説明

エアコンプレッサおよび報知制御方法

【課題】 駆動源より供給される一次電圧を検出して、一次電圧値がモータ手段の駆動に適した電圧値となっているか否かを作業者に報知すること。
【解決手段】 エアコンプレッサは、圧縮空気を生成する圧縮空気生成手段と、圧縮空気生成手段により生成された圧縮空気を貯留するタンク部と、圧縮空気生成手段を駆動させるためのモータ手段と、モータ手段の駆動量を制御する制御手段5、20と、モータ手段を駆動するために駆動源によって供給される一次電圧を検出する電圧検出手段28と、報知を行うための報知手段6、7とを有している。制御手段5、20は、モータ手段の駆動に要する所定の設定電圧値を基準として、電圧検出手段28によって検出された一次電圧値を分類する。また、報知手段6、7は、制御手段5、20によって分類された一次電圧値に応じて報知方法を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンプレッサおよび報知制御方法に関し、より詳細には、報知手段を備えたエアコンプレッサおよび報知手段に対する報知制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮空気を利用した釘打機等の駆動工具を建築現場で利用する場合には、駆動工具に対して圧縮空気を供給するエアコンプレッサを設置する必要がある。エアコンプレッサは、モータ部を駆動させることによって圧縮空気生成部で圧縮空気を生成し、生成させた空気をタンク部に貯留することによって、所定圧力の圧縮空気を駆動工具に提供する構造となっている。ここで、エアコンプレッサは、一般的なコンセント(交流電源)用のプラグを備えており、プラグをコンセントに接続することによって、モータ部を駆動させるための駆動電力の供給を受けている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−54941号公報(第3頁〜第4頁、第6図参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方で、作業現場等で使用される工具であって、コンセントを介して駆動電力の供給を受ける必要がある工具は、エアコンプレッサ以外にも多数存在する。しかしながら、各コンセントには、合計して使用可能な電力量が予め規定されており、使用可能な電力量を超えた場合にはコンセントへの電力供給を一時的に遮断するためのブレーカが通常設けられている。
【0004】
ブレーカによる電力の遮断が行われると、同一コンセントに接続された全ての駆動工具の動作が停止されてしまうため、作業に支障が生ずる可能性が高い。一方で、同一コンセントにたくさんの駆動工具が接続されている場合には、エアコンプレッサの機能を十分に発揮するために必要とされる電圧値(設定電圧値)よりも低い電圧値しか、コンセントから供給を受けることができない場合がある。このように低い電圧値しか一次電圧として供給を受けることできない場合には、エアコンプレッサの機能を十分に発揮し得るように駆動制御を行うことができず、また、設定電圧値を超えた高い電圧値の供給を受ける場合には、エアコンプレッサの故障等を招いてしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、駆動源によって供給される一次電圧を検出することにより、一次電圧値がモータ手段の駆動に適した電圧値となっているか否かを作業者に報知することが可能なエアコンプレッサおよび報知制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る報知制御方法では、モータ手段の駆動量を制御する制御手段が、駆動源によって供給される一次電圧を電圧検出手段より取得し、前記モータ手段の駆動に要する所定の設定電圧値を基準として、前記電圧検出手段によって検出された一次電圧値を分類し、報知を行うために設けられる報知手段が、前記制御手段により分類された前記一次電圧値に応じて報知方法を変更することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る報知制御方法によれば、制御手段が、設定電圧値を基準として電圧検出手段によって検出された一次電圧値を分類し、報知手段が、分類された一次電圧値に応じて報知方法を変更するので、作業者は報知手段による報知方法によって、一次電圧値がどの程度の値であるかを、容易かつ迅速に知ることが可能となる。
【0008】
また、上述した報知制御方法において、前記報知手段による報知開始の基準とされる一次電圧値と、報知終了の基準とされる一次電圧値とが異なる電圧値であってもよい。
【0009】
このように、報知手段による報知開始の一次電圧値と報知終了の一次電圧値とが異なる電圧値である場合には、電圧検出手段によって報知開始後に検出された一次電圧値が、報知が開始される電圧値前後で変動しても、報知を終了する電圧値に一次電圧が達しなければそのまま報知が継続される(報知が終了することがない)ので、報知の開始および終了が切り替わりつつ連続して実行される現象(いわゆるチャタリング)を抑制することができる。
【0010】
一方で、本発明に係るエアコンプレッサは、圧縮空気を生成する圧縮空気生成手段と、該圧縮空気生成手段により生成された前記圧縮空気を貯留するタンク部と、前記圧縮空気生成手段を駆動させるためのモータ手段と、該モータ手段の駆動量を制御する制御手段と、駆動源によって供給される一次電圧を検出する電圧検出手段と、報知を行うための報知手段とを有し、前記制御手段は、前記モータ手段の駆動に要する所定の設定電圧値を基準として、前記電圧検出手段によって検出された一次電圧値を分類し、前記報知手段は、前記制御手段によって分類された前記一次電圧値に応じて、報知方法を変更することを特徴とする。
【0011】
本発明に係るエアコンプレッサでは、制御手段が設定電圧値を基準として、電圧検出手段によって検出された一次電圧値を分類し、報知手段が、分類された一次電圧値に応じて報知方法を変更するので、報知手段による報知方法によって、作業者は一次電圧値がどの程度の値であるかを、容易かつ迅速に知ることが可能となる。
【0012】
また、エアコンプレッサは、報知手段による報知開始の基準とされる一次電圧値と、報知終了の基準とされる一次電圧値とを異なる電圧値とするものであってもよい。
【0013】
このように、報知手段による報知開始の一次電圧値と報知終了の一次電圧値とが異なる電圧値である場合には、電圧検出手段によって報知開始後に検出された一次電圧値が、報知が開始される電圧値前後で変動しても、報知を終了する電圧値に一次電圧が達しなければそのまま報知が継続される(報知が終了することがない)ので、報知の開始および終了が切り替わりつつ連続して実行される現象(いわゆるチャタリング)を抑制することができる。
【0014】
また同様に、電圧検出手段によって報知終了後に検出された一次電圧値が、報知が終了される電圧値前後で変動しても、報知を開始する電圧値に一次電圧が達しなければそのまま報知が終了した状態となる(報知が開始されることがない)ので、報知の開始および終了が切り替わりつつ連続して実行される現象を抑制することが可能となる。
【0015】
さらに、前記制御手段は、前記設定電圧値と前記電圧検出手段によって検出された一次電圧値との電圧値差が所定電圧値以上となった場合に、前記モータ手段の駆動を停止させるものであってもよい。
【0016】
このように、制御手段が、設定電圧値と検出された一次電圧値との電圧値差が所定電圧値以上となった場合にモータ手段の駆動を停止させることによって、電圧値差が大きくなって継続してモータ部を駆動させ続けるとエアコンプレッサに不具合を生じさせる可能性がある場合などに、積極的にエアコンプレッサの使用を停止させることができる。このため、作業者が報知手段による報知動作に気づかず、一次電圧値が正常でない値となっている場合、継続してエアコンプレッサが使用されてしまうことを防止することが可能となる。
【0017】
さらに、上述した報知手段は、少なくとも照明手段の点消灯処理により前記報知を行う照明報知手段を有するものであってもよく、また、報知手段が、少なくとも音出力手段による出音処理および停止処理により前記報知を行う出音報知手段を有するものであってもよい。
【0018】
このように、報知手段が少なくとも照明報知手段を有することによって、照明の点消灯により作業者への報知を行うことが可能となり、少なくとも出音報知手段を有することによって、出力音の出力・停止処理により作業者への報知を行うことが可能となる。
【0019】
特に、報知手段が照明報知手段と出音報知手段とを有する場合には、制御手段によって分類された一次電圧値に応じて報知方法を変更する際に、照明報知手段による視覚的な報知方法と出音報知手段による聴覚的な報知方法とを組み合わせることが可能となる。一般に、視覚的な報知よりも聴覚的な報知の方が、作業者の認識性が高い場合が多いので、設定電圧値と検出された一次電圧値との電圧値差が小さい場合には、照明報知手段を用いて報知処理を行い、設定電圧値と検出された一次電圧値との電圧値差が大きい場合には、報知方法を照明報知手段から出音報知手段に切り替えることによって、または、照明報知手段と出音報知手段とを併用することによって、効果的に報知処理を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るエアコンプレッサおよび報知制御方法によれば、制御手段が、設定電圧値を基準として電圧検出手段によって検出された一次電圧値を分類し、報知手段が、制御手段により分類された一次電圧値に応じて報知方法を変更するので、作業者は一次電圧値がどの程度の値であるかを、報知手段の報知方法によって容易かつ迅速に知ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係るエアコンプレッサについて、図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
図1は、エアコンプレッサの概略構成を示したブロック図である。エアコンプレッサ1は、タンク部2と、圧縮空気生成部(圧縮空気生成手段)3と、モータ部(モータ手段)4と、制御回路部(制御手段)5と、LED報知部(照明報知手段、報知手段)6と、ブザー報知部(出音報知手段、報知手段)7とによって概略構成されている。
【0023】
タンク部2は、圧縮空気を貯留するための貯留タンク8を有している。貯留タンク8には、圧縮空気生成部3により生成された一定圧力の圧縮空気が蓄えられており、通常3.5MPa〜4.3MPa程度の圧力に維持されている。
【0024】
貯留タンク8には、複数の圧縮空気取出口9が設けられている。本実施の形態においては、高圧の圧縮空気を取り出すための高圧取出口9aと、常圧の圧縮空気を取り出すための常圧取出口9bとが設けられている。各取出口9a、9bには、それぞれの取出口9a、9bより得られる圧縮空気を所望の圧力に減圧させるための減圧弁10a、10bが設けられており、高圧取出口9aでは、減圧弁10aによって取り出される圧縮空気の圧力が1.5MPa〜2.50MPa程度に減圧され、常圧取出口9bでは、減圧弁10bによって取り出される圧縮空気の圧力が0.7MPa〜1.5MPa程度に減圧される。
【0025】
貯留タンク8内の圧縮空気は、上述したように通常3.5MPa〜4.3MPa程度の圧力に維持されるため、高圧取出口9aから取り出され圧縮空気も常圧取出口9bから取り出される圧縮空気も、上述した所望の圧力を減圧弁10a、10bによって維持することが可能となる。また、各取出口9a、9bには、減圧弁10a、10bにより減圧された圧縮空気を釘打機等の駆動工具に供給するために、エアホース(図示省略)を着脱することが可能となっている。
【0026】
圧縮空気生成部3は、シリンダ内に設けられるピストンを往復運動させ、シリンダの吸気弁からシリンダ内に引き込まれた空気を圧縮することによって圧縮空気を生成する構造を備えている。圧縮された空気は、連結パイプ14を介してタンク部2の貯留タンク8へと供給される。
【0027】
モータ部4は、圧縮空気生成部3のピストンを往復運動させるための駆動力を発生させる役割を有している。モータ部4には、駆動力を発生させるためのステータ16とロータ17とが設けられている。ステータ16には、U相、V相、W相の巻線16a、16b、16cが形成されており、これらの巻線16a〜16cに対して電流を流すことによって回転磁界が形成される。
【0028】
ロータ17は、永久磁石によって構成されており、ステータ16の巻線16a、16b、16cを流れる電流によって形成される回転磁界により、ロータ17の回転が行われる。また、モータ部4には、ロータ17の回転を検出するための回転数検出部18が設けられている。回転数検出部18には、ホールICが設けられており、このホールICを用いてロータ17における磁界の変化を検出することによってロータ17の回転数を検出する。
【0029】
制御回路部5は、図2に示すように、マイクロプロセッサ(MPU:Micro Processing Unit、制御手段)20と、コンバータ回路21と、インバータ回路22とによって概略構成されている。
【0030】
コンバータ回路21は、整流回路(全波整流回路)24と昇圧回路25と平滑回路26とにより概略構成されており、このコンバータ回路21によっていわゆるPAM(Pulse Amplitude Modulation)制御が実行される。ここで、PAM制御とは、コンバータ回路21によって出力電圧のパルスの高さを変化させることにより、モータ部4の回転数を制御する方法である。一方で、インバータ回路22では、いわゆるPWM(Pulse Width Modulation)制御が実行される。PWM制御とは、出力電圧のパルス幅を変化させてモータ部4の回転数を制御させる方法である。
【0031】
PAM制御は、PWM制御に比べて、モータ部4における低回転時の効率低下が少なく、電圧を上げることによって高回転にも対応することが可能であるという特性を有しているため、高出力時および定常運転時に主として用いられる制御方法である。一方で、PWM制御は、起動時や電圧低下時などにおいて主として用いられる制御方法である。マイクロプロセッサ20は、エアコンプレッサ1の運転状態に応じて、コンバータ回路21によるPAM制御とインバータ回路22によるPWM制御とを好適に切り替えて制御を実行する。
【0032】
コンバータ回路21の整流回路24および平滑回路26は、エアコンプレッサ1の駆動源となる交流電源29を整流・平滑することによって直流電圧に変換する役割を有している。昇圧回路25の内部には、スイッチング素子25aが設けられており、マイクロプロセッサ20の制御命令に応じて直流電圧の振幅制御を行う役割を有している。昇圧回路25は、マイクロプロセッサ20のPAM命令を受けた昇圧コントローラ27を介して制御されている。
【0033】
なお、コンバータ回路21の整流回路24と昇圧回路25との間には、電圧検出部(電圧検出手段)28が設けられている。電圧検出部28で検出される電圧値は、昇圧回路25等を経て電圧値が昇圧される前の一次電圧の値であり、この電圧値は交流電源29の電圧値を示している。従って、電圧検出部28において電圧値を検出することによって、交流電源29によりどの程度の一次電圧が供給されているかを判断することができ、エアコンプレッサ1の機能を発揮し得る電圧値として予め規定されている規定電圧値(本実施の形態に係るエアコンプレッサ1では、例えばAC100V)との電圧値差を容易に判断することが可能となる。電圧検出部28によって検出された駆動電圧値は、マイクロプロセッサ20に出力される。
【0034】
インバータ回路22は、コンバータ回路21によって変換された直流電圧のパルスを一定周期で正負変換させるとともに、パルス幅を変換させることによって直流電圧を擬似的な正弦波を備える交流電圧に変換する役割を有している。このパルス幅を調整することによって、上述したようにモータ部4の回転数制御を行うことが可能となる。マイクロプロセッサ20は、モータ部4の操作量(制御量)を調整することによってインバータ回路22の制御を行う。
【0035】
マイクロプロセッサ20は、コンバータ回路21およびインバータ回路22の駆動制御を行うことによって、タンク部2の圧縮空気の圧力を3.5MPa〜4.0MPaに安定させるための制御手段である。マイクロプロセッサ20は、演算処理ユニット(CPU:Central Processing Unit)、ワークメモリ等の一時記憶領域として利用されるRAM(Random Access Memory)、制御処理プログラム(図3参照、本発明に係る報知制御方法を示したプログラム)等が記録されるROM(Read Only Memory)等が、1チップのLSIにより実現されたものである。
【0036】
マイクロプロセッサ20には、上述したように電圧検出部28によって検出された一次電圧の駆動電圧値と、回転数検出部18により検出されたモータ部4(より詳細には、ロータ17)の駆動回転数値とが入力される。一方でマイクロプロセッサ20は、制御情報(PAM命令、PWM命令)を、コンバータ回路21およびインバータ回路22に対して出力することが可能な構成となっている。コンバータ回路21およびインバータ回路22では、マイクロプロセッサ20によって出力された制御情報に基づいて、モータ部4の駆動制御を実行する。
【0037】
マイクロプロセッサ20は、昇圧コントローラ27にPAM命令を出力することによって、昇圧コントローラ27を介して昇圧回路25のスイッチング素子25aを制御して、コンバータ回路21の駆動制御を行う。また、同様に、マイクロプロセッサ20は、インバータ回路22に対してPWM命令を出力することによってインバータ回路22の制御を行う。
【0038】
マイクロプロセッサ20では、PAM制御またはPWM制御を行う場合、回転数検出部18により検出されるモータ部4の駆動回転数に基づいて、コンバータ回路21およびインバータ回路22の制御量を決定する。
【0039】
報知手段としてのLED報知部6は、エアコンプレッサ1の筐体に設けられており、筐体に対して視認可能に設置されるLED光源(照明手段)を備えている。LED報知部6は、制御回路部5による点消灯命令に応じて、LED光源の点灯または消灯を行うことが可能となっている。
【0040】
報知手段としてのブザー報知部7は、ブザー音を出音させるためのブザー出音回路(音出力手段)を備えており、LED報知部6と同様に、エアコンプレッサ1の筐体に設けられている。ブザー報知部7は、制御回路部5によるブザー出音/停止命令に応じて、ブザー音を出音または停止させることが可能となっている。
【0041】
LED報知部6およびブザー報知部7では、電圧検出部28により検出された一次電圧値に応じて点消灯処理および出音・停止処理が行われる。
【0042】
例えば、コンセントに接続される駆動工具が少数であって、接続される駆動工具の全駆動電圧値の合計値がコンセントの許容電力量の範囲内である場合、エアコンプレッサ1に供給される一次電圧は、エアコンプレッサの規定電圧値(本実施の形態では100V)を満たすことが可能となる。一方で、コンセントに接続される駆動工具が多数となり、接続される駆動工具の全駆動電圧値の合計値が、コンセントの許容電力量の範囲を超えてしまう場合には、エアコンプレッサ1に供給される一次電圧が、エアコンプレッサ1の規定電圧値(本実施の形態では100V)以下の値となってしまうおそれがあり、規定電圧値以下の一次電圧しか電圧供給を受けることができない場合には、エアコンプレッサの性能を十分に発揮することができないおそれがある。
【0043】
一方で、エアコンプレッサ1に供給される一次電圧が、エアコンプレッサ1の規定電圧値以上の値となる場合には、エアコンプレッサ1の駆動に想定され得る電圧値を超えて電圧が供給されてしまうので、エアコンプレッサ1に不具合が生ずるおそれがある。
【0044】
しかしながら、一般的なエアコンプレッサでは、一次電圧の電圧値を確認する手段が設けられていないため、一次電圧が規定電圧値より高いか低いかを作業者が判断することなくエアコンプレッサを継続使用してしまい、結果として十分な機能を発揮できなかったり、不具合を生じさせたりするおそれがあった。
【0045】
そこで、本発明に係るエアコンプレッサ1では、マイクロプロセッサ20が電圧検出部28により検出された一次電圧値に基づいて一次電圧の分類を行い、分類された電圧値に応じてLED報知部6およびブザー報知部7を制御することによって、作業者に電圧値に関する報知方法を行っている。
【0046】
図3は、マイクロプロセッサ20が、電圧検出部28により検出された一次電圧に基づいて、LED報知部6およびブザー報知部7の制御を行う処理(報知制御方法)を示したフローチャートである。
【0047】
まず、マイクロプロセッサ20は、2秒間の時間待ち処理(ステップS.1)をし、2秒間が経過した場合に(ステップS.1においてYes)、電圧検出部28より一次電圧値情報を取得する(ステップS.2)。ここで、2秒間の時間待ち処理を行う理由は、エアコンプレッサ1がコンセントに接続され、電源がオンにされてから、約2秒程度経過した後に電圧値を検出すると、安定した一次電圧を検出することができるためである。このため、2秒間の時間待ち処理が終了するまで(ステップS.1においてNoの場合)、マイクロプロセッサ20は、繰り返し時間待ち処理(ステップS.1)を実行する。
【0048】
2秒間の時間待ち処理が完了し(ステップS.1においてYesの場合)、電圧検出部28より一次電圧値を取得(ステップS.2)した後、マイクロプロセッサ20は、取得した一次電圧値が85V以上、かつ105V以下であるか否かの判断を行う(ステップS.3)。
【0049】
ここで、電圧検出部28より取得する一次電圧値は、整流回路24によって全波整流波形となっているので、マイクロプロセッサ20は、取得された一次電圧の実効値を求めることによって一次電圧の値を判断している。
【0050】
一次電圧値が85V以上、かつ105V以下である場合(ステップS.3においてYesの場合)、マイクロプロセッサ20は、LED報知部6に対して消灯命令を出力すると共に、ブザー報知部7に対してブザーの停止命令を出力する(ステップS.4)する。消灯命令を受信したLED報知部6では、マイクロプロセッサ20の指示に従ってLED光源の消灯処理を実行し、ブザー報知部7では、マイクロプロセッサ20の指示に従ってブザー音の停止処理を実行する。
【0051】
このLED光源の消灯処理によって、エアコンプレッサ1の起動時にはLED光源の消灯処理という初期処理を行うこととなり、エアコンプレッサ1の定常動作時においては、LED光源の消灯処理により、一次電圧値がエアコンプレッサ1の駆動に必要な電圧値として許容できる(正常と判断できる)電圧値であることを作業者に報知することが可能となる。
【0052】
また同様に、ブザー音の停止処理によって、エアコンプレッサ1の起動時にはブザーの停止処理という初期処理を行うこととなり、エアコンプレッサ1の定常動作時においては、ブザー音の停止処理により、一次電圧値がエアコンプレッサ1の駆動に必要な電圧値として許容できる(正常と判断できる)電圧値であることを作業者に報知することが可能となる。
【0053】
なお、ステップS.3において、85V以上、かつ105V以下という値を基準として一次電圧値を判断する理由は、本実施の形態に係るエアコンプレッサ1の設定電圧値が100Vであるため、この設定電圧値100Vに対して−15Vから+5Vの範囲の電圧値(つまり、85V〜105V)であれば、エアコンプレッサ1の性能を発揮することができ、さらにエアコンプレッサ1の駆動に際して不具合等を生じる可能性が低いと判断することができるためにある。
【0054】
LED報知部6に対して消灯命令を出力し、ブザー報知部7に対してブザーの停止命令を出力した(ステップS.4)後、マイクロプロセッサ20は、繰り返し時間待ち処理(ステップS.1)を実行する。
【0055】
一次電圧値が85V以上、かつ105V以下でない場合(ステップS.3においてNoの場合)、マイクロプロセッサ20は、一次電圧値が75V以上、かつ145V以下であるか否かを判断する(ステップS.5)。一次電圧値が75V以上、かつ145V以下である場合(ステップS.5においてYesの場合)、マイクロプロセッサ20は、ブザー報知部7に対してブザー音の停止命令を出力し(ステップS.6)、ブザー報知部7による停止命令を受信したブザー報知部7では、マイクロプロセッサ20の指示に従ってブザー音の停止処理を実行する。
【0056】
なお、ステップS.6の処理において、マイクロプロセッサ20は、LED報知部6に対するLED光源の消灯命令は出力しない。ステップS.5における75V≦一次電圧値≦145Vの判断は、ステップS.3における85V≦一次電圧値≦105Vの条件を満たさない(ステップS.3においてNoの場合)において判断される条件である。従って、実質的にステップS.5で判断される一次電圧値の値は、75V≦一次電圧値≦85Vであるか、または、105V≦一次電圧値≦145Vに該当する場合だけある。
【0057】
このため、ステップS.6において、ブザー報知部7に対してブザー音の停止命令のみを出力し、LED報知部6に対するLED光源の消灯命令は出力しないことによって、作業者は、LED報知部6の点灯のみが行われて、ブザー報知部7のブザー音が出力されていない場合には、一次電圧値が、75V≦一次電圧値≦85Vであるか、または、105V≦一次電圧値≦145Vであると認識することができる。
【0058】
次に、一次電圧値が75V以上、かつ145V以下でない場合(ステップS.5においてNoの場合)、または、一次電圧値が75V以上、かつ145V以下であって、ブザー報知部7に対してブザー音の停止処理が成された場合(ステップS.5においてYesであって、ステップS.6の処理が実行された場合)、マイクロプロセッサ20は、一次電圧値が、80V以下であるか、または、110V以上であるかを判断する(ステップS.7)。
【0059】
一次電圧値が、80V以下であるか、または、110V以上である場合(ステップS.7においてYesの場合)、マイクロプロセッサ20は、LED報知部6に対して点灯命令を出力(ステップS.8)し、点灯命令を受信したLED報知部6では、マイクロプロセッサ20の指示に従ってLED光源の点灯処理を実行する。このLED報知部6の点灯処理により、マイクロプロセッサ20は、作業者に対してLED光源の発光による警告を行うことが可能となる。
【0060】
次に、一次電圧値が80V以下、または、110V以上でない場合(ステップS.7においてNoの場合)、または、一次電圧値が80V以上、または、110V以下であって、LED報知部6に対してLED光源の点灯処理を行った場合(ステップS.7においてYesであって、ステップS.8の処理が実行された場合)、マイクロプロセッサ20は、一次電圧値が、70V以下であるか、または、150V以上であるかを判断する(ステップS.9)。
【0061】
一次電圧値が、70V以下であるか、または、150V以上である場合(ステップS.9においてYesの場合)、マイクロプロセッサ20は、ブザー報知部7に対してブザー音の出音命令を出力(ステップS.10)し、出音命令を受信したブザー報知部7では、マイクロプロセッサ20の指示に従ってブザー音の出音処理を実行する。このブザー報知部7の点灯処理により、マイクロプロセッサ20は、作業者に対してブザー音の出力による警告を行うことが可能となる。
【0062】
なお、ステップS.9において一次電圧が、一次電圧値≦70V、または、一次電圧値≧150Vの条件を満たす場合には、ステップS.7における一次電圧の判断値である、一次電圧値≦80V、または、一次電圧値≧110Vの条件を満たすこととなる。このため、ブザー報知部7に対してブザー音の出音命令が出力される場合(ステップS.9においてYesの場合であって、ステップS.10の処理が実行される場合)には、必ず、LED報知部6に対して点灯命令が出力される(ステップS.7においてYesとなって、ステップS.8の処理が実行される)。
【0063】
作業者は、LED報知部6の点灯のみが行われてブザー報知部7によるブザー音の出音が行われていない場合には、一次電圧の値が設定電圧値に近い値を示しており、LED報知部6の点灯とブザー報知部7によるブザー音の出音とが両方行われている場合には、LED報知部6の点灯のみが行われている場合よりも、一次電圧の値が設定電圧値よりも低い値を示しているか、または、高い値を示しており、エアコンプレッサ1の駆動を継続することが好ましい状況ではないと判断することができる。
【0064】
また、マイクロプロセッサ20からLED報知部6に対してLED光源の点灯命令が出力される一次電圧値の条件と消灯命令が出力される一次電圧値の条件とに5Vの電圧値差が設けられている。例えば、LED報知部6に対してLED光源の点灯命令が出力される一次電圧値は、80V以下であることが1つの条件である(ステップS.7)が、LED報知部6に対してLED光源の消灯命令が出力される一次電圧値は、85V以上であり(ステップS.3)、その電圧値差として5Vの差が確保されている。
【0065】
このようにLED報知部6の点灯条件と消灯条件とに電圧値差を設けることによって、検出された一次電圧値の微妙な変動に伴ってLED報知部6のLED光源が点消灯を継続的に切り替えてしまうこと(いわゆるチャタリング)を防止することが可能となる。また、マイクロプロセッサ20からブザー報知部7に対してブザー音の出音命令が出力される一次電圧値の条件と停止命令が出力される一次電圧値の条件とに関しても、5Vの電圧値差が設けられている。このため、ブザー音の出力・停止処理におけるチャタリングを防止することが可能となる。
【0066】
続いて、マイクロプロセッサ20は、一次電圧値が50V以下、または、150V以上であって、モータ部4の駆動動作が行われているか否かについて判断を行う(ステップS.11)。一次電圧値が50V以下、または、150V以上であって、モータ部4の駆動動作が行われている場合(ステップS.11においてYesの場合)には、交流電源29より供給される電圧値では、エアコンプレッサ1の性能を十分に発揮させることができず、また、安全にエアコンプレッサ1を駆動させることが難しい状況であると判断することができる。このため、マイクロプロセッサ20は、インバータ回路22およびコンバータ回路21に対してモータ部4の駆動を停止させるための制御命令を出力する(ステップS.12)。マイクロプロセッサ20より制御命令を受けたインバータ回路22およびコンバータ回路21は、制御命令に従ってモータ部4の停止制御を行う。
【0067】
このように交流電源29より供給される電圧値がエアコンプレッサ1の規定電圧値よりも大幅に高い値であったり、低い値であったりする場合には、マイクロプロセッサ20がモータ部4の駆動を強制的に停止させることによって、エアコンプレッサ1等に生じ得る不具合やトラブル等を予め回避することが可能となる。
【0068】
一方で、「一次電圧値が50V以下、または、150V以上であって、モータ部4の駆動動作が行われている」という条件を満たさない場合(ステップS.11においてNoの場合)、例えば、一次電圧値が50V以下、または、150V以上でない場合や、一次電圧値が50V以下、または、150V以上であっても、モータ部4の駆動動作が行われていない場合には、処理をステップS.1の時間待ち処理に移行して、繰り返し上述した処理を実行する。
【0069】
以上説明したように、本実施の形態に係るエアコンプレッサ1では、交流電源29より供給される一次電圧値を検出し、検出された一次電圧値に応じてLED報知部6によるLED光源の点消灯処理を行い、またブザー報知部7によるブザー音の出音・停止処理を行うので、作業者は、LED光源の点消灯状態およびブザー報知部7によるブザー音に基づいて、交流電源29の一次電圧値がエアコンプレッサ1の駆動に適した電圧値であるか否かを判断することが可能となる。
【0070】
特に、本実施の形態に係るエアコンプレッサ1では、一次電圧値と規定電圧値との電圧値差が大きくなるに従って、
(1)LED報知部6およびブザー報知部7による報知なしの状態
から、
(2)LED報知部6によるLED光源の点灯による報知(ブザー報知部7による報知なし)が行われる状態
(3)LED報知部6によるLED光源の点灯による報知と、ブザー報知部7によるブザー音の出音による報知との両方が行われる状態
(4)LED報知部6による報知とブザー報知部7による報知とに加えて、モータ部4の駆動停止処理を行う状態
という多段階の報知を用いて作業者に一次電圧の状態を知らせることができるので、作業者は、これらの報知状態に基づいて、迅速かつ確実に一次電圧の状態を把握することが可能となる。
【0071】
このため、報知状態に応じて作業者は様々な対策を施すことが可能となり、例えば、LED報知部6による報知のみが行われている場合には、コンセントに接続されている一部の駆動工具の接続を外したり、LED報知部6とブザー報知部7との2つの報知が両方行われている場合には、コンセントに接続される他の全ての駆動工具をコンセントから外したり、エアコンプレッサ1が接続されるコンセントを他のコンセントに差し替えてみたりすることが可能となる。
【0072】
また、実施の形態に示した一次電圧値に対する数値条件は、単なる一例に過ぎず、これに限定されるものではない。例えば、設定値100Vに対して±15Vの範囲から、条件となる数値をそれぞれ設定するものであってもよい。
【0073】
以上、本発明に係るエアコンプレッサおよび報知制御方法について図面を用いて詳細に説明を行ったが、本発明に係るエアコンプレッサおよび報知制御方法は上述したものに限定されるものではない。いわゆる当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【0074】
例えば、上述した実施の形態では、一次電圧値の状態を作業者に報知するためにブザー音を出力するブザー報知部7について説明を行っているが、音による作業者への報知は必ずしもブザー音には限定されず、例えばブザー音ではなく音楽が鳴ったり、人の声で「一次電圧値が低い(高い)です、ご注意下さい」と喋ったりするものであってもよい。
【0075】
また、LED報知部6による作業者への報知も、単にLED光源が点灯・消灯するだけでなく、一次電圧値に応じて点灯されるLED光源の色が変化するもの等であってもよい。
【0076】
さらに、上述した本実施の形態では、本発明に係る報知制御方法を、エアコンプレッサ1に用いる場合について説明を行ったが、本発明に係る報知制御方法は、必ずしもエアコンプレッサ1に設けられる報知手段の制御だけには限定されず、他の製品における報知手段の制御にも用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施の形態に係るエアコンプレッサの概略構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係るエアコンプレッサの制御回路部を示すブロック図である。
【図3】実施の形態に係るマイクロプロセッサの処理内容(報知制御方法)を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
1 …エアコンプレッサ
2 …タンク部
3 …圧縮空気生成部(圧縮空気生成手段)
4 …モータ部(モータ手段)
5 …制御回路部(制御手段)
6 …LED報知部(報知手段、照明報知手段)
7 …ブザー報知部(報知手段、出音報知手段)
8 …(タンク部の)貯留タンク
9 …圧縮空気取出口
9a …(圧縮空気取出口の)高圧取出口
9b …(圧縮空気取出口の)常圧取出口
10a、10b …減圧弁
14 …連結パイプ
16 …(モータ部の)ステータ
16a、16b、16c …(ステータの)巻線
17 …ロータ
18 …(モータ部の)回転数検出部
20 …マイクロプロセッサ(制御手段)
21 …コンバータ回路
22 …インバータ回路
24 …(コンバータ回路の)整流回路
25 …(コンバータ回路の)昇圧回路
25a …(昇圧回路の)スイッチング素子
26 …(コンバータ回路の)平滑回路
27 …昇圧コントローラ
28 …電圧検出部(電圧検出手段)
29 …交流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ手段の駆動量を制御する制御手段が、
駆動源によって供給される一次電圧を電圧検出手段より取得し、
前記モータ手段の駆動に要する所定の設定電圧値を基準として、前記電圧検出手段によって検出された一次電圧値を分類し、
報知を行うために設けられる報知手段が、
前記制御手段により分類された前記一次電圧値に応じて報知方法を変更すること
を特徴とする報知制御方法。
【請求項2】
前記報知手段において報知開始の基準とされる一次電圧値と、報知終了の基準とされる一次電圧値とが異なる電圧値であること
を特徴とする請求項1に記載の報知制御方法。
【請求項3】
圧縮空気を生成する圧縮空気生成手段と、
該圧縮空気生成手段により生成された前記圧縮空気を貯留するタンク部と、
前記圧縮空気生成手段を駆動させるためのモータ手段と、
該モータ手段の駆動量を制御する制御手段と、
駆動源によって供給される一次電圧を検出する電圧検出手段と、
報知を行うための報知手段と
を有し、
前記制御手段は、前記モータ手段の駆動に要する所定の設定電圧値を基準として、前記電圧検出手段によって検出された一次電圧値を分類し、
前記報知手段は、前記制御手段によって分類された前記一次電圧値に応じて、報知方法を変更すること
を特徴とするエアコンプレッサ。
【請求項4】
前記報知手段による報知開始の基準とされる一次電圧値と、報知終了の基準とされる一次電圧値とが異なる電圧値であること
を特徴とする請求項3に記載のエアコンプレッサ。
【請求項5】
前記制御手段は、前記設定電圧値と前記電圧検出手段によって検出された一次電圧値との電圧値差が所定電圧値以上となった場合に、前記モータ手段の駆動を停止させること
を特徴とする請求項3又は請求項4に記載のエアコンプレッサ。
【請求項6】
前記報知手段は、少なくとも照明手段の点消灯処理により前記報知を行う照明報知手段を有すること
を特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載のエアコンプレッサ。
【請求項7】
前記報知手段は、少なくとも音出力手段による出音処理および停止処理により前記報知を行う出音報知手段を有すること
を特徴とする請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載のエアコンプレッサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−52483(P2009−52483A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220489(P2007−220489)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】