説明

ウレタンゴム系塗膜防水材施工用二液型ウレタン組成物及びこれを用いたウレタンゴム系塗膜防水材の施工方法

【課題】無加温でも機械圧送による施工が可能なウレタンゴム系塗膜防水材施工用二液型ウレタン組成物を提供する。
【解決手段】トリレンジイソシアネートとポリオール化合物とが反応してなるイソシアネート末端プレポリマーを主成分とする主剤と、芳香族ポリアミンを主成分とする硬化剤とからなり、前記主剤中の可塑剤の含有率は30重量%以下であり、前記トリレンジイソシアネートとポリオール化合物との比はトリレンジイソシアネートのNCO基とポリオール化合物のOH基とのモル比としてNCO基/OH基=1.8〜2.2であり、前記ポリオール化合物はポリオキシプロピレンジオール及び/又はポリオキシエチレンプロピレンジオールを91〜100重量%含み、かつ前記ポリオキシプロピレンジオール及び/又はポリオキシエチレンプロピレンジオールの平均分子量が1500以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタンゴム系塗膜防水材の施工に使用する二液型ウレタン組成物及びこれを用いたウレタンゴム系塗膜防水材の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な手塗り塗工タイプのウレタン防水材では、主剤・硬化剤の粘度は常温で4000〜12000mPa・s程度である。しかし、冬季(低温時)には高粘度となり、手作業で塗工する場合においても、機械で材料を圧送する場合においても、トルエンやキシレンなどの溶剤を添加して粘度を低くする必要がある。これは、主剤の主成分であるイソシアネート(例えばTDI:トリレンイソシアネート)末端プレポリマー、および硬化剤中の芳香族ポリアミン(例えばMOCA:3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン)が配合されているため、温度による影響を受けやすいことによる。
【0003】
また、吹付け塗工タイプのウレタン防水材では、主剤・硬化剤の粘度は常温で300〜2000mPa・s程度である。しかし、硬化塗膜の品質確保のため、専用の機械で加温して、粘度を下げて高圧力で吐出させる必要がある。吹付け塗工は、塗工範囲外への防水材の付着を防止するために、フィルムなどで覆って養生をする必要がある。また、塗工時の風の影響により、近隣への飛散の問題が発生する。
【0004】
特許文献1には、ウレタン防水材を機械圧送によって施工する場合に、予熱なしで圧送可能にするため、季節によって粘度を所定の範囲に調整することが記載されている。しかし、特許文献1の段落0027および試験例2〜9に記載されているように、粘度調整のためキシレン等の有機溶剤を添加すると、有機溶剤の揮発による問題がある。また、施工時の気温に応じて現場で有機溶剤や可塑剤の添加量を調整して所望の粘度を得るのは困難である。
【0005】
特許文献2には、a.トリレンジイソシアネートと反応させるポリオールの主原料としてポリオキシプロピレンポリオール及び/又はポリオキシエチレンプロピレンポリオールを使用するとともに、ポリオールの30〜90重量%をジオールとし、
b.前記硬化剤中の芳香族ポリアミン架橋剤の主成分をジエチルトルエンジアミン(DETDA)とし、
c.前記硬化剤中の可塑剤の使用量をイソシアネート末端プレポリマー100重量部に対して20〜130重量部とし、
d.前記主剤と前記硬化剤とを、主剤中のプレポリマーのイソシアネート基と硬化剤中の芳香族ポリアミンのアミノ基との当量比が0.8〜2.0となるように施工現場で混合し、塗工して硬化せしめることを特徴とする常温硬化型速硬化性ポリウレタン塗膜防水材の製造方法が記載されている。しかしながら、特許文献2に記載の発明においては、硬化剤として反応性の高いDETDAを用いたときには、所望の可使時間を得るため、硬化剤中に、イソシアネート末端プレポリマー100重量部に対して20〜130重量部の可塑剤を使用することが必要である(引用文献2の段落0013、0021参照)。このため、機械圧送で施工する場合には、主剤の体積と比べて硬化剤の体積がかなり大きくなり、主剤に対して硬化剤を短時間で混合することが困難になる。
【特許文献1】特許第2703867号公報
【特許文献2】特許第3114557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、無加温でも機械圧送による施工が可能なウレタンゴム系塗膜防水材施工用二液型ウレタン組成物及びこれを用いたウレタンゴム系塗膜防水材の施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、スプレー装置に向けてそれぞれ別のポンプで圧送供給した主剤と硬化剤とをスタティックミキサーで混合して得られる混合物を前記スプレー装置から吐出して塗工する圧送塗工に用いられるウレタンゴム系塗膜防水材施工用二液型ウレタン組成物であって、トリレンジイソシアネートとポリオール化合物とが反応してなるイソシアネート末端プレポリマーを主成分とする主剤と、芳香族ポリアミンを主成分とする硬化剤とからなり、前記主剤中の可塑剤の含有率は30重量%以下であり、前記トリレンジイソシアネートとポリオール化合物との比はトリレンジイソシアネートのNCO基とポリオール化合物のOH基とのモル比としてNCO基/OH基=1.8〜2.2であり、前記ポリオール化合物はポリオキシプロピレンジオール及び/又はポリオキシエチレンプロピレンジオールを91〜100重量%含み、かつ前記ポリオキシプロピレンジオール及び/又はポリオキシエチレンプロピレンジオールの平均分子量が1500以上であることを特徴とするウレタンゴム系塗膜防水材施工用二液型ウレタン組成物を提供する。
【0008】
本発明のウレタンゴム系塗膜防水材施工用二液型ウレタン組成物において、トリレンジイソシアネートは、その異性体中、2,4−トリレンジイソシアネートの含有率が65重量%以上であることが好ましい。
主剤および硬化剤は、いずれも無溶剤であることが好ましい。
主剤および硬化剤は、いずれも重金属化合物系触媒を含まないものであることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、スプレー装置に向けてそれぞれ別のポンプで圧送供給した主剤と硬化剤とをスタティックミキサーで混合して得られる混合物を前記スプレー装置から吐出して塗工する圧送塗工によるウレタンゴム系塗膜防水材の施工方法であって、前記主剤の主成分はトリレンジイソシアネートとポリオール化合物とが反応してなるイソシアネート末端プレポリマーであり、前記硬化剤の主成分は芳香族ポリアミンであり、前記主剤中の可塑剤の含有率は30重量%以下であり、前記トリレンジイソシアネートとポリオール化合物との比はトリレンジイソシアネートのNCO基とポリオール化合物のOH基とのモル比としてNCO基/OH基=1.8〜2.2であり、前記ポリオール化合物はポリオキシプロピレンジオール及び/又はポリオキシエチレンプロピレンジオールを91〜100重量%含み、かつ前記ポリオキシプロピレンジオール及び/又はポリオキシエチレンプロピレンジオールの平均分子量が1500以上であることを特徴とするウレタンゴム系塗膜防水材の施工方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のウレタンゴム系塗膜防水材施工用二液型ウレタン組成物によれば、気温の低い冬季でも、無加温で機械圧送による施工が可能となり、労働力が低減できる。また、十分な可使時間を有するため、吐出後にコテ、ヘラ、レーキ等の工具を用いて手塗り塗工を行うことも可能である。また、十分に速い硬化性を有するので、ウレタン塗膜防水材の施工後に、次工程の作業が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のウレタンゴム系塗膜防水材施工用二液型ウレタン組成物は、スプレー装置に向けてそれぞれ別のポンプで圧送供給した主剤と硬化剤とをスタティックミキサーで混合して得られる混合物を前記スプレー装置から吐出して塗工する圧送塗工に用いられるウレタンゴム系塗膜防水材施工用二液型ウレタン組成物であって、トリレンジイソシアネートとポリオール化合物とが反応してなるイソシアネート末端プレポリマーを主成分とする主剤と、芳香族ポリアミンを主成分とする硬化剤とからなり、前記主剤中の可塑剤の含有率は30重量%以下であり、前記トリレンジイソシアネートとポリオール化合物との比はトリレンジイソシアネートのNCO基とポリオール化合物のOH基とのモル比としてNCO基/OH基=1.8〜2.2であり、前記ポリオール化合物はポリオキシプロピレンジオール及び/又はポリオキシエチレンプロピレンジオールを91〜100重量%含み、かつ前記ポリオキシプロピレンジオール及び/又はポリオキシエチレンプロピレンジオールの平均分子量が1500以上であることを特徴とする。このような組成とすることにより、伸び率が高く、抗張積が大きい硬化塗膜が得られ、施工対象物の亀裂や表面起伏に対する追従性に優れるものとなる。
【0012】
(主剤)
本発明において、主剤の主成分であるイソシアネート末端プレポリマーは、トリレンジイソシアネート(TDI)とポリオール化合物とが反応してなるものが用いられる。イソシアネート末端プレポリマーは、反応したトリレンジイソシアネートとポリオール化合物との比が、トリレンジイソシアネートのイソシアネート基(NCO基)とポリオール化合物の水酸基(OH基)とのモル比として、NCO基/OH基=1.8〜2.2の範囲のものが用いられる。
【0013】
前記トリレンジイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−異性体)を100%含むもののほか、2,6−トリレンジイソシアネート等、他の異性体との混合物であっても良い。2,4−トリレンジイソシアネートの含有率は、所望の可使時間を得るため、65重量%以上が好ましい。2,4−異性体の含有率の低いものを使用して生成されたイソシアネート末端プレポリマーは、可使時間が短くなる傾向があるため、気温の高い夏季には、2,4−異性体の含有率が80重量%以上のトリレンジイソシアネートを使用するのが好ましく、85重量%以上のものがより好ましい。また、気温が低い冬季には、2,4−異性体の含有率が65〜80重量%のものが好ましい。
【0014】
前記ポリオール化合物としては、ポリオキシプロピレンジオール及び/又はポリオキシエチレンプロピレンジオールを91〜100重量%含み、かつ前記ポリオキシプロピレンジオール及び/又はポリオキシエチレンプロピレンジオールの平均分子量が1500以上であるものが用いられる。
【0015】
ポリオキシプロピレンジオールとは、エチレングリコール、プロピレングリコール等の低分子ジオール(グリコール)に対して、プロピレンオキサイドを付加重合して得られるものである。また、ポリオキシエチレンプロピレンジオールとは、エチレングリコール、プロピレングリコール等の低分子ジオール(グリコール)に対して、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとを付加重合して得られるものである。
【0016】
イソシアネート末端プレポリマーを製造するためのポリオールとしては、ポリオキシプロピレンジオール及びポリオキシエチレンプロピレンジオールのほかにも、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシエチレンプロピレントリオール等を用いることができる。ここで、ポリオキシプロピレントリオールとは、グリセリン、トリメチロールプロパン等の低分子トリオールに対して、プロピレンオキサイドを付加重合して得られるものである。また、ポリオキシエチレンプロピレントリオールとは、グリセリン、トリメチロールプロパン等の低分子トリオールに対して、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとを付加重合して得られるものである。また、スチレンやアクリロニトリル等のモノマーをポリオキシエチレンプロピレンポリオールからなる反応溶媒中で重合せしめて得られる、いわゆるポリマーポリオールも使用できる。
【0017】
トリレンジイソシアネートとポリオール化合物との反応により、イソシアネート末端プレポリマーを得るため、モル比にして、水酸基(OH)に対しイソシアネート基(NCO基)を過剰にする必要がある。本発明の二液型ウレタン組成物においては、前記トリレンジイソシアネートとポリオール化合物との比はトリレンジイソシアネートのNCO基とポリオール化合物のOH基とのモル比としてNCO基/OH基=1.8〜2.2とすることが好ましい。より好ましくは、NCO基/OH基=1.9〜2.1である。
【0018】
ポリオキシプロピレンジオール及び/又はポリオキシエチレンプロピレンジオールの平均分子量は、小さすぎると硬化塗膜が硬くなり、伸び率が低下する傾向にあるので、1500以上とする。より好ましくは、約2000(例えば1800〜2200)、または2000以上である。
【0019】
前記主剤には、可塑剤を添加することができるが、その場合、可塑剤の含有率は30重量%以下とする。可塑剤としては、主剤中のイソシアネート末端プレポリマーのNCO基と反応性のない通常の可塑剤が使用できる。可塑剤の具体例としては、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、フタル酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、オレイン酸エステル等のカルボン酸エステルの他、リン酸エステル、ノルマルパラフィン、塩素化パラフィン、アルキルベンゼン、エポキシ系可塑剤およびその他各種液状成分が挙げられる。トルエン、キシレン等の有機溶剤(揮発性を有するもの)は、作業者への健康配慮や環境等への影響という点から、添加しない(主剤を無溶剤とする)ことが望ましい。
【0020】
(硬化剤)
硬化剤の主成分である芳香族ポリアミンとしては、常温で液状であるもの、例えばジエチルトルエンジアミン(DETDA)、ジメチルトルエンジアミン(DMTDA)、N,N′−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン(例えばUOP社製ユニリンク4100)、4,4′−ビス(sec−ブチルアミノ)ジフェニルメタン(例えばUOP社製ユニリンク4200)等が好適である。MOCA(3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン)等、常温で固体の芳香族ポリアミンも本発明に使用することができるが、ポリオキシプロピレンポリオール(PPG)等のポリオール化合物や可塑剤に溶解して液状化する必要があり、かつ液状化されても常温では高粘稠のため、冬季では溶剤による低粘度化が必要となる。このため、無溶剤化を容易にするためには、常温で液状の芳香族ポリアミンを用いることが好ましい。また、硬化剤の副成分として、脂肪族ポリアミンを併用しても良く、その場合は、例えば傾斜面に対する施工に好適である。
【0021】
前記硬化剤には、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、主剤に添加するものと同様、主剤中のイソシアネート末端プレポリマーのNCO基と反応性のない通常の可塑剤が使用できる。可塑剤の具体例としては、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、フタル酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、オレイン酸エステル等のカルボン酸エステルの他、リン酸エステル、ノルマルパラフィン、塩素化パラフィン、アルキルベンゼン、エポキシ系可塑剤およびその他各種液状成分が挙げられる。トルエン、キシレン等の有機溶剤(揮発性を有するもの)は、作業者への健康配慮や環境等への影響という点から、添加しない(硬化剤を無溶剤とする)ことが望ましい。
【0022】
(添加剤)
前記主剤及び/又は硬化剤には、充填剤、老化防止剤、界面活性剤、沈降防止剤、着色剤等の各種添加剤を配合することができる。環境等への影響という点から、主剤及び硬化剤は、鉛化合物等の重金属化合物系触媒を含まないものとすることが望ましい。
【0023】
充填剤は、重合収縮の減少、増量、硬度向上等を目的として添加される。充填剤としては、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ、ケイ藻土、およびこれらを脂肪酸や脂肪酸エステルにて表面処理したもの等の微粉末の無機充填剤が挙げられる。中でもコストと性能の点から炭酸カルシウムが好適に用いられる。
【0024】
着色剤は、硬化物を着色するために添加される。顔料、染料、カラートナー等が挙げられる。顔料としては各種アゾ顔料、銅フタロシアニン系顔料等の有機顔料や、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化クロム、べんがら等の各種無機顔料が挙げられる。染料としてはアントラキノン系、塩基性染料の脂肪酸塩、金属錯塩型等が挙げられる。
【0025】
老化防止剤は、硬化物を光、酸素、熱等から保護するために用いられる。老化防止剤として一般的に用いられるものには光安定剤や酸化防止剤等があり、光安定剤としてはベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ヒンダードアミン系、ニッケル系等が挙げられる。また、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系、アミン系、硫黄系、リン系等が挙げられる。
【0026】
界面活性剤としては、消泡剤、顔料や充填剤の湿潤分散剤、乳化剤、粘性改良剤などの特性に応じて各種界面活性剤を、単独もしくは二種以上混合して添加することができる。
沈降防止剤は、充填剤や着色剤等の固形粒子成分の沈降を防止するため、適宜添加することができる。
【0027】
(施工方法)
本発明の二液型ウレタン組成物は、主剤と硬化剤とをスプレー装置に向けてそれぞれ別のポンプで圧送供給し、スタティックミキサーで混合して得られる混合物をスプレー装置から吐出して塗工する圧送塗工に好適に用いることができる。スタティックミキサーによる主剤と硬化剤との混合比率は、体積比で、例えば100:20程度とすることができる。
【0028】
ポンプで圧送供給される主剤及び硬化剤は、それぞれドラム缶等の容器に入れたものを用いることができる。また、使用量に応じて、ポンプ等により、別のタンクに移したものを用いることもできる。
【0029】
本発明の二液型ウレタン組成物は、必要に応じて可塑剤等を添加することにより、混合前の主剤及び硬化剤の粘度を、常温で機械圧送可能な粘度に調整することもできるので、無加温でも機械圧送による施工が可能である。低い圧力でも吐出することができるので、ミストの飛散がない。さらに無溶剤とすることで、作業者への健康配慮や環境等への影響についても改善できる。スプレー装置から吐出された主剤と硬化剤との混合物は、建物の屋上等の施工対象物に対して直接吐出しても良い。施工対象物としては、下地層にあらかじめプライマーコートされた部位や、絶縁・緩衝材等を敷設した部位が挙げられる。
【0030】
本発明の二液型ウレタン組成物からなる混合物は、十分な可使時間とレベリング性を有するので、コテ、ヘラ、レーキ、スクイージ等の工具を用いて手塗り塗工を行うことも可能であり、あるいは、施工対象物に吐出したまま、塗工の作業を行わずに硬化させてもよい。また、施工対象物上または近傍に設置したバケツ等の容器の中に混合物を吐出し、該容器から少量ずつ取り出して施工対象物に塗工しても良い。
【0031】
本発明の二液型ウレタン組成物からなる混合物の施工により、高物性の硬化塗膜を形成することができる。前記混合物は、十分に速い硬化性を有するので、ウレタン塗膜防水材の施工後に、次工程の作業が可能である。次工程の作業としては、ウレタン塗膜防水材を2層以上積層する場合の次に積層される塗膜の形成であっても良いし、トップコートの塗工であっても良い。
【実施例】
【0032】
以下、具体例によって本発明を説明する。
【0033】
(主剤及び硬化剤の特性について)
・ポリオール重量比(D:T):主剤の原料として用いたポリオキシプロピレンジオールとポリオキシプロピレントリオールとの重量比
・NCO/OHインデックス:主剤の原料として用いたトリレンジイソシアネートのNCO基とポリオール化合物のOH基とのモル比
・NCO%:反応後のイソシアネート末端プレポリマーにおける重量当たりの遊離NCO%
・NCO/NHインデックス:反応後のイソシアネート末端プレポリマー中の遊離NCO基と芳香族ポリアミン中のNH基とのモル比
【0034】
(硬化塗膜の物性について)
・可使時間(レベリング可能時間):主剤と硬化剤とを混合した後、支障なく塗工できる限度の時間(混合液の粘度が30000〜40000mPa・sに達するまでの時間)
・タックフリータイム:塗膜表面を指で触っても、指に樹脂が付着しなくなるまでの時間
【0035】
・引張強度:JIS A6021に規定する引張強さ[N/mm
・伸び率:JIS A6021に規定する破断時の伸び率[%]
・抗張積:JIS A6021に規定する抗張積[N/mm]
・引裂強度:JIS A6021に規定する引裂強さ[N/mm]
・硬度A:JIS K6253に規定するデュロメータ硬さ
【0036】
(例1)
トリレンジイソシアネート(以下「T−100」:2,4−異性体比率が100%のもの)18.8重量部と、平均分子量が1500のポリオキシプロピレンジオール(以下「
D−1500」)81.2重量部とを混合して、主剤となるイソシアネート末端プレポリマーを調製した。このイソシアネート末端プレポリマーは、NCO/OHインデックスが2.0、NCO%が4.5%、23℃における粘度が6800mPa・sであった。この主剤100重量部に対し、NCO/NHインデックスが1.2となるように、硬化剤としてジエチルトルエンジアミン(以下「DETDA」)を8.4重量部添加し、攪拌機で均一に混合した後、実験室内で厚さ2mmにて塗工し、塗膜を形成した。この例における主剤と硬化剤との混合物は、レベリング可能時間が6分、タックフリータイムが28分であった。また、23℃で7日間(168時間)硬化させた後の物性を初期物性として測定したところ、引張強度は19.0N/mm、伸び率は590%、抗張積は2300N/mm、引裂強度は63.6N/mm、硬度Aは83であった。
【0037】
(例2)
「T−100」14.8重量部と、平均分子量が2000のポリオキシプロピレンジオール(以下「D−2000」)85.2重量部とを混合して、主剤となるイソシアネート末端プレポリマーを調製した。このイソシアネート末端プレポリマーは、NCO/OHインデックスが2.0、NCO%が3.6%、23℃における粘度が4810mPa・sであった。この主剤100重量部に対し、NCO/NHインデックスが1.2となるように、硬化剤としてDETDAを6.4重量部添加し、攪拌機で均一に混合した後、実験室内で厚さ2mmにて塗工し、塗膜を形成した。この例における主剤と硬化剤との混合物は、レベリング可能時間が11分、タックフリータイムが43分であった。また、23℃で7日間(168時間)硬化させた後の物性を初期物性として測定したところ、引張強度は11.2N/mm、伸び率は920%、抗張積は2000N/mm、引裂強度は53.7N/mm、硬度Aは74であった。
【0038】
(例3)
「T−100」14.8重量部と、「D−2000」80.9重量部と、平均分子量が3000のポリオキシプロピレントリオール(以下「T−3000」)4.3重量部とを混合して、主剤となるイソシアネート末端プレポリマー(ポリオキシプロピレンジオール/ポリオキシプロピレントリオールの重量比(以下「D:T」)が95%:5%のもの)を調製した。このイソシアネート末端プレポリマーは、NCO/OHインデックスが2.0、NCO%が3.6%、23℃における粘度が4740mPa・sであった。この主剤100重量部に対し、NCO/NHインデックスが1.2となるように、硬化剤としてDETDAを6.4重量部添加し、攪拌機で均一に混合した後、実験室内で厚さ2mmにて塗工し、塗膜を形成した。この例における主剤と硬化剤との混合物は、レベリング可能時間が10分、タックフリータイムが40分であった。また、23℃で7日間(168時間)硬化させた後の物性を初期物性として測定したところ、引張強度は12.4N/mm、伸び率は830%、抗張積は2000N/mm、引裂強度は55.7N/mm、硬度Aは76であった。
【0039】
(例4)
「T−100」14.8重量部と、「D−2000」77.5重量部と、「T−3000」7.7重量部とを混合して、主剤となるイソシアネート末端プレポリマー(D:T=91%:9%)を調製した。このイソシアネート末端プレポリマーは、NCO/OHインデックスが2.0、NCO%が3.6%、23℃における粘度が5050mPa・sであった。この主剤100重量部に対し、NCO/NHインデックスが1.2となるように、硬化剤としてDETDAを6.4重量部添加し、攪拌機で均一に混合した後、実験室内で厚さ2mmにて塗工し、塗膜を形成した。この例における主剤と硬化剤との混合物は、レベリング可能時間が10分、タックフリータイムが36分であった。また、23℃で7日間(168時間)硬化させた後の物性を初期物性として測定したところ、引張強度は12.6N/mm、伸び率は780%、抗張積は1900N/mm、引裂強度は54.5N/mm、硬度Aは76であった。
【0040】
(例5)
「T−100」14.8重量部と、「D−2000」76.7重量部と、「T−3000」8.5重量部とを混合して、主剤となるイソシアネート末端プレポリマー(D:T=90%:10%)を調製した。このイソシアネート末端プレポリマーは、NCO/OHインデックスが2.0、NCO%が3.6%、23℃における粘度が4600mPa・sであった。この主剤100重量部に対し、NCO/NHインデックスが1.2となるように、硬化剤としてDETDAを6.4重量部添加し、攪拌機で均一に混合した後、実験室内で厚さ2mmにて塗工し、塗膜を形成した。この例における主剤と硬化剤との混合物は、レベリング可能時間が10分、タックフリータイムが37分であった。また、23℃で7日間(168時間)硬化させた後の物性を初期物性として測定したところ、引張強度は12.6N/mm、伸び率は750%、抗張積は1900N/mm、引裂強度は53.2N/mm、硬度Aは76であった。
【0041】
(例6)
「T−100」14.8重量部と、「D−2000」72.4重量部と、「T−3000」12.8重量部とを混合して、主剤となるイソシアネート末端プレポリマー(D:T=85%:15%)を調製した。このイソシアネート末端プレポリマーは、NCO/OHインデックスが2.0、NCO%が3.6%、23℃における粘度が5040mPa・sであった。この主剤100重量部に対し、NCO/NHインデックスが1.2となるように、硬化剤としてDETDAを6.4重量部添加し、攪拌機で均一に混合した後、実験室内で厚さ2mmにて塗工し、塗膜を形成した。この例における主剤と硬化剤との混合物は、レベリング可能時間が10分、タックフリータイムが37分であった。また、23℃で7日間(168時間)硬化させた後の物性を初期物性として測定したところ、引張強度は12.8N/mm、伸び率は670%、抗張積は1700N/mm、引裂強度は52.7N/mm、硬度Aは76であった。
【0042】
(例7)
「T−100」14.8重量部と、「D−2000」68.1重量部と、「T−3000」17.1重量部とを混合して、主剤となるイソシアネート末端プレポリマー(D:T=80%:20%)を調製した。このイソシアネート末端プレポリマーは、NCO/OHインデックスが2.0、NCO%が3.6%、23℃における粘度が5190mPa・sであった。この主剤100重量部に対し、NCO/NHインデックスが1.2となるように、硬化剤としてDETDAを6.4重量部添加し、攪拌機で均一に混合した後、実験室内で厚さ2mmにて塗工し、塗膜を形成した。この例における主剤と硬化剤との混合物は、レベリング可能時間が9分、タックフリータイムが35分であった。また、23℃で7日間(168時間)硬化させた後の物性を初期物性として測定したところ、引張強度は13.8N/mm、伸び率は650%、抗張積は1800N/mm、引裂強度は46.6N/mm、硬度Aは76であった。
【0043】
(例8)
「T−100」11.9重量部と、「D−2000」68.1重量部と、オレイン酸ブトキシエチル(可塑剤として)20.0重量部とを混合して、主剤となるイソシアネート末端プレポリマーを調製した。このイソシアネート末端プレポリマーは、NCO/OHインデックスが2.0、NCO%が2.9%であり、その粘度は、40℃で527mPa・s、23℃で1055mPa・s、5℃で4940mPa・sであった。この主剤100重量部に対し、NCO/NHインデックスが1.2となるように、硬化剤としてDETDAを5.0重量部添加し、攪拌機で均一に混合した後、実験室内で厚さ2mmにて塗工し、塗膜を形成した。この例における主剤と硬化剤との混合物は、レベリング可能時間が10分、タックフリータイムが35分であった。また、23℃で7日間(168時間)硬化させた後の物性を初期物性として測定したところ、引張強度は8.8N/mm、伸び率は970%、抗張積は1700N/mm、引裂強度は40.8N/mm、硬度Aは66であった。
【0044】
(例9)
「T−100」11.9重量部と、「D−2000」68.1重量部と、アジピン酸ジイソノニル(可塑剤として)20.0重量部とを混合して、主剤となるイソシアネート末端プレポリマーを調製した。このイソシアネート末端プレポリマーは、NCO/OHインデックスが2.0、NCO%が2.9%であり、その粘度は、40℃で1086mPa・s、23℃で1275mPa・s、5℃で6040mPa・sであった。この主剤100重量部に対し、NCO/NHインデックスが1.2となるように、硬化剤としてDETDAを5.0重量部添加し、攪拌機で均一に混合した後、実験室内で厚さ2mmにて塗工し、塗膜を形成した。この例における主剤と硬化剤との混合物は、レベリング可能時間が20分、タックフリータイムが50分であった。また、23℃で7日間(168時間)硬化させた後の物性を初期物性として測定したところ、引張強度は9.8N/mm、伸び率は830%、抗張積は1600N/mm、引裂強度は47.1N/mm、硬度Aは69であった。
【0045】
(例10)
例9で調製したものと同じ主剤100重量部に対し、硬化剤として、DETDAを5.0重量部、アジピン酸ジイソノニル8.8重量部、老化防止剤0.5重量部、消泡剤0.4重量部、沈降防止剤0.3重量部、カラートナー5.0重量部を配合したもの(23℃における粘度は38mPa・s)を添加し、攪拌機で均一に混合した後、実験室内で厚さ2mmにて塗工し、塗膜を形成した。この例における主剤と硬化剤との混合物は、レベリング可能時間が20分、タックフリータイムが50分であった。また、23℃で7日間(168時間)硬化させた後の物性を初期物性として測定したところ、引張強度は7.7N/mm、伸び率は1000%、抗張積は1600N/mm、引裂強度は31.4N/mm、硬度Aは60であった。
【0046】
(例11)
例9で調製したものと同じ主剤100重量部に対し、硬化剤として、DETDAを5.0重量部、アジピン酸ジイソノニル7.9重量部、炭酸カルシウム12.6重量部、老化防止剤0.5重量部、消泡剤0.2重量部、沈降防止剤0.3重量部、カラートナー2.5重量部を配合したもの(23℃における粘度は4500mPa・s)を添加し、攪拌機で均一に混合した後、実験室内で厚さ2mmにて塗工し、塗膜を形成した。この例における主剤と硬化剤との混合物は、レベリング可能時間が20分、タックフリータイムが50分であった。また、23℃で7日間(168時間)硬化させた後の物性を初期物性として測定したところ、引張強度は6.4N/mm、伸び率は950%、抗張積は1200N/mm、引裂強度は29.9N/mm、硬度Aは64であった。
【0047】
(例12)
例9で調製したものと同じ主剤100重量部に対し、硬化剤として、DETDAを5.0重量部、アジピン酸ジイソノニル10.2重量部、炭酸カルシウム6.3重量部、老化防止剤0.5重量部、消泡剤0.2重量部、沈降防止剤0.3重量部、カラートナー2.5重量部を配合したもの(23℃における粘度は2500mPa・s)を添加し、攪拌機で均一に混合した後、実験室内で厚さ2mmにて塗工し、塗膜を形成した。この例における主剤と硬化剤との混合物は、レベリング可能時間が20分、タックフリータイムが50分であった。また、23℃で7日間(168時間)硬化させた後の物性を初期物性として測定したところ、引張強度は8.3N/mm、伸び率は900%、抗張積は1500N/mm、引裂強度は34.3N/mm、硬度Aは65であった。
【0048】
(例13)
例12と同じ主剤及び硬化剤を用い、実際に屋上への防水材の施工を行った。すなわち、主剤と硬化剤をスプレー装置に向けてそれぞれ別のポンプで圧送供給し、主剤100重量部に対して硬化剤25.0重量部の割合でスタティックミキサーにて混合し、得られた混合物をスプレー装置から屋上に吐出して厚さ2mmにて塗工し、塗膜を形成した。23℃で7日間(168時間)硬化させた後の硬化塗膜の物性を初期物性として測定したところ、引張強度は9.5N/mm、伸び率は1000%、抗張積は2000N/mm、引裂強度は33.6N/mm、硬度Aは65であった。
【0049】
以上の結果を表1〜4にまとめて示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
例2から例7までの比較により、ポリオール化合物中、ポリオキシプロピレンジオールの含有率が高いほど、伸び率が高く、抗張積が大きいものとなることが分かった。
また、例1によれば、ポリオキシプロピレンジオールの平均分子量が1500である場合にも、抗張積の大きい硬化塗膜が得られることが分かった。
【0055】
また、例8,9は、例2の主剤に可塑剤を20%添加して主剤の粘度を機械圧送可能な範囲に調整したものである。例8は低粘度(5℃において5000mPa・s以下)であり、冬季にも機械圧送可能である。例9は春秋季に好適である。
【0056】
また、例10〜12は、例9の硬化剤に可塑剤等を添加して、主剤と硬化剤の容量比を機械ポンプ容量を考慮した100:20(容量比)に調整したものである。
また、例13は、例12の主剤及び硬化剤を用いて実際に機械圧送で施工したときに得られた硬化塗膜の物性を測定したものである。このように、本発明のウレタンゴム系塗膜防水材施工用二液型ウレタン組成物を用いることにより、塗膜防水剤として特性の優れた硬化塗膜を施工することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレー装置に向けてそれぞれ別のポンプで圧送供給した主剤と硬化剤とをスタティックミキサーで混合して得られる混合物を前記スプレー装置から吐出して塗工する圧送塗工に用いられるウレタンゴム系塗膜防水材施工用二液型ウレタン組成物であって、
トリレンジイソシアネートとポリオール化合物とが反応してなるイソシアネート末端プレポリマーを主成分とする主剤と、芳香族ポリアミンを主成分とする硬化剤とからなり、
前記主剤中の可塑剤の含有率は30重量%以下であり、前記トリレンジイソシアネートとポリオール化合物との比はトリレンジイソシアネートのNCO基とポリオール化合物のOH基とのモル比としてNCO基/OH基=1.8〜2.2であり、前記ポリオール化合物はポリオキシプロピレンジオール及び/又はポリオキシエチレンプロピレンジオールを91〜100重量%含み、かつ前記ポリオキシプロピレンジオール及び/又はポリオキシエチレンプロピレンジオールの平均分子量が1500以上であることを特徴とするウレタンゴム系塗膜防水材施工用二液型ウレタン組成物。
【請求項2】
前記トリレンジイソシアネートは、その異性体中、2,4−トリレンジイソシアネートの含有率が65重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のウレタンゴム系塗膜防水材施工用二液型ウレタン組成物。
【請求項3】
前記主剤および前記硬化剤がいずれも無溶剤であることを特徴とする請求項2に記載のウレタンゴム系塗膜防水材施工用二液型ウレタン組成物。
【請求項4】
前記主剤および前記硬化剤がいずれも重金属化合物系触媒を含まないものであることを特徴とする請求項2又は3に記載のウレタンゴム系塗膜防水材施工用二液型ウレタン組成物。
【請求項5】
スプレー装置に向けてそれぞれ別のポンプで圧送供給した主剤と硬化剤とをスタティックミキサーで混合して得られる混合物を前記スプレー装置から吐出して塗工する圧送塗工によるウレタンゴム系塗膜防水材の施工方法であって、
前記主剤の主成分はトリレンジイソシアネートとポリオール化合物とが反応してなるイソシアネート末端プレポリマーであり、前記硬化剤の主成分は芳香族ポリアミンであり、
前記主剤中の可塑剤の含有率は30重量%以下であり、前記トリレンジイソシアネートとポリオール化合物との比はトリレンジイソシアネートのNCO基とポリオール化合物のOH基とのモル比としてNCO基/OH基=1.8〜2.2であり、前記ポリオール化合物はポリオキシプロピレンジオール及び/又はポリオキシエチレンプロピレンジオールを91〜100重量%含み、かつ前記ポリオキシプロピレンジオール及び/又はポリオキシエチレンプロピレンジオールの平均分子量が1500以上であることを特徴とするウレタンゴム系塗膜防水材の施工方法。

【公開番号】特開2008−297338(P2008−297338A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141750(P2007−141750)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000133342)株式会社ダイフレックス (24)
【Fターム(参考)】