説明

インプリント・リソグラフィ用マスク

【目的】容易に製造可能なアライメントマークを備えたインプリント・リソグラフィ用マスクを提供する。
【構成】透明材料からなる基板の表面を掘り込んだ凹凸で形成される転写パターンと、転写パターンと異なる箇所の表面を掘り込んだ凹凸で形成されるアライメントマークと、を有することを特徴とするインプリント・リソグラフィ用マスク。上記転写パターンの凹凸の凹部深さと、上記アライメントマークの凹凸の凹部深さが等しいことが望ましい。また、アライメントマークを形成する凹凸が周期性を有し、最大周期が189nm未満であることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント・リソグラフィ用マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体パターンの微細化は著しく進んでいる。半導体は、一般的にマスクに描画されたパターンをウェハに縮小投影する形で製造される。そのため、半導体の微細加工には縮小投影光学系における回折の影響による限界がある。
【0003】
縮小投影光学系が対応できる最小パターンサイズは使用する光の波長に比例する。このため、半導体露光装置の光源の短波長化は193nmまで進んでいる。しかし、これ以上の短波長化は、対応できる硝材がほとんどなくなる。したがって、次世代露光装置では真空中の反射光学系で構成される極紫外線(EUV光)を使ったものまで一気に進むと考えられている。
【0004】
もっとも、極紫外線を使った装置は解決すべき課題も多く、また非常にコスト高である。このため、その代案の1つとしてインプリント・リソグラフィが検討されている。
【0005】
インプリント・リソグラフィの原理は、半導体パターンと同サイズの転写パターンが彫られたガラスマスクをインプリント・レジストに押し付け、紫外線をガラスマスクを通して照射し、レジストを紫外線硬化させた後マスクを剥がす、いわば判子の原理である。そのため、インプリント・リソグラフィ用のマスクは、特許文献1にあるように、パターン領域が周辺の非パターン領域より突出した凸形状を持っている。
【0006】
特許文献2にはアライメントマークが、観察用レンズの解像度よりも小さい大きさの平面形状を有する凹凸部で形成される半導体基板の位置検出方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−23113号公報
【特許文献2】特開平9−22864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、容易に製造可能なアライメントマークを備えたインプリント・リソグラフィ用マスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様のインプリント・リソグラフィ用マスクは、透明材料からなる基板の表面を掘り込んだ凹凸で形成される転写パターンと、この転写パターンと異なる箇所の表面を掘り込んだ凹凸で形成されるアライメントマークと、を有することを特徴とする。
【0010】
上記態様のインプリント・リソグラフィ用マスクにおいて、転写パターンの凹凸の凹部深さと、アライメントマークの凹凸の凹部深さが等しいことが望ましい。
【0011】
上記態様のインプリント・リソグラフィ用マスクにおいて、アライメントマークを形成する凹凸が周期性を有し、最大周期が189nm未満であることが望ましい。
【0012】
上記態様のインプリント・リソグラフィ用マスクにおいて、アライメントマークを形成する凹凸が周期性を有し、最大周期がマスクの欠陥検査時のアライメント用光学系の解像度未満であることが望ましい。
【0013】
上記態様のインプリント・リソグラフィ用マスクにおいて、アライメントマークを形成する凹凸の凹部深さが、46nm以上66nm以下であることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容易に製造可能なアライメントマークを備えたインプリント・リソグラフィ用マスクを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態のインプリント・リソグラフィ用マスクの模式図である。
【図2】第1の実施の形態のアライメントマークの模式図である。
【図3】第2の実施の形態のアライメントマークの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0017】
なお、本明細書中、「周期」、「深さ」等の値は、該当する複数の箇所について測定した場合の平均値を意味するものとする。
【0018】
また、本明細書中、「転写パターン」とは、レジスト等に転写されるパターンのうち、回路パターンのように素子構造の製造のために用いられるパターンを意味する。例えば、仮にアライメントマークのパターンが、レジスト等に転写されるとしても、このパターンは転写パターンと称しないものとする。
【0019】
(第1の実施の形態)
本実施の形態のインプリント・リソグラフィ用マスクは、透明材料からなる基板の表面を掘り込んだ凹凸で形成される転写パターンと、転写パターンと異なる箇所の表面を掘り込んだ凹凸で形成されるアライメントマークと、を有する。
【0020】
図1は、本実施の形態のインプリント・リソグラフィ用マスクの模式図である。図1(a)が上面図、図1(b)が図1(a)のAA断面図、図1(c)が図1(b)の破線円部の拡大図である。
【0021】
インプリント・リソグラフィ用マスク10には、透明材料からなる基板12が用いられる。基板12は、例えば、石英ガラスである。
【0022】
インプリント・リソグラフィ用マスク10の上面には、パターン領域14と非パターン領域16が存在する。図1(b)に示すように、パターン領域14は、非パターン領域16から、数十ミクロンから数百ミクロン出っ張って形成されている。このため、ウェハ等へのスタンピング時には、ウェハ上に塗布されたレジストに接触するのはパターン領域14のみであり、非パターン領域16は接触しない。
【0023】
また、パターン領域14には、半導体ウェハ等へ転写される回路パターン等の転写パターンが形成されたパターン部18と、マスク10の欠陥検査の際に、マスク10を欠陥検査装置に対してアライメント(位置合わせ)するために用いられるアライメントマーク20が設けられている。アライメントは、マスクの欠陥検査に先立ち、欠陥検査装置に対するマスクの位置ずれや傾きなどを補正するために行われる。
【0024】
アライメントマーク20は、パターン領域14の4隅に設けられている。転写パターンとアライメントマーク20は、同一の平面上に存在する。
【0025】
パターン部18の転写パターンは、図1(c)に示すように、基板12の表面の透明材料を掘り込んだ凹凸で形成される。この転写パターンは、例えば、周期pと凹部深さdを備えている。
【0026】
アライメントマーク20は、パターン部18の転写パターンと異なる箇所の表面の透明材料を掘り込んだ凹凸で形成される。図2は、本実施の形態のアライメントマークの模式図である。図2(a)が上面図、図2(b)が図2(a)の破線円部の拡大断面図である。
【0027】
アライメントマーク20は、周期性を有する矩形のすだれ状パターンが4つ配置された第1のマーク20aと、第1のマーク20aの中央部に配置され周期性のない十字状パターンの第2のマーク20bで構成される。この第1のマーク20aは、例えば、周期pと凹部深さdを備えている。また、十字状パターンの第2のマーク20bは、例えば、交差する2本の直線状の凹部で形成される。
【0028】
本実施の形態のインプリント・リソグラフィ用マスク10では、アライメントマーク20もパターン部18と同様、基板12の表面の透明材料を掘り込んだ凹凸で形成される。したがって、アライメントマーク20のために、例えば、透明材料上に別種の膜を設けるなど付加的な構造・製造プロセスを採用する必要がない。したがって、低コストで容易にインプリント・リソグラフィ用マスクを製造することが可能となる。
【0029】
また、パターン部18の転写パターンの凹凸の凹部深さdと、アライメントマーク20の凹凸の凹部深さdが等しいことが望ましい。マスク10を製造する際に、パターン部18の転写パターンとアライメントマーク20の同時形成が容易となるからである。
【0030】
次に、本実施の形態のインプリント・リソグラフィ用マスク10を用いたマスク欠陥検査装置におけるマスクのアライメント方法の一例について簡単に説明する。
【0031】
マスク欠陥検査装置では、最初に可視光を用いた低倍率の第1のアライメント用光学系により、ラフな第1のアライメントを行う。この際には、第1のマーク20aを用いてアライメントを行う。このアライメントにより、第1のマーク20aのおおよその中央の位置を割り出す。すなわち、第2のマーク20bが、次の第2のアライメントでの視野におさまる精度でアライメントマーク20aの位置を特定する。
【0032】
次に、紫外光を用いた第2のアライメント用光学系により、さらに精度を上げた第2のアライメントを行う。この際には、第1のマーク20aの中央にある第2のマーク20bを用いてアライメントを行う。すなわち十字状パターンの交点部を用いてアライメントを行う。
【0033】
第2のアライメント用光学系では、第1のアライメント用光学系に比較して、高倍率で観察が可能となっている。第2のアライメント用光学系は、例えば、欠陥検査に用いる欠陥検査光学系と共通である。
【0034】
このように、可視光を用い低倍率でアライメントを行うための第1のアライメント用光学系と、紫外光を用い高倍率でアライメントを行うための第2のアライメント用光学系のそれぞれに適した2種のアライメントマークを有することで、より高精度のマスクアライメントを実現することが可能となる。
【0035】
ここで、アライメントマークの最大周期がマスクの欠陥検査時のアライメント用光学系の解像度未満であることが望ましい。ここで、最大周期とは、アライメントマークのパターンに複数の周期がある場合には、最も周期の大きなものを意味する。図2の第1のマーク20aの場合のように、単一の周期の場合は、最大周期とはその単一の周期を意味する。
【0036】
また、解像度は、アライメント用光学系のアライメント光の波長をλ、対物レンズの開口数をNAとした場合に、
解像度=λ/(2NA)・・・(式1)
で表わされるものとする。
【0037】
第1のマーク20aの最大周期がマスクの欠陥検査時の第1のアライメント用光学系の解像度未満とすることで、撮像される第1のマーク20aが解像されず、4つの矩形の暗いベタ領域として認識される。いいかえれば、最大周期が解像度未満のため、第1のマーク20aは解像されないが、周囲よりも一様に暗い領域として観察される。したがって、画像処理が容易になり、マーク位置検出精度も向上する。よって、安定して第2のマーク20bを、第2のアライメント光学系の視野にガイドすることが可能となる。
【0038】
例えば、第1のアライメント用光学系のアライメント光が波長400nmの可視光であり、対物レンズの開口数が0.70である場合、(式1)より解像度は286nmとなる。第1のアライメント用光学系のアライメント光には、装置構成上、可視光のうちでも短波長の400nm以上420nm未満の波長を用いることが好適である。
【0039】
また、アライメントマークを形成する凹凸の凹部深さdが、マスクの欠陥検査時のアライメント光の波長の20%以上30%以下であることが望ましい。これは、アライメント光の波長をλとすると、凹部の深さを波長λの25%、すなわちλ/4とすることで、凸部の表面で反射する光と、凹部の底面で反射する光の位相差がλ/2となり高いコントラストが得られるためである。20%以上30%以下とするのは加工ばらつき等を考慮するためである。また、±5%の範囲にあれば、高いコントラストが実現できるためである。
【0040】
例えば、第1のアライメント用光学系のアライメント光が波長400nmの可視光であり、第2のアライメント用光学系のアライメント光が波長193nmの紫外光であれば、第1のマークの凹部深さは、80nm以上120nm以下であることが望ましい。また、第2のマークの凹部深さは、39nm以上58nm以下であることが望ましい。
【0041】
特に、高倍率でアライメントを行う際の、コントラストを大きくすることが、アライメント精度を向上させる上で重要である。この観点から欠陥検査光学系を用いて行うアライメントにおいてアライメントマークのコントラストを向上させることが望ましい。
【0042】
欠陥検査光学系で用いられることが想定される光の波長は、185nm以上265nm以下の紫外光である。この範囲を下回ると、適当な光源や対応できる硝材がほとんどなくなる。また、この範囲を上回ると検査精度が低下する。したがって、アライメントマークを形成する凹凸の凹部深さが、波長185nm以上265nm以下のλ/4に相当する深さ、すなわち、46nm以上66nm以下であることが望ましい。
【0043】
(第2の実施の形態)
本実施の形態のインプリント用リソグラフィ用マスクは、アライメントマークに十字状パターンのマークがないこと以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容の記載は省略する。
【0044】
図3は、本実施の形態のアライメントマークの模式図である。図3(a)が上面図、図3(b)が図3(a)の破線円部の拡大断面図である。
【0045】
アライメントマーク30は、周期性を有する矩形のすだれ状パターンが4つ配置されたマークである。このアライメントマーク30は、例えば、周期pと凹部深さdを備えている。そして、アライメントマーク30を形成する凹凸の最大周期、ここでは周期pが、第2のアライメントで用いられる欠陥検査用光学系の解像度未満に設定されている。
【0046】
本実施の形態のインプリント用リソグラフィ用マスクでは、1種のアライメントマークで、可視光によるアライメントと欠陥検査用の紫外光によるアライメントを両立できるよう構成される。
【0047】
次に、本実施の形態のインプリント・リソグラフィ用マスク30を用いたマスク欠陥検査装置におけるマスクのアライメント方法の一例について簡単に説明する。
【0048】
マスク欠陥検査装置では、最初に可視光を用いた第1のアライメント用光学系により、ラフな第1のアライメントを行う。この際には、アライメントマーク30のおおよその中央の位置を割り出す。この際、凹凸の最大周期が、紫外光を用いる欠陥検査用光学系の解像度未満に設定されることで、アライメントマーク30が、より波長の長い可視光でも解像されず、4つの矩形の暗いベタ領域として認識される。
【0049】
次に、紫外光を用いた第2のアライメント用光学系、すなわち欠陥検査用光学系により、さらに精度を上げた第2のアライメントを行う。この際には、アライメントマーク30の角部を用いてアライメントを行う。この際も、凹凸の最大周期が、紫外光を用いる欠陥検査用光学系の解像度未満に設定されることで、アライメントマークが解像されず、4つの矩形の暗いベタ領域として認識される。
【0050】
上述のように、欠陥検査光学系で用いられることが想定される光の波長は、185nm以上265nm以下である。また、欠陥検査用光学系で用いられ対物レンズのNAは0.7以上であると想定される。
【0051】
したがって、(式1)を用いて、周期pが、解像度=265nm/(2×0.7)未満、すなわち、189nm未満であることが望ましい。また、欠陥検査装置で実現可能なNAは0.9以下である。したがって、周期pが、解像度=185nm/(2×0.9)未満、すなわち、103nm未満であることがより望ましい。最大周期が上記範囲であれば、可視光による第1のアライメントおよび紫外光による第2のアライメントいずれの場合にも、アライメントマークが解像されず、4つの矩形の暗いベタ領域として認識される。よって、高い精度のマスクアライメントが実現可能となる。
【0052】
本実施の形態のインプリント用リソグラフィ用マスクでは、第1の実施の形態より簡略化したマークにより、高い精度のマスクアライメントが実現可能となる。
【0053】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0054】
例えば、アライメントマークの形状として、すだれ状パターンと十字状パターンを例に説明したが、例えば、格子状パターン、周期性のないランダム状パターン等その他の形状を採用することも可能である。
【0055】
また、実施の形態においては、アライメントマークをパターン領域の4隅に配置する場合を例に説明したが、必ずしも4隅である必要はなく、例えば、対角線上の2隅に配置しても、パターン部の4辺の中央部に配置するものであってもかまわない。
【0056】
また、パターン部の転写パターンとアライメントマークの凹部深さが等しい場合を例について主に説明したが、パターン部はパターン転写のために深さを最適化し、アライメントマークはアライメント時のコントラストを得るために深さを最適化し、深さが異なってもかまわない。
【0057】
また、本実施の形態においては、アライメント方法として、第1および第2のアライメント用光学系を用いる場合を例に説明した。しかしながら、実施の形態のインプリント・リソグラフィ用マスクは、1つのアライメント用光学系、例えば、欠陥検査用光学系のみでアライメントを行う場合であっても有効である。
【0058】
また、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる構成等を適宜選択して用いることができる。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのインプリント・リソグラフィ用マスクは、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0059】
10 インプリント・リソグラフィ用マスク
12 基板
14 パターン領域
16 非パターン領域
18 パターン部
20 アライメントマーク
20a 第1のマーク
20b 第2のマーク
30 アライメントマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明材料からなる基板の表面を掘り込んだ凹凸で形成される転写パターンと、
前記転写パターンと異なる箇所の前記表面を掘り込んだ凹凸で形成されるアライメントマークと、
を有することを特徴とするインプリント・リソグラフィ用マスク。
【請求項2】
前記転写パターンの凹凸の凹部深さと、前記アライメントマークの凹凸の凹部深さが等しいことを特徴とする請求項1記載のインプリント・リソグラフィ用マスク。
【請求項3】
前記アライメントマークを形成する凹凸が周期性を有し、最大周期が189nm未満であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のインプリント・リソグラフィ用マスク。
【請求項4】
前記アライメントマークを形成する凹凸が周期性を有し、最大周期がマスクの欠陥検査時のアライメント用光学系の解像度未満であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のインプリント・リソグラフィ用マスク。
【請求項5】
前記アライメントマークを形成する凹凸の凹部深さが、46nm以上66nm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項記載のインプリント・リソグラフィ用マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−109428(P2012−109428A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257651(P2010−257651)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】