説明

ウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステルの製造法

ウレタン基含有アルコール(A)と飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル(G)を、少なくとも1種の重合禁止剤(P)の存在において、触媒としての酵素(E)を用いて反応器中で反応させることによってウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステル(U)を製造する方法であって、その際、a)遊離する飽和アルコール及び場合によっては使用された共留剤が、相応する過剰の(メタ)アクリル酸エステル(G)と共沸混合物を形成し、該共沸混合物を減圧下で蒸留により分離し、かつ、b)少なくとも反応器の残留物からの部分流を、蒸留塔の頂部を介して循環処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、ウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステルの製造法に関する。
【0002】
(メタ)アクリル酸エステルの製造は、たいてい、酸又は塩基を触媒とした、(メタ)アクリル酸又はその他の(メタ)アクリル酸エステルとアルコールの40℃〜明らかに100℃を上回る温度でのエステル化又はエステル交換反応によって行われる。高い温度に基づき、モノマーの不所望の重合を抑制するために多量の重合禁止剤の添加が必要である。その際、しばしば、複雑で、時として着色した生成物混合物が生ずる。着色及び未反応の反応体を除去するために、生成物混合物が、煩雑なアルカリ性洗浄によって後処理される。洗浄法は時間と費用がかかり、それというのも、なかでも部分エステル化生成物を緩慢にしか抽出及び分離することができないからである。
【0003】
酸を触媒とした慣例のエステル化を介してのウレタン基含有(メタ)アクリレートの製造はおまけに困難であり、それというのも、ウレタン基は酸感受性だからである。
【0004】
JP2001−40039Aは、酸を触媒としたエステル化を介して製造されるカルバメート基含有(メタ)アクリル酸エステルを記載する。記載された方法の欠点は、得られた生成物の純度が、95%の質量収支にて単に75.9%に過ぎないことである。
【0005】
EP136813A2は、ポリヒドロキシアルキル化アクリレートとイソシアネートの反応によるN−置換カルバメート基含有アクリレートの二段階の製造を記載する。記載された方法の欠点は、イソシアネートとして入手可能である基材に限定されていることである。そのため、例えば、N,N−ジ置換カルバメート、同様にイソシアネートに対して反応性の基を有するN−置換基を有するものも、この方法に従って製造可能ではない。イソシアネートとの反応のために、おまけに触媒として毒性の錫化合物が不可避である。
【0006】
酵素エステル化又は酵素エステル交換反応による(メタ)アクリル酸エステルの製造は公知である。
【0007】
Hajjar他は、Biotechnol.Lett.1990,12,825−830の中で、クロモバクテリウム・ビスコスム由来のリパーゼを用いた、環式及び開鎖アルカンジオールとエチルアクリレートの酵素エステル化を記載する。反応は、無溶媒系においてジオールに対して18倍モル過剰のアルキルアクリレートにて行われる。モノアクリレート及びジアクリレートからの混合物が生ずる。
【0008】
US5,240,835は、コリネバクテリウム・オキシダンス由来の生体触媒の触媒作用下でのアルキルアクリレートとアルコールのエステル交換反応を記載する。例示的に、そこでは96倍モル過剰のエチルアクリレートと2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールの反応が実施される。単に21%に過ぎない収率が、30℃にて3日後に得られていた。
【0009】
Derango他は、Biotechnol.Lett.1994,16,241−246の中で、リパーゼを触媒とした、2−ヒドロキシエチルカルバメートとビニルメタクリレートのエステル交換反応によるカルバモイルオキシエチルメタクリレートの製造を記載する。完全な反応は、特別な出発材料ビニルメタクリレートによって達成され、それというのも、遊離したビニルアルコールが反応平衡からアセトアルデヒドとして取り出されるからである。この方法の欠点は、ビニルメタクリレートが商業的に入手可能ではないことである。
【0010】
WO2004/05088A1から、酵素を触媒としたウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステルのさらなる製造法が公知である。記載された方法の欠点は、生成物が比較的僅かな純度を有し、また、それにも関わらず、浄化されずにさらに加工されることである。
【0011】
それゆえ本発明の課題は、単純で効率良く得られる出発材料からウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステルを高い変換率及び高い純度で製造可能である、さらなる代替的な方法を提供することであった。
【0012】
課題は、ウレタン基含有アルコール(A)と飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル(G)を、少なくとも1種の重合禁止剤(P)の存在において、触媒としての酵素(E)を用いて反応器中で反応させることによってウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステル(U)を製造する方法であって、その際、
a)遊離する飽和アルコール及び場合によっては使用された共留剤が、相応する過剰の(メタ)アクリル酸エステル(G)と共沸混合物を形成し、該共沸混合物を減圧下で蒸留により分離し、かつ、
b)少なくとも反応器の残留物からの部分流を、蒸留塔の頂部を介して循環処理する、ウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステル(U)を製造する方法によって解決された。
【0013】
本発明による方法を利用して、ウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステルの製造が、高い純度及び高い収率において及び温和な条件下で可能である。さらに、実質的なポリマー形成は生じない。
【0014】
この文献の枠内でのウレタン基は、式>N−C(=O)−O−のN−置換及びN−非置換、N−モノ置換又はN−ジ置換の構造要素である。
【0015】
(メタ)アクリル酸は、この文献中では、メタクリル酸及びアクリル酸、有利にはアクリル酸である。
【0016】
飽和とは、この文献の枠内では、C−C−多重結合なしの化合物を意味する(当然のことながら、(メタ)アクリル単位中のC=C−二重結合を除く)。
【0017】
本発明による方法では、ウレタン基含有アルコール(A)が飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル(G)と、少なくとも1種の重合禁止剤(P)の存在において、触媒としての酵素(E)を用いてエステル交換反応が行われ、その際、本発明により、エステル交換反応の際に遊離する飽和アルコール及び場合によっては使用された共留剤が、相応する過剰の(メタ)アクリル酸エステル(G)と共沸混合物を形成し、該共沸混合物は、反応器に取り付けられた塔を介して減圧下で排出され、引き続き凝縮される。その際、本発明にとって重要なことは、少なくとも反応器の残留物からの部分流が、蒸留塔の頂部を介して循環処理されることである。
【0018】
反応器に取り付けられた塔を介しての共沸混合物の蒸留分離は、本発明により減圧下で行われる。圧力は、例えば20〜700mbar、有利には30〜500mbar、とりわけ有利には40〜300mbar及び殊に50〜150mbarである。
【0019】
分離された共沸混合物は、引き続き凝縮され、かつ、好ましくは、飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル(G)を製造する装置に直接供給されて、それは該装置中で(メタ)アクリル酸とのエステル化において再使用される。付加的に、同様に共沸混合物として分離される共留剤が使用される場合、この共留剤は、まず、遊離する飽和アルコール及びそれと相応する飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル(G)からの共沸混合物から分離され、その後、これは(メタ)アクリル酸とのエステル化に供給される。
【0020】
さらに本発明にとって重要なことは、蒸留塔の頂部を介しての反応器の残留物からの部分流の循環処理である。有利には、塔の頂部を介して循環処理される残留物流の搬出率は、残留物分の全質量を基準として、50質量%より高くなく、有利には25質量%より高くなく、とりわけ有利には20質量%より高くなく及び殊に15質量%より高くない。
【0021】
少なくとも反応器の残留物からの部分流の循環処理によって、不安定な共沸混合物が塔内で重合し、塔頂部を詰まらせることが回避される。それゆえ、蒸留塔内への重合禁止剤の付加的な添加を、好ましくは本発明による方法では省くことができる。
【0022】
ウレタン基含有アルコール(A)は、少なくとも1個のウレタン基、有利には1〜10個、とりわけ有利には1〜5個、極めて有利には1〜2個及び殊に1個のウレタン基、ならびに少なくとも1個のヒドロキシ基(−OH)、有利には1〜10個、とりわけ有利には1〜6個、極めて有利には1〜3個、殊に1〜2個及び特に1個のヒドロキシ基を含有する化合物である。
【0023】
有利なウレタン基含有アルコール(A)は、平均分子量105〜800000g/モル、有利には25000g/モルまで、とりわけ有利には5000g/モル及び極めて有利には4500g/モルまでを有する。
【0024】
とりわけ有利なウレタン基含有アルコール(A)は、
a)アミンとカーボネートの反応及び
b)場合によっては、a)から得られる反応混合物の精製
によって得られるものである。
【0025】
その際、この反応のための適したアミンは、アンモニア、第一級アミン又は第二級アミンである;カーボネートは、構造要素−O−C(=O)−O−を有するO,O'−ジ置換カーボネートである。
【0026】
極めて有利なウレタン基含有アルコール(A)は、次の反応式
【化1】

[式中、
1、R2は、互いに無関係に、水素、C1〜C18−アルキル、場合によっては、1個以上の酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は1個以上の置換又は非置換のイミノ基によって中断されたC2〜C18−アルキル、C2〜C18−アルケニル、C6〜C12−アリール、C5〜C12−シクロアルキル、又は酸素原子、窒素原子及び/又は硫黄原子を有する5員〜6員複素環、その際、上述の基は、そのつどアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環によって置換されていてよい、又は式−[Xik−Hの基であり、
iは、全てのi=1〜kについて、互いに無関係に、−CH2−CH2−O−、−CH2−CH2−N(H)−、−CH2−CH2−CH2−N(H)−、−CH2−CH(NH2)−、−CH2−CH(NHCHO)−、−CH2−CH(CH3)−O−、−CH(CH3)−CH2−O−、−CH2−C(CH32−O−、−C(CH32−CH2−O−、−CH2−CH2−CH2−O−、−CH2−CH2−CH2−CH2−O−、−CH2−CHVin−O−、−CHVin−CH2−O−、−CH2−CHPh−O−及び−CHPh−CH2−O−の群から選択されていてよく、その際、Phはフェニルであり、かつ、Vinはビニルであり、
kは、1〜50の数であり、かつ、
Yは、C2〜C20−アルキレン、又は1個以上の酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は1個以上の置換又は非置換のイミノ基によって及び/又は1個以上の−(CO)−、−O(CO)O−、−(NH)(CO)O−、−O(CO)(NH)−、−O(CO)−又は−(CO)O−基によって中断されたC2〜C20−アルキレンであり、その際、上述の基は、そのつどアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環によって置換されていてよい]に従って得られるものである。
【0027】
1及びR2は、一緒になって環を形成してもよい。
【0028】
有利には、R1及びR2は、互いに無関係に、水素、C1〜C12−アルキル、C5〜C6−シクロアルキル又は式−[Xik−Hの基であり、とりわけ有利には、R1及びR2は、互いに無関係に、水素、C1〜C4−アルキル、C5〜C6−シクロアルキル又は式−[Xik−Hの基及び極めて有利には水素、C1〜C4−アルキル、又は式−[Xik−Hの基である。殊に、基R1及びR2の一方は水素であり、他方はC1〜C4−アルキル、又は式−[Xik−Hの基である。
【0029】
有利なXiは、−CH2−CH2−O−、−CH2−CH2−N(H)−、−CH2−CH2−CH2−N(H)−、−CH2−CH(NH2)−、−CH2−CH(NHCHO)−、−CH2−CH(CH3)−O−及び−CH(CH3)−CH2−O−であり、とりわけ有利なのは、−CH2−CH2−O−、−CH2−CH2−N(H)−、−CH2−CH2−CH2−N(H)−及び−CH2−CH(NH2)−、極めて有利なのは、−CH2−CH2−O−、−CH2−CH2−N(H)−及び−CH2−CH2−CH2−N(H)−である。
【0030】
kは、有利には1〜30、とりわけ有利には1〜20、極めて有利には1〜10及び殊に1〜5である。
【0031】
1及び/又はR2の例は、水素、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシル、n−エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシプロピル、5−ヒドロキシ−3−オキサ−ペンチル、8−ヒドロキシ−3,6−ジオキサ−オクチル又は11−ヒドロキシ−3,6,9−トリオキサ−ウンデシルである。
【0032】
Yは、有利にはC2〜C10−アルキレン、とりわけ有利にはC2〜C6−アルキレン、極めて有利にはC2〜C4−アルキレン、殊にC2〜C3−アルキレン及び特にC2−アルキレンであり、その際、上述の基は、そのつどアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環によって置換されていてよい。
【0033】
Yの例は、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,1−ジメチル−1,2−エチレン、1−ヒドロキシメチル−1,2−エチレン、2−ヒドロキシ−1,3−プロピレン、1,3−プロピレン、1,4−ブチレン、1,6−ヘキシレン、2−メチル−1,3−プロピレン、2−エチル−1,3−プロピレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン及び2,2−ジメチル−1,4−ブチレンであり、有利なのは、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレンであり、とりわけ有利なのは1,2−エチレンおよび1,2−プロピレンであり、および極めて有利なのは1,2−エチレンである。
【0034】
例示的なアミンは、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、プロパノールアミン、ジプロパノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びアミン官能基を有するポリマーであり、例えば、WO04/050888A1の中で第5頁、第28行目〜第6頁、第33行目に記載されている。
【0035】
例示的なカーボネートは、エチレンカーボネート、1,3−プロピレンカーボネート及び1,2−プロピレンカーボネートである。
【0036】
有利なウレタン基含有アルコール(A)は、ドイツ国公開公報DE102005016225A1の中で開示されているような化合物である。公報中に挙げられる構造異性体β−ヒドロキシアルキルカルバメートの二成分混合物の中では、殊にヒドロキシプロピルカルバメートの異性体混合物が本発明による方法のために有利である。ヒドロキシプロピルカルバメートは、DE102005016255A1に記載の1,2−プロピレンカーボネートとアンモニアの反応によって得られる。
【0037】
アミンとカーボネートの反応は、例えばUS4,820,830B、第4欄、第44行目〜第5欄、第9行目から自体公知であり、また限定されない。
【0038】
概して、アミンとカーボネートは、アミン0.7〜1.2モル:カーボネート1モル、有利には0.8〜1.2:1、とりわけ有利には0.9〜1.1:1、極めて有利には0.95〜1.1:1及び殊に1:1モル/モルの化学量論比において互いに反応される。反応は、一般に0〜120℃の温度で、有利には20〜100℃で、極めて有利には30〜80℃で及び極めて有利には40〜80℃で行われる。反応は、一般に12時間以内に、有利には15分〜10時間以内に、とりわけ有利には30分〜8時間で、極めて有利には45分〜6時間で及び殊に1〜4時間以内に終了する。
【0039】
ウレタン基含有アルコール(A)のDIN53176による全アミン価は、200mg KOH/gより高くなく、好ましくは100mg KOH/gより高くなく及び極めて有利には80mg KOH/gより高くないことが望ましい。
【0040】
アミンとカーボネートの反応は、溶媒なしで実施することができ、又は溶媒、例えばアルコール、エーテル、ケトン、炭化水素又は水の存在において、有利には溶媒なしで実施することができる。
【0041】
ウレタン基含有アルコール(A)は、さらなる工程において、所望される場合、例えば濾過、蒸留、精留、クロマトグラフィー、イオン交換体、吸着剤による処理、中性洗浄、酸性洗浄及び/又はアルカリ性洗浄、ストリッピング又は結晶化によって精製することができる。
【0042】
飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル(G)は、有利には(メタ)アクリル酸と飽和C1〜C10−アルコールのエステルである。
【0043】
化合物(G)の例は、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸n−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸イソブチルエステル、(メタ)アクリル酸n−オクチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、1,2−エチレングリコールジ−及び−モノ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ−及び−モノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ−及び−モノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレートである。
【0044】
とりわけ有利なのは、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸n−ブチルエステル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステルであり、かつ、極めて有利には(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル及び(メタ)アクリル酸n−ブチルエステルである。
【0045】
本発明により使用可能な酵素(E)は、例えば、束縛されていないか又は担体上に化学的又は物理的に固定化された形態でのヒドロラーゼ、エステラーゼ(E.C.3.1.−.−)、リパーゼ(E.C.3.1.1.3)、グリコシラーゼ(E.C.3.2.−.−)及びプロテアーゼ(E.C.3.4.−.−)の中から選択されており、有利にはリパーゼ、エステラーゼ又はプロテアーゼである。とりわけ有利なのは、Novozyme 435(Candia antarctica B由来リパーゼ)又はAspergillus sp.由来、Aspergillus niger sp.由来、Mucor sp.由来、Penicilium cyclopium sp.由来、Geotricum candidum sp.由来、Rhizopus javanicus由来、Burholderia sp.由来、Candida sp.由来、Pseudomonas sp.由来、又はブタ膵臓由来のリパーゼであり、極めて有利なのは、Candia antarctica B由来又はBurholderia sp.由来のリパーゼである。
【0046】
反応培地中の酵素含有率は、一般に、使用される成分(A)及び(G)の合計を基準として、約0.1〜10質量%の範囲にある。反応時間は、なかでも、酵素触媒の温度、使用された量及び活性及び要求される変換率に依存し、ならびにウレタン基含有アルコール(A)に依存する。有利には、反応時間は、もともとアルコール(A)中に含有される全てのヒドロキシ官能基の変換率が、少なくとも70%、有利には少なくとも80%、とりわけ有利には少なくとも90%、極めて有利には少なくとも95%及び殊に少なくとも97%となるように適合される。一般に、そのために1〜48時間、有利には1〜12時間及びとりわけ有利には1〜6時間で十分である。
【0047】
飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル(G)との酵素エステル交換反応は、一般的に0〜100℃、有利には20〜80℃、とりわけ有利には20〜70℃、極めて有利には20〜60℃である。
【0048】
飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル(G)((メタ)アクリル単位を基準として)対ウレタン基含有アルコール(A)(ヒドロキシ基を基準として)のモル比は、広い範囲で変動してよく、例えば100:1〜1:1、有利には50:1〜1:1、とりわけ有利には20:1〜1:1及び極めて有利には10:1〜1:1の比で変動してよい。有利には、飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル(G)は、僅かに過剰量で存在し、該過剰量は、遊離するアルコールと共沸混合物として減圧下で留去される。このようにして、反応平衡がウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステル(U)のために移動される。
【0049】
場合によっては、遊離する飽和アルコール及び過剰の相応する(メタ)アクリル酸エステル(G)と共沸混合物を形成する共留剤が付加的に使用される。有利なのは、遊離する飽和アルコール及び過剰の相応する(メタ)アクリル酸エステル(G)と形成されたその共沸混合物が相分解を示すか又は水の添加によって砕かれうる共留剤である。かかる適した共留剤は、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びそれらの任意の混合物である。
【0050】
反応は、有機溶媒中で又はその混合物中で又は溶媒の添加なしで行ってよい。出発物質は、一般に実質的に無水である(すなわち、水添加率が10体積%より低く、有利には5体積%より低く、とりわけ有利には1体積%より低い)。
【0051】
有機溶媒の割合は、例えば、0.01質量%〜30質量%、有利には0.1〜5質量%である。適した有機溶媒は、これらの目的のために公知の、例えば、第三級モノオール、例えばC3〜C6−アルコール、有利にはtert−ブタノール、tert−アミルアルコール、ピリジン、ポリ−C1〜C4−アルキレングリコールジ−C1〜C4−アルキルエーテル、有利にはポリエチレングリコールジ−C1〜C4−アルキルエーテル、例えば1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル500、C1〜C4−アルキレンカーボネート、殊にプロピレンカーボネート、C3〜C6−アルキル酢酸エステル、殊にtert−ブチル酢酸エステル、THF、トルエン、1,3−ジオキソラン、アセトン、イソブチルメチルケトン、エチルメチルケトン、1,4−ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、ヘキサン、ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、アセトニトリル、ならびにそれらの単相又は多相の混合物である。
【0052】
選択的に、有機溶媒に水性溶媒を添加することができるので−有機溶媒に応じて−単相又は多相の反応溶液が発生する。水性溶媒の例は、水ならびに希釈された(例えば10〜100mMの)水性緩衝液、例えば、約6〜8の範囲のpH値を有する緩衝液、例えばリン酸カリウム緩衝液又はTRIS−HCl緩衝液である。
【0053】
反応出発物質中の水割合は、一般に0〜10体積%である。有利には、反応体は前処理(乾燥、水ドーピング)なしで使用される。
【0054】
基質は、反応媒体中に溶解して、固体として懸濁して又はエマルジョンで存在している。好ましくは、反応体の初めの濃度は、約0.1〜20モル/l、殊に0.15〜10モル/l又は0.2〜5モル/lの範囲にある。
【0055】
本発明により反応は不連続的に実施される。反応は、かかる反応のために適した全ての反応器中で実施することができる。かかる反応器は当業者に公知である。有利には、反応は攪拌槽反応器中で又は固定層反応器中で行われる。
【0056】
反応器に取り付けられた蒸留塔は自体公知の構造であり、通常の内部構造物を有する。塔内部構造物として、原則的に、全ての慣用の内部構造物、例えばトレイ、構造化充填物及び/又は不規則充填物が考慮に入れられる。トレイの中では、バブルキャップトレイ、シーブトレイ、バルブトレイ、トルマントレイ(Thormannboeden)及び/又はデュアル/フロートレイが有利であり、不規則充填物の中では、リング、コイル、サドル又は編組織物(Geflechten)が有利である。一般に5〜20段の理論段で十分である。
【0057】
留去された共沸混合物は、引き続き、従来構造の凝縮器中で凝縮される。
【0058】
反応出発物質の完全混合のために、任意の方法を使用することができる。特別な攪拌装置は必要ではない。反応媒体は単相又は多相であってよく、かつ反応体はその中に溶解、懸濁又は乳化され、場合によっては分子篩と一緒に装入され、かつ反応の開始時に、ならびに場合によっては反応の過程で1回又は数回、酵素調製物を混ぜてよい。温度は、反応の間に所望の値に調節され、かつ所望される場合、反応過程で高めるか又は下げることができる。
【0059】
反応が固定層反応器中で実施される場合、固定層反応器には、有利には固定化酵素が備え付けられており、その際、反応混合物は、酵素が充填されたカラムを通してポンプ供給される。反応を流動層中で実施することも可能であり、その際、酵素は担体上に固定化されて使用される。反応混合物は、連続的にカラムを通してポンプ供給することができ、その際、流速により滞留時間ひいては所望の変換率が制御可能である。反応混合物をカラムを通してポンプ循環供給することも可能であり、その際、真空下でも、遊離したアルコールあるいは遊離するアルコールと過剰の相応する(メタ)アクリル酸エステル(G)及び場合によっては使用された共留剤からの共沸混合物を同時に留去することができる。
【0060】
反応の終了後、得られる反応混合物を、さらなる精製なしにさらに使用することができるか、又は該反応混合物を、必要な場合、さらなる工程において精製することができる。
【0061】
使用された酵素(E)が固定層反応器中で又は流動層反応器中で固定化されて存在する場合、一般に、使用される酵素は反応混合物から単に分離されるに過ぎず、かつ反応混合物は、場合によっては使用された有機溶媒から分離される。
【0062】
酵素からの分離は、そのような場合、例えば濾過、吸収、遠心分離又は傾瀉によって行われる。分離された酵素は、引き続き、さらなる反応のために使用することができる。
【0063】
有機溶媒からの分離は、一般に、蒸留、精留によって又は固体の反応生成物の場合は濾過によって行われる。
【0064】
反応生成物のさらなる精製のために、クロマトグラフィー又は精製蒸留も実施することができる。
【0065】
反応生成物を精製する精製蒸留が実施される場合、場合によっては行われる溶媒蒸留下で発生する残留物から、ウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステル(U)が、さらなる蒸留工程において塔頂生成物として単離され、かつ下記で挙げられる重合禁止剤の少なくとも1種で安定化される。そこで挙げられた安定剤の中で、殊にヒドロキノンモノメチルエーテル及びフェノチアジンが精製蒸留に適している。
【0066】
この蒸留工程のために使用可能な精留塔は、例えば不規則充填塔、規則充填塔又は棚段塔のような公知の構造であり、かつ分離効果を持つ内部構造物(例えばバブルキャップトレイ、シーブトレイ又はデュアル/フロートレイ)を有するか又は不規則充填物もしくは規則充填物を含有する。これらの通常の内部構造物は、有利には10〜20段の理論段を有する。薄膜蒸発器も考慮に入れられる。蒸発器及び凝縮器も同様に従来構造である。
【0067】
有利には、ウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステル(U)は、100〜140℃の底部温度、有利には110〜130℃の底部温度で、及び1〜100mbarの塔頂圧力、有利には1〜50mbarの塔頂圧力、とりわけ有利には1〜10mbar及び殊に1〜5mbarの塔頂圧力で得られる。
【0068】
安定化のために、凝縮器中に0.05〜0.5%のヒドキノンモノメチルエーテルの溶液又は類似の効果を持つその他の貯蔵安定剤を噴霧することができ、その際、量は、凝縮器が10〜20ppmの貯蔵安定剤濃度を有するように選択される。凝縮液の一部、有利には10〜20%を、塔に再び還流液として供給することができる。
【0069】
発生するウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステル(U)は、ガスクロマトグラフィー分析に従って、少なくとも98.5%、有利には少なくとも99.0%及びとりわけ有利には少なくとも99.5%の純度を有する。
【0070】
主として残りのウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステル(U)、マイケル付加生成物、安定剤及びポリマーから成る精製蒸留の塔底生成物は、残留物蒸留及び/又は残留物分離に通すことができる。
【0071】
当然のことながら、場合によっては行われる溶媒蒸留の蒸留ユニット及び精製蒸留を一つにまとめることも可能である。この場合、純粋なウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステル(U)は、側方抜出部を介して、有利にはガス状で、下方塔領域で、有利には下半分で、とりわけ有利には下三分の一で排出され、凝縮され、また上記の通り安定化される。
【0072】
しかしながら、有利には精製工程では、使用された酵素及び場合によっては使用された溶媒が単に分離されるに過ぎない。
【0073】
酵素エステル交換反応の際の反応条件は穏やかである。低い温度及びそれ以外の穏やかな条件に基づき、エステル交換反応の際の副生成物(これは、さもなければ、例えば化学触媒に起因しうる)又は使用された(メタ)アクリル酸エステル(G)の不所望のラジカル重合(これは、通例、安定剤の添加によってのみ防止することができる)による副生成物が回避される。
【0074】
飽和アルコールの本発明による方法において使用される(メタ)アクリル酸エステル(G)も、ウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステル(U)も重合性化合物であるので、全ての方法工程において十分な重合抑制に留意しなければならない。それゆえエステル交換反応は、本発明により少なくとも1種の重合禁止剤(P)の存在において行われる。その際、これは、いずれにせよ(メタ)アクリル酸エステル(G)中に含有された貯蔵安定剤であってよいが、しかし、さらなる重合禁止剤を添加することもできる。
【0075】
一般に、不飽和モノマーを基準として、個々の物質につき、適した重合禁止剤(P)1〜10000ppm、有利には10〜5000ppm、とりわけ有利には30〜2500ppm及び殊に50〜1500ppmが使用される。
【0076】
適した重合禁止剤(P)は、例えば、N−オキシド(ニトロキシルラジカル又はN−オキシルラジカル、つまり、少なくとも1個の>N−O基を有する化合物)、例えば4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4,4',4''−トリス(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル)−ホスフィット又は3−オキソ−2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジン−N−オキシル;場合によっては1個又は数個のアルキル基を有する一価又は多価のフェノール、例えばアルキルフェノール、例えば、o−、m−又はp−クレゾール(メチルフェノール)、2−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−メチル−4−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェノール又は6−tert−ブチル−2,4−ジメチルフェノール;キノン、例えばヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2−メチルヒドロキノン又は2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン;ヒドロキシフェノール、例えばブレンツカテヒン(1,2−ジヒドロキシベンゼン)又はベンゾキノン;アミノフェノール、例えばp−アミノフェノール;ニトロソフェノール、例えばp−ニトロソフェノール;アルコキシフェノール、例えば2−メトキシフェノール(グアイアコール、ブレンツカテヒンモノメチルエーテル)、2−エトキシフェノール、2−イソプロポキシフェノール、4−メトキシフェノール(ヒドロキノンモノメチルエーテル)、モノ−又はジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール;トコフェロール、例えばα−トコフェロールならびに2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ヒドロキシベンゾフラン(2,2−ジメチル−7−ヒドロキシクマラン)、芳香族アミン、例えばN,N−ジフェニルアミン又はN−ニトロソ−ジフェニルアミン;フェニレンジアミン、例えばN,N'−ジアルキル−p−フェニレンジアミン、その際、アルキル基は同じであるか又は異なっていてよく、かつ、それぞれ互いに無関係に、1〜4個の炭素原子から成っていてよく、かつ直鎖状又は分枝鎖状であってよく、例えばN,N'−ジメチル−p−フェニレンジアミン又はN,N'−ジエチル−p−フェニレンジアミン、ヒドロキシルアミン、例えばN,N−ジエチルヒドロキシルアミン、イミン、例えばメチルエチルイミン又はメチレンバイオレット、スルホンアミド、例えばN−メチル−4−トルエンスルホンアミド又はN−tert−ブチル−4−トルエンスルホンアミド、オキシム、例えばアルドキシム、ケトキシム、又はアミドキシム、例えばジエチルケトキシム、メチルエチルケトキシム又はサリチルアルドキシム、リン含有化合物、例えばトリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィット、トリエチルホスフィット、次亜リン酸又はリン酸のアルキルエステル;硫黄含有化合物、例えばジフェニルスルフィド又はフェノチアジン;金属塩、例えば銅塩又はマンガン塩、セリウム塩、ニッケル塩、クロム塩、例えばそれらの塩化物、硫酸塩、サリチル酸塩、トシル酸塩又はアクリル酸塩又は酢酸塩、例えば酢酸銅、塩化銅(II)、サリチル酸銅、酢酸セリウム(III)又はエチルヘキサン酸セリウム(III)、又はそれらの混合物であってよい。
【0077】
重合禁止剤(混合物)として有利とされるのは、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、2−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、6−tert−ブチル−2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−メチル−4−tert−ブチルフェノール、次亜リン酸、酢酸銅、塩化銅(II)、サリチル酸銅及び酢酸セリウム(III)の群からの少なくとも1種の化合物である。
【0078】
極めて有利には、フェノチアジン及び/又はヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)が重合禁止剤(P)として使用される。
【0079】
安定化をさらに支持するために、酸素含有ガス、有利には空気、又は空気及び窒素からの混合物(希薄空気)が存在していてもよい。
【0080】
本発明による方法によって、有利な実施形態において、式(I)
【化2】

[式中、
1及びR2は、上述の意味を有し、
Yは、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,1−ジメチル−1,2−エチレン、1−ヒドロキシ−メチル−1,2−エチレン、2−ヒドロキシ−1,3−プロピレン、2−ヒドロキシ−1,3−プロピレン、1,3−プロピレン、1,4−ブチレン、1,6−ヘキシレン、2−メチル−1,3−プロピレン、2−エチル−1,3−プロピレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン及び2,2−ジメチル−1,4−ブチレンの中から選択されており、
3は、水素又はメチル、有利には水素を意味し、
但し、基R1及びR2の少なくとも1個は水素ではない]のウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステル(U)が得られる。
【0081】
本発明による方法の利点は、ほぼ完全な反応が、飽和アルコールの単純な(メタ)アクリル酸エステル(G)により得ることができる点であり、それというのも、反応平衡を共沸混合物の蒸留除去によって移動することができるからである。
【0082】
得られるウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステル(U)は、好ましくは、ポリ(メタ)アクリレート中のコモノマーとして又は放射線硬化型及び/又はデュアルキュア硬化型のポリ(メタ)アクリレート中の反応性希釈剤として使用することができる。この種のポリ(メタ)アクリレートは、放射線硬化型又はデュアルキュア硬化型のコーティング剤中の結合剤として適している。そのようにして得られるコーティングは、非常に高い耐引掻性、硬度、耐化学薬品性、弾性及び接着性を、親水性基材上のみならず疎水性基材上でも有する。
【0083】
本発明による方法に従って製造されたウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステル(U)のさらなる使用は、塗料配合物中の添加剤として可能である。その際、ウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステル(U)は、ベースコート中のみならずトップコート中でも使用することができる。耐引掻性及び弾性を高めること、ならびに粘性を下げるといった、殊に分枝鎖ポリアクリレートの場合の、放射線硬化されたクリアコートコーティングのその特に優れた特性に基づき、トップコーティング中でのその使用が有利である。
【0084】
かかる使用のために、固体凝集状態を防止し、かつウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステル(U)を液相に保つために、ウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステル(U)に溶媒添加剤を適切に混ぜてよい。そのために適しているのは、それと混和可能な低級炭化水素、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール及びそれらの任意の混合物である。通常、そのつど溶媒及びウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステル(U)の全質量を基準として、適した溶媒0〜40質量%、有利には5〜30質量%及びとりわけ有利には10〜20質量%が使用される。
【0085】
次の実施例は、本発明の特性を説明するものであるが、しかし、本発明を限定するものではない。
【0086】
他に記載がない場合、%は常に質量%を意味し、また部は常に質量部を意味する。
【実施例】
【0087】
実施例1
ヒドロキシプロピルカルバメートアクリレートの製造
【化3】

【0088】
400lの槽中で、エチルアクリレートとヒドロキシプロピルカルバメートのエステル交換反応を実施した。その際、ヒドロキシプロピルカルバメート(異性体混合物)17.8kg及びアクリル酸エチルエステル145.5kgならびにヒドロキノンモノメチルエーテル12gを装入した。装置全体を、希薄空気(6%の酸素割合を有する窒素/酸素混合物)で不活性化した。外部ポンプ循環系において連結された酵素反応器は、リパーゼ(Novozym(R)435)1.3kgを含有していた。反応は40℃及び90mbarで実施した。形成されたエタノールを、連続的にアクリル酸エチルエステルとの共沸混合物として塔(長さl=150cm、直径d=20cm、Sulzer BX充填物を有する)を介して留去した。24hの全反応時間中、重合を回避するために、槽残留物からの5kg/hの流を塔頂部を介して送り込んだ。
【0089】
変換率は24hの反応時間後に90%であった。引き続き、アクリル酸エチルエステル中に含有された粗生成物を2回、そのつど全体積の10分の1の水で洗浄し、それによって反応しなかった出発材料を除去した。純粋生成物としてヒドロキシプロピルカルバメートアクリレートが>95%の純度で得られた(GC分析)。
【0090】
比較例1
実験室用反応器4l中で、実施例1に対応する装置を縮尺100分の1で再現した。出発材料ヒドロキシプロピルカルバメート、アクリル酸エチルエステルならびにポリマー禁止剤メチルヒドロキノンモノメチルエーテル及び触媒として使用されるリパーゼ(Novozym(R)435)を、それぞれ実施例1に記載の量の100分の1で使用した。しかしながら、塔頂部を介しての残留物排出は省いた。
【0091】
6h後にはすでに、塔の頂部及び塔の充填物において最初のポリマー粒子を固体付着物の形態で確認することができた。
【0092】
12h後、反応を中断しなければならず、それというのも、充填物の上部がポリマーによってほとんど不透質になってしまったからであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン基含有アルコール(A)と飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル(G)を、少なくとも1種の重合禁止剤(P)の存在において、触媒としての酵素(E)を用いて反応器中で反応させることによってウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステル(U)を製造する方法において、
a)遊離する飽和アルコール及び場合によっては使用された共留剤が、相応する過剰の(メタ)アクリル酸エステル(G)と共沸混合物を形成し、該共沸混合物は減圧下で蒸留により分離し、かつ、
b)少なくとも該反応器の残留物からの部分流を、蒸留塔の頂部を介して循環処理する
ことを特徴とする、ウレタン基含有(メタ)アクリル酸エステル(U)を製造する方法。
【請求項2】
前記共沸混合物の蒸留分離の際の前記圧力が20〜700mbarであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記圧力が30〜500mbarであることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル(G)との前記酵素エステル交換反応を20〜80℃の温度で行うことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル(G)対ウレタン基含有アルコール(A)のモル比が、50:1〜1:1の範囲にあることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記塔の頂部を介して循環処理させる前記残留物流の搬出率が、前記残留物分の全質量を基準として、50質量%より高くないことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記残留物流の搬出率が25質量%より高くないことを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記ウレタン基含有アルコール(A)が、次の反応
【化1】

[式中、
1、R2は、互いに無関係に、水素、C1〜C18−アルキル、場合によっては、1個以上の酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は1個以上の置換又は非置換のイミノ基によって中断されたC2〜C18−アルキル、C2〜C18−アルケニル、C6〜C12−アリール、C5〜C12−シクロアルキル、又は酸素原子、窒素原子及び/又は硫黄原子を有する5員〜6員複素環、その際、上述の基は、そのつどアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環によって置換されていてよい、又は式−[Xik−Hの基であり、
iは、全てのi=1〜kについて、互いに無関係に、−CH2−CH2−O−、−CH2−CH2−N(H)−、−CH2−CH2−CH2−N(H)−、−CH2−CH(NH2)−、−CH2−CH(NHCHO)−、−CH2−CH(CH3)−O−、−CH(CH3)−CH2−O−、−CH2−C(CH32−O−、−C(CH32−CH2−O−、−CH2−CH2−CH2−O−、−CH2−CH2−CH2−CH2−O−、−CH2−CHVin−O−、−CHVin−CH2−O−、−CH2−CHPh−O−及び−CHPh−CH2−O−の群から選択されていてよく、その際、Phはフェニルであり、かつ、Vinはビニルであり、
kは、1〜50の数であり、かつ、
Yは、C2〜C20−アルキレン、又は1個以上の酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は1個以上の置換又は非置換のイミノ基によって及び/又は1個以上の−(CO)−、−O(CO)O−、−(NH)(CO)O−、−O(CO)(NH)−、−O(CO)−又は−(CO)O−基によって中断されたC2〜C20−アルキレンであり、その際、上述の基は、そのつどアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環によって置換されていてよい]によって得られることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステルが、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸n−ブチルエステル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステルの群から選択されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記酵素(E)がリパーゼであることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2012−526742(P2012−526742A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510211(P2012−510211)
【出願日】平成22年5月5日(2010.5.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056079
【国際公開番号】WO2010/130608
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】