説明

ウレタン系防水材

【課題】 活性水素化合物としてアミン化合物を使用することなく、可使時間と硬化性のバランスに優れた破断伸度450%以上のウレタン系防水材を提供する。
【解決手段】 ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオールであって、その分子構造中に1級水酸基(H1)と2級水酸基(H2)とを有しており、かつ、1,500〜5,000の数平均分子量(Mn)及び100〜250mg・KOH/gの水酸基価を有する多分岐ポリエーテルポリオールを主成分とするポリオール(A)及びイソシアネート基を末端に2個以上有するウレタンプレポリマー(B)を含有するウレタン組成物からなり、JISA6021に規定する破断伸度が450%以上であることを特徴とするウレタン系防水材に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオールとして多分岐ポリエーテルポリオールを用いたウレタン組成物からなるウレタン系防水材に関する。
【背景技術】
【0002】
土木建築分野の防水材用途において、ウレタン系防水材は、現在トリレンジイソシアネートとポリオキシアルキレンポリオールとの反応により得られるイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを主成分とする主剤と、ポリオキシアルキレンポリオールおよび4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)(以下MBOCAという)等を主成分とする硬化剤による二液型防水材が主流となっている。
MBOCAは、可使時間と硬化性とのバランスが優れており、多くのウレタン系防水材で使用されているが、近年環境対応化が謳われる中、MBOCAが特定化学物質であることから、製造・使用には一定の制約がある。
ここでいう可使時間と硬化性のバランスとは、常温で30分以上の可使時間があり、かつ、翌日に開放が可能、つまり塗布12時間後には指触乾燥している硬化性を保持していることである。
【0003】
そこで、従来より、法的制約を受けることなく、MBOCAと同等の性能を維持した防水材として、ジエチルトルエンジアミンを使用した防水材が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかし、前記ウレタン系防水材は、常温における可使時間と硬化性とのバランスが優れているものの、アミン化合物を用いるという点で、MBOCAと同様、アミン特有の皮膚刺激性、カブレ等の問題を抱えている。
【特許文献1】特開2006−70185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、活性水素化合物としてアミン化合物を使用することなく、可使時間と硬化性のバランスに優れた破断伸度450%以上のウレタン系防水材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリオールとして特定の多分岐ポリエーテルポリオールを用いたウレタン組成物を防水材として用いると、アミン化合物を用いることなく、可使時間と硬化性のバランスがとれ、JIS−A6021を満たす優れた塗膜を形成できることを見いだすに及んで、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオールであって、その分子構造中に1級水酸基(H1)と2級水酸基(H2)とを有しており、かつ、1,500〜5,000の数平均分子量(Mn)及び100〜250mg・KOH/gの水酸基価を有する多分岐ポリエーテルポリオールを主成分とするポリオール(A)及びイソシアネート基を末端に2個以上有するウレタンプレポリマー(B)を含有するウレタン組成物からなり、JISA6021に規定する破断伸度が450%以上であることを特徴とするウレタン系防水材を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のウレタン系防水材は、アミン化合物を用いることなく、可使時間と硬化性のバランスがとれ、塗膜物性が優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明をさらに好ましい例を用いて詳細に説明する。
本発明に使用するポリオール(A)の主成分として用いられる多分岐ポリエーテルポリオールは、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させて得られるものである。
かかる多分岐ポリエーテルポリオールは、官能基が分子表面上に配向し、球状に近い構造をとるようになるため、分子間の凝集エネルギーが高くなるものと推定している。
また、多分岐ポリエーテルポリオールの「多分岐」とは、分岐した先で更に分岐する分子構造を意味するものである。
【0010】
ここで、本発明に使用するヒドロキシアルキルオキセタン(a1)としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造を有するものが例として挙げられる。
【0011】
【化1】


ここで、一般式(1)中、Rは、メチレン基、エチレン基、若しくはプロピレン基であり、一方、Rは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシアルキル基、又は炭素原子数1〜6のヒドロキシアルキル基を表す。また、炭素原子数1〜8のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、及び2−エチルヘキシル基が挙げられ、炭素原子数1〜5のアルコキシアルキル基の例としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基が挙げられる。また、炭素原子数1〜3のヒドロキシアルキル基の例としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、及びヒドロキシプロピル基が挙げられる。
【0012】
かかる一般式(1)で表されるヒドロキシアルキルオキセタン(a1)の中でも、慣性半径がより小さくなって従って粘度の低減に効果的であり、また、硬化物の硬度も高くなる点から、Rがメチレン基であり、かつ、Rが炭素原子数1〜7のアルキル基である化合物が好ましく、とりわけ3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン、及び3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタンが好ましい。
【0013】
次に、上記ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と開環重合反応させる1官能性エポキシ化合物(a2)としては、例えば、オレフィンエポキサイド、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0014】
ここで、使用しうるオレフィンエポキサイドは、具体例として、プロピレンオキサイド、1−ブテンオキサイド、1−ペンテンオキサイド、1−ヘキセンオキサイド、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシドデカン、シクロヘキセンオキシド、シクロオクテンオキシド、シクロドデセンオキシド、スチレンオキシド、及び、フッ素原子数1〜18のフロロアルキルエポキシド等が挙げられる。
【0015】
グリシジルエーテル化合物は、具体例として、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、n−プロピルグリシジルエーテル、i−プロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、i−ブチルグリシジルエーテル、n−ペンチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシル−グリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、アリールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2−メチルフェニルグリシジルエーテル、4−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、4−ノニルフェニルグリシジルエーテル、4−メトキシフェニルグリシジルエーテル、及び、1〜18のフッ素原子数を有するフロロアルキルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0016】
グリシジルエステル化合物は、具体例として、グリシジルアセテート、グリシジルプロピオネート、グリシジルブチレート、グリシジルメタクリレート、及びグリシジルベンゾエート等が挙げられる。
【0017】
これらの中でも特に、高い塗膜強度が得られ、かつ分子量が小さくなる点からオレフィンエポキサイドが好ましく、とりわけプロピレンオキサイド、1−ブテンオキサイド、1−ペンテンオキサイド、又は1−ヘキセンオキサイドが好ましい。
【0018】
ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを原料成分として開環重合反応させる方法としては、例えば次の方法が挙げられる。
すなわち、ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と、1官能性エポキシ化合物(a2)とを、モル基準で、(ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)/1官能性エポキシ化合物(a2)=1/1〜1/10、好ましくは1/1〜1/3となる割合で混合し、これらをパーオキサイドフリーの有機溶媒、例えば、ジエチルエーテル、ジ−i−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−i−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテル、t−アミノメチルエーテル、又はジオキソランで、原料成分/有機溶剤の質量比が1/1〜1/5、好ましくは1/1.5〜1/2.5となる割合で溶解する。
【0019】
次いで得られた溶液を−10℃〜−15℃まで撹拌しながら冷却し、次いで、重合開始剤を単独で、或いは溶液状態で、0.1〜1時間、好ましくは0.3〜0.5時間かけて滴下する。ここで、重合開始剤は、原料モノマーの全質量に対して0.01〜1質量%、好ましくは0.75〜0.3質量%なる割合で使用できる。また、重合開始剤を溶液状態で使用する場合、当該溶液中の重合開始剤の濃度は、1〜90質量%、特に25〜50質量%であることが好ましい。ついで、この重合溶液を25℃になるまで撹拌し、次いで、リフラックスする温度まで加熱し、0.5〜3時間かけて原料成分を全て反応するまで反応を行う。原料モノマーの転化率は、GC、NMR、又はIRスペクトルによって確認することによって制御することができる。
【0020】
重合後、得られた前記多分岐ポリエーテルポリオールは、前記重合開始剤と当量の水酸化アルカリ水溶液による撹拌し、又は、前記重合開始剤と当量のナトリウムアルコキシッドやカリウムアルコキシドの添加によって中和する。中和した後、濾過し、溶媒で目的物を抽出した後、減圧下に溶媒を留去することにより、目的とする多分岐ポリエーテルポリオールを得ることができる。
【0021】
上記の方法で得られる多分岐ポリエーテルポリオールは、その分子構造中に1級水酸基(H1)と2級水酸基(H2)とを有しており、かつ、前記多分岐ポリエーテルポリオールの数平均分子量(Mn)が1,500〜5,000、水酸基価が100〜250mg・KOH/gであることを特徴としている。これらを満足すると、可使時間と硬化性のバランスがとれ、破断伸度450%以上の優れた硬化物が得られる。
数平均分子量(Mn)が1500未満、又は水酸基価が250mg・KOH/gを超える場合は、硬い塗膜になり破断伸度450%以上を保持できず、JISA6021を満たすウレタン系防水材に成り得ない。また、数平均分子量(Mn)が5000を超える、又は水酸基価が100mg・KOH/g以下の場合は、逆に十分な塗膜強度が得られない。
数平均分子量(Mn)及び水酸基価は上記値範囲内であれば好ましく使用できるが、効果を最大限得るには、数平均分子量2,000〜4,000、水酸基価150〜250であるのが更に好ましい。
【0022】
更に、本発明の多分岐ポリエーテルポリオールは、分子構造中に1級水酸基(H1)のみならず、2級水酸基(H2)をも有するものである。
1分子中の前記2級水酸基(H2)の数は、可使時間と硬化物硬度とのバランスの点から、全水酸基数に対して、10〜50%、さらに好ましくは20〜40%となる割合であることが好ましい。また本発明のポリオールの全水酸基数は、好ましくは4以上、さらに好ましくは4〜20である。
【0023】
なお、多分岐ポリエーテルポリオール中の全水酸基数に対する2級水酸基(H2)数の割合は、多分岐ポリエーテルポリオールをトリフロロ酢酸エステル化した後に、19F−NMRで測定することによって特定することができる。
【0024】
本発明のウレタン系防水材に用いられるウレタン組成物は、ポリオール(A)及びイソシアネート基を末端に2個以上有するウレタンプレポリマー(B)との二成分系硬化性組成物である。また当該ポリオール(A)中に、前記多分岐ポリエーテルポリオールを用いることを特徴としている。
本発明では、ポリオール(A)の構成成分として、さらに、ポリアルキレンエーテルポリオールに代表される、活性水素を有する官能基が2個以上存在する活性水素化合物(a3)を含むことが、硬化塗膜の高伸び率を保持できる点から好ましい。
【0025】
かかる活性水素化合物(a3)とは、公知慣用のエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4ブタンジオール、1,3ブタンジオール、3−メチルペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、トリメチロールプロパン等の単鎖ポリオール類、これら単鎖ポリオール類とアルキレンオキサイド類(例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等)を重合させたポリアルキレンエーテルポリオール類あるいはフタル酸、マレイン酸、アジピン酸、ヘット酸、コハク酸、水添ダイマー酸等の二塩基酸と前述の単鎖グリコール類とのエステル化反応によって得られるポリエステルポリオール類、ポリオール類にイプシロンカプロラクトンを付加重合させたポリオールやポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリブタジエンポリオール、ポリオール型キシレンホルムアルデヒド樹脂、水酸基含有高級脂肪酸アルキルエステル等を挙げることができる。上記化合物は単独であるいは2種類以上を組み合わせて用いても良い。
なお、伸び率、耐水性の点で、ポリアルキレンエーテルポリオールを用いることが好ましい。また、さらに好ましくは、分子量が1000〜6000のポリオキシアルキレンポリオールを用いることで、高伸度の塗膜を得ることができる。
【0026】
前記活性水素化合物(a3)に対する多分岐ポリエーテルポリオール(多分岐ポリエーテルポリオール/活性水素化合物(a3))が重量比で3/7〜10/0であり、塗膜伸び率の点で、3/7〜7/3で用いることが好ましい。
また、このポリオール(A)の全水酸基数は3以上であり、塗膜強度、伸び率のバランスの点で、全水酸基数は3〜10であることが好ましく、3〜6であればさらに好ましい。
【0027】
次に、本発明に使用するウレタン組成物におけるウレタンプレポリマー(B)について説明する。
かかるウレタンプレポリマー(B)は、分子内に1級または2級の水酸基を2個以上有するポリオールと有機ポリイソシアネートとの反応により得られる末端
にイソシアネート基を2個以上有するものである。前記ポリオールの水酸基(OH)と有機ポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)との反応割合は、
当量比でNCO/OHが、好ましくは1.6以上であり、特に好ましくは1.8〜4.0である。
残存NCOの量は、1〜15重量%であることが好ましい。またウレタンプレポリマーの有する末端イソシアネート基数は、1分子中に2〜3個有するのが好
ましい。
【0028】
前記ポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1.4ブタンジオール、トリ
メチロールプロパン等の単鎖ポリオール、これら単鎖ポリオールとアルキレンオキサイド(例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサ
イド、スチレンオキサイド等)を単独または併用で重合させたポリアルキレンエーテルポリオールあるいは二塩基酸と単鎖グリコールのエステル化反応によって
得られるポリエステルポリオール、天然油及びその誘導体、ポリブタジエンポリオール、ポリオール型キシレンホルムアルデヒド樹脂の単体または混合物のポリ
オールが挙げられる。これらのうち、ポリエーテルポリオールが好ましく、特にポリエーテルジオール及び/又はポリエーテルトリオールが好ましい。その他、
ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール等のウレタン用ポリオールも使用できる。またこのポリオールは、数平均分子量が500〜16,000
であることが好ましい。
【0029】
前記有機ポリイソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、一部をカルボジイミド化されたジフェニルメ
タンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネー
ト、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタン
ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートが挙げられる。これらの
1種又は2種以上の混合物を用いることができる。これらのうち、反応性の点からトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0030】
本発明に用いられるウレタン組成物は、前記ポリオール(A)、前記ウレタンプレポリマー(B)に、更に可塑剤、充填材、及び必要に応じてその他各種の添加剤を加えることにより、調整することが出来る。
なお本発明のウレタン系防水材は、特に問題の無い限り、様々な塗布方法や用途に使用できる。例えば塗布方法の例としては、刷毛塗りやローラー塗り、スプレー塗布などが挙げられるが、もちろんレーキ塗布その他の方法であっても良い。また、使用用途の例としては、防水材以外に舗装材、コーティングなどが挙げられる。
【0031】
かかる可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジオクチルアゼレート、ジオクチルセバケート等のエステル系可塑剤やトリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等の燐酸エステル系可塑剤、天然油脂およびその誘導体の脂肪酸エステル系が挙げられる。これらのうち、環境ホルモン、減粘効果の点から、脂肪酸エステル系可塑剤が好ましい。
【0032】
前記充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、酸化カルシウム、クレー、タルク、酸化チタン、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム、カオリン、硅そう土、ガラスバルーン等の無機化合物の粉粒体が挙げられる。その添加量は、組成物中に好ましくは5〜70であり、より好ましくは10〜60重量%である。
【0033】
また、他の添加剤の例としては、合成ゼオライト、シリカゲル、珪藻土、消石灰、生石灰、水酸化マグネシウム、無水石膏、塩化カルシウム、合成ハイドロタルサイト、活性炭、活性白土の如き吸湿剤、アゾ系、銅フタロシアニン系、弁柄、黄鉛、酸化チタン、亜鉛華またはカーボンブラックの如き有機ないしは無機系の着色顔料、および、鉛丹、鉛白、塩基性クロム酸塩、塩基性硫酸鉛、ジンククロメート、亜鉛末またはMIOの如き防錆顔料、さらには、チキソ付与剤、レベリング剤、吸湿剤、シランあるいはチタネート系カップリング剤などの各種助剤が挙げられる。
さらに必要に応じ、ジブチルチンジラウレートまたはジブチルチンジアセテートの如き有機金属化合物や各種アミン類などの硬化触媒を始め、ジオクチルフタレート、アスファルト、またはタールの如き可塑剤や、重油または芳香族炭化水素の如き石油系希釈剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で使用してもよい。
【0034】
上記の充填材、添加物等は必要に応じて単独あるいは組み合わせて好ましく使用され得る。これらの充填材、添加剤等は、主にポリオール(A)に、常法によりあらかじめ練り合わせて使用することができる。
【0035】
本発明のウレタン系防水材は、コンクリート、モルタルなどの建築、土木等に一般的に用いられているもの、または金属、木材等の基材の上に塗布するものである。
基材としては、合成高分子系の敷物、例えばPVC製のタイル、シートまたはゴム製のタイル、シート或いはこれらに類似するタイル、シート状のものが接着剤で基材に貼られているものも使用することができる。
【0036】
本発明のウレタン系防水材を基材に塗工する方法としては、必要に応じて種々の方法を用いることができる。その一例としては、ポリオール(A)、ウレタンプレポリマー(B)、及び必要に応じて充填材やその他の添加剤を所定の混合比で混合(常温)し、可使時間内に基材に塗布して硬化させる方法が挙げられる。
塗布方法としては、各防水材の粘度に対応して、コテ、ハケ、ローラー、レーキ、スプレーなどで塗布することが出来る。また、塗布後約6〜24時間程度で硬化する。
【実施例】
【0037】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また本文中「部」とあるのは、質量部を示すものである。
なお、参考例1〜2中の多分岐ポリエーテルポリオール中の全水酸基数に対する2級水酸基(H2)の割合は、多分岐ポリエーテルポリオールをトリフロロ酢酸エステル化した後に、19F−NMRによって測定した。
【0038】
合成例1
<多分岐ポリエーテルポリオール(a−1)の合成>
リフラックスコンデンサー、マグネット式攪拌棒、温度計を具備した500mlの三口フラスコ中で、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン 69.6g(0.6モル)と、プロピレンオキサイド 104.4g(1.8モル)とを、乾燥かつ過酸化物フリーの250mlのジエチルエーテルに溶解し、次いで、このフラスコを−10℃のアイスバスで冷却した。
次いで、HPF 1.46gの60質量%水溶液を10分間滴下した。反応混合物は僅かに白濁した。次いで、室温で一晩反応させ、翌朝、透明な反応混合物を4時間還流した。その後、樹脂溶液からジエチルエーテル300mlを留去し、生成物をKOH2.8gと水400mlからなる水溶液で洗浄した。
単離した有機層は、次いで、非イオン水400mlで2回洗浄し、再度、ジエチルエーテルを除去し、低粘性の透明多分岐ポリエーテルポリオール163.2gを得た。収率94%であった。
この多分岐ポリエーテルポリオールは、Mn=1,750、Mw=3,630、OHV=188mg・KOH/gであり、プロトンNMRから、モル基準で3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン:プロピレンオキサイド=1:2.9であることが判明した。また、全水酸基数に対する2級水酸基(H2)数の割合は、46.3%であった。
【0039】
合成例2
<多分岐ポリエーテルポリオール(a−2)の合成>
リフラックスコンデンサー、マグネット式攪拌棒、温度計を具備した250ml三口フラスコ中で、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン 11.6g(0.1モル)と、プロピレンオキサイド 11.6g(0.2モル)とを、50mlの乾燥シクロヘキサンに溶解し、次いで、このフラスコを10℃のアイスバスで冷却した。
次いで、HPF 0.76g(モノマー成分に対して0.25モル%)の60質量%水溶液を10mlのジエチルエーテルに溶解し、これを一度にフラスコに加えた。その後、反応混合物は直ちに白濁した。HPFを加えて1時間内に、反応温度は36℃に上昇した。次いで、該反応混合物はオイルバスで54〜60℃に1時間加熱し、更に、室温で一晩攪拌した。
次いで、前記開始剤は、NaOMe0.3gの30質量%メタノール溶液を加えて失活させた。次いで、この白濁した反応混合物をpH6になるまで4時間攪拌した。
反応混合物の下層の白濁層を分離し、シクロヘキサンを完全に除去した後、透明で低粘性の多分岐ポリエーテルポリオール18.7gを得た。収率79%であった。この多分岐ポリエーテルポリオール(a−2)は、Mn=2,160、Mw 6,310、OHV=224mgKOH/gであり、プロトンNMRから、モル基準で3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン:プロピレンオキサイド=1:1.9であることが判明した。また、全水酸基数に対する2級水酸基(H2)数の割合は、45.0%であった。
【0040】
合成例3
<多分岐ポリエーテルポリオール(a−3)の合成>
リフラックスコンデンサー、マグネット式攪拌棒、温度計を具備した2リットル三口フラスコ中で、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン 348g(3モル)と、プロピレンオキサイド 348g(6モル)とを、乾燥かつ過酸化物フリーの1リットルのジエチルエーテルに溶解し、次いで、このフラスコを−14℃のアイスバスで冷却した。
次いで、HPF 5.5gの60質量%水溶液を10分間滴下した。反応混合物は僅かに白濁した。次いで、室温で一晩反応させ、翌朝、透明な反応混合物を3時間還流した。次いで、前記開始剤は、NaOMe9gの30質量%メタノール溶液を加えて失活させた。濾過した後、減圧下でバス温度75℃でジエチルエーテルを除去した。ジエチルエーテルを完全に除去した後、多分岐ポリエーテルポリオール(a−3)667gを得た。収率89%であった。
この多分岐ポリエーテルポリオール(a−3)は、Mn=1,440、Mw=3,350、OHV=265mg・KOH/gであり、プロトンNMRから、モル基準で3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン:プロピレンオキサイド=1:1.9であることが判明した。また、全水酸基数に対する2級水酸基(H2)数の割合は、39.0%であった。
【0041】
参考例1
<ポリオール(A−1)の調製>
前記合成例1で得られた多分岐ポリエーテルポリオール(a−1)400部とエクセノール2020[ポリプロピレングリコール:旭硝子ポリウレタン(株)製]600部を混合し、平均水酸基当量が515のポリオール(A−1)を得た。
【0042】
参考例2
<ポリオール(A−2)の調製>
前記合成例2で得られた多分岐ポリエーテルポリオール(a−2)400部とエクセノール2020[ポリプロピレングリコール:旭硝子ポリウレタン(株)製]600部を混合し、平均水酸基当量が455のポリオール(A−1)を得た。
【0043】
参考例3
<ポリオール(A−3)の調製>
前記合成例3で得られた多分岐ポリエーテルポリオール(a−3)400部とエクセノール2020 600部を混合し、平均水酸基当量が416のポリオール(A−3)を得た。
【0044】
参考例4
<ポリオール(A−4)の調製>
前記合成例1で得られた多分岐ポリエーテルポリオール(a−1)200部とエクセノール2020 800部を混合し、平均水酸基当量が680のポリオール(A−4)を得た。
【0045】
参考例5
<ウレタンプレポリマー(B−1)の調製>
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた2リットルの四つ口フラスコに樹脂設計値のイソシアネート基/水酸基(NCO基/OH基)が2.0になるようにコスモネートT−80(2,4トリレンジイソシアネート/2,6トリレンジイソシアネート=80/20TDI:三井武田ケミカル(株)製)149部、エクセノール2020(ポリプロピレングリコール:旭硝子ポリウレタン(株)製)597部、エクセノール3030(ポリプロピレングリコール:旭硝子ポリウレタン(株)製)254部を加え、80℃で2時間、100℃で3時間反応させ、遊離NCO%:3.63のウレタンプレポリマー(B−1)を得た。
【0046】
(試験方法)
<硬化塗膜の製造>
ウレタンプレポリマーとコンパウンドを所定量ビーカーに測りとり、均一に攪拌混合した。この混合物によって可使時間、硬化後の物性測定をした。物性測定には離型剤処理した水平な板の上に厚さ2mmになるよう平滑に塗布し、常温で7日間硬化養生させた後、JISA6021に規定の硬度計による硬さ試験と3号ダンベルにて引張、引裂強度、破断伸度を測定した。
【0047】
<指触乾燥試験>
上記硬化塗膜を作成後、タックフリーになるまでの時間を測定した。
【0048】
実施例1
参考例1にて調製したポリオール(A−1)255部、炭酸カルシウム(NS200:日東粉化(株)製)500部、DOP[大八化学(株)製]200部、Pb-OCTOATE24%[大日本インキ化学工業(株)製]10部、顔料35部をディスパーを用い均一混合したコンパウンドと、参考例5で得られたウレタンプレポリマー(B−1)とをイソシアネート当量と水酸基当量の比率1.03となる割合にて撹拌混合し、上記の各種性能試験を行った。結果を第1表に示す。
【0049】
実施例2
ポリオール成分として、参考例2にて調整したポリオール(A−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして各種性能試験を行った。
【0050】
比較例1
ポリオール成分として、参考例3にて調整したポリオール(A−3)を用いた以外は、実施例1と同様にして各種性能試験を行った。
【0051】
比較例2
ポリオール成分として、参考例4にて調整したポリオール(A−4)を用いた以外は、実施例1と同様にして各種性能試験を行った。
【0052】
【表1】

※25℃における100,000mPa・s到達時間
【0053】
第1表に示す通り、本発明の多分岐ポリエーテルポリオールを含有したウレタン系樹脂組成物からなるウレタン系防水材は、可使時間と硬化性のバランスがとれ、JISA6021に適応する塗膜物性を保持していることが分かる。また、アミン化合物を用いないことから、環境に優しく塗膜物性に優れたウレタン系防水材を提供することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシアルキルオキセタン(a1)と1官能性エポキシ化合物(a2)とを開環反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオールであって、その分子構造中に1級水酸基(H1)と2級水酸基(H2)とを有しており、かつ、1,500〜5,000の数平均分子量(Mn)及び100〜250mg・KOH/gの水酸基価を有する多分岐ポリエーテルポリオールを主成分とするポリオール(A)及びイソシアネート基を末端に2個以上有するウレタンプレポリマー(B)を含有するウレタン組成物からなり、JISA6021に規定する破断伸度が450%以上であることを特徴とするウレタン系防水材。
【請求項2】
前記多分岐ポリエーテルポリオールが、前記1官能性エポキシ化合物(a2)に対しヒドロキシアルキルオキセタン(a1)[(a1)/(a2)]を1/1〜1/3のモル比で反応させて得られるものであり、1官能性エポキシ化合物(a2)がオレフィンエポキサイドであり、かつ2級水酸基(H2)数が全水酸基数に対して10〜50%である請求項1記載のウレタン系防水材。
【請求項3】
前記ポリオール(A)が、活性水素を有する官能基を2個以上含む活性水素化合物(a3)を含み、かつ前記活性水素化合物(a3)の重量割合が前記ポリオール(A)中70重量%以下である請求項1又は2記載のウレタン系防水材。
【請求項4】
前記ポリオール(A)の全水酸基数が3以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のウレタン系防水材。



【公開番号】特開2008−50397(P2008−50397A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225236(P2006−225236)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】