説明

ウレタン樹脂組成物及びそれを用いて得られた成形物

【課題】本発明が解決しようとする課題は、低温屈曲性と染色性に優れたフィルム等の成形物を形成でき、かつ、顔料をはじめとする各種添加剤の分散性に優れたウレタン樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a1’)を主鎖とし、その側鎖に数平均分子量200〜800のポリオキシエチレン鎖を有するビニル重合体(a1)と、ポリエーテルポリオール(a2)とを含有するポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)を反応させて得られるウレタン樹脂(C)を含有することを特徴とするウレタン樹脂組成物に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフィルム等の成形材料をはじめ、コーティング剤や接着剤等の様々な用途に使用可能なウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂組成物は、従来からフィルムやシート等の成形材料や接着剤、コーティング剤等をはじめとする様々な用途で使用されている。
【0003】
前記ウレタン樹脂組成物としては、例えばエチレン性不飽和単量体の実質的に線状重合体であって、かつ活性水素原子を有する基を重合体の末端に少なくとも2個局在的に有する重合体(A)と、ポリイソシアネート(B)とを必須成分として反応せしめる末端イソシアネート基のポリウレタン樹脂を含む組成物が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
しかし、例えば皮革様シートの表皮層等に使用するウレタンフィルムには、通常、概ね−10〜23℃程度の温度範囲で屈曲試験をした際に、ヒビ割れ等を引き起こしにくい、いわゆる低温屈曲性が求められるなかで、前記文献1記載のウレタン樹脂組成物を用いて形成されたフィルムは低温屈曲性の点で十分でないため、低温環境下における屈曲試験でひび割れ等を引き起こす場合があった。
【0005】
また、前記皮革様シートの表皮層等に使用するウレタンフィルムには、高意匠性付与等を目的として着色されたものを使用する場合がある。前記着色する方法としては、例えばウレタン樹脂組成物と顔料等との混合物を製造し、次いでフィルム状に成形する方法や、ウレタン樹脂組成物を用いて形成されたフィルムを、染料溶液中に浸漬し乾燥する方法が挙げられる。
【0006】
しかし、より一層高外観で高意匠性に優れた最終製品が求められるなかで、従来のウレタン樹脂組成物では顔料等を均一に分散できない場合があり、得られるフィルムに僅かな色むらが生じる場合があった。また、予め製造したフィルムを染料溶液中に浸漬し乾燥した場合も、やはり、フィルムに僅かな色むらが生じ、高意匠性を付与できない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−230166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、低温屈曲性と染色性に優れたフィルム等の成形物を形成でき、かつ、顔料をはじめとする各種添加剤の分散性に優れたウレタン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討した結果、本発明の課題を解決できることを見出した。
【0010】
即ち、本発明は、片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a1’)を主鎖とし、その側鎖に数平均分子量200〜800のポリオキシエチレン鎖を有するビニル重合体(a1)と、ポリエーテルポリオール(a2)とを含有するポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)を反応させて得られるウレタン樹脂(C)を含有することを特徴とするウレタン樹脂組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のウレタン樹脂組成物であれば、顔料をはじめとする各種添加剤の分散性に優れ、かつ、低温屈曲性や染色性に優れた成形物を形成できることから、例えば皮革様シートの表皮層や、包装フィルム、光学フィルム、帯電防止フィルム、防曇フィルム等や、コーティング剤や接着剤等の様々な用途に使用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a1’)を主鎖とし、その側鎖に数平均分子量200〜800のポリオキシエチレン鎖を有するビニル重合体(a1)と、ポリエーテルポリオール(a2)とを含有するポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)を反応させて得られるウレタン樹脂(C)を含有するウレタン樹脂組成物である。
【0013】
本発明のウレタン樹脂組成物は、前記ウレタン樹脂(C)の溶媒として有機溶剤や水性媒体(F)を含むものであってもよく、無溶媒であってもよい。
【0014】
本発明で使用するウレタン樹脂(C)は、ウレタン樹脂を主鎖としたときに、その側鎖としてビニル重合体(a1)由来の構造を有するものである。
【0015】
ここで、前記ウレタン樹脂(C)の代わりに、前記ビニル重合体(a1)由来のビニル重合体構造を側鎖に有さないウレタン樹脂を使用して得たウレタン樹脂組成物は、顔料等の分散性の点で十分でない場合がある。また、得られたフィルム等の成形物の染色性も十分でない場合がある。
【0016】
したがって、顔料等の優れた分散性と優れた染色性とを付与するためには、前記ビニル重合体(a1)由来の構造を側鎖に有するウレタン樹脂(C)を使用することが重要である。前記ウレタン樹脂(C)は、前記ウレタン樹脂(C)の全量に対して前記ビニル重合体(a1)由来の構造を2質量%〜50質量%含むものを使用することが好ましい。
【0017】
また、前記ウレタン樹脂(C)の側鎖を形成しうるビニル重合体(a1)由来の構造は、ビニル重合体(a1’)を主鎖とし、その側鎖に数平均分子量200〜800のポリオキシエチレン鎖を有する構造である。
【0018】
ここで、前記ビニル重合体(a1)由来の構造の代わりに、前記数平均分子量200〜800のポリオキシエチレン鎖を有さないビニル重合体由来の構造を有するウレタン樹脂を使用した場合では、やはり顔料等の優れた分散性と優れた染色性とを付与することができない場合がある。
【0019】
また、前記ポリオキシエチレン鎖の数平均分子量が200未満である場合も同様に、顔料等の優れた分散性と優れた染色性とを付与することができない場合がある。
【0020】
一方、前記ポリオキシエチレン鎖の数平均分子量が800を超える場合には、得られる皮膜やフィルム等の耐久性の低下や、しわによる外観不良等が生じる場合がある。
【0021】
したがって、前記ビニル重合体(a1)由来の構造としては、数平均分子量300〜700の範囲のポリオキシエチレン鎖を有するものであることが好ましい。
【0022】
また、前記ウレタン樹脂(C)は、ウレタン樹脂(C)の主鎖中にエーテル構造を有することが重要である。
【0023】
ここで、前記ウレタン樹脂(C)の代わりに、前記エーテル構造を有さないウレタン樹脂を使用したウレタン樹脂組成物では、低温屈曲性に優れたフィルム等の成形物を形成できない場合がある。
【0024】
前記ウレタン樹脂(C)としては、顔料等の優れた分散性と優れた染色性、及び、優れた低温屈曲性を付与するうえで、50000〜120000の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましい。
【0025】
前記ウレタン樹脂(C)の製造に使用する前記ポリオール(A)としては、前記したとおり、片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a1’)を主鎖とし、その側鎖に数平均分子量200〜800のポリオキシエチレン鎖を有するビニル重合体(a1)と、ポリエーテルポリオール(a2)とを含有するものを使用ことが必須である。
【0026】
前記ウレタン樹脂(C)の製造に使用する片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a1’)を主鎖とし、その側鎖に数平均分子量200〜800のポリオキシエチレン鎖を有するビニル重合体(a1)としては、例えば2個の水酸基を有する連鎖移動剤の存在下で、数平均分子量200〜800のポリオキシエチレン鎖を有するビニル単量体(e)を含むビニル単量体(E)を重合することによって得られるものを使用することができる。具体的には、2個の水酸基とメルカプト基等を有する連鎖移動剤(D)の存在下で前記ビニル単量体(E)のラジカル重合を行い、前記メルカプト基を起点として前記ビニル単量体(E)が重合したものが挙げられる。
【0027】
得られたビニル重合体(a1)は、前記連鎖移動剤(D)由来の2個の水酸基を片末端に有するため、この2個の水酸基と後述するポリイソシアネート(B)の有するイソシアネート基とを反応することによってウレタン結合を形成することができる。
また、得られたビニル重合体(a1)は、前記連鎖移動剤(D)のメルカプト基を起点として前記ビニル単量体(E)が重合して形成した片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a1’)を主鎖としたときに、その側鎖として数平均分子量200〜800のポリオキシエチレン鎖を形成する。
前記ポリオキシエチレン鎖は、前記ビニル重合体(a1)の全量に対して50質量%〜95質量%の範囲で存在することが、顔料等の分散性や染色性を向上するうえで好ましい。
前記ポリオキシエチレン鎖は、前記ビニル単量体として数平均分子量200〜800のポリオキシエチレン鎖を有するビニル単量体(e)を使用することによってビニル重合体(a1)中に導入することができる。
【0028】
前記ビニル重合体(a1)としては、前記ポリイソシアネート(B)と反応させる際の粘度制御を容易にし、本発明のウレタン樹脂組成物の生産効率を向上するうえで、1000〜8000の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、2000〜7000がより好ましい。
【0029】
また、前記ビニル重合体(a1)は、前記ビニル重合体(a1)由来のビニル重合体構造を、ウレタン樹脂(C)の側鎖に存在させる観点から、前記片末端の2個の水酸基以外の、他の水酸基を有さないものであることが好ましい。具体的には、前記ビニル重合体(a1)の製造に使用可能なビニル単量体(E)として、水酸基含有ビニル単量体を使用しないことが好ましい。
【0030】
前記ビニル重合体(a1)の製造に使用可能な連鎖移動剤としては、例えば2個の水酸基とメルカプト基等を有する連鎖移動剤(D)を使用することが好ましい。
【0031】
前記2個の水酸基とメルカプト基等を有する連鎖移動剤(D)としては、例えば3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)、1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、2−メルカプト−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,3−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等を使用することができる。なかでも3−メルカプト−1,2−プロパンジオールを使用することが、臭気が少なく作業性や安全性の点で優れ、かつ汎用であるため好ましい。
【0032】
また、前記ビニル重合体(a1)の製造に使用するビニル単量体(E)としては、例えばポリオキシエチレンモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンモノエチルエーテル(メタ)アクリレート等のうち、ポリオキシエチレン鎖の数平均分子量が200〜800であるビニル単量体(e)を含むものを使用することができる。なかでも、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(メタ)アクリレートを使用することが、顔料等の添加剤の分散性や、得られるフィルム等の染色性を向上し、前記ビニル重合体(a1)の生産効率を向上でき、また前記ウレタン樹脂(C)を水性媒体(F)中に安定分散させる際に、良好な親水性を付与できるためより好ましい。
【0033】
また、前記ビニル重合体(a1)の製造に使用するビニル単量体(E)としては、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ビニル単量体(e)のほかにその他のビニル単量体を組み合わせ使用することもできる。
【0034】
前記その他のビニル単量体としては、例えばポリオキシエチレン鎖の数平均分子量が200〜800の範囲外であるビニル単量体をはじめ、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル、2−(メタ)アクリロイルプロピオン酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸基含有ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド;2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピペリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピロリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕モルホリン、4−〔N,N−ジメチルアミノ〕スチレン、4−〔N,N−ジエチルアミノ〕スチレン、2−ビニルピリジン;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート;アミノメチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノ−n−ブチル(メタ)アクリレート、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p−アミノスチレン等の窒素原子含有ビニル単量体;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和カルボン酸のニトリル類;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のフッ素含有ビニル単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルスチレン等の芳香族環を有するビニル化合物;イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、エチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン等を使用することができる。
【0035】
前記その他のビニル単量体は、前記ビニル重合体(a1)の製造に使用するビニル単量体(E)の全量に対して10質量%以下の範囲で使用することが好ましく、5質量%以下の範囲で使用することがより好ましい。
【0036】
前記連鎖移動剤(D)と前記ビニル単量体(E)との重合反応は、例えば50℃〜100℃程度の温度に調整したメチルエチルケトン等の溶剤下、前記連鎖移動剤(D)と前記ビニル単量体(E)を一括または逐次供給し、ラジカル重合させることで進行することができる。これにより、連鎖移動剤(D)のメルカプト基等を起点として前記ビニル単量体(E)のラジカル重合が進行し、所望のビニル重合体(a1)を製造することができる。前記方法で前記ビニル重合体(a1)を製造する際には、必要に応じて従来知られる重合開始剤を使用しても良い。
【0037】
前記方法で得られたビニル重合体(a1)は、前記ウレタン樹脂(C)の製造に使用するポリオール(A)の全量に対して、20質量%〜90質量%の範囲で使用することが好ましく、20質量%〜60質量%の範囲で使用することが、低温屈曲性と染色性に優れたフィルム等の成形物を形成でき、かつ、顔料等の分散性に優れたウレタン樹脂組成物を得るうえでより好ましい。
【0038】
また、前記ウレタン樹脂(C)の製造に使用するポリオール(A)としては、前記ビニル重合体(a1)とともにポリエーテルポリオール(a2)を使用する。前記ポリエーテルポリオール(a2)は、ウレタン樹脂(C)中にエーテル構造を導入するうえで使用するものであり、得られるフィルム等の成形物に優れた低温屈曲性を付与するうえで重要である。
【0039】
前記ポリエーテルポリオール(a2)としては、例えば活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
【0040】
前記開始剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を使用することができる。
【0041】
また、前記アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
【0042】
前記ポリエーテルポリオール(a2)としては、具体的には、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、及び、エチレンオキサイドとテトラヒドロフランとの共重合体とからなる群より選ばれる1種以上を使用することが、優れた低温屈曲性を付与するうえで好ましい。また、前記ポリエーテルポリオール(a2)としては、800〜5000の数平均分子量のものを使用することが好ましい。
【0043】
また、前記ポリオール(A)としては、前記ビニル重合体(a1)と前記ポリエーテルポリオール(a2)との質量割合[(a1)/(a2)]が1/9〜4/6の範囲で含むものを使用することが、顔料等の分散性の向上と、得られるフィルム等の成形物の染色性や低温屈曲性とを向上するうえで好ましい。
【0044】
前記ウレタン樹脂(C)の製造に使用するポリオール(A)としては、前記したものの他に必要に応じてその他のポリオールを使用することができる。
【0045】
その他のポリオールとしては、例えばポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオール等を、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0046】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られる脂肪族ポリエステルポリオールや芳香族ポリエステルポリオール、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルや、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
【0047】
前記低分子量のポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコ−ル等を使用することができる。
【0048】
また、前記ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、及びこれらの無水物またはエステル形成性誘導体などを使用することができる。
【0049】
また、前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるものや、ホスゲンとビスフェノールA等とを反応させて得られるものを使用することができる。
【0050】
前記炭酸エステルとしては、メチルカーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネ−ト等を使用することできる。
【0051】
前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F、4,4’−ビフェノール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールや、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール等を使用することができる。
【0052】
また、本発明のウレタン樹脂組成物として、ウレタン樹脂(C)が水性媒体(F)に溶解または分散した水性のウレタン樹脂組成物を使用する場合には、前記ウレタン樹脂(C)に親水性を付与する観点から、前記その他のポリオールとして親水性基含有ポリオールを使用することができる。
【0053】
前記親水性基含有ポリオールとしては、親水性基を有するものを使用することができ、例えば、アニオン性基含有ポリオール、カチオン性基含有ポリオール、及びノニオン性基含有ポリオールを使用することができ、なかでもアニオン性基含有ポリオールまたはカチオン性基含有ポリオールを使用することが好ましい。
【0054】
前記アニオン性基含有ポリオールとしては、例えばカルボキシル基含有ポリオールや、スルホン酸基含有ポリオールを使用することができる。
【0055】
前記カルボキシル基含有ポリオールとしては、例えば2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸等を使用することができ、なかでも2,2’−ジメチロールプロピオン酸を使用することが好ましい。また、前記カルボキシル基含有ポリオールと各種ポリカルボン酸とを反応させて得られるカルボキシル基含有ポリエステルポリオールも使用することもできる。
【0056】
前記スルホン酸基含有ポリオールとしては、例えば5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸等のジカルボン酸、及びそれらの塩と、前記低分子量ポリオールとを反応させて得られるポリエステルポリオールを使用することができる。
【0057】
前記アニオン性基は、それらの一部または全部が塩基性化合物等によって中和されていることが、良好な水分散性を発現するうえで好ましい。
【0058】
前記アニオン性基を中和する際に使用可能な塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の沸点が200℃以上の有機アミンや、NaOH、KOH、LiOH等を含む金属水酸化物等を使用することができる。前記塩基性化合物は、得られるコーティング剤の水分散安定性を向上させる観点から、塩基性化合物/アニオン性基=0.5〜3.0(モル比)となる範囲で使用することが好ましく、0.9〜2.0(モル比)となる範囲で使用することがより好ましい。
【0059】
また、前記カチオン性基含有ポリオールとしては、例えば3級アミノ基含有ポリオールを使用することができ、具体的にはN−メチル−ジエタノールアミンや、1分子中にエポキシを2個有する化合物と2級アミンとを反応させて得られるポリオールなどを使用することができる。
【0060】
前記カチオン性基は、その一部または全部が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、酒石酸、アジピン酸等の酸性化合物で中和されていることが好ましい。
【0061】
また、前記カチオン性基としての3級アミノ基は、その一部または全部が4級化されていることが好ましい。前記4級化剤としては、例えばジメチル硫酸、ジエチル硫酸、メチルクロライド、エチルクロライド等を使用することができ、ジメチル硫酸を使用することが好ましい。
【0062】
また、前記ノニオン性基含有ポリオールとしては、エチレンオキサイド由来の構造単位を有するポリアルキレングリコール等を使用することができる。
【0063】
前記親水性基含有ポリオールは、前記ポリオール(A)の全量に対して、1質量%〜45質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0064】
また、前記ウレタン樹脂(C)の製造に使用するポリイソシアネート(B)としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネートあるいは脂環式構造を有するポリイソシアネートを使用することができる。なかでも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0065】
前記ウレタン樹脂(C)は、例えば無溶剤下または有機溶剤の存在下、前記ビニル重合体(a1)と、ポリエーテルポリオール(a2)と、必要に応じてその他のポリオールとを含有するポリオール(A)、及び、前記ポリイソシアネート(B)を反応させることで製造することができる。具体的には、前記反応は、好ましくは20℃〜120℃の範囲で30分〜24時間程度の範囲で行う。
【0066】
前記ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)との反応は、例えば、前記ポリオール(A)が有する水酸基に対する、前記ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基の当量割合が、0.8〜2.5の範囲で行うことが好ましく、0.9〜1.5の範囲で行うことがより好ましい。
【0067】
また、前記ウレタン樹脂(C)を製造する際に使用可能な有機溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を、単独で使用または2種以上を使用することができる。前記有機溶剤は、本発明のウレタン樹脂組成物の溶媒として使用してもよい。
【0068】
本発明で使用するウレタン樹脂(C)を製造する際には、その分子量を比較的高分子量化し、耐擦過性等の更なる向上を図ることを目的として、必要に応じて鎖伸長剤を使用できる。
【0069】
前記鎖伸長剤としては、ポリアミンや、その他活性水素原子含有化合物等を使用することができる。
【0070】
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン;ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3−セミカルバジッド−プロピル−カルバジン酸エステル、セミカルバジッド−3−セミカルバジドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンを使用することができ、エチレンジアミンを使用することが好ましい。
【0071】
前記その他活性水素含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール類;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類、及び水等を、本発明のコーティング剤の保存安定性が低下しない範囲内で単独で使用または2種以上を併用することができる。
【0072】
前記鎖伸長剤は、例えばポリアミンが有するアミノ基と過剰のイソシアネート基との当量比が、1.9以下(当量比)となる範囲で使用することが好ましく、0.3〜1.0(当量比)の範囲で使用することがより好ましい。
【0073】
前記方法で得られたウレタン樹脂(C)は、溶媒を使用することなく、必要に応じて各種添加剤と組み合わせ使用することで本発明のウレタン樹脂組成物として使用することができる。
【0074】
本発明のウレタン樹脂組成物としては、塗工作業性等の観点から、溶媒を含むものであることが好ましく、かかる溶媒としては、有機溶剤や水性媒体(F)を使用することができる。
【0075】
前記有機溶剤としては、前記ウレタン樹脂(C)を製造する際に使用できるものとして例示したメチルエチルケトン等を使用することができる。
【0076】
前記有機溶剤を溶媒として含むウレタン樹脂組成物は、前記方法で製造したウレタン樹脂(C)と有機溶剤とを混合、攪拌することによって製造することができる。
【0077】
前記有機溶剤を溶媒として使用する場合、本発明のウレタン樹脂組成物の不揮発分は10質量%〜50質量%の範囲であることが好ましく、20質量%〜40質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0078】
また、前記水性媒体(F)としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム類、等が挙げられる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
【0079】
前記水性媒体(F)を溶媒として使用する場合、本発明のウレタン樹脂組成物の不揮発分は10質量%〜50質量%の範囲であることがより好ましく、20質量%〜50質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0080】
前記水性媒体(F)を溶媒として含むウレタン樹脂組成物は、例えばポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを反応させて得られたウレタン樹脂(C)を製造した後、該ウレタン樹脂(C)の親水性基の一部又は全てを中和又は4級化し、次いで、水性媒体(F)と混合することによって、水性媒体(F)にウレタン樹脂(C)を分散または溶解することによって製造することができる。
【0081】
前記ウレタン樹脂(C)と水性媒体(F)とを混合する際には、必要に応じて乳化剤を使用してもよい。また、必要に応じてホモジナイザー等の機械を使用しても良い。
【0082】
本発明のウレタン樹脂組成物には、必要に応じて、例えば硬化剤や成膜助剤、充填材、チキソトロピー付与剤、粘着性付与剤、顔料等を本発明の目的を阻害しない範囲で添加することができる。
【0083】
前記硬化剤としては、例えばイソシアネート系架橋剤を使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート等を使用することができる。
【0084】
前記成膜助剤としては、特に限定しないが、例えば、アニオン系界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸エステルソーダ塩など)、疎水性ノニオン系界面活性剤(ソルビタンモノオレエートなど)、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0085】
前記充填材としては、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、スズ等の金属の酸化物やそれらの加水分解縮合物をはじめ、炭酸塩(例えばカルシウム塩、カルシウム・マグネシウム塩、マグネシウム塩等)、珪酸、珪酸塩(例えばアルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等)、水酸化物(例えばアルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等)、硫酸塩(例えばバリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等)、硼酸塩(例えばアルミニウム塩、亜鉛塩、カルシウム塩等)、チタン酸塩(例えばカリウム塩等)等が挙げられる。
【0086】
前記チキソトロピー付与剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、パラフィン、樹脂酸、界面活性剤、ポリアクリル酸等で表面処理された前記充填材、ポリ塩化ビニルパウダー、水添ヒマシ油、微粉末シリカ、有機ベントナイト、セピオライト等が挙げられる。
【0087】
前記粘着性付与剤としては、特に限定しないが、例えば、ロジン樹脂系、テルペン樹脂系、フェノール樹脂系等の粘着性付与剤が挙げられる。
【0088】
前記顔料としては、公知慣用の無機顔料や有機顔料を使用することができる。
前記無機顔料としては、例えば酸化チタン、アンチモンレッド、ベンガラ、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等を使用することができる。
【0089】
前記有機顔料としては、例えば、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、アゾ系顔料等の有機顔料を使用することができる。
【0090】
これらの顔料は2種類以上のものを併用することができる。また、これらの顔料が表面処理されており,水性媒体に対して自己分散能を有しているものであっても良い。
【0091】
更に、その他の添加剤としては、例えば、反応促進剤(金属系、金属塩系、アミン系等)、安定剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤等)、水分除去剤(4−パラトルエンスルフォニルイソシアネート等)、吸着剤(生石灰、消石灰、ゼオライト、モレキュラーシーブ等)、接着性付与剤、消泡剤、レベリング剤等の種々の添加剤が挙げられる。
【0092】
本発明のウレタン樹脂組成物は、例えば、各種基材の表面保護や意匠性付与、耐溶剤性等の機能性付与に使用するコーティング剤や、各種基材の貼り合わせに使用する接着剤、フィルム等の成形材料として好適である。
【0093】
前記コーティング剤等を塗布し皮膜を形成したり、貼り合わせが可能な基材としては、例えばガラス基材、金属基材、プラスチック基材、紙や木材基材、繊維質基材等が挙げられる。また、ウレタンフォーム等の多孔体構造の基材に使用することもできる。
【0094】
プラスチック基材としては、例えばポリカーボネート基材、ポリエステル基材、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン基材、ポリアクリル基材、ポリスチレン基材、ポリウレタン基材、エポキシ樹脂基材、ポリ塩化ビニル系基材及びポリアミド系基材等を使用することができる。
【0095】
前記金属基材としては、例えば亜鉛めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛合金鋼板等のめっき鋼板や、鉄板、アルミ板、アルミ合金板、電磁鋼板、銅板、ステンレス鋼板等を使用することができる。
【0096】
前記基材は前記材質からなる平面状のものであっても曲部を有するものであってもよく、また、不織布のような繊維からなる基材であってもよい。
【0097】
前記コーティング剤等を前記基材上に塗布する方法としては、例えばスプレー法、カーテンコーター法、フローコーター法、ロールコーター法、刷毛塗り法、浸漬法等が挙げられる。
【0098】
本発明のウレタン樹脂組成物を硬化させ、フィルム等の成形物を形成する方法としては、例えば前記ウレタン樹脂組成物を、前記と同様の基材の表面に、前記と同様の方法で塗布し、前記塗布層中に含まれる溶媒を除去することによって製造することができる。
【0099】
前記溶媒を除去する工程は、例えば常温下に放置または30〜80℃程度の条件下に放置することによって行うことが好ましい。
【0100】
前記で得られたフィルム等の成形物を染色する場合には、染料としてモノアゾ・ジスアゾ等のアゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノイミン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ペリノン染料、フタロシアニン染料、トリアリルメタン系等を使用することができる。
【0101】
以上のように、本発明のウレタン樹脂組成物を含むコーティング剤や接着剤や成形材料は、例えばガラス等の基材の表面被覆やプライマー、電子機器の各種プラスチック部材の表面被覆、例えば自動車や鉄道等を構成する部材の表面被覆、太陽光発電装置等の光発電装置等の受光表面の表面被覆、電子部品等の表面被覆、壁材や床材、窓ガラス等、眼鏡等の表面被覆に使用するコーティング剤やそれらの接着剤等、更には皮革様シートの表皮層や中間層、包装フィルムや光学フィルム、帯電防止フィルム、防曇フィルム等の成形物の製造に使用することが可能である。
【実施例】
【0102】
以下、本発明を実施例と比較例により、一層、具体的に説明する。
【0103】
[調製例1]片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体を主鎖とし、その側鎖に数平均分子量200〜800のポリオキシエチレン鎖を有するビニル重合体(a1−1)の調製
温度計、攪拌装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えた4ッ口フラスコに、メチルエチルケトン 500質量部を仕込み、次いで前記反応容器中にポリオキシエチレンモノメチルエーテルメタクリレート(ポリオキシエチレン鎖の数平均分子量500) 485質量部と3−メルカプト−1,2−プロパンジオール 15質量部を供給し、反応させることによって、数平均分子量6000の片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a1−1)を得た。
【0104】
[実施例1]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、前記調製例1で得たビニル重合体(a1−1)50質量部と、ポリオキシエチレングリコール(数平均分子量1500)150質量部、1、4−ブタンジオール15質量部及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート 100質量部を、有機溶剤としてのメチルエチルケトン 300質量部の存在下で4時間反応させ、希釈溶剤としてメチルエチルケトン 200質量部を追加し、更に反応を継続した。
【0105】
反応物の重量平均分子量が80000から120000の範囲に達した時点で、メタノール3質量部投入することで反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン175質量部を追加することによって、ウレタン樹脂を含む不揮発分30質量%のウレタン樹脂組成物(X−1)を得た。
【0106】
[実施例2]
前記ポリオキシエチレングリコール(数平均分子量1500)150質量部の代わりに、ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量1500)を150質量部使用すること以外は、実施例1と同様の方法で不揮発分30質量%のウレタン樹脂組成物(X−2)を得た。
【0107】
[実施例3]
前記ポリオキシエチレングリコール(数平均分子量1500)150質量部の代わりに、エチレンオキサイドとテトラヒドロフランとの共重合体(数平均分子量1500)を150質量部使用すること以外は、実施例1と同様の方法で不揮発分30質量%のウレタン樹脂組成物(X−3)を得た。
【0108】
[実施例4]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、前記調製例1で得たビニル重合体(a1−1)275質量部と、ポリオキシエチレングリコール(数平均分子量1500)138質量部、1、4−ブタンジオール 8質量部及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート 110質量部を、有機溶剤としてのメチルエチルケトン200質量部の存在下で4時間反応させ、希釈溶剤としてメチルエチルケトン230質量部を追加し、更に反応を継続した。
【0109】
反応物の重量平均分子量が6000から10000の範囲に達した時点で、メタノール3質量部投入することで反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン200質量部を追加することによって、ウレタン樹脂を含む不揮発分30質量%のウレタン樹脂組成物(X−4)を得た。
【0110】
[実施例5]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、前記調製例1で得たビニル重合体(a1−1)50質量部と、ポリオキシエチレングリコール(数平均分子量1500)100質量部、ポリオキシテトラメチレングリコール(数平均分子量1500)50質量部、2,2―ジメチロールプロピオン酸15質量部及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート 100質量部を、有機溶剤としてのメチルエチルケトン 300質量部の存在下で4時間反応させ、希釈溶剤としてメチルエチルケトン 200質量部を追加し、更に反応を継続した。
【0111】
反応物の重量平均分子量が80000から100000の範囲に達した時点で、メタノール3質量部投入することで反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン175質量部を追加することでウレタン樹脂の有機溶剤溶液を得た。
【0112】
次いで、前記ウレタン樹脂の有機溶剤溶液に48質量%水酸化カリウム水溶液を5質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水700質量部を加え十分に攪拌することによりウレタン樹脂の水分散体を得た。
【0113】
次いで、前記ウレタン樹脂の水分散体をエージング及び脱溶剤することによって、不揮発分30質量%のウレタン樹脂組成物(X−5)を得た。
【0114】
[比較例1]
前記ポリオキシエチレングリコール(数平均分子量1500)150質量部の代わりに、アジピン酸と1,4−ブタンジオールとを反応させて得られるポリエステルポリオール(数平均分子量1500)を150質量部使用すること以外は、実施例1と同様の方法で不揮発分30質量%の比較用ウレタン樹脂組成物(X’−1)を得た。
【0115】
[比較例2]
前記ポリオキシエチレングリコール(数平均分子量1500)150質量部の代わりに、炭酸エステルと1,6−ヘキサンジオールとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール(数平均分子量1500)を150質量部使用すること以外は、実施例1と同様の方法で不揮発分30質量%の比較用ウレタン樹脂組成物(X’−2)を得た。
【0116】
[比較例3]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、前記調製例1で得たビニル重合体(a1−1)200質量部、1、4−ブタンジオール15質量部及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート 45質量部を、有機溶剤としてのメチルエチルケトン 100質量部の存在下で4時間反応させ、希釈溶剤としてメチルエチルケトン70質量部を追加し、更に反応を継続した。
【0117】
反応物の重量平均分子量が50000から80000の範囲に達した時点で、メタノール3質量部投入することで反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン100質量部を追加することによって、ウレタン樹脂を含む不揮発分30質量%の比較用ウレタン樹脂組成物(X’−3)を得た。
【0118】
[調製例2]片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体を主鎖とし、その側鎖に数平均分子量1000のポリオキシエチレン鎖を有するビニル重合体(Y−1)の調製
温度計、攪拌装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えた4ッ口フラスコに、メチルエチルケトン 450質量部を仕込み、次いで前記反応容器中にポリオキシエチレンモノメチルエーテルメタクリレート(ポリオキシエチレン鎖の数平均分子量1000) 400質量部と3−メルカプト−1,2−プロパンジオール 7質量部を供給し、反応させることによって、数平均分子量7000の片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(Y−1)を得た。
【0119】
[比較例4]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、前記調製例2で得たビニル重合体(Y−1)50質量部と、ポリオキシエチレングリコール(数平均分子量1500)150質量部、1、4−ブタンジオール15質量部及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート 100質量部を、有機溶剤としてのメチルエチルケトン 300質量部の存在下で4時間反応させ、希釈溶剤としてメチルエチルケトン 200質量部を追加し、更に反応を継続した。
【0120】
反応物の重量平均分子量が80000から120000の範囲に達した時点で、メタノール3質量部投入することで反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン175質量部を追加することによって、ウレタン樹脂を含む不揮発分30質量%の比較用ウレタン樹脂組成物(X’−4)を得た。
【0121】
[調製例3]片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体を主鎖とし、その側鎖に数平均分子量2000のポリオキシエチレン鎖を有するビニル重合体(Y−2)の調製
温度計、攪拌装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えた4ッ口フラスコに、メチルエチルケトン 450質量部を仕込み、次いで前記反応容器中にポリオキシエチレンモノメチルエーテルメタクリレート(ポリオキシエチレン鎖の数平均分子量2000) 400質量部と3−メルカプト−1,2−プロパンジオール 5質量部を供給し、反応させることによって、数平均分子量10000の片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(Y−1)を得た。
【0122】
[比較例5]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、前記調製例3で得たビニル重合体(Y−2)50質量部と、ポリオキシエチレングリコール(数平均分子量1500)150質量部、1、4−ブタンジオール15質量部及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート 100質量部を、有機溶剤としてのメチルエチルケトン 300質量部の存在下で4時間反応させ、希釈溶剤としてメチルエチルケトン 200質量部を追加し、更に反応を継続した
【0123】
反応物の重量平均分子量が80000から120000の範囲に達した時点で、メタノール3質量部投入することで反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン175質量部を追加することによって、ウレタン樹脂を含む不揮発分30質量%の比較用ウレタン樹脂組成物(X’−5)を得た。
【0124】
[成形物(フィルム)の製造方法]
前記実施例及び比較例で得たウレタン樹脂組成物または比較用ウレタン樹脂組成物を、離型紙上に塗布し、90℃の環境下で30分間乾燥し、次いで、前記離型紙を除去することによって、膜厚20μmのフィルムを作製した。
【0125】
[低温屈曲性の評価方法]
前記で得たフィルムの低温屈曲性を、フレキソメーター〔東洋精機製(株)製〕を用い、低温(−30℃)の環境下で50万回屈曲した後の、前記フィルム外観を目視で観察し、下記評価基準により評価した。
【0126】
◎:ひび割れや皺が全く見られず、屈曲試験前のフィルムと同様の外観であった。
○:ごく僅かな皺が見られたものの、屈曲試験前のフィルムと殆ど同様の外観であった。
△:明確なひび割れが確認できた。
×:ひび割れに起因して、フィルムが破断した。
【0127】
[顔料等の分散性の評価方法]
前記実施例及び比較例で得たウレタン樹脂組成物または比較用ウレタン樹脂組成物の100質量部に対し、白顔料(ダイラックホワイトL、DIC(株)製)の5質量部を混合し、ラボミキサーにて攪拌、混合した。
【0128】
次いで、前記で得た各混合物を、離型紙上に塗布し、90℃の環境下で30分間乾燥し、次いで、前記離型紙を除去することによって、膜厚20μmのフィルムを作製した。
【0129】
前記フィルム表面の色むらの有無に基づいて、ウレタン樹脂組成物における顔料等の分散性を評価した。前記フィルム表面の色むらは、前記フィルム表面を目視で観察し、以下の基準に基づいて評価した。
【0130】
○;色むらが全く確認できず、フィルム表面全体にわたり均一に着色されていた。
△;フィルムのごく一部に、若干の色むらが確認できたが、実用上問題ないレベルであった。
×;フィルム表面全体にわたる明確な色むらが確認できた。
【0131】
[染色性の評価方法]
前記[成形物(フィルム)の製造方法]記載の方法と同様の方法で作製したフィルムを、kayakalan Red(日本化薬(株)製)を含む1質量%染料水溶液中に5分間浸漬し、次いで、常温の水浴中で水をオーバーフローさせながら洗浄した。このフィルムを100℃の環境下で10分間乾燥することによって、赤色に染色された染色フィルムを得た。
【0132】
前記染色フィルム表面の色むらの有無等を、目視で観察し、以下の基準に基づいて評価した。
【0133】
○;色むらが全く確認できず、染色フィルム表面全体にわたり均一に染色されていた。
△;染色フィルムのごく一部に、若干の色むらが確認できたが、実用上問題ないレベルであった。
×;染色フィルム表面全体にわたる明確な色むらが確認できた。
【0134】
【表1】

【0135】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a1’)を主鎖とし、その側鎖に数平均分子量200〜800のポリオキシエチレン鎖を有するビニル重合体(a1)と、ポリエーテルポリオール(a2)とを含有するポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)を反応させて得られるウレタン樹脂(C)を含有することを特徴とするウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ビニル重合体(a1)が、2000〜7000の数平均分子量を有するものである、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ビニル重合体(a1)が2個の水酸基と1個のメルカプト基とを有する連鎖移動剤(D)、及び、数平均分子量200〜800のポリオキシエチレン鎖を有するビニル単量体(e)を含むビニル単量体(E)を反応させて得られるものである、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記連鎖移動剤(D)が、3−メルカプト−1,2−プロパンジオールである、請求項3に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記数平均分子量200〜800のポリオキシエチレン鎖を有するビニル単量体(e)が、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル(メタ)アクリレートである、請求項3に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記ビニル重合体(a1)の全量に対する数平均分子量200〜800のポリオキシエチレン鎖の質量割合が50質量%〜90質量%である、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリエーテルポリオール(a2)が800〜5000の範囲の数平均分子量を有するものである、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
前記ビニル重合体(a1)と前記ポリエーテルポリオール(a2)との質量割合[(a1)/(a2)]が1/9〜4/6の範囲である、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリエーテルポリオール(a2)が、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、及び、エチレンオキサイドとテトラヒドロフランとの共重合体とからなる群より選ばれる1種以上を含むものである、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項10】
更に有機溶剤を含有するものである、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項11】
前記ウレタン樹脂(C)と水性媒体(F)とを含有するウレタン樹脂組成物であって、前記ウレタン樹脂(C)が親水性基を有するものである、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のウレタン樹脂組成物を用いて得られた成形物。

【公開番号】特開2012−62387(P2012−62387A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206640(P2010−206640)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】