モル%の量で含有し、炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位を10〜45モ
ル%(ただし、プロピレンから導かれる構成単位と炭素原子数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位との合計を100モル%とする。)の量で含有し、JIS K−6721に準拠して230℃、2.16kg荷重にて測定したMFRが0.01〜100g/10分の範囲にあり、かつ下記要件(b−1)および(b−2)のいずれか一つ以上を満たす。
【0010】
(b−1):13C-NMR法により測定したシンジオタクティックトライアッド分率(rr分率)が60%以上である。
(b−2):135℃デカリン中で測定した極限粘度[η](dL/g)と前記MFR(g/10分、230℃、2.16kg荷重)とが下記の関係式を満たす。
【0011】
1.50×MFR(-0.20)≦[η]≦2.65×MFR(-0.20)
〔2〕(1)50μm厚みで測定した内部ヘイズ値が2%以下である
ことを特徴とする〔1〕に記載のインフレーションフィルム。
〔3〕(1)50μm厚みで測定した内部ヘイズ値が2%以下であり、(2)JIS K 7105に準拠して測定した入射角20°におけるグロスが120%以上であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のインフレーションフィルム。
〔4〕(1)50μm厚みで測定した内部ヘイズ値が2%以下であり、(2)JIS K 7105に準拠して測定した入射角20°におけるグロスが120%以上であり、(3)JIS K 7197に準拠して測定した前記プロピレン系重合体組成物の針進入温度が145℃以上であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
〔5〕(1)50μm厚みで測定した内部ヘイズ値が2%以下であり、(2)JIS K 7105に準拠して測定した入射角20°におけるグロスが120%以上であり、(3)JIS K 7197に準拠して測定した前記プロピレン系重合体組成物の針進入温度が145℃以上であり、(4)JIS K6301に準拠して測定した前記プロピレン系重合
体組成物の引張弾性率が100〜2000MPaの範囲にあることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
〔6〕前記シンジオタクティックプロピレン重合体(A)の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1〜10dL/gの範囲にあり、示差走査熱量計(DSC)によ
り求めた融解熱量(ΔH)が40mJ/mg以上であることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
〔7〕前記プロピレン・α-オレフィン重合体(B)のゲルパーミエーションクロマトグ
ラフィー(GPC)により求めた分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下であることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るプロピレン系重合体組成物は成形加工性に優れているため、該プロピレン系重合体組成物を空冷インフレーション成形して得たインフレーションフィルムは、透明性、表面光沢性および機械強度に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のインフレーションフィルムは、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)100〜50重量部と、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)0〜50重量部(た
だし、(A)と(B)との合計を100重量部とする。)とを含むプロピレン系重合体組成物を空冷インフレーション成形して得られ、該シンジオタクティックプロピレン重合体(A)が下記要件(a)を充足し、該プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)が下記
要件(b)を充足することを特徴としている。
【0014】
(a):13C-NMRにより測定されるシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr分
率)が85%以上であり、DSCより求められる融点(Tm)が145℃以上であり、プロピレンから導かれる構成単位を90モル%(ただし、該シンジオタクティックプロピレン重合体(A)中の構成単位の全量を100モル%とする。)を超える量で含有する。
【0015】
(b):プロピレンから導かれる構成単位を55〜90モル%の量で含有し、炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位を10〜45モ
ル%(ただし、プロピレンから導かれる構成単位と炭素原子数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位との合計を100モル%とする。)の量で含有し、JIS K−6721に準拠して230℃、2.16kg荷重にて測定したMFRが0.01〜100g/10分の範囲にあり、かつ下記要件(b−1)および(b−2)のいずれか一つ以上を満たす。
【0016】
(b−1):13C-NMR法により測定したシンジオタクティックトライアッド分率(rr分率)が60%以上である。
(b−2):135℃デカリン中で測定した極限粘度[η](dL/g)と前記MFR(g/10分、230℃、2.16kg荷重)とが下記の関係式を満たす。
【0017】
1.50×MFR(-0.20)≦[η]≦2.65×MFR(-0.20)
以下、本発明のインフレーションフィルムについて具体的に説明する。
[シンジオタクティックプロピレン重合体(A)]
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、ホモポリプロピレンであってもよいし、プロピレンおよび炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを
除く)のランダム共重合体またはブロック共重合体であってもよいが、好ましくはホモポリプロピレンあるいはプロピレンおよび炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレ
ンを除く)のランダム共重合体であり、より好ましくはホモポリプロピレンあるいはプロピレンおよび炭素原子数2〜10のα-オレフィン(プロピレンを除く)のランダム共重
合体であり、特に好ましくはホモポリプロピレンあるいはプロピレン、エチレンおよび炭素原子数4〜10のα-オレフィンのランダム共重合体であり、最も好ましくは、耐熱性
などの点からホモポリプロピレンである。
【0018】
ここで、プロピレン以外の炭素原子数2〜20のα-オレフィンとしては、エチレン、
1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン
、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセンおよび1-エイコセンなどが挙げられる。
【0019】
プロピレンから導かれる構成単位は、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)中の構成単位の合計100モル%中、通常90モル%を超える量、好ましくは91モル%以上含まれている。また、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)がプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体である場合には、炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位を0.3〜7モル%、好ましくは0.3〜6モル%、特に好ましくは0.3〜5モル%の量で含有している。
【0020】
前記シンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、NMR法により測定したシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr分率、ペンタッドシンジオタクティシティー)が通常85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは94%以上である。rrrr分率が上記の範囲にあると、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、成形性、耐熱性および透明性に優れ、結晶性ポリプロピレンとしての特性が良好なものとなる。したがって、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)を用いることで、プロピレン系重合体組成物の結晶化が抑制され、低結晶化および微細球晶化が起こり、得られる本発明のインフレーションフィルムは透明性の高いものとなる。なおrrrr分率の上限は特にはないが、通常は、例えば99%以下である。
【0021】
このシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr分率)は、以下のようにして測定される。
rrrr分率は、13C-NMRスペクトルにおけるPrrrr(プロピレン単位が5単位連続し
てシンジオタクティック結合した部位における第3単位目のメチル基に由来する吸収強度)およびPw(プロピレン単位の全メチル基に由来する吸収強度)の吸収強度から下記式(1)により求められる。
【0022】
rrrr分率(%)=100×Prrrr/Pw…(1)
NMR測定は、例えば、次のようにして行われる。すなわち、試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入する。そして日本電子製GX-500型NMR測定装置を用い、120℃で13C-NMR測定を行う。積算回数は10,000回以上とする。
【0023】
シンジオタクティックプロピレン重合体(A)を135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]は、通常0.1〜10dL/g、好ましくは0.5〜10dL/g、より好ましくは0.5〜8dL/g、さらに好ましくは0.95〜8dL/g、よりさらに好ましくは1〜8、特に好ましくは1.4〜8dL/g、最も好ましくは1.4〜5dL/gである。極限粘度[η]値が上記の範囲にあると、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、良好な流動性を示すため、他の成分と配合しやすく、インフレーションフィルムは機械強度に優れたものとなる。
【0024】
さらに、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)の示差走査熱量計(DSC)測定により得られる融点(Tm)は、通常145℃以上、好ましくは147℃以上であり、より好ましくは150℃以上であり、さらに好ましくは155℃以上であり、特に好ましくは156℃以上である。なお、Tmの上限は特にないが、通常は、例えば170℃以下である。また、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)の示差走査熱量計(DSC)測定により得られる融解熱量(ΔH)は、通常40mJ/mg以上、好ましくは45m
J/mg以上、より好ましくは50mJ/mg以上、さらに好ましくは52mJ/mg以上
、特に好ましくは55mJ/mg以上である。
【0025】
示差走査熱量計(DSC)測定は、例えば、次のようにして行われる。試料5.00m
g程度を専用アルミパンに詰め、パーキンエルマー社製DSCPyris1またはDSC
7を用い、30℃から200℃までを320℃/minで昇温し、200℃で5分間保持した後、200℃から30℃までを10℃/minで降温し、30℃でさらに5分間保持したのち、次いで10℃/minで昇温する際の吸熱曲線から融点(Tm)および融解熱量(ΔH)を求める。なお、DSC測定時に、複数のピークが検出される場合は、最も高温側で検出されるピークを、融点(Tm)と定義する。
【0026】
融点(Tm)または融解熱量(ΔH)が上記の範囲にあるシンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、成形性、耐熱性および機械特性に優れ、結晶性のポリプロピレンとしての特性が良好である。そのため、本発明に係るシンジオタクティックプロピレン重合体(A)を含むプロピレン系重合体組成物は、インフレーションフィルムを成形するときの成形加工性に優れ、得られるインフレーションフィルムは機械強度に優れたものとなる。融点(Tm)が上記の範囲にあるシンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、後述するシンジオタクティックプロピレン重合体(A)の製造方法において触媒系および重合条件を設定することにより製造される。
【0027】
前記シンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、架橋メタロセン化合物を重合触媒として使用した重合方法によって製造することができる。具体的には、国際公開第2006/123759号パンフレットに記載された方法により製造することができる。
【0028】
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)およびプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)の合計100
重量部中、通常100〜50重量部、好ましくは100〜55重量部、より好ましくは100〜60重量部含まれる。シンジオタクティックプロピレン重合体(A)の含有量が上記の範囲にあると、プロピレン系重合体組成物の耐熱性および機械強度の観点から好ましい。
【0029】
また、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリスチレン換算の分子量分布(Mw/Mn)は、通常3.5以下、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下である。
【0030】
[プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)]
本発明に係るプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、プロピレンから導かれる
構成単位を通常55〜90モル%、好ましくは55〜85モル%、より好ましくは60〜85モル%、炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構
成単位を通常10〜45モル%、好ましくは15〜45モル%、より好ましくは15〜40モル%含有する。ただし、プロピレンから導かれる構成単位と、炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位との合計は100モル%であ
る。
【0031】
炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを除く)としては、エチレン、3-メチル-1-ブテン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-
オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデ
センおよび1-エイコセンなどが挙げられる。このうち、エチレン、1-ブテン、1-ヘキ
セン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンが好ましく、エチレンがより好ましい。
【0032】
上述したように、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)としては、プロピレン・
エチレン共重合体を用いるのが好ましいが、プロピレン・エチレン共重合体以外に、プロピレンから導かれる構成単位と、エチレンから導かれる構成単位と、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンの中から選ばれる少なくとも1種のモノマー(以下「HAOコモノマー」ともいう。)から導かれる構成単位とからなり、エチレンから導かれる構成単位の割合(モル%)がHAOコモノマーから導かれる構成単位の割合(モル%)よりも多いプロピレン・エチレン・HAO共重合体を用いてもよい。この場合、プロピレン・エチレン・HAO共重合体は、プロピレンから導かれる構成単位を通常55〜85モル%、好ましくは60〜85モル%、エチレンおよびHAOコモノマーから導かれる構成単位を通常15〜45モル%、好ましくは15〜40モル%含有する。なお、プロピレンから導かれる構成単位およびエチレンおよびHAOコモノマーから導かれる構成単位の合計を100モル%である。
【0033】
プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)を構成する成分が上記の範囲にあるとき、
本発明に係るプロピレン系重合体組成物は、耐熱性、透明性および耐衝撃性のバランスに特に優れる。
【0034】
本発明に係るプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、JIS K−6721に準拠して230℃、2.16kg荷重にて測定したメルトフローレート(MFR)が0.0
1〜100g/分の範囲にあり、かつ下記要件(b−1)および(b−2)のいずれか一つ以上を満たす。
【0035】
(b−1):13C-NMR法により測定したシンジオタクティックトライアッド分率(rr)が60%以上である。
(b−2):135℃デカリン中で測定した極限粘度[η](dL/g)とJIS K
−6721に準拠して230℃、2.16kg荷重にて測定したMFR(g/10分)と
が下記の関係式を満たす。
【0036】
1.50×MFR(-0.20)≦[η]≦2.65×MFR(-0.20)
前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、JIS K−6721に準拠して230℃、2.16kg荷重にて測定したMFRが通常0.01〜100g/10分の範囲にあり、好ましくは0.02〜100g/10分の範囲にある。
【0037】
要件(b−1)について以下に説明する。
(b−1):プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)の13C−NMR法により測定
したシンジオタクティックトライアッド分率(rr分率、トライアッドシンジオタクティシティー)は通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上である。rr分率が上記の範囲にあると、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、シン
ジオタクティックプロピレン重合体(A)との相溶性が良好なものとなる。
【0038】
要件(b−1)を満たす重合体は、例えば、シンジオタクティックポリプロピレンを製造可能な触媒の存在下で、プロピレンとα−オレフィンとを共重合して得ることもできるし、後述する国際公開第2006/123759号パンフレットに記載された方法を用いて製造することもできる。
【0039】
rr分率は、13C-NMRスペクトルにおけるPrr(プロピレン単位が3単位連続して
シンジオタクティック結合した部位における第2単位目のメチル基に由来する吸収強度)およびPw(プロピレン単位の全メチル基に由来する吸収強度)の吸収強度から下記式(2)により求められる。
【0040】
rr分率(%)=100×Prr/Pw…(2)
ここで、mr由来の吸収(プロピレン単位が3単位のうち、少なくともシンジオタクティック結合およびアイソタクティック結合の両方に由来する吸収;Pmr(吸収強度)の決定に用いる)、rr由来の吸収(プロピレン単位が3単位連続してシンジオタクティック結合した部位における第2単位目のメチル基に由来する吸収;Prr(吸収強度)の決定に用いる)またはmm由来の吸収(プロピレン単位が3単位連続してアイソタクティック結合した部位における第2単位目のメチル基に由来する吸収;Pmm(吸収強度)の決定に用いる)と、コモノマーに由来する吸収とが重なる場合には、コモノマー成分の寄与を差し引かずにそのまま算出する。
【0041】
具体的には、特開2002-097325号公報の[0018]〜[0031]段落に
記載された「シンジオタクティシティパラメータ(SP値)」の求め方の記載のうち、[
0018]〜[0023]段落に記載された、第1領域、第2領域および第3領域のシグナ
ルの積算強度から上記式(2)を用いて計算することにより求める。
【0042】
なお、本発明では、rr1値、具体的には、特開2002-097325号公報の[0018]〜[0031]段落に記載された「シンジオタクティシティパラメータ(SP値)」の求め方に従って求めた値が、通常60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上である。rr1値とは、前記rr値の計算において、mr由来の吸収、rr
由来の吸収またはmm由来の吸収と、コモノマーに由来する吸収とが重なる場合には、コモノマー成分の寄与を差し引いたものである。
【0043】
rr値およびrr1値の測定において、13C−NMR測定は、例えば、次のようにして
行われる。すなわち、試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入する。そして日本電子製GX-400型N
MR測定装置を用い、温度120℃、積算回数は8,000回以上の条件で13C-NMR測定を行う。
【0044】
次に要件(b−2)について説明する。
(b−2):前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、135℃、デカリン
中で測定した極限粘度[η](dL/g)とJIS K−6721に準拠して230℃、
2.16kg荷重にて測定したメルトフローレート(MFR)(g/10分)とが下記の
関係式を満たす。
【0045】
1.50×MFR(-0.20)≦[η]≦2.65×MFR(-0.20)
好ましくは下記の関係式を満たす。
1.80×MFR(-0.20)≦[η]≦2.50×MFR(-0.19)
上記の関係式を充足するプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、シンジオタク
ティックプロピレン重合体(A)との相溶性が良好なため好ましい。
【0046】
上記式を満たすプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、例えばシンジオタクテ
ィックプロピレン重合体を製造可能な触媒を使用して、プロピレンとα−オレフィンとを共重合してもよいし、その他の触媒を用いて重合してもよい。このようにして得られたプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)はシンジオタクティックプロピレン重合体(A
)と相溶性が良好なものとなる。
【0047】
要件(b−2)を満たすプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、従来のアイソ
タクティックプロピレン系共重合体と比べて、極限粘度[η]は同一であるが、MFR値が高い。
【0048】
これは、「Macromolecules」1998年、第31巻、p.1335−1340に記載されるように、アイソタクティックポリプロピレンの絡み合い点間分子量(論文では、Me=6900(g/mol)と報告されている)と、シンジオタクティックポリプロピレンの絡み合い点間分子量(論文では、Me=2170(g/mol)と報告されている)との違いに起因すると考えられる。すなわち、[η]が同一の場合、シンジオタクティック構造を持つことにより、アイソタクティック構造を有する材料と比べて絡み合い点が多くなるため、MFR値が高くなると考えられる。
【0049】
以上のように、要件(b−1)および(b−2)のうち、いずれか1つ以上を満たすプロピレン・α−オレフィン共重合体(B)は、アイソタクティック構造とは異なった立体規則性である、シンジオタクティック構造を有するものと考えられる。このためにプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は(A)成分と良好な相溶性を示すものと考えられ
る。
【0050】
なお、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)の好ましい態様であるプロピレン・
エチレン共重合体やプロピレン・エチレン・HAO共重合体においては、上記要件(b−1)および(b−2)のいずれも満たすことが好ましい。
【0051】
プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)の135℃、デカリン中で測定した極限粘
度[η]は、通常0.1〜10dL/g、好ましくは0.5〜10dL/g、より好ましくは0.5〜7.0dL/gである。
【0052】
このプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、単一のガラス転移温度を有し、示
差走査熱量計(DSC)測定により得られるガラス転移温度(Tg)が、通常は0℃以下であることが好ましい。プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)のガラス転移温度(
Tg)が上記の範囲にあると、プロピレン系重合体組成物は耐寒性および低温特性に優れる。
【0053】
示差走査熱量測定は、例えば次のようにして行われる。試料10.00mg程度を専用
アルミパンに詰め、セイコーインスツルメント社製DSCRDC220を用い、30℃から200℃までを200℃/分で昇温し、200℃で5分間保持した後、200℃から−100℃までを10℃/分で降温し、−100℃でさらに5分間保持した後、次いで10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より前記ガラス転移温度(Tg)を求める。
【0054】
また、このプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)のゲルパーミエーションクロマ
トクラフィー(GPC)により測定した標準ポリスチレン換算の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.5以下である。
【0055】
前記プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、架橋メタロセン化合物を重合触媒
として使用した重合方法によって製造することができる。具体的には、国際公開第2006/123759号パンフレットに記載された方法により製造することができる。
【0056】
本発明に係るプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、シンジオタクティックプ
ロピレン重合体(A)およびプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)の合計100重
量部中、0〜50重量部、好ましくは0〜45重量部、特に好ましくは0〜40重量部含まれる。プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)の含有量が上記の範囲にあると、耐
熱性、透明性、表面光沢性および機械強度の観点から好ましい。
【0057】
[その他の成分]
<アイソタクティックポリプロピレン>
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン重合体(A)およびプロピレン・α-オ
レフィン共重合体(B)を含むプロピレン系重合体組成物には、必要に応じてアイソタクティックポリプロピレンが含まれていてもよい。アイソタクティックポリプロピレンを含有することにより、得られるインフレーションフィルムの機械強度、透明性および表面光沢性が高くなる。
【0058】
アイソタクティックポリプロピレンとしては、商業的に入手できるものなどを特に制限なく使用することができるが、13C−NMR法により測定したアイソタクティックペンタッド分率が通常0.9以上、好ましくは0.95以上のポリプロピレンを使用することが好ましい。
【0059】
具体的には、プロピレン単独重合体あるいはプロピレンと炭素原子数が2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)との共重合体を挙げることができる。炭素原子数が2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセンなどが挙げられ、なかでもエチレンおよび炭素原子数が4〜10のα−オレフィンが好ましい。これらのα−オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。これらのα−オレフィンから導かれる構成単位は、アイソタクティックポリプロピレン中に通常40モル%以下、好ましくは20モル%以下の割合で含まれていてもよい。
【0060】
アイソタクティックポリプロピレンのASTM D 1238に準拠して230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)は通常0.01〜1000g/10分、好ましくは0.05〜500g/10分である。
【0061】
なお、このアイソタクティックポリプロピレンは、例えば(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(b)有機アルミニウム化合物、および(c)電子供与体からなるチーグラー触媒系を用いて重合することにより製造することができる。またメタロセン触媒を用いても同様に製造することができる。
【0062】
本発明で用いられるアイソタクティックポリプロピレンとしては、チーグラー触媒で製造されたポリプロピレン共重合体の中では、耐白化性および耐衝撃性のバランスに優れるプロピレン・エチレンランダム共重合体およびプロピレン・エチレンブロック共重合体が特に好ましい。
【0063】
アイソタクティックポリプロピレンの添加量は、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)およびプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)の合計100質量部に対して
、通常0.1〜30質量部、好ましくは0.1〜25質量部、より好ましくは0.1〜20質量部である。アイソタクティックポリプロピレンの添加量が上記の範囲にあると、透明性・表面光沢性および機械強度に優れたインフレーションフィルムを得ることができる。
【0064】
<ポリエチレン>
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン重合体(A)およびプロピレン・α-オ
レフィン共重合体(B)を含むプロピレン系重合体組成物には、必要に応じてポリエチレンが含まれていてもよい。ポリエチレンを含有することにより、得られるインフレーショ
ンフィルムの機械強度、透明性および表面光沢性が高くなる。
【0065】
ポリエチレンとしては、商業的に入手できるものなどを特に制限なく使用することができるが、密度勾配管法で測定した密度が通常0.89g/cm3以上、好ましくは0.90g/cm3以上のポリエチレンを使用することが望ましい。
【0066】
ポリエチレンのASTM D 1238に準拠して190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)は通常0.01〜1000g/10分、好ましくは0.05〜500g/10分である。
【0067】
なお、このポリエチレンは、例えば(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(b)有機アルミニウム化合物、および(c)電子供与体からなるチーグラー触媒系を用いて重合することにより製造することができる。またメタロセン触媒を用いても同様に製造することができる。
【0068】
ポリエチレンの添加量は、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)およびプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)の合計100質量部に対して、通常0.1〜20質
量部、好ましくは0.1〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部である。ポリエチレンの添加量が上記の範囲にあると、透明性・表面光沢性および機械強度に優れたインフレーションフィルムを得ることができる。
【0069】
<結晶核剤>
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン重合体(A)およびプロピレン・α-オ
レフィン共重合体(B)を含むプロピレン系重合体組成物には、必要に応じて結晶核剤が含まれていてもよい。結晶核剤を含有することにより、得られるインフレーションフィルムの機械強度、透明性および表面光沢性が高くなる。
【0070】
結晶核剤としては、商業的に入手できるものなどを特に制限なく使用することができるが、ロジン類の金属塩を主成分とする結晶核剤、ソルビトール系の結晶核剤および芳香族有機リン酸エステル金属塩、飽和脂肪酸アミドもしくはエチレンビス(アミド)、不飽和脂肪酸アミドもしくはエチレンビス(アミド)またはこれらの組み合わせよりなる結晶核剤等が挙げられるが、本発明においては、飽和脂肪酸アミドもしくはエチレンビス(アミド)または有機リン酸エステル金属塩の使用が、プロピレン重合体組成物との混和性の観点から好ましい。
【0071】
結晶核剤の添加量は、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)およびプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)の合計100質量部に対して、通常0.03〜1質量部
、好ましくは0.1〜0.5質量部、より好ましくは0.15〜0.4質量部である。結晶核剤の添加量が上記の範囲にあると、透明性および表面光沢性に優れたインフレーションフィルムを得ることができる。
【0072】
<各種添加剤>
本発明に係るプロピレン系重合体組成物には、必要に応じて、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、老化防止剤、塩酸吸収剤および酸化防止剤等の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合してもよい。
【0073】
[プロピレン系重合体組成物]
本発明に係るプロピレン重合体組成物は、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)と、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)と、必要に応じてアイソタクティック
ポリプロピレン、ポリエチレンまたは結晶核剤あるいはその他公知の安定剤や添加剤をヘンシェルミキサーなどの混合機を用いて混合した後、押出機にて溶融混練および造粒する方法、あるいはロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダーおよびブラベンダー等により溶融混練する方法により製造できる。また、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)およびプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)をそれぞれ別に押出機等により造粒
し、フィルムに加工する際にそれらのペレットをブレンドしてもよい。
【0074】
上述のようにして得られたプロピレン系重合体組成物は、極めて微細な結晶構造を有し、成形性、耐熱性、透明性および表面光沢性に優れ、さらに耐傷付き性に優れる。
[インフレーションフィルム]
本発明のインフレーションフィルムは、プロピレン系重合体組成物を空冷インフレーション成形して得られる。
【0075】
空冷インフレーション成形とは、広くポリオレフィン系樹脂フィルムの製造に用いられており、原料を押出機により溶融させ、環状ダイを通してチューブ状に溶融樹脂を押し出し、ピンチロールでニップされるまでの間に、環状ダイの内側に設けられた穴を通してチューブ内部に気体を封入、あるいは、チューブ内部の気体の体積を一定(バブルの形状を一定)に保ちながら内部気体を循環し、製品サイズに合わせた大きさにブローアップしながら、ブロアーなどから供給される空気をエアリングから溶融チューブ外面に吹き付けて冷却固化させバブルを形成し、引取機にて引き取る方法である。
【0076】
本発明で用いられるインフレーション成形機は、公知のいかなるタイプのものも用いることができるが、下記の要素を備え、特定の成形条件を取りうるものが好適である。
(1−1)押出機
押出機としては公知各種の押出機を用いることができるが、樹脂温度を低く保ち、安定した吐出を得るためには、単軸押出機を用いることが好ましい。単軸押出機に用いられるスクリュ形状としては通常のポリオレフィンの押出に用いられるタイプを広く用いることができるが、可塑化を安定させるためにバリアタイプのスクリュやマドックタイプのミキシングなど未溶融物が生じ難い形状であることが好ましい。
(1−2)ダイ
ダイとしてはインフレーション成形に用いられる各種の環状ダイを用いることができるが、ウエルドの発生が少なく、厚みの均一性に優れたスパイラルマンドレルダイを用いることが好ましい。
(1−3)成形温度
本発明のインフレーションフィルムを成形する温度としては、特に限定されるものではないが、160〜250℃の範囲を取ることが好ましい。
(1−5)エアリング
エアリングはフィルムを冷却、固化させるために非常に重要であるが、本発明においては通常用いられるインフレーション成形用の公知のエアリングを広く用いることが可能である。これらエアリングのうち特に好適に用いることができるのは、デュアルあるいはマルチスリットタイプと呼ばれるエアの吹き出す環状のスリットが複数設けられ、各スリット間にあるチャンバーによりバブルの安定化が促進されるタイプである。また、冷却効率及びバブル安定性を向上させる観点から上部にチャンバーが備え付けられていることがより好ましい。
(1−6)製膜速度
成形速度はフィルム厚みと幅、押出量により決定され、製膜安定性を維持できる範囲で調整可能である。一般的に空冷インフレーション成形においては1〜150m/分、好ましくは1〜100m/分、より好ましくは1〜50m/分である。
【0077】
なお、インフレーション成形において成形性が優れているとは、溶融状態から固化する
までの時間が短いことをいう。成形性がよい場合は成形サイクル性、形状安定性および長期生産性などに優れる。
【0078】
本発明のインフレーションフィルムについて、50μm厚みで測定した内部ヘイズ値(以下「物性(1)」ともいう。)は、通常2%以下、好ましくは1.8%以下、より好ましくは1.5%以下である。内部ヘイズが上記の範囲にあるとき、本発明のインフレーションフィルムは、優れた透明性および表面光沢性を有する。上記プロピレン系重合体組成物を用いて得られる本発明のインフレーションフィルムは、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)の特性に起因してポリマー分子鎖の絡み合い数、特に非晶部内の分子鎖の絡み合い数が非常に多い。このため、結晶サイズが極めて小さくなり、優れた透明性を有する。以下に内部ヘイズの測定方法を示す。
【0079】
厚さ50μmのインフレーションフィルム片を用いて、日本電色工業(株)製のデジタ
ル濁度計「NDH-20D」にて測定し、3回の平均値をとった。
物性(1)を満たすとき、本発明のインフレーションフィルムは優れた透明性を有するので好ましい。
【0080】
本発明のインフレーションフィルムの入射角20°におけるグロス(以下「物性(2)」ともいう。)は、通常120%以上であり、好ましくは130%以上、より好ましくは140%以上である。入射角20°におけるグロスが上記の範囲にあるとき、本発明のインフレーションフィルムは優れた表面光沢性を有する。以下にグロスの測定方法を示す。
【0081】
JIS K 7105に準拠して、スガ試験機株式会社製 デジタル変角光沢計UGV−
5Dを用いて、入射角20°の条件で測定した5点のデータの平均値をグロス(光沢度)とした。
【0082】
なお、内部ヘイズ値およびグロスの測定で使用した試験片は、50mmΦのサーキュラーダイを備えた30mmΦインフレーション成形機を、押出機温度200℃、ダイス温度200℃、引取速度1.5m/分にて、空冷しながら成形した50μm厚みのフィルムで
ある。
【0083】
物性(1)および物性(2)を同時に満たすとき、本発明のインフレーションフィルムは、高透明性および高表面光沢性を両立するため好ましい。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物について測定した針進入温度(TMAにより求められる軟化点ともいう。)(以下「物性(3)」ともいう。)は、通常145℃以上であり、好ましくは147℃、より好ましくは150℃以上である。針進入温度が上記の範囲にあるとき、本発明のインフレーションフィルムは優れた耐熱性を有する。以下に針進入温度の測定方法を示す。
【0084】
セイコー社製SS-120またはTA Instrument社製Q-400を用いて、昇温速度5℃
/分の条件下で、1.8mmφの平面圧子を圧力2Kgf/cm2で1mm厚プレスシー
ト試験片に押し付け、TMA曲線から針進入温度(℃)を求めた。
【0085】
物性(1)、物性(2)および物性(3)を同時に満たすとき、本発明のインフレーションフィルムは、優れた透明性・表面光沢性および耐熱性を有するので、より好ましい。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物の引張弾性率(以下「物性(4)」ともいう。)は通常100〜2000MPa、好ましくは200〜1500MPa、より好ましくは400〜1000MPaである。以下に引張弾性率の測定方法を示す。
【0086】
JIS K6301に準拠して、1mm厚プレスシートより、ダンベル状JIS3号試
験片を打ち抜き、評価試料とした。測定には、例えば、インストロン社製引張試験機Inston1123を用いて、23℃で、スパン間:30mm、引張り速度30mm/minで測定し、3回の平均値をとった。
【0087】
なお、針進入温度および引張弾性率の測定で使用した試験片は、プレス成形機にて200℃で5〜10分余熱後、10MPa加圧下で1〜2分で成形した後、10MPaの加圧下で20℃に冷却して得たシートである。
【0088】
物性(1)、物性(2)、物性(3)および物性(4)を同時に満たすとき、得られるインフレーションフィルムは、優れた耐熱性、透明性、表面光沢性および成形性を有する。
【0089】
すなわち、本発明のインフレーションフィルムは、物性(1)〜(4)のうち、少なくとも物性(1)が上記の範囲を満たすことが好ましく、物性(1)〜(2)を同時に満たすことがより好ましく、物性(1)〜(3)を同時に満たすことがさらに好ましく、物性(1)〜(4)を同時に満たすことが特に好ましい。
【0090】
上記のプロピレン系重合体組成物の場合、示差走査熱量計(DSC)により110℃における等温結晶化測定から求められる半結晶化時間(t1/2)は、好ましくは1000s
ec以下、より好ましくは500sec以下である。本発明に係るプロピレン系重合体組成物は、特定のシンジオタクティックプロピレン重合体(A)およびプロピレン・α−オレフィン共重合体(B)を含むことにより、t1/2が従来と比べて飛躍的に向上しており
、通常用いられるアイソタクティックポリプロピレンなどと同様の成形法で成形することができる。
【0091】
なお、等温結晶化測定により求められる半結晶化時間(t1/2)とは、等温結晶化過程
でのDSC熱量曲線とベースラインとの間の面積を全熱量とした場合、50%熱量に到達した時間である(新高分子実験講座8高分子の物性(共立出版株式会社)参照)。半結晶化時間(t1/2)測定は次のようにして行われる。すなわち、試料5.00mg程度を専用アルミパンに詰め、パーキンエルマー社製DSCPyris1またはDSC7を用い、3
0℃から200℃までを320℃/分で昇温し、200℃で5分間保持した後、200℃から等温結晶化温度110℃までを320℃/分で降温し、110℃に温度を保持して得られたDSC曲線から得たものである。半結晶化時間(t1/2)は110℃の等温結晶化
過程開始時間(200℃から110℃に到達した時刻)をt=0として求めた。本発明で用いられるプロピレン系重合体組成物は上述したようにしてt1/2を求めることができる
が、110℃で結晶化しない場合は、便宜的に110℃以下の等温結晶化温度で測定を数点実施し、その外挿値より半結晶化時間(t1/2)を求める。
【0092】
〔インフレーションフィルム〕
本発明のインフレーションフィルムは、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)および必要に応じて上記のアイソタクティ
ックポリプロピレン、ポリエチレンや各種添加剤を添加してなるプロピレン系重合体組成物からなる。本発明のインフレーションフィルムは、単層で形成されていてもよいし、二層以上の多層で形成されていてもよい。例えば、インフレーションフィルムが二層で形成されている場合、一方の層が本発明に係るプロピレン系重合体組成物で形成され、他方の層が、第一の層を形成するプロピレン系重合体組成物とは異なる樹脂で形成されるか、あるいは、第一の層で使用した本発明に係るプロピレン系重合体組成物とは異なる物性を有するプロピレン系重合体組成物で形成されていてよい。
【0093】
上記の異なる樹脂としては、例えばポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン
12および共重合ナイロンなど)、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートなど)および変性ポリオレフィンなどが挙げられる。
【0094】
本発明のインフレーションフィルムは、従来公知の空冷式インフレーション成形法により製造される。
本発明のインフレーションフィルムは、例えば光学フィルム、包装フィルム、印刷、ラミネート、医療用品などの用途に好適に用いられる。
【0095】
〔実施例〕
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例において各物性は以下のように測定した。
【0096】
〔物性測定法〕
<極限粘度[η]>
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。すなわち重合パウダー、ペレットまたは樹脂塊約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた(下式参照)。
【0097】
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
<n-デカン可溶部量>
シンジオタクティックプロピレン重合体(A)のサンプル5gにn−デカン200mlを加え、該重合体を145℃で30分間加熱溶解した。得られた溶液を約3時間かけて、20℃まで冷却させ、30分間放置した。その後、析出物(n−デカン不溶部)をろ別した。ろ液を約3倍量のアセトン中に入れ、n−デカン中に溶解していた成分を析出させた
。析出物をアセトンからろ別し、その後乾燥した。なお、ろ液側を濃縮乾固しても残渣は認められなかった。n−デカン可溶部量は、以下の式によって求めた。
【0098】
n−デカン可溶部量(wt%)=[析出物重量/サンプル重量]×100
<分子量分布(Mw/Mn)>
分子量分布(Mw/Mn)は、Waters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC−2000型を用い、以下のようにして測定した。分離カラムは、TSKgel GNH6−HTを2本およびTSKgel GNH6−HTLを2本であり、カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo−ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は15mg/1
0mLとし、試料注入量は500μLとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106については東ソー社製を用
い、1000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。
【0099】
<ポリマー中のエチレン、プロピレンおよびα-オレフィン含量>
エチレン、プロピレンおよびα-オレフィン含量の定量化は日本電子(株)製JNM
GX-400型NMR測定装置を用いて、下記のように測定した。試料0.35gをヘキ
サクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入して、120℃で13C-NMR測定を行う。積算回数は8,000回以上とする。得られた13C-NMRスペクトルにより、エチレン、プロピレンおよびα-オレフィンの組成を定量化した。
【0100】
<成分(A)の融点(Tm)および融解熱量(ΔH)>
パーキンエルマー社製DSCPyris1またはDSC7を用い、窒素雰囲気下(20
ml/分)、約5mgの試料を200℃まで昇温、10分間保持した後、10℃/分で30℃まで冷却した。30℃で5分間保持した後、10℃/分で200℃まで昇温させた時の結晶溶融ピークのピーク頂点から融点を、ピークの積算値から融解熱量を算出した。
【0101】
実施例に記載したプロピレン系重合体において2本のピークが観測された場合、低温側ピークをTm1、高温側ピークをTm2とする。
本願請求項1の(a)で規定するTmはTm2である。
【0102】
<成分(B)のガラス点移転(Tg)、融点(Tm)>
セイコーインスツルメンツ社製DSCを用い、測定用アルミパンに約5mgの試料を詰めて、100℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、10℃/分で−150℃まで降温し、次いで10℃/分で200℃まで昇温した吸熱曲線より求めた。
【0103】
<立体規則性rrrr>
立体規則性(rrrr)は13C−NMRスペクトル測定から算出した。
<メルトフローレート(MFR)>
シンジオタクティックプロピレン重合体(A)およびプロピレン・α-オレフィン共重
合体(B)のMFRは、JIS K-6721に準拠して、230℃で2.16kgの荷重にて測定した。
【0104】
<密度>
密度は、ASTM D1505に準拠して測定した。
<針進入温度>
針進入温度は、セイコー社製SS-120を用いて、昇温速度5℃/分の条件下、1.
8mmφの平面圧子を圧力2Kgf/cm2で1mm厚のプレスシート試験片に押し付け
、TMA曲線から求めた。
【0105】
<引張弾性率>
JIS K6301に準拠して、1mm厚プレスシートより、ダンベル状JIS3号試
験片を打ち抜き、評価試料とした。引張弾性率はインストロン社製引張試験機Inston1123を用いて、23℃で、スパン間:30mm、引張速度30mm/分で測定し3回の平均値をとった。
【0106】
なお、針進入温度および引張弾性率の測定に使用した1mm厚のプレスシート試験片は、プロピレン系重合体組成物をプレス成形機にて200℃で5〜10分余熱後、10MPa加圧下で1〜2分で成形し、10MPaの加圧下で20℃に冷却することにより得た。
【0107】
<内部ヘイズ>
50μm厚のインフレーションフィルム片を用いて、日本電色工業(株)製のデジタル濁度計「NDH-20D」にて測定し3回の平均値をとった。
【0108】
<グロス(表面光沢性)>
JIS K 7105に準拠して、スガ試験機株式会社製 デジタル変角光沢計UGV−
5Dを用いて、50μm厚のインフレーションフィルムを入射角20°で測定した5点のデータの平均値をとった。
【0109】
〔触媒合成例〕
<合成例1>
ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6-ジt-ブチルフルオレニル)ジルコ
ニウムジクロリドは、特開2004-189666号公報の合成例3に記載された方法で
製造した。
【0110】
〔重合例〕
<重合例1>シンジオタクティックプロピレン重合体(A−1)の製造
十分に窒素置換した内容量500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、プロピレンを150リットル/時間、水素を0.3リットル/時間の量で流通させ、25℃で20分間保持させておいた。一方、十分に窒素置換した内容量30mlの枝付きフラスコにマグネティックスターラーを入れ、これにメチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al=1.53mol/l)を5.00mmol、次いでジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6-ジ-t-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液5.0μmolを加え、20分間攪拌した。この溶液を、プロピレンおよび水素を流通させておいたガラス製オートクレーブのトルエンに加え、重合を開始した。プロピレンガスを150リットル/時間、水素を0.3リットル/時間の量で連続的に供給し、常圧下、25℃で45分間重合を行った後、少量のメタノールを添加し重合を停止した。ポリマー溶液を大過剰のメタノールに加え、ポリマーを析出させ、80℃で12時間、減圧乾燥を行った結果、ポリマー2.38gが得られた。重合活性は0.63kg-PP
/mmol-Zr・hrであり、得られたポリマーの[η]は1.9dl/g、Tm1=152℃、Tm2=158℃であり、rrrr=94%であり、Mw/Mn=2.0であっ
た。この操作を繰り返して、必要量のポリマーを得て実施例に使用した。
【0111】
結果を表1に示す。
<重合例2>プロピレン・α-オレフィン共重合体(B−1)の製造
十分に窒素置換した4000mlの重合装置に、1834mlの乾燥ヘキサンとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を70℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.66MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を1.36MPaに調整した。次いで、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(
シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウム
ジクロリド0.001mmolとアルミニウム換算で0.3mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温70℃、系内圧力を1.36MPaにエチレンで保ちながら15分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、4リットルのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは105gであり、MFRが1.0(g/10分)であり、135℃、デカリン中で測定した[η]=2.5(dL/g)であった。またrr1値は78%であった。
【0112】
結果を表1に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
〔実施例1〕
(1)ペレット化
重合例1で得られたポリマー(A−1)100重量部に対して、酸化防止剤として3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエンを0.2重量部、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネー
ト]メタンを0.2重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム0.01重量部を配合
し、二軸押出機を用いて、樹脂温度200℃で溶融混練してペレット化を実施した。
【0115】
(2)シート成形
上記で得られたペレットを50mmΦのサーキュラーダイを備えた30mmΦインフレーション成形機により押出機温度200℃、ダイス温度200℃、引取速度1.5m/m
in、空冷にて製膜を行い、厚さ50μmのフィルムを得た。
【0116】
フィルムの開口性は良好であった。
得られたペレットおよびフィルムについて測定した各物性を表2に示す。
〔実施例2〕
実施例1において、結晶核剤としてエチレン(ビス)ステアリン酸アミドを0.2重量部配合した以外は実施例1と同様にして行った。
【0117】
フィルムの開口性は良好であった。
結果を表2に示す。
〔実施例3〕
実施例1において、アイソタクティックポリプロピレン(J139;プライムポリマー社製)を表2に示す割合で配合した以外は実施例1と同様にして行った。
【0118】
フィルムの開口性は良好であった。
結果を表2に示す。
〔実施例4〕
実施例1において、ポリエチレン(HZ2200J;プライムポリマー社製)を表2に示す割合で配合した以外は実施例1と同様にして行った。
フィルムの開口性は良好であった。
【0119】
結果を表2に示す。
〔実施例5〕
実施例1において、結晶核剤としてアデカスタブNA−21(旭電化工業株式会社製)を0.3重量部配合した以外は実施例1と同様にして行った。
【0120】
フィルムの開口性は良好であった。
結果を表2に示す。
〔実施例6〕
実施例1において、ポリマー(A−1)を90重量部、プロピレン・エチレン共重合体(B−1)を10重量部配合した以外は実施例1と同様にして行った。
【0121】
フィルムの開口性は良好であった。
結果を表2に示す。
[比較例1]
実施例1において、ポリマー(A−1)の代わりに、Total社製シンジオタクティックポリプロピレン(商品名:Total Polypropylene 1251)(C−1)を用いた以外は実施例1と同様にして行った。
【0122】
フィルムは開口することが困難であり、透明性および表面光沢性を測定することができなかった。
結果を表2に示す。
【0123】
[比較例2]
実施例1において、ポリマー(A−1)の代わりに、プライムポリマー社製ポリプロピレン(商品名:F−327)(D−1)を用いた以外は実施例1と同様にして行った。
【0124】
結果を表2に示す。
[比較例3]
実施例1において、ポリマー(A−1)の代わりに、プライムポリマー社製ポリプロピレン(商品名:F113G)(E−1)を用いた以外は実施例1と同様にして行った。
【0125】
結果を表2に示す。
[比較例4]
実施例1において、ポリマー(A−1)を20重量部、プロピレン・エチレン共重合体(B−1)を80重量部配合した以外は実施例1と同様にして行った。
フィルムは開口することが困難であり、透明性および表面光沢性を測定することができなかった。
【0126】
結果を表2に示す。
【0127】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンジオタクティックプロピレン重合体(A)100〜50重量部と、
プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)0〜50重量部(ただし、(A)と(B)
との合計を100重量部とする。)と
を含むプロピレン系重合体組成物を空冷インフレーション成形して得られるインフレーションフィルムであって、該シンジオタクティックプロピレン重合体(A)が下記要件(a)を充足し、該プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)が下記要件(b)を充足する
ことを特徴とするインフレーションフィルム。
(a):13C-NMRにより測定されるシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr分
率)が85%以上であり、DSCより求められる融点(Tm)が145℃以上であり、プロピレンから導かれる構成単位を90モル%(ただし、該シンジオタクティックプロピレン重合体(A)中の構成単位の全量を100モル%とする。)を超える量で含有する。
(b):プロピレンから導かれる構成単位を55〜90モル%の量で含有し、炭素原子数2〜20のα-オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位を10〜45モ
ル%(ただし、プロピレンから導かれる構成単位と炭素原子数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位との合計を100モル%とする。)の量で含有し、JIS K−6721に準拠して230℃、2.16kg荷重にて測定したMFRが0.01〜100g/10分の範囲にあり、かつ下記要件(b−1)および(b−2)のいずれか一つ以上を満たす。
(b−1):13C-NMR法により測定したシンジオタクティックトライアッド分率(rr分率)が60%以上である。
(b−2):135℃デカリン中で測定した極限粘度[η](dL/g)と前記MFR(g/10分、230℃、2.16kg荷重)とが下記の関係式を満たす。
1.50×MFR(-0.20)≦[η]≦2.65×MFR(-0.20)
【請求項2】
(1)50μm厚みで測定した内部ヘイズ値が2%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のインフレーションフィルム。
【請求項3】
(1)50μm厚みで測定した内部ヘイズ値が2%以下であり、
(2)JIS K 7105に準拠して測定した入射角20°におけるグロスが120%以上である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のインフレーションフィルム。
【請求項4】
(1)50μm厚みで測定した内部ヘイズ値が2%以下であり、
(2)JIS K 7105に準拠して測定した入射角20°におけるグロスが120%以上であり、
(3)JIS K 7197に準拠して測定した前記プロピレン系重合体組成物の針進入温度が145℃以上である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
【請求項5】
(1)50μm厚みで測定した内部ヘイズ値が2%以下であり、
(2)JIS K 7105に準拠して測定した入射角20°におけるグロスが120%以上であり、
(3)JIS K 7197に準拠して測定した前記プロピレン系重合体組成物の針進入温度が145℃以上であり、
(4)JIS K6301に準拠して測定した前記プロピレン系重合体組成物の引張弾
性率が100〜2000MPaの範囲にある
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
【請求項6】
前記シンジオタクティックプロピレン重合体(A)の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1〜10dL/gの範囲にあり、示差走査熱量計(DSC)により求めた融解熱量(ΔH)が40mJ/mg以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
【請求項7】
前記プロピレン・α-オレフィン重合体(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフ
ィー(GPC)により求めた分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインフレーションフィルム。

【公開番号】特開2010−144007(P2010−144007A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321161(P2008−321161)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】