説明

ウレイド基を有する化合物の製造方法

【課題】イソシアネートを製造する際の中間体として有用なウレイド基を有する化合物を、従来の製造方法にあったような副生物を生成することなく、高収率・高純度で得る。
【解決手段】式(1)の有機第1アミンと、尿素とを、式(2)の芳香族ヒドロキシ化合物の存在下でウレイド化反応する、ウレイド基を有する化合物の製造方法。


式(1):R1は炭素数1〜35の炭素原子の有機基、aは1〜10


式(2):Aは炭素数6〜50の炭素原子を含み、芳香族環を含有する有機基。該有機基は、b個の芳香族性ヒドロキシ基で置換され、bは1〜3。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレイド基を有する化合物の新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記式(3)で表されるウレイド基を有する化合物は、ポリウレタンフォーム、塗料、接着剤に用いられるイソシアネートの中間原料として有用である。
【0003】
式(3):
【化1】


(式(3)中、Rは有機基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【0004】
ウレイド基を有する化合物を用いて、ウレタン化反応、熱分解反応を行うことでイソシアネートを得ることができる。
【0005】
ウレイド基を有する化合物の製造方法として、例えば、特許文献1には、過剰の尿素およびジアミンから無溶媒の塊状反応でビス尿素を製造する方法が開示されている。
上記の反応条件では、収率90%程度で目的物が得られるとされる。
また、特許文献2には、溶媒として炭素数3〜5のアルコール類を用いてウレイド基を有する化合物を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第2,145,242号明細書
【特許文献2】特開平6-41045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された方法では、専ら固体として生成物が得られるため、後段反応に使用する中間体として使用するにあたり、新たな溶媒の使用を検討する必要がある可能性がある。また、一度、固体として得られたウレイド基を有する化合物は、ウレイド基同士の水素結合が強いためであると考えられるが、その凝集力が強く、溶媒に対する溶解度が低い傾向にある。
特許文献2に開示された方法では、ウレイド基を有する化合物は、アルコールに対する溶解度が小さいため、反応液は専らスラリーであり、後段反応に使用する中間体として技術的な問題、例えば配管中の滞留部等での閉塞等が発生する場合がある。
また、本発明者らが鋭意検討した結果、特許文献1や特許文献2に開示されるような従来方法でウレイド基を有する化合物を製造する際、下記式(4)や下記式(5)で表される尿素結合を形成する副反応、下記式(6)で表される分子内でビウレット結合を形成する副反応、下記式(7)で表される末端にビウレット結合を有する化合物を生成する副反応等が生起することを見出した。
【0008】
式(4):
【化2】

【0009】
式(5):
【化3】

【0010】
式(6):
【化4】

【0011】
式(7):
【化5】


(式(4)〜(7)中、Rは有機基を示す。)
【0012】
なお、上記副反応については、説明を簡便にするため、1つの官能基(ここでは、アミノ基、ウレイド基)を有する化合物の反応について記述しているが、2つ以上の複数の官能基を有する化合物についても、同様の反応が起こり得る。
【0013】
これらの副反応により生成する化合物は、本発明の目的とするウレイド基を有する化合物の収率を低下させるばかりか、該ウレイド基を有する化合物を用いて行うイソシアネートの製造工程(ウレイド基を有する化合物から、イソシアネートの前駆体であるウレタンを製造する工程や、該ウレタンの熱分解によりイソシアネートを製造する工程)における収率を低下させ、さらには、該イソシアネートが使用されるポリウレタンフォーム、塗料、接着剤の性能低下を招く場合がある。
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、イソシアネートを製造する際の中間体として有用であるウレイド基を有する化合物を、従来の製造方法にあったような副生物を生成することなく、高収率・高純度で得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上記課題に対し鋭意検討を重ねた結果、溶媒として芳香族ヒドロキシ化合物を使用することによって解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち、本発明は、
[1]
下記式(1)で表される有機第1アミンと、尿素とを、
少なくとも1種の下記式(2)で表される芳香族ヒドロキシ化合物の存在下でウレイド化反応する、
ウレイド基を有する化合物の製造方法、
式(1):
【化6】


(式(1)中、R1は炭素数1〜35の炭素原子を含む有機基を示し、aは1〜10の整数を示す。)
式(2):
【化7】


(式(2)中、Aは炭素数6〜50の炭素原子を含み、芳香族環を含有する有機基を示す。該有機基は、任意の位置でb個の芳香族性ヒドロキシ基で置換され、bは1〜3の整数を示す。)
[2]
Aは2の整数を示す、[1]に記載の製造方法、
[3]
R1は酸素原子を含む有機基を示す、[1]又は[2]に記載の製造方法、
[4]
bは1又は2の整数を示す、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法、
[5]
芳香族環が、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の環である、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法、
[6]
芳香族環が、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の置換基で置換されている、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法、
[7]
液相でウレイド化反応する、[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法、
[8]
尿素/(有機第1アミンのアミノ基)の化学量論比が1より大きい、[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法、
[9]
0℃〜250℃でウレイド化反応を行う、[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法、
[10]
芳香族ヒドロキシ化合物と尿素の混合物に、有機第1アミンを添加してウレイド化反応する、[1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法、
[11]
有機第1アミンを、芳香族ヒドロキシ化合物との混合物として添加してウレイド化反応する、[1]〜[10]のいずれかに記載の製造方法、
を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のウレイド基を有する化合物の製造方法によれば、イソシアネートを製造する際の中間体として有用であるウレイド基を有する化合物を、従来の製造方法にあったような副生物を生成することなく、高収率・高純度で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施形態のみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0019】
本実施の形態は、ウレイド基を有する化合物の製造方法であって、
下記式(1)で表される有機第1アミンと、尿素とを、
少なくとも1種の下記式(2)で表される芳香族ヒドロキシ化合物の存在下でウレイド化反応する、方法である。
【0020】
式(1):
【化8】


(式(1)中、R1は炭素数1〜35の炭素原子を含む有機基を示し、aは1〜10の整数を示す。
【0021】
式(2):
【化9】


(式(2)中、Aは炭素数6〜50の炭素原子を含み、芳香族基を含有する有機基を示す。該有機基は、任意の位置でb個の芳香族性ヒドロキシ基で置換され、bは1〜3の整数を示す。)
【0022】
まず、本実施の形態において使用される化合物について説明する。
本実施の形態で使用される有機第1アミンは下記式(1)で表される有機第1アミンである。
【0023】
式(1):
【化10】

【0024】
式(1)中、aはアミノ基の数を表し、1〜10の整数を示す。R1は炭素数1〜35の炭素原子を含む有機基を示し、a個のアミノ基で置換された有機基である。
【0025】
式(1)において、aは、好ましくは2〜10の整数であり、より好ましくは2である。
【0026】
式(1)において、R1は、好ましくは、炭素原子、酸素原子、水素原子からなる有機基であり、活性水素を有しない有機基である。ここでいう「活性水素」とは、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、珪素原子などと結合している水素原子、および、末端メチン基の水素原子を指す。例えば、−OH基、−C(=O)OH基、−C(=O)H基、−SH基、−SOH基、−SOH基、−SOH基、−NH基、−NH−基、−SiH基、−C≡CH基などの原子団に含まれる水素原子である。
R1は、特に限定されるものではないが、例えば、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基等が挙げられる。また、式(1)において、R1の炭素数は、好ましくは1〜25、より好ましくは1〜13である。
R1としては、以下に示す構造のうち、任意の位置でa個のアミノ基で置換されていてよい基が挙げられ、該構造の具体例としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン等の直鎖脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビス(シクロヘキシル)等の無置換の脂環式炭化水素;メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン(各異性体)、エチルシクロヘキサン(各異性体)、プロピルシクロヘキサン(各異性体)、ブチルシクロヘキサン(各異性体)、ペンチルシクロヘキサン(各異性体)、ヘキシルシクロヘキサン(各異性体)等のモノアルキル置換された脂環式炭化水素;ジメチルシクロヘキサン(各異性体)、ジエチルシクロヘキサン(各異性体)、ジブチルシクロヘキサン(各異性体)等のジアルキル置換された脂環式炭化水素;1,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,5,5−トリエチルシクロヘキサン、1,5,5−トリプロピルシクロヘキサン(各異性体)、1,5,5−トリブチルシクロヘキサン(各異性体)等のトリアルキル置換された脂環式炭化水素;ベンゼン、ナフタレン等の無置換の芳香族炭化水素;トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン等のモノアルキル置換された芳香族炭化水素;キシレン、ジエチルベンゼン、ジプロピルベンゼン等のジアルキル置換された芳香族炭化水素;ジフェニルアルカン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。
中でも、ヘキサン、ベンゼン、ジフェニルメタン、トルエン、シクロヘキサン、キシレン、メチルシクロヘキサン、イソホロンおよびジシクロヘキシルメタンに由来する基が好ましい。
【0027】
有機第1アミンとしては、例えば、ジフェニルメタンジアミン(各異性体)、トリレンジアミン(各異性体)、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ナフタレンジアミン(各異性体)、テトラメチルキシレンジアミン(各異性体)、ジシクロヘキシルメタンジアミン(各異性体)、キシレンジアミン(各異性体)、メチレンビス(ジイソアミル-フェニレン)ジアミン(各異性体)、オキシビス(フェニレンジアミン)(各異性体)、チオビス(フェニレンジアミン)(各異性体)、カルボニルビス(フェニレン)ジアミン(各異性体)、ブテンジアミン(各異性体)、ブチニレンジアミン、ヘキサフルオロプロピレンジアミン(各異性体)等が挙げられる。
【0028】
本実施の形態で使用される尿素は特に限定されず、工業的に入手可能なものを使用することができる。
【0029】
本実施の形態で使用される芳香族ヒドロキシ化合物は下記式(2)で表される芳香族ヒドロキシ化合物である。
【0030】
式(2):
【化11】

【0031】
式(2)中、bは芳香族性ヒドロキシ基の数を表し、1〜3の整数を示す。芳香族性ヒドロキシ基とは、水酸基(OH)のうち、芳香族環に結合している水酸基を意味し、フェノール性水酸基とも呼ばれる。Aは環構造を有していることを意味し、A全体として、炭素数6〜50の炭素原子を含む有機基であって、該有機基は、芳香族環を含有する。また、Aは任意の位置でb個のヒドロキシ基で置換された芳香族環を含有する。芳香族環は、単環でも複数環でも複素環であってもよく、芳香族性ヒドロキシ基以外の他の置換基によって置換されていてもよい。
他の置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基等が挙げられる。
式(2)において、Aの炭素数は、好ましくは6〜33、より好ましくは6〜24である。
【0032】
式(2)において、芳香族環としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ナフタセン環、クリセン環、ピレン環、トリフェニレン環、ペンタレン環、アズレン環、ヘプタレン環、インダセン環、ビフェニレン環、アセナフチレン環、アセアントリレン環、アセフェナントリレン環等が挙げられる。中でも、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましい。
【0033】
式(2)において、工業的製造の観点から、好ましくはbが1であり、bが1である芳香族ヒドロキシ化合物は一般に低粘度である。
【0034】
芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、フェノール、メチルフェノール(各異性体)、エチルフェノール(各異性体)、プロピルフェノール(各異性体)、ブチルフェノール(各異性体)、ペンチルフェノール(各異性体)、ヘキシルフェノール(各異性体)、ヘプチルフェノール(各異性体)、オクチルフェノール(各異性体)、ノニルフェノール(各異性体)、デシルフェノール(各異性体)、ウンデシルフェノール(各異性体)、ドデシルフェノール(各異性体)、ジメチルフェノール(各異性体)、ジエチルフェノール(各異性体)、ジプロピルフェノール(各異性体)ジブチルフェノール(各異性体)、ジペンチルフェノール(各異性体)、ジヘキシルフェノール(各異性体)、ジヘプチルフェノール(各異性体)、ジオクチルフェノール(各異性体)、ジブチルメチルフェノール(各異性体)、ジメチルメトキシフェノール(各異性体)、ナフトール(各異性体)、フェニルフェノール(各異性体)、フェノキシフェノール(各異性体)、クミルフェノール(各異性体)、ジクミルフェノール(各異性体)等が挙げられる。
【0035】
次に、ウレイド基を有する化合物の製造方法について説明する。
本実施の形態においては、上記式(1)で表される有機第1アミンと、尿素とをウレイド化反応させて、ウレイド基を有する化合物を製造する際に、上記式(2)で表される芳香族ヒドロキシ化合物を少なくとも1種使用する製造方法である。
ウレイド化反応とは、ウレイド基(-NHC(=O)-NH2で表される基)を形成する反応であり、本実施の形態においては、ウレイド基は、有機第1アミンと、尿素とから形成される官能基である。
【0036】
本実施の形態では、上記式(2)で表される芳香族ヒドロキシ化合物を少なくとも1種類使用する。本発明者らは、驚くべきことに、芳香族ヒドロキシ化合物を溶媒として使用しウレイド基を有する化合物の製造を行うと、式(4)〜(7)として上述したような副反応が抑制され、ウレイド基を有する化合物の収率が著しく向上することを見出した。芳香族ヒドロキシ化合物がこのような効果を奏する機構は明らかではないが、本発明者らは、芳香族ヒドロキシ化合物を用いることで、塩基性を有する有機第1アミンや尿素結合と芳香族ヒドロキシ化合物が有する酸性プロトンとの酸−塩基の相関作用を持つことで、有機第1アミンおよびウレア結合中のNH、NH2基の求核性を小さくするため、また、尿素結合同士の分子間水素結合による会合を芳香族ヒドロキシ化合物が抑制するためではないかと推測している。
【0037】
本実施の形態において、尿素の使用量は、有機第1アミンのアミノ基に対して、化学量論比で、好ましくは1〜1000倍の範囲である。反応速度を高め、反応を早期に完結させるためには、尿素は、有機第1アミンのアミノ基に対して過剰量で用いることが好ましいが、あまりに過剰な尿素を使用すると反応器が大きくなりすぎる。そこで、有機第1アミンのアミノ基に対して尿素を、化学量論比で、副生物抑制の観点からも、好ましくは1より大きく、より好ましくは2〜1000倍の範囲、さらに好ましくは2〜100倍の範囲、よりさらに好ましくは2.4〜30倍の範囲で使用する。
【0038】
本実施の形態において、芳香族ヒドロキシ化合物の使用量は、有機第1アミンのアミノ基に対して、化学量論比で、好ましくは1〜500倍の範囲である。式(4)〜(7)として上述したような副反応を抑制するためには、芳香族ヒドロキシ化合物の使用量は有機第1アミンのアミノ基に対して過剰量で用いることが好ましいが、あまりに過剰な芳香族ヒドロキシ化合物を使用すれば反応器が大きくなりすぎる。そこで、芳香族ヒドロキシ化合物の使用量を有機弟1アミンのアミノ基に対して、化学量論比で、より好ましくは1〜100倍の範囲、さらに好ましくは1〜30倍の範囲で使用する。
【0039】
反応の方法としては、液相中の尿素の総数が、該有機第1アミンを構成するアミノ基の総数よりも大きい量比となるような、尿素と有機第1アミンとの添加方法が、副生物抑制の観点から好ましい。
【0040】
本実施の形態において、有機第1アミンと尿素とを反応させる上で、特に、有機第1アミン、尿素、芳香族ヒドロキシ化合物の添加方法が限定されるものではないが、上述した好ましい反応の方法をおこなうためには、芳香族ヒドロキシ化合物と尿素の混合物に、有機第1アミンを添加する方法が好ましい。また、有機第1アミンを添加する場合には、芳香族ヒドロキシ化合物と有機第1アミンとの混合物を添加してもよい。芳香族ヒドロキシ化合物と尿素の混合物および芳香族ヒドロキシ化合物と有機第一アミンの混合物は均一溶液であっても、スラリー溶液であってもよい。
【0041】
芳香族ヒドロキシ化合物と尿素の混合物(均一溶液またはスラリー溶液)を調製する温度は、尿素の分解速度や副生成物の生成を抑制することができるので、好ましくは50〜150℃の範囲である。
【0042】
有機第1アミンは、好ましくは、液体の状態で添加される。一般的に、本実施の形態において用いられる有機第1アミンは、常温(例えば20℃)で固体のものが多いが、そのような場合には、有機第1アミンの融点以上に加熱して、液体の状態で供給することもできる。また、熱変性反応等の副反応を抑制する観点から、有機第1アミンを、芳香族ヒドロキシ化合物との混合物とし、比較的低い温度で、液体の状態で供給することも好ましい。
【0043】
本実施の形態において、反応温度は、収率向上、生産効率向上および副生物の生成抑制の観点で、好ましくは0〜250℃の範囲、より好ましくは50〜150℃の範囲である。また、有機第1アミン、尿素、芳香族ヒドロキシ化合物の標準沸点よりも低い温度で反応することが好ましい。
【0044】
本実施の形態において、大気圧下でも減圧下でも加圧下でも行なうことができる。また、通常、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0045】
本実施の形態において、反応時間は、通常0.001〜100時間の範囲、好ましくは0.01〜80時間の範囲、より好ましくは0.1〜50時間の範囲である。反応液を採取し、例えば、液体クロマトグラフィーによってウレイド基を有する化合物が所望量生成していることを確認して反応を終了してもよい。
【0046】
本実施の形態の製造方法においては、触媒を使用する必要はないが、ウレイド化反応を短時間で完結させる、反応温度を低くする等の観点で、触媒を使用することもできる。一般的な化学反応において、芳香族アミンは脂肪族アミンに比べて反応性が低いので、有機第1アミンとして芳香族アミンを使用する場合には、ウレイド化反応を行う上でも、触媒の使用が有効な場合がある。触媒を使用する場合には、例えば、スズ、鉛、銅、チタン等の有機金属化合物や無機金属化合物、アルカリ金属、アルカリ土類金属のアルコラートであって、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウムのメチラート、エチラート、ブチラート(各異性体)等の塩基性触媒等を使用することができる。
【0047】
本実施の形態の製造方法において、芳香族ヒドロキシ化合物以外に反応溶媒を使用してもよく、使用する場合には、反応操作を容易にする等の目的で適当な溶媒を使用してもよい。このような溶媒としては、例えば、ヘキサン(各異性体)、ヘプタン(各異性体)、オクタン(各異性体)、ノナン(各異性体)、デカン(各異性体)などのアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン(各異性体)、エチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン(各異性体)、ジブチルベンゼン(各異性体)、ナフタレン等の芳香族炭化水素及びアルキル置換芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン(各異性体)、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン(各異性体)、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロナフタレン等のハロゲンもしくはニトロ基によって置換された芳香族化合物類;ジフェニル、置換ジフェニル、ジフェニルメタン、ターフェニル、アントラセン、ジベンジルトルエン(各異性体)等の多環炭化水素化合物類;シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール類;メチルエチルケトン、アセトフェノン等のケトン類;ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ベンジルブチルフタレート等のエステル類;ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド等のエーテル類及びチオエーテル類;ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。
【0048】
本実施の形態において、反応装置は、攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器など、従来公知の反応器を適宜組み合わせて使用できる。反応温度を一定にするために、公知の冷却装置、加熱装置を設置してもよい。また、材質については公知の材質が使用でき、特に限定されるものではないが、例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングをおこなったものも使用できる。
【0049】
本実施の形態の製造方法により製造される、ウレイド基を有する化合物は、IUPACで定められたNomenclature規則C-971で定められる「ウレイド基」を有する化合物であり、ウレイド基とは、-NHC(=O)-NH2で表される基である。
具体的には、ウレイド基を有する化合物は、下記式(8)で表される化合物である。
【0050】
式(8):
【化12】


(式(8)中、R1は上記式(1)において定義した基を示し、cは1〜10の整数を示す。)
【0051】
式(8)において、Rは、上記式(1)のRとして定義した基であり、本実施の形態の製造方法において使用する有機第1アミンに由来する基である。
式(8)において、cは1〜10の整数を示すが、本実施の形態の製造方法において使用する有機第1アミンにおけるaを超えない整数である。すなわち、有機第1アミンのアミノ基のうち、c個のアミノ基がウレイド基に変換されている場合、理論上、a−c個のアミノ基は、そのままウレイド基を有する化合物において、アミノ基として存在していると考えられる。
【0052】
本実施の形態の製造方法により得られるウレイド基を有する化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジフェニルメタンジウレア(各異性体)、トリレンジウレア(各異性体)、ヘキサメチレンジウレア、ヘキサデカメチレンジウレア、イソホロンジウレア、ナフタレンジウレア(各異性体)、テトラメチルキシレンジウレア(各異性体)、ジシクロヘキシルメタンジウレア(各異性体)、キシレンジウレア(各異性体)、メチレンビス(ジイソアミル-フェニレン)ジウレア(各異性体)、オキシビス(フェニレンジウレア)(各異性体)、チオビス(フェニレンジウレア)(各異性体)、カルボニルビス(フェニレン)ジウレア(各異性体)、ブテンジウレア(各異性体)、ブチニレンジウレア、ヘキサフルオロプロピレンジウレア(各異性体)等が挙げられる。
【0053】
本実施の形態の製造方法によって得られるウレイド基を有する化合物は、カルバミン酸エステルの製造、とりわけ、イソシアネートを製造するための原料となるカルバミン酸エステルの製造に好適に使用される。
【0054】
本実施の形態の製造方法は、高収率・高純度でウレイド基を有する化合物を得ることができるので、カルバミン酸エステルの製造方法において、本実施の形態の製造方法によって得られるウレイド基を有する化合物を精製することなく使用することができる。なお、本実施の形態の製造方法によって得られるウレイド基を有する化合物は、例えば、蒸留分離、晶析、膜分離等の公知の方法によって精製されたのち、カルバミン酸エステルの製造に使用することもできる。
【0055】
カルバミン酸エステルの製造方法において、ウレイド基を有する化合物と芳香族ヒドロキシ化合物を反応させることにより、カルバミン酸エステルを製造することができるが、本実施の形態の製造方法によって得られる、反応混合物としてのウレイド基を有する化合物と芳香族ヒドロキシ化合物を含有する混合物をそのまま使用することもできる。その場合、使用するウレイド基を有する化合物のウレイド基に対する芳香族ヒドロキシ化合物の量が所望量となるよう、例えば、芳香族ヒドロキシ化合物の量は、使用するウレイド基を有する化合物のウレイド基に対して化学量論比で1〜500倍の範囲となるよう、芳香族ヒドロキシ化合物を新たに加えたり、蒸留分離等の公知の方法によって芳香族ヒドロキシ化合物を除去したりして、カルバミン酸エステルを製造することができる。
【0056】
カルバミン酸エステルを製造する工程をおこなう反応器は、ウレイド基を有する化合物を製造する工程を行う反応器と異なる反応器であることが好ましい。本発明者らが検討した結果、驚くべきことに、ウレイド基を有する化合物を製造する反応(アミンと尿素化合物との反応)は、反応の平衡が圧倒的に生成側に偏っているのに対して、カルバミン酸エステルを製造する反応(ウレイド基を有する化合物とヒドロキシ化合物との反応)は、反応の平衡が圧倒的に原系に偏っていることが判明した。すなわち、ウレイド基を有する化合物を製造する反応は、生成するアンモニアを系外に除去しても除去しなくても反応は進行するが、カルバミン酸エステルを製造する反応は、生成するアンモニアを系外に除去しなければ反応が進行しない。したがって、カルバミン酸エステルを製造する反応は、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器等を使用して、副生アンモニアの除去効率を高める方が好ましい。
例えば、ウレイド基を有する化合物の製造を行う工程を攪拌槽でおこない、該工程で得られる反応液を、カルバミン酸エステルを製造する工程をおこなう反応器(例えば、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器等)に移送して、カルバミン酸エステルを製造する方法が好ましく実施される。
【0057】
上述の反応によって得られるカルバミン酸エステルは、下記式(9)で表される化合物である。
【0058】
式(9):
【化13】


(式(9)中、Rは上記式(1)において定義した基を示し、Aは上記式(2)において定義した有機基を示し、bは上記式(2)において定義した整数を示し、dは1〜10の整数を示し、cを超えない数である。)
【0059】
上記式(9)で表されるカルバミン酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジフェニルエステル、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(メチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(エチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(プロピルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(ブチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(オクチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(フェニルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(フェノキシフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(クミルフェニル)エステル(各異性体)、ジフェニル−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート、ジ(メチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート、ジ(エチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート、ジ(プロピルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、ジ(ブチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、ジ(ペンチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、ジ(ヘキシルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、ジ(ヘプチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、ジ(オクチルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、ジ(フェニルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、ジ(フェノキシフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、ジ(クミルフェニル)−4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルカルバメート(各異性体)、3−(フェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸フェニルエステル、3−(メチルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(メチルフェノキシ)エステル(各異性体)、3−(エチルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(エチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(プロピルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(プロピルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ブチルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ブチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ペンチルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ヘキシルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、3−(ヘプチルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(オクチルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(オクチルフェニル)エステル(各異性体)、3−(オクチルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(フェニルフェニル)エステル(各異性体)、3−(オクチルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(フェノキシフェニル)エステル(各異性体)、3−(オクチルフェノキシカルボニルアミノ−メチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルカルバミン酸(クミルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジフェニルエステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(メチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(エチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(プロピルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(ブチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(ペンチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(ヘキシルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(ヘプチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(オクチルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(フェニルフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(フェノキシフェニル)エステル(各異性体)、トルエン−ジカルバミン酸ジ(クミルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジフェニルエステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(メチルフェニル)エステル、N,N’’−(4,4’’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(エチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(プロピルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(ブチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(ペンチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(ヘキシルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(ヘプチルフェニル)エステル、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(オクチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(フェニルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(フェノキシフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−(4,4’−メタンジイル−ジフェニル)−ビスカルバミン酸ジ(クミルフェニル)エステル(各異性体)等が挙げられる。
【0060】
以上に示した方法によって製造されるカルバミン酸エステルは、イソシアネート製造用の原料として好適に使用される。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0062】
1)高速液体クロマトグラフィー分析方法
装置:LC-10AT(島津社製)
カラム:Inertsil-ODS / 粒径5μm、(ジーエルサイエンス社製)
カラムサイズ:4.6mm×150mm
カラム温度:40℃
溶離液:A液 アセトニトリル、B液 0.3wt%リン酸水溶液
流量:1.0mL/min
検出器:UV 210nm
グラジエント:初期 A液:5vol%/B液:95vol%→ 15分 A液:15vol%/B液:85vol%→ 20分 A液:15vol%/B液:85vol%(リニアグラジエント)
(1)高速液体クロマトグラフィー分析サンプル
サンプル100mgおよび内標;1,1-ジエチル尿素10mgを1.5gの酢酸に溶解させ、分析サンプルを調製した。
(2)定量分析法
各標準物質について分析を実施し、作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施した。
【0063】
[実施例1]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積200mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)20.7g、フェノール(日本国、東京化成工業社製)85.2gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を120℃とし、均一溶液とした。1,6-ヘキサメチレンジアミン(日本国、旭化成ケミカルズ社製)10.0gと、フェノール8.2gの混合物を予め加熱して均一溶液とした後、50℃に加熱した滴下ロートより、30分かけて添加した。添加終了から3時間後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ1,6-ヘキサメチレンジアミンに対して収率99%で1,6-ヘキサメチレンジウレアが得られた。
【0064】
[実施例2]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積200mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)20.7g、フェノール(日本国、東京化成工業社製)85.2gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を120℃とし、均一溶液とした。3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(日本国、東京化成工業社製)14.7gと、フェノール8.2gの混合物を予め加熱して均一溶液とした後、50℃に加熱した滴下ロートより、30分かけて添加した。添加終了から3時間後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミンに対して収率99%で3-ウレイドメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルウレアが得られた。
【0065】
[実施例3]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積200mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)20.7g、フェノール(日本国、東京化成工業社製)85.2gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を120℃とし、均一溶液とした。2,4-トリレンジアミン(日本国、東京化成工業社製)10.5gと、フェノール8.2gの混合物を予め加熱して均一溶液とした後、100℃に加熱した滴下ロートより、30分かけて添加した。添加終了から3時間後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ2,4-トリレンジアミンに対して収率99%で2,4-トリレンジウレアが得られた。
【0066】
[実施例4]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積200mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)20.7g、フェノール(日本国、東京化成工業社製)85.2gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を120℃とし、均一溶液とした。4,4-ジフェニルメタンジアミン(日本国、東京化成工業社製)17.1gと、フェノール8.2gの混合物を予め加熱して均一溶液とした後、100℃に加熱した滴下ロートより、30分かけて添加した。添加終了から3時間後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ4,4-ジフェニルメタンジアミンに対して収率99%で4,4-ジフェニルメタンジウレアが得られた。
【0067】
[実施例5]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積200mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)20.7g、フェノール(日本国、東京化成工業社製)85.2gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を120℃とし、均一溶液とした。ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジアミン(日本国、東京化成工業社製)18.1gと、フェノール8.2gの混合物を予め加熱して均一溶液とした後、100℃に加熱した滴下ロートより、30分かけて添加した。添加終了から3時間後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだジシクロヘキシルメタン4,4’-ジアミンに対して収率99%でジシクロヘキシルメタン4,4’-ジウレアが得られた。
【0068】
[実施例6]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積300mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)51.8g、フェノール(日本国、東京化成工業社製)85.2gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を150℃とし、均一溶液とした。2,4-トリレンジアミン(日本国、東京化成工業社製)10.5gと、フェノール8.2gの混合物を予め加熱して均一溶液とした後、100℃に加熱した滴下ロートより、3分程度で添加した。10分後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ2,4-トリレンジアミンに対して収率96%で2,4-トリレンジウレアが得られた。
【0069】
[実施例7]
温度計、攪拌器、冷却管を備えたガラス製4口フラスコ(内容積300mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)51.8g、フェノール(日本国、東京化成工業社製)85.2gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を196℃とし、均一溶液とした。2,4-トリレンジアミン(日本国、東京化成工業社製)10.5gと、フェノール8.2gの混合物を予め加熱して均一溶液とした後、100℃に加熱した滴下ロートより、3分程度で添加した。10分後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ2,4-トリレンジアミンに対して収率55%で2,4-トリレンジウレアが得られた。
【0070】
[比較例1]
実施例7において、フェノールを1-ドデカノールに変更した以外は同様にして、以下のように反応を行った。
温度計、攪拌器、冷却管を備えたガラス製4口フラスコ(内容積300mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)51.8g、1-ドデカノール(日本国、東京化成工業社製)85.2gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を196℃とし、均一溶液とした。2,4-トリレンジアミン(日本国、東京化成工業社製)10.5gと、フェノール8.2gの混合物を予め加熱して均一溶液とした後、100℃に加熱した滴下ロートより、3分程度で添加した。10分後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ2,4-トリレンジアミンに対して収率38%で2,4-トリレンジウレアが得られた。
【0071】
[実施例8]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積200mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)15.5g、フェノール(日本国、東京化成工業社製)85.2gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を120℃とし、均一溶液とした。1,6-ヘキサメチレンジアミン(日本国、旭化成ケミカルズ社製)10.0gと、フェノール8.2gの混合物を予め加熱して均一溶液とした後、50℃に加熱した滴下ロートより、70分かけて添加した。添加終了から4時間後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ1,6-ヘキサメチレンジアミンに対して収率91%で1,6-ヘキサメチレンジウレアが得られた。
【0072】
[実施例9]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積200mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)10.4g、フェノール(日本国、東京化成工業社製)85.2gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を120℃とし、均一溶液とした。1,6-ヘキサメチレンジアミン(日本国、旭化成ケミカルズ社製)10.0gと、フェノール8.2gの混合物を予め加熱して均一溶液とした後、50℃に加熱した滴下ロートより、80分かけて添加した。添加終了から6時間後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ1,6-ヘキサメチレンジアミンに対して収率73%で1,6-ヘキサメチレンジウレアが得られた。
【0073】
[実施例10]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積200mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)20.7g、フェノール(日本国、東京化成工業社製)93.3g、1,6-ヘキサメチレンジアミン(日本国、旭化成ケミカルズ社製)10.0gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を120℃とした。3時間後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ1,6-ヘキサメチレンジアミンに対して収率89%で1,6-ヘキサメチレンジウレアが得られた。
【0074】
[実施例11]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積300mL)に、1,6-ヘキサメチレンジアミン(日本国、旭化成ケミカルズ社製)10.0g、フェノール(日本国、東京化成工業社製)93.4gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を120℃とし、均一溶液とした。尿素(日本国、和光純薬工業社製)20.7gと、フェノール85.2gの混合物を予め加熱して均一溶液とした後、120℃に加熱した滴下ロートより、30分かけて添加した。添加終了から3時間後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ1,6-ヘキサメチレンジアミンに対して収率75%で1,6-ヘキサメチレンジウレアが得られた。
【0075】
[実施例12]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積500mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)258.8g、フェノール(日本国、東京化成工業社製)85.2g、テトラヒドロフラン(日本国、東京化成工業社製)160.7gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を50℃とした。系内の尿素は完全に溶けきらず、スラリー状の液体となった。1,6-ヘキサメチレンジアミン(日本国、旭化成ケミカルズ社製)10.0gと、フェノール8.2gの混合物を予め加熱して均一溶液とした後、50℃に加熱した滴下ロートより、30分かけて添加した。添加終了から3300時間後、スラリー状の反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ1,6-ヘキサメチレンジアミンに対して収率97%で1,6-ヘキサメチレンジウレアが得られた。
【0076】
[実施例13]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積500mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)20.7g、2,4-ジ-tert-アミルフェノール(日本国、東京化成工業社製)212.1gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を120℃とし、均一溶液とした。2,4-トリレンジアミン(日本国、東京化成工業社製)10.5gと、2,4-ジ-tert-アミルフェノール20.3gの混合物を予め加熱して均一溶液とした後、100℃に加熱した滴下ロートより、90分かけて添加した。添加終了から2時間後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ2,4-トリレンジアミンに対して収率99%で2,4-トリレンジウレアが得られた。
【0077】
[実施例14]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積500mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)20.7g、4-tert-オクチルフェノール(日本国、東京化成工業社製)186.7gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を120℃とし、均一溶液とした。1,6-ヘキサメチレンジアミン(日本国、旭化成ケミカルズ社製)10.0gと、4-tert-オクチルフェノール17.9gの混合物を予め加熱して均一溶液とした後、100℃に加熱した滴下ロートより、90分かけて添加した。添加終了から2時間後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ1,6-ヘキサメチレンジアミンに対して収率99%で1,6-ヘキサメチレンジウレアが得られた。
【0078】
[実施例15]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積500mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)20.7g、2-tert-ブチルフェノール(日本国、東京化成工業社製)271.9gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を105℃とし、均一溶液とした。3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(日本国、東京化成工業社製)14.7gと、2-tert-ブチルフェノール13.0gの混合液を滴下ロートより、90分かけて添加した。添加終了から16時間後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミンに対して収率99%で3-ウレイドメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルウレアが得られた。
【0079】
[実施例16]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積500mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)20.7g、2-イソプロピルフェノール(日本国、東京化成工業社製)246.5gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を105℃とし、均一溶液とした。3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(日本国、東京化成工業社製)14.7gと、2-イソプロピルフェノール11.8gの混合液を滴下ロートより、90分かけて添加した。添加終了から16時間後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミンに対して収率99%で3-ウレイドメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルウレアが得られた。
【0080】
[実施例17]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積200mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)20.7g、2,6-キシレノール(日本国、東京化成工業社製)110.6gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を120℃とし、均一溶液とした。2,4-トリレンジアミン(日本国、東京化成工業社製)10.5gと、2,6-キシレノール10.6gの混合物を予め加熱して均一溶液とした後、100℃に加熱した滴下ロートより、90分かけて添加した。添加終了から2時間後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ2,4-トリレンジアミンに対して収率99%で2,4-トリレンジウレアが得られた。
【0081】
[実施例18]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積500mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)20.7g、4-ノニルフェノール(日本国、関東化学社製)398.8gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を105℃とし、均一溶液とした。2,4-トリレンジアミン(日本国、東京化成工業社製)10.5gと、4-ノニルフェノール19.1gの混合物を予め加熱して均一溶液とした後、100℃に加熱した滴下ロートより、90分かけて添加した。添加終了から16時間後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ2,4-トリレンジアミンに対して収率99%で2,4-トリレンジウレアが得られた。
【0082】
[実施例19]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積500mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)20.7g、4-クミルフェノール(日本国、東京化成工業社製)192.1gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を120℃とし、均一溶液とした。2,4-トリレンジアミン(日本国、東京化成工業社製)10.5gと、4-クミルフェノール18.4gの混合物を予め加熱して均一溶液とした後、100℃に加熱した滴下ロートより、90分かけて添加した。添加終了から2時間後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ2,4-トリレンジアミンに対して収率99%で2,4-トリレンジウレアが得られた。
【0083】
[実施例20]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積500mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)20.7g、4-クミルフェノール(日本国、東京化成工業社製)210.5gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を120℃とし、均一溶液とした。2,4-トリレンジアミン(日本国、東京化成工業社製)10.5gを滴下ロートより90分かけて添加した。添加終了から2時間後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ2,4-トリレンジアミンに対して収率89%で2,4-トリレンジウレアが得られた。
【0084】
[実施例21]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積500mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)20.7g、2-tert-アミルフェノール(日本国、東京化成工業社製)297.3gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を105℃とし、均一溶液とした。真空ポンプおよび真空コントローラーを用いて系内を20kPaAに減圧した後、4,4-ジフェニルメタンジアミン(日本国、東京化成工業社製)17.1gと、2-tert-アミルフェノール14.3gの混合物を予め加熱して均一となった溶液を100℃に加熱した滴下ロートより90分かけて添加した。添加終了から16時間後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ4,4-ジフェニルメタンジアミンに対して収率99%で4,4-ジフェニルメタンジウレアが得られた。
【0085】
[実施例22]
温度計、攪拌器を備えたステンレス製オートクレーブ(内容積1000mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)41.4g、2,6-ジイソプロピルフェノール(日本国、東京化成工業社製)645.4gを仕込み、該オートクレーブ内部を窒素置換した。窒素雰囲気下で、該オートクレーブをジャケット加熱し、内容物を攪拌しながら内温を105℃とし、均一溶液とした。窒素による加圧で系内を0.2MPaAとした後、4,4-ジフェニルメタンジアミン(日本国、東京化成工業社製)34.2gと、2-tert-アミルフェノール28.6gの混合物を予め加熱して均一となった溶液を、定量ポンプを用いて90分かけて添加した。添加終了から16時間後、反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだヘキサメチレンジアミンに対して収率99%で1,6-ヘキサメチレンジウレアが得られた。
【0086】
[実施例23]
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積200mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)20.7g、フェノール(日本国、東京化成工業社製)42.6gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を90℃とした。系内の尿素は完全に溶けきらず、スラリー状の液体となった。1,6-ヘキサメチレンジアミン(日本国、旭化成ケミカルズ社製)10.0gと、フェノール8.2gの混合物を予め加熱して均一溶液とした後、50℃に加熱した滴下ロートより、30分かけて添加した。添加終了から80時間後、スラリー状体の反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ1,6-ヘキサメチレンジアミンに対して収率85%で1,6-ヘキサメチレンジウレアが得られた。
【0087】
[比較例2]
実施例23において、フェノールを1-ブタノールに変更した以外は同様にして、以下のように反応を行った。
温度計、攪拌器を備えたガラス製4口フラスコ(内容積200mL)に、尿素(日本国、和光純薬工業社製)20.7g、1-ブタノール(日本国、東京化成工業社製)42.6gを仕込み、該フラスコ内部を窒素置換した。大気圧、窒素雰囲気下で、該フラスコを、あらかじめ加熱したオイルバスに浸漬し、内容物を攪拌しながら内温を90℃とした。系内の尿素は完全に溶けきらず、スラリー状の液体となった。1,6-ヘキサメチレンジアミン(日本国、旭化成ケミカルズ社製)10.0gと、ブタノール6.4gの混合物を予め加熱して均一溶液とした後、50℃に加熱した滴下ロートより、30分かけて添加した。添加終了から75時間後、スラリー状体の反応液の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、仕込んだ1,6-ヘキサメチレンジアミンに対して収率62%で1,6-ヘキサメチレンジウレアが得られた。
【0088】
[実施例24]
実施例14と同じ方法で得られた1,6-ヘキサメチレンジウレア溶液に4-tert-オクチルフェノールを150.7g追加し、100℃に加熱して均一溶液(溶液A)とした。ヒーターにより温度240℃に加熱された反応蒸留塔(充填材:ヘリパック [トウトクエンジ、SUS316L、1.7×3.5×3.5mm] )に、塔底部より220mL/minで窒素ガスを導入し、定量ポンプにより溶液Aを塔頂部より導入し、平均滞留時間58分で窒素と交流接触させた。塔低部より得られた反応液(反応液B)の一部を取り出して高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、1,6-ヘキサメチレンジウレアに対してN,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)=ビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル]が収率99%で得られた。さらに得られた反応液Bを定量ポンプにより、ガラス製の薄膜蒸留装置に導入し、280℃,1kPaの条件下で熱分解反応を行い、生成した気体成分を凝縮して回収した液Cをガスクロマトグラフィーで分析すると、導入したN,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)=ビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル]に対して、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートが収率98%で得られた。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の製造方法は、イソシアネートを製造する際の中間体として有用であるウレイド基を有する化合物を、従来の製造方法にあったような副生物を生成することなく、高収率・高純度で得ることができる。したがって、本発明の製造方法は、産業上大いに有用であり商業的価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される有機第1アミンと、尿素とを、
少なくとも1種の下記式(2)で表される芳香族ヒドロキシ化合物の存在下でウレイド化反応する、
ウレイド基を有する化合物の製造方法。
式(1):
【化1】


(式(1)中、R1は炭素数1〜35の炭素原子を含む有機基を示し、aは1〜10の整数を示す。)
式(2):
【化2】


(式(2)中、Aは炭素数6〜50の炭素原子を含み、芳香族環を含有する有機基を示す。該有機基は、任意の位置でb個の芳香族性ヒドロキシ基で置換され、bは1〜3の整数を示す。)
【請求項2】
Aは2の整数を示す、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
R1は酸素原子を含む有機基を示す、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
bは1又は2の整数を示す、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
芳香族環が、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の環である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
芳香族環が、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の置換基で置換されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
液相でウレイド化反応する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
尿素/(有機第1アミンのアミノ基)の化学量論比が1より大きい、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
0℃〜250℃でウレイド化反応を行う、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
芳香族ヒドロキシ化合物と尿素の混合物に、有機第1アミンを添加してウレイド化反応する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
有機第1アミンを、芳香族ヒドロキシ化合物との混合物として添加してウレイド化反応する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−136481(P2012−136481A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290721(P2010−290721)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】