説明

インモールド成形用ハードコートフィルム、インモールドラベルおよび樹脂成形品

【課題】耐摩擦性を有し、且つ、インモールド成形において割れを生ずる恐れが少ないインモールド成型用ハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルムの片面にハードコート層が積層されてなり、該ハードコート層の形成材料が多官能ウレタンアクリレートと、(メタ)アクリレートと、光重合開始剤を含有することを特徴とするインモールド成形用ハードコートフィルムとする。前記多官能ウレタンアクリレートの官能基数が3〜20であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインモールド成形用ハードコートフィルム、インモールドラベルおよび樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形品を得る方法として、基材フィルムを金型の間に挟み所定の形状とし、該基材フィルム上に熱可塑性樹脂などの樹脂を注入・固化した後、塗装または印刷を行っていた。しかしながら、基材フィルムの形状が曲面である場合、塗装または印刷を行うことが困難であった。
【0003】
そこで、樹脂成形品を得る方法として、インモールド成形が注目されている。インモールド成形は、基材フィルム上に所定の絵柄や文字を有する印刷層が積層された積層体を使用するものである。当該積層体を金型の間に挟み、所定の形状が形成された積層体上に樹脂を注入・固化することにより樹脂成形品が得られる。当該方法によって得られる樹脂成形品は、樹脂を注入・固化する前に印刷層を形成させるため、精細で鮮やかな絵柄や文字を施すことが可能となる。
インモールド成形が使用される対象物としては、携帯電話の外装部品、自動車関係部品、医療用機械器具、エレクトロニクス製品、家電製品、建材、洗剤や化粧品などの容器、玩具などが挙げられる。
【0004】
上記の積層体には、ハードコート層を積層することができる(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたハードコート層は、耐摩擦性および耐薬品性を有することが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−292198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたハードコート層は、紫外線/電子線硬化型樹脂からなり、主な構造は多官能アクリル、アクリル官能ポリマーである。
しかしながら、当該材料からなるハードコート層は耐摩擦性を有するものの、柔軟性が低い問題を有していた。すなわち、インモールド成形において、当該ハードコート層を金型の間に挟みこみ所定の形状にする際に、当該ハードコート層に割れが生ずる問題を有していた。
【0007】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであって、耐摩擦性を有し、且つ、インモールド成形において割れを生ずる恐れが少ないインモールド成型用ハードコートフィルム、インモールドラベルおよび樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の技術的構成により上記課題を解決したものである。
【0009】
(1)基材フィルムの片面にハードコート層が積層されてなり、該ハードコート層の形成材料が多官能ウレタンアクリレートと、(メタ)アクリレートと、光重合開始剤を含有することを特徴とするインモールド成形用ハードコートフィルム。
(2)前記多官能ウレタンアクリレートの官能基数が3〜20であることを特徴とする前記(1)に記載のインモールド形成用ハードコートフィルム。
(3)前記ハードコート層が、5〜65質量%の多官能ウレタンアクリレートと、30〜90質量%の(メタ)アクリレートと、0.01〜10質量%の光重合開始剤を含有することを特徴とする前記(1)または前記(2)に記載のインモールド成形用ハードコートフィルム。
(4)前記ハードコート層に保護フィルムが積層されてなることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のインモールド成形用ハードコートフィルム。
(5)前記基材フィルムのハードコート層が積層されていない面に、保護フィルムが積層されてなることを特徴とする前記(1)に記載のインモールド成形用ハードコートフィルム。
(6)前記(1)に記載の基材フィルムのハードコート層が積層されていない面に印刷層が積層されてなることを特徴とするインモールドラベル。
(7)前記(6)に記載のインモールドラベルを用いてインモールド成形したことを特徴とする樹脂成形品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐摩擦性を有し、且つ、インモールド成形において割れを生ずる恐れが少ないインモールド成型用ハードコートフィルム、インモールドラベルおよび樹脂成形品を提供することができる。
【0011】
なお、本明細書に使用される用語「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタアクリレートを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を図を用いて説明する。
図1に示すように、本発明のインモールド成形用ハードコートフィルム1は、基材フィルム10上にハードコート層20が積層されてなる構成を有する。
基材フィルム10とハードコート層20間に粘着層または接着層を設けることもできる。これによって、基材フィルム10とハードコート層20間の接着力を向上させることができる。
【0013】
本発明を構成するハードコートフィルムは光透過性が高いほど好ましい。本発明における光透過性は、全光線透過率(JISK7361−1:1997)で表すことができる。ハードコートフィルムの光線透過率は80%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。これによって、ハードコートフィルムに設けられてなる印刷層の印字部分を明りょうに識別することができる。
【0014】
図2に示すように、ハードコート層20上には保護フィルム30を積層し、インモールド成形用ハードコートフィルム2とすることができる。また、図2には示していないが、ハードコート層20が積層されていない基材フィルム10上に、保護フィルムを積層してもよい。加えて、ハードコート層20上および基材フィルム10上の両方に保護フィルムを積層することもできる。保護フィルムを積層することにより、ハードコート層20および基材フィルム10に傷や汚れがつきにくくなる。
【0015】
図3に示すように、基材フィルム10上に印刷層40を形成させて、インモールドラベル3とすることができる。なお、ハードコート層20上には保護フィルム30が積層されていなくてもよい。
【0016】
以下、本発明を構成する層ごとに材料を中心にして説明する。
【0017】
<ハードコート層>
本発明を構成するハードコート層は、多官能ウレタンアクリレートと、(メタ)アクリレートと、光重合開始剤を含有することが必要である。
本発明を構成するハードコート層において、多官能ウレタンアクリレート量と、(メタ)アクリレート量を合計した量は、ハードコート層の全固形分中、40〜99.99質量%の範囲にあることが好ましく、50〜95質量%であることがさらに好ましく、60〜90質量%であることが特に好ましい。
40質量%未満であると塗膜の柔軟性や耐摩擦性、耐擦傷性、光学特性等が低下する問題がある。
99.99質量%超であると、光重合の開始が遅くなるため、生産上好ましくない。
【0018】
(多官能ウレタンアクリレート)
本発明における多官能ウレタンアクリレートとは、3〜20官能のうちのいずれかのウレタンアクリレートをいう。好ましくは5〜15官能であり、さらに好ましくは6〜10官能である。官能基数が当該範囲であると、耐摩擦性を維持した上で、ハードコート層の割れが発生しにくくなる。
多官能ウレタンアクリレートの官能基数が4未満であると、塗膜の柔軟性は良好であるものの、ハードコート層の耐摩擦性や耐擦傷性が低下する。
多官能ウレタンアクリレートの官能基数が20超であると、ハードコート層の柔軟性が少なくなり割れが発生しやすくなる。
【0019】
ハードコート層に含有する多官能ウレタンアクリレート量は、ハードコート層の全固形分中、5〜65質量%の範囲内にあることが好ましく、20〜60質量%にあることがさらに好ましく、30〜55質量%にあることが特に好ましい。
ハードコート層に含有する多官能ウレタンアクリレート量が5質量%未満であると、耐摩擦性が向上するもののハードコート層の柔軟性が少なくなり割れを生じなるため好ましくない。
ハードコート層に含有する多官能ウレタンアクリレート量が65質量%超であると、ハードコート層の塗膜の柔軟性は良好であるものの、耐摩擦性及び塗膜硬度が低下するため好ましくない。
【0020】
((メタ)アクリレート)
(メタ)アクリレートは、単官能(メタ)アクリレートでも2官能性以上の多官能(メタ)アクリレートでもよく、極性基を有する分子構造でもよいし低極性分子構造でもよい。また、これらの(メタ)アクリレートは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
極性基を有する分子構造の(メタ)アクリレートの極性基としては、水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基等を挙げることができる。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。
カルボキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸の他、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
アミド基含有の(メタ)アクリレートとしては、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド類等が挙げられる。
アミノ基含有又はその他の(メタ)アクリレートとしては、例えば(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステルの他、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
低極性分子構造の(メタ)アクリレートとしては、脂環式のものと脂環式以外のものを挙げることができる。
脂環式(メタ)アクリレートとしては、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その他の(メタ)アクリレートとしては、例えばラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、べンジル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオール(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、スチレンモノマーが挙げられる。
【0023】
(メタ)アクリレートは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、骨格構造に環状構造を有するものを含有することが好ましい。環状構造は、炭素環式構造でも、複素環式構造でもよく、また、単環式構造でも多環式構造でもよい。このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート,トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレート構造を有するもの、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、エチレンオキサイド変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、アダマンタンジアクリレートなどが好適である。
【0024】
(メタ)アクリレートとして、(メタ)アクリレート系オリゴマーを用いることができる。このような(メタ)アクリレート系オリゴマーの例としては、ポリエステル(メタ)アクリレート系、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系、ポリブタジエン(メタ)アクリレート系、シリコーン(メタ)アクリレート系などが挙げられる。
【0025】
ハードコート層に含有する(メタ)アクリレート量は、ハードコート層の全固形分中、30〜90質量%の範囲内にあることが好ましく、40〜85質量%にあることがさらに好ましく、50〜80質量%の範囲にあることが特に好ましい。
ハードコート層に含有する(メタ)アクリレート量が30質量%未満であると耐摩擦性及び塗膜硬度が低下する問題がある。
ハードコート層に含有する(メタ)アクリレート量が90質量%超であるとハードコート層の割れが発生しやすくなる問題がある。
【0026】
(光重合開始剤)
本発明のハードコート層は光重合開始剤が含有されてなる。光重合開始剤を含有させることによって、光照射によるハードコート層の重合硬化反応を短時間に行うことができる。
【0027】
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、2―クロロチオキサントン、2,4―ジエチルチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2―ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2―ジメトキシ―1,2―ジフェニルエタン―1―オン、2―ヒドロキシ―2―メチル―1―フェニルプロパン―1―オン、1―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2―メチル―1―[4―(メチルチオ)フェニル]―2―モルフォリノプロパノン―1、1―[4―(2―ヒドロキシエトキシ)―フェニル]―2―ヒドロキシ―2―メチル―1―プロパン―1―オン、ビス(シクロペンタジエニル)―ビス(2,6―ジフルオロ―3―(ピル―1―イル)チタニウム、2―ベンジル―2―ジメチルアミノ―1―(4―モルフォリノフェニル)―ブタノン―1、2,4,6―トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。また、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0028】
ハードコート層の固形分中に含有する光重合開始剤は、ハードコート層の全固形分中、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.1〜7質量%であることがさらに好ましく、0.1〜5質量%配合されることが特に好ましい。光重合開始剤の含有量が0.01質量%未満では光硬化性が低下し、10質量%を超えて配合した場合には、ハードコート層の着色の発生を招くと共に、光硬化反応の進行が変わらないことから経済的に好ましくない。
また、光硬化性を向上させるために公知の各種染料や増感剤を添加することも可能である。さらにハードコート層を加熱により硬化させることの出来る熱重合開始剤を光重合開始剤と共に併用することも出来る。この場合、光硬化の後に加熱することによりハードコート層の重合硬化を更に促進することが期待できる。
【0029】
上記熱重合開始剤としては、特に限定されず、熱により分解し、重合硬化を開始する活性ラジカルを発生するものが挙げられる。例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエール、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等を使用することができる。
また、熱重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、パーブチルD、パーブチルH、パーブチルP、パーメンタH(いずれも日本油脂社製)等が好適に用いられる。
これらの熱重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
ハードコート層には状況に応じてレベリング剤、消泡剤、防汚剤等の界面活性剤や表面改質剤を使用してもよい。
【0030】
<基材フィルム>
基材フィルムとしては例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢ビフィルム、アイオノマー基材フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等ならびに、これらの架橋フィルム等が用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。さらに必要に応じ、上記フィルムを着色したフィルム、フッ素基材フィルム等を用いることができる。
【0031】
基材フィルムの厚さは、通常は50〜500μm、好ましくは80〜300μm程度であり、基材フィルムの厚さが薄くなるとハンドリング性が低下するおそれがある。
【0032】
基材フィルムはインモールド成形時に熱が負荷されることから、耐熱性を有していることが好ましい。これによってインモールド成形時に基材フィルムの変形が少なくなるため、熱負荷前後において、基材フィルム上に隣接して積層されたハードコート層との密着状態(接着力)を好ましく維持することができるため、当該ハードコート層の割れが生じにくくなる。
本発明における耐熱性は、基材フィルムを150℃のオーブン内に5秒間投入した後、変形が全く認められないか、実質的に変形が認められないものであればよい。
【0033】
基材フィルムの表面にはコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理的な処理を施すことができる。これらの処理を施すことにより、基材フィルムと隣接する層との接着力が向上する。
【0034】
<保護フィルム>
保護フィルムは、ハードコート層上および基材フィルム上に設けることができる。保護フィルムは樹脂フィルム上に粘着層を設けたものが好ましく使用される。保護フィルムを構成する樹脂フィルムとしては、上記の基材フィルムと同一のものを使用することができる。
上記以外に自己粘着PEフィルムも使用できる。
【0035】
粘着層に使用する樹脂成分としては、ハードコート層と樹脂フィルム、および基材フィルムと樹脂フィルムとを貼着することができるものであれば特に制限されるものではないが、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂等を使用することができる。これらの樹脂成分は単独で使用してもよいし、複数を混合して使用してもよい。
本発明においては、アクリル樹脂を主成分とする粘着層を使用することが透明性の点から好ましい。
【0036】
<印刷層>
印刷層は金属またはインクを使用することにより形成することができる。
金属を使用する場合、蒸着またはスパッタリングにより形成させ、パターニングプロセスなどの方法により所定のパターンを形成させることができる。
インクを使用する場合、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷または昇華熱転写などの印刷法によって基材フィルム上に形成させることができる。
【0037】
以下、本発明の製造方法を説明する。
【0038】
<インモールド成形用ハードコートフィルムの製造方法>
本発明を構成するハードコート層を基材フィルム上に塗布する際には、溶剤を添加することができる。溶剤としては例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン等のケトン等が挙げられる。希釈剤の配合量は適宜選定すればよい。
【0039】
本発明のインモールド成形用ハードコートフィルムは、ハードコート層を構成する各材料を混合し、溶剤を添加した後、基材フィルムの表面に塗布される。次いで、溶剤を蒸発させ紫外線を照射することにより硬化されて、ハードコート層が形成される。
ハードコート層を構成する各材料を基材フィルム上に塗布する方法としては、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法、カーテンコート法など従来公知の方法が挙げられる。
ハードコート層を形成するために照射する紫外線は、通常は紫外線ランプから輻射される紫外線が用いられる。この紫外線ランプとしては、通常波長300〜400nmの領域にスペクトル分布を有する紫外線を発光する、高圧水銀ランプ、ヒュ−ジョンHランプ、キセノンランプ等の紫外線ランプが用いられ、照射量は通常100〜500mJ/mである。紫外線の照射は、酸素不含又は低濃度雰囲気下で行われることが好ましい。酸素低濃度雰囲気における酸素濃度は、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、2%以下が特に好ましい。酸素不含又は低濃度雰囲気には、酸素以外に含まれる気体は不活性ガスが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等が挙げられる。また、紫外線は偏光であっても無偏光であってもよい。
紫外線照射により形成させたハードコートフィルムの片面または両面には、保護フィルムを積層することができる。
【0040】
<インモールドラベルの製造方法>
ハードコートフィルムを構成する基材フィルム上には印刷層を設けることができる。なお、ハードコートフィルムの片面または両面に保護フィルムが積層されている場合、該保護フィルムを剥離して基材フィルムを露出させた後に、印刷層を形成すればよい。
印刷層の形成方法としては、金属の場合、蒸着またはスパッタリングを使用すればよい。インクを使用する場合は、スクリーン印刷等を使用すればよい。
【0041】
<樹脂成形品の製造方法>
図4を用いて、本発明の樹脂成形品の製造方法を説明する。
図4(a)は成形前の断面図であって、第1の金型50と第2の金型60の間に、インモールドラベル3が配置されている。第2の金型60にはインモールドラベル3に樹脂材料を被覆するための樹脂注入口61が形成されている。
図4(a)の段階において、インモールドラベル3を構成するハードコート層は紫外線照射により固められていることが好ましい。これによって、所定の形状を有する樹脂成形品を得た後に紫外線照射処理を行う必要がなくなるため、作業性が向上する。
【0042】
図4(b)は成形後の断面図であって、図4(a)に示す第1の金型50と第2の金型60との間に、成形されたインモールドラベル3’が挟み込まれてなる。図4(b)の段階においては、加熱処理(120度〜200度程度、1秒〜60秒程度)がなされる。
【0043】
図4(c)は、樹脂成形品の製造途中段階の断面図である。第2の金型60と、成形されたインモールドラベル3’間に間隙を形成させた後、その間隙に樹脂注入口61から成形用樹脂62がインモールドラベル3’を被覆するように注入される。
成形用樹脂としては熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0044】
図4(d)は、樹脂成形品の断面図である。図4(c)の段階において冷却あるいは放冷することにより、成形用樹脂62を固めた後、第1の金型50および第2の金型60から引き離すことにより、本発明の樹脂成形品70を得ることができる。
【0045】
以下、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明はこれら実施例に何等限定されるものではない。なお、原材料の配合量は固形分の質量部(トルエン等の溶剤は質量部)である。
【実施例1】
【0046】
下記組成からなるハードコート層形成用材料をトルエンに均一に溶解混合させ、真空脱法泡を取り除き、ハードコート層形成用塗料を作製した。
・多官能ウレタンアクリレート(共栄社化学社製 製品名:UA−510H、官能基数10)17.4部
・アクリレート 32部
・光重合開始剤(1‐ヒドロキシシクロヘキサン‐1‐イルフェニルケトン) 1.23部
・トルエン 38部
上記のハードコート層形成用塗料を、厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートからなる基材フィルム上に塗布した。次いで、100℃で1分間乾燥させてトルエンを揮発させた。続いて、ハードコート層形成用塗料側から高圧水銀灯(120mW/cm)で照射距離10cm、積算光量800mJ/cmで紫外線照射することにより、本発明のハードコートフィルムを作製した。なお、紫外線照射後のハードコート層の厚さは4μmであった。
【実施例2】
【0047】
ポリエチレンテレフタレートからなる基材フィルムの厚さを188μmとした以外は実施例1と同様にして、本発明のハードコートフィルムを作製した。
【実施例3】
【0048】
下記組成からなるハードコート層形成用材料以外は実施例1と同様にして、本発明のハードコートフィルムを作製した。
・多官能ウレタンアクリレート(共栄社化学社製 製品名:UA−510H、官能基数10)9.6部
・アクリレート 40部
・光重合開始剤(1‐ヒドロキシシクロヘキサン‐1‐イルフェニルケトン) 0.6部
・トルエン 44部
【実施例4】
【0049】
ポリエチレンテレフタレートからなる基材フィルムの厚さを188μmとした以外は実施例3と同様にして、本発明のハードコートフィルムを作製した。
【0050】
[比較例1]
下記組成からなるハードコート層形成用材料以外は実施例1と同様にして、本発明のハードコートフィルムを作製した。
・アクリレート 48.5部
・光重合開始剤(1‐ヒドロキシシクロヘキサン‐1‐イルフェニルケトン) 1.5部
・トルエン 50部
【0051】
[比較例2]
下記組成からなるハードコート層形成用材料以外は実施例1と同様にして、本発明のハードコートフィルムを作製した。
・二官能ウレタンアクリレート(根上工業社製 製品名:アートレジンUN−9200A、官能基数2)9.8部
・アクリレート 40部
・光重合開始剤(1‐ヒドロキシシクロヘキサン‐1‐イルフェニルケトン) 0.6部
・トルエン 50部
【0052】
上記実施例および比較例のハードコート層形成用材料において、固形分を100質量%にした場合の各構成材料が占める質量%を表1に示した。なお、各構成材料において四捨五入を行っているため、各構成材料の合計が100%にならない場合がある。
【0053】
【表1】

【0054】
<評価>
上記のようにして得られた実施例および比較例のハードコートフィルムにおいて、下記の特性を評価した。得られた結果を表2に示した。
【0055】
(鉛筆硬度)
ハードコート層の鉛筆硬度をJISK5600−5−4:1999に準拠して測定した。
【0056】
(耐スチールウール性試験)
ハードコート層上に、#0000のスチールウールを載せ、加重250gをかけた状態で10往復させ、ハードコート層の状態を観察した。
キズが全くないものを○、キズが若干あるものを△、キズが中程度あるものを×、キズが多数あるものを××とした。
【0057】
(全光線透過率)
ハードコートフィルムの全光線透過率をJISK7361−1:1997に準拠して測定した。
【0058】
(90度折り曲げ試験)
実施例および比較例のハードコートフィルムを30mm×270mmにカットし、ハードコート層が外側になるように各ハードコートフィルムを約90度折り曲げ、折り曲げた部位の基材フィルム側に1kgの重しを載せた。なお、90度折り曲げる部位は、ハードコートフィルムの端から50mmのところで行った。続いて、折り曲げたハードコートフィルムを180度2分間オーブンの中に放置した。加熱終了後に室温になるまで各ハードコートフィルムを放冷した後、ハードコート層の割れをルーペにて観察した。
観察の基準は、全くキズが認められなかったものを○、キズが若干あるものを△、キズが中程度あるものを×、キズが多数あるものを××とした。
【0059】
【表2】

【0060】
表1に示すように、実施例1〜4のハードコートフィルムは、耐スチールウール性試験において、キズが全く認められなかったため耐摩擦性に優れていた。また、実施例1〜4のハードコートフィルムは、90度折り曲げ試験においてもキズが全く認められなかったことから、柔軟性を有していることが確認され、インモールド成形において割れを生ずる恐れが少ないことが確認された。すなわち、実施例1〜4のハードコートフィルムは、耐摩擦性と柔軟性を具備した性質を有することを確認した。
一方、多官能ウレタンアクリレートを含有せず、アクリレートからなる比較例1のハードコートフィルムは、耐スチールウール性に優れているものの、90度折り曲げ試験においてキズが多数生じていたことから、インモールド成形の用途には使用しにくいものであった。
また、多官能ウレタンアクリレートの代わりに二官能ウレタンアクリレートを使用した比較例2は、90度折り曲げ試験においてキズが認められなかったものの、耐スチールウール性試験においてキズが多数認められたため、インモールド成形の用途(例えば、携帯電話の外装部品等)には使用しにくいものであった。
【0061】
上記のように、本発明によれば、耐摩擦性を有し、且つ、インモールド成形において割れを生ずる恐れが少ないハードコートフィルムを提供することができるため、インモールド成型用ハードコートフィルム、インモールドラベルおよび樹脂成形品として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のインモールド成形用ハードコートフィルムの断面図である。
【図2】本発明の別のインモールド成形用ハードコートフィルムの断面図である。
【図3】本発明のインモールドラベルの断面図である。
【図4】本発明の樹脂成形品の製造方法を説明するための断面図であって、(a)成形前の断面図、(b)成形後の断面図、(c)樹脂成形品の製造途中段階の断面図、(d)樹脂成形品の断面図、である。
【符号の説明】
【0063】
1、2 ハードコートフィルム
3 インモールドラベル
3’ 成形されたインモールドラベル
10 基材
20 ハードコート層
30 保護フィルム
40 印刷層
50 第1の金型
60 第2の金型
61 樹脂注入孔
62 成形用樹脂
70 樹脂成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの片面にハードコート層が積層されてなり、該ハードコート層の形成材料が多官能ウレタンアクリレートと、(メタ)アクリレートと、光重合開始剤を含有することを特徴とするインモールド成形用ハードコートフィルム。
【請求項2】
前記多官能ウレタンアクリレートの官能基数が3〜20であることを特徴とする請求項1に記載のインモールド形成用ハードコートフィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層が、5〜65質量%の多官能ウレタンアクリレートと、30〜90質量%の(メタ)アクリレートと、0.01〜10質量%の光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のインモールド成形用ハードコートフィルム。
【請求項4】
前記ハードコート層に保護フィルムが積層されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインモールド成形用ハードコートフィルム。
【請求項5】
前記基材フィルムのハードコート層が積層されていない面に、保護フィルムが積層されてなることを特徴とする請求項1に記載のインモールド成形用ハードコートフィルム。
【請求項6】
請求項1に記載の基材フィルムのハードコート層が積層されていない面に印刷層が積層されてなることを特徴とするインモールドラベル。
【請求項7】
請求項6に記載のインモールドラベルを用いてインモールド成形したことを特徴とする樹脂成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−52334(P2010−52334A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221181(P2008−221181)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】