説明

ウォッシャ液加熱装置

【課題】ウォッシャ液を加熱するウォッシャ液加熱装置の流路中でウォッシャ液が凍結した場合、流路を形成するケースが破損してしまうことを防止することができるウォッシャ液供給装置を提供する。
【解決手段】ウォッシャ液加熱装置50における流路508内の圧力が増大したときに、流路508の容積を増加させる容積調整機構512を設け、ウォッシャ液が凍結して体積を増加させても流路508内の圧力上昇を吸収する。容積調整機構512は、例えば、流路508の壁に形成した開口511と、開口511を塞ぐように設けられ流路内の圧力増大によって外方に偏倚する偏倚板(ベロフラム414)とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のフロントウィンドウガラスを洗浄するためにウィンドウガラス洗浄用のウォッシャ液をフロントウィンドウガラスに供給するウォッシャ液供給装置に関し、特に、フロントウィンドウガラスの凍結状態を解凍するためにウォッシャ液を急速に加熱するためのウォッシャ液加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等におけるウィンドウ洗浄装置は、フロントウィンドウガラスの冬季の霜、着氷を溶解し洗浄するために暖かいウィンドウウォッシャ液を用いたものが知られている。このウォッシャ液を加熱する方法としては、例えば、下記の特許文献1(特表2003−520151号公報)で示すように、エンジンの排気系の予熱によってウォッシャ液を加熱するだけでなく、短時間で加熱するウォッシャ液加熱装置が提案されている。これは容器内に電池によって作動する加熱素子を設け容器内のウォッシャ液を加熱するものである。そして、加熱されたウォッシャ液を一定量だけガラスに噴射するものである。このような急速加熱装置を適用した自動車等は、エンジンをアイドリングする必要がないため排気ガスの軽減を図ることができる。
【0003】
また、従来の他の例としては、下記の特許文献2(特開平10−278746号公報)で示す急速加熱装置を設けたものが提案されている。この急速加熱装置は、ウォッシャ液管路中にバッテリからの電力供給によって発熱する面発熱体と、面発熱体にそって蛇行して配された蛇行管路とからなる。そして、ウォッシャ液は面発熱体に通電することにより急速に加熱される。この加熱されたウォッシャ液は、ウォッシャポンプを作動させることによりウォッシャノズルからフロントウィンドウガラスに向けて噴出され、フロントウィンドウガラスの霜、着氷を急速に溶解するものである。このように蛇行管路内を面発熱体で加熱する構成の急速加熱装置はウォッシャ液を効率よく加熱することができる利点を有するものである。
【0004】
一方、面加熱体としては、例えば、下記の特許文献3(米国特許第5,354,965号明細書)で示すように長寿命であり制御が容易などの利点を有するPTC(positive temperature coefficient)サーミスターが用いられている。そして、このPTCサーミスターへの通電の制御は半導体からなる制御回路によって行なっている。このPTCサーミスターに供給する電力を制御するためにはFETが直列に接続されて用いられている。そのため、FETは高温になるので放熱を考慮する必要性からウォッシャ液流路を形成する容器の外壁に直接に設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−520151号公報(段落[0022]〜段落[0024]、図2)
【特許文献2】特開平10−278746号公報(段落[0025]〜段落[0029]、段落[0047]〜段落[0051]、図4)
【特許文献3】米国特許第5,354,965号明細書(第10欄41行〜43行、第17欄21行〜24行、FIG8、FIG11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜3に開示された加熱されたウォッシャ液を供給するウォッシャ液供給装置は、冬季に寒冷地において不使用状態にあるときにウォッシャ液が凍結してしまうことがある。凍結したウォッシャ液はその体積を増加させるが、合成樹脂材からなる可撓性の管路は大きな問題を生じない。しかし、加熱装置における金属製のケース内に蛇行して形成された流路では、凍結したウォッシャ液が流路内壁に大きな圧力を加える。特に、この凍結、解凍状態が繰り返されると金属疲労を生じてケース自体が破損し、ウォッシャ液漏れ、制御不能による加熱動作の停止等の事故を生じるおそれがある。
【0007】
本願の発明者はこのような問題点を解決すべく種々検討を重ねた結果、ウォッシャ液加熱装置の流路内の圧力が増大したときに、流路の容積を増加させる容積調整機構を設けるようになせば、上記の問題点を解消し得ることを想到し本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、このような問題点を解消することを課題とし、ウォッシャ液を加熱する流路中でウォッシャ液が凍結した場合、流路を形成するケースが破損してしまうことを防止することができるウォッシャ液加熱装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本願の請求項1に係る発明は、
ウォッシャ液タンクからウォッシャ液ポンプによってウォッシャ液ノズルに送られるウォッシャ液の流路中に設けられ、該ウォッシャ液を加熱するためのウォッシャ液加熱装置において、
前記ウォッシャ液が通過する流路内の圧力が増大したときに該流路の容積を増加させる容積調整手段を設けてなることを特徴とする。
【0009】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係るウォッシャ液加熱装置において、 前記容積調整手段は、前記流路の壁に形成した開口と、該開口を塞ぐように設けられ該流路内の圧力増大によって外方に偏倚する偏倚板(例えば下記実施例では、ベロフラム414に相当する)とから構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本願の請求項3に係る発明は、請求項2に係るウォッシャ液加熱装置において、 前記容積調整手段は、前記偏倚板の表面に対向して該偏倚板の偏倚を検出する検出手段を有していることを特徴とする。
【0011】
また、本願の請求項4に係る発明は、請求項1に係るウォッシャ液加熱装置において、前記容積調整手段は、前記流路内の増大する圧力によって収縮する収縮体(例えば下記実施例では、収縮袋528に相当する)から構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本願の請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に係るウォッシャ液加熱装置において、前記流路を形成する熱伝導率の高い材料からなるケースと、該ケースの表面に接して設けた電力供給によって発熱するヒータと、該ケースの表面に接して設けた該ヒータに供給する電力制御用の制御用素子と、該ヒータと制御用素子とを挟んで該ケース表面に設けた回路基板と、該回路基板上に搭載された該制御用素子を制御する制御回路部とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によれば、流路内のウォッシャ液が凍結しその体積を増したときには、容積調整手段が流路の容積を増加させるので、流路内壁に過大な圧力が加わらない。そのため、流路を形成する壁が破損してウォッシャ液漏れ等を生じる事故を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1に係るウォッシャ液供給装置を概略的に示す説明図である。
【図2】図1におけるウォッシャ液加熱装置についてカバーを取外した状態を示す平面図である。
【図3】図1におけるウォッシャ液加熱装置について中央部分を切断して示す断面図である。
【図4】図1におけるウォッシャ液加熱装置について外装ケースを取除き、カバー、容積調整機構等を分解して示す斜視図である。
【図5】図1におけるウォッシャ液加熱装置について外装ケースを取除き、回路基板、ヒータ等を分解して示す斜視図である。
【図6】本発明の実施例1に係るウォッシャ液供給装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例2に係るウォッシャ液供給装置おけるウォッシャ液加熱装置について中央部分を切断した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのウォッシャ液供給装置を例示するものであって、本発明をこのウォッシャ液供給装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のウォッシャ液供給装置にも等しく適用し得るものである。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施例1に係るウォッシャ液供給装置を概略的に示す説明図である。 本発明の実施例に係るウォッシャ液供給装置10は自動車に搭載されており、図1で示すように、ウォッシャ液タンク20と、ウォッシャ液タンク20の出口側に配されたウォッシャ液ポンプ30と、自動車のフロントウィンドウガラスに対向して配されたウォッシャ液ノズル40と、ウォッシャ液ポンプ30とウォッシャ液ノズル40との間に配されたウォッシャ液を加熱するためのウォッシャ液加熱装置50と、これらウォッシャ液タンク20、ウォッシャ液ポンプ30、ウォッシャ液ノズル40及びウォッシャ液加熱装置50との間に接続して設けられた管路60と、ウォッシャ液ポンプ30とウォッシャ液加熱装置50とを種々選択的に作動させるための操作を行う操作部70と、ウォッシャ液加熱装置50内部の凍結状態、ウォッシャ液供給状態等を表示する表示手段であるLEDなどの表示部80とから構成されている。
【0017】
ウォッシャ液加熱装置50は、図2〜図5で示すように、熱伝導率の高いアルミニウム合金からなる金属製のケース501と、ケース501の表面に接して設けられたヒータ502と、ヒータ502の動作を制御するためのマイクロコンピュータを内蔵した制御回路部503と、制御回路部503を搭載する回路基板504と、これらケース501、ヒータ502、制御回路部503及び回路基板504を収納する外装ケース505と有する。
【0018】
ケース501は全体的に矩形の箱状になっており、一面にカバー506が取り付けられて密封状態になっている。図2に示すように、ケース501の内部には、仕切り板507によって形成された蛇行するウォッシャ液の流路508が設けられている。また、ケース501には流路508の流入口509と流出口510とが形成されている。更に、流入口509はウォッシャ液ポンプ30と管路60によって連通され、流出口510はウォッシャ液ノズル40と管路60によって連通されている。
【0019】
その結果、ウォッシャ液はウォッシャ液ポンプ30の作動によって矢印で示すように流入口509から流路508を通過して流出口510へと流れる。一方、ウォッシャ液ポンプ30が作動を停止すると、ウォッシャ液は流路508中に留まった状態になる。
【0020】
図4に示すように、カバー506は流路508の壁の一部を構成しており中央部分に開口511が形成されている。この開口511には容積調整手段である容積調整機構512が設けられている。また、カバー506とケース501との間にはウォッシャ液漏洩防止用のシール513が介挿されている。
【0021】
容積調整機構512は、開口511を塞ぐベロフラム514と、ベロフラムカバー515と、シールドリング516とからなる。ベロフラム514は中央部分が前後に偏倚可能に蛇腹517が形成された偏倚板である。ベロフラムカバー515は、ベロフラム514の中央部分を押さえる押え片518を有する押え用カバー519と、ベロフラムカバー515と押え用カバー519をカバー506に取付けるための取付けカバー520とからなる。この取付けはネジ521によって行われるように構成されている。また、押え片518はベロフラム514が過剰に偏倚されることを制限するための弾性力を有している。
【0022】
図3に示すように、ベロフラム514は、流路408の圧力が増大すると外方に偏倚するが、この偏倚した状態を検出する検出手段である検出センサー522がベロフラム514の外側に配置されている。検出センサー522と表示部80とは接続され、検出センサー522の出力が表示部80によって表示されるようになっている。
【0023】
ウォッシャ液加熱装置50におけるヒータ502はPTCサーミスターからなる。図5に示すように、このヒータ502はケース501の外壁にヒータ押え523によって2個接した状態で取り付けられている。このヒータ押え523は熱伝導率のよいアルミニウムなどの材料によって構成されている。また、ヒータ502はFET524によって供給される電流が制御されている。このFET524はケース501の外壁に直接に接した状態で配置されている。
【0024】
ケース501における流出口510に接近した外壁には、出口温度センサー525が設けられ、回路基板504には外気温度センサー526が設けられている。これら出口温度センサー525、外気温度センサー526の検出出力は制御回路部503に供給され、制御回路部503がFET524の動作状態を制御してヒータ502の発熱動作を制御するようになっている。
【0025】
また、ケース501のFET524に接近した外壁には保護センサー527が設けられ、FET524の温度が異常に高くなったことを検出して制御回路部503がヒータ502による加熱動作を停止するようになっている。
【0026】
また、回路基板504はケース501の表面にヒータ502、FET524を介して配置されている。この回路基板504上には制御回路部503が搭載されている。即ち、制御回路部503はケース501に対してヒータ502、FET524及び回路基板504を介して配置されている。
【0027】
次に、上述した実施例1におけるウォッシャ液供給装置10の動作を説明する。図6は、本発明の実施例1に係るウォッシャ液供給装置の動作を示すフローチャートである。図6に示す動作は制御回路部503によるマイコン制御よって実現される。通常、フロントウィンドウガラスを洗浄する場合は、ユーザが自動車のエンジン動作をスタートさせてから操作部70を操作してウォッシャ液ポンプ30を作動させ、ウォッシャ液タンク20内のウォッシャ液をウォッシャ液ノズル40に供給させる。その結果、ウォッシャ液ノズル40からウォッシャ液がフロントウィンドウガラスに噴射され、併せてワイパーも作動させることにより洗浄が行なわれる。
【0028】
ここで、冬季に低温のためにフロントウィンドウガラスに氷が付着している場合は、常温状態のウォッシャ液を噴射しても直ちに洗浄することができないため、清浄のために加熱されたウォッシャ液を用いる。
【0029】
ユーザはエンジン動作をスタートさせた後に操作部70からウォッシャ液を加熱する操作を行う。その結果、図6におけるステップS1、S2で示すように、制御回路部503はイグニッション信号の発生の有無と、加熱開始の操作スイッチ(ヒートウォッシャスイッチ)のオン、オフ状態を判定する。エンジンがかかることによりイグニッション信号が発生し操作スイッチがオン状態にあると判定された場合は、制御回路部503はステップS3で示すように外気温度センサー526によってエンジンルーム内の温度T1が85℃以下であるか否かが判別される。
【0030】
エンジンルームは外気温度に対して相対的に高温であるのでT1が85℃以下であれば外気温度が低温であってフロントウィンドウガラスに氷が付着する状態にあると判定し、どのくらいウォッシャ液を加熱すべきか判断する。制御回路部503はステップS4で示すように演算処理によってヒータ502に供給する電力を算出しヒータ502が起動する制御信号を送出し、ステップS5で示すように数秒間ヒータ502を起動運転させる。その後、ステップS6で示すようにヒータ502が定常状態で加熱動作を行なうように制御する。更に、ステップS7で示すようにウォッシャ液供給装置がウォッシャ液を加熱して噴射するための準備中にあることが表示部80に表示される。
【0031】
次に、ステップS8において、出口温度センサー525が流路508の出口におけるウォッシャ液の温度T2を測定し、温度T2が75℃以上であるか否かを判別する。そして、更にステップS9で示すように温度T2が85℃以下であるか否かを判別する。即ち、ステップS8、S9においてウォッシャ液の温度T2が75℃と85℃との間にあるか否かを判別する。
【0032】
噴射されるウォッシャ液が85℃以上であると火傷、ウォッシャ液の変質等の障害を生じる。一方、ウォッシャ液が75℃以下であると解凍することが難しくなる。そこで、ウォッシャ液の温度T2は75℃以上で85℃以下に設定されている。
【0033】
ステップS10で示すように、ウォッシャ液の温度T2が75℃〜85℃にあるとき制御回路部503がウォッシャ液ポンプ30を作動させる。ステップ11においては、ウォッシャ液供給装置がウォッシャ液ポンプを作動させて運転中にあることが表示部80に表示される。
【0034】
次のステップS12において、ユーザによってウォッシャ液供給装置の運転条件が確認されて、操作部70からウォッシャ液噴射の操作スイッチがオンされると、加熱されたウォッシャ液はウォッシャ液ノズル40から噴射される。この噴射は一定量のウォッシャ液を噴射すると停止する。ステップ13においてサイクルを終了するか否かが判別される。一回の噴射を1サイクルとするが、この1サイクルで終了して再び噴射を行なわない場合は、ステップS14で示すように、ウォッシャ液供給装置がウォッシャ液ポンプを停止させて停止中にあることが表示部80に表示される。そして、ステップS15で示すように、ヒータ502による加熱運転を停止する。
【0035】
サイクル動作を終了せず更に噴射を継続する操作を行うと、この操作はステップS13で継続と判別され、ステップS8に戻り、ウォッシャ液が再度噴射されることになる。
【0036】
なお、ステップS8において、流出口510のウォッシャ液温度T2が70℃以下の場合は、ウォッシャ液ポンプ30を作動させることなくヒータ502による加熱を継続する。その結果、流路508内のウォッシャ液は70℃以上に加熱される。
【0037】
また、ステップS9において、流出口510のウォッシャ液温度T2が85℃以上の場合は、ウォッシャ液ポンプ30を作動させることなくステップS8に戻る。その結果、流路508内の高温になっているウォッシャ液は噴射されない。
【0038】
外気温度が低下して流路508内のウォッシャ液が凍結した場合、凍結したウォッシャ液がその体積を増加させようとする。この体積増加による圧力増大によって容積調整機構512を形成するベロフラム514は外方に偏倚する。従って、流路508の容積が増加し、凍結により増大しようとする流路508内の圧力が吸収される。特に、流入口509、流出口510から離れた流路508の中間部分は圧力増大によるケース501への影響が大きくなるが、この中間部の容積が増加するので増大しようとする圧力が吸収されてケース501内壁に大きな圧力が加わらなくなる。
【0039】
また、ベロフラム514が外方に偏倚したときには、これを検出センサー522が検出し、表示部80においてウォッシャ液が凍結状態にあるとして表示する。
【0040】
更に、押え片518はベロフラム514が過大に偏倚することを阻止すると共に、解凍によってベロフラム514が原位置に復帰することを円滑にするよう作用する。
【0041】
尚、容積調整機構512を構成する偏倚板はベロフラム514に限らず、蛇腹517を有しない可撓性部分を有するダイアフラムを適用してもよい。
【0042】
このような実施例1の発明によれば、流路508内のウォッシャ液が凍結してその体積を増したときには、容積調整機構512が流路の容積を増加させるので、流路508の内壁に過大な圧力が加わらない。そのため、流路508を形成する壁が破損してウォッシャ液漏れ等を生じるおそれがなくなる。
【0043】
また、容積調整機構512は、偏倚板であるベロフラム514で構成され、その表面に対向してベロフラム514の偏倚を検出する検出センサー522が設けられている。一方、ウォッシャ液供給装置10は検出センサー522によって検出された流路508内の圧力の増大を表示する表示部80を有している。そのため、流路808内のウォッシャ液が凍結してその体積を増したときには、ベロフラム514が内圧の増大によって外方に偏倚するので、検出センサー522がこれを検出し表示部80が流路808内のウォッシャ液が凍結したことを表示する。従って、ユーザは加熱されたウォッシャ液が得られるまでに時間を要することを確認できる。
【0044】
また、熱伝導率の高い材料からなるケース501の表面には、ヒータ502とFET524とが接して設けられている。そのため、FET524は発生する熱がケース501によって放熱される。そのため、FET524は専用の放熱部材を用意することなく、あるいは通常よりも放熱容量の小さい放熱部材で温度上昇を抑えることができる。
【0045】
また、回路基板504はヒータ502とFET524とを挟んで配置され、この回路基板504上には制御回路部503が搭載されている。そのため、制御回路部503はケース501に対して、ヒータ502、FET524及び回路基板504を介して配置されているので、ケース501から漏水が発生したときに制御回路部503に直接の影響がない。従って、全体の部品を一体化してコンパクトに構成しても装置自体を小型化にしても、制御回路部503が漏水によって故障する事故を回避できる。
【実施例2】
【0046】
図7は、実施例2に係るウォッシャ液供給装置10におけるウォッシャ液加熱装置50であって、流路508内に容積調整機構512を形成する弾性体からなる収縮袋528が配置された構成である。具体的には、収縮袋528は流路508の中間部分に配置されている。そして、収縮袋528は流路508の圧力が増大すると変形して収縮する内圧を維持するボール状になっている。
【0047】
この実施例2におけるウォッシャ液供給装置10によれば、外気温度が低下して流路508内のウォッシャ液が凍結した場合、凍結したウォッシャ液がその体積を増加させようとする。この体積増加による圧力増大によって容積調整機構512を形成する収縮袋528は収縮する。従って、流路508の容積が増加し、凍結により増大しようとする流路508内の圧力が吸収される。特に、流路508の中間部分は圧力増大によるケース501への影響が大きくなるが、この中間部において増大しようとする圧力が吸収されてケース501内壁に大きな圧力が加わらなくなる。
【0048】
また、収縮袋528は凍結状態にあるウォッシャ液が解凍されて体積を減らすと自然に自ずと膨張して元の形状に復帰する。
【0049】
即ち、実施例2のウォッシャ液供給装置10によれば、流路508内に収縮袋528を設けるだけでウォッシャ液が凍結しときに発生する圧力を吸収することができる。そして、この収縮袋508は構成が簡単であるのでコスト的に有利である。
【符号の説明】
【0050】
10 ウォッシャ液供給装置
20 ウォッシャ液タンク
30 ウォッシャ液ポンプ
40 ウォッシャ液ノズル
50 ウォッシャ液加熱装置
60 管路
70 操作部
80 表示部
501 ケース
502 ヒータ
503 制御回路部
504 回路基板
505 外装ケース
506 カバー
507 仕切り版
508 流路
509 流入口
510 流出口
511 開口
512 容積調整機構
513 シール
514 ベロフラム
515 ベロフラムカバー
516 シールドリング
517 蛇腹
518 押え片
519 押えカバー
520 取付けカバー
521 ネジ
522 検出センサー
523 ヒータ押え
524 FET
525 出口温度センサー
526 外気温度センサー
527 保護センサー
528 収縮袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォッシャ液タンクからウォッシャ液ポンプによってウォッシャ液ノズルに送られるウォッシャ液の流路中に設けられ、該ウォッシャ液を加熱するためのウォッシャ液加熱装置において、
前記ウォッシャ液が通過する流路内の圧力が増大したときに該流路の容積を増加させる容積調整手段を設けてなることを特徴とするウォッシャ液加熱装置。
【請求項2】
前記容積調整手段は、前記流路の壁に形成した開口と、該開口を塞ぐように設けられ該流路内の圧力増大によって外方に偏倚する偏倚板とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載のウォッシャ液加熱装置。
【請求項3】
前記容積調整手段は、前記偏倚板の表面に対向して該偏倚板の偏倚を検出する検出手段を有していることを特徴とする請求項2に記載のウォッシャ液供給装置。
【請求項4】
前記容積調整手段は、前記流路内の増大する圧力によって収縮する収縮体から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のウォッシャ液加熱装置。
【請求項5】
前記ウォッシャ液加熱装置は、前記流路を形成する熱伝導率の高い材料からなるケースと、該ケースの表面に接して設けた電力供給によって発熱するヒータと、該ケースの表面に接して設けた該ヒータに供給する電力制御用の制御用素子と、該ヒータと制御用素子とを挟んで該ケース表面に設けた回路基板と、該回路基板上に搭載された該制御用素子を制御する制御回路部とを備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のウォッシャ液加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−184525(P2010−184525A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28400(P2009−28400)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(391043815)サンヨー・オートメディア・センディリアン・バハド (36)
【住所又は居所原語表記】Plot 10,Phase 4,Prai Industrial Estate,13600 Prai,Penag.Malasya
【Fターム(参考)】