説明

ウェハ研磨支援装置、制御方法、及びプログラム

【課題】ウェハの研磨を支援すること。
【解決手段】ウェハを研磨する研磨機構の特性を表す複数の物理量を式の要素とする統計モデルに基づいて研磨レートを推定し、その推定結果を用いてウェハの研磨処理を行うウェハ研磨装置200における研磨部材の劣化の推定を行う研磨部材劣化推定部160と、研磨部材劣化推定部160が推定した研磨レートと、研磨部材の劣化の推定結果とに基づいて、研磨部材の交換を判定する研磨部材交換判定部170とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハ研磨支援装置、制御方法、及びプログラムに関する。特に、本発明は、ウェハの研磨を支援するウェハ研磨支援装置、当該ウェハ研磨支援装置を制御する制御方法、並びに当該ウェハ研磨支援装置用のプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハの研磨工程における研磨レートは、通常、ウェハの研磨前後の膜厚を膜厚測定器により測定して、その膜厚差から得られる研磨量を単位時間で除算して算出される。しかしながら、このような方法は、ウェハの研磨量を毎回測定して研磨レートを算出しなければならず、製造工程数が増大し生産性が悪化してしまう。
【0003】
そのため、現在は、ウェハの研磨前後の膜厚を随時計測せずに、ウェハの研磨装置の各種物理現象を示すセンサデータに基づいて研磨レートを推定している。特許文献1に記載の技術は、ウェハの研磨装置の各種センサから得られる物理量を説明変数とし、テストウェハの研磨量を目的変数として、回帰分析によって研磨レートを推定する技術である。この文献記載の方法では、説明変数として、研磨装置内のウェハを研磨する研磨テーブルを回転させるモータのトルク値や、ウェハを研磨する研磨テーブル上の表面温度、さらに研磨時に研磨テーブルにウェハを押し当てる圧力値等の物理現象の平均値を求めて、回帰分析の統計モデルを作成して、その後の研磨レートを推定する。なお、ウェハ研磨装置に関わる文献として特許文献2、3も知られている。
【0004】
図8は、研磨パッドの使用時間とウェハ研磨レート値の変化の一例を示す。ところが、図8に示すとおりウェハ研磨に用いる研磨テーブル上の研磨パッドの使用時間に対する推定研磨レート値は研磨パッド使用開始直後と研磨パッド劣化時とのどちらの場合であるか区別ができない。これは、研磨パッド使用開始直後は研磨パッドの溝間に入る研磨液の浸透度合いが低く研磨レート値が低くなるためである。そのため、例えば推定した研磨レートにより研磨パッドの寿命管理を行うような場合では、推定した研磨レート値だけでは研磨パッドが使用開始直後であるのか劣化しているのか判断できず管理ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−342841号公報
【特許文献2】特開2004−047747号公報
【特許文献3】特開2004−220842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、研磨レート値は、研磨パッドの使用開始直後と劣化時とで同じ値となる(図8参照)。そのため、研磨パッドの劣化状況や交換時期は、研磨レートの推定値のみからでは判断することができない。
【0007】
より具体的に説明すると、ウェハは、研磨パッドに含ませた研磨液によって半導体膜の表面が科学的に変化させられながら研磨される。研磨パッド使用開始直後はこの研磨液の浸透度合いが低いため研磨レート値も低くなる。使用時間がある程度経過すると、研磨液が研磨パッドへ十分に浸透し研磨レート値も高くなる。さらに使用時間が経過すると、今度は研磨パッドの劣化のために研磨レート値が低下する。
【0008】
図9は、研磨パット正常時と異常時の研磨レート値の変化の違いを示す。例えば推定した研磨レートにより研磨パッドの寿命管理を行うような場合では、図9に示すように劣化が異常に早い研磨パッドを用いて研磨レート推定を行った場合、低研磨レート値に対して研磨液浸透度による影響か研磨パッドの異常劣化による影響か判別することができず、適切な研磨パッド交換を行うことができない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態によると、ウェハの研磨を支援するウェハ研磨支援装置であって、ウェハを研磨する研磨機構の特性を表す複数の物理量を式の要素とする統計モデルに基づいて研磨レートを推定し、その推定結果を用いてウェハの研磨処理を行うウェハ研磨装置における研磨部材の劣化の推定を行う研磨部材劣化推定部と、研磨部材劣化推定部が推定した研磨レートと、研磨部材の劣化の推定結果とに基づいて、研磨部材の交換を判定する研磨部材交換判定部とを備える。
【0010】
本発明の第2の形態によると、ウェハの研磨を支援するウェハ研磨支援装置を制御する制御方法であって、ウェハを研磨する研磨機構の特性を表す複数の物理量を式の要素とする統計モデルに基づいて研磨レートを推定し、その推定結果を用いてウェハの研磨処理を行うウェハ研磨装置における研磨部材の劣化の推定を行う研磨部材劣化推定段階と、研磨部材劣化推定段階において推定された研磨レートと、研磨部材の劣化の推定結果とに基づいて、研磨部材の交換を判定する研磨部材交換判定段階とを備える。
【0011】
本発明の第3の形態によると、ウェハの研磨を支援するウェハ研磨支援装置用のプログラムであって、ウェハ研磨支援装置を、ウェハを研磨する研磨機構の特性を表す複数の物理量を式の要素とする統計モデルに基づいて研磨レートを推定し、その推定結果を用いてウェハの研磨処理を行うウェハ研磨装置における研磨部材の劣化の推定を行う研磨部材劣化推定部、研磨部材劣化推定部が推定した研磨レートと、研磨部材の劣化の推定結果とに基づいて、研磨部材の交換を判定する研磨部材交換判定部として機能させる。
【0012】
なおまた、上記のように発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、この発明は、既知の技術と比較して、コストや生産性を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】2変数のデータから成る集合と点の距離の一例を示す図である。
【図2】研磨パッドの劣化と研磨レート値の関係の一例を示す図である。
【図3】一実施形態に係るウェハ研磨支援装置100の利用環境の一例を示す図である。
【図4】ウェハ研磨支援装置100のブロック構成の一例を示す図である。
【図5】温度計280の検出温度の変化の一例を示す図である。
【図6】正常時の研磨パッドの判別方法の一例を示す図である。
【図7】異常時の研磨パッドの判別方法の一例を示す図である。
【図8】研磨パッドの使用時間とウェハ研磨レート値の変化の一例を示す図である。
【図9】研磨パット正常時と異常時の研磨レート値の変化の違いを示す図である。
【図10】ウェハ研磨支援装置100をコンピュータ等の電子情報処理装置で構成した場合のハードウェア構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は、特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
マハラノビス距離は、統計学で用いられる一種の距離である。より具体的に説明すると、マハラノビス距離は、既知の標本データと新規の標本データとの類似度を、多変数の相関に基づいて距離として示す。
【0017】
図1は、2変数のデータから成る集合と点の距離の一例を示す。本例の集合Uは、ある事象における正常時のデータA及びデータBの集合である。また、本例のu(a0、b0)は、集合Uの平均値である。また、本例のσは、データAが分散している範囲である。また、本例のσ、データBが分散している範囲である。このような場合、一般的に、集合Uの平均値uから点X1(a1、b1)までの距離は、式(1)によりユークリッド距離Dとして求めることができる。
【0018】
【数1】

【0019】
しかしながら、ユークリッド距離Dでは集合Uの外側にあるX1も集合Uに含まれるX2も同じ距離となってしまい二つの点の違いを見ることができない。一方、マハラノビス距離DはデータA、Bのばらつきを考慮し、データの要素をそのデータの標準偏差で割ることで、データの正規化を行ってから距離の算出を行う。そのため、平均値uから集合Uの外延までのマハラノビス距離Dは常に1となる。平均値uからX1までのマハラノビス距離Dを求める式を式(2)に記す。
【0020】
【数2】

【0021】
以上により、平均値uからX1のマハラノビス距離D1と平均uからX2のマハラノビス距離D2は、D2<1<D1となり距離によるデータの分類を行うことが可能となる。図1では2変数の場合の集合と点のマハラノビス距離Dについて述べたが、2個以上変数の場合のマハラノビス距離D(x)を求める式は式3のようになる。
【0022】
【数3】

【0023】
本発明では、研磨パッドの使用開始直後を研磨パッドが劣化していない正常状態と定義する。研磨パッドの劣化状態を表す複数の物理量から、正常状態の集合を作成する。そして、正常状態時の集合の平均とウェハ研磨時の複数の物理量ベクトルとのマハラノビス距離を求め、研磨パッドの正常・異常つまり研磨パッドの劣化有無の判別を行う。
【0024】
マハラノビス距離を用いて判別処理を行う際に重要となるのが、基準となる集合の作成である。ばらつきの大きな変数を用いて基準となる集合を作成した場合、集合は大きくなり異常なデータを正常なデータであると判別する可能性が高くなる。また、基準となる集合を作成するための標本数が少ない場合、集合が基準となる状態を全て表すことができず、正常なデータを異常と判別する可能性が高くなる。そのため、マハラノビス距離は基準となる集合のとり方によって誤差を含む。
【0025】
ウェハ研磨装置で用いる研磨パッドには個体差が存在し、研磨パッド毎にウェハ研磨時の物理量のばらつきは異なる。そのため、全ての研磨パッドの正常時の集合を生成した場合、研磨パッド間でのばらつきが原因で集合が大きくなってしまう。
【0026】
また、研磨パッドを交換する毎に交換した直後の物理量から正常時の集合を作成した場合、全ての正常時を表す集合を作成することはできない。
【0027】
図2は、研磨パッドの劣化と研磨レート値の関係の一例を示す。マハラノビス距離に含まれる誤差のため、マハラノビス距離の数値のみでは、集合を作成した時点からの状態の変化を見ることはできても、適切な研磨パッド交換判定を行うことができない。
【0028】
そこで、本発明では研磨パッドの劣化判別の推定結果と、推定研磨レート値を組み合わせることにより、上記のような場合でも精度の高い研磨パッドの交換判定を行う。
【0029】
図3は、一実施形態に係るウェハ研磨支援装置100の利用環境の一例を示す。ウェハ研磨支援装置100は、研磨パッドの交換判定を行うときに、研磨レート推定値と研磨パッドの劣化推定により、研磨パッドの使用時間に依存しない研磨パッド交換判定を行い、研磨パッドの有効な使用を可能にしたものである。
【0030】
ウェハ研磨装置200は、ウェハを研磨する研磨パッドを上面に搭載した研磨テーブル210と、研磨テーブル210を回転させるテーブルモータ220と、ウェハの研磨面を研磨テーブル210側に向けてウェハを保持し搬送する機能と、研磨テーブル210にウェハを加圧しながら押し当て研磨を行う機能を有する研磨ヘッド230と、研磨ヘッド230を回転させるヘッドモータ240と、研磨後の研磨テーブル210上の研磨パッドのドレッシングを行うドレッサーヘッド250と、ドレッサーヘッド250を回転させるドレッサーモータ260と、研磨テーブル210上へ研磨液であるスラリーを供給するスラリー供給器270と、ウェハの研磨により化学的に発熱する熱とウェハと研磨テーブル210との摩擦による機械的に発生する熱とによる研磨テーブル210上の温度変化を測定する温度計280とから構成される。
【0031】
図4は、ウェハ研磨支援装置100のブロック構成の一例を示す。ウェハ研磨支援装置100は、テーブルモータ220とヘッドモータ240とドレッサーモータ260の各モータトルクデータと温度計280の温度データを収集し、データ格納部120へデータを送信するデータ収集部110と、データ収集部110で収集したデータを蓄積するデータ格納部120と、研磨中の一定時間周期で各種センサデータを取得する研磨データ取得部130と、研磨データ取得部130で取得したセンサデータを代表値処理する変換部140と、変換部140で算出した代表値と事前に重回帰分析により求めた統計モデルから研磨レートの予測値を算出する予測部150と、ウェハを研磨する研磨機構の特性を表す複数の物理量を式の要素とする統計モデルに基づいて研磨レートを推定し、その推定結果を用いてウェハの研磨処理を行うウェハ研磨装置200における研磨部材の劣化の推定を行う研磨部材劣化推定部160と、予測研磨レート値とマハラノビス距離から研磨パッド交換判定を行う研磨部材交換判定部26とから構成される。
【0032】
研磨部材劣化推定部160は、代表値から研磨パッドの劣化していない正常状態を示す代表値の集合を生成する初期集合生成部161と代表値から多次元ベクトルを生成する研磨ベクトル生成部162と、初期空間の平均と研磨ベクトルからマハラノビス距離を算出するマハラノビス距離算出部163とを備える。
【0033】
次に、上記ウェハ研磨装置の動作を説明する。まず、データ収集部110は、研磨テーブル210上でウェハが研磨されているときのテーブルモータ220の回転トルクデータと、同じく研磨中のヘッドモータ240の回転トルクデータと、同じく研磨中の研磨テーブル210上の温度を測定する温度計280のデータを、一定のサンプリング周期でサンプリングしてデータ格納部120へ格納する。また、ウェハの研磨後に行われるドレッサーヘッド250による研磨テーブル210のドレッシング時のドレッサーモータ260の回転トルクデータもデータ格納部120へ格納する。
【0034】
図5は、温度計280の検出温度の変化の一例を示す。データ格納部120に格納されるサンプリングデータは、例えば、温度計280の温度データでは、図5のように、時間データに対するテーブル温度データの変化を表す2次元データとなる。その他のモータ回転トルク値等も同様に時間データに対するトルク値の変化を表す2次元データとなる。
【0035】
そして、研磨データ取得部130によりデータ格納部120内に保存されている研磨中のテーブルモータ220とヘッドモータ240の回転トルクデータと温度計280の研磨テーブル温度データと、ドレッシング時のドレッサーモータ260の回転トルクデータを抽出し、変換部140へ出力する。変換部140は、取得したデータのそれぞれについて平均値や一定時間の差分値等の代表値処理をウェハの研磨処理毎に行う。
【0036】
次に予測部150は、まず、研磨レートを推定するウェハが研磨された時のテーブル温度や各種モータ回転トルク等の代表値化された研磨データを説明変数として変換部140より取得する。次に事前に重回帰分析により作成済みの統計モデルと説明変数から、研磨を行ったウェハの研磨レートの推定値を算出する。
【0037】
次に初期集合生成部161は、研磨パッド使用開始直後のウェハが研磨された時のテーブル温度や各種モータ回転トルク等の代表値化された研磨データを変換部140より取得し、劣化する前の正常な研磨パッドの状態を表す代表値による集合を生成する。また、集合の分散及び平均を算出する。
【0038】
次に研磨ベクトル生成部162では、研磨パッドの状態を求めたい時点で研磨されたウェハが研磨されたときのテーブル温度や各種モータ回転トルク等の代表値化された研磨データを変換部140より取得し、多次元ベクトルを生成する。
【0039】
次にマハラノビス距離算出部25では、初期集合生成部161で求めた集合の分散及び平均と、ベクトル生成部24で求めた多次元ベクトルとのマハラノビス距離を算出する。
【0040】
最後に研磨部材交換判定部26で、予測部150で求めた推定研磨レート値とマハラノビス距離算出部25で求めたマハラノビス距離をもとに研磨パッドの交換判定を行う。
【0041】
図6は、正常時の研磨パッドの判別方法の一例を示す。図7は、異常時の研磨パッドの判別方法の一例を示す。上記実施形態において述べた実施形態について、初期集合生成部161、研磨ベクトル生成部162、マハラノビス距離算出部25、及び研磨部材交換判定部26の実施例を詳述する。
【0042】
初期集合生成部161において、まず、研磨パッド使用開始直後に研磨した5つのウェハが研磨された時のテーブル温度や各種モータ回転トルク等の代表値化された研磨データの組を変換部140より取得する。次に、センサの代表値の組から多次元の集合を作成する。これは、使用開始直後の研磨パッドは劣化前の正常状態であると定義して、代表値の空間を生成することで研磨パッドの正常状態を表すこととなる。
【0043】
次に研磨ベクトル生成部162について詳述する。研磨ベクトル生成部162では、初期集合生成後の研磨パッドの劣化推定を行いたい時点で研磨されたウェハが研磨されたときのテーブル温度や各種モータ回転トルク等の代表値化された研磨データにおいて単位空間を構成する代表値を用いて多次元ベクトルであらわす。これがウェハ研磨時の研磨パッドの状態を表すこととなる。
【0044】
次にマハラノビス距離算出部25について詳述する。マハラノビス距離算出部25では、初期集合生成部161で求めた分散及び平均と研磨ベクトル生成部162で求めた多次元ベクトルを用いてマハラノビス距離を求める。ここで求めた距離が、研磨パッドの状態を表している。具体的には、マハラノビス距離が1を超える場合には研磨パッドは劣化していると判断する。
【0045】
最後に研磨部材交換判定部26について詳述する。研磨部材交換判定部26では、予測部150で求めた予測レート値とマハラノビス距離算出部25で求めたマハラノビス距離を元に研磨パッドの交換判定を行う。具体的には正常な研磨パッドである場合、図6に示すように予測レート値が低くかつ、マハラノビス距離が1を超える場合には研磨パッドを交換すべきだと判定し処理を行う。異常な研磨パッドである場合、図7に示すよう研磨レートと同様にマハラノビス距離も大きくなるため、正常研磨パッドの時と同様に、予測レートが低くかつ、マハラノビス距離が1を超える場合には研磨パッドを交換すべきだと判定し処理を行う。
【0046】
本発明の効果は、研磨パッドの使用時間に依存しない研磨パッドの劣化推定ならびに研磨パッドの交換判定が可能となり、これにより、従来のものに比較しコストや生産性を上げることである。
【0047】
本発明の活用例として、ウェハの研磨処理を行うウェハ研磨装置に用いられる。
【0048】
図10は、ウェハ研磨支援装置100をコンピュータ等の電子情報処理装置で構成した場合のハードウェア構成の一例を示す。ウェハ研磨支援装置100は、CPU(Central Processing Unit)周辺部と、入出力部と、レガシー入出力部とを備える。CPU周辺部は、ホスト・コントローラ801により相互に接続されるCPU802、RAM(Random Access Memory)803、グラフィック・コントローラ804、及び表示装置805を有する。入出力部は、入出力コントローラ806によりホスト・コントローラ801に接続される通信インターフェース807、ハードディスクドライブ808、及びCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)ドライブ809を有する。レガシー入出力部は、入出力コントローラ806に接続されるROM(Read Only Memory)810、フレキシブルディスク・ドライブ811、及び入出力チップ812を有する。
【0049】
ホスト・コントローラ801は、RAM803と、高い転送レートでRAM803をアクセスするCPU802、及びグラフィック・コントローラ804とを接続する。CPU802は、ROM810、及びRAM803に格納されたプログラムに基づいて動作して、各部の制御をする。グラフィック・コントローラ804は、CPU802等がRAM803内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得して、表示装置805上に表示させる。これに代えて、グラフィック・コントローラ804は、CPU802等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。
【0050】
入出力コントローラ806は、ホスト・コントローラ801と、比較的高速な入出力装置であるハードディスクドライブ808、通信インターフェース807、CD−ROMドライブ809を接続する。ハードディスクドライブ808は、CPU802が使用するプログラム、及びデータを格納する。通信インターフェース807は、ネットワーク通信装置891に接続してプログラム又はデータを送受信する。CD−ROMドライブ809は、CD−ROM892からプログラム又はデータを読み取り、RAM803を介してハードディスクドライブ808、及び通信インターフェース807に提供する。
【0051】
入出力コントローラ806には、ROM810と、フレキシブルディスク・ドライブ811、及び入出力チップ812の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM810は、ウェハ研磨支援装置100が起動時に実行するブート・プログラム、あるいはウェハ研磨支援装置100のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスク・ドライブ811は、フレキシブルディスク893からプログラム又はデータを読み取り、RAM803を介してハードディスクドライブ808、及び通信インターフェース807に提供する。入出力チップ812は、フレキシブルディスク・ドライブ811、あるいはパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を接続する。
【0052】
CPU802が実行するプログラムは、フレキシブルディスク893、CD−ROM892、又はIC(Integrated Circuit)カード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。記録媒体に格納されたプログラムは圧縮されていても非圧縮であってもよい。プログラムは、記録媒体からハードディスクドライブ808にインストールされ、RAM803に読み出されてCPU802により実行される。CPU802により実行されるプログラムは、ウェハ研磨支援装置100を、図1から図9に関連して説明したデータ収集部110、データ格納部120、研磨データ取得部130、変換部140、予測部150、研磨部材劣化推定部160(初期集合生成部161、研磨ベクトル生成部162、及びマハラノビス距離算出部163)、及び研磨部材交換判定部170として機能させる。
【0053】
以上に示したプログラムは、外部の記憶媒体に格納されてもよい。記憶媒体としては、フレキシブルディスク893、CD−ROM892の他に、DVD(Digital Versatile Disk)又はPD(Phase Disk)等の光学記録媒体、MD(MiniDisk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワークあるいはインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスク又はRAM等の記憶媒体を記録媒体として使用して、ネットワークを介したプログラムとして提供してもよい。
【0054】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は、上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0055】
100 ウェハ研磨支援装置
110 データ収集部
120 データ格納部
130 研磨データ取得部
140 変換部
150 予測部
160 研磨部材劣化推定部
161 初期集合生成部
162 研磨ベクトル生成部
163 マハラノビス距離算出部
170 研磨部材交換判定部
200 ウェハ研磨装置
210 研磨テーブル
220 テーブルモータ
230 研磨ヘッド
240 ヘッドモータ
250 ドレッサーヘッド
260 ドレッサーモータ
270 スラリー供給器
280 温度計
801 ホスト・コントローラ
802 CPU
803 RAM
804 グラフィック・コントローラ
805 表示装置
806 入出力コントローラ
807 通信インターフェース
808 ハードディスクドライブ
809 CD−ROMドライブ
810 ROM
811 フレキシブルディスク・ドライブ
812 入出力チップ
891 ネットワーク通信装置
892 CD−ROM
893 フレキシブルディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハの研磨を支援するウェハ研磨支援装置であって、
ウェハを研磨する研磨機構の特性を表す複数の物理量を式の要素とする統計モデルに基づいて研磨レートを推定し、その推定結果を用いてウェハの研磨処理を行うウェハ研磨装置における研磨部材の劣化の推定を行う研磨部材劣化推定部と、
前記研磨部材劣化推定部が推定した研磨レートと、前記研磨部材の劣化の推定結果とに基づいて、前記研磨部材の交換を判定する研磨部材交換判定部と
を備えるウェハ研磨支援装置。
【請求項2】
前記研磨部材劣化推定部は、
前記研磨部材の劣化特性を表す複数の物理量から前記研磨部材の劣化していない正常状態を示す物理量の集合を生成し、前記集合の平均及び分散を算出する初期集合生成部と、
ウェハ研磨時の前記物理量から多次元ベクトルを生成する研磨ベクトル生成部と、
前記初期集合生成部が生成した前記集合の平均及び分散と、前記研磨ベクトル生成部が生成した多次元ベクトルとに基づいて、マハラノビス距離を算出するマハラノビス距離算出部と
を備える請求項1に記載のウェハ研磨支援装置。
【請求項3】
前記初期集合生成部は、前記研磨部材の劣化特性を表す複数の物理量として、研磨による発熱量情報として研磨部分における温度情報と、研磨機構部分に複数設けられたモータのうち少なくとも一つの前記モータのトルク情報とを用いる
請求項2記載のウェハ研磨支援装置。
【請求項4】
ウェハの研磨を支援するウェハ研磨支援装置を制御する制御方法であって、
ウェハを研磨する研磨機構の特性を表す複数の物理量を式の要素とする統計モデルに基づいて研磨レートを推定し、その推定結果を用いてウェハの研磨処理を行うウェハ研磨装置における研磨部材の劣化の推定を行う研磨部材劣化推定段階と、
前記研磨部材劣化推定段階において推定された研磨レートと、前記研磨部材の劣化の推定結果とに基づいて、前記研磨部材の交換を判定する研磨部材交換判定段階と
を備える制御方法。
【請求項5】
ウェハの研磨を支援するウェハ研磨支援装置用のプログラムであって、前記ウェハ研磨支援装置を、
ウェハを研磨する研磨機構の特性を表す複数の物理量を式の要素とする統計モデルに基づいて研磨レートを推定し、その推定結果を用いてウェハの研磨処理を行うウェハ研磨装置における研磨部材の劣化の推定を行う研磨部材劣化推定部、
前記研磨部材劣化推定部が推定した研磨レートと、前記研磨部材の劣化の推定結果とに基づいて、前記研磨部材の交換を判定する研磨部材交換判定部
として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−192511(P2012−192511A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60352(P2011−60352)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】