説明

エアコン制御装置

【課題】車内の快適性に影響する外的要因を考慮することで、乗員の快適性を維持しつつカーエアコンの省エネルギを達成する。
【解決手段】ECU10は、記憶部12から車室内の快適な空気条件に関する快適情報を取得する。また、各種センサ類22〜27から車内外の温度、湿度、日照、降水等に関する現状情報を取得する。そして、取得した快適情報と現状情報とを対比する所定の演算により、車室内の快適な空気条件を保つことが可能な範囲内でカーエアコンの運転状態を所定の低消費状態に切替えることを許容する許容時間を算出する。一方、ナビゲーション装置21から、自車両が現在地から目的地に到達するまでの予測所要時間を取得する。そして、前記予測所要時間と前記許容時間とを比較し、予測所要時間が許容時間以下となったことを条件に、カーエアコンの運転状態を低消費状態に切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エア・コンディショナー(以下、カーエアコン)の運転制御を行うエアコン制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カーエアコンの消費エネルギの低減を図るための運転制御として、車両が目的地候補地点までの距離が一定値以内となる一定領域に位置すると判定した場合、カーエアコンの運転状態を停止状態に切替えるエアコン制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−264938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような従来技術では、カーエアコンを停止状態に切替えるタイミングが目的地から一定領域に到達したときに一律に決められている。しかしながら、カーエアコンを運転することで車内の空気の快適性を保っていた状態から、カーエアコンを停止することで車内の空気が不快と感じられる状態に到達するまでの時間は、車内と外気との温度や湿度の差、天気(日射や降水)等の様々な外的要因に大きく左右される。したがって、それらの外的要因を何ら考慮しないで、目的地から一定領域に到達したときに一律にカーエアコンを停止状態にした場合、車両が目的地に到着するまでの間に車内の空気を快適な状態に保てず、乗員が不快に感じるおそれがある。
【0005】
本発明は上記問題を解決するためになされており、車内の快適性に影響する外的要因を考慮することで、乗員の快適性を維持しつつも省エネルギを達成するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、カーエアコンの運転制御を行うエアコン制御装置であり、快適情報取得手段と、現状情報取得手段と、許容時間算出手段と、予測所要時間取得手段と、運転制御手段とを備える。
【0007】
快適情報取得手段は、車室内の快適な空気条件に関する快適情報を取得する。現状情報取得手段は、車室内における現状の空気条件及び車外における現状の気象条件に関する現状情報を取得する。許容時間算出手段は、快適情報取得手段により取得した快適情報と、現状情報取得手段により取得した現状情報とを対比する所定の演算により、車室内の快適な空気条件を保つことが可能な範囲内でカーエアコンの運転状態を所定の低消費状態に切替えることを許容する期間である許容時間を算出する。
【0008】
予測所要時間取得手段は、自車両が現在地から目的地に到達するまでの予測所要時間を取得する。なお、予測所要時間は、車両の現在地から目的地までの道程及び移動速度に基づいて算出されたものを用いるとよい。また、経路上の交通規制や渋滞状況等を加味して精度よく算出された予測所要時間を用いることもできる。
【0009】
運転制御手段は、予測所要時間取得手段により取得した予測所要時間と、許容時間算出手段により算出した許容時間とを比較し、予測所要時間が許容時間以下となったことを条件に、カーエアコンの運転状態を低消費状態に切替える。なお、ここでいう低消費状態とは、カーエアコンの運転を停止したり、現在の運転状態よりも機能を低下させて運転を継続する状態を含む。
【0010】
本発明によれば、自車両が目的地へ到着するまでの予測所要時間が、車室内の快適な空気条件を保つことが可能な範囲内でカーエアコンの運転状態を低消費状態に切替えることを許容する期間として算出した許容時間以下になったことを条件に、カーエアコンの運転状態を低消費状態に切替えることができる。このようにすることで、カーエアコンの運転状態を低消費状態に切替えてから、車内の空気を快適な状態を保ったままで目的地に到着できるようになり、乗員が不快に感じることを回避できる。
【0011】
また、カーエアコンの運転状態を低消費状態に切替えることを許容する許容時間は、車室内における現状の空気条件や車外における現状の気象条件といった車内の快適性に影響する外的要因を考慮して算出することができる。このように、車内の快適性に影響する外的要因を考慮してカーエアコンの運転状態の切替を行うことで、乗員の快適性を維持しつつも、省エネルギを達成することができる。
【0012】
なお、具体的には、快適情報取得手段が取得する快適情報は、快適な空気条件として車室内の温度又は湿度の少なくとも何れかに関する条件を含む情報とし、現状情報取得手段が取得する現状情報は、車室内における現状の空気条件として車室内の温度又は湿度の少なくとも何れかに関する条件を含み、車外における現状の気象条件として車外の気温、湿度、日射量又は降水の有無の少なくとも何れかに関する条件を含む情報とすることが考えられる(請求項2)。
【0013】
車室内の温度や湿度等の空気条件は乗員の快適性を決定付ける主要なパラメータである。また、車外の気温や湿度、日射量、降水の有無といった気象条件は、車室内の温度や湿度の変動しやすさを決定付ける外的要因である。つまり、現状の車室内の温度や湿度と車外の気温や湿度との差や、日射量の大小、降水の有無等から、カーエアコンを低消費状態にしているときの車内温度や湿度の変化度合を予想することができ、その変化度合から快適な車内温度や湿度に関する空気条件を保つことのできる許容時間を精度よく算出できる。
【0014】
さらに、車室内の温度や湿度の変動しやすさを決定付ける要因として、車外の気象条件以外のパラメータを考慮して、カーエアコンを低消費状態にできる許容時間を算出してもよい。具体的には、車室内の保温性能に関するパラメータを取得し、そのパラメータに基づく車室内の温度変化のしやすさの度合を算入して許容時間を算出するように構成することが考えられる(請求項3)。このようにすることで、カーエアコンを低消費状態にしているときの車内温度の変化度合を精度よく予想することができ、カーエアコンを低消費状態にできる許容時間を効果的に算出できる。なお、車室内の保温性能に関するパラメータとしては、例えば、車室内の容積や、車体や内装の材質、車室周りの断熱構造の有無等、車室内の保温性能の高低度合を評価できるものを利用することが考えられる。
【0015】
ところで、内燃機関を持たない電気自動車等においては、カーエアコンの作動に必要なエネルギ源を専ら車載蓄電池に依存することになる。したがって、カーエアコンの消費エネルギの大小が電気自動車の走行可能距離の増減に顕著に影響するため、カーエアコンの消費エネルギを効果的に節約することが肝要である。
【0016】
そこで、車載蓄電池の電池残量が規定量以下であるか否かを判断する電池残量判断手段により電池残量が規定量以下と判断されたことを条件に、予測所要時間が許容時間以下のときにカーエアコンの運転状態を低消費状態に切替えるように構成することが考えられる(請求項4)。このようにすることで、車載蓄電池の電池残量が僅かになった状況下において、車載蓄電池に蓄積されている残りの電気エネルギを効果的に節約できる。
【0017】
あるいは、目的地の近くでカーエアコンの運転状態を低消費状態に切替える低消費モードの実施の可否そのものを乗員の判断で決定できるように構成してもよい。具体的には、カーエアコンの運転状態を低消費状態に切替えることの可否に関する設定を乗員から受付ける設定手段により予め受付けておいた設定内容を判断し、切替可能であると判断したことを条件に、予測所要時間が許容時間以下のときにカーエアコンの運転状態を低消費状態に切替えるように構成することが考えられる(請求項5)。このようにすることで、車室内の快適性を重視するか、あるいは省エネルギを重視するかといった乗員の好みに合わせた運用が実現する。
【0018】
つぎに、請求項6に記載のエアコン制御装置は次のような特徴を有する。すなわち、運転制御手段がカーエアコンの運転状態を低消費状態に切替えるための条件が成立しているときに、その切替を行う事前に乗員に対して切替の許否を問合わせる問合せ手段と、問合せ手段による問合せに対する乗員からの意向を受付ける回答受付手段とを更に備える。そして、運転制御手段は、回答受付手段により乗員から切替を許可する意向を受付けたことを条件に、カーエアコンの運転状態を低消費状態に切替える。このように構成することで、カーエアコンの運転状態を低消費状態に切替えることができる状況下において、切替の許否に関する問合せを受けた車両の乗員が、その時々の事情に応じて任意に切替の許否を選択できるので便利である。
【0019】
つぎに、請求項7に記載のエアコン制御装置は、カーエアコンの運転状態を低消費状態に切替えるのに連動して、自車両に搭載されている他の所定の快適機器を停止状態に切替えることを特徴とする。なお、ここでいう快適機器とは、車両を走行させるための運転操作には直接関係しない快適性や居住性、利便性に関する車載電気機器であり、例えば、車載ナビゲーション装置や、車載音響映像機器、室内灯、電動シート等といったものが挙げられる。このように、カーエアコンを低消費状態に切替えるのに併せて、これらの快適機器を一緒に停止状態に切替えることで、より一層の省エネルギを実現できる。
【0020】
あるいは、請求項8に記載のように、快適情報取得手段により取得した快適情報と、現状情報取得手段により取得した現状情報とを対比する所定の演算に基づいて、カーエアコンを低消費状態で運転する期間中におけるパワーウィンドウの開閉制御の要否を判断し、その判断結果に応じて、カーエアコンの運転状態を低消費状態に切替えるのに連動して、パワーウィンドウの開閉を行うように構成してもよい。
【0021】
例えば、カーエアコンの運転状態を低消費状態にしている状況において、パワーウィンドウの開閉により車室内の快適な空気条件が保たれる期間がどのように変化するかついては、車室内の空気条件と、車外の気象条件と、車室内の快適条件との対比によって予測できると考えられる。
【0022】
その結果、閉鎖しているパワーウィンドウを開放して外気を積極的に車室内に取入れることで、車室内の快適な空気条件が保たれる期間をより長くできると判断した場合には、カーエアコンの運転状態を低消費状態に切替えるのに連動してパワーウィンドウを開放する制御を行うことが考えられる。反対に、開放しているパワーウィンドウを閉鎖して外気の流入を防ぐことで、車室内の快適な空気条件が保たれる期間をより長くできる判断した場合には、カーエアコンの運転状態を低消費状態に切替えるのに連動してパワーウィンドウを閉鎖する制御を行うことが考えられる。
【0023】
このように、カーエアコンの運転状態を低消費状態に切替えるのに連動してパワーウィンドウの開閉制御を行うことで、車室内の快適な空気条件を一層効果的に維持しつつ、省エネルギを達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態のエアコン制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】快適情報入力処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】メイン処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】快適情報の一例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではなく様々な態様にて実施することが可能である。
[エアコン制御システムの概略構成]
実施形態のエアコン制御システムの概略構成について、図1を参照しながら説明する。
【0026】
実施形態のエアコン制御システムは、車両に搭載される電子制御装置(Electronic Control Unit)であるECU10(本発明のエアコン制御装置に相当)と、このECU10に接続される車載機器・装備類20、ナビゲーション装置21、車内湿度センサ22、車外湿度センサ23、車内気温センサ24、外気温センサ25、日射量センサ26、降水センサ27、車両情報入力部28、バッテリセンサ29、操作部30、音声出力部31、表示部32とから構成される。
【0027】
ECU10は、CPU,ROM,RAM,I/O等を備えた周知の情報処理装置(例えば、マイクロコンピュータ)を中心に構成された電子制御装置であり、実施形態のエアコン制御システムの各部を統括制御する。なお、このECU10は、機能的構成として、ROM等に記録されたプログラムに沿ってカーエアコン等の機器を制御するための各種演算を行う演算部11、及び車内の快適な空気条件に関する情報である快適条件マップ(詳細は後述する)等の各種情報を記憶するメモリ等からなる記憶部12を備える。
【0028】
車載機器・装備類20は、ECU10による運転制御の対象となる車載機器・装備類である。本エアコン制御システムは、カーエアコンをECU10による主な運転制御の対象としている。その他、カーエアコンの制御と連動してECU10が制御を行うものとして、車載ナビゲーション装置や、車載音響映像機器、室内灯、電動シート、パワーウィンドウ(ルーフを含む)等といった車両を走行させるための運転操作には直接関係しない快適性や居住性、利便性に関する車載電気機器を想定している。
【0029】
ナビゲーション装置21は、GPS等で用いられる測位衛星からの測位信号や、距離センサ、ジャイロスコープからの検出信号等を元に自車両の位置を検出すると共に、地図記憶媒体に格納された地図データに基づいて、指定された目的地までの経路案内を行う周知のカーナビゲーションシステムである。このナビゲーション装置21は、自車両が現在地から目的地に到着するまでに要する時間の予測値である予測所要時間を算出し、それをECU10に通知する。具体的には、地図データに基づいて現在地から目的地までの最適経路を探索し、その最適経路に沿って走行した場合の予測所要時間を算出する。また、現在地から目的地までの道程及び移動速度に加え、経路上の交通規制や渋滞状況等を加味することで予測所要時間を精度よく算出できる。
【0030】
車内湿度センサ22は、車室内の現在の湿度(相対湿度)を測定し、その測定結果をECU10に入力する湿度センサである。車外湿度センサ23は、車両付近における外気の現在の湿度(相対湿度)を測定し、その測定結果をECU10に入力する湿度センサである。車内気温センサ24は、車室内の現在の空気の温度を測定し、その測定結果をECU10に入力する気温センサである。外気温センサ25は、車両付近における外気の現在の温度を測定し、その測定結果をECU10に入力する気温センサである。日射量センサ26は、車両に照り付ける日射量を測定し、その測定結果をECU10に入力する車載用の日射量センサである。降水センサ27は、車両付近における降水(雨や雪等)の有無や量を測定し、その測定結果をECU10に入力する車載用の降水センサである。
【0031】
車両情報入力部28は、車室内の容積や、車体や内装の材質、車室周りの断熱構造の有無等、車室内の保温性能の高低度合を評価するための構造に関する情報をECU10に入力する入力装置である。バッテリセンサ29は、車載蓄電池(バッテリ)における現在の残り蓄電量を測定し、その測定結果をECU10に入力する車載用のバッテリセンサである。
【0032】
操作部30は、メカニカルなキースイッチや表示部32の表示面上に一体に設置されるタッチパネル等で構成された操作入力用のユーザインタフェースである。この操作部30は、所定のタイミングでカーエアコンの運転状態を低消費状態に切替える制御を行う省エネモードのオン・オフを切替えるための切替スイッチや、カーエアコンの運転状態を切替える事前の問合せに対して応答するためのスイッチ等を備える。
【0033】
音声出力部31は、ECU10からの音声信号の入力に応じて、車両の乗員に対して音声で各種情報を報知する出力装置である。表示部32は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示面を有する表示装置であり、ECU10からの映像信号の入力に応じて、各種画像を表示する。
【0034】
[快適情報入力処理の説明]
つぎに、ECU10の演算部11がプログラムに従って実行する快適情報入力処理の手順について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。この処理は、後述するメイン処理が行われる事前の設定段階で実行される処理である。
【0035】
ECU10の演算部11は、まず、外部から快適情報の入力を受付ける(S101)。ここでいう快適情報とは、車室内の快適な空気条件を定義付ける車室内の温度や湿度の条件を示す情報である。また、快適情報の入力は、例えば、ECU10に入力するための快適情報を記憶した外部記憶装置をECU10に接続し、そこから快適情報を読み込んでもよいし、操作部30を通じて手動で快適情報をECU10に直接入力するような構成でもよい。演算部11は、快適情報の入力を受付けると、その情報を快適条件マップとしてECU10の記憶部12に記録し(S102)、本処理を終了する。
【0036】
ここで、快適条件マップの具体的内容について、図4を参照しながら説明する。快適条件マップは、図4に示すように、車室内が快適となる条件と不快となる条件とを、車室内の温度と湿度との2つのパラメータの相関関係により定義したものである。図4に示す事例では、横軸を車室内の温度、縦軸を車室内の湿度とし、乗員が不快と感じない温度及び湿度の空気条件を斜線部で示す快適領域と定義する。そして、この快適領域以外の温度及び湿度の空気条件を、不快領域と定義する。この快適条件マップに基づいて、車室内の温度及び湿度が快適領域内に入っている状態を、車室内が快適な状態にあると判断し、快適領域外の不快領域に入っている状態を、車室内が快適な状態にあると判断する。
【0037】
なお、本実施形態では、車室内の温度と湿度との相関関係によって車室内の快適な空気条件を定義する構成を採用しているが、温度や湿度以外に気流等のパラメータを用いた快適条件マップを採用してもよい。また、温度又は湿度の何れか1のパラメータのみで車室内の快適な空気条件を定義する簡単な構成を採用することもできる。
【0038】
[メイン処理の説明]
つぎに、ECU10の演算部11がプログラムに従って実行するメイン処理の手順について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。この処理は、車両の走行中において、ナビゲーション装置21において目的地が設定されており、かつカーエアコンが作動している状況において実行される処理である。
【0039】
ECU10の演算部11は、まず、バッテリセンサ29による測定結果から、バッテリの残り蓄電量が規定量以下(残量少)になっているか否かを判定する(S201)。バッテリの残り蓄電量が規定量を超えている場合(S201:NO)、S202の処理に進み、バッテリの残り蓄電量が規定量以下になっている場合(S201:YES)、S203の処理に進む。
【0040】
バッテリの残り蓄電量が規定量を超えている場合に進むS202では、操作部30における設定操作により省エネモードがオン設定になっているか否かを判定する。省エネモードがオン設定になっている場合(S202:YES)、S203の処理に進む。一方、省エネモードがオフ設定になっている場合(S202:NO)、S211の処理に進み、カーエアコンやその他の快適機器の運転状態の切替えを行わず、本処理を終了する。
【0041】
一方、S201又はS202で肯定判定をした場合に進むS203では、各種センサ類を通じて車両内外における現在の気象条件等に関する現状情報を取得する。ここで取得する現状情報は、車内湿度センサ22により測定された車室内の湿度、車外湿度センサ23により測定された車外の湿度、車内気温センサ24により測定された車室内の温度、外気温センサ25により測定された車外の気温、日射量センサ26により測定された日射量、降水センサ27により測定された降水の有無や量、及び、車両情報入力部から入力される車室内の容積や材質、断熱構造の有無等のパラメータである。なお、本実施形態では、現状情報として車内外の温度、湿度、日射、降水、保温性に関する情報等を取得する構成を採用しているが、他にも気流等の情報を取得するようにしてもよい。あるいは、車内外の温度や湿度、日射、降水の少なくとも何れかを現状情報として取得する簡単な構成を採用することもできる。
【0042】
つぎに、S204では、快適情報として記憶部12に記憶されている快適条件マップ(図4参照)を取得する。そして、S205では、S203で取得した現状情報とS204で取得した快適情報とを対比する演算により、車室内が快適な空気条件に保たれる範囲内でカーエアコンの機能を停止状態に切替えることができると予想される許容時間を算出する。具体的には、現状の車室内の温度及び湿度の空気条件を快適条件マップに照らし合わせると共に、車室内外の温度差及び湿度差や、日射量の大小、降水の有無等の外的要因、及び車室内の容積や材質、断熱構造の有無等の車室内の保温性能に関するパラメータに基づき、カーエアコンを停止状態にした条件下における車内温度及び湿度の時間経過に対する変化率の推定値を算出する。そして、その推定した車内温度及び湿度の変化率から、カーエアコンを停止状態にした条件下で車内温度及び湿度が快適条件マップで示される快適領域から逸脱するまでにかかる時間を算出する。その算出した時間が許容時間となる。
【0043】
なお、ここでは、カーエアコンの機能を停止状態に切替えることができる許容時間の算出と併せて、カーエアコンを停止時状態にする期間中におけるパワーウィンドウ(ルーフ含む)を開閉する要否を判断するように構成してもよい。具体的には、カーエアコンを停止状態にしている状況において、パワーウィンドウの開閉により車室内の快適な空気条件が保たれる期間がどのように変化するかを、S203で取得した現状情報とS204で取得した快適情報とに基づいて予測する。
【0044】
その結果、閉鎖しているパワーウィンドウを開放して外気を積極的に車室内に取入れることで、車室内の快適な空気条件が保たれる期間をより長くできると判断した場合には、パワーウィンドウの開放を要すると判断する。反対に、開放しているパワーウィンドウを閉鎖して外気の流入を防ぐことで、車室内の快適な空気条件が保たれる期間をより長くできる判断した場合には、パワーウィンドウの閉鎖を要すると判断する。また、パワーウィンドウを現状のままにしておくことで車室内の快適な空気条件が保たれる期間をより長くできると判断した場合には、開閉不要と判断する。
【0045】
つぎに、S206では、ナビゲーション装置21で算出された目的地までの予測所要時間を取得する。そして、S205で算出した許容時間と、S206で取得した予測所要時間とを比較し、予測所要時間が許容時間以下になったか否かを判定する(S207)。目的地までの予測所要時間が許容時間を超えている場合(S207:NO)、このS207の判断を繰返し行い、予測所要時間が許容時間以下になった場合(S207:YES)、S208の処理に進む。
【0046】
目的地までの予測所要時間が許容時間以下になった場合に進むS208では、カーエアコンの機能を停止時様態に切替えることの許否を問合わせる旨のメッセージを、音声出力部31及び表示部32を通じて車両の乗員に対して通知する。そして、メッセージの通知後から一定時間が経過するまでに、操作部30を通じて乗員から機能停止をキャンセルする操作入力がされたか否かを判定する(S209)。
【0047】
メッセージの通知後から一定時間が経過するまで機能停止をキャンセルする操作入力がなされなかった場合(S209:NO)、カーエアコンを運転状態から停止状態に切替える(S210)。また、カーエアコンを停止状態に切替えるのに連動して、ECU10と接続している車載機器・装備類20(例えば、車載音響映像機器、室内灯、電動シート等といった快適性や居住性、利便性に関する車載電気機器)を停止状態に切替えるようにしてもよい。さらに、ナビゲーション装置21においては、目的地付近における案内が不要であるとのユーザ設定が有効になっていることを条件に、カーエアコンを停止状態に切替えるのに連動して、GPS受信機を1chのみ残して他の機能を停止状態にしてもよい。さらに、S205においてパワーウィンドウの開閉を要すると判断している場合には、カーエアコンを停止状態に切替えるのに連動して、パワーウィンドウを制御して窓やルーフの開閉を行う。
【0048】
一方、問合せメッセージの通知後から一定時間が経過する前に機能切替実施をキャンセルする操作入力がなされた場合(S209:YES)、S211の処理に進み、カーエアコンやその他の快適機器の運転状態の切替えを行わず、本処理を終了する。
【0049】
[効果]
上述した実施形態のエアコン制御システムによれば、以下のような効果を奏する。
(1)自車両が目的地へ到着するまでの予測所要時間が、車室内の快適な空気条件を保つことが可能な範囲内でカーエアコンを停止状態に切替えることを許容する許容時間以下になったことを条件に、カーエアコンの機能を停止状態に切替えることができる。このようにすることで、カーエアコンを停止状態に切替えてから、車内の空気を快適な状態を保ったままで目的地に到着できるようになり、乗員が不快に感じることを回避できる。
【0050】
(2)カーエアコンを停止状態に切替えることを許容する許容時間は、車室内における現状の温度及び湿度の空気条件と、車外における現状の温度、湿度、日照、降水等の気象条件を考慮して算出することができる。このように、車内の快適性に影響する外的要因を考慮してカーエアコンの運転状態の切替を行うことで、乗員の快適性を維持しつつも、省エネルギを達成できる。
【0051】
(3)カーエアコンを停止状態に切替えるのに連動して、ナビゲーション装置や、車載音響映像機器、室内灯、電動シート等といった他の快適機器も一緒に停止状態に切替えることで、より一層の省エネルギを達成できる。
【0052】
(4)快適情報及び現状情報に基づいてパワーウィンドウの開閉の要否を判断し、その判断結果に基づいて、カーエアコンを停止状態に切替えるのに連動してパワーウィンドウの開閉制御を行うことができる。これにより、車室内の快適な空気条件を一層効果的に維持しつつ、省エネルギを達成できる。
【0053】
[特許請求の範囲に記載の構成との対応]
実施形態のエアコン制御システムの構成と、特許請求の範囲に記載の構成との対応は次のとおりである。ECU10の演算部11が記憶部12から快適条件マップを取得する機能が、快適情報取得手段に相当する。ECU10の演算部11が各センサ類22〜27から各測定情報を取得する機能が、現状情報取得手段に相当する。ECU10の演算部11が、許容時間算出手段、運転制御手段及び開閉判断手段に相当する。ECU10の演算部11がナビゲーション装置21から予測所要時間を取得する機能が、予測所要時間取得手段に相当する。ECU10の演算部11が車両情報入力部28から各種パラメータを取得する機能が、保温パラメータ取得手段に相当する。ECU10の演算部11がバッテリセンサ29による測定結果に基づいて残り蓄電量を判断する機能が、電池残量判断手段に相当する。ECU10の演算部11が操作部30を通じて各種操作入力を受付ける機能が、設定手段及び回答受付手段に相当する。また、ECU10の演算部11が音声出力部31や表示部32を通じて乗員に情報を報知する機能が、問合せ手段に相当する。
【符号の説明】
【0054】
10…ECU、11…演算部、12…記憶部、20…車載機器・装備類、21…ナビゲーション装置、22…車内湿度センサ、23…車外湿度センサ、24…車内気温センサ、25…外気温センサ、26…日射量センサ、27…降水センサ、28…車両情報入力部、29…バッテリセンサ、30…操作部、31…音声出力部、32…表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーエアコンの運転制御を行うエアコン制御装置であって、
車室内の快適な空気条件に関する快適情報を取得する快適情報取得手段と、
車室内における現状の空気条件及び車外における現状の気象条件に関する現状情報を取得する現状情報取得手段と、
前記快適情報取得手段により取得した快適情報と、前記現状情報取得手段により取得した現状情報とを対比する所定の演算により、車室内の快適な空気条件を保つことが可能な範囲内で前記カーエアコンの運転状態を所定の低消費状態に切替えることを許容する期間である許容時間を算出する許容時間算出手段と、
自車両が現在地から目的地に到達するまでの予測所要時間を取得する予測所要時間取得手段と、
前記予測所要時間取得手段により取得した予測所要時間と、前記許容時間算出手段により算出した許容時間とを比較し、前記予測所要時間が前記許容時間以下となったことを条件に、前記カーエアコンの運転状態を前記低消費状態に切替える運転制御手段とを備えること
を特徴とするエアコン制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアコン制御装置において、
前記快適情報取得手段が取得する快適情報は、前記快適な空気条件として車室内の温度又は湿度の少なくとも何れかに関する条件を含む情報であり、
前記現状情報取得手段が取得する現状情報は、車室内における現状の空気条件として車室内の温度又は湿度の少なくとも何れかに関する条件を含み、車外における現状の気象条件として車外の気温、湿度、日射量又は降水の有無の少なくとも何れかに関する条件を含む情報であること
を特徴とするエアコン制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエアコン制御装置において、
車室内の保温性能に関するパラメータを取得する保温パラメータ取得手段を更に備え、
前記許容時間算出手段は、前記保温パラメータ取得手段により取得したパラメータに基づく車室内の温度変化のしやすさの度合を算入して前記許容時間を算出すること
を特徴とするエアコン制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のエアコン制御装置において、
車載蓄電池の電池残量が規定量以下であるか否かを判断する電池残量判断手段を更に備え、
前記運転制御手段は、前記電池残量判断手段により電池残量が規定量以下と判断されたことを条件に、前記予測所要時間が前記許容時間以下のときに前記カーエアコンの運転状態を前記低消費状態に切替えること
を特徴とするエアコン制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のエアコン制御装置において、
前記カーエアコンの運転状態を低消費状態に切替えることの可否に関する設定を乗員から受付ける設定手段を更に備え、
前記運転制御手段は、前記設定手段により予め受付けておいた設定内容を判断して切替可能であると判断したことを条件に、前記予測所要時間が前記許容時間以下のときに前記カーエアコンの運転状態を前記低消費状態に切替えること
を特徴とするエアコン制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載のエアコン制御装置において、
前記運転制御手段が前記カーエアコンの運転状態を前記低消費状態に切替えるための条件が成立しているときに、その切替を行う事前に乗員に対して切替の許否を問合わせる問合せ手段と、
前記問合せ手段による問合せに対する乗員からの意向を受付ける回答受付手段とを更に備え、
前記運転制御手段は、前記回答受付手段により乗員から切替を許可する意向を受付けたことを条件に、前記カーエアコンの運転状態を前記低消費状態に切替えること
を特徴とするエアコン制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載のエアコン制御装置において、
前記運転制御手段は、前記カーエアコンの運転状態を前記低消費状態に切替えるのに連動して、自車両に搭載されている他の所定の快適機器を停止状態に切替えること
を特徴とするエアコン制御装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載のエアコン制御装置において、
前記快適情報取得手段により取得した快適情報と、前記現状情報取得手段により取得した現状情報とを対比する所定の演算に基づいて、前記カーエアコンを前記低消費状態で運転する期間中におけるパワーウィンドウの開閉制御の要否を判断する開閉判断手段を更に備え、
前記運転制御手段は、前記開閉判断手段による判断結果に応じて、前記カーエアコンの運転状態を前記低消費状態に切替えるのに連動して、パワーウィンドウの開閉を行うこと
を特徴とするエアコン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−18361(P2013−18361A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153104(P2011−153104)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】