説明

インプラント用医療デバイスのための脂質コーティング

多孔性基材と、前記多孔性基材をコーティングおよび/または、含浸する組成物とを含み、前記組成物が、生体再吸収可能な担体(例えば、少なくとも1つの脂質)と、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、を含むステントなどの医療デバイスを本明細書に開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、2007年10月10日に出願された米国特許仮出願第60/978,988号および2007年10月19日に出願された米国特許仮出願第60/981,273号の優先権を主張するものであり、それらの開示は、引用により本明細書中に合体される。
【0002】
本明細書では、インプラント可能な医療デバイス(例えば、ステント)などの医療デバイスのコーティングとその製造プロセスを開示する。ステントは、1つまたはそれ以上の脂質と、1つまたはそれ以上の治療薬とを含む組成物によりコーティングされた、または含浸された細孔を持つ多孔性基材を含む。
【背景技術】
【0003】
インプラント可能な医療デバイスは、骨および歯の置換と素材、人工血管、シャントとステント、薬剤の長期放出のためだけに設計されたインプラント物など広範囲な応用で使用されている。医療デバイスは、金属、合金、ポリマーまたはセラミックで作られてもよい。
【0004】
動脈ステントは、アテローム性動脈硬化症または他の条件によって狭くされた動脈をバルーン血管形成(拡張)した後で再狭窄を防ぐために、何年間も使用されている。再狭窄は、新たに拡張された血管の内膜(血管壁の内層)と内腔への動脈媒体の平滑筋細胞(血管壁の中間層)の炎症、移動、および増殖を含む。この移動と増殖は、平滑筋細胞による細胞外基材の生成と共に、新生内膜形成と呼ばれる。炎症は、少なくとも一部がマクロファージの存在と関連する。また、マクロファージは、平滑筋細胞の異常な移動と増殖を刺激するサイトカインと他の作用物質を分泌することも知られている。ステントは、再狭窄を低減するが排除はしない。
【0005】
薬剤溶出ステントは、非分解性のポリマーコーティングから抗増殖剤を溶出するために開発され、現在、再狭窄の発生をさらに低減するために使用されている。そのようなステントの例として、シロリムスを溶出するCypher(登録商標)ステントや、パクリタキセルを溶出するTaxus(登録商標)ステントがある。最近、これらのステントの両方が、再狭窄防止に有効であるが、インプラントの何ヶ月または何年も後に、致命的になりやすい血栓症(血塊)を引き起こすことがわかってきた。遅いステント血栓症は、ステント上への長時間にわたるいくらか毒性のある薬剤の存続、ポリマコーティングの存続、あるいはその両方によって起こると考えられている。患者から除去したステントの検査によると、血管内膜の血管内皮細胞によるステントの被覆が全く無いことを頻繁に示している。この結果は、保持されている薬剤または非分解性ポリマーの毒性の可能性と矛盾しない。内皮化の欠落は、血塊形成に働き得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリマーフリー(ポリマーを含まない)コーティングを開発する試みがあった。しかしながら、これらのアプローチは、デバイスの調整とインプラントを行うために必要な機械的な完全性が欠落するなどの問題によって、所望の結果が得られなかったし、また、治療薬の好ましくない早い放出をもたらし得る。
【0007】
従って、十分な効能と、機械的な完全性と、生物学的に適合する表面を持つ新しい薬剤溶出ステントを開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの実施例は、
多孔性基材と、
前記多孔性基材の少なくとも一部を含浸する、少なくとも1つの組成物とを含み、
前記少なくとも1つの組成物が、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、少なくとも1つの脂質と、を含むステントを提供する。
【0009】
別の実施例は、デバイスの少なくとも一部を被覆する少なくとも1つのコーティングを有し、前記少なくとも1つのコーティングは、
多孔性基材と、
前記多孔性基材の少なくとも一部を含浸する組成物と、を有し、
前記組成物は、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、脂肪酸、脂肪族アミン、および中性脂質から選択された少なくとも1つの脂質と、を含む医療用デバイスを提供する。
【0010】
別の実施例は、医療用デバイスの少なくとも一部を被覆する、少なくとも1つのコーティングを有し、前記少なくとも1つのコーティングは、
多孔性基材と、
前記多孔性基材を被覆する、およびまたは、含浸する組成物と、を有し、
前記組成物は、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、少なくとも1つの脂質と、を含むステントを提供する。
【0011】
別の実施例は、疾病または体調のうちの少なくとも1つを治療する方法であって、
ステントを必要とする対象にその少なくとも一部を覆う、少なくとも1つのコーティングを有するステントをインプラントするインプラント工程であって、前記少なくとも1つのコーティングが、多孔性基材と、前記多孔性基材をコーティングまたは含浸する組成物とを有し、前記組成物が、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、少なくとも1つの脂質とを有する、前記インプラント工程と、
前記デバイスから少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤を放出する工程と、
を有する方法を提供する。
【0012】
1つの実施例では、前記少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤は、少なくとも1つの脂質を含む粒子と関連するデバイスから放出され、前記粒子は、リポソーム、ナノカプセル、ミクロカプセル、ミクロ液滴、ナノ液滴、ミクロスフェア、ナノスフェア、およびミセルから選択される。1つの実施例では、組成物は、本明細書に開示された表面活性剤を含む、少なくとも1つの表面活性剤をさらに含む。
【0013】
別の実施例は、疾病または体調のうちの少なくとも1つを治療する方法であって、
医療デバイスを必要とする対象にその少なくとも一部を覆う、少なくとも1つのコーティングを有する医療デバイスをインプラントするインプラント工程であって、前記少なくとも1つのコーティングが、多孔性基材と、前記多孔性基材を含浸する組成物とを有し、前記組成物が、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、脂肪酸、脂肪族アミン、および中性脂質から選択された少なくとも1つの脂質とを有する、前記インプラント工程と、
前記デバイスから少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤を放出する工程と、
を有する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】少なくとも1つの脂質と、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤とを含む組成物で含浸された多孔性基材でコーティングしたデバイスの概略図である。
【図2A】実施例2に記載したようなコーティングしたステントの写真である。
【図2B】実施例2に記載したようなコーティングしたステントの写真である。
【図2C】実施例2に記載したようなコーティングしたステントの写真である。
【図3】実施例3で記載したようなコーティングした先行技術のデバイスに対する、溶出時間(日、x軸)に対して薬物放出累積重量%(y軸)をプロットした放出曲線である。
【図4】実施例3で記載したようなステントに対する、溶出時間(日、x軸)に対して薬物放出累積重量%(y軸)をプロットした放出曲線である。
【図5A】ブタの下部前方下行(LAD)の冠動脈部の写真であり、実施例4と実施例5で記載したような、インプラントしたCypher(登録商標)ステントの典型的な組織像を示す図である。
【図5B】ブタの下部前方下行(LAD)の写真であり、実施例4と実施例5で記載したような、冠動脈部とインプラントしたステントの組織を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に、医療デバイスのためのコーティング、例えば、ステントなどのインプラント可能な医療デバイスのためのコーティングを開示する。1つの実施例は、多孔性基材と、前記多孔性基材の少なくとも一部を含浸する少なくとも1つの組成物とを含み、前記少なくとも1つの組成物が、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、少なくとも1つの脂質と、を含むステントなどの医療デバイスを提供する。
【0016】
1つの実施例では、多孔性基材は、水溶液にさらされると、薬剤が基材の細孔から放出されて水溶液に入ることを可能にする通路を持つ薬剤を収容するために十分に大きな細孔と間隙とを持ち得る。1つの実施例では、「水溶液」は、水と任意の緩衝液、および/または、所望のpHに溶液を調整する成分などの他の含有成分を含む生体外(in-vitro)溶液を示す。別の実施例では、水溶液は体液である。
【0017】
基材の細孔の大きさと体積分率は、例えば、細孔容積、および/または、細孔直径を調整することによって、治療薬の放出速度に影響を及ぼすように調整することができる。例えば、ナノサイズの気孔率を持つ多孔性基材は、ミクロサイズの気孔率を持つ多孔性基材と比べて治療薬の放出速度が減少することが期待される。また、多孔性基材、例えば、多孔性セラミックは、デバイスがステントの場合、に十分な柔軟性を持つコーティングを提供するのを支援し得る。
【0018】
1つの実施例では、多孔性基材は、医療デバイスまたはステント自体である。ステントは、ステンレス鋼、CoCr、チタン、チタン合金、NiTiを含む様々な物質で作ることができる。ステントは、ポリマーから、例えば、10またはそれ以上の共有結合したモノマまたはコモノマーを持つポリマーから、作ることができる。1つの実施例では、ポリマーは、インプラント可能な医療デバイス用に通常使用されるものから選択される。例示のポリマーは、ポリウレタン、ポリアクリレートエステル、ポリアクリル酸、ポリ酢酸ビニル、シリコーン、スチレン・イソブチレン・スチレン・ターブロックコポリマー(SIBS)などのスチレン・イソブチレン・スチレンブロック・コポリマー、架橋処理されたポリビニールピロリドンを含むポリビニールピロリドン、ポリビニルアルコール、EVAなどのビニルモノマのコポリマー、ポリビニルエーテル、ポリビニル芳香族、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリエーテル・スルホンを含むポリエーテル、ポリプロピレンを含むポリアルキレン、ポリエチレンと高分子量のポリエチレン、ポリカーボネート、シロキサンポリマー、酢酸セルロースなどのセルロースポリマー、ポリウレタン分散体(BAYHDROL(登録商標))などのポリマー分散体、スクワレン・エマルジョン、ポリ(メタクリル酸n−ブチル)/ポリ(エチレンビニルアセテート)、ポリアクリレート、ポリ(ラクチド−コ−E−カプロラクトン)、ホスホリルコリン、PTFE、パラリエンC、ポリエチレ−コ−酢酸ビニル、ポリn−-ブチルメタクリレート、ポリ(スチレン−b−イソブチレン−b−スチレン)(1,3−ジ(2メトキシ-2−プロピル)-5−タ−ブチルベンゼン上に作られたスチレンとイソブチレン・サブユニットの3ブロックコポリマー、Transelute(登録商標)、および上記の混合物およびコポリマーである。
【0019】
別の実施例では、多孔性基材は、ステントの少なくとも一部を被覆する物質を含む。図1は、本明細書に開示したコーティングしたデバイスの1つの実施例を概略的に示す図である。本明細書で使用する「コーティングした医療デバイス」は、1つまたはそれ以上のコーティング、すなわち、少なくとも1つのコーティングを含むデバイスを含む。少なくとも1つのコーティングは、デバイスの少なくとも一部、例えば、デバイスの全てまたは一部を被覆する1つのコーティングを含むことができる。例えば、デバイスは、ステントであり、コーティングは、ステント全体を被覆することができるし、また、体の内腔または他の選択された一部に接触するステントの一部だけを被覆することもできる。デバイスは、デバイスの異なる一部のために2つ以上のコーティングを使用することができるし、複数のコーティング層を使用することもできる。
【0020】
図1では、デバイス2の断面は、多孔性基材6でコーティングされた表面4を概略的に示す。基材6を含浸するものは、活性薬剤のための媒体として作用する生体再吸収可能な担体8中に薬学的に有効な薬剤10を含む組成物である。担体8は、1つまたはそれ以上の脂質、または本明細書で開示する他の生体再吸収可能な担体であり得る。薬剤10は、多孔性基材6と接触してもよいし、または基材に接触せずに担体8(例えば、脂質)中で懸濁してもよい。薬剤10を分子または微粒子形態の担体8中に埋め込んでもよい。
【0021】
1つの実施例では、デバイスは、デバイスを最初に基材6でコーティングし、続いて、担体8(例えば、脂質)と薬剤10とを含む組成物でデバイスをコーティングすることができる。別の実施例では、治療薬は、電気的堆積法(例えば、リン酸カルシウムなどのセラミックの共堆積)を使用して多孔性基材コーティングで、共堆積することができる。例えば、電解質溶液中に溶解した治療薬を基材コーティングで共堆積することができる。多くの治療薬を含む製剤の多層を含む多層は、多孔性の生物学的に適合するコーティングを形成するために好ましいような開示された積層プロセスを繰り返すことによって、想定することができる。各層は、1つまたはそれ以上の薬剤を含んでもよく、薬剤は、所望の薬剤コースに依存する同じ薬剤かまたは異なる薬剤であり得る。
【0022】
本明細書に開示したように、ステントをコーティングする多孔性基材6の代わりに、ステントそれ自体が、多孔性基材を含み、その基材中で担体と有効な薬剤が基材の少なくとも一部を含浸することができる。
【0023】
1つの実施例では、生体再吸収可能な担体は、少なくとも1つの脂質を含む。従って、別の実施例は、多孔性基材と、前記多孔性基材の少なくとも一部を含浸する組成物とを含み、前記組成物が、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、少なくとも1つの脂質とを含むステントを提供する。
【0024】
薬学的に許容することができる薬剤は、当技術分野で知られている方法を使用して少なくとも1つの脂質と結合することができる。1つの実施例では、少なくとも1つの脂質は、第1溶媒中で溶解され、薬剤は、第2溶媒中で溶解される。ここで、第1溶媒と第2溶媒とは、混和性であるか、その同等物である(この場合、脂質と薬剤とは、ただ一つの溶液を形成するために、溶媒中で交互に溶解することができる)。脂質を含む溶液は、次に、薬物を含む溶液と混合されて、予め決められた割合の治療薬と脂質のを得ることができる。1つの実施例では、組成物中の薬剤の割合は、1%〜90%の範囲で変更することができる、例えば、1%〜50%、1%〜25%、1%〜10%、または1%〜5%の範囲で変更することができる。
【0025】
粘性は、所望により多孔性基材への組成物の含浸を容易にするために、および/または、インプラント後までステント表面上の組成物を含むように、制御してもよい。1つの実施例では、第1溶液と第2溶液の濃度を調整することによって、脂質/薬剤を含む溶液の粘性を調整することができる。例えば、脂質を含む溶液と薬物を含む溶液が低濃度であれば、脂質/薬剤溶液を低濃度にし、次に、(より高い濃度の溶液に対して)低粘度にすることができる。1つの実施例では、脂質を含む溶液は、少なくとも5重量%(w/w(重量/重量比))または少なくとも10重量%の濃度を持ち、薬物を含む溶液は、少なくとも2重量%、または少なくとも4重量%の濃度を持つ。1つの実施例では、脂質を含む溶液は、10重量%の濃度を持ち、薬物を含む溶液は、4重量%の濃度を持つ。
【0026】
1つの実施例では、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤を溶媒中に溶解し、この溶液に少なくとも1つの脂質を混合することで、脂質中への薬剤の予め決められた割合を得る。薬物を含む溶液の濃度は、最終的な薬剤/脂質の溶液の粘性を決定し得る。あるいはまた、少なくとも1つの脂質を溶媒中に溶解し、この溶液に少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤を混合することで、脂質中への薬剤の予め決められた割合を得る。脂質を含む溶液の濃度は、最終的な薬剤/脂質の溶液の粘性を決定し得る。
【0027】
1つの実施例では、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤は、微粒子状形態で少なくとも1つの脂質と混合することができる。例えば、粉末形態の治療薬は、少なくとも1つの脂質と直接混合することができる。混合物は、さらに、ホモジナイザーを使用するか、または超音波デバイスを使用することによって、さらに均質にして、均一の混合物を得ることができる。均質な混合物は、当技術分野で知られている技術、例えば、本明細書に開示された1つまたはそれ以上の技術を使用して、多孔性基材に適用することができる。
【0028】
少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、少なくとも1つの脂質とが混和性でない実施例(例えば、薬剤が親水性である)では、脂質と薬剤とは、w/o(油中水)エマルション技術を使用することによって、混合することができる。例えば、薬剤は、水中または別の親水性溶媒で溶解することができる。第2溶媒で脂質を溶解することができる。薬剤を含む溶液と脂質を含む溶液とが混和性であるなら、簡単に混合することにより脂質中への薬剤の予め決められた割合を得る薬剤/脂質含有溶液を形成することができる。溶液が混和性でない場合には、薬物を含む溶液は、脂質を含む溶液と混合してエマルジョンを形成することができる。エマルジョンは、エマルジョンを均質化するために超音波処理にかけることができる。1つの実施例では、1つまたはそれ以上の表面活性薬剤をエマルジョンと混合してエマルジョンを安定させることができる。表面活性薬剤は、イオン性または非イオン性であり得る。例示のイオン性界面活性薬剤は、キトサン、ジドデシルジメチルアンモニウム・ブロマイド、例えば、硫酸デキストランなどの天然起源のイオン化可能なデキストランまたは、イオン化可能な官能基を含むように変更された合成デキストランを含むデキストラン塩を含む。例示の非イオン界面活性薬剤は、デキストラン、ポリオキシエチレン・ヒマシ油、ポリオキシエチレン・35・大豆・トリグリセリド、グリセリル・モノオリート、トリグリセリル・モノリート、グリセリル・モノカプリレート、グリセロール・モノカプリロカプレート、プロピレングリコール・モノラウレート、トリグリセロール・モノリート、ステアリックトリグリセリド、ソルビタン・モノステアレート(Span(登録商標)60)、ソルビタン・モノオレート(Span(登録商標)80)、ポリオキシエチレン・ソルビタン・モノラウレート(Tween(登録商標)20)、ポリオキシエチレンソルビタン・トリステアレート(Tween(登録商標)65)、およびポリオキシエチレン・ソルビタン・モノオレート(Tween(登録商標)80)を含む。
【0029】
噴霧、浸漬、回転、はけ塗りなどの当技術分野で知られている技術を使用して、脂質/薬剤溶液を多孔性基材に適用することができる。1つの実施例では、多孔性基材でコーティングされたデバイスを真空下で浸漬することによって、脂質/薬剤溶液を適用する。別の実施例では、浸漬後に、デバイスをさらに回転プロセスにかけて、コーティングしたデバイス表面上の余分な脂質/薬剤溶液を除去する。
【0030】
コーティングプロセスを完遂後に、残留溶媒は、熱、真空、または空気中での室温乾燥を適用するなどの当技術分野で知られている技術を使用して、除去することができる。1つの実施例では、残留溶媒を除去ためにコーティングしたデバイスを真空下に配置する。1つの実施例では、コーティングした医療デバイスを、真空条件か、またはデバイスが最小の湿度に晒される環境(例えば、乾燥器中)に配置することができる。
【0031】
1つの実施例では、コーティングしたデバイスは、コーティングを安定させる期間の間、そのまま保持することが可能であり、これにより薬剤放出プロフィールの再現性が改良し得る。例えば、ある不安定なコーティングは、破裂状溶出曲線(例えば、コーティングの初期の薬剤含量の30%以上が24時間以内に放出される)を生成し得る。1つの実施例では、コーティングは、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも1カ月の間だけ安定化される。1つの実施例では、コーティングしたデバイスは、コーティングが最小量の湿度にさらされる条件下で安定化される。安定化したコーティングは、再現可能な溶出曲線をもたらして、破裂状挙動を抑えることができる。
【0032】
1つの実施例では、コーティングは持続して薬物を送出することができる。1つの実施例では、薬学的に有効な薬剤の少なくとも50%は、7日間〜6カ月間、7日間〜3カ月間、7日間〜2カ月間、7日間〜1カ月間、10日間〜1年間、10日間〜6カ月間、10日間〜2カ月間、10日間〜1カ月間、または30〜40日間にわたって,多孔性基材から放出される。
【0033】
1つの実施例では、多孔性基材は、例えば、当技術分野で生物学的に適合すると知られているセラミックから選択される。例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、シリカ、酸化インジウムなどの金属酸化物、炭化ケイ素などの金属炭化物、ヒドロキシアパタイト、リン酸八カルシウム、α型およびβ型リン酸三カルシウム、非晶質リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、カルシウム不足ヒドロキシアパタイトおよびリン酸四カルシウムから状態で選択される。
【0034】
1つの実施例は、ステントの少なくとも一部を被覆する金属ステントを提供する。金属ステントは、多孔性のリン酸カルシウムを含む少なくとも1つのコーティングを含む。リン酸カルシウムは、多くの生物学的に適合する表面を提供するために、金属またはポリマーで作られたデバイスをコーティングするために使用され得る。リン酸カルシウムは、体中に自然に存在し、毒性が無く、炎症性でなく、生体吸収性のものなので、しばしば好ましいものである。そのようなデバイスあるいはコーティングは、矯正デバイス中での細胞と骨の成長のためのマトリツクスとして、または、デバイスからの治療薬の放出を制御するために作用し得る。血管ステントの分野では、リン酸カルシウムコーティングは、血管内膜の内皮細胞によって急速に被覆されることができる生体適合性表面を供給することができるので、魅力的であり得る。
【0035】
1つの実施例では、コーティングは、ヒドロキシアパタイトコーティングである。ヒドロキシアパタイトは、通常は、天然の骨組成の70%を構成し、良い生物学的適合性を提供することができる。ヒドロキシアパタイトは、炎症性反応または異物反応が無いか、または最小にすることが示されてきた。多孔性ヒドロキシアパタイト層は、本明細書に開示されるようなさまざまな技術を使用して、医療デバイスの表面に堆積することができる。
【0036】
1つの実施例では、担体、例えば、少なくとも1つの脂質は、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤のための非水溶性媒体として作用する柔軟な形態である。担体(例えば、脂質)は、基材の細孔中に薬剤を含むのを助けることができる、および/または、基材から薬剤を放出するのを支援することができる。1つの実施例では、担体(例えば、脂質)は、生物分解性物質であり、薬剤を、遅い溶解、生分解、または薬剤の遅い放出によって、放出することができる。また、別の実施例では、脂質は、脂質と薬剤との相対的な混和性により、放出速度を遅らせるかまたは増加させることによって、薬剤の放出を制御するのを助けることができる。別の実施例では、薬剤は、多孔性基材から放出することができ、多孔性基材中で、脂質は、多孔性基材でカプセル(ナノカプセル、ミクロカプセル)、液滴(ミクロ液滴、ナノ液滴)、球体(ミクロスフェア、ナノスフェア)、および/または、ミセルなどの粒子状の形態を取る。1つの実施例では、粒子の放出は、組成物への少なくとも1つの表面活性剤の添加により支援される。少なくとも1つの表面活性剤は、本明細書に開示されるイオン系または非イオン系界面活性剤のいずれかであり得る。1つの実施例では、薬剤は、脂質粒子中に閉じこめられる。他の実施例では、薬剤は溶解して、分散して、または別の方法で脂質粒子に付着されるが、コーティングから放出される。そのような薬剤/脂質粒子は、細胞による治療薬剤の摂取を増加させ得、および/または、生理流体中での治療薬の溶解牲を減少させることによって、周辺組織中の薬剤の滞留時間の増加を高め得る。そのいずれも薬剤の潜在能力を高め得る。
【0037】
1つの実施例では、デバイスは、ステントであり、脂質と、薬学的に有効な薬剤とを含む組成物は、多孔性基材を含浸するか、またはコーティングするかのさまざまな形態で堆積することができる。従って、1つの実施例は、デバイスの少なくとも一部を被覆する少なくとも1つのコーティングを含むステントを提供し、前記少なくとも1つのコーティングは、多孔性基材と、多孔性基材をコーティング、および/または、含浸する組成物を含み、前記組成物は、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、少なくとも1つの脂質とを含む。
【0038】
1つの実施例は、組成物は、フィルム、リポソーム、ナノカプセル、ミクロカプセル、ミクロ液滴、ナノ液滴、ミクロスフェア、ナノスフェア、ミセル、およびそれらの組合せの形態である。別の実施例では、組成物は、ステントからフィルム、リポソームナノカプセル、ミクロカプセル、ミクロ液滴、ナノ液滴、ミクロスフェア、ナノスフェア、ミセル、およびそれの組合せの形態のステントから放出される。
【0039】
1つの実施例では、ステントは、インプラントされると、脂質ベース粒子と関連する薬学的に有効な薬剤を放出する。1つの実施例では、薬学的に有効な薬剤は、粒子中に閉じこめられる。粒子は、リポソーム、ナノカプセル、ミクロカプセル、ミクロ液滴、ナノ液滴、ミクロスフェア、ナノスフェア、ミセル、およびそれらの組合せの形態を取ることができる。
【0040】
ある例では、マクロファージは、約1〜2μmまたはそれより大きい直径を持つ粒子を拾い上げることができる。脂質ベース粒子は、マクロファージによる取り込みを増加させるために、および再狭窄の炎症成分などの炎症を減少させるために、約1〜2μmまたはそれより大きい範囲の直径を持つように設計することができる。1つの実施例では、組成物は、約1〜2μmまたはそれより大きい直径を持つ治療薬剤を含む粒子(例えば、カプセル(ナノカプセル、ミクロカプセル)、液滴(ミクロ液滴、ナノ液滴)、球体(ミクロスフェア、ナノスフェア)、および/または、ミセル)を放出して、マクロファージを禁止し炎症を防ぐ。1つの実施例では、粒子の少なくとも5%、または、少なくとも10%、または少なくとも25%は、約1〜2μmまたはそれより大きい直径を持ち、それにより、マクロファージによるとりこみの可能性を増加する。
【0041】
粒径分布は、薬剤を異なる形態で放出することを可能にでき、かつ薬剤が以下の2つの機能を示すことを可能にする。(1)約1〜2μmまたはそれより大きい直径を持つ粒子と関連する薬剤が炎症反応などの第1条件を治療するために、マクロファージによって拾い上げられることができ、(2)自由形態または約1〜2μm未満の粒子に関連する同じ薬剤は、第2条件、例えば、増殖を治療することができる。1つの実施例では、再狭窄の治療のために、抗増殖剤であることが知られている薬剤は、マクロファージによって生成される多くの炎症作用物を低減するために、1μmまたは2μmより大きい粒子と関連づけられて放出することができるが、一方、自由形態の薬剤または、1μmまたは2μm未満の粒子に関連づけられる薬剤は、平滑筋細胞の増殖を抑制するように作用することができる。
【0042】
脂質/薬剤の組成物は、多くの方法で、基材上または基材中に堆積することができる。1つの実施例では、少なくとも1つの脂質を第1溶媒に溶解し、薬剤を第2溶媒に溶解する。ここで、第1溶媒と第2溶媒は、混和性であるか同等物である(この場合、脂質と薬剤は、一つの溶液を形成するために溶媒中に交互に溶解することができる)。次に、脂質を含む溶液を薬物を含む溶液と混合し、予め決められた割合の治療薬と脂質を持つ溶液を得る。この溶液は、当技術分野で知られている方法を使用してミクロスフェア/ナノスフェアに形成され、多孔性基材中または多孔性基材上に堆積することができる。1つの例では、溶液は、水溶液(例えば、o/w油中水エマルジョン)に加え、均質化して、薬剤を含む脂質のミクロスフェア/ナノスフェアを生成することができる。次に、均質化した組成物は、当技術分野で知られている噴霧、液浸、液浸とスピンまたは他の方法で多孔性基材中に堆積させることができる。別の実施例では、所望のサイズのミクロスフェア/ナノスフェアを製造するために、エマルジョンを濾過することができる。次に、ミクロスフェア/ナノスフェアを別の溶媒または溶液中に懸濁し、噴霧、液浸、液浸とスピンなどの当技術分野に知られている方法を使用して基材中に堆積することができる。水溶液(例えば、体液)に晒すと、ミクロスフェア/ナノスフェアは、ステントを取り囲む液体中で薬剤をカプセル化しながら再懸濁することができし、マクロファージまたは他の種類の細胞によって取り上げられることができる。
【0043】
多孔性基材中の薬剤は、親水性、疎水性、または両親媒性であり得る。1つの実施例では、多孔性基材に含浸する薬剤は、少なくとも1つの脂質中で可溶性である。別の実施例では、薬剤は少なくとも1つの脂質の中で不溶性である。
【0044】
少なくとも1つの脂質は、中性か、または帯電し得る。中性脂質は、モノアシルグリセロール、ジグリセリド、トリグリセリド、セラミド、ステロール、ステロールエステル、ワックス、トコフェロール、モノアルキル・ジアシルグリセロール、少なくとも8つの炭素原子の炭化水素鎖を含む脂肪族アルコール脂肪族アルコール(例えば、C〜C30脂肪族アルコール、または少なくとも12個の炭素原子の炭化水素鎖、例えば、C12〜C30脂肪族アルコール)、N−モノアシルスフィンゴシン、N,O−ジアシルスフィンゴシン、およびトリアシルスフィンゴシンを含む。1つの実施例では、モノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドは、少なくとも8つの炭素原子の鎖長、または少なくとも12個の炭素原子の鎖長などのような、少なくとも4つの炭素原子の鎖長を有する脂肪酸から誘導される。
【0045】
1つの実施例では、少なくとも1つの脂質は、植物油、動物油、および合成脂質から選択される。1つの実施例では、少なくとも1つの脂質は、トリグリセリドと植物油とから選択される。
【0046】
帯電された脂質は、リン脂質、脂肪酸、および脂肪族アミンを含む。例示のリン脂質は、ジアシルグリセリンリン酸、モノアシルグリセリンリン酸、カルジオリピン、プラスマローゲン、スフィンゴ脂質、および糖脂質を含んでいる。脂肪酸と脂肪族アミンは、少なくとも8つの炭素原子の鎖長、または少なくとも12個の炭素原子の鎖長を持ち得る。
【0047】
脂質は、不溶性であるか、または水にわずかに溶ける。1つの実施例では、少なくとも1つの脂質の10重量%未満は、水に可溶性である。例えば、少なくとも1つの脂質の5重量%未満、少なくとも1つの脂質の3重量%未満、少なくとも1つの脂質の1重量%未満、または、少なくとも1つの脂質の0.1重量%未満は、水に可溶性である。
【0048】
例示の脂質は、大豆油、綿実油、なたね油、胡麻油、トウモロコシ油、落花生油、ベニバナ油、魚油、トリオレイン、トリリノレイン、トリパルミチン、トリスチアリン、トリミリスチン、トリアラキドニン、ひまし油、コレステロール、およびコレステリルオレアート、コレステリルリノレアート、ミリスチン酸コレステリル、コレステリルパルミチン酸塩、コレステリルアラキデートなどのコレステロール誘導体を含む。
【0049】
1つの実施例では、少なくとも1つの脂質は、脂肪酸、脂肪族アミン、および中性脂質から選択される。
【0050】
1つの実施例では、少なくとも1つの脂質に加えて、組成物は、さらに、少なくとも1つの追加の脂質を含む。例示の追加の脂質は、リン脂質、糖脂質、スフィンゴミエリン、セレブロシド、ガングリオシド、およびスルファチドを含む。
【0051】
これらの種類の脂質と他の脂質の例は、2007年6月7日に出願された米国特許仮出願第60/952,565号に開示され、その開示は、引用により本明細書中に合体される。
【0052】
少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤は、抗炎症剤、抗増殖剤、親治癒剤、遺伝子治療剤、細胞外基材調節因子、抗血栓剤、抗血小板剤、抗腫瘍性剤、抗脈管形成剤、抗血管形成剤、アンチセンス剤、抗凝血薬、抗生物質、骨形成たん白質、インテグリン(ペプチド類)、および再狭窄のジスインテグリン(ペプチドとたんぱく質)阻害剤、平滑筋細胞阻害剤、免疫抑制剤、抗血管形成剤、パクリタキセル、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、ビオリムス、ピメクロリムス、ミドスタウリン、ビスホスホネート(例えば、ゾレドロニック酸)、ヘパリン、ゲンタマイシン、またはメシル酸イマチニブ(グリーベック)であり得る。
【0053】
例示の抗炎症剤は、ピメクロリムス、副腎皮質ステロイド(例えば、コルチソル、コーチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、6α−メチルプレドニソロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、およびデキサメサゾン)、非ステロイド剤、(アスピリンなどのサリチル酸誘導体、アセトアミノフェンなどのパラ−アミノフェノール誘導体、インドールとインデン酢酸(例えば、インドメタシン、スリンダク、およびエトダラック)、ヘテロアリール酢酸(例えば、トルメチン、ジクロフェナク、およびケトロラク)、アリルプロピオン酸(イブプロフェンと誘導体)、アントラニル酸(メフェナム酸、およびメクロフェナム酸)、エノール酸(ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、およびオキシフェンタトラゾン)を含む。例示の抗増殖剤は、シロリムス、エベロリムス、アクチノマイシンD(ActD)、タクソール、パクリタキセル、およびミドスタウリンを含む。例示の親治癒剤は、エストラジオールを含む。例示の遺伝子治療剤は、例えば、VEGF遺伝子などの遺伝子配送ベクターとc−mycアンチセンスを含む。例示の細胞外基材調節因子は、バチマスタットを含む。例示の抗血栓剤/抗血小板剤は、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン、プロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(例えば、合成抗トロンビン)、ジピリダモール、糖たん白IIb/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト、組換え型ヒルジン、およびトロンビン抑制因子を含んでいる。例示の抗血管形成剤は、トリホスホアミドを含む。例示のアンチセンス薬剤は、オリゴヌクレオチドと組合せを含む。例示の抗凝血薬は、ヒルジン、ヘパリン、合成ヘパリン塩、および他のトロンビン阻害剤を含む。例示の抗生物質は、バンコマイシン、ダクチノマイシン(例えば、アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、およびイダルビシンを含む。例示のジスインテグリンは、サカチリンペプチドを含む。また、上記例示の誘導体と類似物を含む。
【0054】
他の例示のクラスの薬剤は、再狭窄を禁止する薬剤、平滑筋細胞阻害剤、免疫抑制因子剤、および抗原剤を含む。
【0055】
例示の薬剤は、シロリムス、パクリタキセル、タクロリムス、ヘパリン、ピメクロリムス、ミドスタウリン、メシル酸イマチニブ(グリーベック)、およびビスホスホネートを含む。
【0056】
組成物中の薬剤濃度は、特定の標的細胞、疾病程度、内腔タイプなどに依存して適合させることができる。1つの実施例では、脂質膜の薬剤濃度は、固体膜の総重量に対して0.001重量%〜75重量%の濃度範囲、例えば、固体膜の総重量に対して0.1重量%〜50重量%の濃度範囲であり得る。別の実施例では、脂質膜の薬剤濃度は、固体膜の総重量に対して0.01重量%〜40重量%の濃度範囲、例えば、固体膜の総重量に対して0.1重量%〜20重量%の濃度範囲であり得る。別の実施例では、脂質膜の薬剤濃度は、固体膜の総重量に対して1重量%〜50重量%、2重量%〜45重量%、5重量%〜40重量%、または、10重量%〜35重量%の濃度範囲であり得る。別の実施例では、薬剤充填は、与えられたステント構成のmm長さ当たり0.1ng〜5μgの範囲であり得る。例えば、薬剤充填は、1ng〜5μg、0.1ng〜1μg、1ng〜1μg、0.1ng〜100μg、0.1μg〜5μg、0.1μg〜1μg、または、1μg〜5μgの範囲であり得る。
【0057】
1つの実施例では、セラミックなどの生物学的に適合する基材は、血管の内膜の内皮細胞の成長、すなわち、内皮化を促進することができる表面を提供するために、医療デバイス上に提供することができる。以前では、薬剤溶出ステントは、分解可能でない芳香族ポリマコーティングから抗増殖剤を溶出するために開発され、現在、再狭窄の発生をさらに減少させるために使用されている。市販の薬剤溶出ステント、例えば、シロリムスを溶出するCypher(登録商標)、パクリタキセルを溶出するTaxus(登録商標)ステントは、内皮化を促進しないが、たぶん非分解性ポリマーのためである。
【0058】
1つの実施例では、水溶液または体液による組成物(例えば、脂質/薬剤)の吸収のときに、生物学的に適合しているセラミックの表面は、体液にさらされる。セラミックは、体中に1年または数年の間だけ存続することができる。安定して持続するコーティングは、体中では好ましくないものである。なぜなら、内皮化は、ヒドロキシアパタイトコーティングなどの生物学的に適合するセラミック上で明らかにされたからである。
【0059】
1つの実施例では、多孔性基材コーティングの厚さは、1つまたはそれ以上の脂質と、1つまたはそれ以上の薬学的に有効な薬剤と、を含む組成物の堆積に必要な容積を提供するように調整することができる。医療デバイスの表面への多孔性基材コーティングの接着は、多孔性基材がインプラントの間、医療デバイスの表面から剥離しないようなものであるべきである。
【0060】
1つの実施例では、多孔性基材は、10μmまたはそれ未満の厚さを有する。別の実施例では、例えば、デバイスが整形外科のインプラントの場合、多孔性基材は、10μm〜5mmの範囲の厚さ、例えば、100μm〜1mmの範囲の厚さであり得る。
【0061】
別の実施例では、デバイスは、ステントであり、基材の厚さは、ステントの取り付けと拡張の間にステントに接着された状態で残っているために、十分に可撓性のあるコーティングを提供するように選択される。典型的な取り付け工程は、メッシュ状のステントをカテーテルのバルーンにクリンプし、それにより、直径を元の直径の75%、または65%、または50%に低減する。ステントに取り付けられたバルーンを、ステントを体の内腔の壁、例えば、動脈の内腔壁に隣接して配置するために膨張すると、ステンレス鋼の場合のステントは、クリンプされた直径の2倍または3倍まで拡張することができる。例えば、1.7mmの元の直径を持つステントは、1.0mmの直径までクリンプで低減することができる。次に、ステントは、クリンプした直径1.0mmから3.0mmまで拡張することができる。従って、1つの実施例では、基材は、2μm未満の厚みを持つ、例えば、1μm未満の厚さまたは0.5μm未満の厚さを持つ。
【0062】
1つの実施例では、コーティング中のリン酸カルシウムは、多孔性であり、30〜70重量%の範囲の細孔容積を持ち、0.3μm〜0.6μmの範囲の平均細孔直径を持つ。他の実施例では、細孔容積は、30〜60重量%、40〜60重量%、30〜50重量%、または40〜50重量%の範囲であり、または50重量%である。さらに別の実施例では、平均細孔直径は、0.4〜0.6μm、0.3〜0.5μm、0.4〜0.5μmの範囲であり、または、0.5μmであり得る。開示された厚さ、細孔容積または平均細孔直径の様々な組合せを示すリン酸カルシウムもまた、調整することができる。
【0063】
1つの実施例では、基材は、ステントの表面によく接着し、バルーンカテーテル上への取付けと拡張による動脈への配置の間に、重大な亀裂の形成は無く、またステントからの剥がれ落ちも無い。1つの実施例では、重大な亀裂を形成しないコーティングは、300nm未満程度の小さな亀裂、例えば、200nm未満の亀裂または100nm未満の小さな亀裂の形成を持つことはできる。
【0064】
別の実施例では、コーティングは、少なくとも1年間のインプラント寿命のための機械的疲労欠陥からデバイスの安全性を示す「治療的心臓デバイスのための研究とマーケティングの応用の提案に対するFDAドラフトガイダンス」に従う要件を満たす疲労試験に耐えることができる。疲労試験は、ステントをインプラントした血管の拡張と収縮によるステント疲労をシミュレートするように設計されている。例えば、コーティングされたステントは、37℃±3℃のリン酸緩衝液中で、生体内での1年と同等物、例えば、1分あたり50〜100ビートの心拍動速度をシミュレートする約4000万サイクルの疲労応力をシミュレートすることができるエンデュラテック疲労試験機(Electro Force(商標登録)9100シリーズ、エンデュラテック・シクテム・コーポレーション、ミネソタ州、米国)を用いて検査することができる。
【0065】
1つの実施例では、基材は、ヒドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウムコーティングである。リン酸カルシウムコーティングは、電気化学的堆積(EDC)または電気泳動堆積(EPD)によって堆積してもよい。別の実施例では、コーティングは、ゾルゲル(SG)またはエーロゾルゲル(ASG)プロセスで堆積してもよい。別の実施例では、コーティングは、生体模倣的な(BM)プロセスで堆積してもよい。別の実施例では、コーティングは、リン酸カルシウムセメントプロセスで堆積してもよい。セメントプロセスの1つの実施例では、リン酸カルシウムセメントコーティングは、約16nmの細孔径と、約45%の気孔率とを持ち、分散または溶解している治療薬とを含むものであり、米国特許第6,730,324号で以前に説明されたような、ゾル‐ゲルヒドロキシアパタイトのサブミクロンのコーティング厚さで前コーティングされたステントに適用される。米国特許第6,730,324号の開示は、本明細書中に引用により合体される。薬剤を内部に封じ込めて得られるコーティングと薬剤の放出は、コーティングの溶解によって制御される。
【0066】
リン酸カルシウム、例えば、結晶性ヒドロキシアパタイトは、1年間または数年間デバイス上に持続することができる。結晶性ヒドロキシアパタイトコーティングは、通常は、コーティングの溶解によってではなく、細孔径と細孔形状によって制御された速度で薬剤を放出する。しかしながら、ヒドロキシアパタイトコーティングなどの安定して持続するリン酸カルシウムコーティングは、内皮化が結晶性ヒドロキシアパタイト上で明らかにされたので、体中では好ましくない。対照的に、先行技術の薬剤溶出ステントのポリマコーティングは、内皮化を促進しない。
【0067】
別の実施例は、ステントの少なくとも一部を被覆する少なくとも1つのコーティングを有する金属ステントを提供する。前記少なくとも1つのコーティングは、2μm未満の厚みを持ち、かつ
30〜70%の範囲の細孔容積と0.3μm〜0.6μmの範囲の平均細孔直径とを持つ多孔性リン酸カルシウムと、
前記多孔性リン酸カルシウムを含浸する少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、を有し、前記コーティングは、ポリマー物質フリーである。
【0068】
別の実施例は、
多孔性基材と、
前記多孔性基材を含浸する組成物とを有し、前記組成物が、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、ポリマーフリーの生体再吸収可能な担体と、
を含むステントを提供する。
【0069】
多孔性基材は、ステント自体か、または、少なくともステントの一部を被覆する別の物質、例えば、金属酸化物、金属炭化物、およびリン酸カルシウムであり得る。
【0070】
ある実施例では、本明細書で使用される「生体再吸収可能」は、分解できる物質、退化できる物質、劣化できる物質、または解重合できる物質、または、担体が得られる体液中で可溶性となるのを可能にするか、もし担体が不溶性なら、体液中に懸濁して、体液の流れを閉そくせずに、インプラント部位から遠くに移送する他の機構をいう。体液は、血液、尿、唾液、リンパ液、血漿、胃液、または、胆液、または、腸液、精液、粘液または体液を含むが、これらに限定されず、哺乳動物の体中にあるいかなる流体であってもよい。1つの実施例では、生分解可能なポリマーは、上記に定義されるように、可溶性で劣化できるものであるか、または、可溶性の凝集体、および/または、以下の不溶性物質を含む劣化する物質である。この不溶性物質は、可溶性の再吸収、および/または、劣化する物質とともに、体液中に懸濁され、体液の流れを閉塞せずにインプラント部位から遠くに移送することができるように、十分に微細な大きさである。最終的に、劣化した化合物は、発汗または尿または糞による排泄によって除去される、または、溶解し、劣化し、腐食し、または別の方法で可溶成分中に代謝され、次に、体から除去される。
【0071】
例示の生体再吸収可能な担体は、ポリマーフリー担体、例えば、本明細書に開示されたような脂質、その混合物、または、脂質でないもの、例えば、鉱油などのアゾンと炭化水素を含む柔軟物質を含む。
【0072】
脂質(ひまし油によって例示されるトリグリセリドなど)は、インプラント部位で1つまたはそれ以上のいくつかの機構によって再吸収され得る。脂質は、局所的な体液中にずっと分子レベルで溶解し得る。脂質は、1つまたはそれ以上の分子を血清アルブミン、リポたんぱく、または、体液中のたん白質に結合する同様の脂質中にずっと溶解し得る。脂質は、インプラント部位で、化学的にまたは酵素により、より可溶性の成分に、例えば、脂肪酸、モノグリセリドまたはジグリセリドに、分解され得る。脂質は、脂質粒子または脂質液滴として吸収され得る。
【0073】
1つの実施例では、リン酸カルシウムコーティングの細孔容積と細孔径は、薬学的に有効な薬剤の放出を制御するために、貯蔵所として作用するように選択することができる。1つの実施例では、薬学的に有効な薬剤は、再狭窄の治療のために使用される薬剤から選択される。例えば、抗炎症剤、抗増殖性物質、親治癒剤、遺伝子治療剤、細胞外基材調節因子、抗血栓剤、抗血小板剤、抗腫瘍性剤、抗脈管形成剤、抗血管形成剤、アンチセンス剤、抗凝血薬、抗生物質、骨形成たん白質、インテグリン(ペプチド類)、およびジスインテグリン(ペプチドとたんぱく質)または、本明細書に開示された薬剤とそれらの混合物から選択される。他の例示のクラスの薬剤は、再狭窄を禁止する薬剤、平滑筋細胞阻害剤、免疫抑制剤、および抗原剤を含む。例示の薬剤は、シロリムス、パクリタキセル、タクロリムス、ヘパリン、ピメクロリムス、ミドスタウリン、メシル酸イマチニブ(グリーベック)およびビスホスホネートを含む。
【0074】
先行技術の薬剤溶出ステント用のポリマーコーティングからの薬剤放出は、ポリマコーティングを通過する薬剤の拡散速度に実質的に依存する。拡散は、薬物放出のための適切な機構であり得るが、ポリマコーティングからの薬物放出速度は、所望時間にわたって所望量の薬剤を体内に届けるには遅すぎ得る。その結果、薬剤のかなりの量は、ポリマコーティング中に残り得る。対照的に、本明細書に開示された1つの実施例は、コーティングから放出される薬剤に対する経路を供給するために、細孔容積と平均細孔径とを選択し、それにより、ポリマコーティングと比べて、薬物放出速度を増加させることが可能である。別の実施例では、薬物放出速度を制御するために、これらの細孔特性を適合することができる。1つの実施例では、薬剤の少なくとも50%は、ステントから少なくとも7日間、少なくとも10日間、または1年間にわたって放出される。別の実施例では、薬剤の少なくとも50%は、ステントから7日間〜6カ月、7日間〜3カ月、7日間〜2カ月、7日間〜1カ月、10日間〜1年、10日間〜6カ月、10日間〜2カ月、または、10日間〜1カ月の範囲の間にわたって放出される。
【0075】
別の実施例は、
多孔性基材と、
前記多孔性基材の少なくともの一部を含浸する組成物とを含み、前記組成物は、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、微粒子でない生体吸収可能な担体を含むステントを提供する。
【0076】
別の実施例は、
ステントの少なくとも一部を被覆する多孔性基材であって、金属酸化物、金属炭化物、およびリン酸カルシウムから選択されるセラミックを含む、前記多孔性基材と、
前記多孔性基材の少なくとも一部を含浸する組成物を含み、前記組成物が、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と生体再吸収可能な担体とを含むステントを提供する。
【0077】
これらの実施例では、生体再吸収可能な担体は、本明細書に開示されたポリマーフリー担体、例えば、本明細書に開示された脂質とその混合物、または、柔軟な脂質でない物質(例えば、アゾン、鉱油など)、または、生体再吸収可能なポリマーのいずれかを含むことができる。例示の生体再吸収可能なポリマーは、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリエステル、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、ポリハイドロオキシ酪酸、ポリハイドロオキシバレレート、ポリアルキレンシュウ酸エステル、ポリアルキレンコハク酸塩、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニールピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール(PAG)、ポリアルキルカーボネート、キチン、キトサン、でんぷん、フィブリン、ポリ乳酸やポリグリコール酸などのポリヒドロキシ酸、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリ(l−ラクチド−コ−トリメチレン−カーボネート)、ポリ(d,l−ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(d,l−ラクチド)、ポリ(d,l−ラクチド−コ−グリコリド)、ポリヒドロキシセルロース、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、たんぱく質、およびコラーゲンなどの多糖体、ヒアルロン酸、アルブミン、ゼラチン、セルロース、デキストラン、フィブリノーゲン、およびそれらの混合物と、コポリマーとを含む。1つの実施例では、生体再吸収可能なポリマーは、生物学的に適合するものである。この生体適合ポリマーは、生きている組織または生きているシステムと適合性があり、十分に無毒であり、または傷つけるものではなく、(もしあれば)最小量の免疫学的反応または拒否反応を引き起こす。
【0078】
1つの実施例では、微粒子でない担体は、500nmより大きい直径をもつ。例えば、1μmより大きい、2μmより大きい、5μmより大きい、10μmより大きい、25μmより大きい、100μmより大きい、500μmより大きい、または1mmより大きい直径を持つ。別の実施例では、微粒子でない担体は、定義できる直径を持たない、例えば、連続膜、または500nmより大きい寸法を持つドメインを持つ連続でない膜を持つ。例えば、1μmより大きい、2μmより大きい、5μmより大きい、10μmより大きい、25μmより大きい、100μmより大きい、500μmより大きい、または1mmより大きい寸法を持つドメインを有する。
【0079】
別の実施例は、
ステントの少なくとも一部を被覆し、セラミックを含む多孔性基材と、
前記多孔性基材を含浸する組成物とを含み、前記組成物が、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、ポリマーフリーの生体再吸収可能な担体と含むステントを提供する。
【0080】
別の実施例は、
多孔性の金属基材と、
前記多孔性基材を含浸する組成物と、を含み、前記組成物が、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、ポリマーフリーの生体再吸収可能な担体とを含むステントを提供する。
【0081】
1つの実施例では、多孔性金属基材は、それ自身がステントである。別の実施例では、多孔性金属基材は、ステントの少なくとも一部を被覆する。1つの実施例では、多孔性金属基材は、例えば、ステント用に通常使用される金属、例えば、ステンレス鋼、CoCr、チタン、チタン合金、およびNiTiから選択される。
【0082】
別の実施例は、
多孔性のポリマー基材と、
前記多孔性のポリマー基材を含浸する組成物とを含み、前記組成物が、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、ポリマーフリーな生体再吸収可能な担体とを含むステントを提供する。
【0083】
1つの実施例では、ステントは、多孔性ポリマーを含み、それにより、多孔性のポリマー表面を提供する。別の実施例では、多孔性のポリマー基材は、金属ステントまたはポリマーステントの少なくとも一部を被覆する。どちらの実施例でも、適切なポリマーは、本明細書に開示された非吸収可能なポリマーと生体再吸収可能なポリマーのいずれかを含んでいる。
【0084】
別の実施例は、
ステントの少なくとも一部を被覆し、かつ少なくとも1つのリン酸カルシウムを含む多孔性基材と、
前記多孔性基材を含浸する組成物とを含み、前記組成物が、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、生体再吸収可能な担体、例えば、ポリマーフリー生体再吸収可能な担体を含む、ステントを提供する。
【0085】
1つの実施例では、多孔性基材は、ヒドロキシアパタイトを含む。1つの実施例では、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤は、抗炎症剤と抗増殖剤とから選ばれる。1つの実施例では、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤は、ミドスタウリンとシロリムスから選択される。
【0086】
別の実施例は、
ステントの少なくとも一部を被覆し、かつヒドロキシアパタイトを含む多孔性基材と、
前記多孔性基材を含浸する組成物とを含み、前記組成物が、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、生体再吸収可能な担体、例えば、ポリマーフリーな生体再吸収可能な担体と、を含むステントを提供する。
【0087】
1つの実施例では、生体再吸収可能な担体は、トリグリセリドなどの少なくとも1つの脂質を含む。1つの実施例では、少なくとも1つの脂質は、ひまし油を含む。
【0088】
1つの実施例では、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤は、抗炎症剤と抗増殖剤とから選択される。1つの実施例では、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤は、ミドスタウリンとシロリムスから選択される。
【0089】
別の実施例は、
30〜70%の範囲の細孔容積と、0.3μm〜0.6μmの範囲の平均細孔直径と、を持ち、ステントの少なくとも一部を被覆する多孔性基材と、
前記多孔性基材を含浸する組成物とを含み、前記組成物が、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、生体再吸収可能な担体、例えば、ポリマーフリーの生体再吸収可能な担体を含む、ステントを提供する。
【0090】
1つの実施例では、多孔性基材は、セラミック、例えば、本明細書で開示されたセラミック、例えば、リン酸カルシウムを含む。1つの実施例では、多孔性基材は、ヒドロキシアパタイトを含む。1つの実施例では、担体は、少なくとも1つの脂質、例えば、トリグリセリドを含む。1つの実施例では、少なくとも1つの脂質は、ひまし油を含む。1つの実施例では、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤は、抗炎症剤と抗増殖剤とから選ばれる。1つの実施例では、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤は、ミドスタウリンとシロリムスから選択される。
【0091】
別の実施例は、
第1のアルカリ性溶液でステンレス鋼ステントをエッチングする工程と、
前記ステンレス鋼ステントの少なくとも一部を被覆するために、少なくとも1つのリン酸カルシウムを電気化学的に堆積してコーティングしたステントを形成する工程と、
第2アルカリ性溶液にコーティングしたステントをさらす工程と、
を有する、コーティングしたステントを製造する方法を提供する。
【0092】
1つの実施例では、第1のアルカリ性溶液は、水酸化ナトリウム溶液である。1つの実施例では、水酸化ナトリウム溶液は、ステンレス鋼ステントに200nmまたはそれ未満の表面粗さ、例えば、100nmまたはそれ未満の表面粗さ、を提供するのに十分な濃度を有する。この表面粗さは、平滑なステントの表面に対する接着と比べて、ステントへのリン酸カルシウムの接着を改良する。オプションに、ステンレス鋼ステントを加熱工程、例えば、エッチング工程の後に、さらに、400℃〜600℃の範囲の温度で加熱する工程、にさらすことができる。
【0093】
電気化学的堆積は、所望の細孔特性を得るために変更することができる。変数は、電流密度(例えば、0.05〜2mA/cmの範囲、例えば、0.5〜2mA/cm)、堆積時間(例えば、2分以下、例えば、1分以下)、電解質組成、pH、および濃度を含む。そのような変数は、Tsui, Manus Pui-Hungの「電気化学的堆積による冠状ステント上へのリン酸カルシウムコーティング」(M. A. Sc. diss., University of British Columbia, University, 2006)に記載されたように、巧みに変更することができ、この開示は、引用により本明細書中に合体される。
【0094】
1つの実施例では、電気化学的に堆積したリン酸カルシウムは、結晶性ヒドロキシアパタイトとリン酸二カルシウム二水和物を部分的に含む混合相コーティングである。実質的に純粋なヒドロキシアパタイトは、コーティングしたステントを第2のアルカリ性溶液にさらし、続いて、400℃〜750℃の範囲の温度で、例えば、400℃〜600℃の範囲の温度で、コーティングされたステントを加熱することによって得ることができる。層は、X線回折、または当技術分野で知られている他の方法でモニターすることができる。1つの実施例では、この方法は、多孔性のリン酸カルシウム、例えば、多孔性のヒドロキシアパタイトをもたらす。多孔性のリン酸カルシウム(例えば、多孔性のヒドロキシアパタイト)は、体液中で少なくとも1年間または少なくとも2年間の間でさえ安定であり、それにより、内皮化のための十分な時間がリン酸カルシウム表面上に生じることを可能にすることができる。
【0095】
1つの実施例では、カルシウム塩とリン酸塩の組成比は、堆積後に所望のリン酸カルシウムを与えるように選択される。例えば、Ca/P比は、1.0〜2.0の範囲で選択することができる。
【0096】
別の実施例では、リン酸カルシウムコーティングによる治療薬の放出速度をリン酸カルシウム自体の生体再吸収または生分解によって制御することができる。生体再吸収または生分解は、(1)生理化学的溶解、例えば、局所的なpHと生体材料の溶解牲に依存する劣化、(2)物理的崩壊、例えば、小粒子への崩壊による劣化、(3)生物学的ファクター、例えば、炎症などの局所的なpH低下をもたらす生物反応によってもたらされる劣化原因のうちの少なくとも1つまたはそれ以上の要因によって一般に制御することができる。
【0097】
1つの実施例では、生体再吸収または生分解の速度は、リン酸カルシウムの溶解特性によって制御される。一般に、より可溶性のリン酸カルシウムは、それほど可溶性でないリン酸カルシウムに比べてより急速に溶解する。より可溶性であり、従って、より急速な生物分解可能なリン酸カルシウムは、ステントからゆっくり溶出して、裸の金属ステントを残すことができる。そのような裸の金属ステントは、内皮細胞層と適合性があることが知られている。
【0098】
リン酸カルシウムの溶解牲は、表面積、密度、気孔率、組成、Ca/P比、結晶構造、結晶度などの1つまたはそれ以上の特性に依存するものであり得る。一般に、非晶質リン酸カルシウムは、部分的に結晶性のリン酸カルシウム、例えば、非晶質と結晶性のリン酸カルシウムの混合物、または少ない結晶性構造を示すリン酸カルシウム、よりも速く溶解する。そのような部分的に結晶性のリン酸カルシウムは、一般的に、全て結晶性のリン酸カルシウムよりも速く溶解する。
【0099】
1つの実施例では、リン酸カルシウムを得るためにか焼温度を選択する。別の実施例では、低い仮焼温度を、部分的に結晶リン酸カルシウムを得るために選択する。別の実施例では、低い仮焼温度を、非晶質と結晶性のリン酸カルシウムの混合物を得るために選択する。別の実施例では、さらに低い仮焼温度を、非晶質リン酸カルシウムを得るために選択する。別の実施例では、低い仮焼温度を、リン酸カルシウムの混合物を得るために選択する。
【0100】
非晶質リン酸カルシウムコーティングは、低温で、例えば、400℃未満の温度範囲で、加熱(仮焼)することにより、部分的に結晶性にすることができる。1つの実施例では、その場で堆積したリン酸カルシウムは、可溶性であり過ぎる場合があり(例えば、数時間以内で溶解する)、より高温度で加熱することによって、例えば、400℃より高い温度でより結晶性にすることができる。より可溶性の化合物から作られるコーティングは、より少ない可溶性の化合物から作られるコーティングより、より短時間で含まれる薬剤を放出する。
【0101】
様々な変数は、リン酸カルシウムの生分解に影響を与えるが、中性に近いpH環境下での一般的なオーダーの溶解度は、1つの実施例では、(最高から最低の順に)以下の通りである。
【0102】
非晶質リン酸カルシウム(ACP)>リン酸二カルシウム(DCP)>リン酸四カルシウム(TTCP)>リン酸八カルシウム(OCP)>α−リン酸三カルシウム(α−TCP)>β−リン酸三カルシウム(β−TCP)>ヒドロキシアパタイト(HAp)
1つの実施例では、コーティングは、リン酸八カルシウム、α型およびβ型リン酸三カルシウム、非晶質リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、カルシウム不足ヒドロキシアパタイト、および、リン酸四カルシウムから選択される、少なくとも1つのリン酸カルシウムを含み、例えば、コーティングは、リン酸カルシウムの純粋層またはその混合物、またはリン酸カルシウムとヒドロキシアパタイトとの混合物を含むことができる。
【0103】
別の実施例では、リン酸カルシウムの溶解度は、それらの固有の溶解度、すなわちKipに基づいて選択することができる。Kipは、DorozhkinとEppleによって「リン酸カルシウムの生物学的および医学的な重要性:Angew. Chem. Int. Ed. Eng.41: 3130-3146(2002)」に報告されている。Kipは、濃度Mのイオン積の負の対数である。様々なリン酸カルシウムのKip値を以下の表1に記載する。
【0104】
【表1】

【0105】
従って、1つの実施例は、ステントの少なくとも一部を被覆する少なくとも1つのコーティングを有する金属ステントを提供する。前記少なくとも1つのコーティングは、
前記金属ステント上に堆積した少なくとも1つのリン酸カルシウムを有し、前記少なくとも1つのリン酸カルシウムは、前記コーティングが、100未満の−log(Kip)によって決定されるような水の溶解度を持つるような、水への十分な溶解度を持つものである。
【0106】
別の実施例は、金属ステントの少なくとも一部を被覆する少なくとも1つのコーティングを有する金属ステントを提供する。前記少なくとも1つのコーティングは、
前記金属ステント上に堆積した少なくとも1つの多孔性リン酸カルシウムであって、前記少なくとも1つのコーティングが、100未満の−log(Kip)によって決定されるような水の溶解度を持つような、水への十分な溶解度を持つ、前記多孔性リン酸カルシウムと、
前記少なくとも1つの多孔性リン酸カルシウムを含浸する少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、を有する。
【0107】
1つの実施例では、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤は、担体、例えば、本明細書に開示された生体再吸収可能な担体と混合される。
【0108】
これらの実施例のいずれの場合でも、リン酸カルシウムは、カルシウムを他のイオン、例えば、ナトリウム、カリウムとの部分置換によって、および/または、マグネシウム、および/または、炭酸塩、または塩化物をリン酸塩の部分置換によって、より可溶性(より速い再吸収、より速い薬物放出)にすることができる。
【0109】
1つの実施例では、第二リン酸カルシウム二水和物と、不十分な結晶性のヒドロキシアパタイトとの混合物をステント上に電気化学的に堆積することができる。このコーティングは、中性pH中で40分間で溶解することができる。別の実施例では、このコーティングのヒドロキシアパタイトへのアルカリ処理による転換により、6.5時間で溶解するコーティングを得る。別の実施例では、アルカリで処理されたコーティングを500℃に加熱すると、4週間より長い時間で溶解する結晶性ヒドロキシアパタイトコーティングを得る。
【0110】
1つの実施例では、溶出試験をバリアン溶解装置(バリアンVK750D、バリアン株式会社、カリフォルニア州、米国)を用いて行うことができる。変数は、正確な浴温と、回転速度制御と、蒸発から溶解媒体を防ぐためのシールボトルの使用とを含む。溶出試験は、37℃の浴温と20rpmの回転速度とで行うことができる。等浸透圧性であるリン酸緩衝生理食塩水(PBS)は、一定のpH(7.4)を維持するための溶解媒体として使用することができる。燐酸緩衝生理食塩水は、10mMのリン酸塩、14OmMのNaCl、および3mMのKClを含むことができる。例えば、ECDコーティングしたステントを10mlの密封されたボトルを有する溶解装置中に配置し、ECDコーティングしたステントを溶解によるコーティングの重量減少を決定するために30分〜4週間の間、計量した。
【0111】
1つの実施例では、少なくとも1つのリン酸カルシウムを単層としてステント上に堆積する。別の実施例では、単一のリン酸カルシウムを複層として堆積する。別の実施例では、リン酸カルシウムを1層中に堆積し、1つまたはそれ以上の他のリン酸カルシウムの1つまたはそれ以上の層を第1層上に連続的に堆積することができる。
【0112】
別の実施例は、再狭窄と関連する少なくとも1つの疾病または体調を、再吸収に対して安定である少なくとも1つの多孔性リン酸カルシウムでコーティングしたステントを使用して治療する方法を提供する。この方法では、薬剤が前記多孔性リン酸カルシウムの細孔を通って放出することができる。別の実施例では、ステントは、リン酸カルシウムを含浸する薬剤をかなり早く吸収する多孔性リン酸カルシウムでコーティングされる。
【0113】
薬物放出後または薬物放出中、別の実施例は、内皮化を促進する表面を露出する。1つの実施例では、
金属ステントを必要とする対象にインプラントするインプラント工程であって、前記金属ステントは、その少なくとも一部を被覆する少なくとも1つのコーティングを有し、前記少なくとも1つのコーティングは、
30〜60%の範囲の細孔容積と、0.3μm〜0.6μmの範囲の細孔直径と、を有する少なくとも1つの多孔性リン酸カルシウムと、
前記少なくとも1つの多孔性リン酸カルシウムを含浸する、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、を有する、前記インプラント工程と、
前記少なくとも1つの多孔性リン酸カルシウムを溶解可能にすることによって、前記少なくとも1つのコーティングから前記少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤を放出する工程と、
前記少なくとも1つの多孔性リン酸カルシウムを完全に溶解して、前記金属ステントの金属表面を晒す工程と、を有する。
【0114】
この実施例では、内皮化は、トロンボゲンを形成しないものであることが知られている、金属ステントの露出した金属表面上で起こる。したがって、完全に溶解する工程は、6カ月未満の間に起こる、例えば、2カ月未満の間に、または1カ月未満の間に、または2週間未満の間に起こる。
【0115】
別の実施例は、再狭窄に関連している少なくとも1つの疾病または体調を治療する方法であって、
金属ステントを必要とする対象にインプラントするインプラント工程であって、前記金属ステントは、その少なくとも一部を被覆する少なくとも1つのコーティングを有し、前記少なくとも1つのコーティングは、
30〜60%の範囲の細孔容積と、0.3μm〜0.6μmの範囲の細孔直径と、を有する少なくとも1つの多孔性リン酸カルシウムと、
前記少なくとも1つの多孔性リン酸カルシウムを含浸する、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、を有する、前記インプラント工程と、
前記少なくとも1つの多孔性リン酸カルシウムを溶解可能にすることによって、前記少なくとも1つのコーティングから前記少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤を放出する工程と、
前記少なくとも1つの多孔性リン酸カルシウムが、少なくとも6ヶ月間だけ前記ステント上に留まることを可能にする工程と、を有する。
【0116】
この実施例では、内皮化は、リン酸カルシウムの表面上で起こる。1つの実施例では、リン酸カルシウムは、少なくとも1年の間、または少なくとも2年の間、または、少なくとも3年の間だけステント上に残る。
[実施例]
本明細書に開示された実施例は、2007年10月10日に出願され、その開示が本明細書中に引用により合体される米国仮特許出願第60/978,988号で調製されるような、ヒドロキシアパタイトをコーティングしたステントの使用について記載する。また、以下の実施例は、リン酸カルシウムまたはヒドロキシアパタイトをコーティングしたステントで実施できることを当業者は理解することができるであろう。そのようなデバイスは、米国特許出願第2006/0134160号に記載されており、その開示が本明細書中に引用により合体される。
実施例1
本実施例は、ステント前処理プロセスと、ステント上へのヒドロキシアパタイトの堆積を記載するが、その記載は、Tsui, Manus Pui-Hungの「電気化学的堆積による冠状ステント上へのリン酸カルシウムコーティング」(M. A. Sc. diss., University of British Columbia, University, 2006)に開示されており、その開示は引用により本明細書中に合体される。
【0117】
使用したステントは、長さ14mm、外側半径0.85mmの316Lステンレス鋼ステントであった。ステント表面を電界研磨し、次に、蒸留水中の超音波浴で洗浄し、次に、エチルアルコールで洗浄した。次に、ステントを10Nの水酸化ナトリウム溶液に75℃で15時間浸漬し、続いて、500℃で20分間熱処理した。熱処理は、オプションであり、ミクロエッチングしたステントを熱処理なしでコーティングしてもよい。
【0118】
リン酸カルシウムの電気化学的堆積は、0.02329MのCa(NO)・4HOと0.04347MのNHPOとからなる50℃の電解質を400ml用いて実施した。前処理されたステントをカソードとして使用し、白金のシリンダをアノードとして使用した。0.90mAの電流を60秒間印加すると、ステント上にヒドロキシアパタイトコーティングの薄膜が堆積した。他の実施例では、ステントサイズに応じて、0.05〜2mA/cm2の電流密度、例えば、0.5〜2mA/cm2の電流密度を使用することができる。次に、コーティングしたステントを、蒸留水を流しながら1分間だけ洗浄し、次に、5分間だけ空気乾燥した。
【0119】
次に、ステントを0.1NのNaOHの(水)溶液中に75℃で24時間の間だけ浸漬し、続いて、蒸留水による超音波洗浄と、500℃で20分の間、熱処理する後処理工程に晒した。
【0120】
コーティングは、ステントを均一に被覆し、厚さは、〜0.5μmである。コーティングの表面形態は、酸化していないステント上への電気化学的堆積によるヒドロキシアパタイトコーティングと比較すると、変化せずにそのままであった。拡張試験は、電気化学的堆積によるヒドロキシアパタイトをコーティングした前酸化しステントを空気乾燥した後に実施した。Encore(登録商標)26インフレーションデバイスキットを使用して、カテーテルを170psiまで膨張した。拡張したステントをSEMで観測した。コーティングの剥離は、拡張による最高歪の領域でさえ、10,000倍までの倍率で観測されなかった。ステント歪は、ナノサイズの局部的な亀裂をコーティングに発生して収容され、顕微鏡観察では見えなかった。
実施例2
本実施例は、ひまし油媒体中にシロリムスを含むHAp(ヒドロキシアパタイト)コーティングしたステントの調製を記載する。
【0121】
9000mgのエタノールにひまし油(1000mg)を加え、混合して透明溶液を得た。上記溶液660mgにシロリムス100mgを加えて混合した。このシロリムス混合物に2.0gのエタノールを加え、混合して透明溶液を得た。実施例1で調製したHApコーティングしたステント(長さ14mm、外側半径0.85mm)を計量し、次に、真空チャンバー中で透明なシロリムス溶液中に浸漬した。真空チャンバーを20mmHg圧力に達するまで真空排気した。真空排気後に、ステントをマンドレル上に配置し、10秒間、5000rpmで回転した。次に、ステントを12時間、30mmHg真空下で周囲温度で乾燥し、その後で計量した。コーティング中のシロリムス量は、30μgと計算された。
【0122】
図2A〜2Cは、ステントの形状を示すコーティングしたステントの写真である。コーティングの調度は、明らかに、はげ落ちや亀裂の発生が観察されない。
実施例3
本実施例は、実施例2でコーティングしたステントの時間に対する薬物放出のモニター結果を記載する。
【0123】
実施例2で調製したコーティングしたステントを0.02%の硫酸ドデシルナトリウム(SLS)を含むPBS(9ml)中に配置し、次に、22℃で回転する水浴中に配置した。様々な時間のインターバルで、この液体は、HPLC法を使用する更なる分析のために取られる使用した液体と取り替えた。放出した薬剤累積量は、以下で計算した。
【0124】
薬剤放出累積%=(前および今回のインターバルで放出された全薬剤合計)/(コーティング中の全薬剤重量)
比較として、多孔性のヒドロキシアパタイトをコーティングしたステント1を、シロリムスだけで、すなわち、脂質担体なしで、さらにコーティングした。図3は、シロリムスの溶出時間(x軸)に対する放出累積%(y軸)のプロットである。図3は、シロリムスの総量の70%の初期の破裂放出を示す。また、薬剤の約80%は、数日以内に放出される。この投与コースは、ステントインプラントにしばしば伴う遅いステント血栓症を治療するのには適切でない。
【0125】
これとは対照的に、本実施例のコーティングしたステントに対する類似プロット(図4、溶出時間(x軸)に対する累積薬物放出%(y軸))は、実質的に減少した破裂放出を示し、そこでは、薬剤の10〜15%だけが直ちに放出される。また、薬剤の20%だけが5日以内に放出され、薬剤の60重量%が25日以内に放出される。このプロットは、シロリムスとひまし油とを含浸したヒドロキシアパタイトでコーティングしたステントが、持続する薬剤送出と、遅いステント血栓症の治療のために適切であることを示す。
実施例4
本実施例は、シロリムスを含むCypher(登録商標)と比べて、ひまし油とシロリムスをと含む実施例2のHAp(ヒドロキシアパタイト)コーティングしたステントをインプラントしたブタの正常な冠動脈中の遅い内腔損失と早い内腔利得を決定するための手順を記載する。
動物調製
実験は若年のヨークシャー−ランドレース種豚(25〜30kg)で行った。手順の前の1日に開始し、300mgのクロピドグレルと300mgのアセチルサルチル酸を経口投与した。一夜の断食後に、動物に20mg/kgの塩酸ケタミンとミダゾラムの鎮痛剤を投与した。チオペンタール(12mg/kg)を用いる麻酔の誘導と続く気管内挿管後に、ブタを酸素と亜酸化窒素(1:2v/v(体積/体積比))の混合物を投与する人工呼吸器に接続した。麻酔は0.5〜2.5体積%のイソフルランによって維持した。筋肉注射によって抗生物質予防を投与した。無菌条件下で、左の頚動脈の動脈切開を実施し、8F導入さやを配置した。アセチルサリチル酸(250mg)と10.000の免疫単位ヘパリンナトリウムを投与した。2mgの硝酸イソソルビドの動脈内投与後に、非イオン性造影薬剤(イオジキサノール)を使用して、冠動脈造影を2つの直交像で実施した。
血管インターベンション
定量量的な血管造影解析システムを使用するオンラインで分析された血管造影図から、2.5〜3.2mm直径の動脈セグメントをそれぞれの冠動脈で選択した。ステントは、上記記載されたように、ランダムブロック設計で1.1のバルーン動脈比率で配置した。ステントで拡張された動脈の繰り返し血管造影後に、ガイドカテーテルと誘導子のさやを除去し、動脈切開を修理し、皮膚は2層中で閉じた。後手順の間に、アセチルサリチル酸300mgとクロピドグレル75mgを毎日投与したが、ブタは、麻酔から回復することが可能であった。
グループサイズ
グループサイズは、Thoraxcenterでステントの初期の冠状動脈インプラントデータを使用して計算した。対照と比較された新生内膜の厚さの40%の差に対して、0.8のパワーを持つ「サンプルサイズのための一対のTテスト」(Sigmastat、Jandel Scientific Software)は、1グループあたり13冠状動脈インプラントのサンプルサイズをもたらす。
追跡調査
28日間の追跡調査で、セグメント中での血管狭窄を評価するために、ステントで拡張した動脈の血管造影をインプラントの間、同じX線撮影装置の同じ設定を使用して実施した。その後、冠動脈は、組織像のためにその場の圧力に固定した。
実験的グループとグループサイズ
ECD−HApコーティングしたステント、ひまし油媒体中に+30μgシロリムス、n=13冠状インプラント
Cypher(登録商標)ステント(シロリムス140μg、n=13冠状インプラント
動物の数
13のブタを研究に使用した。
通常の組織像
すべての組織サンプルは、インターベンション(介入)に対する異常な血管反応を調べるためと組織学的外観の一般的評価のために、光学顕微鏡検査で処理した。セクションは、通常の染色剤としてハエマトキシリン−エオシンと、エラスチン染色剤としてレゾルシン−フクシンを用いて染色した。特殊染色は、必要に応じて実施した。
定量的な組織像
炎症性および退化的な変化は、無し(0)、軽い(1)、中程度(2)、ひどい(3)として半定量的に評価した。
免疫細胞化学分析
ステントで拡張したセグメントの治癒と組織は、白血球体(CD45)、フィブリノイド(グリコホリン)、平滑筋細胞(アクチン)、および内皮細胞(例えば、レクチン)に対する特性染色によって評価する。適切なパラメータは定量化される。
体型測定
内膜および中間の厚さと領域とを決定する体型測定定分析は、画像解析システムを使用して、外部および内部の弾性板と内皮膜とをたどることによって、エラスチンで染色した部分上で実施した。媒体は、内部と外部の弾性板の間の層として定義される。内皮膜と内部弾性層との間の距離は、内膜の厚さとしてみなした。
エンドポイント(評価項目)
組織像:新生内膜領域、中間膜領域、外膜領域、新生内膜厚さ、中間膜厚さ、外膜厚さ
組織学:損傷スコア、炎症スコア、血管治癒、内皮化
血管造影:平均管腔直径(ステントで拡張されたセグメント)遅い損失。
実施例5
この実施例は、実施例4で記載された実験と測定値の分析を記載する。
血管造影
実施例4の血管造影結果を以下の表2に示す。
【0126】
プレ=ベースラインの血管造影における動脈直径(mm)、最大ステント=置換時の最大ステント拡張直径(mm)、B/A比=前の損傷時のバルーン動脈比、S/A比=ステント動脈比、ポスト=ステントインプラント後の動脈直径(mm)、FU=フォローアップ後の動脈直径(mm)、LL=遅い内腔損失(mm、FU−ポスト)、AG=早い内腔利得(mm、ポスト−プレ)
【0127】
【表2】

【0128】
実施例4の実験の体型測定
下記の表3は、実施例4のHAp−ECD−シロリムスとCypher(登録商標)ステントの血管造影結果を示す。新生内膜の厚さと領域、媒体厚さ、および内腔領域は、30μgのシロリムスを含むHAp−ECDステントと、140μgのシロリムスを含むCypher(登録商標)ステントとの間に大きな差異はなかった。
【0129】
【表3】

【0130】
両方のコーティングは、同様に機能した。統計分析は、HAp−ECD−シロリムスとCypher(登録商標)ステントと間の定量的な組織反応における差異が無いことを示した。
実施例4の実験の定量的な組織学的分析
HAp−ECD−シロリムスと、Cypher(登録商標)の2つのグループがあった。図5Aと図5Bは、インプラントしたCypher(登録商標)ステントとHAp−ECD−シロリムスの典型的な組織像を示す。Cypher(登録商標)ステント(図5A)に対する下側の前方の下行動脈(LAD)の中央部と、HAp−ECD−シロリムス(図5B)に対する下側の前方の下行動脈(LAD)の中央部を示す。特に、図5Bは、実施例3に記載したようなヒドロキシアパタイトとシロリムスでコーティングしたインプラントしたステントのブタの下側の下行前動脈中のインプラントの28日間後の組織像を示す。これらの単一の顕微鏡写真において、HAp−シロリムスステントは、大きな炎症なしに薄い新生内膜が存在する。HAp−ECD−シロリムスでコーティングしたステントは、一般に、内膜と媒体の間の境界ゾーンが比較的無細胞であることを示した。また、これらの領域は、色々の量のフィブリノイド物質と密接に充填された赤血球体を含んでいた。内膜の管腔の態様は、部分的に高くなった内皮と癒着性の白細胞を持つより正常な新内膜を示した。いくつかの好酸球体を持つ炎症があった。
【0131】
Cypher(登録商標)
このグループは、妥当な内皮層を持つ適度な新内膜厚の最小量を示した。いくつかの場合に、治癒していない支柱が、顆粒状の新内膜、好酸球体、および不十分な内皮とともに観察された。また、内膜媒体境界ゾーンは、フィブリノイドと赤血球体の領域を含み、部分的に顆粒状または非晶質物質を有する無細胞であった。豊富な新内膜と細胞外基材の領域では、細胞死を暗示する液胞を見いだした。炎症の場合、好酸球体の(全てまたは一部)は、いつも存在し、また、管腔であった。
【0132】
組織像と血管造影に基づいて、実施例4のステントは、かなり低い投与量(例えば、Cypher(登録商標)の140μgに対して30μg)でCypherステントと同様に有効であった。
実施例6
この実施例は、実施例2のHAp(ヒドロキシアパタイト)コーティングしたステントを用いて実施した人間の臨床試験を記載する。この実施例では、長さ19mmで直径が3.0mmと3.5mmのステントにそれぞれ55μgと58μgのシロリムスを充填した。
【0133】
ステントは、冠動脈中に単一のデノボ病変を有する16人の患者にインプラントし、15人は単一ステントをそれぞれ持ち、1人は4つのステントを持ち、そのうちの2つは、研究ステントであり、そのうちの2つは通常の露出したステントであった。病変を、定量的な冠状動脈撮影法(QCA)と血管内超音波(IVUS)で評価した。一次効能のエンドポイントは、QCAによって評価したように、ステント内の内腔損失であった。インプラント前、病変中の平均最小内腔直径(MLD)は、0.99±0.30mmであり、平均%直径狭窄は、62.8±10.3%であった。
【0134】
すべての患者は、インプラント手順直後と、次に、4カ月のインターバルのタイムポイントで、定量的な冠状動脈撮影法(QCA)と血管内超音波(IVUS)によって評価された。評価は9カ月に繰り返される。前手順の最小内腔直径のステントのインプラントは、0.99±0.30mmから2.62±0.33mmまで増加し、ステント内の血管長内の%直径狭窄は、62.8±10.3%から3.3±8.1%まで減少した。13人の患者の4カ月の追跡調査で、ステント内の最小内腔直径は、2.34±0.36mmであり、%直径狭窄は、10.4±8.1%であった。遅いステント内の内腔損失は、0.27±0.27mmであった。これらと他の測定値の結果を表4に示す。
【0135】
【表4】

【0136】
表5のIVUS容積測定値は、後手順から4カ月の追跡調査までの血管容積、ステント容積、および内腔容積の最小、または、わずかな変化を見せた。%ステント閉塞は、2.8量%±2.4であった。
【0137】
【表5】

【0138】
これらの結果は、脂質−シロリムス−ヒドロキシアパタイトをコーティングしたステントが現在の薬剤溶出ステントに匹敵することを示す。さらに、生体吸収性のポリマ−フリーのヒドロキシアパタイトコーティングは、ステント上の内皮化を可能し、現在の薬剤溶出ステントと関連する遅いステント中の血栓症を予防し得る。平均の病変中の遅い内腔損失は、0.00〜0.50mmの範囲であり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性基材と、
前記多孔性基材の少なくとも一部に含浸される、少なくとも1つの組成物と、を含み、
前記少なくとも1つの組成物が、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、少なくとも1つの脂質と、を含むことを特徴とするステント。
【請求項2】
前記多孔性基材が、ステントの少なくとも一部を被覆する物質を含むことを特徴とする請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記物質が、セラミックを含むことを特徴とする請求項2に記載のステント。
【請求項4】
前記セラミックが、リン酸カルシウムと金属酸化物とから選択されることを特徴とする請求項3に記載のステント。
【請求項5】
前記セラミックが、リン酸カルシウムから選択されることを特徴とする請求項3に記載のステント。
【請求項6】
前記リン酸カルシウムが、ヒドロキシアパタイトを含むことを特徴とする請求項5に記載のステント。
【請求項7】
前記少なくとも1つの脂質が、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、セラミド、ステロール、ステロールエステル、ワックス、トコフェロール、モノアルキル-ジアシルグリセロール、少なくとも8つの炭素原子の炭化水素鎖を含む脂肪アルコール、N−モノアシルスフィンゴシン、N,O−ジアシルスフィンゴシン、およびトリアシルスフィンゴシンから選択されることを特徴とする請求項1に記載のステント。
【請求項8】
前記脂肪アルコールが、C〜C30脂肪アルコールから選択されることを特徴とする請求項7に記載のステント。
【請求項9】
前記脂肪アルコールが、C12〜C30脂肪アルコールから選択されることを特徴とする請求項7に記載のステント。
【請求項10】
前記モノグリセリド、前記ジグリセリド、および前記トリグリセリドが、少なくとも4つの炭素原子の鎖長を有する脂肪酸に由来することを特徴とする請求項7に記載のステント。
【請求項11】
前記モノグリセリド、前記ジグリセリド、および前記トリグリセリドが、少なくとも8つの炭素原子の鎖長を有する脂肪酸に由来することを特徴とする請求項7に記載のステント。
【請求項12】
前記モノグリセリド、前記ジグリセリド、および前記トリグリセリドが、少なくとも12の炭素原子の鎖長を有するる脂肪酸に由来することを特徴とする請求項7に記載のステント。
【請求項13】
前記少なくとも1つの脂質が、植物油、動物油、および合成脂質から選択されることを特徴とする請求項1に記載のステント。
【請求項14】
前記少なくとも1つの脂質が、トリグリセリドと植物油から選択されることを特徴とする請求項1に記載のステント。
【請求項15】
前記少なくとも1つの脂質が、リン脂質、脂肪酸、および脂肪アミンから選択されることを特徴とする請求項1に記載のステント。
【請求項16】
前記リン脂質が、ジアシルグリセリンリン酸、モノアシルグリセリンリン酸、カルジオリピン、プラスマローゲン、スフィンゴ脂質、および糖脂質から選択されることを特徴とする請求項15に記載のステント。
【請求項17】
前記脂肪酸および前記脂肪アミンは、少なくとも8つの炭素原子の鎖長を持つことを特徴とする請求項15に記載のステント。
【請求項18】
前記脂肪酸および前記脂肪アミンは、少なくとも12個の炭素原子の鎖長を持つことを特徴とする請求項15に記載のステント。
【請求項19】
前記少なくとも1つの脂質の10重量%未満が、水に可溶性であることを特徴とする請求項1乃至請求項18のいずれか1項に記載のステント。
【請求項20】
前記少なくとも1つの脂質の5重量%未満が、水に可溶性であることを特徴とする請求項1乃至請求項19のいずれか1項に記載のステント。
【請求項21】
前記少なくとも1つの脂質の3重量%未満が、水に可溶性であることを特徴とする請求項1乃至請求項20のいずれか1項に記載のステント。
【請求項22】
前記少なくとも1つの脂質が、大豆油、綿実油、なたね油、胡麻油、トウモロコシ油、落花生油、ベニバナ油、魚油、トリオレイン、トリリノレイン、トリパルミチン、トリステアリン、トリミリスチン、トリアラキドニン、ひまし油、コレステロール、およびオレイン酸コレステリル、リノール酸コレステリル、ミリスチン酸コレステリル、パルミチン酸コレステリル、アラキドン酸コレステリルなどのコレステロール誘導体から選択されることを特徴とする請求項1乃至請求項21のいずれか1項に記載のステント。
【請求項23】
前記少なくとも1つの脂質が、脂肪酸、脂肪アミン、およびトリグリセリドから選択されることを特徴とする請求項1に記載のステント。
【請求項24】
前記少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤が、抗炎症剤、抗増殖剤、親治癒剤、遺伝子治療剤、細胞外基材調節因子、抗血栓剤、抗血小板剤、アンチセンス剤、抗凝血薬および抗生物質から選ばれていることを特徴とする請求項1乃至請求項23のいずれか1項に記載のステント。
【請求項25】
前記少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤が、抗増殖剤と抗炎症剤から選ばれることを特徴とする請求項1乃至請求項24のいずれか1項に記載のステント。
【請求項26】
前記少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤が、パクリタキセル、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、ビオリムス、ピメクロリムス、ミドスタウリン、ビスホスホネート、ヘパリン、ゲンタマイシン、およびイマチニブメシレートから選ばれることを特徴とする請求項1乃至請求項25のいずれか1項に記載のステント。
【請求項27】
前記組成物が、フィルム、リポソーム、ナノカプセル、ミクロカプセル、ミクロ液滴、ナノ液滴、ミクロスフェア、ナノスフェア、ミセル、およびそれらの組合せの形態で、ステントから放出されることを特徴とする請求項1乃至請求項26のいずれか1項に記載のステント。
【請求項28】
前記少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤が、粒子中に封入されたデバイスから放出されることを特徴とする請求項27に記載のステント。
【請求項29】
前記粒子は、前記粒子の少なくとも5%が1μm以上であるような粒径分布を持つことを特徴とする請求項27に記載のステント。
【請求項30】
1μm以上の前記粒子が、マクロファージによって取り込まれることを特徴とする請求項29に記載のステント。
【請求項31】
医療用デバイスの少なくとも一部を被覆する、少なくとも1つのコーティングを有し、
前記少なくとも1つのコーティングが、
多孔性基材と、
前記多孔性基材の少なくとも一部に含浸される組成物とを含み、
前記組成物が、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、脂肪酸、脂肪アミン、および中性脂質から選択される少なくとも1つの脂質と、を含むことを特徴とする医療用デバイス。
【請求項32】
前記中性脂質が、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、セラミド、ステロール、ステロールエステル、ワックス、トコフェロール、モノアルキル‐ジアシルグリセロール、少なくとも8つの炭素原子の炭化水素鎖を含む脂肪アルコール、N−モノアシルスフィンゴシン、N,O−ジアシルスフィンゴシン、およびトリアシルスフィンゴシンから選択されることを特徴とする請求項31に記載の医療用デバイス。
【請求項33】
前記中性脂質が、モノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドから選択されることを特徴とする請求項32に記載の医療用デバイス。
【請求項34】
さらにリン脂質、糖脂質、スフィンゴミエリン、セレブロシド、ガングリオシド、およびスルファチドから選択された少なくとも1つの追加の脂質を含むことを特徴とする請求項32に記載の医療用デバイス。
【請求項35】
前記少なくとも1つのコーティングには、ポリマーがないことを特徴とする請求項31に記載の医療用デバイス。
【請求項36】
前記多孔性基材は、少なくとも1つのセラミックから選択されることを特徴とする請求項31に記載の医療用デバイス。
【請求項37】
前記少なくとも1つのセラミックは、金属酸化物とリン酸カルシウムから選択されることを特徴とする請求項36に記載の医療用デバイス。
【請求項38】
前記少なくとも1つのセラミックは、リン酸カルシウムから選択されることを特徴とする請求項37に記載の医療用デバイス。
【請求項39】
前記リン酸カルシウムは、ヒドロキシアパタイトを含むことを特徴とする請求項38に記載の医療用デバイス。
【請求項40】
前記セラミックが1μm未満の厚みを持つことを特徴とする請求項31に記載の医療用デバイス。
【請求項41】
前記少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤が、抗炎症剤、抗増殖性剤、親治癒剤、遺伝子治療剤、細胞外基材調節因子、抗血栓薬剤、抗血小板薬剤、アンチセンス剤、抗凝血薬および抗生物質から選ばれていることを特徴とする請求項31に記載の医療用デバイス。
【請求項42】
前記少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤が、抗増殖剤と抗炎症剤から選ばれることを特徴とする請求項41に記載の医療用デバイス。
【請求項43】
前記少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤が、再狭窄を阻害することを特徴とする請求項31に記載の医療用デバイス。
【請求項44】
前記少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤が、平滑筋細胞阻害剤、および免疫抑制剤から選ばれることを特徴とする請求項31に記載の医療用デバイス。
【請求項45】
前記少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤が、シロリムス、パクリタキセル、タクロリムス、ヘパリン、ピメクロリムス、イマニチブメシレート、ゲンタマイシン、およびミドスタウリンから選ばれることを特徴とする請求項31に記載の医療用デバイス。
【請求項46】
前記セラミックは、生体内吸収性であり、前記セラミックの吸収のときに前記セラミックに接触する前記少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤を放出することを特徴とする請求項31に記載の医療用デバイス。
【請求項47】
前記デバイスがインプラント可能な医療デバイスであることを特徴とする請求項31に記載の医療用デバイス。
【請求項48】
前記デバイスがステントであることを特徴とする請求項31に記載の医療用デバイス。
【請求項49】
疾病または体調のうちの少なくとも1つを治療する方法であって、
医療用デバイスを必要とする対象に前記医療用デバイスをインプラントするインプラント工程であって、前記医療用デバイスが、多孔性基材と、前記多孔性基材の少なくとも一部に含浸される組成物とを有し、前記組成物が、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、脂肪酸、脂肪アミンおよび中性脂質から選択される少なくとも1つの脂質とを含む、前記インプラント工程と、
前記医療用デバイスから少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤を放出する工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項50】
前記少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤は、抗増殖剤と抗炎症剤とから選択されることを特徴とする請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記疾病または体調のうちの少なくとも1つは、再狭窄に関連していることを特徴とする請求項49に記載の方法。
【請求項52】
多孔性基材と、
前記多孔性基材の少なくとも一部に含浸される組成物と、を含み、
前記組成物が、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、ポリマーフリーで、生体再吸収可能な担体とを含むことを特徴とするステント。
【請求項53】
ステントの少なくとも一部を被覆する多孔性基材であって、金属酸化物、金属炭化物、およびリン酸カルシウムから選択されるセラミックを含む、前記多孔性基材と、
前記多孔性基材の少なくとも一部に含浸される組成物であって、少なくとも1つの薬学的に有効な薬剤と、生体再吸収可能な担体とを含む、前記組成物と、
を含むことを特徴とするステント。
【請求項54】
前記生体再吸収可能な担体は、ポリマーと脂質とから選択されることを特徴とする請求項53に記載のステント。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2011−500150(P2011−500150A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528912(P2010−528912)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/059019
【国際公開番号】WO2009/048645
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(510102269)エムアイヴィ テラピューティクス, インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】MIV THERAPEUTICS, INC.
【住所又は居所原語表記】Unit 1, 8765 Ash Street, Vancouver, British Columbia V6P 6T3, CANADA
【Fターム(参考)】