説明

ウォブル信号復調方法およびウォブル信号復調装置

【課題】MSK変調されたウォブル信号からアドレス情報を復号する際に、クロストークに起因する疑似同期の検出を小さな回路規模で実現する。
【解決手段】MSKマーク検出部230は、同期信号としてウォブル信号に周期的に設けられたMSKマークを検出する。第1の同期状態判定部260は、MSKマークの検出位置を同期位置とする同期が確立したか同期がはずれているかの判定をする。予測タイミング生成部250は、同期の確立後、同期位置を基にMSKマークが検出されるべきタイミングを周期的に生成する。第2の同期状態判定部270は、MSKマークが周期内における定位置で検出されたことが所定回数連続した後に、MSKマークの検出タイミングと予測タイミングを比較すると共に、検出タイミングと予測タイミング間にずれがあることを条件に同期位置がクロストークに起因する疑似同期位置である判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォブル信号の復調に関し、特にMSK(Minimum Shift Keying)変調されたウォブル復調信号の復調技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光記録ディスク(以下単にディスクともいう)には、DVD±R/RW、DVD−RAM、HDDVD−R/RE/RAM、BD(Blu−ray Disc)−R/RWなどの種々の規格がある。これらのディスクの記録膜には、らせん状の記録トラックに沿ってレーザ光を案内するための溝(グルーブ)が形成されており、この溝はそれぞれの規格で定められた周波数と振幅で蛇行している。
【0003】
グルーブの蛇行をウォブリング(Wobbling)といい、その再生信号はウォブル(Wobble)信号と呼ばれる。ディスクに対して再生または記録動作をする際に、一般的にPLL(Phase Locked Loop)回路により、ウォブル信号をA/D変換して得たデジタルウォブルを規定周波数に逓倍することで基準クロックを生成する。ウォブル信号は、PLL回路により基準クロックを取り出すことを主目的とするため、通常単一周波数の信号であるが、PLLの動作を阻害しない範囲で一部に変調を加えることによって、再生または記録時に必要なディスク上の物理位置を示すアドレス情報をウォブル信号に埋め込むことが行われている。このように変調されたウォブル信号は、ADIP(Address In Pre−Groove)と呼ばれる。
【0004】
ウォブル変調の方式は規格によって様々であり、例えばBDの場合には、MSK(Minimum Shift Keying)と呼ばれる変調方式が用いられる。ここでBDを例にしてMSK変調方式のADIPを詳細に説明する。
【0005】
BDのADIPフォーマットには、ADIPユニット、ADIPワード、RUB(Recording Unit Block)の3つの単位が規定されている。
【0006】
ADIPユニットは、同期信号を識別するための単位であり、1つのADIPユニットは56波(ウォブル)で構成され、1ウォブルは69Tを有する。なお、「T」は、記録または再生動作の最小単位時間であり、前述した基準クロックの1周期に該当する。また、ADIPユニットには、モノトーンウォブル、MSKウォブル、STW(Saw Tooth Wobble)の3種類のウォブルが存在し、これらのウォブルの組み合わせにより、モノトーン、リファレンスユニット、シンク(Sync)ユニット(シンク0ユニット、シンク1ユニット、シンク2ユニット、シンク3ユニット)、データユニット(データ1ユニット、データ0ユニット)の種々のADIPユニットを構成する。
【0007】
図6は、ADIPユニットを示す。図中黒い四角形は、MSKウォブルを示し、白い四角形はMSKウォブル以外のウォブルを示す。図示のように、MSKウォブルは、アナログウォブルのMSK変調された部分(MSK変調部)に対応する。MSK変調方式では、2つの周波数が用いられ、片方は基準キャリア信号と同一の周波数であり、他方は基準キャリア信号の1.5倍の周波数である。すなわち、基準キャリア信号をcos(ωt)とすると、「0」はcos(ωt)またはその反転信号−cos(ωt)となり、「1」はcos(1.5ωt)またはその反転信号−cos(1.5ωt)となる。ADIPにおいては、MSK変調部はcos(1.5ωt)、−cos(ωt)、−cos(1.5ωt)の3キャリア周期区間で構成され、それに対応する3つのウォブルはMSKマークと呼ばれる。
【0008】
なお、モノトーンウォブルは、cos(ωt)のウォブルであり、STWは、「cos(ωt)−(1/4)×sin(2ωt)」または「cos(ωt)+(1/4)×sin(2ωt)」のウォブルである。
【0009】
図6に示すように、各種のADIPユニットの先頭3ウォブル(0〜2キャリア周期目)はMSKウォブルであり、これらのMSKウォブルは、再生または記録時のビット同期をとるための同期信号として機能する。以下の説明において、1つのADIPユニットを構成する56ウォブルを同期ブロックともいう。
【0010】
また、モノトーンユニットとリファレンスユニット以外のADIPユニットには、先頭の3ウォブル以外に、その後もMSKマークが設けられており、それらの位置によって、ADIPユニットの種類を識別することができる。例えば、13〜15個目のウォブル(12〜14キャリア周期目)がMSKマークであるADIPユニットは、アドレス情報のデータビットが「1」であることを示すデータ1ユニットであり、15〜17個目のウォブル(14〜16キャリア周期目)がMSKウォブルであるADIPユニットは、アドレス情報のデータビットが「0」であることを示すデータ0ユニットである。
【0011】
図7は、ADIPワードを示す。ADIPワードはアドレス情報を復号するための単位であり、83個のADIPユニットで構成される。アドレス情報に対する誤り検出および訂正はADIPワード単位で行われる。ADIPワードを構成する83個のADIPユニットのうちの先頭の8個のADIPユニットは、モノトーンユニット、シンク0ユニット、モノトーンユニット、シンク1ユニット、モノトーンユニット、シンク2ユニット、モノトーンユニット、シンク3ユニットであり、これらのADIPユニットを基にADIPワード内のオフセット位置を特定することができる。ADIPワードの9個目からの75個のADIPユニットは4×15ビットのアドレスコードであり、それらを復号することによりディスク上のアドレス情報を得ることができる。
【0012】
図8はRUBを示す。図示のように、RUBは、3つのADIPワードにより構成される。ディスクへのデータの記録はこのRUB単位で行われる。
【0013】
このように、ADIPは複数の同期ブロックで構成され、各同期ブロックの先頭には同期信号が設けられており、アドレス情報は所定の同期ブロック内の、同期信号の位置を基準とする所定の位置に書かれる。このようなADIPに対して、同期信号を検出して同期をとりアドレス情報を復号することが行われている(たとえば特許文献1参照)。
【0014】
アドレス情報の復号は、ウォブル信号から同期信号(MSK変調方式の場合にはADIPユニットの先頭のMSKマーク)を検出し、検出した同期信号の位置を同期位置とする同期が確立した後に、同期位置に基づいてウォブル信号からビット情報を取得してアドレスを生成するように行われる。そのため、正しいアドレス情報を得るためには同期信号の位置を正しく検出することが重要である。
【0015】
同期信号の不正な検出を引き起こす大きな要因は、スピンドル動作に対する外乱やディスクの物理的欠陥と、クロストークが挙げられる。これの要因のうち、前者は偶発性のものであり、以下偶発ノイズという。クロストークは、その詳細については後述するが、数トラック周期で発生するものである。偶発ノイズまたはクロストークの発生期間に同期信号の位置を誤って検出し、それに基づいて同期が確立されてしまうと、アドレス情報のデコードは誤った同期位置に基づいて行われることになるため、正しいアドレス情報を得ることができず、ディスク上の不正な位置に対して記録または再生を行ってしまう問題が生じる。
【0016】
同期信号が周期的に設けられた信号から同期信号の位置を正しく検出する手法について様々な観点から提案されている。
【0017】
例えば、特許文献2には、同期信号を検出すると、次の同期信号は規格によって決められた所定期間後のタイミングに現れるはずであることから、そのタイミングを中心とする一定時間のみに検出窓を設けて、設けられた検出窓内においてのみ同期信号の検出を行う手法が開示されている。こうすることによって、同期信号が現れないはずのタイミングにおいて、ノイズの影響による同期信号の誤検出を防ぐことができる。
【0018】
また、特許文献3には、同期信号検出回路の後段に同期保護回路を設け、同期信号が所定の周期で何回か繰り返されることを確認するとはじめて同期したと判断する後方保護を行った後に同期を確立する手法が開示されている。この手法によれば、同期信号ではないが、たまたま同期信号のパターンと一致した部分の存在やノイズの影響による同期信号の誤検出の確率を抑制することができる。同特許文献には、同期が確立した後は、繰り返し周期の予測タイミングに同期信号が到来しない場合には、すぐに同期はずれとせずに、予測タイミングに到来するはずの同期信号が到来しない回数が所定回数になったときに初めて同期はずれと判断する前方保護の手法も開示されている。この前方保護によれば偶発性ノイズの影響で予測タイミングにたまたま同期信号が検出されなかっただけで同期はずれが判断されてしまうことを避け、システムの処理効率の低下を防ぐことができる。
【0019】
特許文献4には、上記2つの手法を用いたウォブル復調装置が開示されている。このウォブル復調装置に同期判定手段が設けられている。同期判定手段は、同期信号の検出周期毎にウインドウ期間(検出窓)を設け、検出窓内において、MSKマークを判別するための同期信号パターンとウォブル信号とを比較することによって同期信号の検出をする。また、同期判定手段は、検出窓内に同期信号が検出されたことが所定回連続した場合には同期ロックすなわち同期が確率したと判断する一方、検出窓内に同期信号が検出されなかったことが所定回連続した場合には同期はずれと判断する(特許文献4における図1および請求項6)。
【0020】
特許文献5には、MSK変調されたウォブル信号からアドレス情報をデコードする際にクロストークに起因した同期位置のずれを検出する手法が開示されている。ここでまずクロストークが同期位置の検出に与える影響について説明する。
【0021】
図9は、特許文献5における図4であり、従来のウォブル復調回路の一例を示す。MSKマーク区間において、キャリア信号とウォブル信号の周波数および位相が異なるため、この区間のウォブル信号とキャリア信号の乗算出力が負となるはずである。図9に示すウォブル復調回路は、このことを利用して、ウォブル信号とキャリア信号とを乗算し、乗算結果をキャリア周期毎に積算して得た値または乗算結果をローパスフィルタを通過させて得た出力値が負となるところをMSKマークとして検出する。
【0022】
具体的には、光ヘッド402は、光記録媒体(光ディスク)401に光ビームを照射し、光記録媒体401からの反射光量を検出して電気信号を出力する。ウォブル信号検出手段403は、光ヘッド402からの電気信号からウォブル信号を取り出して乗算手段405とキャリア信号生成手段404に出力する。キャリア信号生成手段404は、ウォブル信号からキャリア信号を生成して乗算手段405に出力し、乗算手段405は、ウォブル信号とキャリア信号とを乗算して乗算出力を積算手段406に出力する。また、キャリア信号生成手段404は、キャリア1周期毎にサンプルホールド信号SHを積算手段406に出力する。積算手段406は、サンプルホールド信号SHに応じて、乗算手段405からの乗算出力をキャリア1周期毎に積算し積算結果のS/H値をデコード手段407に出力する。デコード手段407は、積算手段406からのS/H値の正負の符号からアドレス情報を含むデジタル情報を復号する。
【0023】
図10は、図9に示す復調回路によるMSKマークの検出動作のタイミングを示す。図10に示すように、MSKマーク区間において、積算手段406により得られたS/H値が負の値となる。この負の値となる区間は、MSK変調部の逆相部分(−cos(ωt))に当たり、以下MSKマークの位置という。デコード手段407は、それを検出して図示MSK検出信号(MSKパルスともいう)を生成すると共に、MSK検出信号の出力間隔を計測することにより同期をとりアドレス情報をデコードする。
【0024】
ところで、近年、光ディスクの記録密度は上昇の一途を辿っており、ディスク上のトラック間のピッチが狭くなっている。そのため、隣接トラック間でクロストークが発生しやすくなっている。他方、ウォブルはディスク上の内周から外周に向って一定の間隔で刻まれているが、ディスクにおける隣接トラック間の周長差に起因して隣接トラック間のウォブルの位相が少しずつ変化している。したがって、自己トラックのウォブルに隣接トラックのウォブルがクロストーク成分として加わり、ウォブルの検出位置や振幅に影響を与える。
【0025】
図11は、クロストークが図9に示す復調回路による処理への影響を示す。図10に示すように、クロストークがある場合、ウォブル信号の波形が変形するため、MSKパルスの出力位置すなわち検出されたMSKマークの位置が、本来の位置からウォブル単位で前後にシフトする。以下の説明において、検出されたMSKマークの位置をMSKマークの「検出位置」という。
【0026】
アドレス情報の復号はMSKマークの検出位置を基に行われるため、この検出位置が本来の位置からずれると、疑似同期が生じ、図12に示すように、間違ったアドレス情報(アドレスカウンタのカウント値)が生成されてしまう。結果として、記録または再生処理はディスク上の不正な位置に対して行われることが生じる。
【0027】
その一方、クロストーク成分の周期は数トラック周期であり、同期信号となるMSKマークが配置される間隔に対して十分に長いため、クロストークの発生期間において、同一の同期ブロック(BDの場合は56ウォブル)内では、同期信号となるMSKマークと、データを表すMSKマークは同じ方向に同じ量シフトする性格を持つ。特許文献5は、この点を利用して、上記問題を解決できる図13に示すウォブル復調回路を提案している。なお、図13は、特許文献5の図1に該当する。
【0028】
図13に示すウォブル復調回路において、キャリア信号生成手段104は、ウォブル信号検出手段103が検出したウォブル信号に位相同期したキャリア信号cos(ωt)を生成して乗算手段105に出力すると共に、積算器109と積算器116にサンプルホールド信号SH1とSH2をそれぞれ出力する。
【0029】
サンプルホールド信号SH1は、キャリア信号cos(ωt)に対して、その位相が90°および270°のときに出力されるパルス信号であるため、積算器109は、積算区間の長さがキャリア半周期と短く、かつ乗算手段の105の乗算結果が負であるときのみ積算を行う。すなわち、積算器109は、SH1が出力されていないときは負の値のみの積算を行い、SH1が出力されたときは、その時点での積算値をS/H値として出力し、再び0から積算をはじめる。これにより、MSK変調区間において、積算値が5区間連続で突起した値となる。積算値の絶対値は、特に中央の3区間で大きく、その前後は中央の3区間より小さくなるという特徴がある。積算器109を含むMSK検出手段106は、この特徴を示す区間をMSKマークとして検出し、MSK検出信号を出力する。
【0030】
具体的には、MSK検出手段106におけるMSK前検出器114、MSK始端検出器113、MSK中央検出器112、MSK後検出器110は、積算器109から出力された、時系列に連続した5つの区間のS/H値をそれぞれ保持すると共に、保持したS/H値を、サンプルホールド信号SH1の出力タイミング毎にシフトする。パターン検出器115は、これら5つの検出器に保持されたS/H値間の関係は、上述した特徴を満たすときには、MSKマークが検出されたとしてMSK検出信号を出力する。
【0031】
MSK同期検出手段107は、パターン検出器115が出力されるMSK検出信号からMSKマークの位置を検出することにより同期位置を確定し、同期ブロックの先頭を0として同期カウンタをカウントアップする。例えばBDのADIPユニットの同期ブロックの場合、1つの同期ブロックが56ウォブルで構成されるため、MSK同期検出手段107は56キャリア周期をカウントする。なお、MSK同期検出手段107は、同期カウンタの値を、デコード手段108のシフト検出器117に出力する。
【0032】
デコード手段108は、乗算手段105の乗算結果と、MSK同期検出手段107からの同期カウンタとに基づいてアドレス情報をデコードする。キャリア信号生成手段104からのサンプルホールド信号SH2は、キャリア信号cos(ωt)に対して、その位相が0°のときに出力されるパルス信号であり、積算器116は、サンプルホールド信号SH2に応じて、SH2が出力されないときは積算を行い、SH2が出力されたときは、その時点での積算値をS/H値として出力し、再び0から積算をはじめる。そのため、MSKマーク区間においてはS/H値が0以下であり、それ以外の区間においてはS/H値が0以上である。
【0033】
たとえばBDのADIPのデータ1ユニットの場合、1〜3個目のウォブルと13〜15個目のウォブルがMSKウォブルであり、データ0ユニットの場合、1〜3個目のウォブルと15〜17個目のウォブルがMSKウォブルである。これを利用して、同期カウンタが13〜14である区間のS/H値の和から、同期カウンタが16〜17である区間のS/H値の和を減算した値が負であれば「1」、正である「0」としてデコードすることができる。
【0034】
しかし、前述したように、クロストークに起因してウォブル信号が変形したとき、S/H値が負となる区間が前後にシフトすることあり、特にウォブル信号の振幅が小さいときはデコードを誤ることがある。この問題を解決するために、図13に示す復調回路において、デコード手段108のシフト検出器117は、このシフトの有無を検出し、加算器118と加算器119は、シフト検出器117の検出結果に応じて加算する区間をシフトして加算を行う。
【0035】
具体的には、シフト検出器117は、同期カウンタの値が1〜3の区間(ビット同期MSKマーク区間)において、3つのウォブルの符号および絶対値の比較を行うことによってシフトの検出をする。加算器118と加算器119は、シフトが無い場合には、同期カウンタの値が13〜14である区間と、16〜17である区間のS/H値をそれぞれ加算し、減算器120は、加算器118の加算結果から加算器119の加算結果を減算する。
【0036】
一方、シフト検出器117の検出結果が1区間前にシフトしていることを示す場合には、加算器118と加算器119は、同期カウンタの値が13〜14である区間と、15〜16である区間のS/H値をそれぞれ加算し、減算器120は、加算器118の加算結果から加算器119の加算結果を減算する。
【0037】
また、シフト検出器117の検出結果が1区間後にシフトしていることを示す場合には、加算器118と加算器119は、同期カウンタの値が14〜15である区間と、16〜17である区間のS/H値をそれぞれ加算し、減算器120は、加算器118の加算結果から加算器119の加算結果を減算する。
【0038】
なお、判定器121は、減算器120の減算結果が負であれば「1」正であれば「0」としてデジタル情報を得て出力する。
【0039】
図13の復調装置は、このようにして、クロストークに起因してMSKマークの検出位置がずれ疑似同期が生じた場合に、MSKマークの検出位置のずれを検出し、それに応じて、アドレス情報をデコードする際の基準となる同期位置を補正し、補正した同期位置に基づいてアドレス情報をデコードすることにより正確なアドレス情報を得ることができる。
【特許文献1】特開2003−317388号公報
【特許文献2】特開2000−3550号公報
【特許文献3】特開平9−8793号公報
【特許文献4】特開2005−327439号公報
【特許文献5】特開2004−134009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
特許文献4により代表される手法は、後方保護によりMSKマークの誤検出を抑制し、疑似同期状態になることを回避する。また、疑似同期が確立したとしても、同期はずれを判断して再同期をかけることによって正規同期へ移行できる。
【0041】
しかし、前述したように、クロストークは偶発ノイズと異なる、数トラック周期で発生するものである。そのため、この手法では、同期が確立した後において、クロストークの影響で同期はずれの判定がなされ、再同期が頻繁に行われる。再同期をとる期間においてアドレス情報のデコードができず、記録または再生処理もできないので、頻繁な再同期は、システムの処理効率を低下させてしまう。
【0042】
特許文献5に開示された手法の説明時に述べたように、クロストークに起因して疑似同期が生じた際に、同期信号の検出位置のずれを検出して、それに応じて同期位置を補正し、補正した同期位置に基づいてアドレス情報をデコードすることにより、再同期をかけずに正規同期への移行が可能である。すなわち、クロストークに起因する疑似同期を検出できれば、頻繁な再同期を回避することができる。
【0043】
特許文献5に開示された手法は、2つのアプローチから構成される。1つのアプローチは、図13のMSK検出手段106が行うように、積算を行う区間の長さをキャリア半周期と短くし、かつ乗算出力が負のであるのきのみ積算を行うことである。こうすることにより、MSKマークの検出精度を高めることができ、クロストークが発生した場合においても、MSKマークの検出位置のずれを1ウォブル区間に抑制できるとされている。もう1つのアプローチは、デコード手段108におけるシフト検出器117が、MSKマークの検出位置のずれの有無、ある場合には前に1区間のシフトか後ろに1区間のシフトかを検出し、加算器118と加算器119は、シフト検出器117の検出結果に応じて加算対象となるウォブルを変えることによって、アドレス情報を正しくデコードすることである。この手法は、MSKマークの検出位置のずれを抑制することが必要であるため、図13に示す復調装置と比較すると明らかなように、MSKマークの検出を担う回路(MSK検出手段106)の構造が複雑であり、回路規模が大きい。
【課題を解決するための手段】
【0044】
本発明の一つの態様は、ウォブル信号復調方法である。この方法は、MSK変調されたウォブル信号に応じたトラックが形成された光記録ディスクからウォブル信号を読み出し、読み出したウォブル信号から同期信号として周期的に設けられたMSKマークを検出し、検出したMSKマークの検出位置を同期位置として同期を確立する。同期が確立した後、MSKマークの検出を継続すると共に、同期位置を基にMSKマークが検出されるべきタイミングを示す予測タイミングを周期的に生成する。そして、MSKマークが周期内における定位置で検出されたことが所定回数連続した後に、MSKマークが検出されたタイミングと、該タイミングに対応する予測タイミングとの比較を行い、両者間にずれがあることを条件に同期位置がクロストークに起因するクロストーク疑似同期位置として判定する。
【0045】
なお、上記態様のウォブル信号復調方法を装置やシステムとして表現したものも、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0046】
本発明にかかる技術によれば、MSK変調されたウォブル信号からアドレス情報を復号する際に、クロストークに起因する疑似同期の検出を小さな回路規模で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
本発明の具体的な実施の形態を説明する前に、まず本発明の原理について説明する。
本願発明者は、MSK変調されたウォブル信号から同期信号(同期ブロックの先頭のMSKマーク)を検出する際に、クロストークが同期信号の検出位置(MSKマークの中心ウォブルの検出位置)に与える影響について研究模索を重ねた結果、下記のことを知見した。
【0048】
図1において、「×」が同期信号の検出位置を示す。なお、この検出位置は、検出した同期信号が周期内における位置(ウォブル位置)を意味する。図示のように、クロストークが発生していない正常期間において、同期信号の検出位置は常に周期内の定位置(正規位置N)に安定している。そのため、同期信号の検出位置の間隔が一定である。これに対して、クロストークの発生期間においては、同期信号の検出位置は不安定であり、ウォブル単位でばらつく。そのため、同期信号の検出位置の間隔が一定ではない。
【0049】
この特徴は、特許文献4に記載された手法や特許文献5に記載された手法など、同期信号の検出手法にかかわらず認められる。これが生じる原因は、光ディスクの記録密度の上昇によりトラックの配列ピッチが小さくなり、光ディスクから読み出したウォブル信号のS/N比やC/N比が低下する傾向にある背景において、クロストークが発生した際に、ウォブル信号においてウォブル信号の劣化や位相反転が生じやすいことが考えられる。特許文献4に開示された手法のように、ウォブル信号と同期信号パターンを比較してMSKマークを検出する場合は、クロストークの影響で誤差が生じやすく、検出したMSKマークの位置がばらつく。特許文献5に記載された手法の場合も同様であり、これについて図10と図11を参照して説明する。
【0050】
図10は、正常期間において、MSKマークを検出する際の各信号の態様を示しており、図11は、クロストークが発生する期間においてMSKマークを検出する際の各信号の態様を示している。図10と図11における積算値を比較すると分かるように、クロストークの発生期間におけるウォブル信号とキャリア信号の乗算出力の振幅は、正常期間における乗算出力の振幅より小さい。これは、クロストークに起因してウォブル信号が変形するためと考えられる。そのため、S/H値を得る際に誤差が生じやすく、S/H値に基づいて得られたMSKパルスが示すMSKマークの位置もばらついてしまう。
【0051】
本願発明者は、上記知見に基づき、クロストーク疑似同期の判断手法を確立した。具体的には、同期が確立して同期位置が決まった後、同期信号の検出を継続すると共に、同期位置を基に同期信号が検出されるべきタイミングを示す予測タイミングを周期的に生成する。そして、同期位置がクロストークに起因する疑似同期の同期位置(以下クロストーク疑似同期位置という)であるか否かを判定するが、この判定のタイミングを、クロストークが発生していない正常期間内とする。前述したように、クロストーク発生期間において、検出した同期信号のウォブル位置がばらつき、正常期間において、検出した同期信号のウォブル位置が安定する。そのため、本発明にかかる手法は、同期が確立した後に、同期信号が周期内における定位置で検出されたことが所定回数連続した後に、同期位置がクロストーク疑似同期位置であるか否かを判定する。判定の手法としては、同期信号が検出されたタイミングと、該タイミングに対応する予測タイミングとの比較を行い、比較される両者間にずれがあることを条件に同期位置がクロストーク疑似同期位置として判定する。
【0052】
この手法は、正常期間内において、同期位置がクロストーク疑似同期位置であるか否かの判断を行うので、精度の良い判断結果を得ることができる。
【0053】
また、同期信号の検出に当たり、図13に示す復調装置におけるMSK検出手段106のようにMSKマークの検出位置のずれを抑制する工夫を特に加えなくてもよいので、回路規模や装置のコストを抑制することができる。
【0054】
また、図13に示す復調装置のデコード手段108において、シフト検出器117は、同期信号となるMSKマークの3つのウォブルの符号および絶対値の比較を行うことによってシフトの検出をするので、複数の演算器が必要と考えられる。それに対して、本発明にかかる手法は、予測タイミングと同期信号の検出タイミングとを比較し、両者間にずれの有無によりクロストーク疑似同期かの判断をするので、クロストーク疑似同期の判断と、クロストークに起因する同期信号の検出位置のずれ方向およびずれ量(ずれ情報)の取得を同時にできる。したがって、クロストーク疑似同期の判断とずれ量の取得の視点からも、本発明にかかる手法は、図13に示す復調装置の手法より、簡単かつ小さな規模の回路で実現できる。
【0055】
以上の説明を踏まえて、本発明の原理を具現化した装置を説明する。
図2は、本発明の実施の形態にかかるウォブル復調装置200を示す。ウォブル復調装置200は、MSK変調されたウォブル信号を復調するものであり、例としてBDディスクを処理対象とする。
【0056】
図2に示すように、ウォブル復調装置200は、ディスク201にレーザビームを照射してその反射光を受光して読取信号を得る光ピックアップ202と、光ピックアップ202が得た読取信号を増幅する再生アンプ203と、再生アンプ203により増幅された読取信号の波形歪みに起因する符号間干渉を抑制してアナログウォブル信号を得るイコライザ回路212と、イコライザ回路212が得たアナログウォブル信号を整形してパルス信号に変換する波形整形回路214と、VOCなどを用いて波形整形回路214の出力信号からウォブルに同期した基本クロックを生成するPLL回路216と、PLL回路216が得た基本クロックに基づいてアナログウォブル信号をサンプリングしてデジタルウォブル信号(以下単にウォブル信号という)を得る同期検波回路218と、同期検波回路218が得たウォブル信号から同期信号を検出する同期信号検出回路220と、同期信号検出回路の検出結果に基づいて波形整形回路214が得たパルス信号に対してアドレス情報の復号やデータの再生または記録を行う信号処理回路280を備える。
【0057】
同期信号検出回路220は、MSKマーク検出部230と、同期はずれカウンタ242と、同期検出カウンタ244と、安定性判定カウンタ246と、予測タイミング生成部250と、第1の同期状態判定部260と、第2の同期状態判定部270を備える。
【0058】
第1の同期状態判定部260は、その詳細について後述するが、同期はずれカウンタ242と同期検出カウンタ244のカウンタ値に基づいて、同期状態が同期ロック状態、同期はずれ状態のいずれであるかを判定し判定結果をMSKマーク検出部230と信号処理回路280に出力する。
【0059】
MSKマーク検出部230は、ウォブル信号からMSKマークを検出するが、第1の同期状態判定部260の判定結果に基づいて、同期状態に応じた処理を行う。
【0060】
同期ロック状態、すなわち同期が確立し同期位置が決まった状態では、MSKマーク検出部230は、予測タイミング生成部250が生成した予測タイミングに基づき、該予測タイミングを含む所定長さの期間(検出窓)内でMSKマークの検出を行う。検出窓内でMSKマークが検出できた場合には、検出できたことを示す信号を同期はずれカウンタ242、同期検出カウンタ244に出力すると共に、検出タイミングを示す信号S0(以下検出タイミング信号という)を安定性判定カウンタ246に出力する。一方、検出窓内でMSKマークが検出できなかった場合には、検出できなかったことを示す信号を同期はずれカウンタ242、同期検出カウンタ244に出力する。
【0061】
同期はずれ状態では、MSKマーク検出部230は、MSKマークが検出できた時点まですべてのタイミングでMSKマークの検出を行い、MSKマークを検出すると、検出できたことを示す信号を同期はずれカウンタ242、同期検出カウンタ244、予測タイミング生成部250に出力する。その後、予測タイミング生成部250が該信号に基づいて生成された予測タイミングに基づいて検出窓内でMSKマークの検出を行う。
【0062】
なお、MSKマーク検出部230によるMSKマークの検出手法は、特許文献4に記載された、ウォブル信号と同期信号パターンの比較による手法であってもよいし、図9に示す復調装置のように、ウォブル信号とキャリア信号とを乗算して積算し、積算値に基づいてMSKマークを検出する手法のいずれであってもよい。
【0063】
予測タイミング生成部250は、同期が確立した際の同期位置(同期信号の検出位置)を基に、次に同期信号が検出されるべきタイミングを周期的に予測して、予測タイミング信号S1をMSKマーク検出部230、3つのカウンタ、第2の同期状態判定部270に出力する。
【0064】
特許文献4に記載された手法では、クロストーク疑似同期を正規同期として検出することを避けるため、同期信号を検出するための検出窓を小さく設定する必要がある。後に詳細を説明するが、本実施の形態において、MSKマークの検出窓を制限することによりクロストーク疑似同期を正規同期として検出することを避ける必要がない。そのため、MSKマーク検出部230は、特許文献4に記載された手法で用いられる検出窓より大きい検出窓を生成し、クロストーク疑似同期であっても、検出窓内で同期信号が検出できるようにしている。
【0065】
同期はずれカウンタ242は、MSKマーク検出部230からMSKマークが検出できたことを示す信号を受信するとカウンタ値を0にリセットし、MSKマークが検出できなかったことを示す信号を受信するとカウンタ値を+1カウンタアップする。
【0066】
同期検出カウンタ244は、MSKマーク検出部230からMSKマークが検出できなかったことを示す信号を受信するとカウンタ値を0にリセットし、MSKマークが検出できたことを示す信号を受信するとカウンタ値を+1カウンタアップする。
【0067】
第1の同期状態判定部260は、常に同期はずれカウンタ242と同期検出カウンタ244のカウンタ値を監視して、同期状態の判定を行う。具体的には、同期はずれ状態において同期検出カウンタ244のカウンタ値が所定の閾値A(A:2以上の整数)になった場合には同期ロック状態と判断し、同期ロック状態において同期はずれカウンタ242のカウンタ値が所定の閾値B(B:2以上の整数)になった場合には同期はずれと判断する。以下、閾値Aと閾値Bをそれぞれ「同期検出判定閾値」と「同期はずれ判定閾値」という。
【0068】
すなわち、MSKマーク検出部230は同期信号の候補としてMSKマークを検出し、第1の同期状態判定部260は、MSKマークの検出位置に基づいて設定された検出窓内にMSKマークの検出がA回連続したことを条件に同期信号の候補となるMSKマークを真の同期信号として同期ロック状態の判定をして同期を確立させる。そのため、偶発ノイズに起因する疑似同期を回避することができる。また、同期ロック状態においては、検出窓内に同期信号として現れるはずのMSKマークが検出されなかったことがB回続いたことを条件に同期はずれ状態の判定をして再同期をかける。これにより、同期確立後、偶発ノイズの影響で同期がはずれた際に、正規同期への復帰ができる。
【0069】
第2の同期状態判定部270は、同期ロック状態において、確立した同期が正規同期なのかクロストーク疑似同期かを判定するものであり、この判定は、安定性判定カウンタ246のカウンタ値に基づいて今は正常期間であると判断したうえでなされる。
【0070】
安定性判定カウンタ246は、同期ロック状態において、検出されたMSKマークのウォブル位置が一定であるか否かに応じてカウンタ値のリセットまたはカウンタアップをする。具体的には、MSKマーク検出部230からの検出タイミング信号S0と予測タイミング生成部250からの予測タイミングS1に基づいて、今回検出したMSKマークのウォブル位置が前回検出したMSKマークのウォブル位置と同じである場合には+1カウントアップし、同じではない場合にはカウンタ値を0にリセットする。
【0071】
安定性判定カウンタ246のカウンタ値が大きいほど、MSKマークの検出位置が安定していることを表し、カウンタ値が小さいほど、MSKマークの検出位置がばらついて不安定であることを表す。第2の同期状態判定部270は、安定性判定カウンタ246のカウンタ値を監視し、該カウンタ値が所定の閾値Cに到達したことを条件に今は正常期間であると判定する。以下、この閾値Cを「安定性判定閾値」という。
【0072】
第2の同期状態判定部270は、正常期間と判定すると、MSKマーク検出部230がその後に検出したMSKマークの検出タイミングと、予測タイミング生成部250により生成された、該検出タイミングに対応する予測タイミングS1とを比較し、両者が一致であれば、同期が正規同期であり、同期位置が正規同期位置であると判定する。一方、両者が一致しなければ、第2の同期状態判定部270は、同期がクロストーク疑似同期であり、すなわち同期位置がクロストーク疑似同期位置であると判定すると共に、その旨を示す信号と、検出タイミングと予測タイミング間のずれ量およびずれ方向からなるずれ情報を予測タイミング生成部250と信号処理回路280に出力する。
【0073】
予測タイミング生成部250は、第2の同期状態判定部270からクロストーク疑似同期を示す信号を受信すると、ずれ情報に基づいて同期位置を補正し、補正した同期位置に応じて予測タイミングS1を更新する。
【0074】
信号処理回路280では、アドレス情報のデコードやデコード後のデータに対して誤り検出・訂正処理を行う。また、第1の同期状態判定部260にて同期はずれと判定された場合、信号処理回路280では、データ再生または記録などの処理を中止する制御を行う。さらに、同期ロック状態において、第2の同期状態判定部270からクロストーク疑似同期を示す信号を受信すると、ずれ情報に基づいて同期位置を補正し、補正後の同期位置に基づいてアドレス情報を復号する。
【0075】
図3〜図5を参照して、本実施の形態のウォブル復調装置200による処理の流れの具体例を説明する。
【0076】
図3は、正規同期が確立した状態で偶発ノイズが発生した場合のタイミングチャートを示す。なお、分かりやすいように、この例では、クロストークの発生がないとし、安定性判定カウンタ246と第2の同期状態判定部270の処理の説明を省略する。
【0077】
図示のように、ステップ1において、同期検出カウンタ244のカウンタ値が同期検出閾値Aに到達する。そのため、同期状態は第1の同期状態判定部260により同期ロック状態と判定され、同期が確立し同期位置が決まる(ステップ2)。同期位置を基に、予測タイミング生成部250により予測タイミング信号S1が生成され、MSKマーク検出部230と諸カウンタに供される。また、信号処理回路280によるアドレス情報のデコードが開始され、信号処理回路280に備えられた図示しないアドレスカウンタのカウントアップがなされる。
【0078】
同期ロック状態において、偶発ノイズの発生が発生すると、MSKマーク検出部230が検出した同期信号の検出タイミングと、予測タイミングS1との間にずれが生じてしまう(ステップ3)。このようなずれが続いた結果、同期はずれカウンタ242がカウントアップし、やがてそのカウンタ値は同期はずれ判定閾値Bに到達する(ステップ4)。そのため、同期状態は第1の同期状態判定部260により同期はずれ状態に判定される(ステップ5)。
【0079】
同期はずれ状態において、再同期をとるために、MSKマーク検出部230による同期信号の検出が続く。同期信号が連続検出されるのに伴って同期検出カウンタ244がカウントアップし、やがてそのカウント値は同期検出閾値Aに到達する(ステップ6)。そのため、同期状態は第1の同期状態判定部260により同期ロック状態と判定され、同期が再度確立する(ステップ7)。
【0080】
また、これにより偶発ノイズに起因する同期はずれが解消され、正規同期に移る。信号処理回路280は、再同期により得られた新しい同期位置に基づいてアドレス情報をデコードするため、正しいアドレス情報を得ることができる。
【0081】
図4は、クロストーク期間で同期が確立した場合のタイミングチャートを示す。分かりやすいように、この例では、偶発ノイズの発生がないとし、同期はずれカウンタ242と同期検出カウンタ244の処理の説明を省略する。
【0082】
図示のように、クロストーク発生期間において同期が確立した(ステップ1)。そのため、信号処理回路280によるアドレス情報のデコードが開始される。また、予測タイミング生成部250により同期位置に基づく予測タイミングS1の生成も開始される。
【0083】
クロストーク発生期間中には検出された同期信号のウォブル位置がばらつくため、安定性判定カウンタ246のカウンタ値が大きな値にならない。そのため、確立した同期がクロストーク疑似同期であるか否かの判定がなされない。
【0084】
クロストーク発生期間から正常期間に入ると、検出された同期信号のウォブル位置が安定し、安定性判定カウンタ246がカウントアップし、やがてそのカウント値は安定性判定閾値Cに到達する(ステップ2)。このタイミングで第2の同期状態判定部270によりクロストーク疑似同期か正規同期かの判定がなされる(ステップ3)。クロストーク発生期間中に同期が確立したため、ステップ3において、同期信号の検出位置S0と予測タイミング信号間にずれがあることによってクロストーク疑似同期の判定がなされる。なお、ずれ情報が得られ、第2の同期状態判定部270により信号処理回路280に出力される。
【0085】
信号処理回路280は第2の同期状態判定部270からのずれ情報に応じて、同期位置を補正してアドレスをデコードし、正しいアドレス情報を得る。
【0086】
図5は、正常期間で同期が確立した場合のタイミングチャートを示す。この例でも、偶発ノイズの発生がないとし、同期はずれカウンタ242と同期検出カウンタ244の処理の説明を省略する。
【0087】
図示のように、正常期間において同期が確立すると(ステップ1)、信号処理回路280によるアドレス情報のデコードと、予測タイミング生成部250による予測タイミングS1の生成が開始される。
【0088】
その後、クロストーク発生期間に入るが、検出された同期信号のウォブル位置のばらつきにより安定性判定カウンタ246のカウント値が大きくならず、確立した同期がクロストーク疑似同期なのか否かの判定がなされない。
【0089】
クロストーク発生期間が終わり、正常期間に入ると、検出された同期信号のウォブル位置が安定するため安定性判定カウンタ246のカウンタ値が大きくなりやがて安定性判定閾値Cに到達する(ステップ2)。このタイミングで第2の同期状態判定部270によりクロストーク疑似同期か正規同期かの判定がなされる(ステップ3)。正常期間中に同期が確立したため、ステップ3において、同期信号の検出タイミングと予測タイミング間にずれがないことによって正規同期の判定がなされる。
【0090】
本実施の形態のウォブル復調装置200は、前述した本発明の原理を具現化したものであり、原理の説明時に述べた効果を得ることができる。
【0091】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。実施の形態は例示であり、本発明の主旨から逸脱しない限り、さまざまな変更、増減を加えてもよい。これらの変更、増減が加えられた変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の原理説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかるウォブル復調装置を示す図である。
【図3】図2に示すウォブル復調装置による処理の流れを示すタイミングチャートである(その1)。
【図4】図2に示すウォブル復調装置による処理の流れを示すタイミングチャートである(その2)。
【図5】図2に示すウォブル復調装置による処理の流れを示すタイミングチャートである(その3)。
【図6】ADIPユニットの構成を示す図である。
【図7】ADIPワードの構成を示す図である。
【図8】RUBの構成を示す図である。
【図9】従来のウォブル復調装置の例を示す図である(その1)。
【図10】MSK変調マークの検出手法を説明するための図である。
【図11】クロストークがMSK変調マークの検出位置に与える影響を説明するための図である。
【図12】クロストークがアドレス情報のデコードに与える影響を説明するための図である。
【図13】従来のウォブル復調装置の例を示す図である(その2)。
【符号の説明】
【0093】
200 ウォブル復調装置
202 光ピックアップ
203 再生アンプ
212 イコライザ回路
214 波形整形回路
216 回路
218 同期検波回路
220 同期信号検出回路
230 MSKマーク検出部
242 同期はずれカウンタ
244 同期検出カウンタ
246 安定性判定カウンタ
250 予測タイミング生成部
260 第1の同期状態判定部
270 第2の同期状態判定部
S0 同期信号の検出位置
S1 同期信号の検出タイミング
A 同期検出判定閾値
B 同期はずれ判定閾値
C 安定性判定閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MSK(Minimum Shift Keying)変調されたウォブル信号に応じたトラックが形成された光記録ディスクから前記ウォブル信号を読み出し、
読み出した前記ウォブル信号から同期信号として周期的に設けられたMSKマークを検出し、
検出した前記MSKマークの検出位置を同期位置として同期を確立し、
その後、前記MSKマークの検出を継続すると共に、前記同期位置を基に前記MSKマークが検出されるべきタイミングを示す予測タイミングを周期的に生成し、
前記MSKマークが周期内における定位置で検出されたことが所定回数連続した後に、前記MSKマークが検出されたタイミングと、該タイミングに対応する前記予測タイミングとの比較を行い、
前記比較の結果に基づいて、前記タイミングと前記予測タイミング間にずれがあることを条件に前記同期位置がクロストークに起因するクロストーク疑似同期位置であると判定することを特徴とするウォブル信号復調方法。
【請求項2】
前記光記録ディスク上の物理位置を示すアドレス情報であって、前記同期信号の周期内の位置を基準とする位置に設けられた前記アドレス情報を、前記同期位置に基づいて復号し、
前記クロストーク疑似同期位置の判定がなされた際に、前記比較によって得られた前記ずれの方向および量に応じて前記同期位置を補正して正規同期位置を得、該正規同期位置に基づいて前記アドレス情報を復号することを特徴とする請求項1に記載のウォブル信号復調方法。
【請求項3】
MSK(Minimum Shift Keying)変調されたウォブル信号に応じたトラックが形成された光記録ディスクから前記ウォブル信号を読み出す読出部と、
該読出部が読み出した前記ウォブル信号から同期信号として周期的に設けられたMSKマークを検出するMSKマーク検出部と、
該MSKマーク検出部の検出結果に基づいて、前記MSKマークの検出位置を同期位置とする同期が確立した同期ロック状態か、同期がはずれている同期はずれ状態かの判定を行う第1の同期状態判定部と、
同期ロック状態において、前記同期位置を基に前記MSKマークが検出されるべきタイミングを示す予測タイミングを周期的に生成する予測タイミング生成部と、
同期ロック状態において、前記MSKマーク検出部より前記MSKマークを周期内における定位置で検出されたことが所定回数連続した後に、前記MSKマークが検出されたタイミングと、前記予測タイミング生成部が生成した、該タイミングに対応する前記予測タイミングとの比較を行うと共に、比較の結果に基づいて、前記タイミングと前記予測タイミング間にずれがあることを条件に前記同期位置がクロストークに起因するクロストーク疑似同期位置であると判定する第2の同期状態判定部とを備えることを特徴とするウォブル信号復調装置。
【請求項4】
前記光記録ディスク上の物理位置を示すアドレス情報であって、前記同期信号の周期内の位置を基準とする位置に設けられた前記アドレス情報を、前記同期位置に基づいて復号するデコード部をさらに備え、
前記第2の同期状態判定部は、前記クロストーク疑似同期位置の判定がなされた際に、前記比較によって得られた前記ずれの方向および量を示すずれ情報を前記デコード部に出力し、
前記デコード部は、前記第2の同期状態判定部からの前記ずれ情報に応じて前記同期位置を補正して正規同期位置を得、該正規同期位置に基づいて前記アドレス情報を復号することを特徴とする請求項3に記載のウォブル信号復調装置。
【請求項5】
同期ロック状態において、前記MSKマーク検出部により検出した前記MSKマークの今回の検出位置と前回の前記検出位置とが周期内における同一の位置であるときにカウントアップする一方、同一の位置ではないときにカウント値をリセットする安定性判定カウンタをさらに備え、
前記第2の同期状態判定部は、前記安定性判定カウンタのカウント値が所定の閾値に到達した後に、前記同期位置が前記クロストーク疑似同期位置であるか否かを判定することを特徴とする請求項3または4に記載のウォブル信号復調装置。
【請求項6】
前記MSKマーク検出部は、同期ロック状態において、前記予測タイミング生成部が生成した予測タイミングを含む所定長の区間である検出窓内で前記MSKマークの検出を行い、
前記第1の同期状態判定部は、同期ロック状態において、前記MSKマーク検出部が前記検出窓内で前記MSKマークを検出できなかった回数が所定の閾値になったことを条件に前記同期はずれ状態の判定をすることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載のウォブル信号復調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−43301(P2009−43301A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204076(P2007−204076)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】