説明

インプリント成形用組成物

【課題】金属酸化物に対する接着性に優れ、モールドから脱型し易く、表面の少なくとも一部が金属酸化物からなる基材上におけるインプリント成形に用いられる紫外線硬化型のインプリント成形用組成物を提供する。
【解決手段】ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種の(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と、(メタ)アクリレートモノマー(B)と、光重合開始剤(C)とを含み、前記(メタ)アクリレートモノマー(B)が下記一般式(I):


[式中、R1は炭素数4〜14のアルキル基であり、R2は水素又はメチル基である]で表わされるアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B1)とヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B2)とを含むことを特徴とするインプリント成形用組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント成形用組成物、特には、表面の少なくとも一部が金属酸化物からなる基材上におけるインプリント成形に用いられ、硬化後にモールドから脱型し易いインプリント成形用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、微細なパターンを低コストで形成する技術としてインプリント成形技術が精力的に研究されている。該インプリント成形技術は、基材上に配置した樹脂材料層に所望の凹凸を有するモールドを押し当てることで所望のパターンを基材上に形成する技術である。そして、該インプリント成形技術においては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用い、熱でパターンを形成する方法と、紫外線硬化型の樹脂を用い、紫外線照射でパターンを形成する方法が知られている。
【0003】
熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いた場合は、加熱及び加圧に大量のエネルギーを消費せざるを得ず、また、成形時間が長くなって、生産性が低下する問題がある。一方、紫外線硬化型樹脂を用いた場合は、インプリント成形用のモールド、特にはNi電鋳モールドに接着し易く、脱型時に紫外線硬化樹脂自体が破損することがある。また、通常の紫外線硬化型樹脂を用いた場合は、硬化時の収縮が大きいため、形成されたパターンと基材との密着性が悪く、表面が金属酸化物、特にはIZOやITO等の透明金属酸化物からなる基材に対して接着性が悪いという問題もあった。
【0004】
【特許文献1】特開2006−272947号公報
【非特許文献1】「ナノインプリントの開発と応用」,松井真二,古室昌徳監修,シーエムシー出版,(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、エネルギー消費量が小さく、成形時間が短い上、金属酸化物に対する接着性に優れ、モールドから脱型し易く、表面の少なくとも一部が金属酸化物からなる基材上におけるインプリント成形に用いられる紫外線硬化型のインプリント成形用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の(メタ)アクリレートオリゴマーと、疎水性の長鎖アルキル基を有する特定の(メタ)アクリレートモノマーと、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーとを含む組成物が、金属酸化物に対する接着性に優れる上、Ni電鋳モールド等のモールドから脱型し易いことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明のインプリント成形用組成物は、表面の少なくとも一部が金属酸化物からなる基材上におけるインプリント成形に用いられる組成物であって、
・ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種の(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と、
・(メタ)アクリレートモノマー(B)と、
・光重合開始剤(C)とを含み、
・前記(メタ)アクリレートモノマー(B)が、下記一般式(I):
【化1】

[式中、R1は炭素数4〜14のアルキル基であり、R2は水素又はメチル基である]で表わされるアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B1)と、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B2)とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明のインプリント成形用組成物の好適例においては、前記アルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B1)の含有量が組成物全体の5〜20質量%である。
【0009】
本発明のインプリント成形用組成物の他の好適例においては、前記(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と前記(メタ)アクリレートモノマー(B)との総配合量中の前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B2)の割合が40〜60質量%である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定の(メタ)アクリレートオリゴマーと、疎水性の長鎖アルキル基を有する特定の(メタ)アクリレートモノマーと、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーとを含み、エネルギー消費量が小さく、成形時間が短い上、金属酸化物に対する接着性に優れ、モールドから脱型し易い、紫外線硬化性のインプリント成形用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のインプリント成形用組成物は、表面の少なくとも一部が金属酸化物からなる基材上におけるインプリント成形に用いられる組成物であって、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種の(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と、(メタ)アクリレートモノマー(B)と、光重合開始剤(C)とを含み、前記(メタ)アクリレートモノマー(B)が、前記一般式(I)で表わされるアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B1)とヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B2)とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明のインプリント成形用組成物においては、前記一般式(I)で表わされるアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B1)が疎水性の長鎖アルキル基を有するため、モールド、特には、Ni電鋳モールドに接着し難い。そのため、本発明のインプリント成形用組成物をモールド中で成形後、脱型する際に成形物が破壊され難い。また、本発明のインプリント成形用組成物においては、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマーのヒドロキシル基がIZOやITO等の金属酸化物と水素結合するため、これら金属酸化物に対する接着性が大幅に向上しており、脱型時のパターン剥がれを防止することができる。更に、本発明のインプリント成形用組成物は、上記モノマー(B)に比べて分子量が大きいウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを含むため、紫外線照射で形成される成形物が高い強度を有する。
【0013】
本発明のインプリント成形用組成物に用いる(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーであり、ウレタンアクリレートオリゴマー及び/又はエポキシアクリレートオリゴマーであることが好ましい。なお、これら(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。インプリント成形用組成物がこれら(メタ)アクリレートオリゴマー(A)を含まない場合、紫外線照射で形成される成形物の強度が低下してしまう。
【0014】
上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−又はCH2=C(CH3)COO−)を1つ以上有し、ウレタン結合(−NHCOO−)を複数有する化合物である。該ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとからウレタンプレポリマーを合成し、該ウレタンプレポリマーに水酸基を有する(メタ)アクリレートを付加させることによって製造することができる。
【0015】
上記ウレタンプレポリマーの合成に用いるポリオールは、水酸基(OH基)を複数有する化合物であり、該ポリオールとして、具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブタジエンポリオール、アルキレンオキサイド変性ポリブタジエンポリオール及びポリイソプレンポリオール等が挙げられる。なお、上記ポリエーテルポリオールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコールに、エチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキサイドを付加させて得られ、また、上記ポリエステルポリオールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールと、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、セバシン酸、ピメリン酸、スベリン酸等の多価カルボン酸とから得られる。
【0016】
上記ポリイソシアネートは、イソシアネート基(NCO基)を複数有する化合物であって、該ポリイソシアネートとして、具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート(クルードMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)や、これらのイソシアヌレート変性物、カルボジイミド変性物、グリコール変性物等が挙げられる。
【0017】
上記ウレタンプレポリマーの合成においては、ウレタン化反応用の触媒を用いることが好ましい。該ウレタン化反応用触媒としては、有機スズ化合物、無機スズ化合物、有機鉛化合物、モノアミン類、ジアミン類、トリアミン類、環状アミン類、アルコールアミン類、エーテルアミン類、有機スルホン酸、無機酸、チタン化合物、ビスマス化合物、四級アンモニウム塩等が挙げられ、これらの中でも、有機スズ化合物が好ましい。また、好適な有機スズ化合物としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズチオカルボキシレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズチオカルボキシレート、オクテン酸スズ、モノブチルスズオキシド等が挙げられる。
【0018】
また、上記ウレタンプレポリマーに付加させる水酸基を有する(メタ)アクリレートは、水酸基を1つ以上有し、(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ以上有する化合物である。該水酸基を有する(メタ)アクリレートは、上記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基に付加することができる。該水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
また、上記エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、グリシジル基を有する化合物、好ましくは、グリシジル基を有し且つベンゼン環、ナフタレン環、スピロ環、ジシクロペンタジエン、トリシクロデカン等の環状構造を有する化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させることによって製造することができる。
【0020】
上記グリシジル基を有する化合物としては、ビスフェノールA又はビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの反応によって得られるビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0021】
本発明のインプリント成形用組成物において、上記(メタ)アクリレートオリゴマー(A)の含有量は、組成物全体の20〜60質量%の範囲が好ましい。(メタ)アクリレートオリゴマー(A)の含有量が20質量%以上であれば、十分な強度を有する成形物を得ることができ、また、(メタ)アクリレートオリゴマー(A)の含有量が60質量%以下であれば、組成物の粘度が十分に低く、モールドへ流れ込み易くなる。
【0022】
本発明のインプリント成形用組成物に用いる(メタ)アクリレートモノマー(B)は、少なくとも一部が前記一般式(I)で表わされるアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B1)である。式(I)のアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B1)は、R1として炭素数4〜14の疎水性の長鎖アルキル基を有するため、成形物のモールドからの脱型を容易にする作用を有する。なお、R1が炭素数3以下の低級アルキル基である場合、(メタ)アクリレートモノマーの疎水性が不十分で、成形物のモールドからの脱型性が悪い。一方、R1が炭素数15以上の長鎖アルキル基である場合、(メタ)アクリレートモノマーの取り扱い性が悪い上、(メタ)アクリレートオリゴマー(A)との相溶性も悪い。
【0023】
上記一般式(I)において、R1は炭素数4〜14のアルキル基であって、直鎖状でも分岐鎖状であってもよく、R2は水素又はメチル基である。R1において、炭素数4〜14のアルキル基として、具体的には、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基(例えば、ラウリル基等)、各種トリデシル基、各種テトラデシル基(例えば、ミリスチル基、イソミリスチル基等)が挙げられ、これらの中でも、ラウリル基及びイソミリスチル基が好ましい。
【0024】
上記式(I)のアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B1)として、具体的には、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの中でも、イソミリスチル(メタ)アクリレート及びラウリル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、これら式(I)のアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B1)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明のインプリント成形用組成物において、上記一般式(I)で表わされるアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B1)の含有量は、組成物全体の5〜20質量%の範囲が好ましい。式(I)のアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B1)の割合が5質量%以上であれば、成形物のモールドからの脱型性を十分に向上させることができ、一方、式(I)のアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B1)の割合が20質量%以下であれば、硬化成分の粘着性を抑えることができる。
【0026】
また、本発明のインプリント成形用組成物に用いる(メタ)アクリレートモノマー(B)は、少なくとも一部がヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B2)であり、ヒドロキシル基含有アクリレートモノマーを含むことが好ましい。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマーのヒドロキシル基は、IZOやITO等の金属酸化物と水素結合するため、金属酸化物に対する接着性を向上させ、脱型時に表面の少なくとも一部が金属酸化物からなる基材から成形物が剥離するのを抑制できる。
【0027】
上記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマーは、水酸基を1つ以上有し、(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ以上有する化合物である。かかるヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマーとして、具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらの中でも、2-ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。なお、これらヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B2)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明のインプリント成形用組成物において、上記(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と上記(メタ)アクリレートモノマー(B)との総配合量中の上記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B2)の割合は、40〜60質量%の範囲が好ましい。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B2)の割合が40質量%以上であれば、インプリント成形用組成物の金属酸化物に対する接着性を十分に向上させることができ、一方、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B2)の割合が60質量%以下であれば、紫外線照射で形成される成形物の強度が十分に高い。
【0029】
なお、上記(メタ)アクリレートモノマー(B)は、式(I)のアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B1)及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B2)以外の(メタ)アクリレートモノマーを更に含んでもよい。
【0030】
本発明のインプリント成形用組成物に用いる光重合開始剤(C)は、紫外線を照射されることによって、上述した(メタ)アクリレートオリゴマー(A)や(メタ)アクリレートモノマー(B)の重合を開始させる作用を有する。該光重合開始剤(C)としては、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エステル、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、アルコキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン及び3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4,4-ジメトキシベンゾフェノン、4,4-ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4-ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジル及びベンジルメチルケタール等のベンジル誘導体、ベンゾイン及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体、ベンゾインイソプロピルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、キサントン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、フルオレン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタノン-1等が挙げられる。これら光重合開始剤(C)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
本発明のインプリント成形用組成物における上記光重合開始剤(C)の含有量は、組成物全体の0.1〜10質量%の範囲が好ましい。光重合開始剤(C)の含有量が0.1質量%以上であれば、インプリント成形用組成物の紫外線硬化を十分に開始させることができ、一方、10質量%を超えると、紫外線硬化を開始させる効果が飽和する一方、インプリント成形用組成物の原料コストが高くなり、また、重合にあたり、ラジカル濃度が過大となるため、アルキル基の成長ラジカルが瞬時に多く発生し、分子量が伸びず、脆弱なポリマーが出来る。
【0032】
上述のように、本発明のインプリント成形用組成物は、紫外線照射により硬化後、モールドから脱型し易く、また、金属酸化物に対する接着性に優れる。従って、本発明のインプリント成形用組成物を紫外線照射により硬化させてなる成形物は、脱型時に成形物自体が破損することがなく、また、表面の少なくとも一部が金属酸化物からなる基材から剥離し難いため、ディスプレイ用リブ材等として好適である。なお、本発明のインプリント成形用組成物を硬化させる際の紫外線の照射条件は特に限定されず、適宜設定することができる。
【0033】
本発明の組成物を用いてインプリント成形を行う場合、基材としては、上述した本発明の効果が十分に発揮される基材、即ち、表面の少なくとも一部が金属酸化物からなる基材を用いる。ここで、基材の表面を構成する金属酸化物としては、IZOやITO等の透明金属酸化物が好ましい。また、基材は、全面が金属酸化物で構成されていても、いなくてもよいし、基材の内部は特に限定されず、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムであってもよい。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
表1及び表2に示す配合のインプリント成形用組成物を調製した。なお、組成物の調製において、各成分が相溶している場合を○とし、非相溶の場合を×とした。次に得られたインプリント成形用組成物に対して、下記の方法でIZOフィルム及びNi電鋳板に対する剥離力を測定し、また、Ni電鋳モールドからの剥離性を評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0036】
(1)IZOフィルム及びNi電鋳板に対する剥離力の測定方法
IZOスパッタフィルムに目的とするUV硬化性のインプリント成形用組成物を塗布し、Ni電鋳板[丸長鍍金製]を貼り合せる。その後、IZOスパッタフィルム側からUVランプ[(株)フュージョンジャパン, 型式Light Hammer 10]を用い、700 mW/cm2, 3000 mJ/cm2の紫外光を当て、UV硬化性組成物を硬化させる。更に、得られたサンプルを25 mm×125 mmの短冊状にカットし、Ni電鋳板とIZOスパッタフィルムを剥離試験機[オリエンテック製, STA−1150]の専用チャックで締め、50 mm/minで引っ張り、得られた荷重値とフィルム幅から剥離力を算出した。
【0037】
(2)Ni電鋳モールドからの剥離性の評価方法
モールドからの剥離性の評価は、フィルムをモールドから剥がす際、パターン欠陥や剥がれが無いものを○とし、樹脂パターンの欠陥があったり、パターン剥がれがあったり、Niに対する接着力が強いことによるフィルム破れが生じた場合を×とした。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
*1 共栄社化学製, 商品名「3002A」, エポキシアクリレートオリゴマー, 重量平均分子量(Mw)=600, ビスフェノールA骨格
*2 共栄社化学製, 商品名「HO−A」, 2-ヒドロキシエチルアクリレート
*3 共栄社化学製, 商品名「LA」, ラウリルアクリレート, 式(I)で表わされR1が炭素数12のアルキル基でR2が水素であるモノマー
*4 共栄社化学製, 商品名「IM−A」, イソミリスチルアクリレート, 式(I)で表わされR1が炭素数14のアルキル基でR2が水素であるモノマー
*5 新中村化学製, 商品名「L」, ラウリルメタクリレート, 式(I)で表わされR1が炭素数12のアルキル基でR2がメチル基であるモノマー
*6 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製, 商品名「IRGACURE 184」, 1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン
*7 共栄社化学製, 商品名「SA」, ステアリルアクリレート, 式(I)で表わされR1が炭素数18のアルキル基でR2が水素であるモノマー
*8 共栄社化学製, 商品名「FA−108」, パーフルオロエチルアクリレート
*9 大阪有機化学工業製, 商品名「ビスコート8F」, 1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルアクリレート
*10 信越シリコーン製, 商品名「X−22−2445」, シリコーンアクリレート, 官能基等量=1600
*11 信越シリコーン製, 商品名「X−22−2459」, シリコーンアクリレート, 官能基等量=930
【0041】
表1から、(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と、式(I)のアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B1)と、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B2)を含む実施例のインプリント成形用組成物は、IZOフィルムに対する剥離力が十分高い一方、Ni電鋳板に対する剥離力が十分低く、また、Ni電鋳モールドからの剥離性も良好であった。
【0042】
一方、(メタ)アクリレートオリゴマー(A)とヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B2)を含むものの、式(I)のアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B1)を含まない比較例1のインプリント成形用組成物は、Ni電鋳板に対する剥離力が高く、また、Ni電鋳モールドからの剥離性も悪く、UV硬化樹脂自体が破壊してしまった。
【0043】
また、比較例2のインプリント成形用組成物においては、ステアリルアクリレートとエポキシアクリレートオリゴマーとが非相溶であった。
【0044】
更に、式(I)のアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B1)を含まず、フッ素又はケイ素含有(メタ)アクリレートモノマーを含む比較例3〜6のインプリント成形用組成物は、比較例1のインプリント成形用組成物よりもNi電鋳板に対する剥離力が更に高く、また、Ni電鋳モールドからの剥離性も悪く、UV硬化樹脂自体が破壊してしまった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の少なくとも一部が金属酸化物からなる基材上におけるインプリント成形に用いられる組成物であって、
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種の(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と、(メタ)アクリレートモノマー(B)と、光重合開始剤(C)とを含み、
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)が、下記一般式(I):
【化1】

[式中、R1は炭素数4〜14のアルキル基であり、R2は水素又はメチル基である]で表わされるアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B1)と、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B2)とを含むことを特徴とするインプリント成形用組成物。
【請求項2】
前記アルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B1)の含有量が組成物全体の5〜20質量%であることを特徴とする請求項1に記載のインプリント成形用組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と前記(メタ)アクリレートモノマー(B)との総配合量中の前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマー(B2)の割合が40〜60質量%であることを特徴とする請求項1に記載のインプリント成形用組成物。

【公開番号】特開2009−209245(P2009−209245A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52570(P2008−52570)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】