説明

ウレタンアクリレートを含むシリカ含有UV硬化性硬質コート被覆物

本発明は、a)プロトン化未変性シリカナノ粒子、b)ウレタンアクリレート、c)極性溶媒、およびd)UV開始剤系を含み、プロトン化未変性シリカナノ粒子の重量による量がウレタンアクリレートの含有量を越え、かつ被覆物の乾燥重量を基準として少なくとも50.1重量%であるUV架橋性組成物に関する。本発明はさらに、基材を被覆するための該組成物の使用、およびそのような処方物で被覆された基材に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
a)プロトン化未変性シリカナノ粒子、
b)ウレタンアクリレート、
c)極性溶媒、および
d)UV開始剤系
を含み、プロトン化未変性シリカナノ粒子の重量による量がウレタンアクリレートの含有量を越え、かつ被覆物の乾燥重量を基準として少なくとも50.1重量%であるUV架橋性組成物、基材の被覆物中における該組成物の使用、およびそのような処方物で被覆された基材に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ(二酸化ケイ素)の組み込みにより被覆物の特性を向上させる原理は、比較的長期間知られている。その結果、シリカ粒子を添加することにより、例えば摩耗、耐引掻性、熱変形性、反射特性、光沢、帯電防止性、可燃性、UV耐性、防曇性、水による湿潤性および化学薬品耐性について被覆物を改良することが可能である。シリカをナノ粒子(100nmより小さい粒度)の形態で用いる場合には、これらの特性における向上を、透明性を同時に維持しながらまたはほとんど低下させずに達成することが原則として可能となる。以下の引用文献に示されている通り、これまで、これらの特性の全ての特徴を組み合わせることは、あるいはこれらの特徴の比較的な主要な組み合わせでさえ可能ではなかった。後者は、本出願の課題である。
【0003】
従って、上記の特徴についてさらなる向上した全特性を有するシリカ含有被覆組成物を提供する試みがこれまで十分になされてきた。
【0004】
DE10311639A1には、帯電防止特性が付与された成形体およびその製造方法が記載されている。課題を達成するために、アクリレート含有バインダー、アルコール溶媒、ナノスケール導電性金属酸化物、ナノスケール不活性粒子、例えば二酸化ケイ素等、および必要に応じてさらなる添加剤、例えば分散助剤等を含む表面被覆系が記載されている。用いる不活性ナノ粒子の平均粒度は2nm〜100nmであり、粒子は乾燥皮膜を基準として0.1重量%〜50重量%の量で用いる。
【0005】
JP61−181809には、α,β−不飽和カルボン酸および水または低原子価アルコールに分散した二酸化ケイ素コロイド粒子を含む、良好な接着特性および高い耐摩耗性を有する被覆物のためのUV硬化性組成物が開示されている。
【0006】
JP2005−179539には、0重量%〜80重量%の微細粒子、例えば二酸化ケイ素等および100重量%〜20重量%のプラスチック物質からなる20重量%〜99重量%の混合物、ならびに2個のアニオン性置換基を有する0.5重量%〜30重量%のスルホスクシネートを含む防曇性被覆物が記載されている。
【0007】
EP0050996には、高透明性、風化に対する安定性および耐引掻性を有する被覆物の製造用の多官能性アクリル酸エステルに基づく表面被覆組成物が記載されている。記載のアクリル酸誘導体に加えて、該組成物は、重合開始剤ならびに無機充填剤、例えば1nm〜1μmの平均粒径を有し、1.40〜1.60の屈折率を有する二酸化ケイ素等を含んでなる。
【0008】
US4499217には、10μm〜50μmの平均粒径を有するコロイド二酸化ケイ素および熱硬化性化合物、例えばアクリル酸化合物を含む無水表面被覆組成物が記載されている。硬化被覆物は、良好な耐摩耗性ならびに基材への良好な接着性を示す。
【0009】
JP2001−019874には、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)メチルメタクリレート、アクリルアミド、光開始剤、分散助剤および良好な接着性および増加した耐引掻性を有する被覆物の製造用のシリカを含む組成物が開示されている。
【0010】
WO2006/049008には、N,N−ジメチルアセトアミドのような高沸点性溶媒中に懸濁したシリカ粒子をベースとする親水性被覆物が記載され、非イオン界面活性剤(L−77)のアルコール溶液を該懸濁液に添加し、次いで、焼き戻しを10分間100℃で行う。被覆物は親水性の表面を生じさせ、20°未満の水での濡れ角が得ることが可能である。該方法は、防曇性に関する眼鏡レンズの被覆物に用いられる。しかしながら、これらの条件は、用いる溶媒に対する敏感性に起因してプラスチック基材の被覆に適していない。
【0011】
US4383057には、ポリビニルブチラールの有機溶液およびコロイドシリカのアルコール懸濁液の混合物からなる注入性処方物が記載されている。該組成物は、乾燥重量を基準として、ポリビニルブチラール20重量%〜95重量%およびシリカ80重量%〜5重量%から構成することができる。安定性値、例えば耐引掻性、化学薬品および燃焼性に対する耐性等の向上について、ポリマーポリビニルブチラールが架橋され、その目的のために例えばアルキルエーテルで変性されたメチロールメラニンが用いられる。表面特性、例えば親水性または水濡れ角等に関するさらなる情報は記載されていない。本出願と比べると、これらはUV架橋性処方物ではない。
【0012】
WO2006/048277に記載のとおり、とりわけ高くかつ密度の高いシリカ構造を有する表面が製造される場合、シリカの堆積は、シリカ前駆体、例えばヘキサメチルジシラザンまたはテトラエトキシシランからの火炎加水分解により局所的に影響を受けることが多い。このような被覆物の疎水性の性質は、フルオロアルキルシランの組み込みによりさらに強化することができる。
【0013】
EP0337695には、固体、とりわけ透明な基材の耐摩耗性被覆物のための二酸化ケイ素分散体が開示されている。該分散体は、プロトン置換エステルまたはアクリル酸またはメタクリル酸のアミドに分散した、100nmより小さい、好ましくは75nmより小さい、特に好ましくは50nmより小さい粒度を有するコロイド二酸化ケイ素を含んでなる。用いる不飽和モノマー1重量部あたり0.1〜2.5重量部の二酸化ケイ素を用いる。該分散体は、光開始剤の添加後にUV放射線により適当な基材上で硬化することができる。
【0014】
EP0505737には、メタクリレート官能化コロイドシリカナノ粒子を含むUV架橋性アクリレート系が記載されている。優れた耐候特性に加えて、対応する表面被覆物は、良好な摩耗値、例えば500サイクル後に6〜8%のTaberヘイズを示す。メタクリレート官能化シリカナノ粒子は、メタアクリロイルプロピルトリメトキシシランおよびコロイドシリカナノ粒子から調製された生成物である。それに対し、アクリレート変性シリカナノ粒子もまた、Nanoresinsから名称「Nanocryl」として、またはClariantから名称「Highlink Nano」として市販され始めている。
【0015】
耐引掻性および耐摩耗性接着剤として供給されるこれらの生成物は、錯体化学によりその特性についてあまり狭く定義されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】独国特許出願公開第10311639号明細書
【特許文献2】特開昭61−181809号公報
【特許文献3】特開2005−179539号公報
【特許文献4】欧州特許第0050996号明細書
【特許文献5】米国特許第4499217号明細書
【特許文献6】特開2001−019874号公報
【特許文献7】国際公開第2006/049008号パンフレット
【特許文献8】米国特許第4383057号明細書
【特許文献9】国際公開第2006/048277号パンフレット
【特許文献10】欧州特許第0337695号明細書
【特許文献11】欧州特許第0505737号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の課題は、極めて良好な耐引掻性、摩耗値および耐候特性を有すると同時に、低ヘイズを有し、種々の基材に極めてよく接着する非常に透明な硬質コート系を提供することである。ヘイズは、ASTM 1003−00に従うヘイズ(H)値により決定され、1%H未満、好ましくは0.6%H未満となる。摩耗値は、ASTM 1003−00に従って決定され、1000摩耗サイクル後に12%H未満、好ましくは8%H未満、特に好ましく6%H未満となる。接着性は、クロスカット法により決定され、2未満、好ましくは1未満、特に好ましくは0のISO値を示す。これらの表面被覆特性はとりわけ、数時間、例えば2〜4時間の沸騰水中での沸騰試験後、水中において高温で長期間貯蔵後、ならびに耐候性試験、例えばASTM G 26、G 151またはG 155に従ってXenon−WOM(Weather−Ometer(登録商標))中での人工照明/耐候性試験後でさえ維持される。さらに、初めに記載した特性、例えば防曇性、帯電防止性、親水性および化学薬品耐性等を本発明による被覆物中に可能な限り多く達成することが可能となる。
【0018】
とりわけ本発明の課題に従う特性プロファイルを示す親水性表面特性を有する硬質コート系について、先行技術と比べて適当な処方物の提供の必要性が増加し続けている。
【0019】
さらに、とりわけ、例えばカチオン性化合物を含む水溶液からのさらなる被覆物のためのプライマー層としてこれらの表面を用いることが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
意外にも、所望の要求特性の大部分を、本発明による系を用いて高度に達成することができることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
従って、本発明は、
a)プロトン化未変性シリカナノ粒子、
b)ウレタンアクリレート、
c)極性溶媒、および
d)UV開始剤系
を含み、プロトン化未変性シリカナノ粒子の重量による量がウレタンアクリレートの含有量を越え、かつ被覆物の乾燥重量を基準として少なくとも50.1重量%であるUV架橋性組成物に関する。
【0022】
成分a)未変性シリカナノ粒子は、好ましくは有機の極性溶媒に分散され、および遊離SiOH基に起因して酸性pH値を有するプロトン化二酸化ケイ素ナノ粒子(シリカナノ粒子)である。とりわけ、これらは1nm〜約100nmの粒径を有する球状SiO粒子であり、50nmより小さい、特に好ましくは30nmより小さい粒度を有する粒子を使用するのが好ましい。異なった粒度を有するシリカナノ粒子の混合物を用いることも可能である。
【0023】
このようなシリカナノ粒子は、種々の粒度において、極性有機溶媒中での分散体の形態で、種々の企業、例えばNissanまたはClariant等により供給される。例えば、Nissanは、10nm〜100nmの粒度を種々の極性溶媒、例えばメタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコール、エチレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートまたはN,Nジメチルアセトアミド等において供給する。
【0024】
好ましく用いるシリカナノ粒子分散体は、Nissanからの型Organosilikasol(登録商標)IPA STである。これはイソプロパノール中での30重量%シリカ分散体であり、粒度は10〜15nmであり、含水量が1%未満であり、粘度は<15mPasであり、比重は0.98〜1.02およびpH値は2〜4で規定される。それ自体利用可能なシリカ分散体を、異なった分散媒中に、蒸留溶媒交換によりまたは膜処理により容易に移すこともできる。例えば、先に記載の型Organosilikasol(登録商標)IPA STは、ジアセトンアルコール(DAA)系分散体にジアセトンアルコール(DAA、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン)を添加し、低沸点イソプロピルアルコールを蒸留することにより容易に移すことができる。
【0025】
好ましく用いるClariantからの他のシリカナノ粒子は、名称HIGHLINK(登録商標)Nano G 401であり、以下の仕様を有する:粒度:13nm、SiO含量:30重量%および粘度<100mPas、密度:1.1g/cm、分散媒はエチレングリコールn−プロピルエーテル(プロピルグリコール)であり、独自の計測によるpH値は4である。
【0026】
極性有機溶媒中におけるプロトン化シリカ粒子に加えて、NALCOもまた、名称Nalco(登録商標) 1034Aとして、20nmの粒度および3のpH値を有する水系プロトン化シリカ粒子を供給する。
【0027】
先に記載の有機ベースのシリカナノ粒子分散体は、実験室においてアルカリ安定化シリカナノ粒子水性分散体から出発して容易に調製することもできる。アルカリ安定化シリカ水性分散体は、例えば製品名Levasil(登録商標)、Ludox(登録商標)またはNalco(登録商標)として、異なった粒度において種々の製造業者により供給される容易に入手可能な極めて安価な生成物である。これらのアルカリ安定化分散体は、9〜10のpH価を有し、その含水量および高いpH値のために本発明による処方物のための形態に不適当である。しかしながら、以下の実施例に記載のとおり、これらは、的確な方法で相当するプロトン化形態に、極性有機溶媒中で、カチオン交換体および蒸留溶媒交換を用いて変換することができる:
【0028】
500.00gのLevasil 300(登録商標)/30 %(Na+安定化シリカナノ粒子水性懸濁液、30重量%、300m/g、pH10、H.C.Starck、独国)に、250gのLewatit S 100(登録商標)(H形態での酸性カチオン交換器)を添加した。懸濁液を1時間、マグネチックスターラーを用いて撹拌し、次いでイオン交換体を紙フィルター上でろ過により分離した。100.00gのジアセトンアルコール(DAA、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン)をろ液に添加した。
【0029】
水を、ロータリーエバポレーターにより約15〜20mbarの減圧下で蒸留した。300mlの蒸留液が得られた場合には、さらなる200.00gのジアセトンアルコールを添加し、濃縮を真空下でさらに行った。濃縮の工程を蒸留により行い、30重量%懸濁液がジアセトンアルコール中に得られるまで固形分分析により監視した。含水量は、Karl Fischerにより決定し、3.8重量%であった。
【0030】
本発明の範囲には、7を越えるpH値を有する脱プロトン化アルカリ安定化水性懸濁液を用いるシリカ含有処方物は含まれない。同じく、例えばコロイドシリカとメタアクリロイルプロピルトリメトキシシランとの反応により調製することができる、化学変性、例えばアクリレート変性されたシリカ変性物は特許請求されない(EP0505737)。
【0031】
シリカとウレタンアクリレートとの比は、本発明について重要である。実施例3bに記載の通り、ヘイズおよび摩耗性について著しく低い値が、比較的低いシリカ含量、例えば乾燥皮膜重量を基準として35重量%のシリカを有する被覆物の場合に得られることを見出した。従って、本発明による処方物では、シリカ含量はウレタンアクリレートの含量を超え、従ってシリカの含量は乾燥被覆物中において少なくとも50.1重量%以上である。
【0032】
成分b)ウレタンアクリレートは、(メタ)アクリル酸、ポリオールおよび多官能性イソシアネートの反応生成物である。ウレタンアクリレートは、(メタ)アクリロイル基を含有するアルコールおよびジ−またはポリ−イソシアネートから調製される。ウレタンアクリレートについての調製方法は原理上既知であり、例えばDE−A−1644 798、DE−A2115373またはDE−A−2737406に記載されている。(メタ)アクリロイル基を含有するアルコールは、アクリル酸またはメタクリル酸と、二価アルコール、例えば2−ヒドロキシエチル、2−または3−ヒドロキシプロピルまたは2−、3−、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートおよびこのような化合物の任意の所望の混合物等との、遊離ヒドロキシル基を含有する両方のエステルであるとして理解されるべきである。さらに、(メタ)アクリロイル基を含有する一価アルコール、またはこのようなアルコールから実質的に構成される反応生成物も考慮され、これらは、n−水素アルコールと(メタ)アクリル酸および必要に応じてさらなるジカルボン酸とのエステル化により得られ、これは、アルコールとして異なったアルコールの混合物も用いることが可能であり、nは2より大きく4まで、好ましくは3の統計的手法における整数または分数を表し、記載のアルコール1モルあたりn−1モルの(メタ)アクリル酸を特に好ましく用いる。
【0033】
(メタ)アクリロイル基を含有するこのような一価アルコールとε−カプロラクトンとの反応生成物を用いることも可能である。好ましいものは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンとの反応生成物である。
【0034】
適当なジ−またはポリ−イソシアネートは、原理上(シクロ)脂肪族、芳香脂肪族および芳香族化合物であり、(シクロ)脂肪族化合物は好ましくは、例えばヘキサメチレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタンまたはウレタン構造、イソシアヌレート構造、アロファネート構造、ビウレット構造、ウレトジオン構造を有するその誘導体、およびそれらの混合物である。
【0035】
これらは、Bayer MaterialScienceにより製品名Desmolux(登録商標)として市販されている。
【0036】
使用可能な多官能性イソシアネートおよびポリオールの多くの異なった構造形態により、調節可能な生成物特性を有するカスタマイズされた生成物が使用可能である。
【0037】
例えば、向上したアクリレート含量および従って高架橋密度は高官能性ポリオールにより確立することができる。適当な多官能性(通常二官能性または三官能性)イソシアネートを選択することにより、例えば耐光性または柔軟性のような特性に影響を与えることができる。このようなウレタンアクリレートは通常、有機溶媒、例えばアルコールまたはエステル等に可溶性である。しかしながら、極めて親水性のポリオール成分、例えばエトキシル化単位を用いることにより、水中に分散性の生成物を調製することもできる。例えば、このような生成物は、名称Desmolux(登録商標) KPP 11 376として得られる。
【0038】
個々の構造単位の選択に応じて、Desmolux(登録商標)ウレタンアクリレートは、異なった分子量を有することができるが、これは好ましくは200〜3000g/molの範囲、特に好ましくは300〜1000g/molの範囲である。Desmolux(登録商標)ウレタンアクリレート系は、溶媒を含まずにまたはいわゆる反応性希釈剤と組み合わせて供給される。反応性希釈剤は、定義上、被覆物を硬化する方法においてバインダーの構成物質となる希釈剤である。これらは低分子量多官能性アクリレートであり、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)は、主として頻繁に用いる生成物である。HDDAに加えて、親水性反応性希釈剤、例えばジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)またはトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)等もまた、Desmolux(登録商標)生成物系列において供給される。親水性アクリレートまたは界面活性剤のようなアクリレートのさらなる例は、ポリエチレングリコール600ジアクリレート、ノニルフェノール(EO)アクリレートまたはイソボルニルアクリレートである。
【0039】
実施例1に記載の通り、全く意外にも、溶媒不含ウレタンアクリレートDesmolux(登録商標) U 100(不飽和脂肪族ウレタンアクリレート、反応希釈剤を含まない、23℃での粘度:7500+/−2000mPas、ヒドロキシル含量:約0.3、Bayer MaterialScience AG、独国)から出発して、被覆物の特性プロファイルを、とりわけ接着挙動および溶媒に対する耐性について、プロトン化未変性シリカナノ粒子の添加により大きく向上させることができることを見出した(試験法の正確な説明を実施例に示す)。例えば、ポリカーボネート基材(例えばMakrolon(登録商標) M 2808)についての通常のDesmolux(登録商標) U 100の表面被覆物は、わずか100摩耗サイクル後に40%ヘイズを越える高いヘイズ値を示すのに対して、相当するシリカ含有処方物を用いて5%ヘイズ未満の低摩耗値を有する被覆物を得ることが可能であった。しかしながら、これらの被覆物は、通常のDesmolux(登録商標)表面被覆物と同様に、溶媒に対して低い安定性をなお示した。これらの欠点における著しい改良(溶媒および化学薬品に対する安定性)を、ウレタンアクリレートを反応性希釈剤ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)と組み合わせて用いることにより得ることが可能であった。しかしながら、表面被覆特性のさらなる制限を、長期間試験(沸騰試験、より正確な説明は実施例に見出される)に見出した。接着性および表面被覆層の透明性はいずれも、損傷することなく水中(100℃)での4時間の沸騰試験に耐えたが、ヘアラインクラックが約1.5時間の沸騰試験後に拡大鏡により観察可能であった。全く意外にも、これらの欠点(ヘアラインクラック形成)は、OH官能性反応性希釈剤、例えばペンタエリトリトールトリアクリレート(PETA)またはジペンタエリトリトールペンタ/ヘキサアクリレート(DPHA)、またはその2つの混合物をDesmolux(登録商標) U 100と組み合わせて用いることにより抑制することができることを見出した。好ましく用いるウレタンアクリレートDesmolux(登録商標) U 100は、以下の仕様を有する反応性希釈剤不含UV−および電子線−硬化性表面被覆物である:23℃での粘度:7500+/−2000mPas、酸価:<2mgKOH/g、ヒドロキシル含量:約0.3%、密度:1.13g/mlおよび引火点:>100℃。
【0040】
従って、本発明の好ましい処方物は、ウレタンアクリレート、極性溶媒中のプロトン化シリカナノ粒子、反応性希釈剤およびUV開始剤を含み、ウレタンアクリレートは好ましくは脂肪族であり、反応性希釈剤は好ましくはOH官能性である。
【0041】
先行技術と比べて、このような処方物は、原料の入手可能性、機械特性、例えば耐摩耗性および耐引掻性等、光学特性、例えば透明性またはヘイズ、および黄色指数YI等、ならびに化学薬品および溶媒に対する安定性について向上した特性を示す被覆物を生じさせる。さらなる新規な特性は、シリカナノ粒子の含量がバインダー含量を超える処方物の場合に得られる。減少した静電気、または実施例4bに記載の通り、水溶性カチオン性化合物、例えばカチオン性高分子電解質への親和性のような特性を、増加した親水性の結果として得ることができる。
【0042】
成分c)極性溶媒についても幅広い範囲の可能性のある選択が存在する。主な基準は、シリカナノ粒子およびバインダーがいずれも同一の溶媒または溶媒混合物に相溶性であることである。分野「市販のシリカナノ粒子」に既に記載の通り、適当なものは、特にアルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、プロピルグリコール(エチレングリコールn−プロピルエーテル)、メトキシプロパノール(MOP、1−メトキシ−2−プロパノール)またはジアセトンアルコール(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン)、ケトン、例えばアセトン等、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エステル、例えばエチルアセテート、ブチルアセテートおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エーテル、例えばエチレングリコールn−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ならびにアミド溶媒、例えばN,N−ジメチルアセトアミドまたはN−メチルピロリドン等である。当然、溶媒混合物を用いてもよく、純粋形態でそれ自体適当でない溶媒、例えばトルエン等を少量存在させることも可能である。
【0043】
同様に、成分d)光開始剤および被覆添加剤についての幅広い範囲の可能性のある選択が存在する。光開始剤について、幅広い範囲の生成物が、CIBAの企業冊子「Photoinitiators for UV Curing」に記載されている。これらは、空気中でまたは不活性ガス下で、紫外線により照射を受けた場合、(メタ)アクリレート成分の重合を開始する。このような系は、用いるアクリレートの量を基準として数重量%(約2〜10)の量で通常添加され、例えば製品名Irgacure(登録商標)またはDarocure(登録商標)として得られる。混合物、例えばIrgacure 184/Darocure TPO等も用いることが多い。Irgacure 184(登録商標)は、ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトンであり、Darocure TPO(登録商標)は、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシドである。
【0044】
典型的な被覆添加剤として適当なものは、いわゆる流動性向上剤、例えばBYK(登録商標)添加剤等、界面活性剤、例えばAerosol(登録商標) OT、Dapro(登録商標) U 99等または非イオン性界面活性剤、例えばPluronic PE 6400またはSurfynol 465等である。さらに、紫外線安定性系、例えば立体障害アミンと組み合わせたトリアゾール等も処方物の成分として存在させてよい。
【0045】
基材について、本発明に従う処方物による最大の優位性は、熱可塑性プラスチック物品の場合に得られる。しかしながら、特性における大きな向上を、他の基材、例えば木材、セラミック、皮革、金属、繊維製品またはガラス等の場合に生じさせることもできる。本発明によるシリカ含有被覆物は、とりわけ、基材、例えばプリズム、レンズまたは眼鏡レンズ等の場合に非常に関係することがあり、これらは光屈折機能を有することになる。従って、例えば「反射防止」特性またはIR反射について用途が存在する場合、高屈折性層および低屈折性層の順序が関係する。1.56のポリカーボネートの屈折指数と比べて、約1.45のシリカの低い屈折指数(n)のため、高いシリカ含量を有する本発明による処方物は、低屈折層として上記の用途に適している。例えば、実施例5に記載の通り、意外にも、高いシリカ含量を有する本発明による被覆物により、純粋なバインダー系の値より著しく低い屈折指数値を得ることができる。
【0046】
しかしながら、新規な表面被覆物系の優れた「透明保護特性」のため、透明基材は好ましい。さらに特に好ましいものは、透明熱可塑性ポリマー、例えばポリカーボネート(Makrolon(登録商標)、Apec(登録商標))またはポリカーボネートブレンド(Makroblend(登録商標)、Bayblend(登録商標))、ポリメチルメタクリレート(Plexiglas(登録商標))、ポリエステル、脂環式オレフィン、例えばZeonor(登録商標)等、およびガラスである。
【0047】
本発明による組成物のためのポリカーボネートは、ホモポリカーボネート、コポリカーボネートおよび熱可塑性ポリエステルカーボネートである。
【0048】
ポリカーボネートおよびコポリカーボネートは通常、2000〜200000、好ましくは3000〜150000、特に5000〜100000、さらに特に好ましくは8000〜80000、とりわけ12000〜70000の平均分子量(重量平均)を有する(ポリカーボネート較正でのGPCにより決定)。
【0049】
本発明による組成物のポリカーボネートの製造について、例えば「Schnell、Chemistry and Physics of Polycarbonates、Polymer Reviews、第9巻、Interscience Publishers、ニューヨーク、ロンドン、シドニー1964年、D.C.PREVORSEK、B.T.Debona and Y.Kesten、Corporate Research Center、Allied Chemical Corporation、モリスタウン、ニュージャージー07960、「Synthesis of Poly(ester Carbonate)Copolymers」、Journal of Polymer Science、Polymer Chemistry Edition、第19巻、第75〜90頁(1980年)、D.Freitag、U.Grigo、P.R.Mueller、N.Nouvertne、Bayer AG、「Polycarbonates」、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第11巻、第2版、1988年、第648〜718頁、および最後にDres.U.Grigo、K.Kircher and P.R−Mueller「Polycarbonate」、 Becker/Braun、Kunststoff−Handbuch、第3/1巻、Polycarbonate、Polyacetale、Polyester、Celluloseester、Carl Hanser Verlag Munich、ウィーン1992年、117〜299頁を参照し得る。製造は好ましくは、界面法または溶融エステル交換法により行う。
【0050】
好ましいものは、ビスフェノールAに基づくホモポリカーボネートおよびモノマービスフェノールAに基づくコポリカーボネートおよび1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである。これらのまたは適当なビスフェノール化合物を、炭酸化合物、特にホスゲン、または溶融エステル交換法の場合には、ジフェニルカーボネートまたはジメチルカーボネートと反応させて、各ポリマーを形成する。
【0051】
本発明による被覆物の層厚みは通常、0.5〜500μm、好ましくは1〜50μm、さらに特に好ましくは2〜25μmの範囲である。光屈折機能を有する層の場合には、例えば50〜500nm、好ましくは100〜250nmの範囲の著しく低い値がさらに関係する。
【0052】
被覆物の塗布について、それ自体既知の方法、例えば流し塗り、ナイフ塗布、単一ローラー系または複数ローラー系による塗布、噴霧またはスピン塗布等は適当である。
【実施例】
【0053】
試験手順を記載する前に、先ず、表面被覆物の塗布のための基材および相当する試験法を記載する。
【0054】
基材:
基材1:Makrolon(登録商標) M 2808シート(ビスフェノールAポリカーボネート:中間粘度ビスフェノールAポリカーボネート、ISO 1133による300℃および1.2kgでのMFR 10g/10分、UV安定剤および離型剤を含まない)
【0055】
基材2:Makrolon(登録商標) Al 2647シート(ビスフェノールAポリカーボネート:UV安定剤および離型剤を含む中間粘度ビスフェノールAポリカーボネート、ISO 1133による300℃および1.2kgでのMFR 13g/10分)
【0056】
試験法
層厚み:白色光干渉計による(ETA SPB−T、ETA−Optik GmbH)
【0057】
接着性:DIN EN ISO 2409による:クロスカット試験。例えば、0のクロスカット等級は、全ての切り口が完全に滑らかであり、かつクロスカット四角形が剥がれ落ちていないことを意味する。クロスカット5:全てのクロスカット四角形が剥がれ落ちている。
【0058】
ヘイズ:ヘイズは、広角光散乱によりASTM D 1003−00に従って決定する。値は%ヘイズ(H)により与えられ、低い値、例えば0.5%Hは低ヘイズ、すなわち高い透明性を意味する。
【0059】
摩耗試験:擦り切れ耐性(摩耗)を、研磨円盤法を用いて散乱光の増加によって決定する。CS−10FCalibrase研磨円盤(型IV)を有する型5151Taber研磨器を、1円盤あたり500gの塗布重量で用いた。ヘイズ値が計測され、例えば500または1000サイクル後、低い値、例えば0.5%Hは良好な耐摩耗性を意味する。
【0060】
黄色指数(YI):YI試験は、紫外線による試験試料の黄変の計測である。低い値、例えばYI:0.5は、黄変の低い度合いを意味する。
【0061】
長期安定性および耐候性試験
長期安定性について、上記の試験基準を、例えば以下の応力条件下で決定する:
【0062】
水中での貯蔵:試料を、ASTM 870−02に従って、10日間水中で65+/−2℃の温度で貯蔵し、上記の試験を毎日行う。
【0063】
沸騰試験:試料を沸騰水中に設置し、上記の値を0.5、1、2、3および4時間後に決定する。4時間沸騰試験を損傷なく通過する場合には、良好な長期安定性を予測することができる。
【0064】
耐候性:天然試験と比べて、物質の光/耐候性に対する安定性の加速された決定を行う。より重要な基準要素(放射、熱、湿気、雨)はいわゆるWeather−Ometers(登録商標)によりシミュレートすることができる。例えば、いわゆるASTM G 155によるXenon WOMおよびDIN EN ISO 4892−2によるXenon High Energy試験を行う。
【0065】
実施例1:シリカを含むおよび含まない、反応性希釈剤を含まないウレタンアクリレート
a)シリカを含まない
30.0gのDesmolux(登録商標) U 100
1.2gのIrgacure(登録商標) 184
0.3gのDarocure(登録商標) TPO、および
94.5gのメトキシプロパノール(MOP、1−メトキシ−2−プロパノール)
を、撹拌しながら溶解し、3μm紙フィルターによりろ過した。
【0066】
b)シリカを含む
10.0gのDesmolux U 100(Bayer MaterialScience)
44.2gの1−メトキシ−2−propanol(MOP、KMF)
0.4gのIrgacure 184(CIBA)
0.1gのDarocure TPO(CIBA)、および
65.8gのHighlink 401−31(シリカナノ粒子、プロピルグリコール中に30重量%、Clariant)
を撹拌により均質化し、3μm紙フィルター上でろ過し、遮光瓶に導入した。
【0067】
基材の被覆:
寸法10×15cmの基材1(PC M 2808)および基材2(A1 2647)を、注入性溶液1a)および1b)を用いて流し塗りを行った。溶媒を10分間80℃で乾燥棚において蒸発させた。
【0068】
UV架橋性:
被覆基材をUV架橋させた(水銀ランプ、約1J/cm)。
乾燥フィルム中の計算シリカ含有量:65重量%。
結果を、比較のために以下の表に示す:
【0069】
【表1】

【0070】
表面被覆物はいずれも、基材1および2に塗布し、実質的な差異は、測定の精度内で観察されなかったので、基材1の結果のみを示す。この比較は、それ自体被覆するのがより困難である基材2(Al 2647)が、シリカ処方物を用いた場合でさえ、極めて良好な接着性および長期安定性を呈すことを示す。
【0071】
表に示す結果は、以下のように解釈することができる:
%ヘイズ:シリカ含有被覆物は意外にも、および有利に、相当するシリカ不含バージョンよりも低いヘイズ値を示す。
1000サイクル後の%ヘイズ:シリカ含有被覆物は、シリカ不含表面被覆物層より著しく良好な、すなわちより低い摩耗値を示す。
摩耗および沸騰試験:優れた接着性および長期安定性が、いずれの場合にも見出される。すなわち、架橋ウレタンアクリレートについて知られているプラスチック基材への良好な接着性は、高いシリカ含量により悪影響を受けない。
被覆物はいずれも、アセトン試験による溶媒に対する優れた耐性を示さなかった。
【0072】
実施例2:シリカを含むおよび含まない、反応性希釈剤HDDAを含まないウレタンアクリレート
a)シリカを含まない
18.0gのDesmolux(登録商標) U 100
2.0gのヘキサンジオールジアクリレート(HDDA、Aldrich)
63.2gのジアセトンアルコール(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、Acros)
0.8gのIrgacure 184(登録商標)、および
0.2gのDarocure(登録商標) TPO
を、撹拌により均質化し、3μm紙フィルター上でろ過し、遮光瓶に導入した。
【0073】
b)シリカを含む
8.0gのDesmolux(登録商標) U 100
2.0gのヘキサンジオールジアクリレート(HDDA、Aldrich)
53.2gのHighlink(登録商標) 401−31(n−プロピルグリコール中にシリカナノ粒子63重量%、Clariant)
42.0gのジアセトンアルコール
0.4gのIrgacure 184(登録商標)
0.1gのDarocure TPO(登録商標)
を、a)に記載の通り溶解した。
【0074】
被覆物およびUV架橋性:実施例1と同様
乾燥フィルム中における計算シリカ含量:65重量%
結果を、比較のために以下の表に示す:
【0075】
【表2】

【0076】
表面被覆物はいずれも、基材1および2に塗布し、実質的な差異は、測定の精度内で観察されなかったので、基材1の結果のみを示す。この比較は、それ自体被覆するのがより困難である基材2(Al 2647)が、シリカ処方物を用いた場合でさえ、極めて良好な接着性および長期安定性を呈すことを示す。
【0077】
表に示す結果は、以下のように解釈することができる:
%ヘイズ:シリカ含有被覆物は意外にも、および有利に、相当するシリカ不含バージョンよりも低いヘイズ値を示す。
1000サイクル後の%ヘイズ:シリカ含有被覆物は、シリカ不含表面被覆物層より著しくより有利な(より低い)摩耗値を示す。
摩耗および沸騰試験:優れた接着性および長期安定性がいずれの場合にも見出される。すなわち、架橋ウレタンアクリレートについて知られているプラスチック基材への良好な接着性は、高いシリカ含量により悪影響を受けない。しかしながら、ヘアラインクラックがシリカ含有処方物2b)において沸騰試験の1.5時間後に形成された。
被覆物はいずれも、アセトン試験による溶媒に対する優れた耐性を示す。
【0078】
実施例3:OH含有反応性希釈剤およびシリカを含むウレタンアクリレート
3a:シリカ含量:65重量%
6.0gのジペンタエリトリトールペンタ/ヘキサアクリレート(DPHA、Aldrich)
72.0gの1−メトキシ−2−プロパノール(MOP、KMF)
9.0gのDesmolux U 100(登録商標)
0.6gのIrgacure 184(登録商標)
0.15gのDarocure TPO(登録商標)、および
122.5gのHighlink(登録商標) 401−31(Clariant)
を、撹拌により均質化し、3μm紙フィルター上でろ過し、遮光瓶に導入した。
基材の被覆およびUV架橋:実施例1と同様
乾燥フィルムにおける計算シリカ含量:70重量%
結果を、比較のために以下の表に示す:
【0079】
【表3a】

【0080】
表面被覆物はいずれも、基材1および2に塗布し、実質的な差異は、測定の精度内で観察されなかったので、基材1の結果のみを示す。この比較は、それ自体被覆するのがより困難である基材2(Al 2647)が、シリカ処方物を用いた場合でさえ、極めて良好な接着性および長期安定性を呈すことを示す。
【0081】
表に示す結果は、以下のように解釈することができる:
%ヘイズ:シリカ含有被覆物は意外にも、および有利に、非常に低いヘイズ値を示す。
1000サイクル後の%ヘイズ:5%H未満の低い値は、優れた耐摩耗性を有する被覆物を示す。
摩耗および沸騰試験:優れた接着性および長期安定性がいずれの場合にも見出される。すなわち、架橋ウレタンアクリレートについて知られているプラスチック基材への良好な接着性は、高いシリカ含量により悪影響を受けない。実施例2の沸騰試験と比較して、表面被覆物における欠陥、例えばクラック形成は、4時間の沸騰後でさえ認められなかった。
被覆物はいずれも、アセトン試験による溶媒に対する非常に優れた耐性を示す。
【0082】
3b:シリカ含量:35重量%
6.0gのジペンタエリトリトールペンタ/ヘキサアクリレート(DPHA、Aldrich)
53.0gの1−メトキシ−2−プロパノール(MOP、KMF)
9.0gのDesmolux U 100(登録商標)
0.6gのIrgacure 184(登録商標)
0.15gのDarocure TPO(登録商標)、および
28.3gのHighlink(登録商標) 401−31(Clariant)
を、撹拌により均質化し、3μm紙フィルター上でろ過し、遮光瓶に導入した。
基材の被覆およびUV架橋:実施例1として
乾燥フィルムにおける計算シリカ含量:35重量%
結果を、比較のために以下の表に示す:
【0083】
【表3b】

【0084】
結果からわかるように、低減したシリカ含量を有する表面被覆物は、ヘイズ(%ヘイズ)、耐摩耗性(1000サイクル後の%ヘイズ)および溶媒に対する耐性についてかなり低い値を示す。
【0085】
実施例1〜3の結果を比べた場合、表に列挙した試験基準は全て、処方物が高いシリカ含量およびOH官能性反応性希釈剤をウレタンアクリレートに加えて含有する場合に、同時に最適な方法により得られることが示されている。
【0086】
実施例4:負に帯電した表面および防曇特性を有する親水性硬質コート被覆物
4.0gのペンタエリトリトールトリアクリレート(PETA、Aldrich)
6.0gのDesmolux(登録商標) U 100
0.4gのIrgacure(登録商標) 184
0.1gのDarocure(登録商標) TPO
71.2gのHighlink(登録商標) 401−31
1.0gのAerosol(登録商標) OT(ジオクチルスルホスクシネートNa、DSSNa、Cytec)、および
136.0gの1−メトキシ−2−プロパノール
を撹拌しながら溶解し、3μm紙フィルター上でろ過した。
【0087】
基材の被覆およびUV架橋は実施例1と同様に流し塗りにより行った。
乾燥フィルム中における計算シリカ含量:65重量%
乾燥フィルム中における計算界面活性剤(DSSNa)含量:3重量%
以下の表面被覆特性を決定した:
層厚み:0.9〜2.0μm
ヘイズ%:0.14
1000サイクル後の%ヘイズ:11.4
【0088】
4a:防曇特性の決定
ブリージング:被覆基材表面に息を吹きかけた後、曇りは確認されなかったのに対し、凝縮した水蒸気で曇った表面は比較試料の場合に得られた(界面活性を用いない実施例3からの被覆物)。
温室試験:実施例4に記載のDSSNa含有試料を、6時間、ほぼ100%の湿度が確立した小型温室内部において暴露した。実施例3からの界面活性不含被覆物を比較試料として用いた。持続的な曇りを、比較試料の場合に直ぐに確認したが、実施例4からの界面活性剤含有被覆物による試料は、透明性を完全に維持した。6時間後の暴露後、試料を、4時間40℃で乾燥させ、高湿度に6時間再び暴露した。この場合にも、曇りは確認されなかった。これらの湿潤/乾燥サイクルを合計10時間繰り返し、透明性(防曇特性)は、全ての場合において完全に維持された。
【0089】
4b:高分子電解質単一層概念によるカチオン性ポリマーによる、負に帯電した親水性表面の被覆
実施例4からの被覆物によるポリカーボネート基材を、10分間、以下の0.1%水性ポリマー溶液(カチオン性高分子電解質)中で含浸させた:ポリアリルアミンヒドロクロリド(PAH)、キトサンヒドロアセテートおよびポリジアリルジメチルアンモニウムヒドロクロリド(PDADMAC)。次いで、含浸表面を水で洗浄し、10分間80℃で空気循環乾燥棚において乾燥させた。
カチオン性電解質の吸着についての機能試験を、0.1%水性イオン染料溶液を用いて行った:カチオン性高分子電解質を、約1分間、負に帯電した青色染料溶液エリオグラウシン中で含浸させ、次いで水で洗浄した。均一な青色を検出することができた。比較試験では、同一の基材をカチオン性青色染料メチレンブルー中に含浸させ、洗浄した。この場合、着色されなかった。さらなる比較試験では、実施例4からの未変性基材(負に帯電した表面)を、反対の効果が観察されるとすぐに、同一の染料溶液中に含浸させた:カチオン性染料溶液メチレンブルーによる顕著な染色可能性が存在するが、アニオン性染料溶液エリオグラウシンは染色可能性を示さなかった。
【0090】
実施例5:屈折指数の決定
5a:70重量%のシリカ含有量で実施例3に記載の処方物を石英ガラス試料ホルダーにスピンコーターを用いて塗布し、約300nmの層厚みを得た。屈折指数値をBMS061073に詳細に説明された方法に従って決定した:被覆物の透過および反射スペクトルをSTEAG ETA−Optikからの分光計、CD−Measurement System ETA−RTを用いて測定し、次いで層厚さおよびnおよびkのスペクトル経過を透過および反射の測定スペクトルに適合させた。これは、分光計の内部ソフトウェアにより得られ、予めブランク測定において決定した石英ガラス基材のnおよびkのデータをさらに必要とする。kは以下の光強度の減衰定数αに依存する:
【数1】

(λは光の波長である)。
【0091】
実施例8からのシリカ含有処方物(シリカ70重量%)の場合には、1.48の反射指数は、750nmの波長で決定した。
【0092】
5b:比較試験では、シリカを含まないウレタンアクリレート被覆物を調製した:
18.0gのDesmolux(登録商標) U 400、および
1.0gのIrgacure(登録商標) 184
を、
86.0gのメトキシプロパノール
に溶解し、実施例5aと同様に石英試料ホルダーに適用し、屈折指数について調査した。1.54の値nを750nmの波長で決定した。
結果は、屈折指数を、高いシリカ含量によりかなり(0.06単位ごとに)低減することができることを示す。
【0093】
実施例6:Desmolux(登録商標) VP LS 2266によるシリカ含有処方物および反応性希釈剤PETiA
6.0gのペンタエリトリトールトリアクリレート(PETiA、Aldrich)
9.0gのDesmolux(登録商標) VPLS 2266(Bayer MaterialScience)
0.6gのIrgacure 184(登録商標)
0.15gのDarocure(登録商標) TPO
99.0gのHighlink(登録商標) 401−31
0.27gのジオクチルスルホスクシネート(DSSNa)、および
68.0gの1−メトキシ−2−プロパノールを撹拌しながら混合し、3μm紙フィルター上でろ過した。
被覆物およびUV架橋性を実施例1と同様に行った。
乾燥フィルム中における計算シリカ含有量:65重量%
【0094】
Desmolux(登録商標) VPLS 2266:不飽和芳香族エポキシアクリレート、23℃での粘度:4500〜8500mPas、ヒドロキシル含有量:1.8%、酸価:約2mgKOH/g
結果を、比較のために以下の表に示す:
【0095】
【表4】

【0096】
この実施例では、実施例3と比べて異なった組成物を有するウレタンアクリレートが存在する。その他の点では、該系は、高いシリカ含有量およびOH官能性アクリレート反応性希釈剤を含んでなる。従って、表に記載の試験基準を、最適な態様で主に充足する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)プロトン化未変性シリカナノ粒子、
b)ウレタンアクリレート、
c)極性溶媒、および
d)UV開始剤系
を含み、プロトン化未変性シリカナノ粒子の重量による量が、ウレタンアクリレートの含有量を越え、および被覆物の乾燥重量を基準として少なくとも50.1重量%である、UV架橋性組成物。
【請求項2】
ウレタンアクリレートは、不飽和脂肪族ウレタンアクリレートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、OH官能性反応性希釈剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
極性溶媒c)は、アルコールまたはアミド溶媒である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ウレタンアクリレートは、炭素原子を30個より多く有するウレタンアクリレートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ウレタンアクリレートとプロトン化未変性シリカナノ粒子との重量部の比は、25:75(アクリレート:シリカ)〜45:55である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
ウレタンアクリレートとプロトン化未変性シリカナノ粒子との重量部の比は、30:70(アクリレート:シリカ)〜40:60である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
a)プロトン化未変性シリカナノ粒子、
b)脂肪族ウレタンアクリレート、
c)極性溶媒、
d)UV開始剤系
を含み、およびOH官能性反応性希釈剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
i)プロトン化未変性シリカナノ粒子a)を含む懸濁液を調製する工程、
ii)ウレタンアクリレートb)、UV開始剤系d)および極性溶媒c)を、光を排除して混合する工程、
iii)i)からの懸濁液およびii)からの混合物を、光を排除して混合する工程
を特徴とする、請求項1に記載の組成物の製造方法。
【請求項10】
懸濁液i)はプロトン化未変性シリカナノ粒子5〜80重量%を含み、および混合物ii)は極性溶媒中にウレタンアクリレート5〜60重量%およびUV開始剤系0.1〜10重量%を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
表面の被覆物における請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物を表面に塗布し、紫外線により照射することを特徴とする、表面を被覆する方法。
【請求項13】
請求項1に記載の組成物を用いて、または請求項12に記載の方法により被覆された表面を有する成形体。
【請求項14】
コロイドシリカ、架橋アクリレートおよびUV開始剤を含む表面被覆物を有する成形体。
【請求項15】
カチオン化合物または双性イオン化合物を、引き続く工程において表面に塗布することを特徴とする、請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2011−510123(P2011−510123A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542561(P2010−542561)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000024
【国際公開番号】WO2009/090003
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】