説明

ウエザストリップ

【課題】軽量化を図りつつ、ドア開口周縁からの脱落を防止し、さらには作業工数や製造コストの増大を抑制する。
【解決手段】ウエザストリップ4は、ウエザストリップ本体5とクリップ6とを備える。ウエザストリップ本体5は、基部11、第2付根部15bにおいて基部11に連結されるシール部12、支持部13、第1係合孔17、及び、第2係合孔18を備える。クリップ6の基部側側壁22が両係合孔17,18に挿通されることで、クリップ6はウエザストリップ本体5に配設される。基部側側壁22は、その先端部においてクリップ6の挿通方向と直交する向きに沿った厚さが、当該向きに沿った第2係合孔18の幅よりも大きい突条部24を有する。突条部24は、第2係合孔18の奥側に位置し、支持部13に対して係止可能な状態とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の開口周縁に用いられるウエザストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両のドア開口周縁にはウエザストリップが取付けられる。ウエザストリップは、ドア開口周縁のフランジに対して嵌め込まれることによって保持される断面略U字状のトリム部と、当該トリム部から突出して設けられた中空状のシール部とを備えている。また、トリム部は、その形状を保持すべく、長手方向に沿って延びる断面U字状の金属製インサートが埋設されている。尚、前記ウエザストリップは、前記トリム部を構成する未加硫ゴムやインサート等からなるとともに、押出成形機によって所定の開口形状を有するダイスから押出されることで成形されたウエザストリップ中間体に対し、加硫処理を施すことにより製造されるのが一般的である。
【0003】
近年、ウエザストリップの軽量化の要請が高まっている。そこで、前記インサートを設けることなく、ソリッドゴムからなる略平板状の基部と、当該基部から突出し、スポンジゴムからなるシール部とによってウエザストリップを構成する技術が提案されている。また、このようなウエザストリップをドア開口周縁に取付ける手法として、前記基部及び前記フランジに対して間欠的に複数の孔を設けた上で、当該基部及びフランジに形成された両孔に対してクリップを挿通し、前記基部を前記フランジに対して取付ける手法が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0004】
ところが、上記技術を採用した場合には、ボディパネルが組み合わされてなるフランジに対して複数の孔を設ける工程が必要となる。従って、ボディの設計や製造作業の複雑化、工数の増大を招いてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、ウエザストリップをドア開口周縁に取付ける手法として、次の手法が提案されている。すなわち、前記基部の背面に長手方向に延びる溝部を形成しておく。そして、断面略U字状をなす複数のクリップを前記基部の背面に取付ける。詳述すると、前記クリップは、車外側の側面において車外側へと突出する突部を有しており、当該突部を前記溝部に嵌合することによって、前記基部の背面に各クリップが取付けられる。その後、各クリップの断面U字状の部分によってフランジを挟持することにより、ウエザストリップがドア開口周縁に対して取付けられる(例えば、特許文献2等参照)。当該技術によれば、製造作業の複雑化や工数の増大等の不具合を抑制することが可能となる。
【0006】
しかしながら、当該技術を採用した場合には、ドア開口周縁のコーナー部分に配設された溝部の開口が開いてしまうおそれがある。溝部の開口が開いてしまうと、前記クリップが溝部から外れてしまい、ひいてはウエザストリップがドア開口周縁から脱落してしまうおそれがある。
【0007】
これに対して、断面略くの字状の樹脂インサートを、その一端部が露出するようにして基部内に埋設した上で、露出状態にある樹脂インサートの一端部に対して固定片を取付け、当該固定片と前記基部とでフランジを挟み込むことにより、ウエザストリップをドア開口周縁に取付ける手法が提案されている(例えば、特許文献3等参照)。
【特許文献1】特開2005−153601号公報
【特許文献2】特開2005−153698号公報
【特許文献3】特開2006−290158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記特許文献3の技術を採用しようとすると、樹脂インサートの一端部に対して固定片を取付ける工程が必要となってしまう。そのため、作業工数や製造コストの増大等といった不具合を招いてしまうおそれがある。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、軽量化を図りつつ、ドア開口周縁からの脱落を防止することができ、さらには作業工数や製造コストの増大を抑制することができるウエザストリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0011】
手段1.車両のドア開口周縁のフランジに沿って当接されるとともに、略平板状をなす基部と、
前記基部から車外側へと膨出形成されるとともに、前記基部の幅方向一端部に連結される第1付根部、及び、前記基部の幅方向他端部に連結される第2付根部を有し、ドア閉時にドアの周縁が押し付けられる中空状のシール部と、
前記基部のうち、前記第1付根部に連結される部位、及び、前記第2付根部に連結される部位の間から延び、前記シール部の内周面へと連結される支持部と、
前記第2付根部及び前記基部の境界部分において、前記基部の長手方向に沿って間欠的に形成された複数の第1係合孔と、
前記支持部及び前記基部の境界部分において、前記第1係合孔の形成位置に対応して形成された複数の第2係合孔と
を有するウエザストリップ本体、並びに、
車内側側壁、基部側側壁、及び、両側壁を連結する連結壁を有し、断面略U字状をなすとともに、前記基部側側壁が前記第1係合孔及び前記第2係合孔に対して挿通されることで、前記ウエザストリップ本体に対して配設される複数の樹脂製のクリップを備え、
前記クリップの基部側側壁及び車内側側壁により、前記フランジ及び前記基部を挟み込むことで取付けられるウエザストリップであって、
前記クリップの基部側側壁は、その先端部において挿通方向と直交する向きに沿った厚さが、前記挿通方向と直交する向きに沿った前記第2係合孔の幅よりも大きい係止部を備え、
前記係止部が前記第2係合孔よりも前記基部側側壁の挿通方向に沿って奥側に位置することで、前記係止部が前記支持部に対して係止可能とされることを特徴とするウエザストリップ。
【0012】
上記手段1によれば、ウエザストリップは樹脂製のクリップによって取付けられる。そのため、ウエザストリップ内部にインサートを設ける場合と比較して、ウエザストリップの軽量化を図ることができる。
【0013】
また、前記クリップは、その基部側側壁がウエザストリップ本体に設けられた第1係合孔と第2係合孔とに挿通されることで設けられている。すなわち、係合孔を1箇所とした場合には、ウエザストリップ本体に対するクリップのぐらつきが懸念されるところ、本手段1によれば、クリップの基部側側壁が、前記基部の幅方向(長手方向と直交する方向)に沿って位置の異なる2箇所の係合孔によって支持される。このため、ウエザストリップ本体に対するクリップのぐらつきをより確実に防止することができ、ウエザストリップの取付状態をより安定したものとすることができる。
【0014】
さらに、基部側側壁の先端部には、その先端部において挿通方向と直交する向きに沿った厚さ(幅)が、前記挿通方向と直交する向きに沿った第2係合孔の幅よりも大きい係止部が形成されており、ドア開口周縁にウエザストリップを取付けたときにおいて、当該係止部が第2係合孔よりも奥側に位置し、支持部に対して係止可能とされている。これにより、ウエザストリップ本体に対するクリップの抜け方向への相対移動を規制することができる。その結果、ウエザストリップの取付状態のより一層の安定化を図ることができる。
【0015】
尚、前記係止部は、挿通方向に沿って断面形状を拡大することで形成されるものであってもよいし、断面形状を拡大させることなく鉤形状をなすことで形成されるものであってもよい。また、係止部は、中空状であってもよいし、中実状であってもよい。
【0016】
加えて、支持部に対して係止部をより確実に係止させるという観点からは、車外側や基部の長手方向に向かって厚み(幅)を増大させるようにして係止部を形成することが好ましい。
【0017】
手段2.前記複数のクリップのうち、前記ドア開口周縁への取付に際して基準となる所定のクリップの外観をその他のクリップの外観と異ならせたことを特徴とする手段1に記載のウエザストリップ。
【0018】
ドア開口周縁に取付けられるウエザストリップは環状をなすとともに、長手方向に沿った各部分において略同一の断面形状に形成され得る。そのため、従来では、ドア開口周辺に取付ける上での基準とすべく、ウエザストリップに対してペイントマーキングが施される。これにより、取付作業者にとっての利便性向上が図られる。一方で、ペイントマーキングを施すこと自体、作業工数の増大を招き、ひいてはコスト増につながってしまう。
【0019】
この点、上記手段2によれば、複数のクリップのうち、前記ドア開口周縁への取付に際して基準となる所定のクリップの外観が、その他のクリップの外観と異なるものとされている。従って、ウエザストリップ本体に対するクリップの配設時において、所定の基準部位に外観の異なるクリップを配設しさえすれば、クリップの配設と同時に、取付基準をウエザストリップに設けることができる。これにより、ペイントマーキングを施す工程を省略しつつ、ペイントマーキングと同様の効果を期待できる。その結果、作業工数の増大を防止することができるとともに、ウエザストリップの取付精度の向上を図ることができる。
【0020】
尚、「外観」とあるのは、例えば、色彩、形状、模様等、視覚を通じて認識可能なものをいう。
【0021】
手段3.前記クリップの外観を、取付けられるドア開口の種類に応じて異ならせたことを特徴とする手段1又は2に記載のウエザストリップ。
【0022】
一般的に車両の種類やドアの種類(右ドアや左ドア等)等によってドア開口の形状は異なる。このため、ウエザストリップについては、取付けられるドア開口の形状等によって、その長さや形状等を種々変更したものが用いられる。ところが、種類の異なるウエザストリップであっても、環状形状をなすとともに、同様の色彩を有していることが多く、ウエザストリップの種類の異同を一見して判断することは難しい。そのため、ウエザストリップの取り違え等の不具合が生じてしまい、生産性の低下を招いてしまうおそれがある。
【0023】
この点、上記手段3によれば、取付けられるドア開口の種類に応じて、ウエザストリップ本体に配設されるクリップの外観が異なるものとされている。これにより、ウエザストリップの種類の異同を比較的容易に判断することができ、生産性の低下をより一層確実に防止することができる。
【0024】
手段4.前記クリップの基部側側壁の最先端部を先端側に向けて薄肉となるテーパ状に形成したことを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のウエザストリップ。
【0025】
上記手段4によれば、クリップの基部側側壁の最先端部が、先端側に向けて薄肉となるようにして構成されている。従って、第1係合孔及び第2係合孔に対して、クリップの基部側側壁を比較的容易に挿通させることができる。その結果、生産性の向上を図ることができる。
【0026】
手段5.前記クリップの基部側側壁は、挿通方向と直交する向きに沿った厚さが、前記挿通方向と直交する向きに沿った前記第1係合孔の幅よりも大きい中間係止部を備え、
前記中間係止部が前記基部側側壁の挿通方向に沿って前記第1係合孔及び第2係合孔の間に位置し、前記中間係止部が前記第2付根部に対して係止可能とされることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載のウエザストリップ。
【0027】
上記手段5によれば、クリップの基部側側壁には、挿通方向と直交する向きに沿った厚さが、前記挿通方向と直交する向きに沿った第1係合孔の幅よりも大きい中間係止部が形成されており、当該中間係止部が第1係合孔を通り、前記第2付根部に対して係止可能とされている。これにより、クリップの基部側側壁においては、係止部、及び、中間係止部の少なくとも2箇所が、ウエザストリップ本体に対して係止され得る。これにより、ウエザストリップ本体からクリップが脱落してしまうことをより確実に防止することができ、ウエザストリップの取付状態の更なる安定化を図ることができる。
【0028】
尚、係止部において厚さを大きくさせる方向と、中間係止部において厚さを大きくさせる方向とが直交するようにして両係止部を形成することとしてもよい(例えば、係止部を車外側へと突出するようにして形成する一方で、中間係止部を基部の長手方向に沿って拡幅するようにして形成することとしてもよい)。この場合には、仮に係合孔が基部の長手方向や長手方向と直交する方向に広げられた場合であっても、係止部及び中間係止部の少なくとも一方が、ウエザストリップ本体に対して係止状態を維持できる。
【0029】
手段6.前記基部及び前記シール部は、同種の発泡ゴムにより形成されることを特徴とする手段1乃至5のいずれかに記載のウエザストリップ。
【0030】
上記従来技術に示すように、基部をソリッドゴムによって形成する一方で、シール部をスポンジゴムによって形成することがあるが、ソリッドゴムとスポンジゴムとの間には、温度変化等に伴う収縮の程度に差異がある。そのため、基部及びシール部間の収縮差によって、ウエザストリップに反りが発生してしまうおそれがある。加えて、複数の材料を用いることに伴って材料管理の範囲が拡大してしまい、また、押出成形時には、各材料(各部)に対応してダイスの開口形状を変更したり、開口形状の異なる複数のダイスを用いたりする等の必要が生じてしまう。そのため、製造コストの増大や製造装置の複雑化等が懸念される。
【0031】
この点、上記手段6によれば、同種の発泡ゴムから基部及びシール部を形成することにより、基部とシール部との間における温度変化等に伴う収縮差をなくすことができる。これにより、ウエザストリップの反りをより確実に防止することができる。併せて、材料管理の範囲を縮小することができるとともに、押出成形時においては、材料に対応して異なる開口形状のダイスを用いること等の必要がなくなる。その結果、製造コストの低減を図ることができるとともに、製造装置の簡素化を図ることができる。
【0032】
また、基部及びシール部を発泡ゴムから形成することで、ウエザストリップの一層の軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、車両としての自動車1の側方にはドア2が開閉可能に設けられ、ドア2に対応するボディ側のドア開口3周縁にはウエザストリップ4が装着されている。加えて、ドア開口3の下辺部には、金属製で板状のスカッフプレート31が設けられている。本実施形態のウエザストリップ4は、主として押出成形法によって成形され、全体としてほぼ環状をなしている。
【0034】
ウエザストリップ4は、図2に示すように、長尺状のウエザストリップ本体5と、複数のクリップ6とを備えて構成されている。
【0035】
前記ウエザストリップ本体5は、図3(a)に示すように、基部11と、シール部12と、支持部13とを備えている。また、ウエザストリップ本体5は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合)発泡ゴムによって形成されている。
【0036】
前記基部11は、略平板状をなし、ドア開口3周縁に設けられたフランジ7に沿って延びている。また、基部11の車内側の側面からは、車内側へと突出する複数の保持突部14が形成されている。また、各保持突部14は、フランジ7の車外側の側面に当接している。
【0037】
前記シール部12は、中空状をなすとともに、前記基部11の車外側の側面から車外側へと突出して形成されており、ドア閉時にドアの周縁が押し付けられるようになっている。また、シール部12は、前記基部11の幅方向一端部に連結される第1付根部15a、及び、前記基部11の幅方向他端部に連結される第2付根部15bを有している。加えて、シール部12の外周部分のうちドア開口3の周方向内側に向く部分からは、車内側へと延出するリップ部16が形成されている。尚、当該リップ部16は、その先端部分が天井やガーニッシュ等の内装部材(図示せず)の端部を覆うようになっている。
【0038】
さらに、前記シール部12の内部には、シール部12の中空形状を維持すべく、支持部13が設けられている。詳述すると、前記支持部13は、前記基部11の車外側の側面の略中央とシール部12の内周面とを連結するようにして設けられている。尚、上述の通り、前記第2付根部15bは、前記基部11の幅方向他端側に連結されている一方で、支持部13は、前記基部11の幅方向略中央に連結されている。すなわち、前記基部11及び第2付根部15bの連結部分と、前記基部11及び支持部13の連結部分とは、基部11の幅方向に沿ってずれた位置となるようにして構成されている。
【0039】
さらに、図3(b)に示すように、前記基部11と第2付根部15bとの境界部分には第1係合孔17が設けられている。また、第1係合孔17は、基部11の長手方向に沿って間欠的に複数形成されている。加えて、前記基部11と支持部13との境界部分のうち、前記第1係合孔17の形成位置に対応する部分には、第2係合孔18が設けられている。
【0040】
前記クリップ6は、樹脂材料(例えば、PA6等)によって形成されるとともに、図3(b)及び図4に示すように、車内側側壁21と、基部側側壁22と、両側壁21,22を連結する連結壁23とを備え、断面略U字状に形成されている。また、クリップ6の幅(基部11の長手方向に沿った長さ)は、前記基部11の長手方向に沿った前記第1係合孔17及び第2係合孔18の幅と略等しいものとされている。
【0041】
前記車内側側壁21は、断面略くの字状に屈曲されて形成されており、屈曲部分がクリップ6の内側に位置している。また、車内側側壁21は、前記連結壁23に対してクリップ6の内側へと傾いた状態で連結されている。これにより、クリップ6が樹脂材料によって形成されていることと相俟って、車内側側壁21と基部側側壁22との開口部を広げた場合には、両者の間で比較的大きな弾性復元力が発生するようになっている。
【0042】
加えて、前記基部側側壁22の先端部には、車外側の側面から車外側へと突出する係止部としての突条部24が形成されている。ここで、前記突条部24のうちの最も厚い部分(最厚部)24aにおける厚さは、前記基部11の長手方向と直交する向きに沿った、前記第1係合孔17及び第2係合孔18の幅よりも大きくなるようにして形成されている。加えて、前記基部側側壁22の最先端部には、先端側に向けて薄肉となるテーパ部25が形成されている。
【0043】
ここで、上述のウエザストリップ本体5に対して、各クリップ6は次のようにして配設されている。すなわち、前記ウエザストリップ本体5に形成された第1係合孔17及び第2係合孔18に対して、前記クリップ6の基部側側壁22を挿通することによって、ウエザストリップ本体5に対して複数のクリップ6が配設される。このとき、前記突条部24の最厚部24aが、前記基部側側壁22の挿通方向に沿って第2係合孔18よりも奥側に配置され、前記突条部24が前記支持部13に対して係止可能な状態となっている。
【0044】
図2に戻り、ウエザストリップ本体5の上辺部の両端部分、及び、ウエザストリップ本体5の両縦辺部の下方部分に対しては、他のクリップ6と異なる色彩を有するクリップ61,62,63,64が配設されている。ここで、前記各クリップ61〜64は、ウエザストリップ4をドア開口3周縁に取付けるにあたっての基準として機能するものである。尚、前記フランジ7のうち、各クリップ61〜64が取付けられる予定位置には、切り欠き(図示せず)が設けられている。
【0045】
また、上記のように構成されてなるウエザストリップ4は、次のようにしてドア開口3周縁に取付けられる。すなわち、クリップ6の弾性復元力によって、基部側側壁22と車内側側壁21とで前記フランジ7及び基部11を挟み込むことにより、ウエザストリップ4はドア開口3周縁に取付けられる。尚、クリップ6による挟持に伴い前記保持突部14には反発力が生じることとなる。つまり、ウエザストリップ4は、クリップ6の挟持力と、保持突部14の反発力との双方の働きによって安定した状態で取付けられる。
【0046】
また、ドア開口3周縁にウエザストリップ4を取付けるにあたっては、まず、前記色彩の異なるクリップ61,62をフランジ7の前記切り欠きに位置合わせした上で、前記クリップ61,62によってドア開口3周縁の上辺部に対してウエザストリップ4の上辺部の両端部を取付けることが好ましい。この場合には、ウエザストリップ4の落下を防止しつつ、ウエザストリップ4のうちドア開口3周縁の上辺部や縦辺部に対応する部位を精度よく取付けることができる。また、前記クリップ63,64をフランジ7の前記切り欠きに位置合わせした上で、ウエザストリップ4を取付ければ、ウエザストリップ4と前記スカッフプレート31との相対位置関係にずれが生じてしまうことをより確実に防止することができる。
【0047】
以上詳述したように、本実施形態によれば、クリップ6が樹脂によって形成されるとともに、基部11及びシール部12が発泡ゴムによって形成されているため、ウエザストリップ4の軽量化を図ることができる。さらに、同種の発泡ゴムから基部11及びシール部12を形成することにより、基部11とシール部12との間における収縮差をなくすことができる。これにより、ウエザストリップ4の反りをより確実に防止することができる。併せて、材料管理の範囲を縮小することができるとともに、押出成形時においては、材料に対応して異なる開口形状のダイスを用いること等の必要がなくなる。その結果、製造コストの低減を図ることができるとともに、製造装置の簡素化を図ることができる。
【0048】
加えて、前記クリップ6は、その基部側側壁22がウエザストリップ本体5に設けられた第1係合孔17と第2係合孔18とに挿通されることで設けられている。すなわち、係合孔を1箇所とした場合には、ウエザストリップ本体5に対するクリップ6のぐらつきが懸念されるところ、本実施形態によれば、クリップ6の基部側側壁22が、前記基部11の幅方向(長手方向と直交する方向)に沿って位置の異なる2箇所の係合孔17,18によって支持されている。このため、ウエザストリップ本体5に対するクリップ6のぐらつきをより確実に防止することができ、ウエザストリップ4の取付状態をより安定したものとすることができる。
【0049】
さらに、基部側側壁22の先端部には、車外側へと突出する突条部24が形成されており、ドア開口3周縁にウエザストリップ4を取付けたとき、当該突条部24が第2係合孔18よりも奥側に位置し、支持部13に対して係止可能な状態とされている。これにより、ウエザストリップ本体5に対するクリップ6の抜け方向への相対移動を規制することができる。その結果、ウエザストリップ4の取付状態のより一層の安定化を図ることができる。
【0050】
また、複数のクリップ6のうち、前記ドア開口3周縁への取付に際して基準となる所定のクリップ61〜64の外観が、その他のクリップ6の外観と異なるものとされている。従って、ウエザストリップ本体5に対するクリップ6の配設時において、所定の基準部位に外観の異なるクリップ61〜64を配設しさえすれば、クリップ6の配設と同時に、取付基準をウエザストリップ4に設けることができる。これにより、ペイントマーキングを施す工程を省略しつつ、ペイントマーキングと同様の効果(取付作業者による取付の利便性向上)を期待できる。その結果、作業工数の増大を防止することができるとともに、ウエザストリップ4の取付精度の向上を図ることができる。
【0051】
加えて、クリップ6の基部側側壁22の最先端部には、先端側に向けて薄肉化するテーパ部25が形成されている。従って、第1係合孔17及び第2係合孔18に対して、クリップ6の基部側側壁22を比較的容易に挿通させることができる。これにより、生産性の向上を図ることができる。
【0052】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0053】
(a)上記実施形態においては、取付時の基準となるクリップ61〜64の色彩を他のクリップ6とは異ならせることによって外観状の相違を生じさせることとしているが、他の要素(例えば、形状等)によって取付基準となるクリップ61〜64の外観を異ならせることとしてもよい。
【0054】
(b)上記実施形態では、ウエザストリップ4に設けられた複数のクリップ6のうちの所定のクリップ61〜64の外観を変更することで、当該クリップ61〜64をウエザストリップ4取付時の基準として用いるように構成されているが、例えば、車両の種類やドアの種類に対応して、クリップ6の外観を異ならせることとしてもよい。この場合には、
ウエザストリップ4の種類の異同を比較的容易に判断することができ、生産性の低下をより一層確実に防止することができる。
【0055】
(c)上記実施形態では特に言及していないが、フランジ7の厚さがドア開口3の周方向に沿って種々異なり得ることを考慮して、クリップ6の形状等を変更することとしてもよい。例えば、フランジ7のうち比較的厚い部分には、前記連結壁23を比較的長くしたクリップ6を用いることとしてもよいし、フランジ7のうち比較的薄い部分には、前記連結壁23を比較的短くしたクリップ6を用いることとしてもよい。この場合には、ドア開口3周縁に対してウエザストリップ4をより一層安定した状態で取付けることができる。また、クリップ6の形状を変更することなく、フランジ7のうち比較的厚い部分には、弾性復元力の比較的小さなクリップ6を用いる一方で、フランジ7のうち比較的薄い部分には、弾性復元力の比較的大きなクリップ6を用いることとしてもよい。この場合には、ウエザストリップ本体5の形状を変更することなく、クリップ6の形状等を変更することのみで、フランジ7の種々の厚みに対応してウエザストリップ4をより適切な挟持力をもって取付けることができる。その結果、ウエザストリップ4の取付状態の安定化や製造コストの低減等を図ることができる。
【0056】
(d)上記実施形態では、係止部としての突条部24が車外側へと突出する形状をなしているが、係止部については、クリップ6の挿通方向と直交する向きに沿った厚さ(幅)が、前記挿通方向と直交する向きに沿った第2係合孔18の幅よりも大きくなるようにして形成されていればよく、その形状等は特に限定されるものではない。従って、例えば、係止部は、挿通方向に沿って断面形状を拡大することで形成されるものであってもよいし、断面形状を拡大させることなく鉤形状をなすことで形成されるものであってもよい。また、係止部は、中空状であってもよいし、中実状であってもよい。
【0057】
(e)上記実施形態では、基部側側壁22の先端部に車外側へと突出する突条部24が設けられているが、図5に示すように、当該突条部24に加えて、前記基部側側壁22の側壁中央を幅方向に拡幅して形成された中間係止部としての拡幅部26を設けることとしてもよい。この場合には、クリップ6の基部側側壁22においては、車外側へと突出する突条部24に加えて、基部11の長手方向(突条部24の突出方向に対して略直交する方向)に突出する拡幅部26の少なくとも2箇所が、ウエザストリップ本体5に対して係止可能となる。このため、仮に係合孔17,18が基部11の長手方向や長手方向と直交する方向に広げられた場合であっても、突条部24及び拡幅部26の少なくとも一方は、ウエザストリップ本体5に対して係止状態を維持できる。これにより、ウエザストリップ本体5からクリップ6が脱落してしまうことをより確実に防止することができ、ウエザストリップ4の取付状態の更なる安定化を図ることができる。
【0058】
また、突条部24及び拡幅部26の形成位置を基部側側壁22の幅方向にずらして形成することで、基部側側壁22を第2係合孔18に挿通するにあたって、突条部24と拡幅部26とが同時に第2係合孔18に挿通されてしまうことがない。このため、無理な挿通に伴うウエザストリップ本体5の破損をより確実に防止することができる。
【0059】
(f)上記実施形態では、クリップ6を構成する材料としてPA6を例示しているが、クリップ6を他の樹脂材料によって形成することとしてもよい。従って、例えば、TPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)やその他のTPE(熱可塑性エラストマー)、PP(ポリプロピレン)等を用いることとしてもよい。
【0060】
(g)上記実施形態では、(サイドフロント)ドア2に対応するボディ側のドア開口3周縁に設けられるウエザストリップ4について具体化しているが、リヤドア、バックドア、ラッゲージドア(トランクリッド)、ルーフドア(スライディングルーフパネル)等の他のドア開口周縁に設けられるウエザストリップについて適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】自動車を示す斜視図である。
【図2】ウエザストリップを示す正面図である。
【図3】(a)は、図2のJ−J線断面図であり、(b)は、図2のK−K線断面図である。
【図4】クリップの形状を示す斜視図である。
【図5】別の実施形態におけるクリップの形状を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
1…車両としての自動車、2…ドア、3…ドア開口、4…ウエザストリップ、5…ウエザストリップ本体、6,61,62,63,64…クリップ、7…フランジ、11…基部、12…シール部、13…支持部、15a…第1付根部、15b…第2付根部、17…第1係合孔、18…第2係合孔、21…車内側側壁、22…基部側側壁、23…連結壁、24…係止部としての突条部、25…テーパ部、26…中間係止部としての拡幅部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドア開口周縁のフランジに沿って当接されるとともに、略平板状をなす基部と、
前記基部から車外側へと膨出形成されるとともに、前記基部の幅方向一端部に連結される第1付根部、及び、前記基部の幅方向他端部に連結される第2付根部を有し、ドア閉時にドアの周縁が押し付けられる中空状のシール部と、
前記基部のうち、前記第1付根部に連結される部位、及び、前記第2付根部に連結される部位の間から延び、前記シール部の内周面へと連結される支持部と、
前記第2付根部及び前記基部の境界部分において、前記基部の長手方向に沿って間欠的に形成された複数の第1係合孔と、
前記支持部及び前記基部の境界部分において、前記第1係合孔の形成位置に対応して形成された複数の第2係合孔と
を有するウエザストリップ本体、並びに、
車内側側壁、基部側側壁、及び、両側壁を連結する連結壁を有し、断面略U字状をなすとともに、前記基部側側壁が前記第1係合孔及び前記第2係合孔に対して挿通されることで、前記ウエザストリップ本体に対して配設される複数の樹脂製のクリップを備え、
前記クリップの基部側側壁及び車内側側壁により、前記フランジ及び前記基部を挟み込むことで取付けられるウエザストリップであって、
前記クリップの基部側側壁は、その先端部において挿通方向と直交する向きに沿った厚さが、前記挿通方向と直交する向きに沿った前記第2係合孔の幅よりも大きい係止部を備え、
前記係止部が前記第2係合孔よりも前記基部側側壁の挿通方向に沿って奥側に位置することで、前記係止部が前記支持部に対して係止可能とされることを特徴とするウエザストリップ。
【請求項2】
前記複数のクリップのうち、前記ドア開口周縁への取付に際して基準となる所定のクリップの外観をその他のクリップの外観と異ならせたことを特徴とする請求項1に記載のウエザストリップ。
【請求項3】
前記クリップの外観を、取付けられるドア開口の種類に応じて異ならせたことを特徴とする請求項1又は2に記載のウエザストリップ。
【請求項4】
前記クリップの基部側側壁の最先端部を先端側に向けて薄肉となるテーパ状に形成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のウエザストリップ。
【請求項5】
前記クリップの基部側側壁は、挿通方向と直交する向きに沿った厚さが、前記挿通方向と直交する向きに沿った前記第1係合孔の幅よりも大きい中間係止部を備え、
前記中間係止部が前記基部側側壁の挿通方向に沿って前記第1係合孔及び第2係合孔の間に位置し、前記中間係止部が前記第2付根部に対して係止可能とされることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のウエザストリップ。
【請求項6】
前記基部及び前記シール部は、同種の発泡ゴムにより形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のウエザストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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