説明

インプラント上の抗感染性コーティングの製造方法

【課題】本発明は、チタンを含む又はチタンから成るインプラント上の抗感染性コーティングの製造方法に関する。チタンから成るインプラント又はチタンを含むインプラントのために、陽極酸化 TYPE II を用いて達成される機械的特性の最適化と、抗感染性特性とを統合することが可能であるコーティング方法を提示する。
【解決手段】本発明に従い、インプラントをアルカリ性溶液内で陽極酸化し、引き続きこの表面において、抗感染性特性を有する金属を電解析出し、その後、金属含有酸化物層を強化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタンを含む又はチタンから成るインプラント(移植片)上の抗感染性コーティングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術とその問題点)
特許文献1から、チタン又はチタン合金から成るインプラントに、ゾルゲル法を使用して、銀や銅のような金属イオンが均質に分散されている酸化チタンコーティングを設けることが公知である。コーティング(被膜)の機械的安定性と高密度化のために乾燥後に熱処理が行われる。ほぼ500℃への加熱によりコーティングのセラミック化(Keramisierung)が行われる。しかし熱処理は、インプラントにとって強度の損失をもたらすという短所をもつ。それ故、熱処理は、高い耐久強度をもつべきインプラントには適していない。
【0003】
チタンにおいて陽極酸化 TYPE II がより大きな硬度及びより高い耐久強度をもたらすことが公知である。特許文献2では、銀と銅の使用の他にこのコーティングがその平滑な表面に基づき抗感染性コーティングであることも記載されている。しかし陽極酸化 TYPE II のコーティングでは、銀又は銅による十分な結合強さのコーティングを製造することは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】DE 10243132 B4
【特許文献2】DE 20020649 U1(実用新案)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、チタンから成るインプラント又はチタンを含むインプラントのために、陽極酸化 TYPE II を用いて達成される機械的特性の最適化と、抗感染性特性とを統合することが可能であるコーティング方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、インプラントをアルカリ性溶液内で陽極酸化し、引き続きこの表面において、抗感染性特性を有する金属を電解析出し、その後、金属含有酸化物層を強化(ないし硬化 verfestigen)することにより解決される。
【0007】
陽極酸化において、酸素及び場合により他の原子を含む転化被覆層(Konversionsschicht)と、十分な導電率を有する多孔質酸化チタン層とが形成され、該酸化チタン層は多孔において導電性であり、それにより該多孔内に金属を電解析出することができる。例えばガラスビーズを用いたブラスト(投射)により、金属含有酸化物層は強化(ないし硬化)され、比較的弱い状態で結合された酸化物粒子と金属粒子は取り除かれるか、又は互いに及びインプラント表面とより強く結合される。
【0008】
チタンを含む又はチタンから成るインプラントについて組み合わされた修正方法が提供され、該方法では、第1ステップにおいて、強塩基性電解液内での陽極火花放電により多孔質酸化物層が形成され、第2ステップにおいて、多孔質層内への金属の電気的な取り入れ(ドラグイン)が行われ、第3ステップにおいて、金属富化(金属濃縮)された酸化物層がブラストにより強化(ないし硬化)され、そして、比較的弱い状態で結合された酸化物粒子と金属粒子が取り除かれるか、又は互いに及びインプラント表面とより強く結合されることで、該酸化物層を多かれ少なかれ取り除くことができる。
【0009】
生理学的条件のもとで始まる金属の溶出は、インプラント表面の平均的な金属配設(ないし金属分布 Metallbelegung)のバリエーションにより、その濃度について、抗菌作用或いはアンチバクテリア作用が周囲の身体組織細胞を本質的に破壊することなく達成されるように調節することができる。金属としては、特に銅、銀、亜鉛が適している。また、金属が銅の場合には、血管形成に対する触媒作用により、新たに形成される身体組織の良好な血液供給(貫流)が期待される。金属含有層の厚さは、有利には8〜15μm、好ましくは10μmである。
【0010】
金属含有酸化物層の強化(ないし硬化)は、好ましくはガラスビーズを用いたブラスト(投射)により行われる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】部分的に銅コーティングされたTiAlV表面を示す図である。
【図2】部分的に銅コーティングされたTiAlV表面上の培養後の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC 25923の細胞数発生の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明においては上記解決手段の各段落に記載の各形態が可能である。
【0013】
以下に本発明の具体的な実施例について図面を参照して説明する。
【0014】
例1:コーティング
【0015】
TiAl6V4サンプル本体が強塩基性電解液内の陽極火花放電の原理に従い多孔質酸化物層により表面被覆される。そのために500mlの蒸留水内に50gのNaOHが溶解される。40℃に加熱された溶液内においてチタンサンプルの陽極火花酸化が電圧を40ボルトへゆっくりと上昇させることにより行われる。引き続き、飽和酢酸銅溶液からの陰極析出により多孔質酸化物層内へ銅の取り入れ(ドラグイン)が行われる。そのように銅富化された酸化物層は、ガラスビードブラストにより部分的に削り取られ、酸化物層を含んだ銅がサンプル表面へ島状でほぼ完全に取り込み(einarbeiten)ないし埋設一体化される(図1)。
【0016】
例2:抗菌作用の説明
【0017】
抗菌作用の検査のために、臨床において重要な菌株である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC 25923において調査が行われた。そのために、直径8mmで長さ20mmのTiAlV円筒状部材が上記例1のコーティングに従って銅コーティングされ、150μl菌懸濁液が接種された6mlのPBS緩衝液内で37℃の温度で様々な(時間的な)長さで養生(auslagern)された。その後、円筒状部材上及び溶液内にある生菌の濃度が、寒天培養基上の平板培養(Ausplattieren)及び30℃における養生(48時間)により検出された。円筒状部材上には既に4時間後には全く生菌が見出されず、24時間後の緩衝液内では少量のみ生菌が見出された(図2)。
【符号の説明】
【0018】
KBS.コロニー形成単位(CFU/MLU/ml)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタンを含む又はチタンから成るインプラント上の抗感染性コーティングの製造方法であって、以下のステップ、即ち、
− 多孔質酸化物層を、アルカリ性溶液内の陽極酸化により、多孔内の導電率が電解析出を可能にするように形成するステップ、
− 抗感染性特性を有する金属を電解析出するステップ、
− ブラストにより、金属含有酸化物層を強化するステップ、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記陽極酸化のための電解液が水酸化ナトリウムを含むこと
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記陽極酸化のための電解液が珪酸ナトリウムを含むこと
を特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記多孔質酸化物層内へ銅、銀、及び/又は亜鉛を取り入れること
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属含有酸化物層をガラスビードでブラストすること
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化物層の厚さが8〜15μmであること
を特徴とする、請求項1に記載の方法。

【図2】
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【図1】
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【公表番号】特表2012−514483(P2012−514483A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544053(P2011−544053)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050010
【国際公開番号】WO2010/076338
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(502274185)ドット ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】