説明

ウォータージェットピーニング施工方法

【課題】
ウォータージェットピーニングの強制加振振動数を制御すること。
【解決手段】
ウォータージェットピーニングの強制加振振動数は、噴射距離,噴射流量,ノズル径で
変化することを見出したので、ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数に
応じて、ウォータージェットピーニングの噴射距離,噴射流量,ノズル径を選定すること
で、共振を防止できる。
【効果】
本発明によれば、ウォータージェットピーニング施工による施工対象物の共振損傷を防
止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォータージェットおよびキャビテーションの圧壊圧力により材料表面に衝撃力を与え、残留応力を改善または洗浄または表面改質を行うウォータージェットピーニング施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ウォータージェットピーニング法において、ウォータージェットピーニングの効果を高めるために、スタンドオフ距離,噴射圧力あるいは噴射衝突時間を変化させることが、特許文献2には、ウォータージェットピーニング装置において、ウォータージェットピーニングの効果を高めるために、キャビテーション発生時の衝撃パルスを検出して、ノズルと加工対象物の距離やノズルからの噴射圧力の条件設定することが、開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−328855号公報
【特許文献2】特開平6−047668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術は、ウォータージェットピーニング時に発生する強制加振振動で施工対象物が共振する可能性に関して配慮されていなかった。
【0005】
本発明の目的は、ウォータージェットピーニング施工対象物の共振を防止する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、以下のプロセスにより達成される。
(1)ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数とウォータージェットピーニングの強制加振振動数とが異なるようにウォータージェットピーニングを施工し、共振を押さえることで達成される。
(2)ウォータージェットピーニングの強制加振振動数を変えるには、ウォータージェットピーニングのノズルと施工対象物の噴射距離を変えることで達成される。ウォータージェットピーニングの強制加振振動数(Hz)と噴射距離(mm)の関係は、以下の二つの5次多項式近似で予測できる。
【0007】
y=−1E−09x5+1E−06x4−0.0004x3+0.0865x2
−8.8598x+773 …式(1)
y=1E−09x5−9E−07x4+0.0002x3−0.0197x2
−0.0274x+272 …式(2)
ここで、yはウォータージェットピーニングの強制加振振動数を、xはウォータージェットピーニングのノズルと施工対象物の噴射距離を示す。
【0008】
ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数から±10%以上離れたウォータージェットピーニングの強制加振振動数となるような噴射距離条件で、ウォータージェットピーニングを施工すると、応答倍率が低下するため、より共振の発生を防止できる。
【0009】
式(1),(2)において、噴射距離100mm以下の範囲でウォータージェットピーニングの強制加振振動数が大きく変化するので、この領域はウォータージェットピーニングの強制加振振動数の調整性に優れている。また噴射距離20mm未満は、材料表面にエロージョンが発生しやすくなるため実用的でない。従って、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数の調整性に優れ、かつ材料表面へのエロージョンの影響が少ない、噴射距離100mmから20mmの範囲は特に好適である。
【0010】
式(1)において、噴射距離100mmから250mmの間は、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数が、約450Hz一定で、また式(2)においても、噴射距離100mmから250mmの間は、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数が、約200Hz一定となるため、ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数が約200Hzおよび約450Hz以外にある場合は、噴射距離を100mmから250mmの間で選定することで、安定して共振の発生を防止できる。
(3)ウォータージェットピーニングの強制加振振動数を変えるには、噴射流量を変えることで達成される。ウォータージェットピーニングの強制加振振動数(Hz)と噴射流量(L/min)の関係は、以下の二つの線形近似で予測することができる。
【0011】
y=−3.8x+631 …式(3)
y=−4.1x+407 …式(4)
ここで、yはウォータージェットピーニングの強制加振振動数を、xは噴射流量を示す。ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数から±10%以上離れたウォータージェットピーニングの強制加振振動数となるような噴射流量条件で、ウォータージェットピーニングを施工すると、応答倍率が低下するため、より共振の発生を防止できる。
ウォータージェットピーニングの噴射流量が少ないと、1回の施工で応力改善できる幅が小さくなる。一方、噴射流量が多いと1回の施工で応力改善できる幅は大きくなるが、高圧水を噴射するための高圧ポンプが高価になる。従って、1回の施工で得られる応力改善幅が大きく、高圧ポンプが廉価な、噴射流量20L/minから50L/minの間で噴射流量を選定することで、工業的価値を保ちながら、共振の発生を防止できるので、この範囲は特に好適である。
(4)ウォータージェットピーニングの強制加振振動数を変えるには、ウォータージェットピーニングのノズル径を変えることで達成される。ウォータージェットピーニングの強制加振振動数(Hz)とノズル径(mm)の関係は、以下の二つの線形近似で予測することができる。
【0012】
y=−151.3x+755 …式(5)
y=−179x+576 …式(6)
ここで、yはウォータージェットピーニングの強制加振振動数を、xはノズル径を示す。ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数から±10%以上離れたウォータージェットピーニングの強制加振振動数となるようなノズル径の条件で、ウォータージェットピーニングを施工すると、応答倍率が低下するため、より共振の発生を防止できる。ウォータージェットピーニングのノズル径が小さいと、1回の施工で応力改善できる幅が小さくなる。一方、ノズル径が大きいと1回の施工で応力改善できる幅は大きくなるが、高圧水を噴射するための高圧ポンプが高価になる。従って、1回の施工で得られる応力改善幅が大きく、高圧ポンプが廉価な、ノズル径1mmから2mmの間でノズル径を選定することで、工業的価値を保ちながら、共振の発生を防止できるので、この範囲は特に好適である。
【0013】
つまり、本発明のウォータージェットピーニング施工方法は、ウォータージェットおよびキャビテーションの圧壊圧力により材料表面に衝撃力を与え、残留応力を改善または洗浄または表面改質を行うものであって、ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数と、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数とが異なるように、ウォータージェットピーニングを施工することで、共振を避けることを特徴とする。
【0014】
この際、ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数とウォータージェットピーニングの強制加振振動数とが異なるようにする手段として、
(1)ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数に応じて、ウォータージェットピーニングのノズルとウォータージェットピーニング施工対象物との噴射距離を変える、
(2)ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数に応じて、ウォータージェットピーニングのノズルから噴射される噴射流量を変える、
(3)ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数に応じて、ウォータージェットピーニングのノズル径を変える、
こうした手段で、共振を避けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ウォータージェットピーニング施工対象物の共振の可能性を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数を測定する測定装置を示す。
【0017】
荷重を測定するロードセル1に、固定治具2、および、噴射受け板3を取り付ける。これらを水槽6に固定する。高圧ポンプ8で増圧された純水7は、圧力計15で噴射圧力16を計測されるとともに、流量調節弁11,導水チューブ9を通り、噴射ノズル4に供給される。噴射ノズル4には、噴射速度を上げるために小径の穴が設けられており、これをノズル径12と称呼する。噴射ノズル4から噴射された純水7は、ウォータージェット5となって噴射受け板3に衝突する。
【0018】
この衝突により発生する荷重をロードセル1で検出する仕組みとなっている。ロードセル1で検出された荷重データを分析してウォータージェットピーニングの強制加振振動数を評価する。ここで、噴射ノズル4から噴射受け板3までの距離を噴射距離10,噴射ノズル4と噴射受け板3の角度を噴射角度13,噴射ノズル4から噴射されるウォータージェット5の流量を噴射流量14,圧力計15で計測される圧力を噴射圧力16とする。測定の主な仕様を以下に示す。
【0019】
・ロードセル定格容量:±10kN
ウォータージェットピーニングで発生する荷重値より十分に大きく設定。
【0020】
・ロードセル固有振動数:21kHz
ロードセルの固有振動数が低い場合、ロードセル自体が、ウォータージェットピーニ ングの強制加振振動数と共振する可能性があるので、ウォータージェットピーニング の強制加振振動数より十分大きい固有振動数に設定。
【0021】
・測定周波数:4096Hz
ウォータージェットピーニングの強制加振振動数が十分計測できるように、ウォータ ージェットピーニングの強制加振振動数の約10倍に設定。
【0022】
・測定時間:噴射後10秒後から10秒間
振動特性が安定した後測定するように設定。
【0023】
また、水中に入る計測系は全て防水処理が施されている。
【0024】
図2には、ノズル径12:2mm,噴射流量14:48L/min,噴射距離10:150mm,噴射角度13:90°,噴射圧力16:70MPaの条件で得られた荷重データの周波数分析結果を代表例として示す。この周波数分析結果は得られたデータを高速フーリエ変換して求めたものである。
【0025】
図2より、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数は、約200Hzと約450Hzにあることが判った。従って、ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数が、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数と一致する場合は、共振が発生する場合があることが判った。
【0026】
図3には、ノズル径12:2mm,噴射流量14:48L/min,噴射角度13:90°,噴射圧力16:70MPaで噴射距離10を10mm〜300mmの範囲でパラメータとした場合の、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数の変化を示した。図3より、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数は、噴射距離10に応じて変化することが判った。
【0027】
図4には、図3のデータをもとに、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数と噴射距離10の関係を近似性に優れる5次の多項式で近似した近似曲線および近似式を示した。この近似式よりウォータージェットピーニングの強制加振振動数と噴射距離10の関係は、下式で示されることが判った。
【0028】
y=−1E−09x5+1E−06x4−0.0004x3+0.0865x2
−8.8598x+773 …式(1)
y=1E−09x5−9E−07x4+0.0002x3−0.0197x2
−0.0274x+272 …式(2)
ここで、yはウォータージェットピーニングの強制加振振動数(Hz)を、xはウォータージェットピーニングのノズルと施工対象物の噴射距離(mm)を示す。
【0029】
従って、ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数と、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数が一致する場合は、共振が発生する場合があるため、ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数を、あらかじめ測定や解析で求め、それと異なるように式(1),式(2)より噴射距離10を選定することで、施工対象物の共振を防止できる。また、ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数から±10%以上離れたウォータージェットピーニングの強制加振振動数となるような噴射距離条件で、ウォータージェットピーニングを施工すると、応答倍率が低下するため、より共振の発生を防止できる。
【0030】
式(1),(2)において、噴射距離100mm以下の範囲でウォータージェットピーニングの強制加振振動数が大きく変化するので、この領域はウォータージェットピーニングの強制加振振動数の調整性に優れている。また噴射距離20mm未満は、材料表面にエロージョンが発生しやすくなるため実用的でない。従って、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数の調整性に優れ、かつ材料表面へのエロージョンの影響が少ない、噴射距離100mmから20mmの範囲は特に好適である。
【0031】
式(1)において、噴射距離100mmから250mmの間は、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数が、約450Hz一定で、また式(2)においても、噴射距離100mmから250mmの間は、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数が、約200Hz一定となるため、ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数が約200Hzおよび約450Hz以外にある場合は、噴射距離を100mmから250mmの間で選定することで、安定して共振の発生を防止できる。
【0032】
上述の結果を得るための本発明の第一の実施例のウォータージェットピーニングの方法を図5を用いて示す。本実施例のウォータージェットピーニング方法は沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器17内に位置するコアシュラウド18等に適用される。コアシュラウド18は原子炉圧力容器17内に設置されている。
【0033】
原子炉圧力容器17と、原子炉圧力容器17の上に配置された原子炉ウェル19は冷却水で満たされている。ウォータージェットピーニング装置20は、噴射ノズル4,高圧ポンプ8,導水チューブ9、および流量調節弁11を有する。噴射ノズル4は導水チューブ9によって高圧ポンプ8に接続されている。流量調節弁11は導水チューブ9に取り付けられる。噴射ノズル4は、図1のノズル4と同様の構成を有する。
【0034】
高圧ポンプ8と、圧力計15は、原子炉ウェル19の上のオペレーションフロア21に設置される。コアシュラウド18にウォータージェットピーニングが実施される際、マニピュレータ(図示せず)に取り付けられた噴射ノズル4は、マニピュレータによりコアシュラウド18の中に入れられ、コアシュラウド18の冷却水中に浸される。噴射ノズル4の噴出口をコアシュラウド18に向ける。本実施例では噴射ノズル4およびコアシュラウド18を140mm離して配置した。
【0035】
高圧ポンプ8を立ち上げ、高圧ポンプによって加圧された純水を導水チューブ9を通して噴射ノズル4に注入し、加圧された純水を噴射ノズル4の噴出口よりコアシュラウド18の内面に噴射する。噴射ノズル4から噴射されたウォータージェットはコアシュラウド18の内面に衝突させる。この際ウォータージェット5に含まれていた気泡は衝撃波を発生させる。
【0036】
衝撃波はコアシュラウド18の内面に衝突し、コアシュラウド18の内面に衝撃を与え、コアシュラウド18の内面の少なくとも一部に圧縮残留応力を発生させる。噴射ノズル4とコアシュラウド18の内表面との間の距離Lにより、コアシュラウド18中のウォータージェットピーニングで発生する強制加振振動数は、コアシュラウド18の固有振動数と異ならせることが可能である。従って、コアシュラウド18において、共鳴の発生を防ぐことが可能となる。
【0037】
図6には、ノズル径12:2mm,噴射距離10:150mm,噴射角度13:90°で、噴射圧力16を調整し、噴射流量14を20L/min〜48L/minの範囲でパラメータとした場合の、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数の変化を示した。図6より、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数は、噴射流量14に応じて変化することが判った。
【0038】
図7には、図6のデータをもとに、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数と噴射距離10の関係を線形近似で近似した近似曲線および近似式を示した。この近似式よりウォータージェットピーニングの強制加振振動数と噴射流量14の関係は、下式で示されることが判った。
【0039】
y=−3.8x+631 …式(3)
y=−4.12x+407 …式(4)
ここで、yはウォータージェットピーニングの強制加振振動数(Hz)を、xは噴射流量(L/min)を示す。
【0040】
従って、ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数と、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数が一致する場合は、共振が発生する場合があるため、ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数を、あらかじめ測定や解析で求め、それと異なるように式(3),式(4)より噴射流量14を選定することで、施工対象物の共振を防止できる。また、ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数から±10%以上離れたウォータージェットピーニングの強制加振振動数となるような噴射流量条件で、ウォータージェットピーニングを施工すると、応答倍率が低下するため、より共振の発生を防止できる。
【0041】
ウォータージェットピーニングの噴射流量が少ないと、1回の施工で応力改善できる幅が小さくなる。また、噴射流量が多いと1回の施工で応力改善できる幅は大きくなるが、高圧水を噴射するための高圧ポンプが高価になる。従って、1回の施工で得られる応力改善幅が大きく、高圧ポンプが廉価な、噴射流量20L/minから50L/minの間で噴射流量を選定することで、工業的価値を保ちながら、共振の発生を防止できるので、この範囲は特に好適である。
【0042】
図5を用いて、上記第二の実施例のウォータージェットピーニングの実施について説明する。本実施例では、噴射ノズル4より噴出される純水の流量Q、すなわち、ウォータージェット5の流量Qは流量調節弁11によって調整される。本実施例では噴射される流量は48L/分とした。本実施例では、実施例1と同様にコアシュラウド18の表面の少なくとも一部に圧縮残留応力を与える。噴射される流量Qにより、コアシュラウド18中でウォータージェットピーニングで発生する強制加振振動数はコアシュラウド18の固有振動数と異ならせることが可能である。従って、コアシュラウド18において、共振の発生を防ぐことが可能となる。
【0043】
図8には、噴射距離10:150mm,噴射角度13:90°,噴射圧力16:70MPa,ノズル径12を1mm〜2mmの範囲でパラメータとした場合の、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数の変化を示した。尚、噴射流量14はノズル径12により変化し、ノズル径が小さくなると減少する。図8より、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数は、ノズル径12に応じて変化することが判った。
【0044】
図9には、図8のデータをもとに、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数とノズル径12の関係を線形近似で近似した近似曲線および近似式を示した。この近似式よりウォータージェットピーニングの強制加振振動数とノズル径12の関係は、下式で示されることが判った。
【0045】
y=−151.3x+755 …式(5)
y=−179x+576 …式(6)
ここで、yはウォータージェットピーニングの強制加振振動数(Hz)を、xはノズル径(mm)を示す。
【0046】
従って、ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数と、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数が一致する場合は、共振が発生する可能性があるため、ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数を、あらかじめ測定や解析で求め、それと異なるように式(5),式(6)よりノズル径12を選定することで、施工対象物の損傷を防止できる。また、ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数から±10%以上離れたウォータージェットピーニングの強制加振振動数となるようなノズル径条件で、ウォータージェットピーニングを施工すると、応答倍率が低下するため、より共振の発生を防止できる。
【0047】
ウォータージェットピーニングのノズル径が小さいと、1回の施工で応力改善できる幅が小さくなる。また、ノズル径が大きいと1回の施工で応力改善できる幅は大きくなるが、高圧水を噴射するための高圧ポンプが高価になる。従って、1回の施工で得られる応力改善幅が大きく、高圧ポンプが廉価な、ノズル径1mmから2mmの間でノズル径を選定することで、工業的価値を保ちながら、共振の発生を防止できるので、この範囲は特に好適である。
【0048】
図5を用いて、上記第三のウォータージェットピーニングの実施例について説明する。本実施例のウォータージェットピーニング装置20は、内径2.0mmの噴出口の噴射ノズル4を有する。第一の実施例同様に、噴射ノズル4を使用しウォータージェットピーニングを行い、コアシュラウド18の少なくとも一部の表面に圧縮残留応力を与える。噴射口の内径により、ウォータージェットピーニングで発生する強制加振振動数はコアシュラウド18の固有振動数と異ならせることが可能である。従って、コアシュラウド18において、共振の発生を防ぐことが可能となる。
【0049】
以上、本形態によれば、ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数と、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数を異なるように施工することで、ウォータージェットピーニング施工対象物の共振の可能性を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、原子力機器をはじめとしたウォータージェットおよびキャビテーションの圧壊圧力により材料表面に衝撃力を与え、残留応力を改善または洗浄または表面改質を行う必要のある機器に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】ウォータージェットピーニングの強制加振振動数を測定する測定装置である。
【図2】ウォータージェットピーニングの強制加振振動数測定結果を周波数分析した代表例である。
【図3】噴射距離を10mm〜300mmの範囲でパラメータとした場合の、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数の変化を示した結果である。
【図4】図3の結果を5次式の近似式で示した結果である。
【図5】沸騰水型原子炉への適用例を示す図である。
【図6】噴射流量を20L/min〜48L/minの範囲でパラメータとした場合の、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数の変化を示した結果である。
【図7】図6の結果を線形の近似式で示した結果である。
【図8】ノズル径を1mm〜2mmの範囲でパラメータとした場合の、ウォータージェットピーニングの強制加振振動数の変化を示した結果である。
【図9】図8の結果を線形の近似式で示した結果である。
【符号の説明】
【0052】
1 ロードセル
2 固定治具
3 噴射受け板
4 噴射ノズル
5 ウォータージェット
6 水槽
7 純水
8 高圧ポンプ
9 導水チューブ
10 噴射距離
11 流量調節弁
12 ノズル径
13 噴射角度
14 噴射流量
15 圧力計
16 噴射圧力
17 原子炉圧力容器
18 コアシュラウド
19 原子炉ウェル
20 ウォータージェットピーニング装置
21 オペレーションフロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォータージェットおよびキャビテーションの圧壊圧力により材料表面に衝撃力を与え
、残留応力を改善または洗浄または表面改質を行うウォータージェットピーニング施工方
法において、
ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数と、ウォータージェットピーニ
ングの強制加振振動数とが異なるように、ウォータージェットピーニングを施工すること
で、共振を避けることを特徴とするウォータージェットピーニング施工方法。
【請求項2】
請求項1のウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数とウォータージェッ
トピーニングの強制加振振動数とが異なるようにする手段として、
ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数に応じて、ウォータージェット
ピーニングのノズルとウォータージェットピーニング施工対象物との噴射距離を変え、共
振を避けることを特徴とするウォータージェットピーニング施工方法。
【請求項3】
請求項1のウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数とウォータージェッ
トピーニングの強制加振振動数が異なるようにする手段として、
ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数に応じて、ウォータージェット
ピーニングのノズルから噴射される噴射流量を変え、共振を避けることを特徴とするウォ
ータージェットピーニング施工方法。
【請求項4】
請求項1のウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数とウォータージェッ
トピーニングの強制加振振動数が異なるようにする手段として、
ウォータージェットピーニング施工対象物の固有振動数に応じて、ウォータージェット
ピーニングのノズル径を変え、共振を避けることを特徴とするウォータージェットピーニ
ング施工方法。
【請求項5】
請求項2のウォータージェットピーニング施工方法において、
前記噴射距離を20mmから100mmの間で選定することを特徴とするウォータージェットピーニング施工方法。
【請求項6】
請求項3のウォータージェットピーニング施工方法において、
前記噴射流量を20L/minから50L/minの間で選定することを特徴とするウォータージェットピーニング施工方法。
【請求項7】
請求項4のウォータージェットピーニング施工方法において、
前記ノズル径を1mmから2mmの間で選定することを特徴とするウォータージェットピーニング施工方法。
【請求項8】
施工対象物の材料表面にウォータージェットおよびキャビテーションの圧壊圧力により衝撃を与え、施工対象物の残留応力の改善,洗浄,表面改質の少なくともいずれかを行うウォータージェットピーニング施工方法において、
前記施工対象物は、200Hzまたは450Hz以外の固有振動数を有し、
ウォータージェットピーニングのノズルとウォータージェットピーニング施工対象物との間の噴射距離を100mmから250mmの間で選定したことを特徴とするウォータージェットピーニング施工方法。
【請求項9】
ウォータージェットまたはキャビテーションにより施工対象物の材料表面の残留応力の改善,洗浄,表面改質の少なくともいずれかを行うウォータージェットピーニング施工方法において、
前記ウォータージェットの強制加振振動数を、前記施工対象物の固有振動数と異なるように設定することを特徴とするウォータージェットピーニング施工方法。
【請求項10】
請求項9に記載されたウォータージェットピーニング施工方法において、
前記ウォータージェットのノズルと、前記施工対象物の距離を20mmから100mmの間で選定することを特徴とするウォータージェットピーニング施工方法。
【請求項11】
請求項9に記載されたウォータージェットピーニング施工方法において、
前記ウォータージェットの噴射流量を20L/minから50L/minの間で選定することを特徴とするウォータージェットピーニング施工方法。
【請求項12】
請求項9に記載されたウォータージェットピーニング施工方法において、
前記ウォータージェットのノズル径を1mmから2mmの間で選定することを特徴とするウォータージェットピーニング施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−72904(P2009−72904A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211276(P2008−211276)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】