説明

インモールドコーティング法及び被覆成形体

【課題】 大型の成形体であっても、非塗装欠陥部を生じることなく、均一な被覆剤塗膜を形成することができるインモールドコーティング法及びこれによって得られる被覆成形体を提供する。
【解決手段】 雄型及び雌型を対とする金型で形成されるキャビティ内に樹脂材料を注入する樹脂成形に引き続き、樹脂成形体と金型とで形成される被覆剤塗布空間に、金型に設けた被覆剤注入口から、被覆剤を注入して樹脂成形体表面に被覆剤層を形成させるインモールドコーティング法において、樹脂成形体の被覆剤塗布表面積が2m以上であり、その90℃における硬化開始時間が60秒以上、200秒以下であり、且つ、粘度が3,500mPa・s以下である被覆剤を用い、且つ、被覆剤塗布空間内の全ての点について、その点から各被覆剤注入口までの流動距離のうち最短のものが1.3m以下となるように、被覆剤注入口を設けることを特徴とするインモールドコーティング法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型の成形体であっても、非塗装欠陥部を生じることなく、均一な被覆剤塗膜を形成することができるインモールドコーティング法に関する。更に詳しくは、特定の特性を有する被覆剤を使用し、且つ、特定の条件を満足するように被覆剤注入口を設けることにより、被覆剤を塗装すべき成形体表面積が大きい場合であっても、非塗装欠陥部を生じることなく、均一な被覆剤塗膜を形成することができるインモールドコーティング法、及び、このインモールドコーティング法を用いて得られる被覆成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
バンパーやエアデフレクター等の自動車用部品、ホイルローダーやパワーショベル等の建設・産業機械、ゴルフカーやゲーム機等のレジャー機器、洗面ボウルやユニットバス、パネル等の住宅設備等として用いられる大型成形体は、最近では、反応射出成形で製造される。これら各用途で用いられる樹脂成形体に意匠性や耐候性等の特性を付与するために被覆膜を形成することが行われる。
この被覆膜形成には、最近では、主として、インモールドコーティング法が用いられている。インモールドコーティング法は、反応射出成形法による成形体製造において、樹脂原料単量体、重合触媒、触媒活性化成分等を含有する反応原液が成形体となる際に体積が収縮する現象、いわゆる成形収縮によって生じた金型と成形体との間の5〜500μm程度の間隙に被覆剤を注入して、硬化させ、成形体に被覆膜を形成する方法である。インモールドコーティングの後、被覆膜を有する成形体を金型から取り出す。
【0003】
ところが、大型の成形体の場合、被覆剤の厚さが、被覆剤の注入口に近い部分は比較的厚く、注入口から遠い部分は比較的薄くなり、全体として、被覆剤の厚さが均一でないという問題がある。
このような問題を解決するため、本出願人は、特許文献1において、複数の被覆剤注入口から注入された被覆剤が接合する全ての接合点において、被覆剤の流速が特定の範囲内となるようにすることによって、ウェルド等の外観不良を生じることなく均一な塗膜を形成できることを報告した。
しかしながら、その後の検討により、上記方法によっても、場合により、一部被覆がされない部分が生じることが判明した。
【0004】
【特許文献1】特開2005−246880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、大型の成形体であっても被覆不良等の塗布欠陥がなく、均一な被覆膜を得ることができるインモールドコーティング法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、被覆不良等の塗布欠陥のない均一な被覆膜を有する大型の成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、インモールドコーティング法に用いる被覆剤について、鋭意研究を進めた結果、被覆剤の硬化速度や粘度等を特定範囲内のものとすることによって、更には、被覆剤注入口間の距離を特定範囲内とすることによって、上記目的が達成されることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして本発明によれば、雄型及び雌型を対とする金型で形成されるキャビティ内に樹脂材料を注入する樹脂成形に引き続き、樹脂成形体と金型とで形成される被覆剤塗布空間に、金型に設けた被覆剤注入口から、被覆剤を注入して樹脂成形体表面に被覆剤層を形成させるインモールドコーティング法において、(1)樹脂成形体の被覆剤塗布表面積が2m以上であり、(2)その90℃における硬化開始時間が60秒以上、200秒以下であり、粘度が3,500mPa・s以下である被覆剤を用い、且つ、(3)被覆剤塗布空間内の全ての点について、その点から各被覆剤注入口までの流動距離のうち最短のものが1.3m以下となるように、被覆剤注入口を設けることを特徴とするインモールドコーティング法が提供される。
本発明のインモールドコーティング法において、被覆剤が0.06〜2重量%の老化防止剤を含有するものであることが好ましい。
【0008】
本発明のインモールドコーティング法において、樹脂成形が反応射出成形であることが好ましい。
また、本発明によれば、上記インモールドコーティング法によって得られる被覆成形体が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大型の反応射出成形体であっても、塗布欠陥のない均一な被覆膜を有する成形体を得ることができる。
本発明のインモールドコーティング法は、樹脂表面の表面積が2m以上の被覆成形体の製造に好適に適用することができる。このような大型の被覆成形体の例としては、トラックカバー、バスタブ、ユニットバスの洗い場パン、洗濯機パン、コンクリートパネル等を挙げることができる。特に、トラックカバーの場合のように、成形型のキャビティが大きく屈曲しており、しかも、その成形型のキャビティの途中に仕切り部分が存在し、従って、その仕切り部分の両側からインモールドコーティングを行なう必要があるような場合に有効である。
この被覆成形体は、塗膜が均一で塗布欠陥がなく意匠性に優れているので、自動車用部品、建設・産業機械、レジャー機器、住宅設備等に好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
インモールドコーティング法は、雄型及び雌型を対とする金型で形成されるキャビティ内に樹脂材料を注入する樹脂成形に引き続き、樹脂成形体と金型とで形成される被覆剤塗布空間に、金型に設けた被覆剤注入口から、被覆剤を注入して樹脂成形体表面に被覆剤層を形成させる方法である。
【0011】
本発明で用いる被覆剤は、90℃における硬化開始時間が60秒以上、200秒以下であることが必要である。硬化開始時間は、70秒以上であることがより好ましく、75秒以上であることが特に好ましい。
硬化開始時間が上記下限より短いと、均一な塗布膜ができず、また、非塗布欠陥部が生じる。他方、硬化開始時間が上記上限よりも長いと、成形体に対する塗布膜の密着性が悪くなる。
なお、「硬化」とは、被覆剤の一滴を90℃のプレート上に滴下し、その表面が硬化して流動しなくなる状態をいう。
【0012】
本発明で使用する被覆剤は、特に限定されず、その具体例としては、塗料、フッ素樹脂系ラッカー、シリコーン樹脂系ラッカー、シラン系ハードコート剤等の各種ハードコート剤等を例示することができるが、塗料が好適に用いられる。
塗料としては、(a)不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー又はウレタンアクリレートオリゴマー、(b)これらと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーを含有してなるビヒクル成分、及び(c)ラジカル重合開始剤を含有する塗料が好ましい。
【0013】
不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー及びウレタンアクリレートオリゴマーは、いずれも分子内に不飽和二重結合を有しており、ラジカル重合開始剤から発生する活性ラジカルにより、エチレン性不飽和モノマーからなるビヒクル成分との共重合(硬化反応)を開始する。
【0014】
本発明で使用可能な不飽和ポリエステル樹脂は、例えば、マレイン酸やフマール酸等の不飽和二塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールとの縮合反応によって製造することができる。
【0015】
エポキシアクリレートオリゴマーは、エポキシ化合物とアクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸とをエポキシ基1当量当たり、カルボキシル基当量が0.5〜1.5当量となるような割合で、開環付加反応して製造したものである。
【0016】
ポリエステルアクリレートオリゴマーは、例えば、水酸基を末端に有するポリエステルポリオールと、前述の不飽和カルボン酸との反応によって製造することができる。
ポリエーテルアクリレートオリゴマーは、例えば、ポリエチレングリコールや、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオールと、前述の不飽和カルボン酸との反応によって製造することができる。
【0017】
ウレタンアクリレートオリゴマーは、ジイソシアネート化合物、ジオール化合物及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを、一括混合して反応させることによって得ることができる。他の方法として、ジオール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させて、1分子当たり1個以上のイソシアネート基を含むウレタンイソシアネート中間体を形成し、次いで、この中間体とヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート基とを反応させる方法、ジイソシアネート化合物とヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとを反応させて、1分子当たり1個以上のイソシアネート基を含むウレタン(メタ)アクリレート中間体を形成し、次いで、この中間体とジオール化合物とを反応させる方法等が挙げられる。
【0018】
ジイソシアネート化合物としては、各種公知のものを用いることができる。具体的には、トリレンジイソシアネートや、イソホロンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、1,2−ジイソシアナトエタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の有機ジイソシアネートを挙げることができる。これらジイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく混合物として用いてもよい。
【0019】
ジオール化合物としては、エチレングリコールや、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルキレンジオールや、ジカルボン酸又はその無水物のジエステル反応生成物であるジエステルジオール等が代表的なものとして挙げられる。
更に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、一般式:CH=CRCO−(C2n)−OH(但し、Rは、−H又は−CHであり、nは2〜8の整数である)で示される化合物が有用である。
【0020】
特に好ましい塗料は、エポキシアクリレートオリゴマーまたはウレタンアクリレートオリゴマーを主成分とする塗料である。
【0021】
本発明で使用可能なエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、スチレンや、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、メチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、シリコーンアクリレート、シリコーンジアクリレート等が代表的なものとして挙げられるが、これらに限定されない。
エチレン性不飽和モノマーの配合量は、ビヒクル成分100重量部に対し、20〜200重量部、好ましくは40〜160重量部が適当であり、この範囲で適度な硬化特性と粘性とを有する被覆剤が得られる。
【0022】
上記(a)成分及び(b)成分を重合するための(c)ラジカル重合開始剤は、特に限定されないが、有機過酸化物が好ましく、1分間半減期温度が90〜135℃のものが特に好ましい。
その具体例としては、特に限定されないが、例えば、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートや、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキサイド、2,4,4−トリメチルペンチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が代表的なものとして挙げられる。
有機過酸化物重合開始剤の配合量は、ビヒクル成分100重量部に対し、0.1〜15重量部が好ましく、1〜8重量部がより好ましい。
【0023】
本発明において用いるこれらの塗料は、プライマーを使用することなく、成形体表面に十分に密着することができる。これは、塗料の硬化反応時に発生する活性ラジカルが、環状オレフィンから形成された架橋樹脂成形体に残存する不飽和結合と反応する結果、成形体と塗料とが化学結合し、これにより、塗料の強固な密着性が発現することによると考えられる。
【0024】
本発明において用いる被覆剤の粘度は、回り込みや、泡の発生を抑える観点から、B型粘度計30℃での測定において、3,500mPa・s以下であり、好ましくは3,000mPa・s以下、特に好ましくは2,500mPa・s以下である。
被覆剤粘度が3,500mPaを超えると、被覆剤の流動が著しく悪化して、被覆欠陥を生じる場合がある。
【0025】
本発明において、被覆剤は、その重量に対して0.06〜2重量%の老化防止剤を含有することが好ましい。
老化防止剤は、特に限定されないが、フェノール系、リン系、アミン系等の各種のプラスチック・ゴム用老化防止剤を使用することができる。
【0026】
フェノール系老化防止剤としては、例えば、4,4−ジオキシジフェニル、ヒドロキノン・モノベンジルエーテル、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−アミルヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4,4’−メチレン−ビス−(6−t−ブチル−o−クレゾール)、4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ブチル化ヒドロキシアニソール、フェノール縮合物、ブチレン化フェノール、ジアルキル・フェノール・スルフィド、高分子量多価フェノール、ビスフェノール等が挙げられる。
【0027】
リン系の老化防止剤としては、例えば、トリ(フェニル)フォスファイト、トリス(ノニフェニル)フォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のアリールあるいはアルキルアリールフォスファイト類が挙げられる。
アミン系老化防止剤としては、例えば、フェニール−α−ナフチルアミン、フェニール−β−ナフチルアミン、4,4’−ジオクチルフェニルアミン、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−シクロヘキシル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−o−トリル−エチレンジアミン、アルキル化ジフェニルアミン等が挙げられる。
これらの老化防止剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0028】
更に、本発明で使用する被覆剤には、プラスチックやゴムの光安定剤として使用されている紫外線吸収剤を添加することができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、4−t−ブチルフェニルサリチレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、フェニルサリチート、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート、4−〔(N−エチル−N−フェニルアミノ)メチレナミノ〕ベンゾイックアシッドエチルエーテル等を挙げることができる。
【0029】
本発明において用いる塗料には、前記(a)、(b)及び(c)成分、老化防止剤、紫外線吸収剤の他に、必要に応じ、更に、金属粉、離型剤、硬化促進剤、重合禁止剤、光安定剤、着色顔料、体質顔料、導電性顔料、改質樹脂、表面調整剤等を添加することができる。
硬化促進剤としては、ナフテン酸コバルトや、オクチル酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸鉛、又はこれらの混合物が代表的なものとして挙げられるが、これらに限定されない。促進剤の配合量は、ビヒクル成分100重量部に対し、0.01〜20重量部、好ましくは0.04〜10重量部が適当である。
離型剤としては、融点が125℃以下の離型剤が使用される。このような離型剤としては、例えば、ステアリン酸や、ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、大豆油レシチン、シリコーン油、脂肪酸エステル、脂肪酸アルコール二塩基酸エステル類、ヘキサフルオロプロペンオリゴマー等のフッ素化合物、ワックス等が代表的なものとして挙げられる。
離型剤の融点が125℃より高い温度であると、ノルボルネン系モノマーの成形温度は通常65〜95℃であり、ノルボルネン系モノマーの反応熱による硬化物表面温度の上昇を考慮しても、離型剤が十分に溶融せず、本来の離型効果が得られにくい。なお、離型剤は、常温で液状のものであってもよい。
離型剤の配合量は、ビヒクル成分100重量部に対し、0.1〜15重量部、好ましくは0.3〜5重量部が適当で、この範囲で離型効果が発揮される。
【0030】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノンや、ベンゾキノン、パラ−t−ブチルカテコール等が挙げられる。
着色顔料としては、例えば酸化チタンや、酸化鉄、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カーボンブラック等が挙げられる。
体質顔料としては、炭酸カルシウムや、タルク、シリカ、クレー、マイカ、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム等が代表的なものとして挙げられる。
導電性顔料としては、例えば、導電性カーボンブラックや、グラファイト等が挙げられる。
改質樹脂は、ビヒクル成分と相溶性のよいことが必要であり、その具体例としては、ポリメチルメタクリレートや、ポリ酢酸ビニル、飽和ポリエステル、塩素化ポリオレフィン等が挙げられる。
【0031】
本発明のインモールドコーティング法においては、先ず、雄型及び雌型を対とする金型で形成されるキャビティ内に、金型に設けられた注入口から、樹脂材料を注入して樹脂成形を行なう。
樹脂成形法は、特に限定されないが、反応性射出成形法(RIM成形法)が好ましい。
また、樹脂材料も特に限定されないが、メタセシス重合性環状オレフィンが好ましく、特に、メタセシス重合性環状オレフィン、メタセシス重合性触媒成分及び重合触媒活性化成分を含有する混合物を、反応射出成形することが好ましい。
反応射出成形に当たっては、メタセシス重合触媒成分を含むメタセシス重合性環状オレフィン(「溶液A」という。)と、メタセシス重合活性化成分を含むメタセシス重合性環状オレフィン(「溶液B」という。)とを、ミキシングヘッドで、混合し、混合物を、型に樹脂注入口から注入し、型内で、メタセシス重合と成形とを一挙に行なう方法が好ましい。
溶液A、溶液Bほか、反応射出成形に用いられる原料を総称して、「反応原液」ということがある。
成形時間は、環状オレフィン、触媒成分、活性化成分、それらの組成比、金型温度等によって、変化するので、一様ではないが、一般的には5秒〜6分、好ましくは10秒〜5分である。
反応射出成形に使用する金型にも特に限定はない。
金型の材質は、特に限定されず、その具体例としては、スチール、鋳造若しくは鍛造のアルミニウム、亜鉛合金等の鋳造や溶射、ニッケルや銅等の電鋳、更にニッケル、銅、クロム等のメッキ、又は樹脂等が挙げられる。型の構造は型に反応原液及び被覆剤を注入する際の圧力を勘案して決めるとよい。また、金型の型締め圧力は、ゲージ圧で0.1〜9.8MPaである。
【0032】
本発明に用いるメタセシス重合性環状オレフィンは、特に限定されないが、ノルボルネン系モノマーが好ましい。
ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環を有するものであればよく、その具体例としては、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン等の三環体、テトラシクロドデセン等の四環体、シクロペンタジエン三量体等の五環体、シクロペンタジエン四量体等の七環体を挙げることができる。これらの二環体〜七環体は、アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基、アリール基等の炭化水素基やエステル基、エーテル基、シアノ基、ハロゲン原子等の極性基を置換基として有していてもよい。中でも、入手が容易であり、反応性に優れることから、三環体以上の多環ノルボルネン系モノマーが好ましく、より好ましくは三環体〜五環体のノルボルネン系モノマーである。
【0033】
ノルボルネン系モノマーの具体例としては、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、シクロペンタジエン−メチルシクロペンタジエン共二量体、5−エチリデンノルボルネン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−シクロヘキセニルノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4−メタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロナフタレン、エチレンビス(5−ノルボルネン)等が挙げられるが、ジシクロペンタジエンが特に好適に用いられる。
ノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
また、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロオクテン、シクロドデセン等の単環シクロオレフィン等を、コモノマーとして用いることもできる。
【0034】
重合触媒成分は、メタセシス重合触媒が好ましい。
メタセシス重合触媒は、ノルボルネン系モノマーを開環重合することができる触媒であればよく、特に限定されない。
メタセシス重合触媒は、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオン及び/又は化合物が結合してなる錯体である。遷移金属原子としては、第5、6及び8族(長周期型周期表、以下同じ)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、第5族の原子としては例えばタンタルが挙げられ、第6族の原子としては、例えばモリブデンやタングステンが挙げられ、第8族の原子としては、例えばルテニウムやオスミウムが挙げられる。
【0035】
第6族のタングステンやモリブデンを中心金属とするメタセシス重合触媒としては、六塩化タングステン等の金属ハロゲン化物;タングステン塩素酸化物等の金属オキシハロゲン化物;酸化タングステン等の金属酸化物;及びトリドデシルアンモニウムモリブデートやトリ(トリデシル)アンモニウムモリブデート等の有機金属酸アンモニウム塩等を用いることができる。
これらの中では、有機モリブデン酸アンモニウム塩が好ましい。これらのメタセシス重合触媒を用いる場合には、重合活性を制御する目的で、活性剤(共触媒)として有機アルミニウム化合物又は有機スズ化合物を併用することが好ましい。
【0036】
本発明では、メタセシス重合触媒として、第5、6及び8族の金属原子を中心金属とする金属カルベン錯体を用いることも好ましい。金属カルベン錯体の中では、第8族のルテニウムやオスミウムのカルベン錯体が好ましく、ルテニウムカルベン錯体が特に好ましい。塊状重合時の触媒の活性が優れるため、ノルボルネン系樹脂成形体の生産性に優れ、得られるノルボルネン系樹脂成形体の、未反応のノルボルネン系モノマーに由来する臭気が少なく、生産性に優れるからである。
ルテニウムカルベン錯体の中では、少なくとも2つのカルベン炭素がルテニウム金属原子に結合しており、該カルベン炭素のうち少なくとも一つにはヘテロ原子を含む基が結合しているルテニウムカルベン錯体が特に好ましい。
【0037】
メタセシス重合触媒の使用量は、反応に使用するモノマー1モルに対し、通常、0.01ミリモル以上、好ましくは0.1ミリモル以上、且つ50ミリモル以下、好ましくは20ミリモル以下である。メタセシス重合触媒の使用量が少なすぎると重合活性が低すぎて反応に時間が掛かるため生産効率が悪く、使用量が多すぎると反応が激しすぎるため型内に十分に充填される前に硬化したり、触媒が析出したりし易くなり均質に保存することが困難になる
【0038】
重合に際し、必要に応じて活性剤(共触媒)を使用する。
活性剤(共触媒)は、特に制限はなく、その具体例として、周期律表第11〜14族の金属の有機金属化合物を挙げることができる。その具体例としては、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド等のアルキルアルミニウムハライド、アルコキシアルキルアルミニウムハライド等の有機アルミ化合物;テトラブチル錫等の有機スズ化合物;等が挙げられる。なお、メタセシス重合触媒としてルテニウムカルベン錯体を用いる場合には、活性剤を用いても用いなくてもよい。
【0039】
活性剤の使用量は、特に限定されないが、通常、反応に使用するメタセシス重合触媒1モルに対して、0.1モル以上、好ましくは1モル以上、且つ100モル以下、好ましくは10モル以下である。活性剤を用いないか、又は活性剤の使用量が少なすぎると、重合活性が低すぎて反応に時間が掛かるため生産効率が悪くなる。逆に、使用量が多すぎると、反応が激しすぎるため型内に十分に充填される前に硬化することがある。
活性剤は、モノマーに溶解して用いるが、反応射出成形法による成形体の性質を本質的に損なわない範囲であれば、少量の溶剤に懸濁させた上で、モノマーと混合することにより、析出しにくくしたり、溶解性を高めたりして用いてもよい。
【0040】
また、反応原液の成分として、活性調節剤を添加するのが好ましい。活性調節剤は、重合触媒のモノマー溶液と活性剤のモノマー溶液Bとを混合して金型に注入して重合が開始する際、注入途中で重合が開始するのを防ぐためのものである。かかる調節剤としては、ルイス塩基が好適であり、エーテル、エステル、ニトリル等が使用される。具体的には、ブチルエーテル、安息香酸エチル、ジグライム等が例示される。共重合モノマーとして、極性基含有モノマーを用いる場合には、それ自体がルイス塩基であることがあり、調節剤としての作用を兼ね備えていることもある。
調節剤は、活性化成分を含む溶液Bに添加するのが好ましい。
【0041】
本発明において、成形体の特性の改良又は維持のために、硬化した被覆剤と成形体との接着性、密着性等を損なわない範囲で、反応原液に各種添加剤を配合してもよい。かかる添加剤としては、補強材、老化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、充填剤、顔料、着色剤、発泡剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、軟化剤、粘着付与剤、可塑剤、離型剤、防臭剤、香料、エラストマー、ジシクロペンタジエン系熱重合樹脂及びその水添物等を挙げることができる。
【0042】
各種添加剤は、触媒や活性剤のモノマー溶液に添加して用いる方法;別途モノマー溶液として調製し、反応射出成形時に触媒や活性剤のモノマー溶液と混合する方法;予め型内に充填しておく方法;等により添加される。添加方法は、添加剤の種類により適宜選定すればよい。
【0043】
供給前の反応原液の温度は、好ましくは10〜60℃であり、反応原液の粘度は、例えば30℃において、通常、5〜3,000mPa・s、好ましくは50〜1,000mPa・s程度である。
【0044】
雄型及び雌型を対とする金型で形成されるキャビティ内に反応原液を供給して塊状重合させる場合において、雄金型の金型温度T1(℃)を雌金型の金型温度T2(℃)より高く設定しておくことが好ましい。これにより、成形体における被覆膜が形成される面を、ヒケや気泡のない表面外観の美麗な面とすることができ、ひいては被覆膜の密着性向上に資することができる。
T1−T2は、下限が好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、上限が好ましくは60℃以下である。T1は、好ましくは110℃以下、より好ましくは95℃以下であり、下限は好ましくは50℃以上である。T2は、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下であり、下限は好ましくは30℃以上である。
金型温度を調整する方法としては、例えば、ヒータによる金型温度の調整;金型内部に埋設した配管中に循環させる、温調水、油等の熱媒体の温度調整;等が挙げられる。
【0045】
キャビティ内での重合が進行すると、樹脂成形体が得られるとともに、成形に際して生じる成形収縮(成形体原料が重合により、その体積を減少させることにより生じる)により、樹脂成形体と金型との間に隙間(以下、これを「被覆剤塗布空間」ということがある。)が生じる。
反応射出成形終了後、同一金型内にて、得られた樹脂成形体と金型とで形成される被覆剤塗布空間に、金型に設けた被覆剤注入口から被覆剤を注入し、該被覆剤が硬化した後、被覆された成形体を金型から取り出す。被覆剤注入口は、樹脂注入口で兼用することができる。
【0046】
被覆剤を被覆剤注入口から注入するタイミングは、樹脂原料単量体等をキャビティ内に注入した後、金型の内部で塊状重合反応が起きて成形体の温度が最高温度となる時点から、好ましくは5秒後〜20分以内、より好ましくは5秒後〜10分以内、特に好ましくは10秒後〜5分以内である。被覆剤を注入するタイミングが早すぎると、成形材料の反応原液の反応が未熟で被覆剤の注入圧で変形する恐れがある。逆に、被覆剤を注入するタイミングが遅すぎると成形体の収縮が大きくなる場所と大きくならない場所の差が顕著になり、塗膜斑が大きくなって美観が著しく低下する可能性がある。
被覆剤を被覆剤塗布空間に注入する際の雄金型の金型温度は、被覆剤の硬化温度よりも低くてもよいが、被覆剤の注入後は、被覆剤の硬化温度以上に設定することが好ましい。
【0047】
被覆剤の注入圧力は、特に限定されないが、好ましくは1〜50MPa、更に好ましくは3〜30MPa、特に好ましくは5〜22MPaである。圧力が低過ぎると、被覆剤が十分浸透しない恐れがあり、逆に、注入圧力が高過ぎると、設備費が過大になり、金型の構造を耐圧性にする必要があり経済性に劣る可能性がある。
【0048】
本発明のインモールドコーティング法において、被覆剤塗布空間内の全ての点について、その点から各被覆剤注入口までの流動距離のうち最短のもの(以下、単に、「最小流動距離」という。)が1.3m以下であることが必要である。つまり、被覆剤注入口が5箇所あれば、被覆剤塗布空間内の一点から各被覆剤注入口までの距離は、長短5個あり得るが、それらのうち、最短のものが1.3m以下であることが必要である。換言すれば、被覆剤塗布空間内の全ての点が、いずれかの被覆剤注入口から1.3m以下の流動距離にあることが必要である。最小流動距離は、1m以下であることが好ましく、0.75m以下であることが更に好ましい。最小流動距離が1.3mを超えると、被覆剤が到達しない部分が発生し、塗布欠陥を生じる。
最小流動距離が小さければ小さい(つまり、塗布面積が一定の場合、注入口の数が多ければ多い)ほど、被覆剤塗布が容易となるが、金型の構造が複雑となり、また、複数の注入口から注入された被覆剤が衝突した際に泡を生じて塗布欠陥を生じたりするので、最小流動距離は、0.05m以上であることが好ましい。
【0049】
ここで、流動距離とは、被覆剤塗布空間内の一点から各被覆剤注入口までの直線距離でなく、各被覆剤注入口から被覆剤塗布空間内の一点までの、被覆剤が実際に流動すべき距離をいう。従って、被覆剤塗布空間内に、被覆剤の流動上の障害物、例えば、成形体の開口部設置用のバリ部分がある場合、被覆剤はバリ部分で流動を阻止され、バリ部分の反対側に被覆剤が到達するには、この障害物を迂回して流動する必要があるので、流動距離は大きくなる。
【0050】
被覆剤注入口の取り付け位置は、金型構造や被覆剤の流れを勘案して決定する。被覆剤の流速が被覆剤注入口からの距離に概ね反比例するため、複数の注入口を設けると、より効果的に被覆剤を注入することができる。注入口の個数は、特に限定されない。
【0051】
複数の被覆剤注入口が設けられている場合、被覆剤は、全ての注入口から同時に注入することもできるが、塗料接合部位の流速が拮抗していると接合部分に泡が生ずることが多く好ましくない。塗料流れを勘案して各注入口の塗料流速、塗料注入タイミングを調整することで、ムラなく被覆剤を注入することができる。
【0052】
被覆剤を注入後、所定温度に所定時間保持することにより硬化させる。被覆剤の硬化温度は、好ましくは70〜110℃、より好ましくは80〜100℃であり、硬化時間は、好ましくは20秒〜6分、より好ましくは60秒〜4分である。硬化温度が低すぎると被覆剤と成形体表面との密着が不十分で被覆剤が剥がれる恐れがあり、逆に、高すぎると被覆剤が注入されている間に被覆剤の硬化が始まり、被覆剤を隅々まで注入できなくなるばかりでなく、注入圧力が以上に高くなって注入機や金型を破損させる可能性がある。硬化時間が短すぎると被覆剤の硬化が不十分で被覆が剥がれる恐れがあり、逆に、長すぎると生産性が低下する可能性がある。
【0053】
被覆剤の硬化後、金型を完全に型開きして脱型することにより、被覆膜が形成された成形体が得られる。本発明においては成形体の大きさはその被覆剤塗布表面積が2m以上のものである。また、成形体の形状は特に限定されず、所望の形状にすることができる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。以下において「部」は特に断りのない限り重量基準である。
【0055】
〔実施例1〕
(金型と成形材料)
トラック(自動車)の前部エンジンカバー(以下、「トラックカバー」という。)を成形するための、鍛造アルミニウム製雄型と電鋳製雌型とからなる金型の雌型の4箇所に、図1に示すように、被覆剤注入口(A、B、C及びD)を設置し、各被覆剤注入口に、最高注入圧力40MPaのインジェクターを取り付けた。なお、図1は、トラックカバーの平面図で、開口部Aは、トラックカバーの上部平面部に、開口部B及びCは、トラックカバーの側面部に、そして開口部Dは、トラックカバーの前側面部にある。図中、「開口部」は、トラックカバーの前面の開口部である。また、雄型にバリを形成するためのスライドピンを設置した(図示せず)。このスライドピンは、バリを形成するだけではなく、国際公開第2005/046958号パンフレットに開示されているように、成形体を固定する手段としても機能する。この金型固定手段は、雌金型の分割面側に、その壁面からピンが出没可能な係止構造を有している。ピンを出没可能な構造とするために、スライド機構を有する芯−鞘構造とした。
反応射出成形用反応原液成分として、溶液A:ジシクロペンタジエンを主成分とし、重合触媒成分を含有する溶液(RIMTEC社製、商品名「メトンT02A液」)、溶液B:ジシクロペンタジエンを主成分とし、触媒活性化成分を含有する溶液(RIMTEC社製、商品名「メトンT02B液」)及び被覆剤〔ウレタンアクリレートオリゴマーを主成分とする塗料:大日本塗料社製、商品名「プラグラス#400」100部に、ジブチルフタレート1部及びビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(化薬アクゾ社製、商品名「パーカドックス16」)1部からなるペーストを混合し、ベンゾキノン130ppmを添加したもの〕を用いた。得られた30℃の被覆原料をB型粘度計5番ローター20rpmで、回転開始2分後に測定した粘度は3,700mPa・sであった。この被覆原料に大日本塗料製希釈剤を用いて3,000mPa・sとなるように粘度調整を行なった。
【0056】
(成形と被覆膜の形成)
雄金型及び雌金型を型締めし、スライドピンを「突出」の状態として、前記雌型及び雄型をそれぞれ40℃及び90℃に加熱し、成形体の面積当たり0.49MPaの圧力で型締めし、反応射出成形機を利用して、ミキシングヘッド中で等重量の溶液Aと溶液Bを衝突混合させ、得られた反応原液を上記金型に注入した。反応原液を充填後、前記金型温度で約1分保持した。
次いで、1,490mLの被覆剤を被覆剤注入口A〜Dから、それぞれ、表1に示す条件で注入し、上記金型温度に約3分間保持した。
その後、スライドピンを「後退」の状態にして型を開き、被覆膜を有するトラックカバー成形体を取り出した。トラックカバー成形体の意匠外観を目視観察したところ、被覆膜の塗布状態は、全内面で欠損部が無く、厚み100〜300μmですべての部分で被覆されていた。
(各注入口からの被覆剤到達位置の確認)
各注入口からの被覆剤の到達位置を調べるために、各注入口から注入する被覆剤に相異なる色素を混合して、上記と同様の塗布実験を行なった。これにより、各注入口からの被覆剤が衝突した位置が色の異なる領域の境界線として線状に示された。結果を図1に破線で示す。
【0057】
【表1】

【0058】
〔比較例1〕
被覆剤の粘度調整を行なわず、3,700mPa・sのまま使用し、被覆剤注入圧力を倍にした他は、実施例1と同様に操作してトラックカバー成形体を得た。トラックカバー成形体の意匠外観を目視観察したところ、図2(a)の斜線部に非塗装部分が存在していた。
【0059】
〔比較例2〕
ベンゾキノンの添加量を50ppmとして、被覆剤の硬化開始時間を55秒としたほかは、実施例1と同様に操作してトラックカバー成形体を得た。トラックカバー成形体の意匠外観を目視観察したところ、図2(a)の斜線部とほぼ同様に、非塗装部分が存在していた。
【0060】
〔比較例3〜5〕
被覆剤の注入箇所及び注入量を表1に示すように変更した他は、実施例1と同様に操作してトラックカバー成形体を得た。比較例3〜5において、それぞれ、注入口A、B及びDからの被覆剤注入を行なわなかった。トラックカバー成形体の意匠外観を目視観察したところ、それぞれ、図2(b)〜(d)に斜線で示す非塗装部分が存在していた。
【0061】
表1に示す結果から、被覆剤の粘度が、本発明で規定する範囲を超えて高いとき(比較例1)又は90℃における被覆剤の硬化開始時間が本発明で規定する範囲を下回って短いとき(比較例2)は、塗布欠陥が生じることが分かる。
また、被覆剤の粘度及び90℃における硬化開始時間が本発明で規定する範囲内であっても、最小流動距離が1.3mを超える部分が存在するとき(比較例3〜5)は、その部分に、塗布欠陥が生じることが分かる。
これに対して、被覆剤の粘度及び硬化開始時間が本発明で規定する範囲内にあり、被覆剤塗布空間内の全ての点について最小流動距離が1.3m以下であるときは、塗布欠陥のない塗膜が得られることが分かる(実施例1)。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施例1で用いた金型における被覆剤注入口の位置(A〜D)及び各注入口から注入した被覆剤が衝突した位置(破線)を示す図(平面図)である。なお、図中、線分は、被覆剤注入口からの距離を示す。
【図2】各比較例において塗布欠陥を生じた部分(斜線部)を示す図。 (a) 比較例1及び2における塗布欠陥部分を示す図。 (b) 比較例3における塗布欠陥部分を示す図。 (c) 比較例4における塗布欠陥部分を示す図。 (d) 比較例5における塗布欠陥部分を示す図。
【符号の説明】
【0063】
A〜D: 実施例及び比較例で用いた金型における注入口の位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄型及び雌型を対とする金型で形成されるキャビティ内に樹脂材料を注入する樹脂成形に引き続き、樹脂成形体と金型とで形成される被覆剤塗布空間に、金型に設けた被覆剤注入口から、被覆剤を注入して樹脂成形体表面に被覆剤層を形成させるインモールドコーティング法において、(1)樹脂成形体の被覆剤塗布表面積が2m以上であり、(2)その90℃における硬化開始時間が60秒以上、200秒以下であり、粘度が3,500mPa・s以下である被覆剤を用い、且つ、(3)被覆剤塗布空間内の全ての点について、その点から各被覆剤注入口までの流動距離のうち最短のものが1.3m以下となるように、被覆剤注入口を設けることを特徴とするインモールドコーティング法。
【請求項2】
被覆剤が0.06〜2重量%の老化防止剤を含有するものである請求項1に記載のインモールドコーティング法。
【請求項3】
樹脂成形が反応射出成形である請求項1又は2に記載のインモールドコーティング法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のインモールドコーティング法によって得られた被覆成形体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−313395(P2007−313395A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143576(P2006−143576)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(503423096)RIMTEC株式会社 (23)
【Fターム(参考)】