エアエレメント収納ケースおよびこれを備えたファンシュラウド部材
【課題】大型化を抑制し、さらに吸気抵抗の低減を図るファンシュラウド部材に一体となって用いられるエアエレメント収納ケースを提供する。
【解決手段】エアエレメント収納ケース20は、外気Aを車両のエンジンに吸い込む吸気経路の途中に設けられ、上流側開口部31と下流側開口部27との間に形成された通路に外気Aを浄化するためのエアエレメント50を収納するダクト状体であり、エアエレメント50の下端部との間に所定の空間部を形成するように設けられ、ダクト状体の底面を構成する底壁部23を備えている。この底壁部23は、ラジエータ70に冷却風を提供する軸流式の送風機10を支持するファンシュラウドパネル1において、送風機10の羽根部を取り囲むように設けられたリング状部2に対して上方に配置され、かつリング状部2に沿う形状に形成されている。
【解決手段】エアエレメント収納ケース20は、外気Aを車両のエンジンに吸い込む吸気経路の途中に設けられ、上流側開口部31と下流側開口部27との間に形成された通路に外気Aを浄化するためのエアエレメント50を収納するダクト状体であり、エアエレメント50の下端部との間に所定の空間部を形成するように設けられ、ダクト状体の底面を構成する底壁部23を備えている。この底壁部23は、ラジエータ70に冷却風を提供する軸流式の送風機10を支持するファンシュラウドパネル1において、送風機10の羽根部を取り囲むように設けられたリング状部2に対して上方に配置され、かつリング状部2に沿う形状に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンに吸い込む外気を浄化するためのエアエレメントを収納するエアエレメント収納ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアエレメント収納ケースとしては、ラジエータやコンデンサ等の熱交換器に冷却風を提供するファンを覆うように支持するファンシュラウドに一体化されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
空気中のダスト等を除去するエアエレメントが収納される上記エアエレメント収納ケースは、ラジエータコア部への冷却風を提供するファンが取り付けられるファンシュラウドパネル上部に設けられている。このファンシュラウドパネル上部には底壁と側壁で囲まれリア側のみ開放した凹部が形成されており、この凹部がエアエレメント収納空間となっている。そして、リア側の開放部分は凹部にエアエレメントを収納させた状態でハウジングによって閉じられることにより、ファンシュラウドパネルとエアエレメントとが一体ユニットを構成している。さらにファンシュラウドパネルの前面にはエアエレメントを通過する空気の取り入れ口となる吸気孔が設けられ、ハウジングの一部にはエアエレメントを通過した後の空気の出口である浄化空気出口が設けられている。
【特許文献1】特開平11−171041号公報(図6参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の凹部により形成される空間は、収納されるエアエレメントによってほぼ占められているので、吸気孔から導入される空気は、凹部空間を通過して浄化空気出口から流出する間で大きな吸気抵抗を受けることになる。この吸気抵抗が大きいと、吸気量が減少しエンジン出力が低下するという問題がある。さらに、車両外から雨や雪を含む空気を吸い込んだ場合には、水分が上記凹部空間に留まるとエアエレメントが水に浸かってしまうことがある。
【0005】
また、エンジンに水が浸入することを防止するため、エアエレメント収納空間を大きくする場合には、引き回したダクトにエアエレメント収納ケースを接続し、周辺部品との干渉を心配しなくてよい場所に配置することができるが、装置全体として大型化すること、吸気経路が長くなることによる吸気抵抗の増大という問題がある。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、装置の大型化を抑制するとともに吸気抵抗の低減を図るエアエレメント収納ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。第1の発明は、外気(A)を車両のエンジンに導く吸気経路(43、24、62)の途中に設けられ、外気(A)が流入する上流側開口部(31)と、上部に形成される下流側開口部(27)との間に形成された通路に外気(A)を浄化するためのエアエレメント(50)を収納するダクト状体のエアエレメント収納ケースに係る発明であって、
エアエレメント(50)の下端部との間に所定の空間部(24)を形成するように設けられ、ダクト状体の底面を構成する底壁部(23)を備え、
当該底壁部(23)は、冷却対象流体が内部を流通する熱交換器(70)に冷却風を提供する軸流式の送風機(10)を支持するファンシュラウド部材(1,1A)において、送風機(10)の羽根部を取り囲むように設けられたリング状部(2)に対して上方に配置されているとともに、さらにリング状部(2)に沿う形状に形成されていることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、エアエレメント収納ケースを上方に大きくしないで、エアエレメントのエレメント部の吸込み表面積を大きくし、この吸込み表面とエアエレメント収納ケースの底壁部との間に空間を確保することができるので、エレメント部を通過するときの吸気抵抗を低減できる気流が形成され、吸気流の圧力損失を低減することができる。したがって、装置の大型化を抑制するとともに吸気抵抗の低減を図るエアエレメント収納ケースが得られる。
【0009】
また、上記底壁部(23)のうちリング状部(2)の最上部よりも下方となる部位には、貫通穴(22)が形成されていることが好ましい。この発明によれば、外気とともに水や雪を吸い込んだ場合でも、貫通穴から水分を車両外に排出することができるので、エアエレメント収納ケース内の停留水を防ぎ、エレメント部が蒸発した水蒸気にさらされることを軽減できる。
【0010】
また、上記底壁部(23)には、他の部位よりも下方に突出する形状の凸壁部(21)が設けられていることが好ましい。この発明によれば、凸壁部とエアエレメントの下端部との間に形成される空間の鉛直方向長さは、底壁部の他の部位とエアエレメントの下端部との間の空間に比べて非常に長くなるので、その長さ分に伴う容積増大によって吸気流の圧力損失の低減効果および水溜の効果がさらに大きくなる。
【0011】
また、上記凸壁部(21)には貫通穴(22)が形成されていることが好ましい。この発明によれば、外気とともに吸入された雨等の水分を凸壁部に案内して速やかに車外に排出することができる。
【0012】
また、上記底壁部(23)の車両後方側端部は、ファンシュラウド部材(1,1A)の車両後方側端部よりも車両後方に位置していることが好ましい。この発明によれば、底壁部とエアエレメントの下端部との間に形成される所定の空間部の車両後方長さを長くすることができるので、容積の増大によって吸気流の圧力損失の低減効果がさらに大きくなる。
【0013】
また、上流側開口部(31)を形成する上流側接続部(26)には吸気導入部材(40、40A)が接続されており、吸気導入部材(40、40A)は、外気(A)の取り入れ口である吸気口部(41)と、吸気口部(41)から上流側開口部(31)に向かう吸気通路(43)と、を有する。
【0014】
さらに、当該吸気通路(43)は吸気口部(41)から上流側開口部(31)へ下方に向かう通路であり、吸気口部(41)はエアエレメント(50)よりも高い位置に配置されていることが好ましい。
【0015】
この発明によれば、外気とともに吸入された水分を底壁部とエアエレメントの下端部との間に形成される所定の空間部に確実に案内することになり、エレメント部が水に浸かってしまうことを防止できる。
【0016】
また、上記いずれかの発明に記載のエアエレメント収納ケース(20)が一体成形されているファンシュラウド部材を構成することが好ましい。この発明によれば、部品点数および組み立て工数の低減が図れ、低コストの製品を提供できる。
【0017】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の一実施形態である第1実施形態について図1〜図6を用いて説明する。図1は本実施形態に係るファンシュラウドパネル1およびエアエレメント収納ケース20について、その内部をエンジン側からみた場合の一部断面図である。図2はエアエレメント収納ケース20、ファンシュラウドパネル1、キャップ部材60等についての車両側方側からみた場合の側部断面図である。
【0020】
図1および図2に示すように、ファンシュラウドパネル1は、エンジン冷却水の熱を放熱させるためのラジエータ70に冷却風を提供する送風機10を覆うように支持するファンシュラウド部材である。ファンシュラウドパネル1は、車両のエンジンに導入される車外空気を吸い込む吸気導入部材40に接続され、車外空気中の粉塵等のごみを捕集するエアエレメント50が内部に配置されているエアエレメント収納ケース20を一体に備えた一体成形品である。
【0021】
エアエレメント収納ケース20は、上流側開口部31および下流側開口部27を有する横長のダクト状部材であり、下流側開口部27を形成する下流側接続部25にキャップ部材60の上流側接続部61が接続され、上流側開口部31を形成する上流側接続部26に吸気導入部材40の下流側接続部44が溶着、嵌めあい等によって接続されている。上流側開口部31は、横長矩形状であり、エアエレメント収納ケース20の車両前方側の面に形成されている。下流側開口部27は、ラジエータ70の天部(上側タンク72)よりも鉛直方向高さが高い位置に設けられており、エアエレメント50のエレメント部51の横断面積とほぼ等しい大きさの横長矩形状である。
【0022】
エアエレメント50のエレメント部51は不織布の濾材からなり、大気中に含まれている粉塵等を空気から分離して清浄な空気をエンジンに供給する。エレメント部51には、フィルタとしての濾材を蛇腹状に折りたたみ、樹脂枠や金属枠に嵌めて固定した乾式タイプ、濾材にオイルを染み込ませて粉塵等の吸着力を向上させたビスカスタイプ等が用いられる。また、エアエレメント50はその横長方向に複数に分割される構成でもよい。
【0023】
吸気導入部材40は、その上流側端部に形成されて車両前方に向かって開口する吸気口部41と、その下流側端部に形成された複数の下流側開口部42の外周部であってエアエレメント収納ケース20の上流側接続部26に接続される下流側接続部44と、吸気口部41から下流側開口部42を連通するように内部に形成された吸気通路43と、を有する横長の扁平状ダクトである。
【0024】
吸気導入部材40は、エアエレメント収納ケース20に接続された状態で、吸気口部41が車両エンジンルーム内のエンジンよりも前方に搭載されているラジエータ70の上方に位置し、下流側開口部42がファンシュラウドパネル1に取り付けられる送風機10の羽根部(あるいはファンシュラウドパネル1のリング状部2)よりも上方で吸気口部41よりも車両後方の下方に位置し、その鉛直方向に平行な切断面の形状(縦断面形状)がL字を180度回転させたときと同様の形状を呈している。
【0025】
吸気導入部材40は、下流側接続部44から上方に向けて伸長された後、さらに前方に延設されてラジエータ70の上側タンク72の上方まで達する形状である。なお、吸気導入部材40は樹脂成形品であり、例えばポリプロピレン樹脂等で形成される。
【0026】
エアエレメント収納ケース20は、ファンシュラウドパネル1に一体に形成されている樹脂成形部材であり、所定の金型を用いた射出成形等によって成形される。この一体成形品は、例えばガラス繊維やタルク材によって強度が高められたポリプロピレン樹脂等によってできている。なお、後述する第2実施形態のように、エアエレメント収納ケース20は、ファンシュラウドパネル1と別体であるエアエレメント収納ケース20Aによって構成してもよく、この場合、エアエレメント収納ケース20Aはファンシュラウドパネル1と別々に製造された後、ファンシュラウドパネル1に一体に取り付けられる。
【0027】
エアエレメント収納ケース20は、ファンシュラウド部材一体型のケースであり、内部空間が略直方体状を呈するように形成されている。上記内部空間の鉛直方向中ほどから上部にかけては、エアエレメント50のエレメント部51で占有されている(図1および図2参照)。エアエレメント50の上部に側方に突出するようにフランジ状に設けられたハウジングがエアエレメント収納ケース20の下流側接続部25とキャップ部材60の上流側接続部61とによって上下方向に挟持されることにより、エアエレメント50は内部空間で所定の位置に保持され、エアエレメント収納ケース20内に収納されるようになる。
【0028】
エアエレメント50は、上記内部空間でこのように保持されていることにより、エアエレメント50の下端部とエアエレメント収納ケースの底壁部23との間には略直方体形状を呈する所定の空間部であるエレメント部流入前空間24が形成されている。図2に示すように、このエレメント部流入前空間24により、吸気通路43を流れてきた外気Aはエレメント部51の下面側に十分に回り込むことができ、外気Aが流入するエレメント部51の表面積を非常に大きくすることができる。これによって、吸気抵抗の低減が図れるとともに、外気Aとともに流入してくる粉塵等の捕集率を向上することができる。
【0029】
ところで降雪時や降雨時においては、外気Aとともに、吸気通路43に水や雪が流入してくることがある。この場合でも、エレメント部流入前空間24がエレメント部51の下方に形成されていることおよび大きな容積で形成されていることにより、雪や水を所定量貯められる容積が確保できる。これにより、エレメント部51が水等に浸かってしまうことを遅らせることができる。また、仮にエレメント部流入前空間24に水等が溜まっている状態でも、ラジエータ70からの放熱、通風等や、自然蒸発によって停留水を蒸発させることも可能である。
【0030】
また、エアエレメント収納ケースの底壁部23のうちリング状部2の最上部よりも下方となる部位23a,23bには貫通穴である水抜き穴22を設ける。この水抜き穴22は1個以上形成されている。さらに水抜き穴22は、エアエレメント収納ケースの底壁部23の最も下方に位置する部位23aに設けられることが好ましい。このような水抜き穴22を備えることにより、上述のように吸気通路43に水や雪を吸い込んだ場合でも、水抜き穴22から水を車両外に排出することができ、停留水を防止し、蒸発した水蒸気がエレメント部51側に上昇する度合いを軽減できる。
【0031】
さらに、図1に示すように、エアエレメント収納ケースの底壁部23はファンシュラウドパネル1のリング状部2に沿うような円弧形状で形成されている。エアエレメント収納ケースの底壁部23およびエアエレメント収納ケースの下面は、ファンシュラウドパネル1の背面でリング状部2の外周面に沿うような形状であり、さらに当該背面からリング状部2よりもファンの回転軸方向に近づくことなくエンジン側に向かって突出するように延設されている。また、エアエレメント収納ケース20の下流側接続部25は、その側壁面が略鉛直方向に延びる形状を呈している。この構成によれば、エレメント部流入前空間24はリング状部2よりもその鉛直方向高さが高い位置に設けられているため、送風機10のファンの後流側領域に干渉することなく冷却風の通風抵抗とならない範囲でエレメント部流入前空間24を極力大きく形成することができる。
【0032】
このようにエアエレメント収納ケースの底壁部23がリング状部2に沿うように円弧形状で形成されていることにより、エアエレメント50の下面とエアエレメント収納ケースの底壁部23との間に形成される空間の容積を大きく形成することができるので(エレメント部流入前空間24の拡大化)、前述の作用効果をより一層顕著なものにできる。
【0033】
図1のごとくファンシュラウドパネル1にリング状部2が横方向に2個並んで配置されている場合には、エアエレメント収納ケースの底壁部23は、2個のリング状部2が最も接近する部分(例えば、2個のリング状部2の接する部分)で下方に突出する凸壁部21を有し、その横断面が略V字状を呈するように構成されている。凸壁部21はエアエレメント収納ケースの底壁部23の最も下方に位置する部位23aに対応している。上記水抜き穴22は、凸壁部21を貫通するように設けられている。
【0034】
このような構成により、凸壁部21とエアエレメント50の下面との間に形成される空間の鉛直方向長さは、底壁部23の他の部位とエアエレメント50の下面との間の空間に比べて非常に長くできるので、さらにエレメント部流入前空間24の容積を増大することができる。
【0035】
キャップ部材60は、その下端開口部を形成し、エアエレメント収納ケース20の下流側接続部25と接合可能な形状である上流側接続部61と、上方で開口する下流側開口部63からエンジン側に伸長するように設けられるダクト部64と、上流側接続部61の開口部から下流側開口部63を連通するように内部に略直方体状に形成された吸気チャンバ62と、を有して形成される横長形状の蓋部材である。ダクト部64は、後方のエンジン吸気口に接続されており、外気Aをエンジン内部に供給する吸気通路を構成している。このキャップ部材60は樹脂成形品であり、例えばガラス繊維やタルク材によって強度が高められたポリプロピレン樹脂等で形成される。
【0036】
最近の車両外郭の小型化要求、自動車の高性能化に伴う電装部品等の増加によるエンジンルーム内の部品配置スペース減少等により、ラジエータ70、吸気導入部材40およびキャップ部材60の上方には、車両のエンジンルーム上方を覆うボンネット80が接近して配置されるようになっている。このため、ボンネット80と吸気導入部材40およびキャップ部材60との間の距離を確保することはできないので、ますますエアエレメント50を収納するケースを大きく構成することは困難となっている。そこで本実施形態に係る構成のファンシュラウド部材一体型のエアエレメント収納ケース20を採用することにより、鉛直上方の高さを高くすることなく十分に大きいエレメント部流入前空間24を確保することができ、吸気抵抗レベルおよびエレメントの捕集率等に優れた製品を提供することができる。
【0037】
ファンシュラウドパネル1は、横長の矩形状であり、ラジエータ70のコア部71に対して冷却風を通過させる軸流式の送風機10を横方向に2個並べて配置できる構成を有している。ファンシュラウドパネル1は、送風機10のモータが取り付けられるモータ取付部4と、モータ取付部4から放射状に複数本延設されるモータ固定用脚部3と、送風機10の回転軸部から放射状に伸長して形成される複数枚の羽根部外周を囲む円形状で、モータ固定用脚部3の放射方向端部と一体に形成され、モータ固定用脚部3を介してモータ取付部4を支持するリング状部2と、を備えている。
【0038】
送風機10は、上記冷却風の流れ方向についてラジエータ70よりも下流側に配置され、回転軸が車両の前後方向に配されるモータが回転駆動されることにより、車両前面のグリル側からエンジン側に向けて外気を吸引する。送風機10のモータは、電動式であり、例えばフェライト式の直流モータで構成する。モータには、アーマチャへ電力を供給するためのハーネス部が接続され、このハーネス部はコネクタ等を介して車両のバッテリに接続されている。
【0039】
図3はラジエータ70、エアエレメント収納ケース20、ファンシュラウドパネル1等についてのエンジン側からみた場合の斜視図である。図4はラジエータ70、吸気導入部材40、エアエレメント収納ケース20、ファンシュラウドパネル1等についての車両斜め前方外側からみた場合の斜視図である。なお、図3および図4は、エアエレメント収納ケース20からキャップ部材60およびエアエレメント50を取り外した状態を示している。
【0040】
図3および図4に示すように、ラジエータ70は、内部にエンジンの冷却水が流れ、長手方向が上下方向を向くようにして複数配列されるチューブおよびチューブ間のフィンからなるコア部71を有し、さらにチューブの長手方向両端部が接続される上側タンク72および下側タンク73を有して構成されている。
【0041】
上側タンク72の背面側には、エンジン冷却水を上側タンク72の内部に導入するために、エンジン内部とラジエータ70を配管接続するように設けられるラジエータ回路の配管に接続される入口パイプ75がエンジン側に突出するように設けられている。下側タンク72の背面側には、エンジン冷却水を下側タンク73からラジエータ回路に流出させるためにラジエータ回路の配管に接続される出口パイプ76がエンジン側に突出するように設けられている。
【0042】
上側タンク72の中央部から一方側端部(入口パイプ75と反対側の端部)にかけては、鉛直方向に凹んだタンク凹部74が設けられている。このタンク凹部74のすぐ上方には吸気口部41がタンクの長手方向(横方向)に3個並ぶように、吸気導入部材40がエアエレメント収納ケース20に対して配置されている。
【0043】
ファンシュラウドパネル1は、その鉛直方向下部にねじ等が挿通可能な貫通孔を備えた少なくとも2個の下側取付部5と、その鉛直方向上部にねじ等が挿通可能な貫通孔を備えた少なくとも2個の上側取付部7と、を備えている。ファンシュラウドパネル1は、下側取付部5、上側取付部7のそれぞれをラジエータ70に設けられた各雌ねじ部に螺合することにより、ラジエータ70に一体に取り付けられる。
【0044】
上記構成においてエンジンからの冷却水は、ウォータポンプが駆動されることによってラジエータ回路を通って上側タンク72に流入した後、コア部71のチューブ内を図2中の上側から下側に向けて流れて冷却風との間で熱交換され、冷却された後、下側タンク73から流出してエンジンに戻るようになっている。
【0045】
次に、図5および図6を用いて、ファンシュラウドパネル1の他の構成について説明する。図5はファンシュラウドパネル1に吸気導入部材40を取り付けた状態を車両斜め前方外側からみた場合の斜視図である。図6はファンシュラウドパネル1を車両斜め前方外側からみた場合の斜視図である。図5および図6において、図1〜図4で付した符号と同符号のものは、同様の構成要素部であり、説明は省略する。
【0046】
図5および図6に示すように、ファンシュラウドパネル1は、その外周部とリング状部2との間には滑らかに傾斜、または湾曲する形状の導風面部8を備えている。この導風面部8は、ラジエータ70のコア部71の全面に外気を効率的に吸い込む機能を果たしており、ファンシュラウドパネル1のラジエータ側外周縁部からリング状部2の内周縁部に至る導風面部8によって形成される筒状部分は、風洞部を構成し、外気Aの効率的な吸込み気流の形成に寄与している。
【0047】
吸気導入部材40は、エアエレメント収納ケース20に取り付けられた状態において、導風面部8にならう面形状(シュラウドの母線形状にならう形状)を呈する下部側前面部46を備えている。この下部側前面部46は、吸気導入部材40がエアエレメント収納ケース20に取り付けられた状態において、導風面部8との間に大きな段差部分を構成しない滑らかな面形状を形成する表面形状を備えている。この構成によれば、導風面部8によって形成される外気Aの効率的な吸込み気流を損なうことがない。また、下部側前面部46の下側端部47は、リング状部2に沿うような形状、本実施形態の場合は正面視または背面視で略V字形状に構成されている。
【0048】
上記構成において、外気Aを吸気口部41から吸気した場合の空気流れについて説明する。車外空気は、車両前面部に設けられたグリル等からボンネット80の内側空間に引き込まれ、さらに、その一部は送風機10の吸込み力によりラジエータ70のコア部71を通過してエンジン冷却水を冷却することに使われ、他の一部は複数の吸気口部41より吸気導入部材40内に導入されて、最終的にエンジン内部に至る。
【0049】
そして、吸気導入部材40内に導入された外気Aは、複数の吸気口部41から、下方に向かって吸気通路43を流れ、複数の下流側開口部42からエアエレメント収納ケース20内部に流入する。エアエレメント収納ケース20内部では、外気Aはエレメント部51に対して車両前方側の面からとエレメント部流入前空間24を経由した下面からとの二つの流れを形成し、エアエレメント収納ケース20内部の横幅方向全体に大きく広がってエレメント部51内部に流入する。このとき、エレメント部51への吸込み表面積が大きくなり、吸込み表面の上流側に空間が確保されていることにより、エレメント部51を通過するときの吸気抵抗を低減できる気流が作られる。さらに、外気Aの経路の中でエレメント部流入前空間24が低い位置にあるため、空気に含まれる水分、雪等の質量の大きい成分はエアエレメント収納ケースの底壁部23に落下することになる。
【0050】
さらに、エアエレメント収納ケースの底壁部23に下方に突出する凸壁部21を有する場合には、エレメント部51の吸込み表面にさらに上流側空間を大きく設けることができ、水分、雪等を落下させる容積を大きくすることができる。さらに、凸壁部21に水抜き穴22を設けた場合には落下した水分、雪等を凸壁部21側に案内して、スムーズに車外に排出することができる。
【0051】
そして、エレメント部51の内部では外気Aに含まれる粉塵等の汚染物が吸着されて取り除かれ、浄化された空気がキャップ部材60内部の吸気チャンバ62に運ばれる。吸気チャンバ62に至った外気Aは、下流側開口部63からダクト部64内に流出し、ダクト部64内部によって形成される通路を進んでエンジン内部に吸い込まれ、エンジンの正常な燃焼に使用されることになる。
【0052】
以上のように本実施形態によれば、エアエレメント収納ケース20は、外気Aを車両のエンジンに吸い込む吸気経路の途中に設けられ、上流側開口部31と下流側開口部27との間に形成された通路に外気Aを浄化するためのエアエレメント50を収納するダクト状体であり、上流側開口部31よりも下方に位置し、エアエレメント50の下端部との間に所定の空間部を形成するように設けられ、ダクト状体の底面を構成する底壁部23を備えている。この底壁部23は、ラジエータ70に冷却風を提供する軸流式の送風機10を支持するファンシュラウドパネル1において、送風機10の羽根部を取り囲むように設けられたリング状部2に対して上方に配置され、かつリング状部2に沿う形状に形成されている。
【0053】
この構成によれば、エアエレメント収納ケース20を鉛直方向上方に大きくしないで装置全体の高さを抑える構成が実現できる。また、エレメント部51の吸込み表面積を大きくし(例えばその横幅長さ全体に亘って構成することができる)、この吸込み表面とエアエレメント収納ケースの底壁部23との間にエレメント部流入前空間24を十分な容積で確保することができる。これにより、エレメント部51を通過するときの吸気抵抗を低減できる気流が形成され、吸気流の圧力損失の低減効果が得られる。
【0054】
また、底壁部23の車両後方側端部は、ファンシュラウドパネル1の車両後方側端部よりも車両後方に位置している。これにより、エレメント部流入前空間24の車両後方長さを長くすることができるので、この空間の容積増大によって吸気流の圧力損失の低減効果がさらに大きくなる。
【0055】
また、上流側開口部31を形成する上流側接続部26には吸気導入部材40が接続されている。この吸気導入部材40の吸気口部41はエアエレメント50よりも高い位置に配置されている。これにより、外気Aとともに吸入された水分をエレメント部流入前空間24に確実に案内することができ、エレメント部51が水に浸かってしまうことを低減できる。
【0056】
(第2実施形態)
第2実施形態では、ファンシュラウドパネルとエアエレメント収納ケースとが一体成形品でなく別体の部品である場合の構成について図7〜図11にしたがって説明する。本実施形態で説明する装置は、これらの部品が別体であること以外は上記第1実施形態の説明と同様であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0057】
以下に、ファンシュラウドパネル1A、エアエレメント収納ケース20A、キャップ部材60および吸気導入部材40Aの組み付けについて説明する。図7は、ファンシュラウドパネル1A、エアエレメント収納ケース20A、キャップ部材60および吸気導入部材40Aについてエンジン側からみた場合の分解斜視図である。図8は、ファンシュラウドパネル1A、エアエレメント収納ケース20A、キャップ部材60および吸気導入部材40Aについて、車両斜め前方外側からみた場合の分解斜視図である。
【0058】
図7および図8に示すように、エアエレメント収納ケース20Aの側部および下面部には貫通孔が形成された3個の取付片28が外方に突出して設けられ、ファンシュラウドパネル1A背面の車両前方側には当該貫通孔と対応する雌ねじ部が形成された3個の背面取付部11が後方に突出して設けられている。ファンシュラウドパネル1Aにエアエレメント収納ケース20Aを取り付ける場合には、ファンシュラウドパネル1Aの背面にエアエレメント収納ケース20Aを接近させ、3個の背面取付部11のそれぞれに3個の取付片28を対応させるように配置し、取付ねじやボルト締め等により車両後方側から締結する。
【0059】
次に、エアエレメント収納ケース20A上部に位置する下流側接続部25の周縁部には、車両前方側の面および車両横方向の側面から突出する5個の係止部29が設けられており、車両後方側の面に2個の係合軸部30が設けられている。キャップ部材60下部に位置する上流側接続部61の周縁部には、5個の係止部29のそれぞれに対応するように車両前方側の面および車両横方向の側面から突出する5個の係合部67が設けられており、2個の係合軸部30のそれぞれに対応するように車両後方側の面から突出する2個の係止爪65が設けられている。また、キャップ部材60の上流側接続部61の周縁部には車両前方側の面から上方に突出する3個の前方側取付部66が設けられ、吸気導入部材40A上部の車両後方側には、上方に突出する3個の後方側取付部45が設けられている。
【0060】
そして、エアエレメント収納ケース20Aにキャップ部材60を取り付ける場合には、エアエレメント収納ケース20Aの上方側からキャップ部材60を接近させ、まず2個の係合軸部30のそれぞれに2個の係止爪65を係止する。次に、この係止部分を支点として下流側接続部25に上流側接続部61を重ねるようにキャップ部材60を回動させて5個の係止部29のそれぞれに5個の係合部67を係合させる。最後に、クリップ部材によって係止部29と係合部67の係合を締結する。つまり、係合軸部30と係止爪65の係止部分は蝶番のような働きを有し、この構成により締結部材の個数を低減できるので、作業工数および部品点数を低減することができる。
【0061】
次に、このように一体に組み立てられたファンシュラウドパネル1A、エアエレメント収納ケース20Aおよびキャップ部材60に対して、吸気導入部材40Aを組み付ける場合には、吸気導入部材40Aを車両前方側から接近させ、エアエレメント収納ケース20Aの3個の上流側開口部31のそれぞれに3個の下流側開口部を接合させて上流側接続部26に接続される下流側接続部44を接続した状態で、3個の前方側取付部66のそれぞれに3個の後方側取付部45を対応させ、前方側取付部66と後方側取付部45を取付ねじやボルト締め等により締結する。
【0062】
以上のように、一体に組み立てられたファンシュラウドパネル1A、エアエレメント収納ケース20A、キャップ部材60および吸気導入部材40Aは、図9、図10および図11に示す状態となる。図9はファンシュラウドパネル1A、エアエレメント収納ケース20A、キャップ部材60、吸気導入部材40Aを組み立てた状態をエンジン側からみた場合の背面図である。図10はファンシュラウドパネル1A、エアエレメント収納ケース20A、キャップ部材60、吸気導入部材40Aを組み立てた状態を車両斜め前方外側からみた場合の斜視図である。図11は吸気導入部材40A、エアエレメント収納ケース20A、ファンシュラウドパネル1A、キャップ部材60等について車両側方側からみた場合の側部断面図である。
【0063】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0064】
上記各実施形態では、ファンシュラウドパネル1,1Aは樹脂成形品で形成しているが,金属製としてもよい。金属製とした場合には、ファンシュラウドパネル1,1Aは金型を用いたプレス加工や溶接等により作成される。
【0065】
また、上記各実施形態では、エアエレメント収納ケースとファンシュラウドパネルは一体成形または別体品を組み付けする構成としているが、エアエレメント収納ケース20を先に成形しておきファンシュラウドパネルを成形する際に金型に投入してインサート成形し、見かけ上、一体品にする方法も用いることができる。
【0066】
また、上記各実施形態では冷却対象の熱交換器としてラジエータ70を採用しているが、これに限るものでなく、例えば冷凍サイクル用の凝縮器や、エンジン吸気冷却用のインタークーラ等を冷却対象としてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、ラジエータ70について冷却水が上下に流れるダウンフローを説明しているが、チューブが水平に配置され冷却水が水平方向に流れるクロスフローラジエータにも適用することができる。
【0068】
また、上記各実施形態ではファンシュラウドパネル1には2個の送風機10を取り付けているが、これに限るものでなく、送風機を1個または3個以上取り付ける構成としてもよい。
【0069】
また、上記各実施形態ではファンシュラウドパネル1とラジエータ70の結合方法について、取り付けねじ等の螺合手段を用いているが、これに限定されず、例えばクリップによる締結方法や、ブラケットを介した締結方法を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエアエレメント収納ケースおよびファンシュラウドパネルについて、その内部をエンジン側からみた場合の一部断面図である。
【図2】第1実施形態に係るエアエレメント収納ケース、ファンシュラウドパネル、キャップ部材等について車両側方側からみた場合の側部断面図である。
【図3】第1実施形態に係るエアエレメント収納ケース、ファンシュラウドパネル、ラジエータ等についてのエンジン側からみた場合の斜視図である。
【図4】第1実施形態に係るラジエータ、吸気導入部材、エアエレメント収納ケース、ファンシュラウドパネル等についての車両斜め前方外側からみた場合の斜視図である。
【図5】第1実施形のファンシュラウドパネルに吸気導入部材を取り付けた状態を車両斜め前方外側からみた場合の斜視図である。
【図6】第1実施形のファンシュラウドパネルを車両斜め前方外側からみた場合の斜視図である。
【図7】第2実施形態に係るファンシュラウドパネル、エアエレメント収納ケース、キャップ部材、吸気導入部材について、エンジン側からみた場合の分解斜視図である。
【図8】第2実施形態に係るファンシュラウドパネル、エアエレメント収納ケース、キャップ部材、吸気導入部材について、車両斜め前方外側からみた場合の分解斜視図である。
【図9】第2実施形態に係るファンシュラウドパネル、エアエレメント収納ケース、キャップ部材、吸気導入部材を組み立てた状態をエンジン側からみた場合の背面図である。
【図10】第2実施形態に係るファンシュラウドパネル、エアエレメント収納ケース、キャップ部材、吸気導入部材を組み立てた状態を車両斜め前方外側からみた場合の斜視図である。
【図11】第2実施形態に係るエアエレメント収納ケース、ファンシュラウドパネル、キャップ部材等について車両側方側からみた場合の側部断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1,1A…ファンシュラウドパネル(ファンシュラウド部材)
10…送風機
20,20A…エアエレメント収納ケース
21…凸壁部
22…水抜き穴(貫通穴)
23…エアエレメント収納ケースの底壁部(底壁部)
24…エレメント部流入前空間(吸気経路、所定の空間部)
26…上流側接続部
27…下流側開口部
31…上流側開口部
40,40A…吸気導入部材
41…吸気口部
43…吸気通路(吸気経路)
50…エアエレメント
62…吸気チャンバ(吸気経路)
70…ラジエータ(熱交換器)
A…外気
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンに吸い込む外気を浄化するためのエアエレメントを収納するエアエレメント収納ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアエレメント収納ケースとしては、ラジエータやコンデンサ等の熱交換器に冷却風を提供するファンを覆うように支持するファンシュラウドに一体化されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
空気中のダスト等を除去するエアエレメントが収納される上記エアエレメント収納ケースは、ラジエータコア部への冷却風を提供するファンが取り付けられるファンシュラウドパネル上部に設けられている。このファンシュラウドパネル上部には底壁と側壁で囲まれリア側のみ開放した凹部が形成されており、この凹部がエアエレメント収納空間となっている。そして、リア側の開放部分は凹部にエアエレメントを収納させた状態でハウジングによって閉じられることにより、ファンシュラウドパネルとエアエレメントとが一体ユニットを構成している。さらにファンシュラウドパネルの前面にはエアエレメントを通過する空気の取り入れ口となる吸気孔が設けられ、ハウジングの一部にはエアエレメントを通過した後の空気の出口である浄化空気出口が設けられている。
【特許文献1】特開平11−171041号公報(図6参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の凹部により形成される空間は、収納されるエアエレメントによってほぼ占められているので、吸気孔から導入される空気は、凹部空間を通過して浄化空気出口から流出する間で大きな吸気抵抗を受けることになる。この吸気抵抗が大きいと、吸気量が減少しエンジン出力が低下するという問題がある。さらに、車両外から雨や雪を含む空気を吸い込んだ場合には、水分が上記凹部空間に留まるとエアエレメントが水に浸かってしまうことがある。
【0005】
また、エンジンに水が浸入することを防止するため、エアエレメント収納空間を大きくする場合には、引き回したダクトにエアエレメント収納ケースを接続し、周辺部品との干渉を心配しなくてよい場所に配置することができるが、装置全体として大型化すること、吸気経路が長くなることによる吸気抵抗の増大という問題がある。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、装置の大型化を抑制するとともに吸気抵抗の低減を図るエアエレメント収納ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。第1の発明は、外気(A)を車両のエンジンに導く吸気経路(43、24、62)の途中に設けられ、外気(A)が流入する上流側開口部(31)と、上部に形成される下流側開口部(27)との間に形成された通路に外気(A)を浄化するためのエアエレメント(50)を収納するダクト状体のエアエレメント収納ケースに係る発明であって、
エアエレメント(50)の下端部との間に所定の空間部(24)を形成するように設けられ、ダクト状体の底面を構成する底壁部(23)を備え、
当該底壁部(23)は、冷却対象流体が内部を流通する熱交換器(70)に冷却風を提供する軸流式の送風機(10)を支持するファンシュラウド部材(1,1A)において、送風機(10)の羽根部を取り囲むように設けられたリング状部(2)に対して上方に配置されているとともに、さらにリング状部(2)に沿う形状に形成されていることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、エアエレメント収納ケースを上方に大きくしないで、エアエレメントのエレメント部の吸込み表面積を大きくし、この吸込み表面とエアエレメント収納ケースの底壁部との間に空間を確保することができるので、エレメント部を通過するときの吸気抵抗を低減できる気流が形成され、吸気流の圧力損失を低減することができる。したがって、装置の大型化を抑制するとともに吸気抵抗の低減を図るエアエレメント収納ケースが得られる。
【0009】
また、上記底壁部(23)のうちリング状部(2)の最上部よりも下方となる部位には、貫通穴(22)が形成されていることが好ましい。この発明によれば、外気とともに水や雪を吸い込んだ場合でも、貫通穴から水分を車両外に排出することができるので、エアエレメント収納ケース内の停留水を防ぎ、エレメント部が蒸発した水蒸気にさらされることを軽減できる。
【0010】
また、上記底壁部(23)には、他の部位よりも下方に突出する形状の凸壁部(21)が設けられていることが好ましい。この発明によれば、凸壁部とエアエレメントの下端部との間に形成される空間の鉛直方向長さは、底壁部の他の部位とエアエレメントの下端部との間の空間に比べて非常に長くなるので、その長さ分に伴う容積増大によって吸気流の圧力損失の低減効果および水溜の効果がさらに大きくなる。
【0011】
また、上記凸壁部(21)には貫通穴(22)が形成されていることが好ましい。この発明によれば、外気とともに吸入された雨等の水分を凸壁部に案内して速やかに車外に排出することができる。
【0012】
また、上記底壁部(23)の車両後方側端部は、ファンシュラウド部材(1,1A)の車両後方側端部よりも車両後方に位置していることが好ましい。この発明によれば、底壁部とエアエレメントの下端部との間に形成される所定の空間部の車両後方長さを長くすることができるので、容積の増大によって吸気流の圧力損失の低減効果がさらに大きくなる。
【0013】
また、上流側開口部(31)を形成する上流側接続部(26)には吸気導入部材(40、40A)が接続されており、吸気導入部材(40、40A)は、外気(A)の取り入れ口である吸気口部(41)と、吸気口部(41)から上流側開口部(31)に向かう吸気通路(43)と、を有する。
【0014】
さらに、当該吸気通路(43)は吸気口部(41)から上流側開口部(31)へ下方に向かう通路であり、吸気口部(41)はエアエレメント(50)よりも高い位置に配置されていることが好ましい。
【0015】
この発明によれば、外気とともに吸入された水分を底壁部とエアエレメントの下端部との間に形成される所定の空間部に確実に案内することになり、エレメント部が水に浸かってしまうことを防止できる。
【0016】
また、上記いずれかの発明に記載のエアエレメント収納ケース(20)が一体成形されているファンシュラウド部材を構成することが好ましい。この発明によれば、部品点数および組み立て工数の低減が図れ、低コストの製品を提供できる。
【0017】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の一実施形態である第1実施形態について図1〜図6を用いて説明する。図1は本実施形態に係るファンシュラウドパネル1およびエアエレメント収納ケース20について、その内部をエンジン側からみた場合の一部断面図である。図2はエアエレメント収納ケース20、ファンシュラウドパネル1、キャップ部材60等についての車両側方側からみた場合の側部断面図である。
【0020】
図1および図2に示すように、ファンシュラウドパネル1は、エンジン冷却水の熱を放熱させるためのラジエータ70に冷却風を提供する送風機10を覆うように支持するファンシュラウド部材である。ファンシュラウドパネル1は、車両のエンジンに導入される車外空気を吸い込む吸気導入部材40に接続され、車外空気中の粉塵等のごみを捕集するエアエレメント50が内部に配置されているエアエレメント収納ケース20を一体に備えた一体成形品である。
【0021】
エアエレメント収納ケース20は、上流側開口部31および下流側開口部27を有する横長のダクト状部材であり、下流側開口部27を形成する下流側接続部25にキャップ部材60の上流側接続部61が接続され、上流側開口部31を形成する上流側接続部26に吸気導入部材40の下流側接続部44が溶着、嵌めあい等によって接続されている。上流側開口部31は、横長矩形状であり、エアエレメント収納ケース20の車両前方側の面に形成されている。下流側開口部27は、ラジエータ70の天部(上側タンク72)よりも鉛直方向高さが高い位置に設けられており、エアエレメント50のエレメント部51の横断面積とほぼ等しい大きさの横長矩形状である。
【0022】
エアエレメント50のエレメント部51は不織布の濾材からなり、大気中に含まれている粉塵等を空気から分離して清浄な空気をエンジンに供給する。エレメント部51には、フィルタとしての濾材を蛇腹状に折りたたみ、樹脂枠や金属枠に嵌めて固定した乾式タイプ、濾材にオイルを染み込ませて粉塵等の吸着力を向上させたビスカスタイプ等が用いられる。また、エアエレメント50はその横長方向に複数に分割される構成でもよい。
【0023】
吸気導入部材40は、その上流側端部に形成されて車両前方に向かって開口する吸気口部41と、その下流側端部に形成された複数の下流側開口部42の外周部であってエアエレメント収納ケース20の上流側接続部26に接続される下流側接続部44と、吸気口部41から下流側開口部42を連通するように内部に形成された吸気通路43と、を有する横長の扁平状ダクトである。
【0024】
吸気導入部材40は、エアエレメント収納ケース20に接続された状態で、吸気口部41が車両エンジンルーム内のエンジンよりも前方に搭載されているラジエータ70の上方に位置し、下流側開口部42がファンシュラウドパネル1に取り付けられる送風機10の羽根部(あるいはファンシュラウドパネル1のリング状部2)よりも上方で吸気口部41よりも車両後方の下方に位置し、その鉛直方向に平行な切断面の形状(縦断面形状)がL字を180度回転させたときと同様の形状を呈している。
【0025】
吸気導入部材40は、下流側接続部44から上方に向けて伸長された後、さらに前方に延設されてラジエータ70の上側タンク72の上方まで達する形状である。なお、吸気導入部材40は樹脂成形品であり、例えばポリプロピレン樹脂等で形成される。
【0026】
エアエレメント収納ケース20は、ファンシュラウドパネル1に一体に形成されている樹脂成形部材であり、所定の金型を用いた射出成形等によって成形される。この一体成形品は、例えばガラス繊維やタルク材によって強度が高められたポリプロピレン樹脂等によってできている。なお、後述する第2実施形態のように、エアエレメント収納ケース20は、ファンシュラウドパネル1と別体であるエアエレメント収納ケース20Aによって構成してもよく、この場合、エアエレメント収納ケース20Aはファンシュラウドパネル1と別々に製造された後、ファンシュラウドパネル1に一体に取り付けられる。
【0027】
エアエレメント収納ケース20は、ファンシュラウド部材一体型のケースであり、内部空間が略直方体状を呈するように形成されている。上記内部空間の鉛直方向中ほどから上部にかけては、エアエレメント50のエレメント部51で占有されている(図1および図2参照)。エアエレメント50の上部に側方に突出するようにフランジ状に設けられたハウジングがエアエレメント収納ケース20の下流側接続部25とキャップ部材60の上流側接続部61とによって上下方向に挟持されることにより、エアエレメント50は内部空間で所定の位置に保持され、エアエレメント収納ケース20内に収納されるようになる。
【0028】
エアエレメント50は、上記内部空間でこのように保持されていることにより、エアエレメント50の下端部とエアエレメント収納ケースの底壁部23との間には略直方体形状を呈する所定の空間部であるエレメント部流入前空間24が形成されている。図2に示すように、このエレメント部流入前空間24により、吸気通路43を流れてきた外気Aはエレメント部51の下面側に十分に回り込むことができ、外気Aが流入するエレメント部51の表面積を非常に大きくすることができる。これによって、吸気抵抗の低減が図れるとともに、外気Aとともに流入してくる粉塵等の捕集率を向上することができる。
【0029】
ところで降雪時や降雨時においては、外気Aとともに、吸気通路43に水や雪が流入してくることがある。この場合でも、エレメント部流入前空間24がエレメント部51の下方に形成されていることおよび大きな容積で形成されていることにより、雪や水を所定量貯められる容積が確保できる。これにより、エレメント部51が水等に浸かってしまうことを遅らせることができる。また、仮にエレメント部流入前空間24に水等が溜まっている状態でも、ラジエータ70からの放熱、通風等や、自然蒸発によって停留水を蒸発させることも可能である。
【0030】
また、エアエレメント収納ケースの底壁部23のうちリング状部2の最上部よりも下方となる部位23a,23bには貫通穴である水抜き穴22を設ける。この水抜き穴22は1個以上形成されている。さらに水抜き穴22は、エアエレメント収納ケースの底壁部23の最も下方に位置する部位23aに設けられることが好ましい。このような水抜き穴22を備えることにより、上述のように吸気通路43に水や雪を吸い込んだ場合でも、水抜き穴22から水を車両外に排出することができ、停留水を防止し、蒸発した水蒸気がエレメント部51側に上昇する度合いを軽減できる。
【0031】
さらに、図1に示すように、エアエレメント収納ケースの底壁部23はファンシュラウドパネル1のリング状部2に沿うような円弧形状で形成されている。エアエレメント収納ケースの底壁部23およびエアエレメント収納ケースの下面は、ファンシュラウドパネル1の背面でリング状部2の外周面に沿うような形状であり、さらに当該背面からリング状部2よりもファンの回転軸方向に近づくことなくエンジン側に向かって突出するように延設されている。また、エアエレメント収納ケース20の下流側接続部25は、その側壁面が略鉛直方向に延びる形状を呈している。この構成によれば、エレメント部流入前空間24はリング状部2よりもその鉛直方向高さが高い位置に設けられているため、送風機10のファンの後流側領域に干渉することなく冷却風の通風抵抗とならない範囲でエレメント部流入前空間24を極力大きく形成することができる。
【0032】
このようにエアエレメント収納ケースの底壁部23がリング状部2に沿うように円弧形状で形成されていることにより、エアエレメント50の下面とエアエレメント収納ケースの底壁部23との間に形成される空間の容積を大きく形成することができるので(エレメント部流入前空間24の拡大化)、前述の作用効果をより一層顕著なものにできる。
【0033】
図1のごとくファンシュラウドパネル1にリング状部2が横方向に2個並んで配置されている場合には、エアエレメント収納ケースの底壁部23は、2個のリング状部2が最も接近する部分(例えば、2個のリング状部2の接する部分)で下方に突出する凸壁部21を有し、その横断面が略V字状を呈するように構成されている。凸壁部21はエアエレメント収納ケースの底壁部23の最も下方に位置する部位23aに対応している。上記水抜き穴22は、凸壁部21を貫通するように設けられている。
【0034】
このような構成により、凸壁部21とエアエレメント50の下面との間に形成される空間の鉛直方向長さは、底壁部23の他の部位とエアエレメント50の下面との間の空間に比べて非常に長くできるので、さらにエレメント部流入前空間24の容積を増大することができる。
【0035】
キャップ部材60は、その下端開口部を形成し、エアエレメント収納ケース20の下流側接続部25と接合可能な形状である上流側接続部61と、上方で開口する下流側開口部63からエンジン側に伸長するように設けられるダクト部64と、上流側接続部61の開口部から下流側開口部63を連通するように内部に略直方体状に形成された吸気チャンバ62と、を有して形成される横長形状の蓋部材である。ダクト部64は、後方のエンジン吸気口に接続されており、外気Aをエンジン内部に供給する吸気通路を構成している。このキャップ部材60は樹脂成形品であり、例えばガラス繊維やタルク材によって強度が高められたポリプロピレン樹脂等で形成される。
【0036】
最近の車両外郭の小型化要求、自動車の高性能化に伴う電装部品等の増加によるエンジンルーム内の部品配置スペース減少等により、ラジエータ70、吸気導入部材40およびキャップ部材60の上方には、車両のエンジンルーム上方を覆うボンネット80が接近して配置されるようになっている。このため、ボンネット80と吸気導入部材40およびキャップ部材60との間の距離を確保することはできないので、ますますエアエレメント50を収納するケースを大きく構成することは困難となっている。そこで本実施形態に係る構成のファンシュラウド部材一体型のエアエレメント収納ケース20を採用することにより、鉛直上方の高さを高くすることなく十分に大きいエレメント部流入前空間24を確保することができ、吸気抵抗レベルおよびエレメントの捕集率等に優れた製品を提供することができる。
【0037】
ファンシュラウドパネル1は、横長の矩形状であり、ラジエータ70のコア部71に対して冷却風を通過させる軸流式の送風機10を横方向に2個並べて配置できる構成を有している。ファンシュラウドパネル1は、送風機10のモータが取り付けられるモータ取付部4と、モータ取付部4から放射状に複数本延設されるモータ固定用脚部3と、送風機10の回転軸部から放射状に伸長して形成される複数枚の羽根部外周を囲む円形状で、モータ固定用脚部3の放射方向端部と一体に形成され、モータ固定用脚部3を介してモータ取付部4を支持するリング状部2と、を備えている。
【0038】
送風機10は、上記冷却風の流れ方向についてラジエータ70よりも下流側に配置され、回転軸が車両の前後方向に配されるモータが回転駆動されることにより、車両前面のグリル側からエンジン側に向けて外気を吸引する。送風機10のモータは、電動式であり、例えばフェライト式の直流モータで構成する。モータには、アーマチャへ電力を供給するためのハーネス部が接続され、このハーネス部はコネクタ等を介して車両のバッテリに接続されている。
【0039】
図3はラジエータ70、エアエレメント収納ケース20、ファンシュラウドパネル1等についてのエンジン側からみた場合の斜視図である。図4はラジエータ70、吸気導入部材40、エアエレメント収納ケース20、ファンシュラウドパネル1等についての車両斜め前方外側からみた場合の斜視図である。なお、図3および図4は、エアエレメント収納ケース20からキャップ部材60およびエアエレメント50を取り外した状態を示している。
【0040】
図3および図4に示すように、ラジエータ70は、内部にエンジンの冷却水が流れ、長手方向が上下方向を向くようにして複数配列されるチューブおよびチューブ間のフィンからなるコア部71を有し、さらにチューブの長手方向両端部が接続される上側タンク72および下側タンク73を有して構成されている。
【0041】
上側タンク72の背面側には、エンジン冷却水を上側タンク72の内部に導入するために、エンジン内部とラジエータ70を配管接続するように設けられるラジエータ回路の配管に接続される入口パイプ75がエンジン側に突出するように設けられている。下側タンク72の背面側には、エンジン冷却水を下側タンク73からラジエータ回路に流出させるためにラジエータ回路の配管に接続される出口パイプ76がエンジン側に突出するように設けられている。
【0042】
上側タンク72の中央部から一方側端部(入口パイプ75と反対側の端部)にかけては、鉛直方向に凹んだタンク凹部74が設けられている。このタンク凹部74のすぐ上方には吸気口部41がタンクの長手方向(横方向)に3個並ぶように、吸気導入部材40がエアエレメント収納ケース20に対して配置されている。
【0043】
ファンシュラウドパネル1は、その鉛直方向下部にねじ等が挿通可能な貫通孔を備えた少なくとも2個の下側取付部5と、その鉛直方向上部にねじ等が挿通可能な貫通孔を備えた少なくとも2個の上側取付部7と、を備えている。ファンシュラウドパネル1は、下側取付部5、上側取付部7のそれぞれをラジエータ70に設けられた各雌ねじ部に螺合することにより、ラジエータ70に一体に取り付けられる。
【0044】
上記構成においてエンジンからの冷却水は、ウォータポンプが駆動されることによってラジエータ回路を通って上側タンク72に流入した後、コア部71のチューブ内を図2中の上側から下側に向けて流れて冷却風との間で熱交換され、冷却された後、下側タンク73から流出してエンジンに戻るようになっている。
【0045】
次に、図5および図6を用いて、ファンシュラウドパネル1の他の構成について説明する。図5はファンシュラウドパネル1に吸気導入部材40を取り付けた状態を車両斜め前方外側からみた場合の斜視図である。図6はファンシュラウドパネル1を車両斜め前方外側からみた場合の斜視図である。図5および図6において、図1〜図4で付した符号と同符号のものは、同様の構成要素部であり、説明は省略する。
【0046】
図5および図6に示すように、ファンシュラウドパネル1は、その外周部とリング状部2との間には滑らかに傾斜、または湾曲する形状の導風面部8を備えている。この導風面部8は、ラジエータ70のコア部71の全面に外気を効率的に吸い込む機能を果たしており、ファンシュラウドパネル1のラジエータ側外周縁部からリング状部2の内周縁部に至る導風面部8によって形成される筒状部分は、風洞部を構成し、外気Aの効率的な吸込み気流の形成に寄与している。
【0047】
吸気導入部材40は、エアエレメント収納ケース20に取り付けられた状態において、導風面部8にならう面形状(シュラウドの母線形状にならう形状)を呈する下部側前面部46を備えている。この下部側前面部46は、吸気導入部材40がエアエレメント収納ケース20に取り付けられた状態において、導風面部8との間に大きな段差部分を構成しない滑らかな面形状を形成する表面形状を備えている。この構成によれば、導風面部8によって形成される外気Aの効率的な吸込み気流を損なうことがない。また、下部側前面部46の下側端部47は、リング状部2に沿うような形状、本実施形態の場合は正面視または背面視で略V字形状に構成されている。
【0048】
上記構成において、外気Aを吸気口部41から吸気した場合の空気流れについて説明する。車外空気は、車両前面部に設けられたグリル等からボンネット80の内側空間に引き込まれ、さらに、その一部は送風機10の吸込み力によりラジエータ70のコア部71を通過してエンジン冷却水を冷却することに使われ、他の一部は複数の吸気口部41より吸気導入部材40内に導入されて、最終的にエンジン内部に至る。
【0049】
そして、吸気導入部材40内に導入された外気Aは、複数の吸気口部41から、下方に向かって吸気通路43を流れ、複数の下流側開口部42からエアエレメント収納ケース20内部に流入する。エアエレメント収納ケース20内部では、外気Aはエレメント部51に対して車両前方側の面からとエレメント部流入前空間24を経由した下面からとの二つの流れを形成し、エアエレメント収納ケース20内部の横幅方向全体に大きく広がってエレメント部51内部に流入する。このとき、エレメント部51への吸込み表面積が大きくなり、吸込み表面の上流側に空間が確保されていることにより、エレメント部51を通過するときの吸気抵抗を低減できる気流が作られる。さらに、外気Aの経路の中でエレメント部流入前空間24が低い位置にあるため、空気に含まれる水分、雪等の質量の大きい成分はエアエレメント収納ケースの底壁部23に落下することになる。
【0050】
さらに、エアエレメント収納ケースの底壁部23に下方に突出する凸壁部21を有する場合には、エレメント部51の吸込み表面にさらに上流側空間を大きく設けることができ、水分、雪等を落下させる容積を大きくすることができる。さらに、凸壁部21に水抜き穴22を設けた場合には落下した水分、雪等を凸壁部21側に案内して、スムーズに車外に排出することができる。
【0051】
そして、エレメント部51の内部では外気Aに含まれる粉塵等の汚染物が吸着されて取り除かれ、浄化された空気がキャップ部材60内部の吸気チャンバ62に運ばれる。吸気チャンバ62に至った外気Aは、下流側開口部63からダクト部64内に流出し、ダクト部64内部によって形成される通路を進んでエンジン内部に吸い込まれ、エンジンの正常な燃焼に使用されることになる。
【0052】
以上のように本実施形態によれば、エアエレメント収納ケース20は、外気Aを車両のエンジンに吸い込む吸気経路の途中に設けられ、上流側開口部31と下流側開口部27との間に形成された通路に外気Aを浄化するためのエアエレメント50を収納するダクト状体であり、上流側開口部31よりも下方に位置し、エアエレメント50の下端部との間に所定の空間部を形成するように設けられ、ダクト状体の底面を構成する底壁部23を備えている。この底壁部23は、ラジエータ70に冷却風を提供する軸流式の送風機10を支持するファンシュラウドパネル1において、送風機10の羽根部を取り囲むように設けられたリング状部2に対して上方に配置され、かつリング状部2に沿う形状に形成されている。
【0053】
この構成によれば、エアエレメント収納ケース20を鉛直方向上方に大きくしないで装置全体の高さを抑える構成が実現できる。また、エレメント部51の吸込み表面積を大きくし(例えばその横幅長さ全体に亘って構成することができる)、この吸込み表面とエアエレメント収納ケースの底壁部23との間にエレメント部流入前空間24を十分な容積で確保することができる。これにより、エレメント部51を通過するときの吸気抵抗を低減できる気流が形成され、吸気流の圧力損失の低減効果が得られる。
【0054】
また、底壁部23の車両後方側端部は、ファンシュラウドパネル1の車両後方側端部よりも車両後方に位置している。これにより、エレメント部流入前空間24の車両後方長さを長くすることができるので、この空間の容積増大によって吸気流の圧力損失の低減効果がさらに大きくなる。
【0055】
また、上流側開口部31を形成する上流側接続部26には吸気導入部材40が接続されている。この吸気導入部材40の吸気口部41はエアエレメント50よりも高い位置に配置されている。これにより、外気Aとともに吸入された水分をエレメント部流入前空間24に確実に案内することができ、エレメント部51が水に浸かってしまうことを低減できる。
【0056】
(第2実施形態)
第2実施形態では、ファンシュラウドパネルとエアエレメント収納ケースとが一体成形品でなく別体の部品である場合の構成について図7〜図11にしたがって説明する。本実施形態で説明する装置は、これらの部品が別体であること以外は上記第1実施形態の説明と同様であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0057】
以下に、ファンシュラウドパネル1A、エアエレメント収納ケース20A、キャップ部材60および吸気導入部材40Aの組み付けについて説明する。図7は、ファンシュラウドパネル1A、エアエレメント収納ケース20A、キャップ部材60および吸気導入部材40Aについてエンジン側からみた場合の分解斜視図である。図8は、ファンシュラウドパネル1A、エアエレメント収納ケース20A、キャップ部材60および吸気導入部材40Aについて、車両斜め前方外側からみた場合の分解斜視図である。
【0058】
図7および図8に示すように、エアエレメント収納ケース20Aの側部および下面部には貫通孔が形成された3個の取付片28が外方に突出して設けられ、ファンシュラウドパネル1A背面の車両前方側には当該貫通孔と対応する雌ねじ部が形成された3個の背面取付部11が後方に突出して設けられている。ファンシュラウドパネル1Aにエアエレメント収納ケース20Aを取り付ける場合には、ファンシュラウドパネル1Aの背面にエアエレメント収納ケース20Aを接近させ、3個の背面取付部11のそれぞれに3個の取付片28を対応させるように配置し、取付ねじやボルト締め等により車両後方側から締結する。
【0059】
次に、エアエレメント収納ケース20A上部に位置する下流側接続部25の周縁部には、車両前方側の面および車両横方向の側面から突出する5個の係止部29が設けられており、車両後方側の面に2個の係合軸部30が設けられている。キャップ部材60下部に位置する上流側接続部61の周縁部には、5個の係止部29のそれぞれに対応するように車両前方側の面および車両横方向の側面から突出する5個の係合部67が設けられており、2個の係合軸部30のそれぞれに対応するように車両後方側の面から突出する2個の係止爪65が設けられている。また、キャップ部材60の上流側接続部61の周縁部には車両前方側の面から上方に突出する3個の前方側取付部66が設けられ、吸気導入部材40A上部の車両後方側には、上方に突出する3個の後方側取付部45が設けられている。
【0060】
そして、エアエレメント収納ケース20Aにキャップ部材60を取り付ける場合には、エアエレメント収納ケース20Aの上方側からキャップ部材60を接近させ、まず2個の係合軸部30のそれぞれに2個の係止爪65を係止する。次に、この係止部分を支点として下流側接続部25に上流側接続部61を重ねるようにキャップ部材60を回動させて5個の係止部29のそれぞれに5個の係合部67を係合させる。最後に、クリップ部材によって係止部29と係合部67の係合を締結する。つまり、係合軸部30と係止爪65の係止部分は蝶番のような働きを有し、この構成により締結部材の個数を低減できるので、作業工数および部品点数を低減することができる。
【0061】
次に、このように一体に組み立てられたファンシュラウドパネル1A、エアエレメント収納ケース20Aおよびキャップ部材60に対して、吸気導入部材40Aを組み付ける場合には、吸気導入部材40Aを車両前方側から接近させ、エアエレメント収納ケース20Aの3個の上流側開口部31のそれぞれに3個の下流側開口部を接合させて上流側接続部26に接続される下流側接続部44を接続した状態で、3個の前方側取付部66のそれぞれに3個の後方側取付部45を対応させ、前方側取付部66と後方側取付部45を取付ねじやボルト締め等により締結する。
【0062】
以上のように、一体に組み立てられたファンシュラウドパネル1A、エアエレメント収納ケース20A、キャップ部材60および吸気導入部材40Aは、図9、図10および図11に示す状態となる。図9はファンシュラウドパネル1A、エアエレメント収納ケース20A、キャップ部材60、吸気導入部材40Aを組み立てた状態をエンジン側からみた場合の背面図である。図10はファンシュラウドパネル1A、エアエレメント収納ケース20A、キャップ部材60、吸気導入部材40Aを組み立てた状態を車両斜め前方外側からみた場合の斜視図である。図11は吸気導入部材40A、エアエレメント収納ケース20A、ファンシュラウドパネル1A、キャップ部材60等について車両側方側からみた場合の側部断面図である。
【0063】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0064】
上記各実施形態では、ファンシュラウドパネル1,1Aは樹脂成形品で形成しているが,金属製としてもよい。金属製とした場合には、ファンシュラウドパネル1,1Aは金型を用いたプレス加工や溶接等により作成される。
【0065】
また、上記各実施形態では、エアエレメント収納ケースとファンシュラウドパネルは一体成形または別体品を組み付けする構成としているが、エアエレメント収納ケース20を先に成形しておきファンシュラウドパネルを成形する際に金型に投入してインサート成形し、見かけ上、一体品にする方法も用いることができる。
【0066】
また、上記各実施形態では冷却対象の熱交換器としてラジエータ70を採用しているが、これに限るものでなく、例えば冷凍サイクル用の凝縮器や、エンジン吸気冷却用のインタークーラ等を冷却対象としてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、ラジエータ70について冷却水が上下に流れるダウンフローを説明しているが、チューブが水平に配置され冷却水が水平方向に流れるクロスフローラジエータにも適用することができる。
【0068】
また、上記各実施形態ではファンシュラウドパネル1には2個の送風機10を取り付けているが、これに限るものでなく、送風機を1個または3個以上取り付ける構成としてもよい。
【0069】
また、上記各実施形態ではファンシュラウドパネル1とラジエータ70の結合方法について、取り付けねじ等の螺合手段を用いているが、これに限定されず、例えばクリップによる締結方法や、ブラケットを介した締結方法を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエアエレメント収納ケースおよびファンシュラウドパネルについて、その内部をエンジン側からみた場合の一部断面図である。
【図2】第1実施形態に係るエアエレメント収納ケース、ファンシュラウドパネル、キャップ部材等について車両側方側からみた場合の側部断面図である。
【図3】第1実施形態に係るエアエレメント収納ケース、ファンシュラウドパネル、ラジエータ等についてのエンジン側からみた場合の斜視図である。
【図4】第1実施形態に係るラジエータ、吸気導入部材、エアエレメント収納ケース、ファンシュラウドパネル等についての車両斜め前方外側からみた場合の斜視図である。
【図5】第1実施形のファンシュラウドパネルに吸気導入部材を取り付けた状態を車両斜め前方外側からみた場合の斜視図である。
【図6】第1実施形のファンシュラウドパネルを車両斜め前方外側からみた場合の斜視図である。
【図7】第2実施形態に係るファンシュラウドパネル、エアエレメント収納ケース、キャップ部材、吸気導入部材について、エンジン側からみた場合の分解斜視図である。
【図8】第2実施形態に係るファンシュラウドパネル、エアエレメント収納ケース、キャップ部材、吸気導入部材について、車両斜め前方外側からみた場合の分解斜視図である。
【図9】第2実施形態に係るファンシュラウドパネル、エアエレメント収納ケース、キャップ部材、吸気導入部材を組み立てた状態をエンジン側からみた場合の背面図である。
【図10】第2実施形態に係るファンシュラウドパネル、エアエレメント収納ケース、キャップ部材、吸気導入部材を組み立てた状態を車両斜め前方外側からみた場合の斜視図である。
【図11】第2実施形態に係るエアエレメント収納ケース、ファンシュラウドパネル、キャップ部材等について車両側方側からみた場合の側部断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1,1A…ファンシュラウドパネル(ファンシュラウド部材)
10…送風機
20,20A…エアエレメント収納ケース
21…凸壁部
22…水抜き穴(貫通穴)
23…エアエレメント収納ケースの底壁部(底壁部)
24…エレメント部流入前空間(吸気経路、所定の空間部)
26…上流側接続部
27…下流側開口部
31…上流側開口部
40,40A…吸気導入部材
41…吸気口部
43…吸気通路(吸気経路)
50…エアエレメント
62…吸気チャンバ(吸気経路)
70…ラジエータ(熱交換器)
A…外気
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気(A)を車両のエンジンに導く吸気経路(43、24、62)の途中に設けられ、前記外気(A)が流入する上流側開口部(31)と、上部に形成される下流側開口部(27)との間に形成された通路に前記外気(A)を浄化するためのエアエレメント(50)を収納するダクト状体のエアエレメント収納ケースであって、
前記エアエレメント(50)の下端部との間に所定の空間部(24)を形成するように設けられ、前記ダクト状体の底面を構成する底壁部(23)を備え、
前記底壁部(23)は、
冷却対象流体が内部を流通する熱交換器(70)に冷却風を提供する軸流式の送風機(10)を支持するファンシュラウド部材(1,1A)において、前記送風機(10)の羽根部を取り囲むように設けられたリング状部(2)に対して上方に配置されているとともに、
さらに前記リング状部(2)に沿う形状に形成されていることを特徴とするエアエレメント収納ケース。
【請求項2】
前記底壁部(23)のうち、前記リング状部(2)の最上部よりも下方となる部位には、貫通穴(22)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアエレメント収納ケース。
【請求項3】
前記底壁部(23)には、他の部位よりも下方に突出する形状の凸壁部(21)が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のエアエレメント収納ケース。
【請求項4】
前記凸壁部(21)には貫通穴(22)が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のエアエレメント収納ケース。
【請求項5】
前記底壁部(23)の車両後方側端部は、前記ファンシュラウド部材(1,1A)の車両後方側端部よりも車両後方に位置していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のエアエレメント収納ケース。
【請求項6】
前記上流側開口部(31)を形成する上流側接続部(26)には吸気導入部材(40、40A)が接続されており、
前記吸気導入部材(40、40A)は、前記外気(A)の取り入れ口である吸気口部(41)と、前記吸気口部(41)から前記上流側開口部(31)に向かう吸気通路(43)と、を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のエアエレメント収納ケース。
【請求項7】
前記吸気通路(43)は前記吸気口部(41)から前記上流側開口部(31)へ下方に向かう通路であり、
前記吸気口部(41)は前記エアエレメント(50)よりも高い位置に配置されていることを特徴とする請求項6に記載のエアエレメント収納ケース。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のエアエレメント収納ケース(20)が一体成形されていることを特徴とするファンシュラウド部材。
【請求項1】
外気(A)を車両のエンジンに導く吸気経路(43、24、62)の途中に設けられ、前記外気(A)が流入する上流側開口部(31)と、上部に形成される下流側開口部(27)との間に形成された通路に前記外気(A)を浄化するためのエアエレメント(50)を収納するダクト状体のエアエレメント収納ケースであって、
前記エアエレメント(50)の下端部との間に所定の空間部(24)を形成するように設けられ、前記ダクト状体の底面を構成する底壁部(23)を備え、
前記底壁部(23)は、
冷却対象流体が内部を流通する熱交換器(70)に冷却風を提供する軸流式の送風機(10)を支持するファンシュラウド部材(1,1A)において、前記送風機(10)の羽根部を取り囲むように設けられたリング状部(2)に対して上方に配置されているとともに、
さらに前記リング状部(2)に沿う形状に形成されていることを特徴とするエアエレメント収納ケース。
【請求項2】
前記底壁部(23)のうち、前記リング状部(2)の最上部よりも下方となる部位には、貫通穴(22)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアエレメント収納ケース。
【請求項3】
前記底壁部(23)には、他の部位よりも下方に突出する形状の凸壁部(21)が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のエアエレメント収納ケース。
【請求項4】
前記凸壁部(21)には貫通穴(22)が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のエアエレメント収納ケース。
【請求項5】
前記底壁部(23)の車両後方側端部は、前記ファンシュラウド部材(1,1A)の車両後方側端部よりも車両後方に位置していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のエアエレメント収納ケース。
【請求項6】
前記上流側開口部(31)を形成する上流側接続部(26)には吸気導入部材(40、40A)が接続されており、
前記吸気導入部材(40、40A)は、前記外気(A)の取り入れ口である吸気口部(41)と、前記吸気口部(41)から前記上流側開口部(31)に向かう吸気通路(43)と、を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のエアエレメント収納ケース。
【請求項7】
前記吸気通路(43)は前記吸気口部(41)から前記上流側開口部(31)へ下方に向かう通路であり、
前記吸気口部(41)は前記エアエレメント(50)よりも高い位置に配置されていることを特徴とする請求項6に記載のエアエレメント収納ケース。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のエアエレメント収納ケース(20)が一体成形されていることを特徴とするファンシュラウド部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−126415(P2009−126415A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304850(P2007−304850)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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