説明

インフレーター

【課題】軽量化を図ることができて、安価に製造することができ、かつ、フィルタによりハウジング内のガス発生剤を保護可能なインフレーターを提供すること。
【解決手段】本発明のインフレーター1は、外形形状を略円柱状とされて、ハウジング3を、天井側部材14と底側部材10とから構成している。ハウジング3は、天井側部材14における天井側周壁15の内周面と、底側部材10における底側周壁11の外周面と、を相互に連結させている。ハウジング3内に充填されるガス発生剤26の燃焼により発生する膨張用ガスを外部に吐出させるガス吐出口15aが、天井側部材14に形成される。膨張用ガスを濾過するフィルタ23が、略平板状として、ガス発生剤26の天井壁部8側を覆うように、周縁を底側周壁11に保持され、ハウジング3内に充填されたガス発生剤26を押圧して、ガス発生剤26のずれ移動を抑制している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に充填させたガス発生剤を燃焼させて、膨張用ガスを発生させるパイロタイプのインフレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パイロタイプのインフレーターとしては、外形形状を略円柱状としたハウジングの内部に配置されるフィルタを、断面略U字形状として、ハウジング内に充填されるガス発生剤における軸直交方向の外周側とイニシエータから離れた端部側(天井壁部側)との三方を覆うような構成としたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−186873公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来のインフレーターでは、フィルタが、ガス発生剤におけるイニシエータ側から離れた側を覆うように配置されており、ガス発生剤の燃焼により発生する膨張用ガスを濾過して冷却するとともに、ハウジング内に充填されたガス発生剤を押圧して、ガス発生剤のずれ移動を抑制できる構成である。しかしながら、この従来のインフレーターでは、金網等からなるメッシュ状のフィルタが、ガス発生剤の周囲を、イニシエータ側を除いて略全域にわたって覆う構成であることから、重く、軽量化を図る点に改善の余地があった。また、従来のインフレーターでは、フィルタを、曲げ加工して、ハウジング内に収納可能に形成する必要があることから、製造コストが高く、高い寸法精度を確保し難かった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、軽量化を図ることができて、安価に製造することができ、かつ、フィルタによりハウジング内のガス発生剤を保護可能なインフレーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインフレーターは、外形形状を略円柱状とされて、内部にガス発生剤を充填させるハウジングと、ハウジング内に配置されてガス発生剤を点火可能なイニシエータと、ガス発生剤の燃焼により発生する膨張用ガスを濾過するフィルタと、フィルタにより濾過された膨張用ガスを外部に吐出可能なガス吐出口と、を備える構成とされ、
ハウジングが、略円筒状の周壁部と、周壁部の一端側を閉塞するように略円板状とされるともに略中央においてイニシエータを保持する底壁部と、底壁部と対向して配置されるとともに周壁部の他端側を閉塞する略円板状の天井壁部と、を備える構成のインフレーターであって、
ハウジングが、
イニシエータから離れた側に位置して、天井壁部と、周壁部における天井壁部側の領域を構成する天井側周壁と、を構成する天井側部材と、
イニシエータ側に位置して、底壁部と、周壁部における底壁部側の領域を構成する底側周壁と、を構成する底側部材と、
の2つの部材から構成されるとともに、
天井側周壁の先端側の内周面を底側周壁の外周面と連結させることにより、天井側部材と底側部材とを相互に連結させる構成とされ、
ガス吐出口が、天井側部材に形成され、
フィルタが、略平板状として、ガス発生剤の天井壁部側を覆うように、天井壁部の近傍において、周縁を底側周壁に保持され、ハウジング内に充填されたガス発生剤を押圧して、ガス発生剤のずれ移動を抑制可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のインフレーターでは、フィルタは略平板状とされており、このフィルタを、ハウジング内における天井壁部の近傍となる位置において、周縁を周壁部を構成する略円筒状の底側周壁に保持された状態で、ガス発生剤の天井壁部側を覆う構成である。そのため、フィルタの曲げ加工が不要であり、従来のインフレーターと比較して製造コストを低減させることができ、また、平板状のフィルタを、ハウジングの底側周壁に保持可能な外径寸法に設定すればよいことから、寸法精度も容易に確保可能である。また、本発明のインフレーターでは、フィルタは、ガス発生剤の天井壁部側のみを覆う構成であることから、従来のインフレーターと比較してフィルタを軽量化することができ、インフレーター自体の軽量化を図ることも可能となる。さらに、本発明のインフレーターでは、フィルタは、ガス発生剤の天井壁部側のみを覆う構成であっても、ハウジング内に充填されたガス発生剤を押圧して、ガス発生剤のずれ移動を抑制可能な構成とされていることから、搬送時や車両搭載時等において振動を受けても、ハウジング内でガス発生剤が相互にずれ移動することを抑制でき、ハウジング内のガス発生剤を保護することができる。
【0008】
従って、本発明のインフレーターでは、軽量化を図ることができて、安価に製造することができ、かつ、フィルタによりハウジング内のガス発生剤を保護することができる。
【0009】
また、本発明のインフレーターにおいて、底側部材における略中央に、イニシエータにより点火されてガス発生剤に伝火可能な伝火薬を内部に充填させた点火室を、配設させ、
フィルタを、点火室の天井壁部側を覆うように、略円板状とすることが、好ましい。
【0010】
上記構成のインフレーターでは、フィルタに、点火室を挿通させるための開口を設けなくともよく、フィルタを単に円板状とすればよいことから、フィルタを、外径寸法のみを底側周壁に保持可能な寸法に設定すればよい。また、フィルタが開口を備えない円板状とされることから、直径方向の撓み代を大きく確保することができて、イニシエータの作動時に、フィルタが底側周壁から外れることを的確に防止することができる。
【0011】
さらに、上記構成のインフレーターにおいて、底側周壁における天井壁部側となる先端側部位を、天井側周壁との連結部位より小径として、先端側部位と、外周側を覆う天井側周壁と、の間に隙間を有する構成とするとともに、先端側部位によりフィルタを保持する構成とし、
天井側周壁において、フィルタにおける天井壁部側の面よりもイニシエータ側となる領域に、ガス吐出口を配設させる構成とすることが好ましい。
【0012】
上記構成のインフレーターでは、イニシエータの作動時に、フィルタにより濾過された膨張用ガスが、ハウジングにおける天井側周壁と底側周壁の先端側部位との間に形成される隙間を経て、天井側周壁に形成されるガス吐出口から外部に吐出されることとなる。そして、ガス吐出口は、天井側周壁において、フィルタにおける天井壁部側の面よりもイニシエータ側に配置されていることから、フィルタにより濾過された膨張用ガスが天井側周壁と底側周壁の先端側部位との間の隙間を必ず通ることとなり、この時、膨張用ガスに含まれる残渣を、天井側周壁の内周面及び先端側部位の外周面によっても捕捉することが可能となって、膨張用ガスに含まれる残渣を一層低減させることができる。
【0013】
さらにまた、上記構成のインフレーターにおいて、底側周壁の先端と天井壁部との間の隙間を、フィルタの厚さ寸法より小さく設定すれば、イニシエータの作動時に、仮に、フィルタが底側周壁から外れるような態様となっても、フィルタが、底側周壁の先端と天井壁部との間の隙間に進入して、底側周壁に対してハウジングの軸直交方向側にずれることを防止できることから、膨張用ガスがフィルタにより濾過されずにガス吐出口から吐出されることを確実に防止することができ、膨張用ガスを、フィルタにより確実に濾過された状態で、ガス吐出口から吐出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態であるインフレーターの概略縦断面図である。
【図2】実施形態のインフレーターにおいて、作動時の膨張用ガスの流れを説明する概略部分拡大縦断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態であるインフレーターの概略縦断面図である。
【図4】本発明のさらに他の実施形態であるインフレーターの概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態のインフレーター1は、車両に搭載されるエアバッグ装置に使用されるもので、実施形態の場合、外形形状を扁平な略円柱状としたディスクタイプとされている。インフレーター1は、図1に示すように、外形形状を略円柱状とされるハウジング3と、ハウジング3内における中央付近に配置される点火室28と、ハウジング3内における点火室28の外周側に配置される燃焼室29と、燃焼室29内に充填されるガス発生剤26と、点火室28内に充填される伝火薬25と、点火室28内に配置されて伝火薬25を点火可能なイニシエータ17と、ハウジング3内に配置されてガス発生剤26の燃焼により発生する膨張用ガスG1を濾過して冷却するためのフィルタ23と、を備えて構成されている。なお、実施形態では、ハウジング3の軸方向に沿った方向を上下方向として、ハウジング3における天井壁部8側を上方とし、底壁部6側を下方として、説明をする。
【0016】
ハウジング3は、略円筒状の周壁部4と、周壁部4の一端側(下端側)を閉塞する略円板状とされるとともに略中央においてイニシエータ17を保持する底壁部6と、底壁部6と対向して配置されて周壁部4の他端側(上端側)を閉塞する略円板状の天井壁部8と、を備えて構成されている。周壁部4における上下の中央付近(実施形態の場合、上下の中央よりやや下方)には、略四角環状のフランジ部4aが、外周面から外方に突出するように形成されている。実施形態の場合、ハウジング3は、イニシエータ17から離れた側に位置する天井側部材14と、イニシエータ17側に配置される底側部材10と、の2つの部材から構成されており、天井側部材14と底側部材10とは、ともに、ステンレス鋼等の鋼板を用いて形成されている。
【0017】
底側部材10は、底壁部6と、周壁部4における底壁部6側の領域を構成する底側周壁11と、を備えている。底壁部6の中央には、イニシエータ17を保持するために上方に突出する略円筒状の突出部7が、形成されている。突出部7は、底壁部6から連なるように形成されるもので、底壁部6から上方に延びる略円筒状の周壁7aと、周壁7aの上端側に配置される天井壁7bと、を有しており、天井壁7bには、イニシエータ17のホルダ19を挿通可能な開口7cが形成されている。イニシエータ17は、イニシエータ本体18と、イニシエータ本体18を底壁部6の突出部7に保持させる合成樹脂製のホルダ19と、から構成されるもので、底壁部6における突出部7の天井壁7bから上方に突出している上部側の部位の周囲を、点火室28を構成する後述するカップ部材21に囲まれるようにして、点火室28内に配置されている。イニシエータ本体18は、点火室28(カップ部材21)内に充填される伝火薬25に点火可能な点火部18aと、点火部18aから下方に延びる一対の導電性ピン18bと、を有する構成とされている。ホルダ19は、突出部7の開口7cから下方に突出しているイニシエータ本体18の導電性ピン18bを外部に露出させつつ導電性ピン18bの外周側を覆うように下方を開口させた略円筒状の下側部位19aと、突出部7の天井壁7bより上方となる位置においてイニシエータ本体18の点火部18aを保持する略円柱状の上側部位19bと、を備えて構成されている。ホルダ19の下側部位19aは、突出部7の外周面(下方)を略全面にわたって覆うように構成されている。ホルダ19は、実施形態の場合、6,6−ナイロン、6−ナイロン等のポリアミド樹脂に、ガラス繊維を含有させた合成樹脂製とされている。そして、実施形態の場合、ハウジング3の底壁部6(突出部7)と、イニシエータ本体18と、は、ホルダ19の形成時に、インサート成形により一体化されて、イニシエータ17を底壁部6の突出部7に保持させている。また、ホルダ19における上側部位19bの外周面には、カップ部材21に形成される係止突起21cを嵌合可能な係止凹部19cが、係止突起21cに対応して、周方向に沿って複数個形成されている。
【0018】
底側周壁11は、底壁部6の周縁から上方に延びるとともに上端側を開口させた略円筒状とされている。また、実施形態の場合、底側周壁11は、上端側となる先端側部位12を、天井側周壁15との連結部位(元部側部位11a)より小径として構成されている。先端側部位12は、天井側部材14における天井側周壁15との間に隙間を有するように、外径寸法R1を、天井側周壁15の内径寸法r1より小さな寸法に、設定されている(図1参照)。また、この先端側部位12は、フィルタ23を圧入によって保持することにより、フィルタ23に閉塞されることとなり、上下方向側の幅寸法を、フィルタ23を保持可能な寸法に、設定されている。実施形態の場合、先端側部位12は、スウェージング加工により、底側周壁11の先端側を縮径させて、形成されている。また、底側周壁11は、天井側部材14と底側部材10とを溶接により連結させた状態で、天井側部材14の天井壁部8との間に隙間を有するように、構成されている。実施形態の場合、底側周壁11の先端(上端)と天井壁部8との間の隙間のハウジング3の軸方向に沿った上下の寸法L1は、フィルタ23の厚さ寸法T1より、小さく設定されている(図2参照)。
【0019】
天井側部材14は、天井壁部8と、周壁部4における天井壁部8側の領域を構成する天井側周壁15と、天井側周壁15の先端(下端)側から外方に突出するように形成されるフランジ部4aと、を備えている。天井側周壁15は、天井壁部8の周縁から下方に延びるとともに下端側を開口させた略円筒状として、底側周壁11における先端側部位12の外周側を覆うとともに、フランジ部4a近傍となる先端側の部位で、底側周壁11における元部側の部位と、内外方向で相互に重なるように構成されている。そして、天井側部材14と底側部材10とは、この相互に重なる領域(天井側周壁15の先端側の内周面と底側周壁11の外周面)を、周方向の略全域にわたって溶接させることにより、相互に連結されて、ハウジング3を構成している。天井側周壁15には、フィルタ23により濾過された膨張用ガスG1を外部に吐出可能なガス吐出口15aが、周方向に沿って多数形成されている。ガス吐出口15aは、フィルタ23における天井壁部8側の面(上面23a)よりもイニシエータ17側となる領域(フィルタ23の上面23aよりも下方となる位置)に、形成されている。
【0020】
フィルタ23は、ハウジング3を構成する底側部材10における底側周壁11の先端側部位12を塞ぐとともに、点火室28を構成するカップ部材21の上方(天井壁部側)を覆うような略円板状として構成されている。このフィルタ23は、底側周壁11の先端側部位12に保持されるもので、ハウジング3における天井壁部8の近傍に、配設されている。このフィルタ23は、金網等からなるメッシュ状とされるもので、燃焼室29内で発生した膨張用ガスG1に含まれる残渣を捕捉するとともに、膨張用ガスG1を冷却させるためのものである。実施形態の場合、フィルタ23は、底側周壁11の先端側部位12に圧入されることにより、底側周壁11に嵌合されて、ハウジング3の底側部材10に保持される構成である。実施形態の場合、フィルタ23は、底側周壁11に嵌め込まれる前の外径寸法R2(図1参照)を、底側周壁11の先端側部位12の内径寸法r2(図1参照)より若干大きくして、先端側部位12に圧入可能な寸法に、設定されている。また、フィルタ23は、ハウジング3(燃焼室29)内に充填されたガス発生剤26を押圧して、ガス発生剤26相互のずれ移動を抑制可能なように、厚さ寸法T1を、底側部材10の軸方向に沿った厚さ寸法T2(上下方向の幅寸法)の1/6程度に設定されている(図2参照)。そして、フィルタ23は、上面23aを、先端側部位12の先端面と略一致させるようにして、軸直交方向の外側面を略全域にわたって先端側部位12に保持されている。
【0021】
点火室28を構成するカップ部材21は、上方をフィルタ23に覆われるように、フィルタ23とイニシエータ17との間であって、底側部材10の略中央に配置されている。カップ部材21は、実施形態の場合、アルミニウム等から構成されており、下方を開口させた略円筒状として、略円板状の天井壁21aと、天井壁21aの外周縁から下方に延びる略円筒状の周壁21bとを、備えている。周壁21bの先端(下端)近傍の内周面側には、内側に向かって突出する係止突起21cが、周方向に沿って複数箇所(実施形態の場合、4箇所)形成されている。この係止突起21cは、イニシエータ17におけるホルダ19の上側部位19bの外周面に形成される係止凹部19cに嵌合可能とされるもので、カップ部材21は、内部に伝火薬25を充填させた状態で、各係止突起21cを係止凹部19cに嵌合させることにより、ホルダ19に連結される構成である。カップ部材21の天井壁21aには、点火部18aの作動時に周囲の破断予定部を破断させて開き可能な扉部(図符号省略)が形成されており、点火部18aが作動して伝火薬25が燃焼する際に、この扉部が開いて、伝火薬25の燃焼により発生する火炎を、燃焼室29内に充填されるガス発生剤26に伝播させることとなる。なお、このカップ部材21は、図2に示すように、ガス発生剤26の燃焼時に焼失することとなる。
【0022】
点火室28(カップ部材21)内に充填される伝火薬25は、イニシエータ本体18の作動により着火されて燃焼し、火炎を発生可能な所定の薬剤からなるもので、所定の燃料を結合材等とともに混合して、押出成形やプレス成形等により所定形状(実施形態の場合、粒状)に成形されている。具体的には、伝火薬25としては、B/KNO3に例示されるような汎用の金属粉末と酸化剤との混合物を使用することができる。
【0023】
燃焼室29は、実施形態の場合、点火室28の外周側において、ハウジング3を構成する底側部材10とフィルタ23とにより囲まれる領域から、構成されている。燃焼室29内に充填されるガス発生剤26は、点火された伝火薬25から伝火されることにより、燃焼して膨張用ガスG1を発生するもので、所定の燃料を結合材等とともに混合して、押出成形やプレス成形等により、所定形状に成形したものを使用している。ガス発生剤26としては、通常のインフレーターにおいてガス発生剤として用いられる非アジ化系のガス発生剤を使用することができ、具体的には、グアニジン系、アミノテトラゾール系、トリアジン系、ヒドラジン系、トリアゾール系、アゾジカルボンアミド系、ビテトラゾール系等のものを使用することができる。
【0024】
実施形態のインフレーター1では、ハウジング3において、底側部材10における底側周壁11の先端側部位12と、天井側部材14における天井側周壁15と、の間の隙間Sが、フィルタ23により濾過された膨張用ガスG1をガス吐出口15a側に案内するガス流路30を構成することとなる(図1,2参照)。そして、実施形態のインフレーター1では、燃焼室29内で発生した膨張用ガスG1は、図2に示すようにフィルタ23により濾過されて、残渣を捕捉され、かつ、冷却された状態で、先端側部位12と天井側周壁15との間の隙間Sからなるガス流路30を経て、ガス吐出口15aから、放射状に外部へ吐出されることとなる。
【0025】
次に、実施形態のインフレーターの製造方法について説明をする。イニシエータ17は、インサート成形により底側部材10と予め一体化させておく。まず、カップ部材21を、天井壁21aを下方に向けるように反転させた状態で、イニシエータ17を連結させる開口から、カップ部材21の内部に伝火薬25を充填させる。その後、底側部材10を上下で反転させた状態で上方から被せるようにして、カップ部材21の周壁21bに形成される係止突起21cを、底側部材10と一体化されたイニシエータ17のホルダ19に形成される係止凹部19cに嵌合させて、点火室28を閉塞させる。次いで、底側部材10を、先端側部位12側を上方に向けるように反転させて、底側周壁11の上端側の開口(先端側部位12側)から、底側部材10の内部にガス発生剤26を充填させる。その後、底側周壁11の先端側部位12に、フィルタ23を圧入させて、フィルタ23を底側部材10に固着させるとともに燃焼室29を閉塞させる。その後、フィルタ23の上方を覆うように、天井側部材14を上方から被せ、天井側部材14の天井側周壁15と、底側部材10の底側周壁11と、を、相互に重なる領域において溶接させれば、天井側部材14と底側部材10とを連結させることができて、インフレーター1を製造することができる。
【0026】
実施形態のインフレーター1では、エアバッグ装置とともに車両に搭載された状態で、図示しないリード線を経て、制御装置からの作動信号が入力されると、イニシエータ本体18が、伝火薬25を燃焼させるように作動して、カップ部材21の図示しない扉部を開かせて伝火薬25からの火炎を燃焼室29内に伝播させることにより、燃焼室29内に充填されるガス発生剤26を燃焼させることとなる。そして、ガス発生剤26を燃焼させて発生する膨張用ガスG1が、図2の二点鎖線に示すように、フィルタ23とガス流路30とを経て、ガス吐出口15aからインフレーター1外へ吐出されて、エアバッグ装置のエアバッグを膨張させることとなる。
【0027】
そして、実施形態のインフレーター1では、フィルタ23は略平板状とされており、このフィルタ23を、ハウジング3における天井壁部8の近傍となる位置において、周縁を周壁部4を構成する略円筒状の底側周壁11の先端側部位12に保持された状態で、ガス発生剤26の天井壁部8側を覆う構成である。そのため、フィルタ23の曲げ加工が不要であり、従来のインフレーターと比較して製造コストを低減させることができ、また、平板状のフィルタ23の外径寸法を、ハウジング3の底側周壁11の先端側部位12に圧入(保持)可能な寸法に設定すればよいことから、寸法精度も容易に確保可能である。また、実施形態のインフレーター1では、フィルタ23は、ガス発生剤26の天井壁部8側(上方)のみを覆う構成であることから、従来のインフレーターと比較してフィルタを軽量化することができ、インフレーター1自体の軽量化を図ることも可能となる。さらに、実施形態のインフレーター1では、フィルタ23は、ガス発生剤26の天井壁部8側のみを覆う構成であっても、ハウジング3内に充填されたガス発生剤26を押圧して、ガス発生剤26のずれ移動を抑制可能な構成とされていることから、搬送時や車両搭載時等において振動を受けても、ハウジング3内でガス発生剤26が相互にずれ移動することを抑制でき、ハウジング3内のガス発生剤26を保護することができる。
【0028】
従って、実施形態のインフレーター1では、軽量化を図ることができて、安価に製造することができ、かつ、フィルタ23によりハウジング3内のガス発生剤26を保護することができる。
【0029】
また、実施形態のインフレーター1では、フィルタ23が、点火室28の天井壁部8側を覆うように、略円板状とされている。そのため、実施形態のインフレーター1では、フィルタ23に、点火室28を構成するカップ部材21を挿通させるための開口を設けなくともよく、フィルタ23を単に円板状とすればよいことから、フィルタ23を、外径寸法のみを底側周壁11の先端側部位12に圧入(保持)可能な寸法に設定すればよい。また、実施形態のインフレーター1が、フィルタ23が開口を備えない円板状とされることから、直径方向の撓み代を大きく確保することができて、イニシエータ17の作動時に、フィルタ23が底側周壁11の先端側部位12から外れることを的確に防止することができる。
【0030】
勿論、このような点を考慮しなければ、図3に示すインフレーター1Aのごとく、点火室28Aを構成するカップ部材21Aの上下の幅寸法を大きくして、フィルタ23Aを、カップ部材21Aを挿通可能な開口23bを備えるドーナツ板状としても、よい。このインフレーター1Aは、点火室28A(カップ部材21A)及びフィルタ23A以外は、上述のインフレーター1と同一の構成であり、同一の部材には同一の図符号を付して詳細な説明を省略する。このインフレーター1Aでは、フィルタ23Aは、底側周壁11及びカップ部材21Aに嵌め込まれる前の開口23bの内径寸法r3も、カップ部材21Aの外径寸法R3より若干小さくして、カップ部材21Aを圧入可能な寸法に、設定されている(図3参照)。すなわち、図3のインフレーター1Aでは、フィルタ23Aは、底側周壁11及びカップ部材21Aに嵌め込まれる前の外径寸法R2を、底側部材10における先端側部位12に圧入可能な寸法に設定するとともに、内径寸法r3を、カップ部材21Aを圧入可能な寸法に設定して、外側で底側周壁11に保持され、内側で点火室28Aを構成するカップ部材21Aに保持される構成である。
【0031】
さらに、実施形態のインフレーター1では、底側周壁11における天井壁部8側となる先端側部位12を、天井側周壁15との連結部位(元部側部位11a)より小径として、先端側部位12と、外周側を覆う天井側周壁15と、の間に隙間Sを有する構成とするとともに、先端側部位12によりフィルタ23を保持する構成とし、天井側周壁15において、フィルタ23における天井壁部8側の面(上面23a)よりもイニシエータ17側となる領域に、ガス吐出口15aを配設させている。そのため、実施形態のインフレーター1では、イニシエータ17の作動時に、フィルタ23により濾過されて冷却された膨張用ガスG1が、ハウジング3における天井側周壁15と底側周壁11の先端側部位12との間に形成される隙間S(ガス流路30)を経て、天井側周壁15に形成されるガス吐出口15aから外部に吐出されることとなる。そして、ガス吐出口15aは、天井側周壁15において、フィルタ23における天井壁部8側の面(上面23a)よりもイニシエータ17側に配置されていることから、フィルタ23により濾過された膨張用ガスG1が天井側周壁15と先端側部位12との間の隙間S(ガス流路30)を必ず通ることとなり、この時、膨張用ガスG1に含まれる残渣を、天井側周壁15の内周面15b及び先端側部位12の外周面12aによっても捕捉することが可能となって、膨張用ガスG1に含まれる残渣を一層低減させることができる。
【0032】
なお、このような点を考慮しなければ、図4に示すインフレーター1Bのごとく、底側部材10Bにおける底側周壁11Bの外径寸法を、上下の全域にわたって一定とした構成としてもよい。このインフレーター1Bでは、底側部材10Bの底側周壁11Bと天井側部材14Bの天井側周壁15Bとの間には隙間は形成されておらず、ハウジング3Bは、天井側部材14Bにおける天井壁部8Bの略中央に、上方に突出する略円筒状のガス吐出口部31を備える構成とされている。ガス吐出口部31には、周方向に沿って多数形成される開口31aが、形成されている。このインフレーター1Bでは、ガス発生剤26が燃焼して発生した膨張用ガスG2は、図4の二点鎖線に示すように、フィルタ23を経て濾過され、かつ、冷却された状態で、フィルタ23の上方に位置するガス吐出口部31の開口31aから、放射状に外部へ吐出されることとなる。
【0033】
さらにまた、実施形態のインフレーター1では、底側周壁11の先端と天井壁部8との間の隙間の上下の寸法L1は、フィルタ23の厚さ寸法T1より、小さく設定されていることから、イニシエータ17の作動時に、仮に、フィルタ23が底側周壁11の先端側部位12から外れるような態様となっても、フィルタ23が、底側周壁11の先端と天井壁部8との間の隙間に進入して、底側周壁11に対してハウジング3の軸直交方向側にずれることを防止できることから、膨張用ガスG1がフィルタ23により濾過されずにガス吐出口15aから吐出されることを確実に防止することができ、膨張用ガスG1を、フィルタ23により確実に濾過して冷却された状態で、ガス吐出口15aから吐出させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、フィルタの厚さ寸法を、底側周壁の先端と天井壁部との間の隙間の上下の寸法と同等、あるいはこの上下の寸法より小さく設定してもよい。
【0034】
なお、実施形態のインフレーター1,1A,1Bでは、フィルタ23,23Aを、底側部材10,10Bの底側周壁11B若しくは先端側部位12に圧入させることにより、フィルタを底側周壁に保持させているが、フィルタの底側周壁への保持態様は、圧入に限られるものではない。例えば、フィルタの外周面に雄ねじ溝を形成し、底側周壁の内周面に、雄ねじ溝と対応する雌ねじ溝を形成して、ねじ結合により、フィルタを底側周壁に保持させる構成としてもよく、あるいは、フィルタを底側周壁に圧入させつつねじ込むようにして、フィルタを底側周壁に保持させる構成としてもよい。
【0035】
また、実施形態では、外形形状を略円板状とされたディスクタイプのインフレーターを例に採り説明したが、本発明は、外形形状を略円柱状としたシリンダタイプのインフレーターにも適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1,1A,1B…インフレーター、
3,3B…ハウジング、
4,4B…周壁部、
6,6B…底壁部、
8,8B…天井壁部、
10,10B…底側部材、
11,11B…底側周壁、
12…先端側部位、
14,14B…天井側部材、
15,15B…天井側周壁、
15a…ガス吐出口、
17…イニシエータ、
23,23A…フィルタ、
26…ガス発生剤、
G1,G2…膨張用ガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形形状を略円柱状とされて、内部にガス発生剤を充填させるハウジングと、該ハウジング内に配置されて前記ガス発生剤を点火可能なイニシエータと、前記ガス発生剤の燃焼により発生する膨張用ガスを濾過するフィルタと、前記フィルタにより濾過された前記膨張用ガスを外部に吐出可能なガス吐出口と、を備える構成とされ、
前記ハウジングが、略円筒状の周壁部と、該周壁部の一端側を閉塞するように略円板状とされるともに略中央において前記イニシエータを保持する底壁部と、該底壁部と対向して配置されるとともに前記周壁部の他端側を閉塞する略円板状の天井壁部と、を備える構成のインフレーターであって、
前記ハウジングが、
前記イニシエータから離れた側に位置して、前記天井壁部と、前記周壁部における前記天井壁部側の領域を構成する天井側周壁と、を構成する天井側部材と、
前記イニシエータ側に位置して、前記底壁部と、前記周壁部における前記底壁部側の領域を構成する底側周壁と、を構成する底側部材と、
の2つの部材から構成されるとともに、
前記天井側周壁の先端側の内周面を前記底側周壁の外周面と連結させることにより、前記天井側部材と前記底側部材とを相互に連結させる構成とされ、
前記ガス吐出口が、前記天井側部材に形成され、
前記フィルタが、略平板状として、前記ガス発生剤の前記天井壁部側を覆うように、前記天井壁部の近傍において、周縁を前記底側周壁に保持され、前記ハウジング内に充填された前記ガス発生剤を押圧して、前記ガス発生剤のずれ移動を抑制可能に構成されていることを特徴とするインフレーター。
【請求項2】
前記底側部材における略中央に、前記イニシエータにより点火されて前記ガス発生剤に伝火可能な伝火薬を内部に充填させた点火室が、配設され、
前記フィルタが、前記点火室の前記天井壁部側を覆うように、略円板状とされていることを特徴とする請求項1に記載のインフレーター。
【請求項3】
前記底側周壁が、前記天井壁部側となる先端側部位を、前記天井側周壁との連結部位より小径として、前記先端側部位と、外周側を覆う前記天井側周壁と、の間に隙間を有する構成とされるとともに、前記先端側部位により前記フィルタを保持する構成とされ、
前記天井側周壁において、前記フィルタにおける前記天井壁部側の面よりも前記イニシエータ側となる領域に、前記ガス吐出口が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインフレーター。
【請求項4】
前記底側周壁の先端と前記天井壁部との間の隙間が、前記フィルタの厚さ寸法より小さく設定されていることを特徴とする請求項3に記載のインフレーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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