説明

インプラント

本発明は、大腿骨頭の準備された付け根へ移植するカップ状のインプラントに関する。インプラントは、平坦なベース面(13)、及びかかるベース面(13)に対して垂直に配置された始線(15)を有するボール部(11)でる。本発明によれば、空洞部(17)が、ボール部(11)に配置され、ベース面(13)から突出しており、前記空洞部(17)は、回転対称であり且つ始線(15)に対してゼロではない角度(a)で配置された中空スペース軸(19)を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、処置された断端部(stump)への移植のためのカップ状に形成されたインプラントに関する。
【0002】
この種類のカップ状に形成されたインプラントの使用においては、患者の天然の大腿骨頭(femoral head)が十分に維持され得る。大腿骨頭は、カップ状に形成されたインプラントの配置を可能にするために、手術において、かかる大腿骨頭の表面のみ加工される。この外科的処置は、「リサーフェシング(resurfacing)」として公知である。
【0003】
大腿骨頭のためのリサーフェシングインプラントは、EP1407728により公知であり、かかるEP1407728のインプラントには、固着のために、大腿骨頸部(femoral neck)内に延在する差し込み部が設けられている。米国特許第2003/0163202号は、円錐形の断端部の形状に準備された大腿骨頭に固定する円錐形の内部接触面を有するインプラントを開示している。
【0004】
ここでは、最初に説明された種類のカップ状に形成されたインプラントが提案されている。このインプラントは、複数の他の有利な性質に加えて、好適な方法により天然の大腿骨頭の関節面をコピーすること、骨材料の少ない損失を伴い移植され得ること、並びに好適な主な固着及びセメントを用いた移植とセメントを用いない移植とにおいて長期間の確実且つ信頼性のある設置を確実にする。より詳しくは、例えば、大腿骨頭の頸部軸に関して実質的に対称であり、大腿骨カップの外面により形成された人工関節面により天然の大腿骨頭の幾何学的形状をコピーすることが可能であり、大腿骨頭へのインプラントの確実な締結を確実にするこが可能である。この関係において、大腿骨頭に導かれる力の主な付与方向は、大腿骨頭から大腿骨の遠位端に向けられたラインに略従うか、大腿骨頸部軸から明らかにそらされているかであることに注意されたい。さらなるアスペクトによれば、大腿骨頭の処置された断端部に確実に固着され得るインプラントが説明される。カップ状に形成されたインプラントの移植のための方法が説明される。説明されたカップ状に形成されたインプラントの製造のための方法が更に説明される。カップ状に形成されたインプラントの製造のための器具が更に説明される。
【0005】
他の有利な特性に加えて、特許請求の範囲に記載された主題は、これらの要求を満たし得る。外科医による簡単な操作、最小の侵襲性若しくは最小の骨組織の損失を伴う移植性質、及び軟性部における移植の容易さ(gentle)のような特性は、明らかであるとして設定され且つ満足されるべきとして考えられる。
【0006】
説明されたインプラントは、平坦なベース面を伴う球状部と、かかるベース面に垂直に配置された始線(polar axis)とを有している。回転対称な中空スペースは、球状部に配置され、ベース面から始まっており、すなわち、ベース面に少なくとも部分的に配置された開口部を有している。中空スペースは中空スペース軸を有し、かかる中空スペース軸は、始線に対してゼロではない角度で配置されている。これは、インプラントが、処置された断端部に取り付けら得ることを可能にし、インプラントの始線が大腿骨頭の頸部軸に一致する。同時に、インプラントの固定は、インプラントの中空スペースの中空スペース軸が、大腿骨頭の主な荷重の向きに少なくとも実質的に一致するように実施され得る。
【0007】
1つの実施例における中空スペース軸は、始線と交差し、特に球状部の球中心において交差する。始線と中空スペース軸とは、互いに角度を有し、かかる角度は、例えば、15°から50°の範囲、特に15°から35°の範囲である。これは、例えば、主な荷重の向きの傾斜角が頸部軸に対して傾斜される範囲をカバーする。球状部は、例えば、38mmから60mmの範囲の球径を有し、ベース面から球径の60%から80%の始線の方向の極部(pole)まで測定した高さを有する。前記直径範囲は、大腿骨頸部が動作を確実に維持するプロテーゼのための典型的なものであり、例えば、天然の大腿骨頭の直径の範囲において選択される。かかる直径により、金属から形成された大腿骨要素が、例えば、EP892627に説明されたような大腿骨要素を使用し、同様にEP892627から公知である金属適合ランニング表面と組み合わされ、これらの明細書は、本発明の説明の不可欠な要素を示している。始線に亘って測定されたカップ高さは、十分大きな角度範囲を確実にし、大腿骨カップは実際の関節面を利用可能にする。
【0008】
インプラントの実施例においては、中空スペースは内面を有し、かかる内面は、球状部の表面との交差(penetration)を有し、かかる内面の少なくとも1つの周囲部は球状部の球面領域との交差を有する。特に、内面の第1周囲部は球状部の球面領域と交差し得、内面の第2周囲部はベース面と交差し得る。インプラントは、かかるインプラントの縁部により境界を設けられているカップ開口部を有し得、かかる縁部は、ベース面の平面に部分的にのみ配置されており、すなわち、全周囲には配置されていない。縁部の第1領域はベース面の平面に配置され得、縁部の第2領域は中空スペース軸に垂直に向かされた入口面に配置され得る。これは、インプラントの開口部が平坦ではなく、2つの部分に分けられていることを意味し、かかる2つの部分は、それぞれ始線に垂直であり、中空スペース軸に垂直である。
【0009】
更なる実施例においては、中空スペースは、中空スペース軸に沿って、インプラントの内部に面する向きのテーパである円錐断端部の形状を有している。円錐断端部の形状のために、処置された断端部における骨組織の刺激は増大され、骨材料の減少を防止し、インプラントにおける骨材料の成長を促進し、円錐部は、圧縮加重が断端部とインプラントの内面との間の接触面の全領域において存在するようにデザインされる。さらに円錐面が簡単に形成される。円錐断端部は、例えば、10°から65°、特に16°から50°の十分な円錐開口角度を有する。
【0010】
インプラントの実施例においては、固着手段が、断端部へのインプラントの固着のために中空スペースの内部に配置され、固着手段は中空スペースに境界をなすインプラントの内面に配置される。かかる固着手段は、例えば、骨へのインプラントの更に改良された主な固着部として機能し、骨断端部におけるインプラントの回転に対する防護として使用され得、固着手段のない実施例は、骨材料のより少ない損失を伴う低侵襲移植を可能にする。通常、説明されたインプラントは、セメント無しの移植に提供されるが、骨セメントを用いる移植も当然可能である。固着手段は、実施例における中空スペース軸の周りに対称に分布して配置される。中空スペースの縁部における固着手段の配置においては、大腿骨頭の処置された断端部の中心における骨組織がダメージを受けずに残ったままである。インプラントの例示的な実施例においては、固着手段は、中空スペースの周囲に配置され且つ中空スペース開口部からインプラントの内部に面するように曲げられた返し(barb)構造を含んでいる。返し構造が、例えば、複数の固着歯部により形成され、かかる固着歯部の高さは、ミリメートルの10分の1からミリメートルの範囲、例えば、約1mm、0.5mmから1.5mmの範囲である。かかる構造は、例えば、中空スペース軸の周りに同一中心に配置されている。インプラントの更なる実施例においては、固着手段は、複数の固着リブ、固着フィン、及び/若しくは固着ピンを含んでいる。かかる固着手段は、中空スペース軸に平行な向きを有し、特に主な固着として機能する。固着フィンの場合においては、対応する切断部が、鋸刃を用いて大腿骨内においてのこ引き若しくは切り欠きすることによりフィンに簡単に形成される。固着要素の数に関する検討が骨材料と最も可能性のある固着との間においてなされる。
【0011】
インプラントへの骨材料の成長を促進するために、中空スペースは、少なくとも部分的に粗くブラスト加工された又はミクロ構造を有する内面により境界を設けられ得る。中空スペースを囲むインプラントの内面は、例えば、チタニウムプラズマコーティングを有している。内面には、多孔構造が設けられ得、かかる多孔構造の表面は、金属、特にタンタルにより被覆されている。かかる表面は、例えば、インプラント製造業者のジンマー(ZIMMER)社の商標「トラベクラーメタル(Trabecular Metal)」から公知である。
【0012】
請求項1によるインプラントの上述した実施例と異なる実施例及び特徴は互いに組み合わされ得る。
【0013】
インプラントの移植のために説明される方法により、カップ状に形成されたインプラントが選択され、かかるインプラントは中空スペース軸を伴う中空スペースを含んでいる。大腿骨頭は、処置された断端部を得るようにかかる大腿骨頭の一部を切除される。かかる処置された断端部は、インプラントの中空スペースに適合する形状を示し、移植軸に対して回転対称であり、実際には、少なくとも前額面において大腿骨頸部軸に対して傾斜され、以下において説明されるように、多くとも矢状面において傾斜される。前額面における傾斜は、例えば、15°から50°、特に15°から35°の範囲であり、移植軸が大腿骨頭の主な荷重の向きに一致するような寸法に通常形成される。インプラントは、上記において説明されたインプラントが特に選択される。
【0014】
インプラントの移植方法の実施例においては、第1ドリルワイヤが、大腿骨頸部軸に沿って大腿骨頭に挿入され、アライメント器具が第1ドリルワイヤに配置され、第2ドリルワイヤが大腿骨頸部軸に対して傾斜された移植軸に沿って挿入されアライメント器具及び第1ドリルワイヤが、大腿骨頭の一部を除去する前に除去され、特に前述したステップがこの順に行われる。例えば、ジンマー社(ZIMMER)のデュロム(DUROM)ヒップカップの移植のための中心配置器具のような器具及び方法が公知である。かかる器具及び方法は、第1ドリルワイヤが、大腿骨頭の中心に配置され得、及び/若しくは大腿骨頸部とのアライメントをもたらし得ることを助ける。アライメント器具は、頸部軸に対する移植軸の傾斜を画定する、すなわち移植軸を画定するのに機能する指示若しくは測定手段を含んでいる。これとは別に、適当な補助手段及び/若しくは方法を用いて、第2ドリルワイヤが、第1ドリルワイヤの助け無しに直接移植される。第2ドリルワイヤは、例えば、大腿骨頭の加工のためのガイド器具として使用され、及び/若しくは処置された断端部へカップ状に形成されたインプラントを配置するステップの前に除去される。
【0015】
実施例においては、インプラント、特に上記において説明された種類のインプラントの移植方法は、処置された断端部へカップ状に形成されたインプラントを配置する際に、中空スペース軸と移植軸とが一致するようにインプラントを移植するステップを含んでいる。インプラントの移植方法は、移植軸に対する中空スペース軸の傾斜に対する保護を提供する。かかる保護は、インプラントのガイド部からなり、かかるガイド部は、移植軸の向きに調整される。所定の実施例は、大腿骨頸部軸に対する移植軸の傾きがインプラントの始線と中空スペース軸との間の角度に一致するように大腿骨頭を加工するステップを含んでいる。さらに所定の実施例においては、インプラントは、インプラントの始線と大腿骨頸部軸とが一致するように配置されるように配置される。インプラントの移植方法の更なる実施例は、移植軸が前額面と矢状面とにおいて大腿骨頸部軸に対して傾斜されるように大腿骨頭を加工するステップを含み、すなわち大腿骨前捻(antetorsion)を有する。
【0016】
移植方法若しくは特徴に向けられた独立請求項による移植方法の上述した異なる実施例は互いに組み合わされ得る。
【0017】
大腿骨頭の処置された断端部のためのカップ状に形成されたインプラント、特に前述したインプラントの製造のために説明された方法においては、球状部は、平坦なベース面と、かかるベース面に垂直に配置された始線とを有するように形成され、回転対称な中空スペースは十分な球状部において中空スペース軸を有するように形成され、ベース面から始まり、中空スペース軸が始線に対してゼロではない角度で配置される。この関係においては、例えば、平坦なベース面を有する球状部がまず形成され、中空スペースがその後に導入されるか、又は中空スペースがまず球体若しくは球状部に確立され、平坦なベース面が、適当な方法により形成され、中空スペース軸とゼロではない角度を含む始線に垂直に配置される。
【0018】
大腿骨頭の処置された断端部のためのカップ状に形成されたインプラント、特に前述したインプラントの製造のために説明される更なる方法においては、溝が、例えば、回転加工プロセスにより中空スペースの内面に形成され、内面に中空スペース軸の周りに同軸に配置された同軸リングの形状のような隆起部を得る。最後に、リング状の隆起部は、スタンププロセスにより切り欠きされ、複数の固着歯部を形成し、いずれの場合も同軸リングである。この関係においては、中空スペースは、かかる中空スペースの製造において、中空スペースの望まれるエンド寸法に対して小さいサイズの直径に形成される。この方法の実施例においては、切り欠き部が、中空スペース軸の方向における中空スペース内に向けられた力を加える間に形成される。切り欠き部に隣接して配置されたコーナ領域における残りの隆起部は、かかる隆起部が中空スペースに面するように塑性変形される。よって、返し構造がインプラントの固着のために形成される。切り欠き部の形成のための器具、特にスタンプ器具が、中空スペース軸の向きに中空スペースに挿入され、中空スペース軸の向きに中空スペースに向けられた力を加える間、隆起部に対してプレスされ、切り欠き部を形成する。かかる方法を実行する器具は、シャフト部と頭部とを有する。かかる器具は、シャフト部において握られ得る。シャフト部に接続された頭部は、切り欠き部を形成するための少なくとも2つのスタンプエッジを有する。スタンプエッジは、側面図において、中空スペース軸に平行なインプラントの部分における中空スペースの内面に適合する形状である輪郭を有している。
【0019】
インプラントの内部における固着要素の製造のために説明された方法は、カップ状要素だけに当然限定されず、骨と接触するように形成され且つ主な固着と骨の成長とが行われる内部スペースを有する他のインプラントに使用され得る。
【0020】
インプラントの球状関節面の加工は、例えばEP1340477に説明された方法を用いて実施する。
【0021】
インプラントの移植の方法は、中空スペース軸を有する中空スペースを含むカップ状に形成されたインプラントを選択するステップと、インプラントの中空スペースに適合する形状を示し且つ移植軸に対して回転対称である処置された断端部を得るために大腿骨頭の一部を除去するステップと、移植軸が少なくとも前額面において大腿骨頸部軸に対して傾斜されるように大腿骨頭を加工するステップとを含んでいる。
【0022】
更なる方法は、大腿骨頸部軸に沿って大腿骨頭に第1ドリルワイヤを挿入するステップと、かかる第1ドリルワイヤにアライメント器具を配置するステップと、大腿骨頸部軸に対して傾斜された軸に沿って大腿骨頭に第2ドリルワイヤを挿入するステップと、アライメント器具及び第1ドリルワイヤを除去するステップとを更に含み、これらのステップは大腿骨頭の一部を除去するステップの前に行われ、前記アライメント器具は、大腿骨頸部軸に対する移植軸の傾斜を画定する、すなわち移植軸を画定する指示若しくは測定手段を含んでいる。
【0023】
これに関連して、かかる方法の実施例においては、適当な補助手段、例えば機械的な補助手段が、大腿骨頭の中心に配置されるのに使用され、頸部軸と移植軸との間の回転の中心が少なくとも大腿骨頭の中心に略一致するようにアライメント器具に配置する。
【0024】
更なる方法は、大腿骨頭の一部を除去する際にガイド器具として第2ドリルワイヤを使用するステップを更に含んでいる。
【0025】
更なる方法は、処置された断端部にカップ状に形成されたインプラントを配置するステップの前に第2ドリルワイヤを除去するステップを更に含んでいる。
【0026】
更なる方法は、処置された断端部へのカップ状に形成されたインプラントの配置の際に、中空スペース軸と移植軸とが一致するようにインプラントを移植するステップを更に含んでいる。
【0027】
更なる方法は、傾斜した軸に対する中空スペース軸の傾斜からインプラントを保護するステップを更に含んでいる。
【0028】
更なる実施例は、請求項1乃至15のいずれか1つに記載されたインプラントであるインプラントを選択するステップを更に含んでいる。
【0029】
更なる実施例は、大腿骨頸部軸に対する移植軸の傾斜がインプラントの始線と中空スペース軸との間の角度に一致するように大腿骨頭を加工するステップを更に含んでいる。
【0030】
更なる方法は、インプラントの始線と大腿骨頸部軸とが一致するようにインプラントを配置するステップを更に含んでいる。
【0031】
更なる方法は、移植軸が前額面と矢状面とにおいて大腿骨頸部軸に対して傾斜されるように大腿骨頭を加工するステップを更に含んでいる。
【0032】
本発明は、図面に示した実施例を参照しつつ以下においてさらに詳しく説明される。この関係においては、実施例及び図面は、教示的なものと理解されるべきであり、特許請求の範囲に記載された範囲の制限に使用されるべきではない。図面におけるイラストは単純化されており、本発明の理解に必要ではない細部は省略されている。
【詳細な説明】
【0033】
図1a及び図1bは、図1a及び図1bには示されていない処置された断端部への移植のためにカップ状に形成されたインプラントの実施例をそれぞれ示している。かかるインプラントは、球中心M、球面領域39、及び平坦なベース面13を伴う球状部11の形状を有し、始線15がベース面13に垂直に配置される。さらに、球状部11は、中空スペース軸19の周りに回転対称に形成された中空スペース17を有している。球面領域39’及びベース面13’を伴う球状部は点線により示されており、かかる球状部は中空スペースを有していない。すなわち、かかる球状部は中空スペースと重なっていない。中空スペース17は、中空スペース軸19に沿って、インプラントの内部に向かう向きのテーパである円錐形の断端部の形状を有している。中空スペース17は、内面23、25により境界を設けられ、かかる内面23、25は、エンド面23と円錐開口角2δ若しくは半円錐開口角δを有する円錐ジャケット面25とを含んでいる。中空スペース軸19と始線15とは、ゼロではない角度aを含み且つ球状部11の中心Mにおいて交差する。図1に示したインプラントの中空スペース17のジャケット面25は、球面領域39の一部と平坦なベース面13の一部とを通過する。このように、中空スペース17は、縁部37により境界を設けられたカップ開口部を有し、かかる縁部37の少なくとも1つの第1パートは、ジャケット面25の貫通により形成され、球面領域39を有し且つ中空スペース軸19に直交して配置された入口面21に配置される。示した実施例においては、縁部の第2パートはベース面13に存在する。図1bによる実施例においては、縁部の第1パートは、点線により示された球状部と中空スペース17との重ね合わせ(superimposition)の結果からエッジとして形成されている。図1aによる実施例においては、縁部の第1パートは丸められている。通常、中空スペースは、例えば、回転楕円体、楕円体、若しくは円柱の形状のような円錐形の断端部とは異なる回転対称形状を有し得る。図1a及び図1bに示したインプラントは、例えば以下のように形成される。平坦なベース面から始まり、中空スペース軸の周りに回転対称な中空スペースが、十分な球状部における始線に対する所定の角度で形成されるように形成され、かかる球状部は球面領域、平坦なベース面、及びかかる平坦なベース面に垂直な始線を有するか、若しくは中空スペースが十分な球状若しくは十分な球状部における中空スペース軸を伴い形成された後、平坦なベース面が始線に垂直に形成される。
【0034】
図2a乃至図2iに示した実施例は、円錐開口角2δ及び/若しくは中空スペース軸19と始線15との間に形成された角度aにより互いに異なっており、異なる内反(varus)/外反(valgus)位置及び/若しくは実際に生ずるCCD角をカバーする。図2a乃至図2cによる実施例は16°の円錐開口角2δを有している。図2d乃至図2fによる実施例は、35°の円錐開口角2δを有している。図2g乃至図2iによる実施例は50°の円錐開口角2δを有している。図2a、図2d、及び図2gによる実施例は15°の角度aを有している。図2b、図2e、及び図2hによる実施例は、角度25°の角度aを有している。図2c、図2f、及び図2iによる実施例は35°の角度aを有している。
【0035】
図3aは、大腿骨頭49、大腿骨頸部51、及び大転子(trochanter major)53を有する大腿骨47の側面図を示しており、インプラントがかかる大腿骨頭49に移植されている。さらに、図1において示した球状部の平坦なベース面13’が点線により示されている。図3bは、図3aの大腿骨47及びインプラントの長手軸断面である。図3bによる処置の後も残っている大腿骨断端部35の外形は、中空スペース17すなわち内面23、25により形成されたインプラントの内形と一致する。中空スペース17と処置された大腿骨断端部35とは、互いに適合する形状を形成する。よって、移植されたインプラントは、処置された大腿骨断端部35の全エリア上に設置され、特に、大腿骨断端部35とインプラントとの間の円錐断端部形状の接触面が、主要な固着として円錐設置を可能にし、恒久的な骨刺激が達成されるように円錐角の選択を伴い、恒久的な圧縮荷重が骨に作用する。この結果、機械的な刺激の欠如による骨分解が防止される。
【0036】
処置された断端部35におけるインプラントの保持を強化するために、インプラントには、図4aにおいて示した更なる実施例のように、複数の固着ピン27が設けられる。かかる固着ピン27は、中空スペース軸に平行な向きにされ且つインプラントの内面23、25のエンド面23に取り付けられ、中空スペース17へ突出している。固着ピン27は、中空スペース軸の周りに対称に配置される。この実施例によるインプラントの固着は図4bに示されている。
【0037】
図5aにおけるインプラントの他の実施例においては、固着フィン29が固着要素として設けられ、平坦なサイド部33が、中空スペース軸に平行に延在し、中空スペース軸の周りに対称に配置されている。固着フィン29は、インプラントの内側23、25のエンド面23と円錐ジャケット面25とに隣接している。フィン29の内側に面する縁サイド31は、インプラントの外面13、39の外側に配置された中心の円周上に配置さえている。この実施例によるインプラントの固着は図5bに示されている。処置された大腿骨頭35における固着フィン29の収容のために要求される溝は、例えば、適当な測定手段によりガイドされる切断器具を用いて、切り欠き若しくはのこ引き(sawing)により簡単に形成される。中空スペースに配置されたフィン29を伴うインプラントの更なる例示的な実施例は図5cに示されている。
【0038】
例えば、説明された種類のインプラントのエンド面、ジャケット面、若しくは全ての内面は粗くブラスト加工されている。よって、インプラント内への骨材料の成長が促進される。インプラントの好適な保持のために、円錐ジャケット面は、例えば、EP0639356から公知である返し構造を更に有している。かかる明細書は、ヒップシェルの外面において、例えば複数の固着歯部を使用することに関してこの明細書の不可欠な要素を示している。かかる複数の固着歯部は、中空スペース軸の周りに同一中心に配置され、中空スペースの開口部からインプラントの内部へ面するように曲げられている。返し構造は、例えば以下のように形成され得る。周囲溝が、中空スペース軸周りに対称である球状部11の中空スペース17の内面において回転加工(turning)することによりまず形成され、隆起部171が中空スペース軸の周りの溝同士の間の同心リングの形状を生じる。これは図6cに概略を示されている。その後、図6aにおける側面図且つ図6bにおける頂面図に示されている器具43が、中空スペースに挿入され、中空スペース軸の方向に中空スペース内に向けられた力を加える間、図6cにおいて矢印により示されたように隆起部に対して圧力を加え、よって、スタンププロセスによりリング状隆起部を切り欠きし、複数の固着歯部が各リング状隆起部から生ずる。このプロセスにおいて、固着歯部は、少なくともコーナ領域において追加的に塑性変形され、インプラントの内部に向かって曲げられる。この方法においては、最初に形成された中空スペースは、断端部の処置により形成される望まれる寸法に対して小さい直径に形成されなければならない。なぜなら、中空スペースは、加工されるべき溝により直径を大きく形成されるからである。上記において説明した切り欠き部の形成のための器具の図6に示した実施例は、器具の保持のためのシャフト41とかかるシャフトに接続された頭部43とを有している。頭部43は、2つのスタンプエッジ45を含み、かかる2つのスタンプエッジ45は、シャフト41に対して両端に配置され、中空スペース17のジャケット面に適合する形状である。器具は、周囲部の周りに配置された複数のスタンプエッジを伴う星型に形成され得、複数の歯部が、1回の加工ステップにおいて中空スペースの周囲に沿って形成され得る。
【0039】
インプラントは、球状関節面の異なる直径、及び/若しくは始線と中空スペース軸との間の異なる角度、及び/若しくは異なる円錐角を伴うインプラントキットで提供される。かかるキットにより、全ての大腿骨頭のサイズ、CCD角、更なる適応が実際にカバーされ得る。球状部の球径は、例えば、38mmから60mmである。
【0040】
インプラントの製造に使用される材料は本発明の主要な要素ではなく、関節面の直径を考えている。しかしながら、従来技術の金属若しくはセラミック材料のような剛性耐摩耗性材料が摩擦学の観点から実際に使用される。かかるインプラントが、例えば適当な寛骨臼カップと共に使用される。かかる寛骨臼カップは、例えば、金属若しくは高架橋ポリエチレンの関節面を伴う寛骨臼要素を有する金属大腿骨要素又は高架橋ポリエチレンのセラミック材料の関節面を伴う寛骨臼要素を有するセラミック大腿骨要素のような、耐摩耗性材料から形成された関節面を有している。しかしながら、最近では、軟性可撓性材料からリサーフェシングインプラントの関節面を形成する努力がなされており、かかる材料は、剛性若しくは「軟性」の類似する性質を伴う寛骨臼関節面に対して関節結合するように設けられる。
【0041】
カップ状に形成され且つ上記において説明されたインプラントの大腿骨頭への移植の例示的な方法においては、図7によれば、第1ドリルワイヤ57が、大腿骨頸部軸Nに沿って大腿骨頭49にまず挿入される。その後、インプラントのためのインプラント軸Aが、大腿骨頭部49における主な荷重の向きに少なくとも実質的に対応するように画定される。この目的のために、指示及び/測定手段を有するアライメント器具55が、第1ドリルワイヤ57に設定され、大腿骨頸部軸Nに対する移植軸Aの傾斜を画定し、かかる傾斜は、例えば、上記において説明したインプラントの中空スペース軸と始線との間の角度に実質的に対応するように傾斜する。この関係においては、例えば、機械的な補助手段のような適当な補助手段が、大腿骨頭の中心Mに配置するように使用され、頸部軸と移植軸との間の回転中心は、かかる大腿骨頭の中心Mに配置され得る。その後、第2ドリルワイヤ59が、画定された移植軸Aに沿って大腿骨頭49に挿入される。その後、アライメント器具55及び第1ドリルワイヤ57は除去される。その後、第2ドリルワイヤ59が、例えば、円錐断端部カッタのような適当な加工器具のためのガイド器具として使用され、処置された断端部が形成されるように大腿骨頭49を加工する。かかる処置された断端部は、上記において説明したインプラントの中空スペースに一致する形状であり、移植軸Aに関して回転対称である。その後、第2ドリルワイヤ59が除去される。その後、インプラント、特に上記において説明した種類のインプラントが処置された断端部にガイドされ、かかる処置された断端部に配置され、インプラントの中空スペース軸と移植軸とが一致する。この関係において、インプラントは、移植軸に対する中空スペース軸の傾きから保護され得る。この方法により処置された断端部35に移植されたインプラントは図3に示されている。インプラントは処置された大腿骨頭35において向きを有しており、インプラントの始線15が処置された大腿骨頭35の頸部軸Nに一致し、インプラントの中空スペース軸19が移植軸Aに一致し、大腿骨頭の主な荷重の向きに対応するか、若しくは実際には、好適な近似に少なくとも一致する。図3においては、移植軸Aは大腿骨頸部軸Nに対して前額面軸において傾斜している。しかしながら、通常、移植軸Aは大腿骨頸部軸Nに対して矢状面においてさらに傾斜している。これは、大腿骨前捻と称される。
【0042】
ここで述べられた記載の観点から、特許請求の範囲により特徴付けられる本発明の更なる実施例が当業者には明らかであり、かかる実施例は、ここでは明確には示されていない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1はインプラントの2つの実施例を示している。
【図2】図2はインプラントのさらなる実施例を示している。
【図3】図3はインプラントを伴う大腿骨の近位部を示している
【図4】図4はピン状の固着要素を伴うインプラントの実施例を示している。
【図5】図5はフィン状の固着要素を伴うインプラントの実施例を示している。
【図6】図6は中空スペースにおける歯状アレンジメントの製造のためのスタンプ器具の実施例を示している。
【図7】図7は大腿骨頸部軸に対するインプラント軸の傾斜を画定するアライメント器具の実施例を示している。
【参照番号の説明】
【0044】
11 球状部
13、13’ 平坦なベース面
15 始線
17 中空スペース
19 中空スペース軸
21 入口面
23 エンド面
25 ジャケット面
27 固着ピン
29 固着フィン
31 固着フィンの縁部のサイド
33 固着フィンの平坦なサイド
35 処置された断端部
37 カップ開口部の縁部
39、39’ 球面領域
41 シャフト
43 頭部パート
45 スタンプエッジ
47 大腿骨
49 大腿骨頭
51 大腿骨頸部
53 大転子
55 アライメント器具
57 第1ドリルワイヤ
59 第2ドリルワイヤ
171 隆起部
A 移植軸
M 球状部の中心
N 大腿骨頸部軸
a 始線と中空スペース軸との間の角度
2δ 円錐開口部の角度
【図1a】

【図1b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿骨頭の処置された断端部への移植のためのカップ状に形成されたインプラントであって、
前記インプラントは、平坦なベース面(13)と前記ベース面(13)に垂直に配置された始線(15)とを含む球状部(11)の形状を有し、前記球状部(11)においては、中空スペース(17)が、前記ベース面(13)から始まり配置されており、前記中空スペース(17)は、回転対称であり、中空スペース軸(19)を有し、前記中空スペース軸(19)は前記始線に対してゼロではない角度(a)で配置されていることを特徴とするインプラント。
【請求項2】
前記中空スペース軸(19)は前記始線(15)と交差していることを特徴とする請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記球状部(11)は球中心(M)を有し、前記中空スペース軸(19)は、前記球中心(M)において前記始線(15)と交差していることを特徴とする請求項1若しくは2に記載のインプラント。
【請求項4】
前記始線及び中空スペース軸(15、19)は、15°から50°、特に15°から35°の範囲の角度(a)を含んでいることを特徴とする請求固1乃至3のいずれか1つに記載のインプラント。
【請求項5】
前記球状部(11)は、38mmから60mmの範囲の球径を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載のインプラント。
【請求項6】
前記球状部(11)は、球径と前記始線(15)の向きに前記ベース面(13)から極部まで測定された高さとを有しており、前記高さは前記球径の60%から80%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載のインプラント。
【請求項7】
前記中空スペース(17)は前記球状部(11)の表面との交差部を含む内面(28)を有し、
前記内面(25)の少なくとも1つの周囲部は前記球状部(11)の球面領域(39)との交差部を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載のインプラント。
【請求項8】
前記内面(25)の第1周囲部が前記球状部(11)の前記球面領域(39)を通り且つ前記内面(25)の第2周囲部が前記ベース面(13)を通ることを特徴とする請求項7に記載のインプラント。
【請求項9】
前記中空スペースは円錐断端部(17)の形状を有し、前記中空スペース軸に沿って前記インプラントの前記内部に面する向きのテーパであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1つに記載のインプラント。
【請求項10】
前記円錐断端部(17)は、10°から65°、特に16°から50°の範囲である円錐開口角度(2δ)を有していることを特徴とする請求項9に記載のインプラント。
【請求項11】
前記中空スペース(17)は、前記断端部への前記インプラントの固着のための固着手段(27、29)を有する内側スペース(23、25)により境界を設けられていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1つに記載のインプラント。
【請求項12】
前記固着手段(27、29)は前記中空スペース軸(19)の周りに対称に分布して配置されていることを特徴とする請求項11に記載のインプラント。
【請求項13】
前記固着手段(27、29)は前記中空スペースに突出していることを特徴とする請求項11若しくは12に記載のインプラント。
【請求項14】
前記固着手段は、前記中空スペース(17)の縁部に返し構造を含み、前記返し構造は前記中空スペース(17)の開口部から前記インプラントの内部へ内側に曲げられていることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1つに記載のインプラント。
【請求項15】
前記固着手段(27、29)は、前記中空スペース軸(19)に平行に向けられた複数の固着リブ、固着フィン(29)、及び/若しくは固着ピン(27)を含んでいることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか1つに記載のインプラント。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−505762(P2009−505762A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528523(P2008−528523)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065869
【国際公開番号】WO2007/026003
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(504339572)ツィンマー・ゲーエムベーハー (9)
【Fターム(参考)】