説明

ウレタン系感圧接着剤

一般式X−A−B−A−Xを有する反応性オリゴマーの重合により調製される非シリコーンウレタン系接着剤であって、式中、Xはエチレン性不飽和基であり、Bはシリコーンを含まない単位であり、Aはウレタン結合基である、接着剤が開示される。この接着剤は光学的に透明であり、自己湿潤性であり、かつ除去可能である。光学接着物品を含む接着物品は、開示される非シリコーンウレタン系接着剤を用いて調製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、接着剤の分野、とりわけ、非シリコーンかつウレタン系接着剤である感圧接着剤の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤は、種々の標識、保持、保護、封止、及び遮蔽目的のために用いられている。接着テープは、一般に、裏材、又は基材、及び接着剤を含む。接着剤の1種、感圧接着剤は、多くの用途にとりわけ有用である。
【0003】
感圧接着剤は、当業者には、室温で(1)攻撃的及び永久的粘着力、(2)指圧以下の圧力による接着力、(3)被着体を保持する十分な能力、及び(4)被着体からきれいに取り外すのに十分な貼着力、を含む特定の特性を有することが周知である。感圧接着としてよく機能を果たすことがわかっている材料は、粘着力、引き剥がし粘着力、及び剪断強度の望ましいバランスをもたらすのに必要な、粘弾特性を示すように設計され、配合されたポリマーである。感圧接着剤の調製に最も一般的に用いられるポリマーは、天然ゴム、合成ゴム(例えば、スチレン/ブタジエンコポリマー(SBR)及びスチレン/イソプレン/スチレン(SIS)ブロックコポリマー)、種々の(メタ)アクリレート(例えば、アクリレート及びメタクリレート)コポリマー、並びにシリコーンである。これらの部類の材料はそれぞれ、利点と不利点とを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一連の様々な特性を有する接着剤の必要性が存続する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示されるのは、少なくとも一般式X−A−B−A−Xを有する少なくとも1種の反応性オリゴマーを含む混合物の硬化物を含む、ウレタン系接着剤であって、式中、Xはエチレン性不飽和基を含み、Bは5,000g/モル以上の数平均分子量を有する非シリコーン単位を含み、Aはウレタン結合基を含み、接着剤は光学的に透明であり、自己湿潤性であり、かつ除去可能である、接着剤である。
【0006】
また、開示されるのは、少なくとも1種のX−A−B−A−X反応性オリゴマーであって、式中、Xはエチレン性不飽和基を含み、Bは5,000g/モル以上の数平均分子量を有する非シリコーン単位を含み、Aはウレタン結合基を含む、反応性オリゴマーと、反応開始剤と、を含む、硬化性反応混合物である。幾つかの実施形態において、硬化性反応混合物は、追加的なエチレン性不飽和材料を更に含む。
【0007】
更に、少なくとも1種のX−A−B−A−X反応性オリゴマーであって、式中、Xはエチレン性不飽和基を含み、Bは5,000g/モル以上の数平均分子量を有する非シリコーン単位を含み、Aはウレタン結合基を含む、反応性オリゴマーと、反応開始剤と、を含む硬化性組成物を提供する工程と、この硬化性組成物を硬化させる工程と、を含む、接着剤を調製する方法が開示される。
【0008】
少なくとも1種のX−A−B−A−X反応性オリゴマーであって、式中、Xはエチレン性不飽和基を含み、Bは5,000g/モル以上の数平均分子量を有する非シリコーン単位を含み、Aはウレタン結合基を含む、反応性オリゴマーの硬化反応生成物を含む、感圧接着剤であって、この接着剤は光学的に透明であり、自己湿潤性であり、かつ除去可能である、接着剤と、基材と、を含む、接着物品が開示される。広範囲の基材は、接着物品を調製するのに適している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
医療産業、電子工業及び光学工業のような分野における、接着剤、とりわけ感圧接着剤の使用量が増大している。これらの産業の要求事項は、感圧接着剤に対して、粘着力、引き剥がし粘着力及び剪断強度の従来の特性を超える更なる要求を突きつけている。感圧接着剤を得るために次第に要求が厳しくなっている性能要件を満たすためには、新しい種類の材料が望ましい。
【0010】
非シリコーンウレタン系接着剤、とりわけ感圧接着剤の類が開示される。これらのウレタン系接着剤は、硬化性の非シリコーンウレタン系反応性オリゴマーから調製される。反応性オリゴマーは、フリーラジカル重合可能な基を含有する。幾つかの実施形態において、非シリコーンウレタン系接着剤は、ポリオキシアルキレン(ポリエーテル)基を含有する。
【0011】
非シリコーン含有ウレタン系反応性オリゴマーのフリーラジカル重合によって調製される非シリコーンウレタン系接着剤、とりわけ、非シリコーンウレタン系感圧接着剤は、様々なシリコーン様特性を有する。これらの特性は、とりわけ、光学的透明度、自己湿潤性、及び除去可能性である。
【0012】
本明細書で使用される用語「接着剤」は、2つの被着体を一緒に接着するのに有用なポリマー組成物を称する。接着剤の例は、熱活性化接着剤及び感圧接着剤である。
【0013】
熱活性化接着剤は、室温では非粘着性であるが、高温で粘着性になり、基材に接着することができるようになる。これらの接着剤は、通常、室温より高いTg(ガラス転移温度)又は融点(Tm)を有する。温度がTg又はTmより高い場合に、貯蔵弾性率は通常低下し、接着剤は粘着性になる。典型的には、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定される。
【0014】
感圧接着剤組成物は、(1)攻撃的かつ永久的な粘着力、(2)指圧以下の圧力による接着力、(3)被着体を保持する十分な能力、及び(4)被着体からきれいに取り外すのに十分な結合力を含む特性を有することが、当業者には周知である。感圧接着剤として良好に機能することが見出されている材料は、粘着力、引き剥がし粘着力、及び剪断保持力の、望ましいバランスをもたらすのに不可欠の粘弾性特性を示すように設計され配合されたポリマーである。特性の適正なバランスを得ることは、単純なプロセスではない。
【0015】
本明細書で用いられる用語「非シリコーン」とは、セグメント化コポリマーに対する繰り返し単位、又はシリコーン単位を含んでいないセグメント化コポリマーの単位をいう。用語シリコーン又はシロキサンは互換的に用いられ、ジアルキルシロキサン又はジアリールシロキサン(−SiRO−)の繰り返し単位を有する単位をいう。
【0016】
本明細書で用いられる用語「ウレタン系」とは、少なくとも1つのウレタン結合を有するコポリマー又はセグメント化コポリマーである巨大分子をいう。ウレタン基は、一般構造(−O−(CO)−NR−)を有し、式中、(CO)は、カルボニル基C=Oを定義し、Rは、水素又はアルキル基である}を有する。
【0017】
用語「セグメント化コポリマー」とは、連結されたセグメントのコポリマーであって、各々のセグメントが、主として単一構造単位又はある種の繰り返し単位を構成するコポリマーをいう。例えば、ポリオキシアルキレンセグメント化コポリマーは、次の構造:
−CHCH(OCHCHOCHCH−A−CHCH(OCHCHOCHCH
を有することができ、式中、Aは2つのポリオキシアルキレンセグメントの間の結合であるか、又はAは次の構造:
−CHCH(OCHCHOCHCH−A−B−
を有することができ、式中、AはポリオキシアルキレンセグメントとBセグメントとの間の結合である。
【0018】
本明細書で用いられる用語「反応性オリゴマー」とは、末端のフリーラジカル重合可能な基を有する巨大分子をいう。「ウレタン系反応性オリゴマー」は、末端のフリーラジカル重合可能な基と、少なくとも1つのウレタン結合とを有する巨大分子である。
【0019】
用語「アルキル」とは、飽和炭化水素であるアルカンのラジカルである1価の基をいう。アルキルは、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであってもよく、典型的には1〜20個の炭素原子を有する。幾つかの実施形態において、アルキル基は、1〜18個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、及びエチルヘキシルが包含されるが、これらに限定されない。
【0020】
用語「アリール」とは、芳香族及び炭素環式である一価の基を指す。アリールは、芳香環に連結又は縮合される1〜5個の環を有することができる。その他の環状構造は、芳香族、非芳香族、又はそれらの組み合わせであってもよい。アリール基の例には、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アンスリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナンスリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、及びフルオレニルが包含されるが、それらに限定されない。
【0021】
用語「アルキレン」とは、アルカンのラジカルである2価の基をいう。アルキレンは、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであってもよい。アルキレンは、しばしば、1〜20個の炭素原子を有する。幾つかの実施形態において、アルキレンは、1〜18個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を含有する。アルキレンのラジカル中心は、同一炭素原子上(即ち、アルキリデン)に、又は異なる炭素原子上に存在することがある。
【0022】
用語「ヘテロアルキレン」とは、チオ、オキシ、又は−NR−(式中、Rはアルキルである)によって接続された、少なくとも2つのアルキレン基を含む、二価の基を指す。ヘテロアルキレンは、直鎖、分枝状、環状、アルキル基によって置換される、又はこれらの組み合わせであってよい。幾種類かのヘテロアルキレンは、ポリオキシアルキレンであって、そのヘテロ原子が酸素であるものであり、例えば、
−CHCH(OCHCHOCHCH−である。
【0023】
用語「アリーレン」とは、炭素環式かつ芳香族である、二価の基をいう。この基は、1〜5個の環であって、接続されているか、縮合されているか、又はそれらの組み合わせである環を有する。他の環は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであることがある。幾つかの実施形態において、アリーレン基は、5個以下の環、4個以下の環、3個以下の環、2個以下の環、又は1個の芳香環を有する。例えば、アリーレン基は、フェニレンであることがある。
【0024】
用語「ヘテロアリーレン」とは、炭素環式及び芳香族であり、かつ、硫黄、酸素、窒素、又はフッ素、塩素、臭素若しくはヨウ素等のハロゲンのようなヘテロ原子を含有する、二価の基をいう。
【0025】
用語「アラルキレン」とは、式−R−Ar(式中、Rはアルキレンであり、Arはアリーレンである)(即ち、アルキレンはアリーレンに結合している)の二価の基をいう。
【0026】
用語「(メタ)アクリレート」とは、アルコールのモノマー性アクリル又はメタクリルエステルをいう。アクリレートモノマー及びメタクリレートモノマーは、本明細書でまとめて「(メタ)アクリレート」モノマーと称される。
【0027】
用語「フリーラジカル重合可能な」及び「エチレン性不飽和」は、互換的に用いられ、しかも、フリーラジカル重合機構を介して重合され得る炭素−炭素二重結合を含有する反応性基をいう。
【0028】
別段の定めがない限り、「光学的に透明な」とは、可視光スペクトル(約400〜約700nm)の少なくとも一部分にわたって高い光透過性を有し、低いヘイズを呈する、接着剤又は物品をいう。
【0029】
別段の定めがない限り、「自己湿潤」は、非常に柔らかく、柔軟性があり、非常に低い積層圧で適用され得る接着剤をいう。このような接着剤は、表面への自然な浸潤性を呈する。
【0030】
別段の定めがない限り、「除去可能な」とは、比較的低い初期接着力を有し(施用後、基材から一時的に取り外し、再配置することができ)、(十分に強い結合を形成するように)経時的に接着力が上昇するが、「除去可能な」ままである、即ち、接着力が、基材から永続的にきれいに除去可能である点を超えて上昇しない接着剤をいう。
【0031】
ウレタン系接着剤は、硬化性の非シリコーンウレタン系反応性オリゴマーから調製される。反応性オリゴマーは、フリーラジカル重合可能な基を含有する。本開示の非シリコーンウレタン系反応性オリゴマーは、一般構造X−A−B−A−Xを有する。この構造において、B単位は5,000g/モル以上の数平均分子量を有する非シリコーン基であり、A基はウレタン結合であり、かつ、X基はエチレン性不飽和基である。
【0032】
式X−A−B−A−Xによって記述される反応性オリゴマーは、反応性オリゴマーの混合物である場合がある。反応性オリゴマーの混合物には、2個未満の官能基を有する反応性オリゴマーを含むことがある。これらのオリゴマーは、一般構造X−A−B−Yによって記述することができ、式中、X、A及びBは前に記述された通りであり、しかも、Yはフリーラジカル重合が可能でない基であり、かつB単位に対するウレタン結合を含有することがあるか、又は含有しないこともある。Y基の例は、HO−B−OH前駆体からの未反応残部であることもあるヒドロキシル(−OH)基である。その混合物が重合する場合、X−A−B−A−X成分と一緒にX−A−B−Y成分が存在することによって、枝分かれポリマーを提供することができる。なぜなら、非反応性Y基は、ポリマー骨格の一部とはならないからである。
【0033】
この枝分かれは、完全には二官能性ではないモノマーを用いることに起因して、多くのポリウレタン接着剤における一般的特徴である。なぜなら、最近まで、純粋に2官能性の高分子量ジオールは入手できなかったからである。ここに開示される接着剤において、この枝分かれは、存在する場合、望ましくない特性を生じない訳ではなく、実に望ましい特性を生じることができる。例えば、枝分かれは、自己湿潤性のような望ましいシリコーン様特性を有する接着剤を生成するのに役立つことができる。
【0034】
X−A−B−A−X反応性オリゴマーは、例えば、一般式HO−B−OHのヒドロキシル官能性前駆体と、一般式Z−X(式中、Z基はイソシアネート官能性であり、X基はエチレン性不飽和基である)のイソシアネート官能性前駆体の2当量とを反応させることによって調製され得る。Z基のイソシアネート官能基は、ポリオールのヒドロキシル基と反応して、ウレタン結合を形成する。
【0035】
多種多様なHO−B−OH前駆体を用いることができる。HO−B−OHは、ポリオールであってもよいし、又は例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミドのようなヒドロキシルキャップトプレポリマー、又はポリ尿素プレポリマーであってもよい。
【0036】
有用なポリオールの例には、ポリエステルポリオール(例えば、ラクトンポリオール)及びそれらのアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、1,2−エポキシプロパン、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、イソブチレンオキシド、及びエピクロロヒドリン)付加物、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、例えば、ポリプロピレンオキシドポリオール、ポリエチレンオキシドポリオール、ポリプロピレンオキシドポリエチレンオキシドコポリマーポリオール、及びポリオキシテトラメチレンポリオール、ポリオキシシクロアルキレンポリオール、ポリチオエーテル、及びそれらのアルキレンオキシド付加物)、ポリアルキレンポリオール、それらの混合物、並びにそれらからのコポリマーが包含されるが、それらに限定されない。ポリオキシアルキレンポリオールは、とりわけ有用である。
【0037】
コポリマーが用いられる場合、化学的に類似する繰り返し単位は、コポリマーの全体にわたって、又はコポリマー中のブロックの形態で、ランダムに分布してもよい。同様に、化学的に類似する繰り返し単位は、コポリマー内部において、適切な任意の順序で配列されてもよい。例えば、オキシアルキレン繰り返し単位は、コポリマー内部において、内部単位又は末端単位であってもよい。オキシアルキレン繰り返し単位は、コポリマー内部において、コポリマー中のブロックの形態で、ランダムに分布してもよい。オキシアルキレン繰り返し単位を含有するコポリマーの一例は、ポリオキシアルキレンキャップトポリオキシアルキレンポリオール(例えば、ポリオキシエチレンキャップトポリオキシプロピレン)である。
【0038】
より高い分子量のポリオール(即ち、少なくとも約2,000の重量平均分子量を有するポリオール)が用いられる場合、ポリオール成分は「高度に純粋」である(即ち、ポリオールは、それの理論的官能価、例えば、ジオールでは2.0、トリオールでは3.0、に近づく)ことが、しばしば望ましい。これらの高度に純粋なポリオールは、一般に、少なくとも約800、典型的には少なくとも約1,000、より典型的には少なくとも約1,500の[ポリオールの分子量]対[モノオールの重量%]比を有する。例えば、モノオールを8重量%含有する分子量12,000のポリオールは、1,500(即ち、12,000/8=1,500)のような比を有する。一般に、高純度ポリオールはモノオールを約8重量%以下含有することが望ましい。
【0039】
一般に、この実施形態において、ポリオールの分子量が増大するにつれて、より高い割合のモノオールがポリオール中に存在することがある。例えば、約3,000以下の分子量を有するポリオールは、望ましくは、モノオールを約1重量%未満含有する。約3,000より大きく約4,000までの分子量を有するポリオールは、望ましくは、モノオールを約3重量%未満含有する。約4,000より大きく約8,000までの分子量を有するポリオールは、望ましくは、モノオールを約6重量%未満含有する。約8,000より大きく約12,000までの分子量を有するポリオールは、望ましくは、モノオールを約8重量%未満含有する。
【0040】
高純度ポリオールの例には、Lyondell Chemical Company(Houston,Texas)から商品名「ACCLAIM」で入手可能なポリオール、及び商品名「ARCOL」で入手可能なそれらの一部分が包含される。
【0041】
HO−B−OHがヒドロキシルキャップトプレポリマーである場合、種々様々な前駆体分子を用いて、所望のHO−B−OHプレポリマーを生成することができる。例えば、ポリオールを、理論量未満のジイソシアネートと反応させることによって、ヒドロキシルキャップトポリウレタンプレポリマーを生成することができる。適切なジイソシアネートの例には、例えば、2,6−トルエンジイソシアネート、2,5−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、メチレンビス(o−クロロフェニルジイソシアネート)、メチレンジフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、ポリカルボジイミド−修飾メチレンジフェニレンジイソシアネート、(4,4’−ジイソシアナト−3,3’,5,5’−テトラエチル)ビフェニルメタン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメトキシビフェニル、5−クロロ−2,4−トルエンジイソシアネート、1−クロロメチル−2,4−ジイソシアナトベンゼンのような芳香族ジイソシアネート、例えば、m−キシレンジイソシアネート、テトラメチル−m−キシレンジイソシアネートのような芳香族−脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,12−ジイソシアナトドデカン、2−メチル−1,5ジイソシアナトペンタンのような脂肪族ジイソシアネート、並びに、例えば、メチレン−ジシクロヘキシレン−4,4’−ジイソシアネート及び3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)のような脂環式ジイソシアネートが包含されるが、それらに限定されない。
【0042】
HO−B−OHプレポリマーの合成の例は、以下の反応スキーム1(式中、(CO)は、カルボニル基C=Oを表す)に示される。
【0043】
HO−R−OH+OCN−R−NCO→HO−R−O−[(CO)N−R−N(CO)O−R−O−]
反応スキーム1
式中、nは、1以上であり、[ポリオール]対[ジイソシアネート]の比によって決まり、例えば、その比が2:1である場合、nは1である。ポリオールとジカルボン酸又は二酸無水物との間の類似反応によって、エステル結合基を有するHO−B−OHプレポリマーを提供することができる。
【0044】
非シリコーンウレタン系反応性オリゴマーX−A−B−A−Xを調製するために、典型的には、HO−B−OH化合物が、X−Z化合物でキャップされる。X−Z化合物のZ基はイソシアネート基であり、X基は、エチレン性不飽和基(即ち、炭素−炭素二重結合)であり、Z基に連結されている。X基とZ基との間の連結は単結合であってもよく、又はそれは連結基であってもよい。連結基は、アルキレン基、ヘテロアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アラルキレン基、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0045】
X−Z化合物の例には、例えば、イソシアナトエチルメタクリレート、及びm−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートのような種々様々なイソシアナト(メタ)アクリレートが包含される。X−A−B−A−X反応性オリゴマーの合成の例は、以下の反応スキーム2に示される。
【0046】
HO−B−OH+2OCN−R−X→X−R−HN(CO)O−B−O(CO)NH−R−X
反応スキーム2
X−A−B−A−X反応性オリゴマー中のB単位は、例えば、尿素基、アミド基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、アルキレン基、ヘテロアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アラルキレン基、又はそれらの組み合わせのような様々な基を包含することのできる非シリコーン基である。B単位はまた、反応性オリゴマーから形成される接着剤の所望の特性によって決まる、様々な分子量を有することができる。一般に、B単位は5,000g/モル以上の数平均分子量を有する。幾つかの実施形態において、B単位はヘテロアルキレン基である。
【0047】
様々なX−A−B−A−X硬化性非シリコーンウレタン系反応性オリゴマーが市販されている。例えば、4,000〜7,000g/モルの範囲の重量平均分子量のウレタンアクリレートオリゴマーは、日本合成化学から商品名「UV−6100B」で市販されている。更に、様々なウレタンオリゴマーは、Sartomer Company(Exton,PA)から商品名「CN9018」、「CN9002」及び「CN9004」で市販されている。
【0048】
非シリコーンウレタン系感圧接着剤は、エチレン性不飽和X基によってX−A−B−A−X反応性オリゴマーを重合して、接着性を有するポリマーを形成することによって調製され得る。それらポリマーは、X−A−B−A−X反応性オリゴマーのみを含有することができるか、又はそれらポリマーは、追加のモノマー若しくは反応性オリゴマーが組み込まれているコポリマーであってもよい。本明細書で用いられる、追加のモノマー又は反応性オリゴマーは、エチレン性不飽和材料と総称される。
【0049】
追加のモノマーの中でも、組み込むのに有用であるのは、エチレン性不飽和基を含有し、かつ、それ故反応性オリゴマーと共反応性であるモノマーである。そのようなモノマーの例には、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アルファオレフィン、並びにビニル酸、アクリロニトリル、ビニルエステル、ビニルエーテル、スチレン、及びエチレン性不飽和オリゴマーのような、ビニル化合物が包含される。幾つかの例では、2種類以上の追加のモノマーを用いることができる。
【0050】
有用な(メタ)アクリレートの例には、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、及びシリコーンアクリレートが包含される。接着剤組成物全体がシリコーンを含まないことが望ましい用途では、シリコーンアクリレートは一般に用いられない。アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、アルキル基が1〜約20個の炭素原子(例えば、3〜18個の炭素原子)を含むものである。好適なアクリレートモノマーには、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソ−オクチルアクリレート、オクタデシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、及びドデシルアクリレートが包含される。対応するメタクリレートもまた有用である。芳香族(メタ)アクリレートの例は、ベンジルアクリレートである。
【0051】
有用な(メタ)アクリルアミドの例には、アクリルアミド、メタクリルアミド、並びに、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリルアミド、及びN,N−ジエチルアミノエチルメタクリルアミドのような置換(メタ)アクリルアミドが包含される。
【0052】
追加のモノマーとして有用なアルファオレフィンには、6個以上の炭素原子を含むものが一般に包含される。6個未満の炭素原子を有するアルファオレフィンは、周囲反応条件下で便利に取り扱うには揮発性が高すぎる傾向がある。好適なアルファオレフィンには、例えば、1−ヘキサン、1−オクタン、1−デセン等が包含される。
【0053】
有用なビニル化合物の例には、例えばアクリル酸、イタコン酸、メタクリル酸のようなビニル酸;例えばアクリロニトリル及びメタアクリロニトリルのようなアクリロニトリル;例えば酢酸ビニルのようなビニルエステル、並びに、例えばネオデカン酸、ネオノナン酸、ネオペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、又はプロピオン酸のようなカルボン酸のビニルエステル;並びに、例えばスチレン又はビニルトルエンのようなスチレンが包含される。有用である場合がある他のビニル化合物には、N−ビニルカプロラクタム、塩化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、及び無水マレイン酸が包含される。幾つかの用途、例えば、電子用途では、酸性基を含まないビニル化合物を含むことが望ましい場合がある。
【0054】
エチレン性反応性オリゴマーとの共重合に有用なエチレン性不飽和オリゴマーの例には、例えば、PCT出願番号WO 94/20583号に記述されるようなエチレン性不飽和シリコーンオリゴマーと、米国特許第4,554,324号(Husmanら)に記述されるような、比較的高いガラス転移温度を有する巨大分子モノマーとが包含される。接着剤組成物全体がシリコーンを含まないことが望ましい用途では、シリコーンオリゴマーは一般に用いられない。
【0055】
反応混合物は、必要に応じて、1種以上の架橋剤を更に含有することができる。コポリマーの分子量及び強度を増大させるために、架橋剤が用いられる。一般に、架橋剤は、非シリコーンを含有するウレタン系反応性オリゴマー、及び任意のあらゆるモノマーと共重合するものである。架橋剤は化学的架橋(例えば、共有結合又はイオン結合)を生じることができる。代替的に、架橋剤は、例えば、米国特許第4,554,324号(Husman)のスチレンマクロマのようなハードセグメント(即ち、室温より高いTg、一般的には70℃より高いTgを有するもの)の相分離に起因して、かつ/又は、WO 99/42536号に記述されるようなポリマーのイオン架橋のような酸/塩基の相互作用(即ち、同一ポリマーの内部に、若しくは複数のポリマーの間に、若しくはポリマーと添加剤との間に官能基を含むもの)に起因して、補強ドメインの形成に由来する熱可逆的な物理架橋を生じることができる。好適な架橋剤はまた、米国特許第4,737,559号(Kellen)、同第5,506,279号(Babuら)、及び同第6,083,856号(Josephら)に開示される。架橋剤は、紫外線(例えば、約250nm〜約400nmの波長を有する放射線)への暴露時、コポリマーを架橋させる光架橋剤であってもよい。
【0056】
好適な架橋剤の例には、多官能性エチレン性不飽和モノマーが包含される。そのようなモノマーには、例えば、ジビニル芳香族、ジビニルエーテル、多官能性マレイミド、多官能性アクリレート、及びメタクリレート等、並びにそれらの混合物が包含される。特に有用なのは、例えば、ジビニルベンゼン及び多官能性(メタ)アクリレートのようなジビニル芳香族である。多官能性(メタ)アクリレートには、トリ(メタ)アクリレート及びジ(メタ)アクリレート(つまり、3つ又は2つの(メタ)アクリレート基を含む化合物)が包含される。典型的には、ジ(メタ)アクリレート架橋剤(つまり、2つの(メタ)アクリレート基を含む化合物)が用いられる。有用なトリ(メタ)アクリレートには、例えば、トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、及びペンタエリスリトールトリアクリレートが包含される。有用なジ(メタ)アクリレートには、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びウレタンジ(メタ)アクリレートが包含される。
【0057】
架橋剤は有効量で使用される。有効量とは、感圧接着剤の架橋を引き起こし、対象とする基材に対して所望の最終接着性を生成するのに十分な凝集力を提供するのに十分である量を意味する。一般に、架橋剤は、モノマーの全量に基づき、約0.1部〜約10部の量で用いられる。
【0058】
一般に、非シリコーンウレタン系接着剤は、感圧接着剤であり、かつ、室温(約20℃)以下のガラス転移温度(Tg)値を有する。幾つかの実施形態において、非シリコーンウレタン系接着剤のTgは、0℃以下、又は−10℃以下でさえある。
【0059】
非シリコーンウレタン系接着剤は、溶媒プロセスによるか、無溶媒プロセス(例えば、表面上若しくはモールド中における連続的無溶媒プロセス又は重合)によるか、又はこれらの方法の組み合わせによって製造することができる。
【0060】
非シリコーンウレタン系接着剤を調製するのに適したプロセスの幾つかには、反応器中で非シリコーンウレタン系反応性オリゴマーを、任意的なエチレン性不飽和材料とフリーラジカル重合させて、非シリコーンウレタン系接着剤を形成することが包含される。非シリコーンウレタン系接着剤は、次いで、反応容器から取り出すことができる。代替的に、重合は、反応物を連続的に混合し、次いで反応物を表面(例えば、剥離ライナー又は基材)に又はモールドの中に堆積させ、次いで、所定の位置で混合物を重合させることによって実施することができる。
【0061】
幾つかの実施形態において、非シリコーンウレタン系反応性オリゴマーと、所望により追加のモノマーと、反応開始剤との混合物を表面の上に堆積させ、反応開始剤を活性化し、次いで、表面上で接着剤を硬化させることが好都合であることが見出だされた。混合物は溶媒を含有してもよいし、又は含有しなくてもよい。溶媒を用いる場合、硬化済み接着剤は、典型的には、乾燥して、溶媒を取り除く。
【0062】
反応開始剤は、熱反応開始剤又は光開始剤のいずれであってもよい。利用され得る適切なサーマルフリーラジカル反応開始剤には、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)などのアゾ化合物、三級ブチルペルオキシドなどのヒドロペルオキシド、及び過酸化ベンゾイル及び過酸化シクロヘキサノンなどの過酸化物が包含されるが、これらに限定されない。有用な光開始剤には、ベンゾインメチルエーテル若しくはベンゾインイソプロピルエーテルのようなベンゾインエーテル;アニソールメチルエーテルのような置換ベンゾインエーテル;2,2−ジエトキシアセトフェノン及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンのような置換アセトフェノン;2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンのような置換アルファケトン;2−ナフタレンスルホニルクロリドのような芳香族スルホニルクロリド;並びに1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(エトキシカルボニル)オキシムのような光活性オキシム、又はベンゾフェノン誘導体が包含されるが、これらに限定されない。ベンゾフェノン誘導体及びそれを作製する方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、米国特許第6,207,727号(Beckら)に記載されている。代表的なベンゾフェノン誘導体には、対称ベンゾフェノン(例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジフェニルベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン);非対称ベンゾフェノン(例えば、クロロベンゾフェノン、エチルベンゾフェノン、ベンゾイルベンゾフェノン、ブロモベンゾフェノン);及びフリーラジカル重合性ベンゾフェノン(例えば、アクリルオキシエトキシベンゾフェノン)が包含される。ベンゾフェノン自体は安価であり、コストが要因である場合が好ましいことがある。残留臭気又は揮発分が懸念される場合、共重合性ベンゾフェノンは、有用であることがある。また、それらベンゾフェノンは、それらが硬化される間、共有結合的に組成物の中に組み込まれる限り、それらの用途のためには好ましいことがある。有用な共重合性光開始剤の例は、例えば、米国特許第6,369,123号(Starkら)、同第5,407,971号(Everaertsら)、及び同第4,737,559号(Kellenら)に開示されている。共重合性光架橋剤は、直接フリーラジカルを発生させる、又は水素引抜き原子を引き抜いてフリーラジカルを発生させる。水素引抜き型光架橋剤の例には、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノンなどに基づくものが包含される。好適な共重合性水素引き抜き架橋化合物の例には、オルト位の芳香族ヒドロキシル基を持たない、モノエチレン性不飽和芳香族ケトンモノマーが包含される。好適なフリーラジカル生成共重合性架橋剤の例には、4−アクリルオキシベンゾフェノン(ABP)、パラ−アクリルオキシエトキシベンゾフェノン、及びパラ−N−(メタクリルオキシエチル)−カルバモイルエトキシベンゾフェノンからなる群から選択されるものが包含されるが、これらに限定されない。熱誘発重合と放射線誘発との両方において、反応開始剤は、モノマーの合計重量に基づき、約0.05重量%〜約5.0重量%の量で存在する。
【0063】
任意的な特性修飾添加剤を、重合反応に干渉しないという条件で、反応物に加えて、それら特性修飾添加剤を反応性オリゴマー及び任意的な他のモノマーと混合することができる。典型的な特性修飾剤には、形成される接着剤組成物の接着性能を修飾するための、粘着化剤(粘着付与剤)及び可塑剤(可塑剤)が包含される。粘着付与剤及び可塑剤は、用いられる場合、一般に、約5重量%〜約55重量%、約10〜約45重量%、又は更には約10重量%〜約35重量%の範囲の量で存在する。
【0064】
有用な粘着付与剤及び可塑剤は、接着剤の分野で便利に用いられるものである。好適な粘着化剤の例には、テルペンフェノール樹脂、アルファメチルスチレン樹脂、ロジン誘導粘着付与剤、モノマー性アルコール、オリゴマー性アルコール、オリゴマー性グリコール、及びこれらの混合物が包含される。有用な可塑化樹脂の例には、テルペンフェノール樹脂、ロジン誘導可塑剤、ポリグリコール、及びこれらの混合物が包含される。幾つかの実施形態において、可塑剤はミリスチン酸イソプロピル又はポリプロピレングリコールである。
【0065】
形成されるポリマー組成物は、追加の感圧接着剤と更にブレンドして、組成物の特性を修飾することができる。幾つかの実施形態において、例えば、酸性の(メタ)アクリレート感圧接着剤のような酸性感圧接着剤は、混合されて、非シリコーンウレタン系接着剤コポリマー上のウレタン基と酸−塩基相互作用を生じる。これらポリマー間の酸−塩基相互作用は、ルイス酸−塩基型相互作用である。ルイス酸−塩基型相互作用は、一方の成分が電子受容体(酸)であり、他方が電子供与体(塩基)であることを必要とする。電子供与体は、非共有の電子対を提供し、電子受容体はその追加された非共有電子対を取り込んで1つの軌道系を充足することができる。この例において、添加された(メタ)アクリレート感圧接着剤ポリマー上の酸根、典型的にはカルボン酸根は、ウレタン基の非共有電子対と相互作用する。
【0066】
好適な(メタ)アクリレート感圧接着剤の例には、アルキル(メタ)アクリレートモノマーから調製される(メタ)アクリレートコポリマーが包含され、また、例えばビニルモノマーのような追加のモノマーを含有してもよい。このようなアルキル(メタ)アクリレートモノマーの例には、約4個〜約12個の炭素原子を含むアルキル基と、n−ブチルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、及びこれらの混合物を含むがこれらに限定されないものを含むものが挙げられる。任意的に、例えば、メチルアクレート、メチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ビニルアセテート、スチレン等のような、ホモポリマーとして、0℃を超えるTgを有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、結果として得られる(メタ)アクリレートコポリマーのTgが約0℃未満であるという条件で、低いTgを有する1種類以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー及び共重合性酸性モノマーと併せて用いられ得る。
【0067】
(メタ)アクリレート感圧接着剤が酸性コポリマーであるとき、酸性(メタ)アクリレートコポリマーは、典型的には、共重合性の酸性モノマーを、約2重量%〜約30重量%、又は約2重量%〜約15重量%含有する酸性モノマーから得られる。有用な酸性モノマーの例には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等が包含される。
【0068】
添加される感圧接着剤は、用いられるとき、組成物の所望の特性を得るのに適したいかなる量でも用いることができる。例えば、添加される感圧接着剤は、組成物の約5〜約60重量%の量で添加されてもよい。
【0069】
加えて、充填剤のような他の特性修飾剤は、組み込まれる場合及び組み込まれる時、そのような添加剤が、最終組成物の望まれる特性に害を及ぼさないという条件で、必要に応じて添加されてもよい。例えば、ヒュームドシリカ、繊維(例えば、ガラス、金属、無機繊維又は有機繊維)、カーボンブラック、ガラス又はセラミックビーズ/バブル、粒子(例えば、金属、無機粒子、又は有機粒子)、ポリアラミド(例えば、DuPont Chemical Company(Wilmington,DE)から商品名「KEVLAR」で入手可能なもの)のような充填剤は、約30重量%以下の量で添加することができる。例えば、染料、不活性流体(例えば、炭化水素油)、色素、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、相溶剤、抗菌剤(例えば、酸化亜鉛)、導電体、熱伝導体(例えば、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、及びニッケル粒子)のような他の添加剤は、一般に組成物の全容量の約1〜約50%の量で、これらの系にブレンドしてもよい。
【0070】
非シリコーンウレタン系反応性オリゴマーの重合によって形成される接着剤は、感圧接着剤又は熱活性化接着剤である場合がある。一般に、感圧接着剤が形成される。これらの感圧接着剤は、広範な用途で有用である。
【0071】
感圧接着剤ポリマーを生じさせるために、低分子量モノマーの代わりに反応性オリゴマーを用いることにより、重合後揮発性未反応材料、及び他の低分子量不純物を含まないポリマーが得られる。残留モノマー及び低分子量不純物は、医療及び電子用途のような特定の用途で問題となり得る。医療及び電子用途では、残留モノマー及び不純物は、例えば、望まない臭気、又は接触する基材/物品(例えば、ハードディスクドライブ)の可能性のある汚染を引き起こす恐れがある。加えて、シリコーンを含まない反応性オリゴマーの使用は、シリコーンの混入が問題である、電子工業のような特定の工業で望ましい。
【0072】
重合時、接着剤を形成する接着剤又は反応性混合物は、表面上にコーティングされて、種々の接着剤物品を形成することができる。例えば、接着剤は、フィルム又はシート製品(例えば、装飾、反射、及びグラフィック)、印刷用粘着シート、テープ裏材(例えば、ポリマーフィルム、金属フィルム、紙、クレープ加工紙、発泡体等)、剥離ライナー等に施用することができる。基材は、所望の用途に応じて好適ないかなる種類の材料であってもよい。
【0073】
接着剤は、連続又はバッチプロセスのいずれかにより、フィルム又はコーティングに成形してもよい。バッチプロセスの例は、フィルム又はコーティングが接着される基材と、接着剤フィルム又はコーティングを剥離することができる表面との間に、接着剤の一部を置き、複合構造を形成することである。複合構造は、次いで、十分な温度及び圧力で圧縮されて、冷却後、所望の厚さの接着剤コーティング又はフィルムを形成することができる。代替的に、接着剤は、2つの剥離表面の間で圧縮され、冷却されて、積層用途で有用な接着剤転写テープを形成することができる。
【0074】
連続式形成方法は、接着剤をフィルムダイから引き出す工程と、続いて引き出された接着剤を、移動しているプラスチックウェブ又は他の好適な基材に接触させる工程とを含む。関連する連続法は、接着剤を押出成形し、支持体材料をフィルムダイから共押出し、層状生成物を冷却して、接着剤テープを形成することを含む。他の連続式形成方法は、接着剤を、高速で移動しているプラスチックウェブ、又は他の好適な予形成基材に直接接触させる工程を含む。この方法を用いて、接着剤を、ロータリーロッドダイのような、可撓性ダイリップを有するダイを用いて移動している、予形成ウェブに適用する。これらの連続方法のいずれかにより形成した後、接着剤フィルム又は層を、直接法(例えば、冷却ロール又は水浴)及び間接法(例えば、空気又はガス衝突)の両方を用いて急冷することにより、固化させてもよい。
【0075】
接着剤はまた、溶媒系法を用いてコーティングしてもよい。例えば、接着剤を、ナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、ロッドコーティング、カーテンコーティング、及びエアナイフコーティングのような方法によりコーティングしてもよい。接着剤混合物はまた、スクリーン印刷又はインクジェット印刷のような既知の方法により印刷してもよい。次いで、コーティングされた溶媒型接着剤を乾燥させて、溶媒を取り除く。典型的には、コーティングされた溶媒型接着剤を、オーブンにより供給されるような高温に供して、接着剤の乾燥を促進する。
【0076】
幾つかの実施形態では、接着剤の一方又は両方の主表面に対し、微細構造化表面を付与することが好ましい場合がある。接着剤の少なくとも1つの表面に微細構造化表面を持たせて、積層の間、空気排出を助けることが望ましい場合がある。接着剤層の一方の表面又は両方の表面に微細構造化表面を持たせることが望ましい場合、接着剤コーティング又は接着剤層は、微細構造を含むツール又はライナーの上に配置することができる。接着剤、又は重合時に接着剤を形成する反応性混合物は、ツール又はライナーの上に置くことができる。次いで、ライナー又はツールを除去して、微細構造化表面を有する接着剤層を露出させることができる。積層時の接着剤表面の微細構造は、時間が経てば、接着剤が表面を濡らすにつれて、消失することがある。このことは、残余の微細構造が光学的構造体の光学的特性に緩衝し得る光学的構造体の中で用いられる場合、とりわけ望ましい。
【0077】
接着剤層の厚さは、少なくとも約1μm、少なくとも5μm、少なくとも10μm、少なくとも15μm、又は少なくとも20μmである傾向がある。その厚さは、しばしば、約200μm以下であり、約175μm以下であり、約150μm以下であり、又は約125μm以下である。例えば、その厚さは1〜200μm、5〜100μm、10〜50μm、20〜50μm、又は1〜15μmである場合がある。
【0078】
感圧接着剤は、典型的には光学的に透明である。光学的に透明な接着剤を用いて、広範な光学物品を作製することができる。そのような物品には、光学フィルム、基材又はその両方が包含されることがある。そのような用途には、情報ディスプレイ、ウインドウカバー、グラフィック物品等が包含される。
【0079】
光学フィルムと、光学フィルムの少なくとも1つの主表面に隣接する感圧接着剤層と、を具備する物品が提供される。物品は、別の基材(例えば、感圧接着剤層に恒久的又は一時的に接合しているもの)、別の接着剤層、又はそれらの組み合わせを更に具備することができる。本明細書で用いられる用語「隣接する」とは、直接接触しているか、又は1つ以上の層で分離されている2つの層をいうのに用いられることがある。しばしば、隣接する層は直接接触している。
【0080】
幾つかの実施形態において、結果として得られる物品は、光学素子であることもあるか、又は光学素子を調製するために使用されることもある。本明細書で用いられる用語「光学素子」とは、光学的効果又は光学的用途を有する物品をいう。光学素子は、例えば、電子機器ディスプレイ、建設用途、交通用途、プロジェクション用途、光通信用途、及びグラフィックス用途に使用することができる。好適な光学素子には、スクリーン又はディスプレイ、陰極線管、偏光器、反射器等が包含されるが、これらに限定されない。
【0081】
任意の好適な光学フィルムを物品に使用することができる。本明細書で用いられる用語「光学フィルム」とは、光学的効果を生み出すために使用できるフィルムをいう。光学フィルムは通常、単層又は複層である場合があるポリマー含有フィルムである。光学フィルムは可撓性であり、好適な任意の厚さにすることができる。光学フィルムはしばしば、電磁スペクトルの一部の波長(例えば、電磁スペクトルの可視光範囲、紫外線範囲、又は赤外線範囲の波長)に対して、少なくとも部分的に透過性、反射性、反射防止性、偏光性、光学的に透明、又は拡散性である。典型的な光学フィルムには、可視ミラーフィルム、カラーミラーフィルム、太陽光反射性フィルム、赤外反射性フィルム、紫外反射性フィルム、例えば輝度上昇フィルム若しくは二重輝度上昇フィルムのような反射性偏光フィルム、吸収偏光フィルム、光学的に透明なフィルム、薄色フィルム、例えば光コリメートフィルムのようなプライバシーフィルム、及び反射防止フィルムが包含されるが、それらに限定されない。
【0082】
幾つかの実施形態では、光学フィルムはコーティングを有する。一般に、コーティングを用いて、フィルムの機能を高めるか、又はフィルムに追加の機能を提供する。コーティングの例には、例えば、ハードコート、防曇コーティング、耐引っ掻きコーティング、プライバシーコーティング、又はこれらの組み合わせが包含される。耐久性の高いハードコート、防曇コーティング、及び耐引っ掻きコーティングのようなコーティングは、例えば、タッチスクリーンセンサー、ディスプレイスクリーン、グラフィックス用途等のような用途において望ましい。プライバシーコーティングの例には、例えば、視界をぼんやりさせるための、ぼやけた(blurry)若しくは濁ったコーティング、又は視野角を制限するためのルーバー付フィルムが包含される。
【0083】
幾つかの光学フィルムは、ポリマー(例えば、染料を含むポリマー又は含まないポリマー)を含有する材質の複数の層、又は金属含有材質とポリマー材質との複数の層を有する。幾つかの光学フィルムは、異なる屈折率を有するポリマー材質を交互に重ねた層を有する。他の光学フィルムは、ポリマー層と金属含有層とを交互に重ねた層を有する。典型的な光学フィルムは、次の特許明細書に記述されている。米国特許第6,049,419号(Wheatleyら)、同第5,223,465号(Wheatleyら)、同第5,882,774号(Jonzaeら)、同第6,049,419号(Wheatleyら)、米国特許番号RE 34,605号(Schrenkら)、米国特許第5,579,162号(Bjornardら)、及び同第5,360,659号(Arendsら)。
【0084】
物品に含まれる基材には、ポリマー材質、ガラス材質、セラミックス材質、金属含有材質(例えば、金属又は金属酸化物など)、又はこれらの組み合わせが含まれ得る。基材は、支持層、プライマー層、ハードコート層、装飾デザインなどの材料の複数層を含み得る。基材は、接着剤層に恒久的又は一時的に接合され得る。例えば、剥離ライナーを一時的に接合させ、別の基材に接着剤層を接合する際に除去することができる。
【0085】
基材は、例えば、可撓性、剛性、強度若しくは支持、反射性、反射防止性、偏光性、又は透過性(例えば、異なる波長に対して選択的に)をもたらすなど、様々な機能を有し得る。即ち、基材は可撓性又は剛性であり得、反射性又は非反射性であり得、視覚的に透明、着色しているが透過性、又は不透明(例えば、非透過性)であり得、及び偏光性又は非偏光性であり得る。
【0086】
典型的な基材には、液晶ディスプレイ又は陰極線管などの電子機器ディスプレイの外側表面、窓又は窓ガラスの外側表面、光学構成要素(反射器、偏光器、回折格子、鏡、又はレンズなど)の外側表面、その他のフィルム(装飾フィルム、他の光学フィルムなど)、若しくは同様の物が包含されるが、これらに限定されない。
【0087】
ポリマー基材の典型的な例には、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート)、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート)、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、セルローストリアセテート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーなどを含有するものが包含される。
【0088】
他の実施形態において、基材は剥離ライナーである。任意の好適な剥離ライナーを使用することができる。典型的な剥離ライナーには、紙(例えば、クラフト紙)又はポリマー材質(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンビニルアセテート、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、及び同様の物)から製造されるものが包含される。少なくとも一部の剥離ライナーは、シリコーン含有材質又はフルオロカーボン含有材質などの剥離剤の層でコーティングされている。典型的な剥離ライナーには、CP Film(Martinsville,Va)から商品名「T−30」及び「T−10」として市販されている、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にシリコーン剥離剤コーティングを有するライナーが包含されるが、これらに制限されない。ライナーは、その表面に微細構造を有することができ、それは接着剤に付与されて、接着剤層の表面上に微細構造を形成する。ライナーを除去して、微細構造化表面を有する接着剤層を露出させることができる。
【0089】
剥離ライナーは、別の基材に光学フィルムを接着させる際に除去することができる(即ち、剥離ライナーの除去により接着剤層の表面が露出し、これが別の基材表面に結合することができる)。
【0090】
それら接着剤は、自己湿潤性であり、かつ、除去可能である。それら接着剤は、自発的に基材を湿らすことを可能にする、優れたなじみ性(conformability)を呈する。表面の特性はまた、接着剤を再配置又は再加工のために繰り返し基材に結合させ、取り外すことを可能にする。接着剤の強い貼着強度は、永続的に取り外し可能であることに加えて、それに低温流を制限し、高温耐性を与える構造的一体性を与える。幾つかの実施形態において、ガラス基材に結合された接着剤がコーティングされている物品の初期再剥離性(initial removability)は、以下の実施例セクションに記述される90°引き剥し粘着力試験によって測定されるように、2.9ニュートン/デシメータ(75g/インチ)以下である。室温での1週間の時効の直後の再剥離性は、以下の実施例セクションに記述される90°引き剥し粘着力試験によって測定されるように、7.7ニュートン/デシメータ(200g/インチ)以下である。他の実施形態において、室温での少なくとも1週間の時効の後の再剥離性は、以下の実施例セクションに記述される90°引き剥し粘着力試験によって測定されるように、15.4ニュートン/デシメータ(400g/インチ)以下、7.7ニュートン/デシメータ(200g/インチ)以下、又は更には3.9ニュートン/デシメータ(100g/インチ)以下である。
【0091】
自己湿潤性及び再剥離性がとりわけ重要である、典型的な接着剤物品には、例えば、グラフィック物品及び保護フィルムのような大型物品、並びに情報ディスプレイ装置が包含される。
【0092】
大型グラフィック物品又は保護フィルムには、典型的には、感圧接着剤で裏打ちされたポリマー薄膜が包含される。これらの物品は、取り扱い及び基材表面上への施用が難しい場合がある。大型物品は、時に「湿式」適用プロセスと呼ばれるものにより、基材表面上に施用してもよい。湿式適用プロセスは、液体、典型的には水/界面活性剤溶液を、大型物品の接着剤側面上、及び所望により基材表面上に噴霧することを含む。この液体は、一時的に感圧接着剤の「粘着性を低下」させて、よって設置者は、基材表面上の所望の位置で大型物品を取り扱い、スライド、及び再配置できる。また、この液体は、大型物品がくっつき合う、又は時期尚早に基材の表面上に接着した場合に、設置者が大型物品を引き離すことも可能にする。更には、接着剤に液体を適用すると、基材の表面上に確立される優れた接着性とともに、滑らかで気泡のない外観をもたらすことによって、設置済み大型物品の外観を向上させることができる。
【0093】
大型保護フィルムの例には、太陽光調整フィルム、飛散保護フィルム、装飾フィルム等のような窓用フィルムが包含される。幾つかの例において、フィルムは、米国特許第5,360,659号(Arendsら)に記述されるような、光学的に透明であるが、赤外を反射するフィルムのような、選択的透過性を有するマイクロ層フィルムのような、多層IRフィルム(即ち、赤外反射フィルム)のような多層フィルムであってもよい。
【0094】
湿式適用プロセスは多くの場合うまく用いられているが、時間がかかり、面倒なプロセスである。「乾式」適用プロセスは、一般に、大型グラフィック物品を設置するために望ましい。自己湿潤性であり除去可能な接着剤を、乾式設置プロセスで施用してもよい。物品は、大きな基材に容易に付着する。なぜなら、それらは自己湿潤性であり、必要に応じて容易に取り外し、再配置できるためである。
【0095】
情報ディスプレイ装置のような他の用途では、湿式適用プロセスを用いることができない。情報ディスプレイ装置の例には、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、フロント及びリアプロジェクションディスプレイ、陰極線管及び標識を含む、広範な表示域構成を有する装置が包含される。このような表示域構成を、携帯情報端末、携帯電話、タッチスクリーン、腕時計、カーナビゲーションシステム、汎世界測位システム、測深器、計算機、電子書籍、CD又はDVDプレーヤー、投射型テレビスクリーン、コンピュータモニタ、ノートパソコンのディスプレイ、計器、計器パネルカバー、グラフィックディスプレイ(戸内及び戸外グラフィック、バンパーステッカー等を含む)反射シート等を含む、種々の持ち運び可能な及び持ち運びできない情報ディスプレイ装置で使用することができる。
【0096】
広範な情報ディスプレイ装置が、照射装置と無照射装置との両方で用いられる。これらの装置の多くは、その構成の一部として、接着剤でコーティングされたフィルムのような接着剤物品を利用する。情報ディスプレイ装置で頻繁に用いられるある接着剤物品は、保護フィルムである。このようなフィルムは、頻繁に取り扱われる、又は露出した視聴画面を有する情報ディスプレイ装置上で頻繁に用いられる。
【0097】
いくつかの実施形態では、本開示の接着剤を用いて、このようなフィルムを情報ディスプレイ装置に付着させることができるが、なぜなら接着剤は光学的に透明性、自己湿潤性、及び取り外し性を有するためである。接着剤特性の光学的に透明性により、干渉することなく接着剤を通して情報を見ることが可能になる。自己湿潤性及び再剥離性の特徴により、フィルムをディスプレイ表面に容易に適用し、組立中必要に応じて取り外して再加工し、また情報ディスプレイ装置の実用寿命中に取り外して交換することが可能になる。
【実施例】
【0098】
これらの実施例は、単に例示を目的としたものであり、添付される特許請求の範囲を限定することを意味するものではない。本明細書の実施例及びその他の部分における部、百分率、比等は全て、特段の規定がない限り、重量による。使用した溶媒類及びその他の試薬類は、特段の規定がない限り、Sigma−Aldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin)より入手した。
【0099】
【表1】

【0100】
試験方法
90°引き剥がし粘着力
51μm(2ミル)厚さのPETフィルムに施用された51μm(2ミル)厚さの接着剤コーティングを、2.54cm×15cmのストリップに切断した。次いで、各々のストリップの上を一度通過させた2キログラムのローラーを用いて、6.2センチメートル×23センチメートルの、溶媒洗浄された清浄なガラス試験片に、各々のストリップを付着させた。結合された組立て品は、室温で約1分間保持され、次いで、90°引き剥がし試験集合体(Instrumentors Inc.(Strongsville,OH)から市販されているモデルSP2000)を備えたIMASSスリップ/剥離試験機を用いて、2.3m/分(90インチ/分)の速度で5秒間のデータ収集時間にわたり90°引き剥がし粘着力が得られるように試験した。3個の試料を試験した。報告される引き剥がし粘着力値は、3個の試料の各々からの引き剥がし粘着力値の平均である。データは、g/インチ幅で測定され、次いで、ニュートン/デシメートル(N/dm)に変換された。
【0101】
湿潤性試験
127μm(5ミル)厚さのPETフィルムに施用された51μm(2ミル)厚さの接着剤コーティングを、12.7cm×12.7cm(5×5インチ)の正方形の試料に切断した。各々の正方形試料の裏面の中心部に7.6×7.6cm(3×3インチ)正方形をマーキングした。ライナーを正方形のサンプルから取り外し、正方形のサンプルの1つの角部をイソプロパノールで洗浄した、ガラスクーポンの表面上に置いた。正方形のサンプルを、ガラス表面上に落とした。湿潤時間を、ストップウォッチを用いて測定し、湿潤性全部が印をつけた正方形内のいずれかの部分に達したときに開始し、正方形内部が完全に湿潤したときに終えた。湿潤時間を記録し、時間(秒)/湿潤面積(平方センチメートル)として記録した。
【0102】
分子量を決定するための滴定法
合成されたUBDAの分子量を決定するために、測定されたサンプル重量(約4〜6グラム)をジャー内に入れ、テトラヒドロフラン(サンプル重量の約3倍)を混合しながら添加して、均一な溶液を形成した。指標であるブロモフェノールブルー溶液を、色が深青色になるまで添加した。連続的に攪拌しながら、青から黄色への色の変化が終点に達したことを示すまで、1.0規定のHCl(水性)を滴加することにより、サンプル溶液を滴定した。滴定したHClの終点の体積を記録し、分子量を計算した。
【0103】
合成実施例
合成実施例1:UBDA 8Kの調製
ポリアミン−1(4モル)のサンプルを、100℃で1時間真空下で脱気した。新たに粉砕したジフェニルカーボネート(3モル)を添加し、混合物を攪拌して、均一な混合物を得た。その混合物は、真空下、160℃で3時間の間加熱されて、フェノール副生物は除去された。得られた生成物は、(上記方法を用いて、滴定により確認された)約8,000の分子量の尿素鎖延長ジアミンであった。
【0104】
合成実施例2:UBDA 12Kの調製
ポリアミン−1(6モル)のサンプルを、上記合成実施例1で記載した手順を用いて、ジフェニルカーボネート(5モル)のサンプルと反応させた。得られた生成物は、(上記方法を用いて、滴定により確認された)約12,000の分子量の尿素鎖延長ジアミンであった。
【0105】
比較例C1:
UBDA 8K(1モル)の攪拌したサンプルに、室温でVDM(2モル)のサンプルをゆっくりと添加した。混合物を攪拌し、一晩中反応させた。光開始剤−1のサンプルを添加した(0.5重量%)。得られた混合物を、ナイフダイ上及び大理石床手動拡散塗布器上のPETと剥離ライナーとの間を、サンプル上で実行される試験に適切な厚さに流延し、40ワット、350ナノメートルの電球を10分間用いて低強度のUV曝露下で硬化させた。ガラスに対する湿潤性試験であって、ガラスに対する90°引き剥し粘着力試験(初期、及び70℃で1週間エージングした後)を、上記の試験方法を用いて実施した。結果を表1に示す。
【0106】
比較例C2:
UBDA 12K(1モル)の攪拌したサンプルに、室温でVDM(2モル)のサンプルをゆっくりと添加した。混合物を攪拌し、一晩中反応させた。光開始剤−1のサンプルを添加した(0.5重量%)。得られた混合物を、ナイフダイ上及び大理石床手動拡散塗布器上のPETと剥離ライナーとの間を、サンプル上で実行される試験に適切な厚さに流延し、40ワット、350ナノメートルの電球を10分間用いて低強度のUV曝露下で硬化させた。ガラスに対する湿潤性試験であって、ガラスに対する90°引き剥し粘着力試験(初期及び70℃で1週間エージングした後)を上記の試験方法を用いて実施した。結果を表1に示す。
【0107】
(実施例1):
UA−1の撹拌されたサンプルに、光開始剤−1を添加し(1.0重量%)、次いで、結果として得られた混合物は、PETと、ナイフ金型及び大理石ベッドハンド塗布コーティング機(knife die and marble bed hand spread coater)の上の剥離ライナーとの間で、サンプル上で行われる試験に適する厚さに注型され、次いで、Fusion 600ワット/インチ(236ワット/cm)のDバルブを用いて、25フィート/分(7.5m/分)の線速で、高強度紫外線に暴露して硬化された。ガラスに対する湿潤性試験であって、ガラスに対する90°引き剥し粘着力試験(初期、及び70℃で1週間エージングした後)を、上記の試験方法を用いて実施した。結果を表1に示す。
【0108】
(実施例2):
UA−2の撹拌されたサンプルに、光開始剤−1を添加し(1.0重量%)、次いで、結果として得られた混合物は、PETと、ナイフ金型及び大理石ベッドハンド塗布コーティング機の上の剥離ライナー間で、サンプル上で行われる試験に適する厚さに注型され、次いで、Fusion 600ワット/インチ(236ワット/cm)のDバルブを用いて、25フィート/分(7.5m/分)の線速で、高強度紫外線に暴露して硬化された。ガラスに対する湿潤性試験であって、ガラスに対する90°引き剥し粘着力試験(初期、及び70℃で1週間エージングした後)を、上記の試験方法を用いて実施した。結果を表1に示す。
【0109】
(実施例3):
UA−3の撹拌されたサンプルに、光開始剤−1を添加し(1.0重量%)、次いで、結果として得られた混合物は、PETと、ナイフ金型及び大理石ベッドハンド塗布コーティング機の上の剥離ライナーとの間で、サンプル上で行われる試験に適する厚さに注型され、次いで、Fusion 600ワット/インチ(236ワット/cm)のDバルブを用いて、25フィート/分(7.5m/分)の線速で、高強度紫外線に暴露して硬化された。ガラスに対する湿潤性試験であって、ガラスに対する90°引き剥し粘着力試験(初期、及び70℃で1週間エージングした後)を、上記の試験方法を用いて実施した。結果を表1に示す。
【0110】
(実施例4):
UA−1の撹拌されたサンプルに、IPMを20重量%になるまで添加し、光開始剤−1を添加し(1.0重量%)、次いで、結果として得られた混合物は、PETと、ナイフ金型及び大理石ベッドハンド塗布コーティング機の上の剥離ライナーとの間で、サンプル上で行われる試験に適する厚さに注型され、次いで、Fusion 600ワット/インチ(236ワット/cm)のDバルブを用いて、25フィート/分(7.5m/分)の線速で、高強度紫外線に暴露して硬化された。ガラスに対する湿潤性試験であって、ガラスに対する90°引き剥し粘着力試験(初期、及び70℃で1週間エージングした後)を、上記の試験方法を用いて実施した。結果を表1に示す。
【0111】
(実施例5):
(エチルアセテートに固形分が80%になるまで溶解された)UA−1の撹拌されたサンプルに、IPMを全固形分の25重量%になるまで添加し、次いで、TRPGDAを全固形分の15重量%になるまで添加し、PSA−1溶液を全固形分の10重量%になるまで添加し、光開始剤−1を添加し(全固形分の1.0重量%)、次いで、結果として得られた混合物は、PETの上に注型され、次いで、70℃で10分間乾燥させて溶媒を除去した。未硬化コーティングの上に離型ライナーを積層し、次いで、サンプルは、Fusion 600ワット/インチ(236ワット/cm)のDバルブを用いて、25フィート/分(7.5m/分)の線速で、高強度紫外線に暴露して硬化された。ガラスに対する湿潤性試験であって、ガラスに対する90°引き剥し粘着力試験(初期、及び70℃で1週間エージングした後)を、上記の試験方法を用いて実施した。結果を表1に示す。
【0112】
比較例C3:
UA−4の撹拌されたサンプルに、光開始剤−1を添加し(1.0重量%)、次いで、結果として得られた混合物は、PETと、ナイフ金型及び大理石ベッドハンド塗布コーティング機の上の剥離ライナーとの間で、サンプル上で行われる試験に適する厚さに注型され、次いで、Fusion 600ワット/インチ(236ワット/cm)のDバルブを用いて、25フィート/分(7.5m/分)の線速で、高強度紫外線に暴露して硬化された。ガラスに対する湿潤性試験であって、ガラスに対する90°引き剥し粘着力試験(初期、及び70℃で1週間エージングした後)を、上記の試験方法を用いて実施した。結果を表1に示す。
【0113】
比較例C4:
UA−5の撹拌されたサンプルに、光開始剤−1を添加し(1.0重量%)、次いで、結果として得られた混合物は、PETと、ナイフ金型及び大理石ベッドハンド塗布コーティング機の上の剥離ライナーとの間で、サンプル上で行われる試験に適する厚さに注型され、次いで、Fusion 600ワット/インチ(236ワット/cm)のDバルブを用いて、25フィート/分(7.5m/分)の線速で、高強度紫外線に暴露して硬化された。ガラスに対する湿潤性試験であって、ガラスに対する90°引き剥し粘着力試験(初期、及び70℃で1週間エージングした後)を、上記の試験方法を用いて実施した。結果を表1に示す。
【0114】
比較例C5:
UA−6の撹拌されたサンプルに、光開始剤−1を添加し(1.0重量%)、次いで、結果として得られた混合物は、PETと、ナイフ金型及び大理石ベッドハンド塗布コーティング機の上の剥離ライナーとの間で、サンプル上で行われる試験に適する厚さに注型され、次いで、Fusion 600ワット/インチ(236ワット/cm)のDバルブを用いて、25フィート/分(7.5m/分)の線速で、高強度紫外線に暴露して硬化された。ガラスに対する湿潤性試験であって、ガラスに対する90°引き剥し粘着力試験(初期、及び70℃で1週間エージングした後)を、上記の試験方法を用いて実施した。結果を表1に示す。
【0115】
比較例C6:
UA−7の撹拌されたサンプルに、光開始剤−1を添加し(1.0重量%)、次いで、結果として得られた混合物は、PETと、ナイフ金型及び大理石ベッドハンド塗布コーティング機の上の剥離ライナーとの間で、サンプル上で行われる試験に適する厚さに注型され、次いで、Fusion 600ワット/インチ(236ワット/cm)のDバルブを用いて、25フィート/分(7.5m/分)の線速で、高強度紫外線に暴露して硬化された。ガラスに対する湿潤性試験であって、ガラスに対する90°引き剥し粘着力試験(初期、及び70℃で1週間エージングした後)を、上記の試験方法を用いて実施した。結果を表1に示す。
【0116】
【表2】

【0117】
NW=外圧を加えないで、湿潤は観察されず。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のX−A−B−A−X反応性オリゴマーを含む混合物の硬化物を含む、接着剤であって、式中、
Xはエチレン性不飽和基を含み、
Bは5,000g/モル以上の数平均分子量を有する非シリコーン単位を含み、
Aはウレタン結合基を含み、前記接着剤は光学的に透明であり、自己湿潤性であり、かつ除去可能である、接着剤。
【請求項2】
Bがオキシアルキレン基を含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記接着剤が20℃未満のTgを有する、請求項1に記載の接着剤。
【請求項4】
前記接着剤が−10℃未満のTgを有する、請求項1に記載の接着剤。
【請求項5】
前記接着剤が微細構造化接着剤である、請求項1に記載の接着剤。
【請求項6】
前記混合物の硬化物が、エチレン性不飽和材料を更に含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項7】
添加剤を更に含み、該添加剤が、感圧接着剤、可塑剤、粘着剤、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項8】
感圧接着剤5〜60重量%と、可塑剤5〜55重量%と、を含む、請求項9に記載の接着剤。
【請求項9】
少なくとも1種のX−A−B−A−X反応性オリゴマーであって、式中、
Xはエチレン性不飽和基を含み、Bは5,000g/モル以上の数平均分子量を有する非シリコーン単位を含み、Aはウレタン結合基を含む、反応性オリゴマーと、
反応開始剤と、を含む、硬化性反応混合物。
【請求項10】
前記反応開始剤が光開始剤である、請求項9に記載の硬化性反応混合物。
【請求項11】
エチレン性不飽和材料を更に含む、請求項9に記載の硬化性反応混合物。
【請求項12】
少なくとも1種のX−A−B−A−X反応性オリゴマーであって、式中、Xはエチレン性不飽和基を含み、Bは5,000g/モル以上の数平均分子量を有する非シリコーン単位を含み、Aはウレタン結合基を含む、反応性オリゴマーと、
反応開始剤と、を含む硬化性組成物を提供する工程と、
前記硬化性組成物を硬化させる工程と、を含む、接着剤を調製する方法。
【請求項13】
少なくとも1種のX−A−B−A−X反応性オリゴマーであって、式中、Xはエチレン性不飽和基を含み、
Bは5,000g/モル以上の数平均分子量を有する非シリコーン単位を含み、Aはウレタン結合基を含む、
反応性オリゴマーの硬化反応生成物を含む、感圧接着剤であって、該接着剤は光学的に透明であり、自己湿潤性であり、かつ除去可能である、接着剤と、
基材と、を含む、接着物品。
【請求項14】
前記基材がテープ裏材、フィルム、シート又は剥離ライナーである、請求項13に記載の接着物品。
【請求項15】
前記フィルムが光学活性フィルムを含み、前記光学活性フィルムが、可視ミラーフィルム、カラーミラーフィルム、太陽光反射フィルム、拡散フィルム、赤外線反射フィルム、紫外線反射フィルム、例えば輝度向上フィルム若しくは二重輝度向上フィルムのような反射偏光フィルム、吸収偏光フィルム、光学的に透明なフィルム、薄色フィルム、例えば光コリメートフィルムのようなプライバシーフィルム、又は反射防止フィルムを含む、請求項14に記載の接着物品。
【請求項16】
前記光学活性フィルムが太陽光制御フィルムを含む、請求項15に記載の接着物品。
【請求項17】
前記光学活性フィルムがコーティングされたフィルムを含み、前記コーティングがハードコート、防曇コーティング、耐引っ掻きコーティング、プライバシーコーティング、又はこれらの組み合わせを含む、請求項15に記載の接着物品。
【請求項18】
前記光学活性フィルムがタッチスクリーンセンサーを含む、請求項15に記載の接着物品。
【請求項19】
Bがオキシアルキレン基を含む、請求項13に記載の接着物品。
【請求項20】
第2の基材を更に含み、前記第2の基材が、剛性表面、可撓性表面、テープ裏材、フィルム、シート、又は剥離ライナーを含む、請求項13に記載の接着物品。

【公表番号】特表2012−526894(P2012−526894A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510816(P2012−510816)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/031689
【国際公開番号】WO2010/132176
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】