説明

インプリント用レジスト材料、パターン形成方法、及びインプリント装置

【課題】 インプリントのために基板上に載置するレジスト膜の膜厚を薄く且つ精度良く制御することができ、パターン寸法精度の向上に寄与する。
【解決手段】 インプリントプロセスを用いたパターン形成方法であって、基板上10に、不揮発性の第1の樹脂成分、揮発性の第2の樹脂成分、及び第1の樹脂成分の硬化反応を促進する結合反応開始材を含むインプリント用のレジスト20を、空間的に離散した状態で載置し、レジスト20中の第2の樹脂成分を揮発させることにより、レジスト20の体積を減少させ、体積減少処理工程後のレジスト20に対して、テンプレート30のパターン面を押印し、テンプレート30のパターン面が押印された状態でレジスト21を硬化させ、レジスト21が硬化した後に該レジスト21からテンプレート30を剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体素子などのパターンを形成するためのインプリントプロセスに使用するインプリント用レジスト材料、インプリントプロセスを用いたパターン形成方法、及びインプリントプロセスを実施するためのインプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの製造において、所望パターン(ネガ像)が形成されたテンプレートと呼称されるスタンプを対象基板上のレジスト材料に押印することにより、所望パターン(ポジ像)を得るインプリントリソグラフィが注目されている。このインプリントリソグラフィには大別して、熱インプリント方式と光ナノインプリント方式が存在する。光ナノインプリント方式は、レジスト材料を硬化させるために加熱する必要もないため、多重配線を形成するための重ね合わせ(overlay)が高い位置精度で必要な微細素子製造にも適用できる。特に、光硬化性樹脂としてUV硬化樹脂を用いるUVインプリントに利点があると考えられる。
【0003】
UVインプリントリソグラフィの手法の一つに、インクジェットなどの方法を用いて基板上の空間にレジスト材料を離散的に載置する手法がある。この方法の利点は、テンプレート上のパターン配置に応じて必要な位置に必要なレジスト量を載置することで、RLT(residual layer thickness)と呼称されるテンプレートと基板の間に残留するレジスト膜厚をパターン間で均一化し、加工後のパターン寸法精度を高められることである。
【0004】
微細パターン形成においては、テンプレートの離型時におけるレジストパターン破壊の問題やレジスト材料の充填性の問題から、レジストパターンの高さに低くする必要がある。レジストパターン膜厚が減少すると、基板上の被加工膜の加工における加工マスクとしてのレジスト膜厚の不足を補うために、RLTを薄くする必要が生じる。
【0005】
しかし、レジストパターン高さが低く、かつRLTを薄くするには、所定領域において必要なレジスト量も減少するため、離散的に載置するレジスト小滴の総量を減らす必要がある。前記RLT膜厚によるパターン寸法精度の観点から、レジスト小滴の載置間隔を単純に広げることは望ましくない。載置されたレジスト小滴一つ当たりの体積を減少させることが望ましいが、現実にはインクジェットノズルの制約から、基板上に載置可能なレジスト小滴の量には下限が存在する。
【0006】
ここで、ラジカル重合型のUV硬化樹脂から成るレジスト材料の主成分が揮発性を有する材料だけから成る場合、インクジェットノズルを用いて載置されたレジスト材料の体積を減少させることはできる。しかし、一度のテンプレートで押印される単位領域の内部で揮発量に差が生じるため、インプリント実施前にパターン密度に応じたレジスト小滴を載置するにおいて、揮発量を考慮するだけ複雑さが増し、精度を低下させる要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−199496号公報
【特許文献2】国際公開第2010/0112310号 A1
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.Haisma, M.Verheijen, K.Van der Heuvel and J.Van den Berg, J.Vac.Sci.&Technol. B.14(6)4124(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明が解決しようとする課題は、インプリントのために基板上に載置するレジスト小滴を少量且つ精度良く制御することができ、パターン寸法精度の向上に寄与し得るインプリント用レジスト材料、パターン形成方法、及びインプリント装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態によれば、インプリントパターンの形成に用いるインプリント用のレジスト材料であって、前記インプリントパターンを形成すべき基板上で不揮発性となる第1の樹脂成分と、前記基板上で揮発性となる第2の樹脂成分と、前記第1の樹脂成分の硬化反応を促進する結合反応開始材と、を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係わるレジスト材料を説明するためのもので、レジスト材料の揮発によりレジスト小滴の体積が変化する様子を示す断面図。
【図2】第1の実施形態のレジスト材料における載置後の経過時間と小適量との関係を示す図。
【図3】第2の実施形態に係わるパターン形成方法を説明するための工程断面図。
【図4】第3の実施形態に係わるインプリント装置を示す概略構成図。
【図5】第4の実施形態に係わるインプリント装置を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態の詳細を、図面を参照して説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
本実施形態では、インプリントプロセスに使用するインプリント用レジスト材料について説明する。特に、インクジェットノズルを用いて基板上に離散的に載置する例に適用するものである。
【0014】
一般的なインプリント用レジスト材料は、第1の樹脂成分として揮発性を有しない樹脂であってラジカル重合性を有する材料を主成分とし、光ラジカル発生剤を反応開始剤として含むUV硬化樹脂である。インプリント特性を良好にするためには、更に表面エネルギー状態や、テンプレートとの剥離性、基板との密着性を制御する添加物を含むことが望ましい。本実施形態の特徴とするのは、上記のUV硬化樹脂が、さらに第2の樹脂成分として、揮発性のある樹脂を含むことである。
【0015】
即ち、本実施形態のレジスト材料は、インプリントパターンを形成すべき基板上で実質的に不揮発性となる第1の樹脂成分、基板上で実質的に揮発性となる第2の樹脂成分、及び第1の樹脂成分の硬化反応を促進する結合反応開始材から構成されている。
【0016】
なお、UV硬化樹脂にはラジカル重合型とカチオン重合型がある。カチオン重合型は、主成分としてエポキシ,オキタセン,ビニルエーテルなどの誘導体、重合開始剤として光酸発生剤、その他添加剤を含む。ラジカル重合型は、主成分としてラジカル重合が可能なビニル基や(メタ)アクリル基を有するモノマー又はオリゴマーを含み、光ラジカル発生剤、その他添加材を含む。ラジカル重合性の硬化性組成物は、光を照射すると、光重合開始剤により発生したラジカルがビニル基に作用して連鎖重合が進み、ポリマーを形成する。また、2官能以上の多官能基モノマーやオリゴマーを用いた場合には、架橋構造体を得ることができる。硬化速度が速いラジカル重合型のUV硬化樹脂がこのうち、UVインプリントには有効と考えられる。
【0017】
本実施形態に係わるインプリント材料の使用法を示す。
【0018】
テンプレートの押印前に必要とされるレジスト量に対して、第2の樹脂成分の揮発による体積変化を考慮して、レジスト材料を基板上に載置する。具体的には、揮発性を有しない第1の樹脂成分、揮発性を有する第2の樹脂成分、ラジカル発生剤や密着性制御用の添加物などの第3成分の体積比率をそれぞれA%、B%、C%(A+B+C=100%)であるレジストを用いる。現実には、添加物である第3成分が多いと形成されるレジストパターンの強度やエッチング耐性に問題が生じることから、Cは10%以下であることが多い。
【0019】
ここで、第2の樹脂成分が全て揮発した場合、体積は(A+C)%となる。従って、ある位置において必要なレジスト量がm[pL]であった場合には、インクジェットノズル等から吐出すべきレジスト量はm×100/(A+C)[pL]となる。
【0020】
例えば、ある位置において必要とされるテンプレート押印前のレジスト量がm=0.1pLである場合、C<<A,A=10%,B=90%の場合には、当該位置における吐出量は1pLとなる。
【0021】
現在のインクジェットヘッドの最少吐出量は1pL程度である。従って、第1の樹脂成分(A%)と前記第3成分(C%)から構成される既存レジストでは、前記0.1pLのレジスト小滴の載置は困難である。これに対して本実施形態では、レジスト材に揮発性を有する第2の樹脂成分を十分に含ませておくことにより、既存のインクジェットヘッドの1pL程度の吐出量でも0.1pL程度のレジスト小滴の載置が可能となる。
【0022】
図1(a)は、基板10上にインクジェットヘッドを用いてレジスト小滴20を形成した状態である。このときのレジスト小滴20の成分はA+B+Cである。図1(b)は、一定時間の放置又は熱処理により積極的に第2の樹脂成分を揮発させた状態であり、レジスト小滴20の体積が減少している。このときのレジスト小滴20の成分はA+Cである。
【0023】
一方、従来技術として揮発性を有する第2の樹脂成分(B%)と第3成分からなる既存レジスト材料が考えられる。この場合、レジスト材料が基板上に載置されて、UV照射による硬化を実施されるまでの間は体積変化が継続的に生じる。テンプレートで押印される所定範囲のレジスト載置に位置による時間差がある場合には、体積変化の継続時間は位置によって異なる。また、揮発現象は表面積に依存する現象であることから、初期のレジスト体積(或いは表面積)によって体積変化率が異なる。このように複数の要因が存在することから、基板上に吐出すべきレジスト量の算出が複雑となり、その精度が低下する危険がある。
【0024】
これに対し本実施形態にかかる方法では、十分な揮発が生じる場合には、レジスト材料の体積減少量は初期体積のみに依存し、またテンプレートの押印範囲の位置によらず最終的なレジスト小滴量は同一である。このことから、レジスト小滴の載置量の精度が良くなり、加工後のパターン寸法精度が向上する。
【0025】
図2は、レジスト小滴の堆積の時間特性を示す図である。室温で放置しても良いが、熱処理等を施すことにより、レジスト小滴の堆積は第2の樹脂成分の揮発により急激に減少する。第2の樹脂成分Bが揮発されてしまうと、レジストの厚みは殆ど変化しない。つまり、一定時間以上の放置又は熱処理により、レジスト小滴の堆積を制御性良く定めることができる。
【0026】
ここで、第1の樹脂成分は、室温としては実効的に揮発性を有さない樹脂材料である。具体的には特定のアクリレート誘導体、或いは特定の不飽和ポリエステル誘導体である。さらに望ましくは、特定のアクリレート誘導体が挙げられる。室温において実効的に揮発性を有さない特性の目安として、沸点が100℃以上のものが挙げられる。そのような例として、脂環アクリレート、t−ブチルアクリレート、エチルカルブチオールアクリレート、フェノキシエチルアクリレートなどがある。
【0027】
次に、第2の樹脂成分は室温において実質的に揮発性を有する樹脂材料である。具体的には、沸点が100℃以下のアクリレート誘導体や、エポキシ類が挙げられる。具体的な例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、テトラフルフリルアクリレート、肪環エポキシなどがある。但し、揮発性が高い樹脂成分の中には、人体への有害性が明確でない材料も存在することから、工業的な利用においては少量の不純物を含めて材料の安全性の確認とともに、排気の確保を必要とする。しかし、本実施形態の趣旨に照らして、ここに掲げた成分の使用に限定されることはない。
【0028】
また、ラジカル発生剤の例として、2,4,6−トリメチルジフェニルフォスフィンオキサイ、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンなどが挙げられる。しかし、本実施形態の趣旨に照らして、ここに掲げた光ラジカル開始剤の使用に限定されることはない。
【0029】
このように本実施形態によれば、不揮発性の第1の樹脂成分、揮発性の第2の樹脂成分、及び第1の樹脂成分の硬化反応を促進する結合反応開始材でインプリント用レジスト材料を作製することにより、インプリントのために基板上に載置するレジスト膜の膜厚を薄く且つ精度良く制御することができる。従って、インプリントで形成するパターンの寸法精度の向上に寄与することが可能となる。
【0030】
(第2の実施形態)
次に、先の第1の実施形態のレジスト材料を用いたインプリントプロセスについて説明する。
【0031】
図3(a)〜(d)は、本実施形態に係わるインプリントプロセスを示す工程断面図である。
【0032】
まず、テンプレート上のパターンデータに応じて、テンプレートの押印時に基板上の各位置において必要なレジスト小滴の量乃至密度を算出する。第1の実施形態に記載したように、レジスト材料中の揮発性を有する第2の樹脂成分の割合、或いは実験データによる補正結果に応じて、インクジェットノズルによって基板上に載置するレジスト小滴の量乃至密度を算出する。そして、算出された情報に基づいて基板上にレジストをノズルから吐出することにより、図3(a)に示すように、基板10上にレジスト小滴20を形成する。ここで、パターンの密なところではレジスト小滴の載置数を少なくし、パターンの疎なところではレジスト小滴の載置数を多くする。さらに、各々の載置点におけるレジスト小滴の量は同じとする。
【0033】
次いで、図3(b)に示すように、基板10上に載置されたレジスト小滴20に対して、レジスト小滴20中の揮発性を有する第2の樹脂成分が実質的に全て揮発させるための揮発工程を実施する。これにより、レジスト小滴20の膜厚が減少する。
【0034】
前記第2の樹脂成分が揮発し、揮発性を有しない第1の樹脂成分と第3成分からなるレジスト量がテンプレート上のパターンから算出される所定量になった後に、図3(c)に示すように、テンプレート30による押印を実施する。これにより、基板10上に、テンプレート30のパターンが反転したレジスト21のパターンが形成される。テンプレートの押印と同時、或いは若干のタイムラグを持って、UV光をレジスト21に照射し、硬化させる。
【0035】
次いで、図3(d)に示すように、硬化したレジスト21のパターンに対して、テンプレート30を剥離することにより、所望のレジストパターンを得る。
【0036】
ここで、レジスト小滴20中の第2の樹脂成分の揮発について、載置したレジスト小滴の量(或いは基板界面の大きさ)のテンプレート30を押印するまでに経る雰囲気(温度、圧力、水分量など)における時間変化量を取得する必要がある。あるテンプレート範囲内のレジスト載置処理の順序の情報、基板上に載置したレジストの位置と量、前記実験データによるレジストの体積変化量の時間依存性のデータから、所定のテンプレート内のレジスト載置終了からテンプレート押印までに必要な時間(第2の樹脂成分の揮発に要する時間)が得られる。より簡便には、レジスト載置順序に応じて分割したレジスト載置領域のうち、最後に載置された領域中に、載置され得る最大のレジスト量が存在すると仮定し、前記最大のレジスト量が十分に体積収縮する時間を、レジスト載置終了からテンプレート押印までに必要な第2の樹脂成分の揮発時間とすればよい。
【0037】
これにより、第1の実施形態に記載したように、レジスト小滴の体積減少量は初期体積のみに依存し、またテンプレートの押印範囲の位置によらず最終的な小滴の量は同一である。このことから、レジスト小滴の載置量の精度が良くなり、加工後のパターン寸法精度が向上する。
【0038】
(第3の実施形態)
次に、第2の実施形態のインプリントプロセスを実施するためのインプリント装置の例を説明する。
【0039】
図4は、本実施形態に係わるインプリント装置を示す概略構成図である。
【0040】
図中の40はインプリントパターンを形成すべき基板10を載置するためのステージであり、このステージ40は制御部60からの指令によりX方向(紙面左右方向)及びY方向(紙面表裏方向)に移動可能となっている。
【0041】
ステージ40の上面と対向する位置に、テンプレート保持機構50が配置されている。保持機構50の下面には、LSIのパターンを有するテンプレート30が保持される。保持機構50は、制御部60からの指令により動作するテンプレート押印機構80により上下方向に移動可能となっている。保持機構50の上方にはUV光源90が設けられており、このUV光源90からのUV光91はテンプレート30を透過して基板10の表面上に照射されるようになっている。
【0042】
また、ステージ40の上方に、制御部60からの指令により動作するインクジェット機構70が設けられており、このインクジェット機構70により基板10上の所定位置へ所定レジスト量が載置されるようになっている。
【0043】
なお、図には示さないが、基板10とテンプレート30とのアライメント機構、基板10の搬送機構、テンプレート30の交換機構、テンプレート30のマスクパターンに応じたレジスト材料の載置量乃至載置位置の指示部が設けられている。
【0044】
ここで、テンプレートの押印単位をショットとする。あるショットへのレジスト載置処理後、当該ショットへはテンプレート押印処理を実施し、その間に次のショットに対してのレジスト載置処理を開始する。
【0045】
レジスト載置機構の典型例は、ショット領域の外形を占める一つの方向である第1の駆動方向に対して主動作をする第1の駆動方向と垂直方向であるテンプレートの外形相当の幅の間に、一乃至複数列が配置されたインクジェットノズルの集合である。また、別の例は、前記ノズルが第1の駆動方向と垂直方向にもさらに駆動可能であるものである。
【0046】
第2の実施形態に記載したレジスト載置終了からテンプレート押印までに必要な第2の樹脂成分の揮発時間をtv2とする。一つのショットへのレジスト載置に要する時間をtput とする。このとき、第2の樹脂成分が十分に揮発して、第2の実施形態に記載の効果を得るには、レジスト載置処理をしているショットから、tv2/tput 以上の整数だけ先のショットに対してテンプレートの押印処理を実施することが必要である。
【0047】
例えば、tv2/tput=3で1ショットのレジスト載置後に直ぐにテンプレートの押印を行うにはレジストの体積減少量が足りない場合がある。この場合、複数のショットのレジスト搭載後にテンプレートの押印処理を行うようにすればよい。例えば、ショット1,2,3,…と順番にレジスト載置を繰り返し、ショット4のレジスト載置の終了後にショット1のテンプレート押印、ショット5のレジスト載置の終了後にショット2のテンプレート押印を行うようにすればよい。
【0048】
このように本実施形態では、インクジェット機構70により基板10上にショット単位でレジスト小滴20を搭載すると共に、レジスト小滴20が搭載された領域に対して、第2の樹脂成分の揮発時間を待ってテンプレート押印処理を行うことができる。そしてこの場合、テンプレート押印処理前のレジスト小滴20の膜厚を薄く且つ均一に制御することができるので、パターン寸法精度の向上に寄与することが可能となる。
【0049】
(第4の実施形態)
次に、第2の実施形態のインプリントプロセスを実施するためのインプリント装置の別の例を説明する。
【0050】
図5は、本実施形態に係わるインプリント装置を示す概略構成図である。
【0051】
第1のチャンバ100内には、基板10を載置するステージ101と、基板10上の所定位置へ所定レジスト量を載置するためのレジスト載置機構102が設けられている。レジスト載置機構102としては、例えばインクジェットを用いることができる。また、図には示さないが、テンプレートのマスクパターンに応じたレジスト材料の載置量の指示部が設けられている。さらに、基板10のノッチ部などの検出による基板位置のアライメント機構が設けられている。なお、レジスト載置部に要求される位置精度によっては基板10の積層配線のアライメントマークに基づくアライメント機構も必要である。
【0052】
第2のチャンバ200内には、基板10を載置するステージ201と、基板10を加熱処理するための赤外線ヒータ202が設けられている。このチャンバ200は、レジストの体積減少処理機構として機能するようになっている。また、第2の樹脂成分の揮発により汚染されないように、チャンバ200内は排気を十分に取ることが必要となる。
【0053】
第3のチャンバ300内には、基板10を載置するステージ301と、基板10上のレジスト小滴にインプリントを行うためのテンプレート30と、基板10上のレジストにUV光を照射するためのUV光源302及びミラー303とが設けられている。また、図には示さないが、基板10とテンプレート30とのアライメント処理機構、テンプレート30の交換機能が設けられている。
【0054】
また、基板10は、搬送機構により各チャンバ100,200,300間で搬送可能になっている。
【0055】
本実施形態においては、まず、基板10を第1のチャンバ100内に搬送し、ステージ101上にセットする。続いて、基板10へのテンプレートの押印位置の指定に基づいて、レジスト載置機構102により基板10上の所望の位置にレジスト小滴20を載置する。
【0056】
次いで、搬送機構により基板10を第2のチャンバ200内に搬送し、ステージ201上にセットする。続いて、加熱処理等を施すことによりレジスト小滴20の体積収縮処理を行う。レジスト小滴20の第2の樹脂成分の揮発速度が室温で十分である場合には、室温での待機機構でも良い。
【0057】
次いで、搬送機構により基板10を第3のチャンバ300内に搬送し、ステージ301上にセットする。続いて、体積が減少された基板10に対して、テンプレート30による押印を実施する。テンプレート30の押印と同時、或いは若干のタイムラグを持って、UV光源302からのUV光をレジスト小滴20に照射し、レジスト21を硬化させる。その後、硬化したレジスト21のパターンに対して、テンプレート30を剥離することにより、所望のレジストパターンを得る。
【0058】
本実施形態のように、基板10上へのレジスト載置からテンプレート30によるインプリント処理の間で、第2のチャンバ200内でレジスト小滴20の第2の樹脂成分を十分に揮発させることにより、テンプレート押印後のレジスト21のRLT膜厚を薄く且つ均一に制御することができる。このため、インプリント処理によるパターン寸法精度の向上に寄与することが可能となる。また、第2のチャンバ200からなるレジスト体積収縮処理部を別に設けることにより、揮発した第2の樹脂成分によってテンプレート30やアライメント光学系等が汚染されるのを未然に防止できる利点もある。
【0059】
(第5の実施形態)
第3の実施形態では、室温において第2の樹脂成分が十分な揮発速度を有する場合について記載した。本実施形態では、室温では第2の樹脂成分の揮発速度が遅く、インプリント装置のスループット低下をもたらす場合の対策について説明する。この場合、基本的な装置構成図は、第4の実施形態の図5に示すように、レジスト体積収縮処理部を有する構成となる。
【0060】
対策の一つ目は、レジスト体積収縮処理部を並列化することである。即ち、第2のチャンバ200を複数個並列に設け、第1のチャンバ100内でレジスト載置後の基板10を複数の第2のチャンバ200に順に収容し、揮発処理の終わった基板10から順に第3のチャンバ300に搬送する。
【0061】
対策の二つ目は、第4の実施形態と同様に赤外線ヒータ202等を設け、第2の樹脂成分の揮発速度が増加させるように、レジスト材料の載置が終わった基板10を加熱することである。この際、基板温度としては、100℃以下が妥当であり、望ましくは50〜80℃程度である。これは、処理温度が高い場合には、室温では揮発性を実質的に有しない第1の樹脂成分及び第3成分も揮発性を示す場合があり、寸法制御性を下げる可能性があるためである。
【0062】
体積収縮処理部の構成は、基板10を加熱するための加熱機構、所定処理終了後の基板を冷却するための基板冷却機構、基板の搬送機構から成る。加熱機構の典型はレジスト塗布現像装置で使用されると同様の加熱板を用いる方式であり、望ましくは加熱板とは密着しない近接加熱方式である。これ以外にも、赤外線等の放射線による加熱方式でもよいが、UV硬化樹脂の非感光波長であることが必要である。
【0063】
対策の三つ目は、減圧チャンバーによって、第2の樹脂成分の揮発速度を増加させることである。この場合、第1の樹脂成分及び第3成分が揮発しないように圧力(及び基板温度)を調整する必要がある。
【0064】
このように本実施形態によれば、室温では第2の樹脂成分の揮発速度が遅い場合であっても、レジスト体積収縮処理部の構成を工夫することにより、インプリント装置のスループット低下を抑制することができる。
【0065】
(第6の実施形態)
本実施形態では、第1〜第5の実施形態までとは異なり、レジスト材料が揮発性を有さない場合において、載置されたレジスト材料の体積減少処理方法について説明する。
【0066】
具体的には、レジスト載置後にレジスト材料が溶解する薬液を基板上に供給し、一定時間経過後にレジストが溶解した薬液を基板上から除去する。
【0067】
先にも説明したように、レジスト材料は1pL以下の吐出量であることが必要と考えられる。このとき、基板上のレジスト材料の直径は数十μm〜数μm程度となる。インプリント装置のスループットとして10wph程度を仮定した場合、薬液による体積減少処理は5分程度で実施する必要がある。この場合、数十nm/s程度の溶解速度であることが望ましい。
【0068】
UV硬化樹脂に使用するアクリル樹脂誘導体或いは不飽和ポリエチレン誘導体などは、多くの有機溶媒に対して溶解性を示す。例えば、PGMEA,PGME,シクロヘキサノン,シクロペンタノン,MIBCなどの溶媒が考えられる。また、単独溶媒でなく、溶解速度を調整するために、混合溶媒を使用してもよい。
【0069】
有機溶剤としては、例えば、メタノール,エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル,エチレングリコールジメチルエーテル,エチレングリコールメチルエチルエーテル,エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート,エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル,ジエチレングリコールジエチルエーテル,ジエチレングリコールジメチルエーテル,ジエチレングリコールエチルメチルエーテル,ジエチレングリコールモノエチルエーテル,ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート,プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,シクロヘキサノン,4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン,2−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル,2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル,2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル,エトキシ酢酸エチル,ヒドロキシ酢酸エチル,2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル,3−メトキシプロピオン酸メチル,3−メトキシプロピオン酸エチル,3−エトキシプロピオン酸メチル,3−エトキシプロピオン酸エチル,酢酸エチル,酢酸ブチル,乳酸メチル,乳酸エチル等の乳酸エステル類等のエステル類などが挙げられる。
【0070】
本実施形態においては、前記図5に示すようにレジスト小滴の載置部とテンプレート押印部との間に、レジスト体積減少処理部が存在する機構であることが必要である。
【0071】
レジスト小滴が載置された基板上への有機溶媒の供給は、スリット式ノズルによる液膜での供給、有機溶媒のミストによる供給、など有機溶媒の液流によるレジスト膜の移動や剥離を抑制する手法であることが望ましい。レジスト膜が溶解した前記溶媒の除去は、液流によるレジスト材料の移動を抑止するために最大で数百rpm程度の回転数による振り切り工程が一例である。このほかに、レジスト材料が実質的に溶解せず、かつレジスト材料と基板との界面への浸透性が低い溶媒によるリンスであってもよい。レジスト材料が非水溶である場合には、水がリンス液の例となる。
【0072】
このように本実施形態によれば、基板10上に載置されたレジスト小滴20を薬液で一定量だけ除去することにより、先の実施形態と同様にレジスト小滴20の量を少なく且つ均一に制御することができる。従って、先の実施形態と同様の効果が得られる。
【0073】
(変形例)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。レジスト材を構成する第1の樹脂成分、第2の樹脂成分、及び結合反応開始材は、必ずしも実施形態で説明したものに限らず、仕様に応じて適宜変更可能である。さらに、第2の樹脂成分の割合は、インクジェットヘッド等により形成されるレジスト小滴の量と最終的に必要なレジスト小滴の量との関係から定めればよい。
【0074】
また、基板上へのレジスト小滴の載置は必ずしも液体状態で行う必要はなく、レジストが流動性を有する状態であればよい。
【0075】
インプリント装置は、必ずしも前記図4又は図5のような構成に限られるものではなく、基板上にレジストを載置するレジスト載置機構、基板上のレジストの体積を減少させるレジスト体積減少処理機構、及びレジストに対してテンプレート押印・レジスト硬化・テンプレート剥離を行うインプリント機構、を有するものであればよい。また、UV硬化樹脂を用いるUVインプリントに限るものではなく、熱インプリントに適用することも可能であるのは勿論のことである。
【0076】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
10…基板
20…レジスト小滴
21…レジスト
30…テンプレート
40…ステージ
50…テンプレート保持機構
60…制御部
70…インクジェット機構
80…テンプレート押印機構
90,302…UV光源
100…第1のチャンバ
101,201,301…基板ステージ
102…インクジェット機構(レジスト載置機構)
200…第2のチャンバ
202…赤外線ヒータ
300…第3のチャンバ
303…ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプリントパターンの形成に用いるインプリント用のレジスト材料であって、
前記インプリントパターンを形成すべき基板上で不揮発性となる第1の樹脂成分と、
前記基板上で揮発性となる第2の樹脂成分と、
前記第1の樹脂成分の硬化反応を促進する結合反応開始材と、
を含むことを特徴とするインプリント用レジスト材料。
【請求項2】
前記結合反応開始材は、光又は熱反応によって前記第1の樹脂成分との重合反応を生じる重合成分、及び/又は前記第1の樹脂成分同士の重合結合反応を促進する重合成分、を有することを特徴とする、請求項1記載のインプリント用レジスト材料。
【請求項3】
基板上に、不揮発性の第1の樹脂成分、揮発性の第2の樹脂成分、及び第1の樹脂成分の硬化反応を促進する結合反応開始材を含むインプリント用のレジストを、空間的に離散した状態で載置する工程と、
前記レジスト中の前記第2の樹脂成分を揮発させることにより、前記レジストの体積を減少させる工程と、
前記第2の樹脂成分の揮発により体積が減少した前記レジストに対して、テンプレートのパターン面を押印する工程と、
前記テンプレートのパターン面が押印された状態で前記レジストを硬化させる工程と、
前記レジストが硬化した後に該レジストから前記テンプレートを剥離する工程と、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項4】
前記レジストの堆積を減少させる工程として、一定時間以上放置、又は熱処理を施すことを特徴とする、請求項3記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記基板上にレジストを載置する工程として、インクジェット方式のノズルから前記基板上に前記レジストを吐出することを特徴とする、請求項3記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記レジストを硬化させる工程として、前記レジストに対して紫外光を照射することを特徴とする、請求項3記載のパターン形成方法。
【請求項7】
第1のチャンバ内に収容された基板上に、不揮発性の第1の樹脂成分、揮発性の第2の樹脂成分、及び第1の樹脂成分の硬化反応を促進する結合反応開始材を含むインプリント用のレジストを、空間的に離散的に載置するレジスト載置機構と、
第2のチャンバ内に収容された前記基板上のレジストの体積を減少させるレジスト体積減少処理機構と、
第3のチャンバ内で、前記体積減少処理を施した前記レジストに対してテンプレートのパターン面を押印し、該パターン面が押印された状態で前記レジストを硬化させ、該硬化させた前記レジストから前記テンプレートを剥離するインプリント機構と、
前記基板を第1乃至第3のチャンバ間で搬送する搬送機構と、
を具備したことを特徴とするインプリント装置。
【請求項8】
前記レジスト体積減少処理機構は、前記レジストに対する加熱機構であることを特徴とする、請求項7記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記インプリント機構で前記レジストを硬化させるために、前記レジストに対して紫外光を照射することを特徴とする、請求項7記載のインプリント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−55146(P2013−55146A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190959(P2011−190959)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】