説明

ウイルス感染を治療する方法

本発明は、有効な量で本発明に記載される化合物を投与して、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)および/またはB型肝炎ウイルス(HBV)感染を治療する方法を提供し、HIVおよび/またはHBV感染を治療し、被験体において抗ウイルス化合物に対する耐性の発生を少なくとも実質的に阻害する。医薬組成物も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法第35条119(e)項に基づいて2008年1月25日出願の米国特許仮出願第61/023,633号および2008年10月1日出願の米国特許仮出願第61/101,810号の利益を主張する。その各々の開示は引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0002】
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)は、ウイルス複製に必要な次の3つの酵素、逆転写酵素、プロテアーゼ、およびインテグラーゼをコードする。プロテアーゼ阻害剤および逆転写酵素阻害剤との併用療法はHIVを効果的に治療するという長期記録があり、また、インテグラーゼ阻害剤は重要な貢献をし始めている(Palella,et al,N.Engl.J.Med.,338,853−860(1998);Richman,Nature,410,995−1001(2001)を参照されたい)。しかし、治療法は薬剤耐性の発生、複雑な投薬計画の不履行、薬物動態相互作用、毒性、および/または効力不足によって失敗する場合が多い。従って、変異HIV株に対して活性であり、副作用がより少なく、かつ、より簡単な投薬スケジュールを可能にする新規な治療法が継続的に必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第一の態様は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)および/またはB型肝炎ウイルス(HBV)感染について被験体を治療する方法にあり(その一部の実施形態では、上記被験体はこれまでHIVまたはHBV感染に対する抗ウイルス活性薬を投与されていない)、この方法は、上記被験体において、本明細書に記載される式(I)〜(III)および(V)〜(X)の抗ウイルス化合物、あるいはその製薬上許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物を、上記ウイルス感染を治療し、かつ抗ウイルス化合物に対する耐性の発生を実質的に阻害するために十分な量で上記被験体に投与するステップを含む。
【0004】
本発明のさらなる態様は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはB型肝炎ウイルス(HBV)感染に対する少なくとも1種類の抗ウイルス化合物の被験体への事前投与に応答して、上記被験体が少なくとも1種類の抗ウイルス化合物に対する耐性または毒性応答を発生する、HIVおよび/またはHBV感染に対して上記被験体を治療する方法にあり、この方法は、上記被験体において、本明細書に記載される式(I)〜(III)および(V)〜(X)の抗ウイルス化合物、あるいはその製薬上許容される塩、または立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物を、上記ウイルス感染を治療し、かつ抗ウイルス化合物に対する耐性のさらなる発生を阻害するために十分な量で上記被験体に投与するステップを含む。
【0005】
上記の方法は、上記被験体に1種類以上のさらなる抗ウイルス活性薬を上記抗ウイルス化合物と同時に投与するステップをさらに含むことができる。
【0006】
前述の一部の実施形態では、被験体は(例えば、上記ウイルスに)免疫不全症である。
【0007】
前述の一部の実施形態では、ウイルスはHBVである(および、その一部の実施形態では、被験体は劇症肝炎または劇症肝不全に罹患している)。
【0008】
前述の一部の実施形態では、被験体はHBVとHIVの両方に感染し、上記抗ウイルス化合物は、上記HBVとHIVの両方を治療するために有効な量で投与される。
【0009】
前述の一部の実施形態では、被験体は子宮内にあり、上記活性化合物は上記被験体を子宮内に保有する母親に投与される。
【0010】
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載される方法を実行するための、および/または本明細書に記載される方法を実行するための薬物の調製のための、本明細書に記載される式(I)〜(III)および(V)〜(X)の抗ウイルス化合物の使用である。
【0011】
本発明のさらなる態様は、(a)本明細書に記載される式(I)〜(III)および(V)〜(X)の抗ウイルス化合物、あるいはその製薬上許容される塩、または立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物、(b)1種類以上のさらなる抗ウイルス活性薬(例えば、抗HIVもしくは抗HBV抗ウイルス化合物)、(c)製薬上許容されるキャリア、を含む医薬組成物である。
【0012】
また、本明細書に記載される活性化合物がHIVなどのウイルスと会合するか直接結合し、活性化合物が別の方法では到達することのできない細胞または組織区画(「特権区画」と呼ばれることもある)の中への活性化合物の送達を可能にし、その活性化合物を、HIVなどのウイルスの伝達を(例えば、予防的に)阻害するための殺菌剤として有用なものにするという知見も本明細書に記載される。このような方法を実行するための組成物および装置もまた、このような方法を実行するための本明細書に記載される活性化合物の使用と共に記載される。
【0013】
上記の方法、装置、又は組成物の一部の実施形態では、1つ以上のさらなる抗ウイルス薬は、ラミブジン、アバカビル、ジドブジン、スタブジン、ザルシタビン、ジダノシン、エムトリシタビン、テノホビル、デラビルジン、エファビレンツ、エトラビリン、ネビラピン、アンプレナビル、アタザナビル、ダルナビル、インジナビル、ロピナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル、チプラナビル、マラビロク、エンフビルチド、およびラルテグラビルからなる群から選択されうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】比較目的のための、抗レトロウイルス薬を経験した患者における24週でのテノホビルに対するウイルス学的応答を示す図である。
【図2】HDP−TFV(CMX157)と比較した、テノホビル(TFV)のin vitroでの有効性を示す図である。
【図3】HDP−TFV(CMX157)と比較した、TFVのin vitroでの有効性を示す図である。この場合は、HDP−TFVのIC50を100倍に拡大している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の前述およびその他の態様を、本明細書に提供される説明および方法に関してこれからより詳細に説明する。本発明は様々な形態で具体化することができ、本明細書に示される実施形態に制限されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、当業者に本発明の範囲を十分に伝えるように提供される。
【0016】
本明細書中の本発明の説明において使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけのものであって、本発明を制限することを意図するものではない。本発明の実施形態および添付される特許請求の範囲における説明で使用される、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに示されている場合を除いて、複数形も同様に含むことが意図される。また、本明細書において、「および/または」とは、1以上の関連する記載項目の任意のおよびすべての可能性のある組み合わせをさし、包含する。さらに、用語「約」は、本明細書において測定可能な値、例えば化合物、用量、時間、温度、および同類のものの量などをさす場合には、指定される量の20%、10%、5%、1%、0.5%、またさらには0.1%の変動を包含することを意味する。用語「含む」および/または「含んでいる」とは、本明細書で使用される場合、述べられる特徴、整数、段階、操作、要素、および/または成分の存在を指定するが、1つ以上のその他の特徴、整数、段階、操作、要素、成分、および/またはそれらの群の存在又は追加を除外するものではないことがさらに理解されたい。別に定義されなければ、この説明において使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明の属する分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0017】
本明細書において参照されるすべての特許、特許出願および刊行物は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。用語法に矛盾のある場合は、本明細書が統括する。
【0018】
本明細書において、「アルキル」とは、1〜30個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖炭化水素をさし、一部の実施形態では、アルキル基は2〜25個、2〜24個、2〜10個、または2〜8個の炭素原子を含む。一部の実施形態では、アルキル基は1〜6個の炭素原子を含む。一部の実施形態では、アルキル基は1〜4個の炭素原子を含む。さらにその他の実施形態では、アルキル基は1〜5個の炭素原子を含み、なおその他の実施形態では、アルキル基は1〜4個または1〜3個の炭素原子を含む。アルキルの代表例としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、3−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、などが挙げられる。さらなる例または一般に適用可能な物質は、本明細書に記載される実施例に示される具体的な実施形態によって説明される。
【0019】
本明細書において、「アルケニル」とは、2〜30個の炭素を含有し、かつ、2個の水素の除去により形成された少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含有する直鎖または分枝鎖炭化水素をさす。一部の実施形態では、アルケニル基は2〜25個、2〜24個、2〜10個、2〜8個の炭素原子を含む。一部の実施形態では、アルケニル基は2〜6個の炭素原子を含む。さらに他の実施形態では、アルケニル基は2〜5個の炭素原子を含む、さらにその他の実施形態では、アルケニル基は2〜4個または2〜3個の炭素原子を含む。「アルケニル」の代表例としては、限定されるものではないが、エテニル、2−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、3−ブテニル、4−ペンテニル、5−ヘキセニル、2−ヘプテニル、2−メチル−1−ヘプテニル、3−デセニルなどが挙げられる。さらなる例または一般に適用可能な置換基は、本明細書に記載される実施例に示される具体的な実施形態によって説明される。
【0020】
本明細書において、「アルキニル」とは、2〜30個の炭素原子を含有し、かつ、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を含有する直鎖または分枝鎖炭化水素基をさす。一部の実施形態では、アルキニル基は2〜25個、2〜24個、2〜10個または2〜8個の炭素原子を含む。一部の実施形態では、アルキニル基は2〜6個の炭素原子を含む。さらに他の実施形態では、アルキニル基は2〜5個の炭素原子を含む、さらにその他の実施形態では、アルキニル基は2〜4個または2〜3個の炭素原子を含む。アルキニルの代表例としては、限定されるものではないが、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、3−ブチニル、2−ペンチニル、1−ブチニルなどが挙げられる。さらなる例または一般に適用可能な置換基は、本明細書に記載される実施例に示される具体的な実施形態によって説明される。
【0021】
本明細書において、用語「アルコキシ」とは、酸素原子を経由して親分子部分に結合している、既に定義される通りのアルキル基をさす。一部の実施形態では、アルキル基は1〜30個の炭素原子を含む。その他の実施形態では、アルキル基は1〜20、1〜10または1〜5個の炭素原子を含む。一部の実施形態では、アルコキシル基は2〜8個の炭素原子を含む。一部の実施形態では、アルコキシル基は1〜6個の炭素原子を含む。一部の実施形態では、アルコキシル基は1〜4個の炭素原子を含む。さらに他の実施形態では、アルコキシル基は1〜5個の炭素原子を含む、さらにその他の実施形態では、アルコキシル基は1〜4個または1〜3個の炭素原子を含む。アルコキシルの代表例としては、限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、およびn−ペントキシが挙げられる。さらなる例または一般に適用可能な置換基は、本明細書に記載される実施例に示される具体的な実施形態によって説明される。
【0022】
本明細書において、「アミノ酸残基」とは、一級アミノ(−NH)基、カルボン酸(−COOH)基、側鎖、および水素原子に結合している炭素原子からなる化合物をさす。例えば、用語「アミノ酸」には、限定されるものではないが、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。本発明では、式IまたはIaにおいて、Rが−NR’HでありR’がアミノ酸残基である場合、Nは側鎖として炭素原子に結合している。さらに、本明細書において、「アミノ酸」には、アミノ酸の誘導体、例えばエステル、およびアミド、および塩、ならびに、代謝によって活性形態となる薬物特性(pharmacoproperties)を有する誘導体を含むその他の誘導体も含まれる。さらなる例または一般に適用可能な置換基は、本明細書に記載される実施例に示される具体的な実施形態によって説明される。
【0023】
本明細書において、「シクロアルキル」とは、単一の水素原子の除去によりシクロアルカンから導かれる3〜12個の炭素からなる一価の飽和環式もしくは二環式炭化水素基をさす。一部の実施形態では、シクロアルキルは3〜8個の炭素原子を含む。一部の実施形態では、シクロアルキルは3〜6個の炭素原子を含む。シクロアルキル基は、所望によりアルキル、アルコキシ、ハロ、またはヒドロキシ置換基で置換されうる。シクロアルキルの代表例としては、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。さらなる例または一般に適用可能な置換基は、本明細書に記載される実施例に示される具体的な実施形態によって説明される。
【0024】
本明細書において、「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」または「ヘテロアルキニル」は、例えば、炭素原子の代わりに、1以上の酸素、硫黄、窒素、リンまたはケイ素原子を含むアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基をさす。一部の実施形態では、ヘテロアルキル基は1〜8個の炭素原子を含む。ある種の実施形態では、ヘテロアルケニル基およびヘテロアルキニル基は、独立して2〜8個の炭素原子を含む。さらに他の実施形態では、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニルおよびヘテロアルキニルは、独立して2〜5個の炭素原子を含み、さらにその他の実施形態では、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニルおよびヘテロアルキニルは、独立して2〜4個または2〜3個の炭素原子を含む。
【0025】
用語「複素環」または「ヘテロシクリル」は、独立して窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1、2または3個のヘテロ原子を含有する、3員、4員、5員、6員、7員または8員の飽和もしくは不飽和環を表す。一部の実施形態では、複素環は3、4、5、または6個の炭素を含む。代表的なヘテロシクリルとしては、限定されるものではないが、フラニル、チオフェニル、ピロリル、ピペリジニル、1,4−ジオキサニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピラゾリニル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、およびピペラジニルが挙げられる。
【0026】
本明細書において、用語「ハロゲン」とは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)をさし、用語「ハロ」とは、ハロゲンラジカルである、フルオロ(−F)、クロロ(−Cl)、ブロモ(−Br)、およびヨード(−I)をさす。
【0027】
本明細書において、用語「ハロアルキル」とは、少なくとも1個のハロ基で置換されている、少なくとも1つの炭素原子を含有する、本明細書において定義される通りの直鎖または分枝鎖アルキル基をさし、ハロは本明細書において定義される通りである。一部の実施形態では、ハロアルキルは1〜30個の炭素原子を含む。一部の実施形態では、ハロアルキルは1〜8個または1〜6個の炭素原子を含む。その他の実施形態では、ハロアルキルは1〜4個の炭素原子を含む。さらなる例または一般に適用可能な置換基は、本明細書に記載される実施例に示される具体的な実施形態によって説明される。
【0028】
本明細書において、用語「アリール」とは、1つ以上の芳香環を有する単環式炭素環系または二環炭素環式縮合環系をさす。アリールの代表例としては、アズレニル、インダニル、インデニル、ナフチル、フェニル、テトラヒドロナフチル、などが挙げられる。用語「アリール」は、特に断りのない限り、置換アリールおよび非置換アリールの両方を含むことが意図される。例えば、アリールは、1つ以上のヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄および/または窒素)で置換されうる。さらなる例または一般に適用可能な置換基は、本明細書に記載される実施例に示される具体的な実施形態によって説明される。
【0029】
本発明の方法により治療される被験体は、一般に、哺乳類および霊長類被験体(例えば、ヒト、サル、類人猿、チンパンジー)である。被験体は雄性でも雌性でもよく、出生前(すなわち子宮内)、新生児、乳児、若年、青年、成人、および老齢の被験体を含むあらゆる年齢であってよい。従って、一部の例では被験体は妊娠している雌の被験体であってよい。治療はどのような目的であってもよく、以前に感染した被験体治療的処置、ならびに感染していない被験体(例えば、感染のリスクが高いと確認された被験体)の予防的処置が含まれる。
【0030】
本明細書において、「ヒト免疫不全ウイルス」(または「HIV」)は本明細書においてHIVサブタイプA、B、C、D、E、F、G、およびO、ならびにHIV−2を含むそのすべてのサブタイプを含むことが意図される。
【0031】
本明細書において、「B型肝炎ウイルス」(または「HBV」)は本明細書においてそのすべてのサブタイプ(adw、adr、ayw、ayr)およびまたは遺伝子型(A、B、C、D、E、F、G、H)を含むことが意図される。
【0032】
本明細書において、「多重ヌクレオシド耐性(Multi nucleoside resistant」または「多ヌクレオシド耐性(multi−nucleoside resistant)」は本明細書において、大部分またはすべてのヌクレオシドおよびヌクレオチド逆転写酵素阻害剤に対して有効性の低下を予測または示す遺伝子型もしくは表現型パターンをさす。遺伝子型の例としては、Q151M複合体、T69SXX複合体および多重チミジン類似体関連突然変異が挙げられる。表現型の例としては、NRTI試験で「感受性あり」が少数であるかまたは無いパターンが含まれる。
【0033】
本明細書において、「毒性応答」は本明細書において、抗ウイルス薬での治療に対するあらゆる有害な毒性および/または望まない応答であってよく、それには、限定されるものではないが、悪心、嘔吐、発疹、下痢、腎毒性、ミトコンドリア毒性などおよびそれらの組み合わせが含まれる。
【0034】
本明細書において、「治療上有効な量」または「有効量」とは、被験体において少なくとも1つの臨床症状の何らかの軽減、緩和、および/または低下をもたらす量をさす。当業者であれば、何らかの利益が被験体にもたらされるのであれば治療効果が完全または治癒的である必要が無いことが理解される。
【0035】
特に指定のない限り、本明細書において表される構造はまた、その構造のすべての異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマー、および幾何(または立体構造)の形態)を含むことを意味する。例えば、各々の不斉中心に対するRおよびS立体配置、(Z)および(E)二重結合異性体、ならびに(Z)および(E)立体構造異性体。従って、本発明の化合物の単一の立体化学異性体ならびに鏡像異性体、ジアステレオマー、および幾何(または立体構造)混合物は本発明の範囲内である。特に指定のない限り、本発明の化合物のすべての互変異性型は本発明の範囲内である。
【0036】
本明細書において、用語「治療」、「治療する」および「治療している」は、本明細書において記載される疾患または障害を逆転させる、軽減する、その発症を遅らせる、またはその進行を阻害することをさす。一部の実施形態では、治療は1以上の症状が発症した後に投与されうる。その他の実施形態では、治療は症状の不在下で投与されうる。例えば、治療は、症状の発症より前に(例えば、症状の履歴に照らして、かつ/または遺伝的要因またはその他の感受性要因に照らして)感受性の高い個体に投与されうる。また、症状が回復した後に、例えばその再発を予防または遅延させるために、治療を継続することもできる。
【0037】
本発明の活性化合物は、所望により、本明細書において記載されるウイルス感染の治療に有用なその他の活性化合物および/または薬剤と併せて投与されうる。その他の化合物は、所望により同時に投与されうる。本明細書において、「同時に(concurrently)」という語は、複合効果を生じさせるために十分に時間が接近していることを意味する(つまり、同時に(concurrently)は、一斉に(simultaneously)であることができ、またはそれはお互いの前または後の短時間内に起こる2またはそれ以上の事象であることができる)。
【0038】
A.活性化合物
本発明を実行するために有用な活性化合物は、一般に、式I(または一部の実施形態では、より特に式Iaの化合物)の抗ウイルス化合物、あるいはその製薬上許容される塩、または立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物である。
【化1】

(式中、
Bは、プリンまたはピリミジン塩基であり、それには、限定されるものではないが、アデニン、6−クロロプリン、キサンチン、ヒポキサンチン、グアニン、8−ブロモグアニン、8−クロログアニン、8−アミノグアニン、8−ヒドラジノグアニン、8−ヒドロキシグアニン、8−メチルグアニン、8−チオグアニン、2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、チミン、シトシン、5−フルオロシトシン、ウラシルと、5−ブロモウラシル、5−ヨードウラシル、5−エチルウラシル、5−エチニルウラシル、5−プロピニルウラシル、5−プロピルウラシル、5−ビニルウラシル、5−ブロモビニルウラシルと、が含まれ、
はH、メチル、エチル、−CHOH、−CHCHOH、−CH(OH)CH、またはC1−6ハロアルキルであり、
は、フルオロ、ヒドロキシ、−OR2a、−BH、C−Cアルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニル、または−NR’Hであり、
2aは、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニル、−P(=O)(OH)、または−P(=O)(OH)OP(=O)(OH)であり、
R’は、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルキニル、C2−8ヘテロアルケニル、C6−10アリール、またはアミノ酸残基であり、
は、mが2〜5(一部の実施形態では、2または3)であり、かつnが11〜21(一部の実施形態では、15または17)である、−O(CHO(CHCHであり、
Xは、セレン、硫黄、または酸素(一部の実施形態では、酸素)である。)
【0039】
塩基Bのさらなる例としては、限定されるものではないが、一般式、
【化2】

(式中:
Yは、NまたはCXであり、
Xは、H、ハロ、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、CN、CF、N、NO、C6−10アリール、C6−10ヘテロアリール、およびCORからなる群から選択され、
は、H、OH、SH、C1−6アルキル、C1−6アミノアルキル、C1−6アルコキシおよびC1−6チオアルキルからなる群から選択され、
11は、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C6−10アリール、および、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、またはC6−10アリールで置換されているカルボニルからなる群から選択される)の化合物が含まれる。Bの例は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする米国特許第6,583,149号にさらに記載される。
【0040】
塩基Bのさらなる例としては、限定されるものではないが、一般式、
【化3】

(式中、
Zは、NHまたはヒドロキシルであり、
は、共有結合(つまり、不在)、−N(−R15)−、−N(−R15)C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−、または−S(=O)−であり、
13は、H、C1−6アルキル、C1−6ヘテロアルキル、C2−6アルケニル、C6−10アリール、C7−16アリールアルキル、C3−10カルボシクリル、C6−10ヘテロシクリル、またはC7−16ヘテロシクリルアルキルであり、
14は、H、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、−O(CHOC(=O)OR15、またはOC(=O)OR15であり、この際Xは、2または3〜10、15または20であり、R15は、H、C1−6アルキル、C1−6ヘテロアルキル、C2−6アルケニル、C6−10アリール、C7−16アリールアルキル、C3−10シクリル、C6−10ヘテロシクリル、またはC7−16ヘテロシクリルアルキルである)の化合物が含まれる。
【0041】
塩基Bのさらなる例としては、限定されるものではないが、一般式、
【化4】

(式中、
16およびR17は、独立して、水素、C1−6アルキル、またはC3−6シクロアルキルからなる群から選択されるか、またはN、R16およびR17は一緒になってN、C3−8ヘテロシクリルを形成する、この際C3−6シクロアルキルおよびC3−8ヘテロシクリルは所望により1以上のC1−5アルキルで置換されていてよい)の化合物が含まれる。
【0042】
本発明を実行するために有用な、例示的な活性化合物(テノホビル類似体)としては、限定されるものではないが、
【化5】

(式中、Rは、O(CHO(CH17CH、またはO(CHO(CH15CHである)が含まれる。
【0043】
本発明を実行するために有用な、活性化合物(テノホビル類似体)のさらなる例としては、限定されるものではないが、
【化6】

(式中、Rは、O(CHO(CH17CH、またはO(CHO(CH15CHである)が含まれる。
【0044】
本発明を実行するための活性化合物(アデホビル類似体)のさらなる例としては、限定されるものではないが、
【化7】

(式中、Rは、O(CHO(CH17CH、またはO(CHO(CH15CHである)が含まれる。
【0045】
本発明を実行するための活性化合物(HPMPA類似体)のさらなる例としては、限定されるものではないが、
【化8】

(式中、Rは、O(CHO(CH17CH、またはO(CHO(CH15CHである)が含まれる。
【0046】
本発明を実行するために有用な活性化合物(PMEG類似体)のさらなる例としては、限定されるものではないが、
【化9】

(式中、Rは、O(CHO(CH17CH、またはO(CHO(CH15CHである)が挙げられる。
【0047】
従って、本発明を実行するために有用な活性化合物には、式IIの化合物(または一部の実施形態では、より特に式IIaの化合物)などの脂質テノホビルコンジュゲート、
【化10】

【化11】

(式中、mは2〜5(一部の実施形態では3)であり、nは11〜21(一部の実施形態では、15または17)である)、あるいはその製薬上許容される塩、または立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物が含まれる。
【0048】
化合物の例は、式IIIの化合物(本明細書においてCMX157とも呼ばれる)、
【化12】

(III)CMX157あるいはその製薬上許容される塩、または立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物である。
【0049】
かかる化合物は公知であり、例えば、G.Painter et al.,Evaluation of Hexadecyloxypropyl−9−R−[2−(Phosphonomethoxy)Propyl]−Adenine,CMX157,as a Potential Treatment for Human Immunodeficiency Virus Type 1 and Hepatitis B Virus Infections,「Antimicrobial Agents and Chemotherapy」51,3505−3509(2007)、Hostetlerに対する米国特許第7,034,014号、およびHostetlerに対する米国特許第6,716,825号に記載され、および/または、限定されるものではないが、PCT特許出願第WO2005/79812 A1号(Anadys Pharmaceuticals)および同第WO2008/10921 A2号(Gilead)に記載される技術を含む既知の技術を変更することにより調製することができる。
【0050】
上記式I〜IIIに関連して記載される化合物に加えて、テノホビルなどの非環式ヌクレオチドホスホネートの多様な脂質誘導体を、本明細書において提供される方法および組成物中の活性薬剤として使用することができる。一実施形態では、活性薬剤は次の構造を有する。
【化13】

(式中、W、W、およびWは、相互に独立して、−O−、−S−、−SO−、−SO、−O(C=O)−、−(C=O)O−、−NH(C=O)−、−(C=O)NH−または−NH−であり、かつ一実施形態では、相互に独立して、O、S、または−O(C=O)−であり、
nは、0または1であり、mは、0または1であり、pは、0または1であり、
は、所望により置換されているアルキル、アルケニルまたはアルキニル、例えば、C1−30アルキル、C2−30アルケニル、またはC2−30アルキニルであり、あるいは一実施形態では、Rは、所望により置換されているC8−30アルキル、C8−30アルケニルまたはC8−30アルキニルであり、あるいはRは、C8−24アルキル、C8−24アルケニルまたはC8−24アルキニル(例えば、C17、C18、C19、C20、C22、C23、またはC24アルキル、アルケニル、またはアルキニル)であり、
およびRは、相互に独立して、所望により置換されているC1−25アルキル、C2−25アルケニル、またはC2−25アルキニルであり、
Dは、式V〜Xに示されるメチレン基に直接連結されているテノホビルであってよい、例えば、Dは次式の部分である。
【化14】

(例えば、テノホビルは、ホスホネートのヒドロキシル基を介して式V〜Xのメチレン基に直接連結されている)。
【0051】
式V〜Xの一部の実施形態では、
、W、およびWは、相互に独立して、−O−、−S−、または−O(CO)−であり、
nは、0または1であり、mは、0または1であり、pは、0または1であり、
は、所望により置換されているC12−24アルキルまたはアルケニル(例えば、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、またはC24アルキルまたはアルケニル)であり、
およびRは、相互に独立して、所望により置換されているC1−24アルキルまたはC2−24アルケニル、またはC2−24アルキニルである。
Dは、式V〜Xに示されるメチレン基に直接連結されているテノホビルである。
【0052】
別の下位実施形態では、活性化合物は、次の構造のうちの1つを有する。Rが、所望により置換されているC8−24アルキル、例えば、C12−24アルキルであり、Dが、式V〜Xに示されるメチレン基に直接連結されているテノホビルである。
【0053】
本明細書に開示される活性化合物は、上記のように、その製薬上許容される塩の形態で提供することができる。製薬上許容される塩は、親化合物の所望の生物活性を保持し、望ましくない毒物学的影響を与えない塩である。このような塩の例は、(a)無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸および同類のものを用いて形成された酸付加塩、ならびに、有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸、および同類のものを用いて形成された塩、(b)元素陰イオン、例えば塩素、臭素、およびヨウ素などから形成される塩、(c)アンモニウム塩などの塩基から誘導される塩、リチウム、ナトリウムおよびカリウムのものなどのアルカリ金属塩、カルシウムおよびマグネシウムのものなどのアルカリ土類金属塩、ならびにジシクロヘキシルアミンおよびn−メチル−D−グルカミンなどの有機塩基を含む塩である。
【0054】
本明細書に記載される活性化合物は、当業者に明らかな既知の手順、またはその変更形態に従って調製することができる。例えば、Painter et al.,Evaluation of Hexadecyloxypropyl−9−R−[2−(Phosphonomethoxy)Propyl]−Adenine,CMX157,as a Potential Treatment for Human Immunodeficiency Virus Type 1 and Hepatitis B Virus Infections,「Antimicrobial Agents and Chemotherapy」51,3505−3509(2007)およびAlmond et al.に対する米国特許出願公開第2007/0003516号を参照されたい。
【0055】
B.さらなる抗ウイルス薬/化合物
本発明を実行する際に使用できるさらなる抗ウイルス活性薬としては、HIV−プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(この用語は本明細書においてヌクレオチド逆転写酵素阻害剤を含む)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、エントリー阻害剤、融合阻害剤、成熟阻害剤、およびそれらの組み合わせが含まれる。多数の例が公知であり、例えば、Dahl et alに対する米国特許出願公開第2006/0234982号の表A、および下に示される表Aに記載されている。
【0056】
さらなる例としては、限定されるものではないが、インテグラーゼ阻害剤Isentressまたはラルテグラビル(MK−0518:Merck)、CCR5阻害剤Maravirocまたはシーエルセントリ(およびK−427857、Pfizer)ならびにこれらの種類のその他のものが含まれる。
【0057】
さらなる例がBuelow et al.に対する米国特許第7,094,413号、Nair et al.に対する米国特許第7,250,422号、Heneine et al.に対する米国特許出願公開第2007/0265227号およびCai et al.に対する米国特許出願公開第2007/0072831号に提供されている。
【0058】
非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(「NNRTI」)6−クロロ−4−シクロプロピルエチニル−4−トリフルオロメチル−1,4−ジヒドロ−2H3,1−ベンゾオキサジン−2−オン、およびその製薬上許容される塩は、例えば、米国特許第5,519,021号に記載されている。本発明の例としてはエファビレンツが含まれる。
【0059】
ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(「NRTI」)2−ヒドロキシメチル−5−(5−フルオロシトシン−1−イル)−1,3−オキサチオラン(「FTC」)およびその製薬上許容される塩は、例えば、Liotta et al.に対する米国特許第6,642,245号に記載されている。本発明の例としてはエムトリシタビンが含まれる。
【0060】
インテグラーゼ阻害剤としては、限定されるものではないが、米国特許出願公開第2007/0072831号、WO 02/30426号、WO 02/30930号、WO 02/30931号、WO 02/055079号、WO 02/36734号、米国特許第6,395,743号、米国特許第6,245,806号、米国特許第6,271,402号、WO 00/039086号、WO 00/075122号、WO 99/62513号、WO 99/62520号、WO 01/00578号、Jing,et al.,Biochemistry,41,5397−5403,(2002);Pais,et al.,J.Med.Chem.,45,3184−94(2002)、Goldgur,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,96,13040−13043(1999)、Espeseth,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,97,1 1244−11249,(2000)、WO 2005/016927号、WO 2004/096807号、WO 2004/035577号、WO 2004/035576号およびUS2003/0055071号に記載されるものが含まれる。
【0061】
【表1A】

【表1B】

【0062】
C.医薬製剤および投与
製薬上許容されるキャリアおよび様々な組成物の製造方法の例としては、限定されるものではないが、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Mack Publishing Co.(1990)に記載されるものが含まれる(米国特許出願第2007/0072831号も参照されたい)。
【0063】
本発明の化合物は、従来のキャリア、希釈剤および賦形剤と共に処方されてよく、それらは通常の実務に合わせて選択される。錠剤は、賦形剤、磨砕剤、増量剤、結合剤、希釈剤などを含む。水性製剤は滅菌形態で調製され、経口投与以外による送達を意図する場合は一般に等張性である。製剤は所望により賦形剤、例えば「Handbook of Pharmaceutical Excipients」(1986)に記述されるものを含み、アスコルビン酸およびその他の抗酸化薬、EDTAなどのキレート化剤、デキストリン、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ステアリン酸などの炭水化物などを含む。
【0064】
本発明の化合物およびそれらの生理学的に許容される塩(以降、集合的に有効成分と呼ぶ)は、処置される状態に適切なあらゆる経路により投与されることができ、適した経路には、経口、直腸、鼻腔、局所(眼球、口内および舌下を含む)、膣および非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、くも膜下腔内および硬膜外を含む)が含まれる。好ましい投与経路は、例えばレシピエントの状態によって変動することができる。
【0065】
有効成分は単独で投与することが可能であるが、有効成分は医薬製剤として提示されることが好ましい。本発明の製剤は、獣医学用もヒト用も、上に定義される少なくとも1つの有効成分を1以上のその製薬上許容されるキャリア(賦形剤、希釈剤など)および所望によりその他の治療成分と共に含む。キャリア(1または複数)は、製剤のその他の成分に適合性であり、かつそのレシピエントに対して有害でないという意味において「許容され」ねばならない。
【0066】
製剤には、経口、直腸、鼻腔、局所(口内および舌下を含む)、膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、くも膜下腔内および硬膜外を含む)投与に適したものが含まれる。製剤は便宜に単位剤形で提示されてよく、製薬技術分野で周知のいずれかの方法により調製することができる。このような方法には、有効成分と、1以上の副成分を構成するキャリアとを会合させる段階が含まれる。一般に、製剤は、有効成分を液体キャリアまたは微粉化した固体キャリアあるいは両方と均一かつ均質に会合させ、次に、必要に応じて生成物を成形することにより調製される。
【0067】
経口投与に適した本発明の製剤は、それぞれ所定量の有効成分を含有するカプセル剤、カシェ剤または錠剤などの個別の単位として、粉末または顆粒剤として、水性液または非水性液中の溶液または懸濁液として、あるいは水中油型液体乳濁液または油中水型液体乳濁液として提示されうる。有効成分はまた、ボーラス、舐剤またはペースト剤として提示されることもできる。
【0068】
錠剤は、圧縮または成型により、所望により1以上の副成分とともに作製されうる。圧縮錠は、所望により結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、表面活性剤または分散剤と混合した、粉末または顆粒剤などの自由流動形態の有効成分を適した機械で圧縮することにより調製されうる。成型錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適した機械で成型することにより作製することができる。錠剤は所望によりコーティングまたは分割されてよく、かつ、その中の有効成分の持続または制御放出をもたらすように処方されうる。
【0069】
眼またはその他の外部組織、例えば口および皮膚の感染に対して、一部の実施形態では、製剤は、有効成分(1または複数)を例えば、0.075〜20% w/w(0.1%〜20%の間の範囲の有効成分(1または複数)を、0.1% w/wの増分、例えば0.6% w/w、0.7% w/wなどで含む)、一部の実施形態では、0.2〜15% w/wおよびその他の実施形態では、0.5〜10% w/wの量で含有する局所軟膏またはクリームとして適用される。軟膏に処方される場合、有効成分はパラフィン性または水混和性のいずれかの軟膏基剤と共に用いられることができる。あるいは、有効成分は水中油型クリーム基剤を用いてにクリームに処方されうる。
【0070】
所望であれば、クリーム基剤の水相には、例えば、少なくとも30% w/wの多価アルコール、すなわち2以上のヒドロキシル基を有するアルコール、例えばプロピレングリコール、ブタン1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロールおよびポリエチレングリコール(PEG400を含む)およびそれらの混合物が含まれることができる。局所製剤には望ましくは皮膚またはその他の患部を通して有効成分の吸収または透過を促進する化合物が含まれることができる。かかる皮膚透過促進剤の例としては、ジメチルスルホキシドおよび関連類似体が含まれる。
【0071】
本発明の乳濁液の油相は、既知の成分から既知の方法で構成されうる。この相は単に乳化剤(別名エマルジェント(emulgent)としても知られている)だけを含むこともできるが、少なくとも1種類の乳化剤と脂質または油との、あるいは脂質および油の両方との混合物を含むことが望ましい。一部の実施形態では、親水性の乳化剤は、安定剤として作用する親油性の乳化剤と一緒に含まれる。一部の実施形態では、それには油と脂質の両方が含まれる。乳化剤(1または複数)は安定剤(1または複数)と共にまたはなしで、いわゆる乳化性ワックスを構成し、このワックスは油脂と共に、クリーム製剤の油性分散相を形成するいわゆる乳化性軟膏基剤を形成する。
【0072】
本発明の製剤中での使用に適したエマルジェントおよび乳濁液安定剤としては、Tween(商標)60、Span(商標)80、セトステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、グリセリルモノ−ステアレートおよびラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。
【0073】
医薬乳濁液製剤で使用されることの多い大部分の油中の活性化合物の溶解度はきわめて低いので、製剤に適した油または脂質の選択は、所望の化粧性を達成することに基づく。一部の実施形態では、クリームは好ましくは、チューブまたはその他の容器からの漏出を避けるために適した稠度をもつ、べたべたしない、非染色性の、洗浄可能な生成物であるべきである。直鎖または分枝鎖、一塩基性もしくは二塩基性アルキルエステル類、例えばジ−イソアジピン酸塩、ステアリン酸イソセチル、ココナツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2−エチルヘキシルまたはCrodamol CAPとして公知の分枝鎖エステルのブレンドを使用することができ、最後の3つが好ましいエステルである。これらは単独で使用することができ、必要な特性に基づいて組み合わせて使用することができる。あるいは、高融点脂質、例えば白色の軟パラフィンおよび/または流動パラフィンまたはその他の鉱油などを使用することができる。
【0074】
また、眼への局所投与に適した製剤には、有効成分に適したキャリア、特に水性溶媒に有効成分が溶解または懸濁されている点眼剤が含まれる。一部の実施形態では、有効成分は、かかる製剤中に0.5〜20%の濃度で存在する。一部の実施形態では、有効成分は、0.5〜10%の濃度で存在する。一部の実施形態では、有効成分は、約1.5% w/wの濃度で存在する。
【0075】
口内の局所投与に適した製剤には、香味付けられた基剤、通常スクロースおよびアラビアガムまたはトラガカントガム中に有効成分を含むトローチ剤、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアラビアガムなどの不活性基剤中に有効成分を含む香錠、ならびに有効成分を適した液体キャリア中に含む口腔洗浄薬が含まれる。
【0076】
直腸投与用の製剤は、例えばカカオバターまたはサリチル酸塩を含む、適した基剤を含む坐剤として提示されうる。
【0077】
キャリアが固体である、鼻腔投与に適した製剤には、粒径が例えば20〜500μmの範囲内の粗い粉末(増分5μmの20〜500μmの範囲の粒径、例えば30μm、35μmなどを含む)が含まれ、これは、嗅薬を服用する様式で、すなわち鼻の近くに保持した粉末剤の容器から鼻道を通じた急速な吸引によって、投与される。キャリアが液体である、例えば鼻腔スプレーとしてまたは点鼻液としての投与に適した製剤には、有効成分の水性または油性溶液が含まれる。エアゾール投与に適した製剤は従来法に従って調製されることができ、ニューモシスチス肺炎の治療用のペンタミジンなどのその他の治療薬とともに送達されうる。
【0078】
膣投与に適した製剤は、有効成分に加えて、当技術分野で適切であることが公知のキャリアを含有するペッサリー、リング、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー製剤として提示されうる。
【0079】
非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、バッファー、制菌剤および、製剤を対象とするレシピエントの血液と等張にする溶質を含む、水性または非水性の滅菌注射液、および、沈殿防止剤および増粘剤が含まれてよい、水性および非水性の滅菌懸濁液が含まれることができる。製剤は、単位用量または多用量容器、例えば密封アンプルおよびバイアル中に提示されることができ、使用直前に滅菌液体キャリア、例えば注射水の添加だけを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されうる。即時注射溶液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒剤および既に記載される種類の錠剤から調製することができる。好ましい単位投与製剤は、本明細書に示したように、日用量または日用量の下位単位用量、またはその適切な一部分を含有するものである。
【0080】
特に上記の成分に加えて、本発明の製剤が、問題になっている製剤の種類を考慮して、当技術分野において従来のその他の薬剤を含んでよいことは当然理解される。例えば経口投与に適した成分には香味剤を含めることができる。
【0081】
本発明は、上に定義される少なくとも1つの有効成分を獣医学用キャリアと共に含む獣医学組成物をさらに提供する。獣医学用キャリアは、組成物を投与する目的において有用な材料であり、そうでなければ獣医学分野において不活性であるかまたは許容され、かつ、有効成分に適合性である、固体、液体または気体材料であることができる。これらの獣医学用組成物は、経口的に、非経口的に、または任意のその他の所望の経路により投与されうる。
【0082】
本発明の化合物を用いて、有効成分の放出を制御し、調節して、投薬頻度を低下させるか、あるいは所与の本発明の化合物の薬物動態または毒性プロフィールを改良する、1つ以上の本発明の化合物を有効成分として含有する制御放出医薬製剤(「制御放出製剤」)を提供することができる。個別の単位が1以上の本発明の化合物を含む、経口投与に適合させた制御放出製剤を従来法に従って調製することができる。制御放出製剤は、様々な細菌感染、特にヒト細菌、ヒト寄生性原虫または、マラリア原虫、ニューモシスチス、疱疹ウイルス(CMV、HSV1、HSV2、VZVなど)、レトロウイルス、アデノウイルスおよび同類のものを含む細菌種により引き起こされるヒトウイルス感染の治療または予防のために用いることができる。制御放出製剤は、HIV感染および関連する状態、例えば結核、マラリア、ニューモシスチス肺炎、CMV網膜炎、AIDS、AIDS関連症候群(ARC)および進行性全身性リンパ節腫脹(PGL)、ならびに、多発性硬化症および熱帯性痙性不全対麻痺症などのAIDSに関連する神経学的状態を治療するために使用することができる。本発明に従う制御放出製剤を用いて治療してよいその他のヒトレトロウイルス感染にはヒトTリンパ球向性ウイルスおよびHIV−2感染が含まれる。本発明は従って上記のヒトのまたは獣医学の状態および細菌感染の治療または予防で使用するための医薬製剤を提供する。
【0083】
薬物動態エンハンサー。本発明の化合物は、薬物動態エンハンサー(時には「ブースター剤(booster agent)」とも呼ばれる)と組み合わせて用いることができる。本発明の一態様は、本発明の化合物の薬物動態を促進するまたは「後押しする(boost)」ための有効量のエンハンサーの使用を提供する。エンハンサーの有効量、例えば、本発明の活性化合物またはさらなる活性化合物を促進するために必要な量は、該化合物の薬物動態プロフィールまたは活性を、単独で使用した場合のそのプロフィールと比較した場合に、改善するために必要な量である。本発明の化合物は、エンハンサーを添加しない場合よりもより効果的な薬物動態プロフィールを有する。化合物の効力を促進するために使用する薬物動態エンハンサーの量は、好ましくは、治療量以下(例えば、患者において感染を治療的に処置するために従来使用されるブースター薬の量よりも少ない投薬量)である。本発明の化合物の促進用量は、感染を治療するための治療量以下であるが、本発明の化合物の代謝の調節をもたらすのには十分高く、そのため患者における本発明の化合物の曝露は、バイオアベイラビリティの増加、血中濃度の増加、半減期の増加、ピーク血漿中濃度までの時間の増加、HIVインテグラーゼRTもしくはプロテアーゼの阻害増強/早期阻害、および/または全身クリアランスの低下により促進される。薬物動態エンハンサーの一例はリトナビル(商標)(Abbott Laboratories)である。
【0084】
併用。上記のように、本発明の組成物は、上記A項に記載される活性化合物を、当技術分野で公知の方法に類似する方法で、上記B項に記載されるものなどの1以上の(例えば、1、2、3種類の)さらなる活性薬剤と組み合わせて含むことができる。例えば、エファビレンツ(NRTI)、エムトリシタビン(NNRTI)およびテノホビルDF(NRTI)の組み合わせは、例えば、Dahl et al.、Dahl et al.に対する米国特許出願公開第2007/0099902号に記載されている。このような組み合わせの具体例としては、限定されるものではないが、CMX157または製薬上許容される塩と以下との組み合わせ、
(a)FTC/エファビレンツ、
(b)3TC/エファビレンツ、
(c)AZT/3TC、
(d)FTC、
(e)3TC、
(f)FTC/アイセントレス、
(g)3TC/アイセントレス、
(h)PPL−100、
(i)FTC/TMC278、
(k)3TC/TMC278、
(l)FTC/TMC125、または
(m)3TC/TMC125
が含まれる。
【0085】
D.特権区画感染の治療
上記のように、本発明の活性薬剤は意外にもウイルス粒子と会合または結合することが見出された。ウイルス粒子は一般に活性治療薬にとって接近しにくい細胞または組織区画の中に遊走または透過する(従って被験体がかかる薬剤を全身に投与された場合に実質的に未処置の感染の「貯蔵庫」を作り出す)ので、この知見は(a)このような特権区画における感染の治療、および(b)予防的または殺菌的処置における活性薬剤の使用(感染が起こる前の活性薬剤とウイルスの会合または結合が治療上の利益を有する場合)を可能にする。
【0086】
一般に、特権区画は、上記ウイルスがin vivoで透過し、上記活性薬剤が上記記ウイルスの不在下ではin vivoで効率的に透過しない、かつ該活性薬剤が上記ウイルスに結合する場合に上記活性薬剤がin vivoで上記ウイルスにより運ばれる、細胞または組織の区画である。例えば、特権区画が組織区画である場合、それは脳(中枢神経系)、リンパ系、または精巣であってよい。細胞の特権区画の例としては、限定されるものではないが、樹状細胞、ミクログリア、単球/マクロファージ、およびそれらの組み合わせが含まれる。特権区画感染を治療する組成物および方法は、上記のように調製され、実施することができる。予防的組成物、装置および方法は、以下にさらに詳細に考察される。
【0087】
E.局所組成物および殺菌方法
本発明は、ウイルス感染を阻害するまたはウイルス感染と戦うための、例えば予防的使用のための、本明細書に記載される活性薬剤を含有する局所組成物の形を取ることができる。このような組成物(本明細書に開示されるもの以外の活性薬剤を含む)は公知であり、例えば、米国特許第6,545,007号に記載されている。その開示は引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0088】
このような組成物はいくつかの形態をとることができる。従って、一実施形態では組成物は、患部皮膚または上皮腔に適用され、好ましくは体液と接触する危険性のある皮膚または上皮表面全体に広げられるクリーム、ローション、ゲル、またはフォームの形態である。膣または直腸投与に適したこのような製剤は、有効成分に加えて、当技術分野で適切であることが公知のキャリアを含有する、水性または油性の懸濁液、溶液または乳濁液(液体製剤)として存在することができる。「独立型の」潤滑剤(すなわちコンドームとともに事前包装されていない潤滑剤)については、当業者に公知の(科学的および経済的の両方の)様々な理由でゲルおよび同様の水性製剤が一般に好ましい。これらの製剤はHIVの性行為感染から保護するためだけでなく、産道を通過する間の新生児の感染を防ぐためにも有用である。従って、性交の前、性交の間、および出産の直前に膣投与を行うことができる。
【0089】
本明細書に開示される目的のために抗ウイルス性潤滑剤を生殖器に適用する一方法は、少量(例えば小さじ1杯、または数ミリリットル)のゲル、クリーム、軟膏、乳濁液、または同様の製剤を、プラスチックまたは金属製のチューブ、瓶、または同様の容器から、あるいは単一用量のかかる組成物を含有する密封されたプラスチック、金属またはその他のパケットから取り出し、その組成物を性交の直前に陰茎の表面全体に広げることを伴う。据え付けの代替方法には、(1)性交のすぐ前に膣または直腸内部の接近可能な表面に組成物を広げること、および(2)抗ウイルス性潤滑剤で被覆したかまたは別の方法で接触させた、コンドーム、ペッサリー、または同様の装置を、陰茎の上にまたは膣内部に据え付けることが含まれる。好ましい実施形態では、生殖器の表面全体に抗ウイルス性潤滑剤を広げるこれらの方法のいずれかによって、性交の間中、潤滑剤が生殖器および上皮表面を覆い、接触したままにさせる。
【0090】
一実施形態では、組成物は、コンドームのリスク低減効果を強化し、使用者に最大の保護をもたらすためにコンドームと併せて使用される。組成物は製造時にコンドームに被覆され、1つのパッケージあたり1つのコンドームを含む従来の防水プラスチックまたはホイル包装内に封入されてもよいし、あるいは使用者が使用直前にコンドームの内部または外部に手で適用してもよい。
【0091】
本明細書において、「コンドーム」とは、性交中の雄性と雌性の生殖器官の間に物理的防水障壁を提供するために使用され、かつ性交後に取り外される障壁装置をさす。この用語には、陰茎を覆う従来のコンドームが含まれる。また、この用語には性交の前に膣腔の中に挿入されるいわゆる「女性用コンドーム」が含まれる。用語「コンドーム」には、ペッサリー、子宮頚部キャップまたは膣腔内部の上皮膜のごく一部を覆うその他の障壁装置は含まれない。好ましくは、コンドームは、ラテックスまたはポリウレタンなどの合成プラスチック材料から作製されるべきである。これらはウイルスに対して高度の保護をもたらすためである。
【0092】
もう一つの実施形態では、本組成物は、膣内錠剤、直腸内錠剤、または坐剤の形態である。坐剤または錠剤は、坐剤または錠剤が溶解するかまたは崩れるときに膣もしくは直腸壁を抗HIV薬の予防層で被覆することを可能にする方法で、膣もしくは直腸腔に挿入されるべきである。
【0093】
さらにその他の実施形態では、組成物は、膣内装置から放出されることにより局所に適用される。膣リング、膣スポンジ、ペッサリー、子宮頚部キャップ、女性用コンドーム、および同類のものなどの装置は、挿入後に膣腔の中に組成物を放出するように容易に適合させることができる。
【0094】
本発明の方法で使用される組成物はまた、さらなる活性薬剤、例えばHIV感染を防ぐための別の薬剤(1つまたは複数)、および個体を受胎およびその他の性行為感染症染から保護する薬剤を含むことができる。従って、もう一つの実施形態では、本発明で使用される組成物は、1つ以上のさらなる抗HIV薬、HIV以外のウイルス感染に効果的な殺ウイルス薬、および/または殺精子薬をさらに含む。
【0095】
特定の一実施形態では、組成物は、広く使用されている殺精子性界面活性剤であるノノキシノールを含む。結果として得られる組成物は、相対的に不活性のキャリア液中に2つの異なる望ましい機能を提供する2つの活性薬剤を有するので、「二官能性」組成物とみなされ、ノノキシノールは殺精子性避妊薬を提供し、DABOは抗ウイルス薬特性を提供する。ノノキシノールは、少なくとも一部の使用者において、ある程度のレベルの刺激作用を引き起こす可能性が高く、これは、残念であるが、ノノキシノールおよびオクトキシノールなどの殺精子性界面活性剤の周知の副作用であり、それは精細胞およびその他の哺乳類細胞を取り囲む脂質二重膜を攻撃し、破壊する。
【0096】
本発明で使用される組成物はまた、皮膚および上皮組織の所望の部位への組成物の適用を促進し、性交中の摩擦を減らす潤滑剤を含むことができる。錠剤または坐剤の場合には、潤滑剤は、挿入を促進するために剤形の外部に適用することができる。
【0097】
さらにその他の実施形態では本発明は、(a)膣腔への挿入に対する障壁構造、および(b)本明細書に記載される活性薬剤を含む組成物を含む、HIVの性行為感染を阻害するための装置を提供する。上記のように、障壁構造の機能を果たし、かつ、抗HIV薬を適用するように適合させることのできる好ましい装置には、膣スポンジ、ペッサリー、子宮頚部キャップ、またはコンドーム(男性または女性用)が含まれる。
【0098】
本発明の方法、組成物および装置は、一般に、性行為のタイミングに最も対応する、時間に敏感な方法で活性薬剤を放出するよう適合させることができる。局所にローションまたはゲルとして適用する場合、組成物を性行為の直前に適用することが好ましい。その他の適用様式、例えば装置および坐剤は、消費者のニーズに応じて、活性薬剤を所定の速度で長い時間にわたって放出するよう設計することができる。
【0099】
本発明を、以下の実施例を参照してこれからより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は説明目的のために記載されるものであり、本発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0100】
図1は、比較目的のための、抗レトロウイルス薬を経験した患者における24週でのテノホビルに対するウイルス学的応答を実証する。データは、M.Miller et al.J Infect Dis.189:837(2004)から得た。未処置の患者における、TDFを用いる単剤療法でのウイルス量応答は、−1.5logである(Louie et al,Determining the antiviral activity of tenofovir disoproxil fumarate in treatment−naive chronically HlV−I−infected individuals,AIDS,17,1151(2003))。
【0101】
図2〜3は、PHENOSENSE(商標)HIVアッセイ(Monogram Biosciences,Inc.,345 Oyster Point Blvd.,South San Francisco,CA 94080−1913 USAより利用可能なサービス)において、HDP−TFV(CMX157)と比較したテノホビル(TFV)のin vitroでの有効性を示す。図3中、CMX157に対するIC50は、100倍に拡大されている。結果は下の表1にも示される(表中、ABCはアバカビルであり、FTCはエムトリシタビンであり、ddIはジダノシンであり、3TCはラミブジンであり、d4Tはスタブジンであり、TFVはテノホビルであり、ZDVはジドブジンである)。
【0102】
【表2A】

【表2B】

【表2C】

【表2D】

【表2E】

【0103】
下の表2および3に示されるデータは、CMX157が、0.2〜7.2ナノモルの範囲のIC50をもつすべての主なHIVサブタイプ(A〜G、OおよびHIV−2)に対して活性であることを実証する。
【0104】
【表3】

【0105】
【表4】

【0106】
さらに、これらのデータは、NRTI耐性HIVに対するCMX157のIC50が1.2〜57nMの範囲であり、中央値は359倍でテノホビル(295〜472倍の範囲)よりもより強力であることを示す。
【0107】
最後に、下の表4に示されるデータは、7日間のCMX157に対してラットにおいて有害作用を観察しなかったレベルは最大100mg/kg/日であり、試験した最大用量であることを示す。
【0108】
【表5】

(G.Painter et al.,Evaluation of Hexadecyloxypropyl−9−R−[2−(Phosphonomethoxy)Propyl]−Adenine,CMX157,as a Potential Treatment for Human Immunodeficiency Virus Type 1 and Hepatitis B Virus Infections,Antimicrobial Agents and Chemotherapy 51,3505−3509(2007)参照。)
【実施例2】
【0109】
CMX157がウイルスと直接会合する可能性を調べるため、濃縮したHIV−IIIB(約9.7×1010ウイルス粒子)を500nM CMX157またはTFVで2時間処理する。インキュベーションの後、ウイルスをペレット化して結合していない化合物を除去し、70%氷冷メタノールで溶解させ、遠心する。LC/MS/MS(液体クロマトグラフィー/質量分析)を用いて上清を三重反復で分析する。TFV、TFV一および二リン酸塩を勾配、逆相、イオン対(ion−paring)クロマトグラフィーにより分離し、陽イオンエレクトロスプレーで検出する。ウイルスペレットと会合したCMX157のレベル(約37,000分子/ビリオン)は、ウイルスペレットと会合したTFVのレベル(約100分子/ビリオン)よりもはるかに高かった。
【0110】
精製したウイルスを薬物に曝露することのTCID50への効果を評価するため、濃縮したHIV−IIIBウイルス(約9.7×1010ウイルス粒子)を、1000、500、250または125nM CMX157またはTFVで2時間処理する。表5に示されるように、CMX157は、この用量範囲全体にわたってウイルス複製を一貫して2〜4倍減少させるが、一方TFVは最大用量でさえも認められる効果はなかった。
【0111】
【表6】

【0112】
感染力喪失に関する化合物インキュベーションの時間依存性を決定するため、濃縮したHIV−IIIBを、500nM CMX157で1、15、30、60、および120分間処理する。これらのアッセイのTCID50結果を表6にまとめる。CMX157は、遠心分離前に1分のインキュベーション後に感染力を低下させる。
【0113】
【表7】

【0114】
CMX157処理HIV−IIIBの感染力への用量効果を決定する第2の実験では、濃縮したウイルスを0.039〜125nMの範囲の8つの濃度の試験物質とともに15分間インキュベートし、TCID50値をXTT、RTおよびp24により測定する。同様の構造であるがHIV活性を有さない脂質−ヌクレオチドがこのアッセイにおいて何らかの効果を有するかどうかを確認するために、HDP−ACVを同時に評価する。これらのアッセイのTCID50結果を表7にまとめる。
【0115】
より低い濃度の試験物質を用いるHIV−IIIBと会合したCMX157の評価により、3.9nM以上の濃度が感染力の低下となったことを示す用量応答を得た。TCID50を測定するためのXTTおよびp24エンドポイントは、この系でNRTIに対して予測され得るRTエンドポイントと比較してより大きな倍率の感染力の低下をもたらした。HDP−ACVは、評価される濃度のHIV−IIIBとともにインキュベートした場合に、感染性ウイルスに何ら影響を及ぼさなかった。
【0116】
【表8】

【0117】
全体に、これらの結果は、CMX157が直接HIVと会合し、この会合がウイルス複製を減少させることを示す。HIVを低ナノモル濃度のCMX157とともに短時間(1〜15分)インキュベートすることにより、インビトロでウイルス産生の低下がもたらされた。TFVまたは脂質対照のHDP−ACVにはウイルス複製への効果は見られない。CMX157は、CMX157に曝露されるいずれのHIVも、その次にHIVがその後に侵入するどの区画または細胞種にもその独自の抗ウイルス薬を運ぶ、この細胞標的化の機構によって、TFVに比べて利点を有することができる。
【0118】
ここに提示される実験により示唆されるこの機構は、感染している細胞へのウイルスによるCMX157の送達がその後に続く、CMX157脂質−TFV薬とHIVの直接的な会合を引き起こす。本明細書において提示されるデータは、精製されたHIVと直接会合したCMX157のTFVに対するレベルにおいて著しい差(約300倍)を実証する。さらに、HIVのCMX157とのプレインキュベーションにより、ウイルス自体を介するものを除いて、薬物に曝露されていない細胞においてHIVの複製が阻害され、HIVのTFVとのプレインキュベーションは、その後のHIV複製への阻害効果がなく、単離ビリオンと会合した低レベルのTFVと一致する。
【0119】
この機構は、HIVビリオン内での天然の内因性逆転写(NERT)の阻害とは異なる。NERTの阻害は、インビトロで高レベルのAZT−三リン酸塩(10μM)またはネビラピン(NVP)によって、かつin vivoでNVPによって実証されている(Zhang 1996,Zhang 2006)。細胞がCMX157で処理される時にNERT阻害の要素が存在する可能性があるが、この機構は、単離されたビリオン内では起こり得ないTFV−PPの形成を必要とすることが推測される。
【実施例3】
【0120】
CMX157の抗HIV−1活性を、24種類の異なるFDAに認可された抗HIV阻害剤を用いる2剤併用試験で評価する。実験室適合株HIV−1IIIBまたはHIV−1Ba−Lにそれぞれ急性感染させたCEM Tリンパ球細胞またはMAGI−CCR5細胞において、各々の2剤の組み合わせを3回試験する。CEM細胞におけるウイルス誘導細胞変性効果(CPE)を測定することにより、または、MAGI−CCR5細胞における実験的エンドポイントでのβ−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子誘導により、ウイルス増殖/阻害を評価する。各々の2剤の組み合わせの細胞毒性も抗ウイルス薬の評価と並行して評価する。これらの評価で使用されるCMX157の濃度は、広範囲の濃度を試験して、8つの総濃度の制限の下でできるだけ完全な用量応答曲線をもたらすために選択される。同様に、ラミブジン、アバカビル、ジドブジン、スタブジン、ザルシタビン、ジダノシン、エムトリシタビン、テノホビル、デラビルジン、エファビレンツ、エトラビリン、ネビラピン、アンプレナビル、アタザナビル、ダルナビル、インジナビル、ロピナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル、チプラナビル、マラビロク、エンフビルチド、およびラルテグラビルの濃度は、5つの総濃度の制限の下でできるだけ完全な用量応答曲線をもたらすように選択される。RBVと組み合わせたd4T(スタブジン)の「正の拮抗作用対照(positive antagonism control)」を、実施した各々のアッセイと並行して試験した。2剤の組み合わせの各々の薬物相互作用の分析は、併用アッセイの統計的評価のためのPrichardおよびShipmanのMacSynergy II三次元モデルを用いて実施する。これらの実験の結果を表8にまとめ、結果の解説を表9に記載する。
【0121】
これらの実験に関して、相乗作用は、50より大きい相乗作用量を生じる薬物の組み合わせとして定義される。わずかに相乗的な活性と高度に相乗的な活性は、操作上、それぞれ50〜100の相乗作用量および100より大きい相乗作用量を生じるとして定義されている。追加薬物相互作用の相乗作用量は、−50〜50の範囲内であるが、−50〜−100の間の相乗作用量はわずかに拮抗的であると考えられ、−100より小さい相乗作用量は高度に拮抗的である。2つの薬物について50%阻害濃度(IC50)での相互作用を評価する場合、各々の2剤の組み合わせについての3回の実験から得られる平均用量応答を決定し、2つの薬物に関するIC50範囲はIC50値を囲む2つの薬物濃度として評価される(データは示さず)。特定の薬物に対する濃度の1つが50%±5%の平均抑制率をもたらすならば、この濃度の両側に2つの薬物濃度を加えたものをIC50範囲に含めた。その後、2つの薬物の50%±5%のIC50範囲内の相互作用を操作上、1)相乗作用量が20より大きい相互作用を相乗的であるとみなし、2)相乗作用が−20〜20の範囲内の相互作用を相加的であるとみなし、3)相乗作用量が20より小さい相互作用を拮抗的であるとみなす、と定義した。
【0122】
全体に、CMX−157は、FDAに認可された抗レトロウイルス薬を用いて実施されたすべての2剤の組み合わせについて、相加的または相乗的相互作用を有すると決定される。これらの相互作用はいずれも拮抗的でないことが分かった。すべての組み合わせについて相加的から相乗的な相互作用であるというこの結論も、各々の組み合わせから2剤のIC50範囲での相互作用を評価するときに達する。一方、リバビリンと組み合わせたスタブジンの正の拮抗作用対照は、予測どおり拮抗的相互作用をもたらした。
【0123】
【表9】

【0124】
【表10】

【0125】
CMX157と24種類のFDAに認可された抗レトロウイルス薬との間の抗ウイルス有効性について調査した濃度範囲内では拮抗的相互作用は観察されなかった。高度に相乗的な相互作用はCMX157とザルシタビンとの間に観察され、わずかに相乗的な相互作用はラミブジン、エムトリシタビン、デラビルジン、エファビレンツ、エトラビリン、アンプレナビル、アタザナビル、インジナビル、ロピナビル、ネルフィナビル、リトナビル、チプラナビル、およびマラビロクで観察され、これらの薬物を用いて見込まれる有益な相互作用が示唆される。残った薬物とのCMX157の相互作用は、完全相加的な結果をもたらした。一方、リバビリンと組み合わせたスタブジンの正の拮抗作用対照は、すべての実験で高度に拮抗的な相互作用を示した(平均拮抗作用量=CEM細胞において−330μM%、およびMAGI−R5細胞において−111μM%)。従って、これらのデータを総合的に解釈すると、この実験で評価した24種類のFDAに認可された抗レトロウイルス薬の抗ウイルス効果の拮抗作用が、臨床状況でCMX157の使用に関連する、解決の難しい問題ではないということが示唆される。
【0126】
CMX157について調査した薬物濃度の範囲内では相乗的な細胞毒性の痕跡はなかったことに注意することが重要である(10μM=最大試験濃度)。評価した濃度範囲内で薬物はどれも細胞傷害性でなかったため、この点は予想外であった。すべての薬物のはるかに高い濃度(約TC50濃度)は、可能性のある相乗的細胞毒性相互作用を正確に調査されることが必要とされる。しかし、FDAに認可された薬物が強力な抗ウイルス性を示す濃度で観察される、注目すべき相乗的細胞毒性が無いことを記録することが重要である。
【実施例4】
【0127】
テノホビル(TFV)のシグネチャー変異(signature mutation)はK65Rであり、これは一般にテノホビルのIC50の2〜4倍の増加およびビリアードに対する臨床応答の欠如に関連する。CMX157耐性変異株を選択するために設計されるin vitro研究は、野生型HIV−1を一次接種菌として、TFVを陽性対照として使用する。これらの研究は、漸増濃度のTFVまたはCMX157を用いるCEM−SS細胞でのHIV−IIIBおよびHIV−1RFの連続継代により行われる。薬物レベルは、当業者に公知の手順を用いて継代ごとにウイルス増殖を検知した後に増加する。各継代が完了すると、ウイルスゲノムの逆転写酵素コード領域を配列決定して、ウイルスプールの中に出現することができた、あらゆる可能性のある耐性関連変異を同定する。
【0128】
表10および11に示されるように、9回の継代を通じてCMX157に対する耐性はない。一方、8回目の継代でK65RがTFVにより選択された。これらのデータは、HIVがCMX157に対して耐性を生じるのはTFVに対するよりも困難である可能性があることを示す。
【0129】
【表11】

【0130】
【表12】

【0131】
前述の内容は本発明を例証するものであり、本発明の制限と解釈されるものでない。本発明の少数の実施形態が記載されたが、当業者であれば本発明の新規な教示および利点から実質的に逸脱することなく例となる実施形態において多くの変更形態が可能であることが容易に理解される。従って、すべてのそのような変更形態は、特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内に含められるものとする。従って、前述の内容は本発明を例証するものであり、開示される具体的な実施形態に限定されると解釈されるものでないこと、および、開示される実施形態、ならびにその他の実施形態に対する改変は、添付される特許請求の範囲内に含められるもとのすることが理解される。本発明は以下の特許請求の範囲により定義され、その特許請求の範囲の同等物はその中に含められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)および/またはB型肝炎ウイルス(HBV)感染について、前記HIVまたはHBV感染に対する抗ウイルス活性薬をこれまで投与されていない被験体を治療する方法であって、前記方法が、
前記被験体に式Iの抗ウイルス化合物、あるいはその製薬上許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物
【化1】

(式中、
Bは、プリンまたはピリミジン塩基であり、
は、H、メチル、エチル、−CHOH、−CH−CHOH、−CH(OH)−CH、またはC1−6ハロアルキルであり、
は、フルオロ、ヒドロキシ、−OR2a、−BH、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニルまたは−NR’Hであり、
2aは、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニル、−P(=O)(OH)、または−P(=O)(OH)OP(=O)(OH)であり、
R’は、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニル、またはC6−10アリールであり、
は、mが2〜5であり、かつnが11〜21である、−O(CHO(CHCHであり、
Xは、セレン、硫黄、または酸素である)を、HIVおよび/またはHBV感染を治療し、前記被験体において前記抗ウイルス化合物に対する耐性の発生を少なくとも実質的に阻害するために十分な量で投与するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記被験体に1種類以上のさらなる抗ウイルス活性薬と前記式Iの抗ウイルス化合物とを同時に投与するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウイルスがHIVであり、前記1種類以上のさらなる抗ウイルス活性薬が、HIV−プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、エントリー阻害剤、融合阻害剤、成熟阻害剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
式Iの前記抗ウイルス化合物のXが酸素である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗ウイルス化合物が、式IIの化合物
【化2】

(式中、
mは、2〜5であり、
nは、11〜21である)、あるいはその製薬上許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記式Iの第1の抗ウイルス化合物のmが2または3である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記式Iの第1の抗ウイルス化合物のnが15または17である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の抗ウイルス化合物が、式IIIの化合物
【化3】

またはその製薬上許容される塩である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記耐性が、多ヌクレオシド耐性である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記被験体が免疫不全症である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ウイルスがHBVである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記被験体がHBVとHIVとの両方に感染し、前記第1の抗ウイルス化合物が、前記HBVとHIVの両方を治療するために有効な量で投与される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記被験体が子宮内にあり、前記第1の抗ウイルス化合物が、前記被験体を子宮内に保有する母親に投与される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記1種類以上のさらなる抗ウイルス活性薬が、ラミブジン、アバカビル、ジドブジン、スタブジン、ザルシタビン、ジダノシン、エムトリシタビン、テノホビル、デラビルジン、エファビレンツ、エトラビリン、ネビラピン、アンプレナビル、アタザナビル、ダルナビル、インジナビル、ロピナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル、チプラナビル、マラビロク、エンフビルチド、およびラルテグラビルからなる群から選択される、請求項2〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法を実行するための式Iの化合物の使用。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法を実行するための薬物の調製のための式Iの化合物の使用。
【請求項17】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)および/またはB型肝炎ウイルス(HBV)感染について、HIVまたはHBV感染のための少なくとも1種類のその他の抗ウイルス化合物の前記被験体への事前投与に応答して、前記少なくとも1種類のその他の抗ウイルス化合物に対する耐性または毒性応答を生じた被験体を治療する方法であって、前記被験体に式Iの抗ウイルス化合物、またはその製薬上許容される塩
【化4】

(式中、
Bは、プリンまたはピリミジン塩基であり、
は、H、メチル、エチル、−CHOH、−CH−CHOH、−CH(OH)−CH、またはC1−6ハロアルキルであり、
は、フルオロ、ヒドロキシ、−OR2a、−BH、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニルまたは−NR’Hであり、
2aは、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニル、−P(=O)(OH)、または−P(=O)(OH)OP(=O)(OH)であり、
R’は、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニル、またはC6−10アリールであり、
は、mが2〜5であり、nが11〜21である、−O(CHO(CHCHであり、
Xは、セレン、硫黄、または酸素である)を、HIVおよび/またはHBV感染を治療し、前記被験体において前記抗ウイルス化合物に対する耐性のさらなる発生を少なくとも実質的に阻害するために十分な量で投与するステップを含む、方法。
【請求項18】
前記被験体に1種類以上のさらなる抗ウイルス活性薬を式Iの前記化合物と同時に投与するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ウイルスがHIVであり、前記1種類以上のさらなる抗ウイルス活性薬が、HIV−プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、エントリー阻害剤、融合阻害剤、成熟阻害剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
式Iの前記抗ウイルス化合物のXが酸素である、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
式Iの前記抗ウイルス化合物が、式IIの化合物
【化5】

(式中、
mは、2〜5であり、
nは、11〜21である)、あるいはその製薬上許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物である、請求項17〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
式Iの前記抗ウイルス化合物のmが2または3である、請求項17〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
式Iの前記抗ウイルス化合物のnが15または17である、請求項17〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の抗ウイルス化合物が式IIIの化合物
【化6】

またはその製薬上許容される塩である、請求項17〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記耐性が多ヌクレオシド耐性である、請求項17〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ウイルスがHBVである、請求項17〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記被験体がHBVとHIVとの両方に感染し、前記第1の抗ウイルス化合物が、前記HBVとHIVとの両方を治療するために有効な量で投与される、請求項17〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記被験体が子宮内にあり、前記第1の抗ウイルス化合物が、前記被験体を子宮内に保有する母親に投与される、請求項17〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記1種類以上のさらなる抗ウイルス活性薬が、ラミブジン、アバカビル、ジドブジン、スタブジン、ザルシタビン、ジダノシン、エムトリシタビン、テノホビル、デラビルジン、エファビレンツ、エトラビリン、ネビラピン、アンプレナビル、アタザナビル、ダルナビル、インジナビル、ロピナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル、チプラナビル、マラビロク、エンフビルチド、およびラルテグラビルからなる群から選択される、請求項17〜29に記載の方法。
【請求項30】
請求項17〜29のいずれか一項に記載の方法を実行するための式Iの抗ウイルス化合物の使用。
【請求項31】
請求項17〜30のいずれか一項に記載の方法を実行するための薬物の調製のための式Iの前記抗ウイルス化合物の使用。
【請求項32】
(a)式Iの第1の抗ウイルス化合物
【化7】

(式中、
Bは、プリンまたはピリミジン塩基であり、
は、H、メチル、エチル、−CHOH、−CH−CHOH、−CH(OH)−CH、またはC1−6ハロアルキルであり、
は、フルオロ、ヒドロキシ、−OR2a、−BH、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニルまたは−NR’Hであり、
2aは、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニル、−P(=O)(OH)、または−P(=O)(OH)OP(=O)(OH)であり、
R’は、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニル、またはC6−10アリールであり、
は、mが2〜5であり、かつnが11〜21である、−O(CHO(CHCHであり、
Xは、セレン、硫黄、または酸素である)、もしくはその製薬上許容される塩、または立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体もしくはラセミ化合物と、
(b)少なくとも1種類のさらなる抗ウイルス活性薬と、
(c)製薬上許容されるキャリアと
を含む医薬組成物。
【請求項33】
前記1種類以上のさらなる抗ウイルス活性薬が、HIV−プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、エントリー阻害剤、融合阻害剤、成熟阻害剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記式Iの抗ウイルス化合物のXが酸素である、請求項32または請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記第1の抗ウイルス化合物が、式IIの化合物
【化8】

(式中、
mは、2〜5であり、かつ
nは、11〜21である)、もしくはその製薬上許容される塩、または立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体もしくはラセミ化合物である、請求項32〜34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
式Iの前記第1の抗ウイルス化合物のmが2または3である、請求項32〜35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
式Iの前記第1の抗ウイルス化合物のnが15または17である、請求項32〜36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記第1の抗ウイルス化合物が、式IIIの化合物、
【化9】

またはその製薬上許容される塩である、請求項32〜37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
単位用量形態の、請求項32〜38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
経口投与形態の、請求項32〜39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
前記1種類以上のさらなる抗ウイルス活性薬が、ラミブジン、アバカビル、ジドブジン、スタブジン、ザルシタビン、ジダノシン、エムトリシタビン、テノホビル、デラビルジン、エファビレンツ、エトラビリン、ネビラピン、アンプレナビル、アタザナビル、ダルナビル、インジナビル、ロピナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル、チプラナビル、マラビロク、エンフビルチド、およびラルテグラビルからなる群から選択される、請求項32〜40に記載の組成物。
【請求項42】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)および/またはB型肝炎ウイルス(HBV)感染について被験体を治療する方法であって、前記感染が、前記被験体の特権細胞区画もしくは特権組織区画にあり、前記方法が、
前記被験体に、式Iの抗ウイルス化合物
【化10】

(式中、
Bは、プリンまたはピリミジン塩基であり、
は、H、メチル、エチル、−CHOH、−CH−CHOH、−CH(OH)−CH、またはC1−6ハロアルキルであり、
は、フルオロ、ヒドロキシ、−OR2a、−BH、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニルまたは−NR’Hであり、
2aは、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニル、−P(=O)(OH)、または−P(=O)(OH)OP(=O)(OH)であり、
R’は、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニル、またはC6−10アリールであり、
は、mが2〜5であり、かつnが11〜21である、−O(CHO(CHCHであり、
Xは、セレン、硫黄、または酸素である)、もしくはその製薬上許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物を、
前記HIVおよび/またはHBV感染を治療し、かつ、前記被験体において抗ウイルス化合物に対する耐性の発生を少なくとも実質的に阻害するために十分な量で投与するステップを含む、方法。
【請求項43】
前記被験体に式Iの前記化合物を含む1種類以上のさらなる抗ウイルス活性薬を同時に投与するステップをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ウイルスがHIVであり、前記1種類以上のさらなる抗ウイルス活性薬が、HIV−プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、エントリー阻害剤、融合阻害剤、成熟阻害剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項42または請求項43に記載の方法。
【請求項45】
式Iの前記抗ウイルス化合物のXが酸素である、請求項42〜44に記載の方法。
【請求項46】
前記第1の抗ウイルス化合物が、式IIの化合物
【化11】

(式中、
mは、2〜5であり、かつ
nは、11〜21である)、もしくはその製薬上許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物である、請求項42〜45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
式Iの前記抗ウイルス化合物のmが2または3である、請求項42〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
式Iの前記抗ウイルス化合物のnが15または17である、請求項42〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記第1の抗ウイルス化合物が、式IIIの化合物
【化12】

またはその製薬上許容される塩である、請求項42〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記被験体が免疫不全症である、請求項42〜49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記ウイルスがHBVである、請求項42〜50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記被験体がHBVとHIVとの両方に感染し、前記第1の抗ウイルス化合物が前記HBVとHIVとの両方を治療するために有効な量で投与される、請求項42〜51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記被験体が子宮内にあり、前記第1の抗ウイルス化合物が前記被験体を子宮内に保有する母親に投与される、請求項42〜52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記特権区画が、前記ウイルスがin vivoで透過し、前記抗ウイルス薬が前記ウイルスの不在下ではin vivoで効率的に透過せず、かつ前記抗ウイルス薬が前記ウイルスに結合する場合に前記抗ウイルス薬がin vivoで前記ウイルスにより運ばれる細胞または組織の区画である、請求項42〜53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記特権区画が、脳、リンパ組織、および精巣からなる群から選択される組織区画である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記特権区画が、樹状細胞、ミクログリア、単球/マクロファージ、それらの組み合わせ、および脂質にコンジュゲートされていない抗ウイルス薬で効果なく治療されたその他の細胞種からなる群から選択される細胞区画である、請求項42〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記1種類以上のさらなる抗ウイルス活性薬が、ラミブジン、アバカビル、ジドブジン、スタブジン、ザルシタビン、ジダノシン、エムトリシタビン、テノホビル、デラビルジン、エファビレンツ、エトラビリン、ネビラピン、アンプレナビル、アタザナビル、ダルナビル、インジナビル、ロピナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル、チプラナビル、マラビロク、エンフビルチド、およびラルテグラビルからなる群から選択される、請求項42〜56に記載の方法。
【請求項58】
請求項42〜57のいずれか一項に記載の方法による、治療を必要とする被験体の特権細胞区画もしくは特権組織区画においてHIVおよび/またはHBV感染を治療するための、式Iの化合物あるいはその製薬上許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物。
【請求項59】
ヒトの皮膚または上皮組織に、式Iの第1の抗ウイルス化合物
【化13】

(式中、
Bは、プリンまたはピリミジン塩基であり、
は、H、メチル、エチル、−CHOH、−CH−CHOH、−CH(OH)−CH、またはC1−6ハロアルキルであり、
は、フルオロ、ヒドロキシ、−OR2a、−BH、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニルまたは−NR’Hであり、
2aは、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニル、−P(=O)(OH)、または−P(=O)(OH)OP(=O)(OH)であり、
R’は、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニル、またはC6−10アリールであり、
は、mが2〜5であり、nが11〜21である、−O(CHO(CHCHであり、かつ
Xは、セレン、硫黄、または酸素である)、もしくはその製薬上許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物を含む組成物の治療上有効な量を局所適用するステップを含む、HIVの性行為感染を阻害するための方法。
【請求項60】
前記式Iの抗ウイルス化合物のXが酸素である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記第1の抗ウイルス化合物が、式IIの化合物
【化14】

(式中、
mは、2〜5であり、
nは、11〜21である)、あるいはその製薬上許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物である、請求項59または請求項60に記載の方法。
【請求項62】
式Iの前記第1の抗ウイルス化合物のmが2または3である、請求項59〜61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
式Iの前記第1の抗ウイルス化合物のnが15または17である、請求項59〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記第1の抗ウイルス化合物が、式IIIの化合物,
【化15】

(III)またはその製薬上許容される塩である、請求項59〜63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記組成物が、膣内、直腸内または外部男性生殖器に適用される、請求項59〜64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記組成物が、クリーム、ローション、ゲル、またはフォームの形態である、請求項59〜65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記組成物が、膣内錠剤、直腸内錠剤、または坐剤の形態である、請求項59〜66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
膣リング、膣スポンジ、ペッサリー、または子宮頚部キャップから選択される膣内装置からの放出により組成物を局所に適用することができる、請求項59〜67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記組成物がコンドームの外部表面または膣アプリケーターから局所に適用される、請求項59〜68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記組成物が、1種類以上のさらなる抗HIV薬、HIV以外のウイルス感染に対して効果的な殺ウイルス剤、殺精子薬、および/またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項59〜69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記組成物が潤滑剤をさらに含む、請求項59〜70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記1種類以上のさらなる抗ウイルス活性薬が、ラミブジン、アバカビル、ジドブジン、スタブジン、ザルシタビン、ジダノシン、エムトリシタビン、テノホビル、デラビルジン、エファビレンツ、エトラビリン、ネビラピン、アンプレナビル、アタザナビル、ダルナビル、インジナビル、ロピナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル、チプラナビル、マラビロク、エンフビルチド、およびラルテグラビルからなる群から選択される、請求項70または請求項71に記載の方法。
【請求項73】
式Iの第1の抗ウイルス化合物
【化16】

(式中、
Bは、プリンまたはピリミジン塩基であり、
は、H、メチル、エチル、−CHOH、−CH−CHOH、−CH(OH)−CH、またはC1−6ハロアルキルであり、
は、フルオロ、ヒドロキシ、−OR2a、−BH、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニルまたは−NR’Hであり、
2aは、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニル、−P(=O)(OH)、または−P(=O)(OH)OP(=O)(OH)であり、
R’は、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニル、またはC6−10アリールであり、
は、mが2〜5であり、nが11〜21である、−O(CHO(CHCHであり、
Xは、セレン、硫黄、または酸素である)、あるいはその製薬上許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物を含む、クリーム、ローション、ゲル、またはフォームの形態の局所組成物。
【請求項74】
式Iの前記第1の抗ウイルス化合物のXが酸素である、請求項73に記載の組成物。
【請求項75】
前記第1の抗ウイルス化合物が、式IIの化合物
【化17】

(式中、
mは、2〜5であり、
nは、11〜21である)、あるいはその製薬上許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物である、請求項73または請求項74に記載の組成物。
【請求項76】
式Iの前記第1の抗ウイルス化合物のmが2または3である、請求項73〜75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項77】
式Iの前記第1の抗ウイルス化合物のnが15または17である、請求項73〜76のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項78】
前記第1の抗ウイルス化合物が、式IIIの化合物、
【化18】

またはその製薬上許容される塩である、請求項73〜77のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項79】
1種類以上のさらなる抗HIV薬をさらに含む、請求項73〜78のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項80】
HIV以外のウイルス感染に対して効果的な殺ウイルス剤をさらに含む、請求項73〜79のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項81】
殺精子薬をさらに含む、請求項73〜80のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項82】
潤滑剤をさらに含む、請求項73〜81のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項83】
前記1種類以上のさらなる抗ウイルス活性薬が、ラミブジン、アバカビル、ジドブジン、スタブジン、ザルシタビン、ジダノシン、エムトリシタビン、テノホビル、デラビルジン、エファビレンツ、エトラビリン、ネビラピン、アンプレナビル、アタザナビル、ダルナビル、インジナビル、ロピナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル、チプラナビル、マラビロク、エンフビルチド、およびラルテグラビルからなる群から選択される、請求項79〜82に記載の組成物。
【請求項84】
a)膣腔への挿入に対する障壁構造と、b)式Iの第1の抗ウイルス化合物
【化19】

(式中、
Bは、プリンまたはピリミジン塩基であり、
は、H、メチル、エチル、−CHOH、−CH−CHOH、−CH(OH)−CH、またはC1−6ハロアルキルであり、
は、フルオロ、ヒドロキシ、−OR2a、−BH、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニルまたは−NR’Hであり、
2aは、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニル、−P(=O)(OH)、または−P(=O)(OH)OP(=O)(OH)であり、
R’は、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C1−8ヘテロアルキル、C2−8ヘテロアルケニル、C2−8ヘテロアルキニル、またはC6−10アリールであり、
は、mが2〜5であり、かつnが11〜21である、−O(CHO(CHCHであり、
Xは、セレン、硫黄、または酸素である)、あるいはその製薬上許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物を含む組成物を含む、HIVの性行為感染を阻害するための装置。
【請求項85】
式Iの前記抗ウイルス化合物のXが酸素である、請求項84に記載の装置。
【請求項86】
前記第1の抗ウイルス化合物が、式IIの化合物
【化20】

(式中、
mは、2〜5であり、
nは、11〜21である)、あるいはその製薬上許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物である、請求項84または請求項85に記載の装置。
【請求項87】
式Iの前記第1の抗ウイルス化合物のmが2または3である、請求項84〜86のいずれか一項に記載の装置。
【請求項88】
式Iの前記第1の抗ウイルス化合物のnが15または17である、請求項84〜87のいずれか一項に記載の装置。
【請求項89】
前記第1の抗ウイルス化合物が、式IIIの化合物
【化21】

またはその製薬上許容される塩である、請求項84〜88のいずれか一項に記載の装置。
【請求項90】
前記障壁構造が、膣スポンジ、ペッサリー、子宮頚部キャップ、またはコンドームである、請求項84〜89のいずれか一項に記載の装置。
【請求項91】
前記装置が、さらなる抗HIV薬、HIV以外のウイルス感染に対して効果的な殺ウイルス剤、および/または殺精子薬をさらに含む、請求項84〜90のいずれか一項に記載の装置。
【請求項92】
請求項42〜57および59〜72のいずれか一項に記載の方法を実行するための薬物の調製のための、式Iの抗ウイルス化合物あるいはその製薬上許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物の使用。
【請求項93】
請求項42〜57および59〜72のいずれか一項に記載の方法を実行するための、式Iの化合物あるいはその製薬上許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物の使用。
【請求項94】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法による、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)および/またはB型肝炎ウイルス(HBV)感染について、前記HIVまたはHBV感染に対する抗ウイルス活性薬をこれまで投与されていない被験体を治療するための、式(I)の化合物あるいはその製薬上許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物。
【請求項95】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)および/またはB型肝炎ウイルス(HBV)感染について、請求項17〜29のいずれか一項に記載の方法による前記HIVまたはHBV感染のための少なくとも1種類のその他の抗ウイルス化合物の被験体への事前投与に応答して、少なくとも1種類のその他の抗ウイルス化合物に対して耐性または毒性応答を生じた被験体を治療するための、式(I)の化合物あるいはその製薬上許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物。
【請求項96】
請求項59〜72のいずれか一項に記載の方法による、HIVの性行為感染を阻害するための、式(I)の化合物あるいはその製薬上許容される塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体またはラセミ化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−510077(P2011−510077A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544347(P2010−544347)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/000447
【国際公開番号】WO2009/094190
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(509295343)キメリクス,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】