説明

ウレアウレタン組成物

【課題】手作業で塗り付けできるウレアウレタン樹脂組成物で、物性を落とすことなく、乾燥性を良くするウレアウレタン樹脂組成物の提供である。
【解決手段】分子内に芳香環を有するアミン化合物と末端イソシアネートプレポリマーで構成される手塗り可能なウレアウレタン樹脂組成物にトルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等のアルキルベンゼンを使用することで、物性低下がなく、乾燥性を速め、塗材では重ね塗り等の工程で大幅な工程時間短縮となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレアウレタン樹脂の乾燥性に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウレア樹脂系は反応の速さから、衝突混合型の機械吹付けでの作業が一般的であり、低温硬化・乾燥性は課題となっていなかった。一方、機械で施工できない等により手作業で塗布するには芳香族アミンを用いたウレア樹脂があるが、可使時間と乾燥性を両立できず、乾燥性を求めると可使時間が犠牲となり、作業性に問題があった。
【0003】
ポリアルキレンエーテルアミノベンゾエートの一部であるポリアルキレン基がテトラヒドロフランと3メチルテトラヒドロフランのランダム共重合体から得られるポリアルキレンエーテルポリアミンであり、ポリイソシアネート化合物、又は、末端イソシアネートプレポリマーと反応させ、ポリウレア又はポリウレタンウレア樹脂を製造で、低温液状性を有する、ポリアルキレンエーテルポリアミンを使用することにより、低温混合、常温硬化を可能とし、作業性及び樹脂の物性が改良されたポリウレア、あるいはポリウレタンウレアのエラストマーが得られることが開示されている。(特許文献1)
【0004】
末端イソシアネートプレポリマー、芳香族アミン、親水性シリカ及び硬化促進剤を含み、この硬化促進剤が1,8‐ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン‐7のギ酸塩若しくはパラトルエンスルホン酸塩及び1,5‐ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン‐5のギ酸塩若しくはパラトルエンスルホン酸塩、いずれかの塩であるウレアウレタン樹脂組成物で良好な揺変性が得られ、可使時間の確保、硬化時間の促進、作業性の改善ができる。(特許文献2)
【0005】
末端イソシアネートプレポリマーと芳香族アミンとを含むウレアウレタン樹脂組成物であって、末端イソシアネートプレポリマーを合成するためのポリオールの分子量が1000〜3000であり、主鎖にカルボニル基を有するポリオールがポリオール中の50〜80重量%配合されるウレアウレタン樹脂組成物で作業で扱うことができる可使時間の確保が容易で、硬化時間が速く、作業性が良好である。(特許文献3)
【0006】
分子量1000〜4000の2官能ポリオール60〜90重量部と分子量500〜3000の3官能ポリオールを40〜10重量部混合したポリオールとイソシアネート化合物からなる末端イソシアネートプレポリマーと、芳香族アミンとを含むことを特徴とするウレア樹脂組成物で手塗りが可能なもので、ウレア樹脂組成硬化物は常態強度を有し、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性がよく、機械強度保持できることが開示されている。(特許文献4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−271640号公報
【特許文献2】特願2008−091060号
【特許文献3】特願2008−082404号
【特許文献4】特開2009−91414号公報
【特許文献5】特開平1−121380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする課題は、手作業で塗り付けできるウレアウレタン樹脂組成物で、物性を落とすことなく、乾燥性を良くするウレアウレタン樹脂組成物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、手塗り可能なウレアウレタン組成物であってアルキルベンゼンを含むことを特徴とするウレアウレタン組成物で可使時間を保ち、乾燥性を速くすることができる。
【0010】
請求項2の発明は、使途が塗材であることを特徴とする請求項1に記載のウレアウレタン組成物で剥落防止のための塗布の作業時間の短縮ができ、重ね塗りする場合は工程を短縮できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、樹脂組成物の大幅な変更することなく、物性も変わらずに、乾燥性を改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で言う手塗り施工可能なウレアウレタン樹脂組成物は、末端イソシアネートプレポリマーと芳香族アミンを主とするアミン化合物とその他成分としては目的に応じた添加物などから構成される。本発明の効果を有するアルキルベンゼン化合物は希釈効果と乾燥性向上効果を有する。
【0013】
手塗り施工可能とは目的に応じた樹脂組成物において、実際の塗布、塗付作業ができることを言う。前記、末端イソシアネートプレポリマー、アミン化合物及び添加物で、可使時間は変化させることができるが、架橋度、強度、粘性などが変化するため、大幅な変更は難しい。乾燥を速めるには触媒もあるものの、水分との反応も促進されるため、適した触媒を究明するのは容易ではない。本発明はこれらの欠点がなく、反応基を有しないアルキルベンゼン化合物を配合することで希釈効果を有したまま、塗膜の乾燥性を速める発明に至った。
なお、手塗り施工可能の目安として樹脂組成物の配合初期粘度から2倍の粘度に至る時間で概略把握できる。施工現場では100m以上の面積が多く、そのうち剥落防止の施工現場は作業環境としては恵まれていない。攪拌・混合時間に5分程度は要し、例えば 可使時間10分であると残りの5分で鏝での塗り付けでは2m程度であり、これが施工面積で繰り返され、施工性と樹脂ロスに繋がり、最低15分は必要となる。本発明の手塗り施工可能はこの可使時間15分以上を言う。
ウレアウレタン樹脂組成物は温度依存性が有り、低温では粘度が高く、可使時間が長くなり、高温では粘度が下がり、可使時間が短くなり、一般には、夏用、冬用等配合を変えて施工温度に対応する。本発明はこれらの温度変化に対応させる有用な手段となる。
【0014】
ウレアウレタン樹脂
本発明のウレアウレタン樹脂は下記末端イソシアネートプレポリマーとアミン化合物を当量比で アミン:イソシアネート=0.5〜0.99:1.0の範囲で混合することで得られる。好ましくは0.6〜0.8:1.0が良好な機械強度が得られる。
【0015】
末端イソシアネートプレポリマー
2官能、3官能のポリオールを混合したものと通常ポリウレタンエラストマー製造に使用されているポリイソシアネートとの反応によって得られる。
ポリオールの種類はポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール、ひまし油変性ポリオールなどが上げられ、いずれの種類のものでも範囲内の分子量のものであれば2種類以上混合して使用しても良い。
分子量1000〜4000、好ましくは分子量1500〜2500の2官能ポリオールと、分子量500〜3000好ましくは分子量700〜2000の3官能のポリオールを、2官能:3官能=60〜90:40〜10で混合し、2つ以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と反応させ末端イソシアネートプレポリマーとする。前記ポリオールは2官能、3官能とも所定の分子量より小さいと増粘し、手作業を難しくし、また大きいと硬化までの時間を要することとなる。
【0016】
前記末端イソシアネートプレポリマーに用いるイソシアネート化合物は通常ポリウレタンエラストマー製造に使用されているイソシアネート化合物でよく、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート、トリス(6−イソシアネートヘキシル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートの付加体、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)及びこれら2,4−TDIと2,6−TDIの混合物、2,4−トリレンジイソシアネートの二量体、キシレンジイソシアネート(XDI)、メタキシリレンジイソシアネート(MXDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ビフェニルジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジトルエン−4,4′−ジイソシアネート(TODI)、ジアニシジンジイソシアネート(DADI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート(TTI)等があげられる。
カルボジイミド変性MDIは末端イソシアネートプレポリマーの低温での保存安定性を向上させ、また、組成物の粘度を下げる効果があり、適宜配合する。カルボジイミド変性MDIの市販品としてルプラネートMM−103(BASFINOACポリウレタン(株)、商品名、カルボジイミド変性MDI、NCO含有率29〜30%)がある
【0017】
アミン化合物
本発明に用いるアミン化合物は、分子内に芳香環を有することを特徴とし、特に芳香環とアミノ基が直接結合しているアミン化合物単独または主成分とし、硬化性を上げるため、手塗り施工可能な範囲の可使時間まで、反応性の高いアミンを配合したものである。反応性の高いアミンを使用すると粘度変化、硬化物性が劣るため、芳香環とアミノ基が直接結合しているアミン化合物単独が最も好ましい。前記アミン化合物として、特許文献5に記載されるジアミノジフェニルエーテル系芳香族ポリアミンがあげられる。市販品にエラスマー1000P(イハラケミカル工業(株)、商品名)、VERSALINKP−1000(エアプロダクツジャパン(株)、商品名)、ポレアSL−100A(イハラケミカル工業(株)、商品名)等がある。さらに特許文献1に示すものは結晶化し難く作業上好ましい。
【0018】
アルキルベンゼン化合物
本発明で使用するアルキルベンゼン化合物は希釈剤としての効果と乾燥性を速めることかできる。
アルキルベンゼン化合物としては、1核のベンゼン環にアルキル基を有するもので、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、クメン、2エチルヘキシルベンゼン等を上げることができ、中でもトルエン、キシレン、トリメチルベンゼンが好ましい。ウレアウレタン樹脂組成物100重量部に対して 10〜20重量部配合することができる。
その他の希釈剤としては、本発明の乾燥効果を阻害しない範囲で使用できる。ジオクチルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸‐ジ‐イソノニルのアジピン酸エステル系可塑剤、フェニルキシリルエタン、ジイソプロピルナフタレン、ナフサン等の溶剤が挙げられる。
【0019】
その他添加剤
物性向上と作業性調整、塗材・接着剤の粘度調整、揺変性付与等のために充填剤を使用することがある。重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム、珪酸アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、カーボンブラック、硅砂、クレー、微粉末シリカなどが例として挙げられる。強度をあけ、発泡がし難い充填剤としてはクレー、タルク、水酸化アルミニウム等が好ましく、カップリング剤併用で強度を上げることができ、中でもエポキシシラン系のカップリング剤が好ましい。また、一般に用いられている消泡剤、接着助剤、老化防止剤、安定剤などの添加剤を必要に応じて含有使用することができる。なお、硬化を促進させる触媒としてはウレタン反応を促進する汎用の触媒を用いることができる。
【0020】
以下 手塗り施工可能なウレアウレタン樹脂組成物例として 下記プレポリマーAとポレアSL−100Aとし、実施例・比較例をあげて 本発明の効果を記す。
プレポリマーA
アデカポリエーテルP−1000((株)ADEKA、商品名、ポリプロピレンポリオール、分子量1000、2官能、水酸基価110)を34.4重量部、アデカポリエーテルG−1500((株)ADEKA、商品名、ポリプロピレングリコール、分子量1500、3官能、水酸基価109)を8.6重量部混合し、ミリオネートMT(日本ポリウレタン(株)、商品名、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、NCO33.6重量%)を34.9重量部、ルプラネートMM−103を22.1重量部加え窒素雰囲気下80℃で3時間混合攪拌し、プレポリマーAを合成した。
【実施例1】
【0021】
プレポリマーAを90重量部に対して トルエンを35重量部配合し、ポレアSL−100Aを100重量部配合して、実施例1の組成物とした。
【実施例2】
【0022】
実施例1のトルエンをキシレンに変えた以外同じで実施例2の組成物とした。
【実施例3】
【0023】
実施例1のトルエンを1,3,5トリメチルベンゼンに変えた以外同じで実施例3の組成物とした。
【実施例4】
【0024】
実施例1のトルエンを1,2,4トリメチルベンゼンに変えた以外同じで実施例4の組成物とした。
【実施例5】
【0025】
実施例1のトルエンをシェルゾールA(シェルケミカルジャバン(株)、商品名、トリメチルベンゼン・ナフサン混合溶剤)に変えた以外同じで実施例5の組成物とした。
【0026】
比較例1
実施例1のトルエンを無添加にした以外同じで比較例1の組成物とした。
【0027】
比較例2
実施例1のトルエンをKMC−113(呉羽化学工業(株)、商品名、ジイソプロピルナフタレン)にした以外同じで比較例2の組成物とした。
【0028】
比較例3
実施例1のトルエンをW−242(DIC(株)、商品名、DINA、アジピン酸ジイソノニルエステル)にした以外同じで比較例3の組成物とした。
【0029】
【表1】

【0030】
指触乾燥:23℃相対湿度50%及び5℃相対湿度50%下で実施例・比較例の組成物を30秒間攪拌した後、50mm×50mm×2mmの型に流し込み、30分毎に表面を指で押し、指紋がつかなくなる時間を指触乾燥とした。
可使時間:23℃環境下で30秒攪拌した後、BM粘度計のローターNo.4により混合粘度を測定し、初期粘度の2倍となる時間を可使時間とし、15分未満を×とし、15分以上のものを○とした。
引張物性:23℃環境下で実施例・比較例の組成物を30秒攪拌した後、100mm×150mm×2mmの型に流し込み、7日間静置し、ダンベル2号で打ち抜き、JIS K6251に準拠した方法で引張測定を行った。その際、比較例1を基準とし、それより1〜4MPa引張応力が低下する場合を△、4MPaより大きく低下する場合を×、基準より1Mpa未満であれば○とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手塗り可能なウレアウレタン組成物であってアルキルベンゼンを含むことを特徴とするウレアウレタン組成物。
【請求項2】
使途が塗材であることを特徴とする請求項1に記載のウレアウレタン組成物。

【公開番号】特開2011−80004(P2011−80004A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234940(P2009−234940)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】