エアシリンダ
【課題】空気配管の数をできる限り少なくし、その取り回しを簡素化することができるエアシリンダを提供する。
【解決手段】エアシリンダA1は、シリンダ本体1と、シリンダ本体1内において往復運動可能なピストン2と、ピストン2に一体化され、シリンダ本体1内から外部に突き出されたロッド3と、シリンダ本体1内においてピストン1により仕切られる第1気室R1および第2気室R2と、第1気室R1の空気を吸気するための吸気ポート4と、第2気室R2の空気を出し入れ可能とするための通気孔5と、通気孔5から外部への塵埃放出を防ぐための塵埃放出防止手段と、シリンダ本体1内に設けられ、ピストン2に弾性力を付与するバネ7とを備えている。
【解決手段】エアシリンダA1は、シリンダ本体1と、シリンダ本体1内において往復運動可能なピストン2と、ピストン2に一体化され、シリンダ本体1内から外部に突き出されたロッド3と、シリンダ本体1内においてピストン1により仕切られる第1気室R1および第2気室R2と、第1気室R1の空気を吸気するための吸気ポート4と、第2気室R2の空気を出し入れ可能とするための通気孔5と、通気孔5から外部への塵埃放出を防ぐための塵埃放出防止手段と、シリンダ本体1内に設けられ、ピストン2に弾性力を付与するバネ7とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばウェハや液晶パネルの搬送装置に用いられるエアシリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
図11に一例として示すように、搬送装置としては、複数のリンクアーム100やベース部材200を連結部Cで鉛直軸周りに回転させることにより、搬送物を保持するハンド300を水平移動や回転させるように構成されたものがある。このような搬送装置のハンド300には、図12に示すように、たとえば円形の搬送物となるウェハWの周部をその側方から押さえるためのエッジクランプ機構400が設けられている。このようなエッジクランプ機構400は、エアシリンダXによって動作させられる。このエアシリンダXは、搬送装置の設置場所となるクリーンルーム内において作動させられるため、塵埃を放出しないことが要求される。
【0003】
この種の搬送装置に適用可能な従来のエアシリンダとしては、たとえば特許文献1に開示されたものがある。同文献のエアシリンダは、空気圧によって動作させるための2つの給排気ポートと、塵埃を集めて外部に廃棄するための廃塵ポートとを備えている。2つの給排気ポートには、交互に圧縮空気が供給され、これによりシリンダロッドが往復運動する。廃塵ポートによれば、空気の吸引流によって塵埃が外部へと送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3034293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のエアシリンダでは、図11および図12に示すような搬送装置のハンド300に設ける場合、空気配管が少なくとも3系統必要になる。1つの空気配管については、搬送装置の連結部Cにたとえばロータリジョイントを介することで上部のハンド300までの経路を確保することができる一方、他の空気配管については、連結部を迂回するような別の経路を導入しなければならない。これでは、連結部Cを迂回する空気配管の取り回しが複雑になり、リンクアーム100やベース部材200を大きく回転させることができず、ひいては搬送装置において必要とされる所要の搬送距離をかせぐことができないおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、空気配管の数をできる限り少なくし、その取り回しを簡素化することができるエアシリンダを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供されるエアシリンダは、シリンダ本体と、上記シリンダ本体内において往復運動可能なピストンと、上記ピストンに一体化され、上記シリンダ本体内から外部に突き出されたロッドと、上記シリンダ本体内において上記ピストンにより仕切られる第1気室および第2気室と、上記第1気室の空気を吸気するための吸気ポートと、上記第2気室の空気を出し入れ可能とするための通気孔と、上記通気孔から外部への塵埃放出を防ぐための塵埃放出防止手段と、上記シリンダ本体内に設けられ、上記ピストンに弾性力を付与するバネと、を備えていることを特徴としている。
【0009】
好ましい実施の形態においては、上記塵埃放出防止手段としては、HEPAフィルタあるいはULPAフィルタが上記通気孔に設けられている。
【0010】
好ましい実施の形態においては、上記塵埃放出防止手段としては、外部と遮断された可変容積室をもつベローズチャンバが上記通気孔を介して上記第2気室と連通するように設けられている。
【0011】
好ましい実施の形態においては、上記シリンダ本体内には、潤滑剤が含まれ、上記第2気室には、上記通気孔へと向かう上記潤滑剤の流出を阻止するための潤滑剤流出阻止手段が設けられている。
【0012】
好ましい実施の形態においては、上記潤滑剤流出阻止手段は、油返し部である。
【0013】
好ましい実施の形態においては、上記潤滑剤流出阻止手段は、上記シリンダ本体の内周壁に形成された突出部である。
【0014】
好ましい実施の形態においては、上記第2気室と上記通気孔との間には、ラビリンス状の通気路が設けられている。
【0015】
このような構成によれば、1つの吸気ポートを利用するだけで空気の吸気とバネの弾性力によってピストンを動作させることができ、その動作時には、シリンダ本体と外部との間で通気孔により塵埃放出を防ぎつつ空気の出し入れを行うことができる。これにより、1つの吸気ポートに1つの空気配管を接続するだけでよいので、空気配管の数を最小限とし、その取り回しを簡素化することができる。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用されたエアシリンダの一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示すエアシリンダの動作を説明するための断面図である。
【図3】本発明が適用されたエアシリンダの他の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明が適用されたエアシリンダの他の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明が適用されたエアシリンダの他の実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明が適用されたエアシリンダの他の実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明が適用されたエアシリンダの他の実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明が適用されたエアシリンダの他の実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明が適用されたエアシリンダの他の実施形態を示す断面図である。
【図10】本発明が適用されたエアシリンダの他の実施形態を示す断面図である。
【図11】搬送装置の斜視図である。
【図12】図11に示す搬送装置に適用されたハンドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
図1および図2は、本発明が適用されたエアシリンダの一実施形態を示している。本実施形態のエアシリンダA1は、たとえば図11および図12に示すような搬送装置のハンド300に備えられるものであり、エッジクランプ機構400を動作させるためのアクチュエータとして用いられる。エアシリンダA1は、シリンダ本体1、ピストン2、ロッド3、吸気ポート4、通気孔5、塵埃放出防止手段としてのエアフィルタ6、およびバネ7を備えている。シリンダ本体1内には、ピストン2により仕切られた第1気室R1および第2気室R2が存在する。
【0020】
シリンダ本体1は、筒状ケース10の開口をロッドカバー11と底蓋12で封止して構成されている。ロッドカバー11には、軸シール11Aを介してロッド3を外部に突き出すための軸孔(符号省略)が形成されている。底蓋12には、第2気室R2に通じる通気孔5が形成されている。特に図示しないが、シリンダ本体1内には、筒状ケース10の内周壁とピストン2との摩擦を低減するための潤滑油が含まれる。
【0021】
筒状ケース10には、第1気室R1に通じる吸気ポート4が設けられている。筒状ケース10の内周壁には、吸気ポート4の開口までピストン2が移動しないようにストッパ10Aが設けられている。第2気室R2には、底蓋12の通気孔5に通じる空気出入り口13が設けられている。この第2気室R2には、空気出入り口13を囲うようにバネ7が配置される。空気出入り口13の周部には、この空気出入り口13に潤滑油ができる限り入り込まないように油返し部14が設けられている。空気出入り口13から通気孔5までの間には、ラビリンス状の通気路15が設けられている。この通気路15は、空気出入り口13に偶然入ってしまった潤滑油の塊が通気孔5へと向かうことがないように空気の流れを規制する。このような空気出入り口13、通気路15、および通気孔5が設けられていることにより、第2気室R2は、外部との間で空気の出し入れが自由に行われる。すなわち、第2気室R2の空気圧は、たとえば大気圧といった外部の空気圧と等しくなる。一方、第1気室R1は、吸気ポート4を介して空気圧が変化させられる。具体的には、第1気室R1内の空気について吸気が行われることにより、第1気室R1の空気圧は、第2気室R2や外部の空気圧より低い負圧となる。
【0022】
ピストン2は、筒状ケース10の内周壁に密接した状態で往復運動可能となるようにシリンダ本体1内に配置されている。筒状ケース10の内周壁とピストン2との隙間はほとんど無い。これにより、第1気室R1および第2気室R2は、ピストン2によって仕切られた互いに異なる空間として存在する。第1気室R1に面するピストン2の一方側には、この第1気室R1から外部へと突き出るようにロッド3が固定されており、第2気室R2に面するピストン2の他方側には、バネ7の一端が固定されている。このようなピストン2は、第1気室R1の空気圧が負圧になると、図2に示すようにバネ7の弾性収縮力に抗してロッドカバー11に近づく方向に動く。第1気室R1の空気圧が第2気室R2の空気圧と同圧になると、ピストン2は、バネ7の弾性収縮力を復元力として底蓋12の方へと引き戻され、図1に示すような元の位置に止まる。
【0023】
ロッド3は、第1気室R1およびロッドカバー11の軸孔を通って外部に突き出るようにピストン2に固定されている。このようなロッド3は、ピストン2と一体になって往復動作させられる。その際、ロッドカバー11の軸孔においては、軸シール11Aを介してロッド3が摺動するため、この軸孔を通じて第1気室R1と外部との間で空気が出入りすることはなく、第1気室R1の気密性が保たれる。ロッド3の先端部3Aは、常に外部に突き出ており、この先端部3Aにエッジクランプ機構400が接続される。これにより、エッジクランプ機構400は、ロッド3の往復動作に伴って所定の動作を行う。
【0024】
吸気ポート4は、第1気室R1の空気を吸気するために設けられている。吸気ポート4には、図示しない空気配管を介してたとえば真空ポンプが接続されている。吸気ポート4を介して第1気室R1の空気が吸気されると、第1気室R1の空気圧が第2気室R2や外部の空気圧に対して負圧になる。これにより、ピストン2およびロッド3は、先述したようにバネ7の弾性収縮力に抗してロッドカバー11に近づく方向に動く(図2参照)。一方、吸気ポート4からの吸気が停止すると、吸気ポート4を通じて第1気室R1に空気が戻され、第1気室R1の空気圧が第2気室R2や外部の空気圧に対して等圧となる。これにより、ピストン2およびロッド3は、図1に示すような元の状態に戻る。このような第1気室R1の吸気とその停止を繰り返し行うことにより、エアシリンダA1は、アクチュエータとして動作する。
【0025】
通気孔5には、エアフィルタ6が設けられている。エアフィルタ6としては、たとえばHEPAフィルタあるいはULPAフィルタが用いられる。このようなエアフィルタ6によれば、シリンダ本体1内における第2気室R2の空気が通気孔5から出る際、油分を含む塵埃が外部に排出されることはなく、第2気室R2と外部との間においては、きれいな空気のみが出入りする。
【0026】
バネ7は、第1気室R1の空気が吸気されると自然状態から伸びた状態になり、ピストン2に対して弾性収縮力を作用させる。第1気室R1における吸気が停止すると、この第1気室R1に空気が戻されることでその空気圧が第2気室R2や外部の空気圧と等しいレベルに徐々に戻り、それに伴いバネ7は、弾性収縮力によってピストン2を引き戻す。
【0027】
次に、エアシリンダA1の動作について説明する。
【0028】
まず、第1気室R1の吸気を行うと、この第1気室R1の負圧による力がバネ7の弾性収縮力よりもピストン2に対して大きく作用する。これにより、ロッド3は、図2に示すように外部へと向かう方向に動く。
【0029】
このとき、ピストン2の移動に伴って第2気室R2の容積が大きくなる。そのため、第2気室R2には、通気孔5を介して外部の空気が引き込まれる。
【0030】
一方、第1気室R1の吸気を停止し、この第1気室R1の空気圧を元に戻すと、ピストン2は、バネ7の弾性収縮力によって図1に示す元の自然状態の位置に戻され、ロッド3は、シリンダ本体1内へと向かう方向に動く。これにより、エアシリンダA1は、吸気ポート4を介した第1気室R1の吸気とその停止を行うだけでロッド3を往復移動させ、アクチュエータとしての動作を実行する。そのため、エアシリンダA1においては、吸気ポート4に1つの空気配管を接続しておくだけでよい。
【0031】
このようなエアシリンダA1において第1気室R1の吸気を停止させたとき、第2気室R2においては、その容積が小さくなるのに伴って空気出入り口13から余分な空気が押し出される。空気出入り口13に進入した空気は、通気路15および通気孔5を通って外部に排出される。
【0032】
その際、第2気室R2においては、空気中に含まれる塵埃だけでなく、筒状ケース10の内周壁やピストン2に付着した潤滑油も、空気出入り口13の方向に空気とともに流動する。そのうちの潤滑油は、油返し部14によってほとんど跳ね返される。そのため、潤滑油が空気出入り口13に入りにくい。仮に、潤滑油の塊が空気出入り口13に偶然入ったとしても、ラビリンス状の通気路15を大きな塵埃が通り抜けにくいため、その塊が通気孔5に直接達することはない。第2気室R2にあった塵埃を含む空気は、空気出入り口13および通気路15を通って通気孔5に達する。通気孔5においては、空気中に含まれる塵埃がエアフィルタ6によって十分に除去される。これにより、エアシリンダA1の動作時には、シリンダ本体1内の潤滑油や塵埃を含む汚れた空気が外部に排出されることはない。
【0033】
したがって、本実施形態のエアシリンダA1によれば、1つの吸気ポート4を利用するだけでピストン2およびロッド3を往復運動させることができ、吸気ポート4に接続する空気配管を1つだけとしてその取り回しを簡素化することができる。
【0034】
エアシリンダA1の動作時においては、シリンダ本体1内と外部との間で通気孔5のエアフィルタ6によって塵埃放出を防ぎながら空気の出し入れを行うことができる。シリンダ本体1内の潤滑油は、油返し部14や通気路15によって通気孔5の方へと流出しにくく、通気孔5に潤滑油が達しても、油分として塵埃とともにエアフィルタ6によって完全に除去される。これにより、極めて高度な空気洗浄度とされるクリーンルームにエアシリンダA1を対応させることができ、搬送装置のエッジクランプ機構400を動作させるアクチュエータとしてエアシリンダA1を適用することができる。
【0035】
油返し部14やラビリンス状の通気路15は、エアフィルタ6に対して潤滑油をできる限り付着させにくい構造であるため、エアフィルタ6の長寿命化を図ることができ、ひいてはエアフィルタ6の交換などといったメンテナンス作業を軽減することができる。また、エアフィルタ6は、底蓋12に形成された通気孔5に取り付けられるため、交換し易いものとなっている。
【0036】
図3〜10は、本発明が適用されたエアシリンダの他の実施形態を示している。なお、先述した実施形態によるものと同一または類似の構成要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0037】
図3に示すエアシリンダA2では、第1気室R1にバネ7を配置している。ストッパ10Aは、ピストン2が吸気ポート4の開口まで移動しないようにするためのものであり、このストッパ10Aにバネ7が係止されている。このバネ7は、第1気室R1の吸気によってピストン2がロッドカバー11の方向に動くと、自然状態から収縮した状態になり、ピストン2に対して弾性付勢力を作用させる。第1気室R1における吸気が停止してその空気圧が外部の空気圧と等しいレベルになると、それに伴いバネ7は、弾性付勢力によってピストン2を元の位置に押し戻す。このようなエアシリンダA2も、先述した実施形態によるものと同様にアクチュエータとしての動作が可能であり、第2気室R2と外部との間では、塵埃や油分の外部放出を防ぎながら空気の出し入れが行われる。そのため、エアシリンダA2によっても、先述した実施形態によるものと同様の効果を得ることができる。
【0038】
図4に示すエアシリンダA3では、空気出入り口13と通気孔5との間にラビリンス状の通気路が設けられていない。このようなエアシリンダA3では、空気出入り口13を通って通気孔5へと直接向かう潤滑油の流出がある程度生じるものの、そのような潤滑油もエアフィルタ6によって空気から除去される。そのため、エアシリンダA3によっても、第2気室R2と外部との間で塵埃や油分の外部放出を防ぎながら空気の出し入れを行うことができ、先述した実施形態によるものと同様の効果を得ることができる。さらには、通気路を設けない分だけエアシリンダA3の構造を簡素化することができるとともに、小型化することができる。
【0039】
図5に示すエアシリンダA4では、空気出入り口13の周部に油返し部が設けられていない代わりに、筒状ケース10の内周壁(シリンダ本体1の内周壁)に突出部10Bが設けられている。そして、この突出部10Bにバネ7が係止されている。この突出部10Bは、油返し部と形状は異なるが、空気出入り口13に対して潤滑油を入り難くする効果がある。また、突出部10Bは、ストッパ10Aと同様に内部に突出するだけの形状であるため、油返し部よりも構造が簡素であり、安価に製作することができる。このようなエアシリンダA4では、油返し部を設けた場合よりも、空気出入り口13に対して潤滑油が入りやすいと考えられるため、潤滑油が多い場合には適さない可能性が高いが、潤滑油が少ない場合には、油返し部の代わりに用いることができる。そして、エアシリンダA4の場合においても、ラビリンス状の通気路15によって通気孔5まで達しにくく、仮に達してもエアフィルタ6によって空気から除去される。そのため、エアシリンダA4によっても、第2気室R2と外部との間で塵埃や油分の外部放出を防ぎながら空気の出し入れを行うことができ、油返し部を設けないことで構造を簡素化しつつも、先述した実施形態によるものと同様の効果を得ることができる。
【0040】
図6に示すエアシリンダA5では、底蓋12とピストン2で囲まれた空間が第1気室R1であり、ロッドカバー11とピストン2で囲まれた空間が第2気室R2になっている。第2気室R2には、油返し部14を取り付けるための突出部10Bが筒状ケース10の内周壁に形成されており、この突出部10Bよりもロッドカバー11に近い部分に副室R2’が形成されている。この副室R2’を形成するシリンダ本体1の適部には、エアフィルタ6とともに通気孔5が設けられている。このようなエアシリンダA5では、第1気室R1の吸気が行われると、ピストン2が底蓋12の方向に動く。その際、バネ7は、自然状態から伸びた状態になり、ピストン2に対して弾性収縮力を作用させる。第1気室R1における吸気が停止してその空気圧が外部の空気圧と等しいレベルになると、それに伴いバネ7は、弾性収縮力によってピストン2を元の位置に引き戻す。このとき、副室R2’を含む第2気室R2の空気は、エアフィルタ6を通って通気孔5から排出される。このようなエアシリンダA5も、先述した実施形態によるものと同様にアクチュエータとしての動作が可能であり、第2気室R2と外部との間では、通気孔5のエアフィルタ6を介して塵埃や油分の外部放出を防ぎながら空気の出し入れが行われる。そのため、エアシリンダA5によっても、先述した実施形態によるものと同様の効果を得ることができる。
【0041】
図7に示すエアシリンダA6は、先述の図6に示すエアシリンダA5に対して油返し部が設けられていない点が異なるだけである。このエアシリンダA6では、油返し部が設けられていないが、筒状ケース10の内周壁(シリンダ本体1の内周壁)に突出部10Bが形成されている。バネ7は、突出部10Bに係止されている。この突出部10Bは、図5に示すエアシリンダA4と同様に、空気出入り口13に対して潤滑油を入り難くする効果がある。このようなエアシリンダA6によれば、先述した実施形態によるものと同様の効果を得ることができるほか、構造を簡素化することができる。
【0042】
図8に示すエアシリンダA7では、第2気室R2において空気出入り口13や油返し部14、バネ7が配置された空間と副室R2’との間にラビリンス状の通気路15が設けられている。このようなエアシリンダA8によっても、通気路15やエアフィルタ6によって塵埃や油分の外部放出を効果的に防ぎながら先述した実施形態によるものと同様の効果を得ることができる。
【0043】
図9に示すエアシリンダA8は、図9に示すエアシリンダA8は、先述の図8に示すエアシリンダA7に対し、油返し部を設けない代わりに筒状ケース10の内周壁(シリンダ本体1の内周壁)に突出部10Bを形成した点が異なるだけである。この突出部10Bは、図5に示すエアシリンダA4と同様に、空気出入り口13に対して潤滑油を入り難くする効果がある。このようなエアシリンダA8によっても、先述した実施形態によるものと同様の効果を得ることができる。
【0044】
図10に示すエアシリンダA9は、先述の図1および図2に示すエアシリンダA1に対してラビリンス状の通気路とエアフィルタが設けられておらず、通気孔5の外側には、可変容積室80をもつベローズチャンバ8が設けられている。ベローズチャンバ8の可変容積室80は、通気孔5を介して第2気室R2に連通しており、外部とは完全に遮断された空間である。このようなベローズチャンバ8は、第1気室R1の吸気に伴って第2気室R2の容積が大きくなると、通気孔5から第2気室R2へと空気を送り込むように可変容積室80が小さくなる。一方、第2気室R2の容積が小さくなると、通気孔5から押し出された空気が可変容積室80に流れ込み、この可変容積室80が大きくなる。つまり、エアシリンダA9の動作時には、ベローズチャンバ8の可変容積室80と第2気室R2との間で通気孔5を介して空気の出し入れが行われ、その空気に含まれる塵埃や油分は、ベローズチャンバ8の可変容積室80内に溜まるだけで外部に放出されることはない。そのため、エアシリンダA9によれば、通気孔5にエアフィルタを設けなくても、塵埃や油分の外部放出を防ぎつつ第2気室R2の空気の出し入れを行いながらアクチュエータとしての動作を行うことができ、先述した実施形態によるものと同様の効果を得ることができる。
【0045】
なお、ベローズチャンバ8を用いたエアシリンダA9においても、ラビリンス状の通気路を設けたり、油返し部14の代わりに筒状ケース10の内周壁(シリンダ本体1の内周壁)に突出部を形成することができる。また、図3に示したエアシリンダA2のように、バネ7を第1気室R1側に配置することも可能である。
【0046】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0047】
上記実施形態で示した構成は、あくまでも一例にすぎず、仕様に応じて適宜設計変更することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
A1〜A9 エアシリンダ
R1 第1気室
R2 第2気室
1 シリンダ本体
10B 突出部(潤滑剤流出阻止手段)
14 油返し部(潤滑剤流出阻止手段)
15 通気路
2 ピストン
3 ロッド
4 吸気ポート
5 通気孔
6 エアフィルタ(塵埃放出防止手段)
7 バネ
8 ベローズチャンバ(塵埃放出防止手段)
80 可変容積室
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばウェハや液晶パネルの搬送装置に用いられるエアシリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
図11に一例として示すように、搬送装置としては、複数のリンクアーム100やベース部材200を連結部Cで鉛直軸周りに回転させることにより、搬送物を保持するハンド300を水平移動や回転させるように構成されたものがある。このような搬送装置のハンド300には、図12に示すように、たとえば円形の搬送物となるウェハWの周部をその側方から押さえるためのエッジクランプ機構400が設けられている。このようなエッジクランプ機構400は、エアシリンダXによって動作させられる。このエアシリンダXは、搬送装置の設置場所となるクリーンルーム内において作動させられるため、塵埃を放出しないことが要求される。
【0003】
この種の搬送装置に適用可能な従来のエアシリンダとしては、たとえば特許文献1に開示されたものがある。同文献のエアシリンダは、空気圧によって動作させるための2つの給排気ポートと、塵埃を集めて外部に廃棄するための廃塵ポートとを備えている。2つの給排気ポートには、交互に圧縮空気が供給され、これによりシリンダロッドが往復運動する。廃塵ポートによれば、空気の吸引流によって塵埃が外部へと送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3034293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のエアシリンダでは、図11および図12に示すような搬送装置のハンド300に設ける場合、空気配管が少なくとも3系統必要になる。1つの空気配管については、搬送装置の連結部Cにたとえばロータリジョイントを介することで上部のハンド300までの経路を確保することができる一方、他の空気配管については、連結部を迂回するような別の経路を導入しなければならない。これでは、連結部Cを迂回する空気配管の取り回しが複雑になり、リンクアーム100やベース部材200を大きく回転させることができず、ひいては搬送装置において必要とされる所要の搬送距離をかせぐことができないおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、空気配管の数をできる限り少なくし、その取り回しを簡素化することができるエアシリンダを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供されるエアシリンダは、シリンダ本体と、上記シリンダ本体内において往復運動可能なピストンと、上記ピストンに一体化され、上記シリンダ本体内から外部に突き出されたロッドと、上記シリンダ本体内において上記ピストンにより仕切られる第1気室および第2気室と、上記第1気室の空気を吸気するための吸気ポートと、上記第2気室の空気を出し入れ可能とするための通気孔と、上記通気孔から外部への塵埃放出を防ぐための塵埃放出防止手段と、上記シリンダ本体内に設けられ、上記ピストンに弾性力を付与するバネと、を備えていることを特徴としている。
【0009】
好ましい実施の形態においては、上記塵埃放出防止手段としては、HEPAフィルタあるいはULPAフィルタが上記通気孔に設けられている。
【0010】
好ましい実施の形態においては、上記塵埃放出防止手段としては、外部と遮断された可変容積室をもつベローズチャンバが上記通気孔を介して上記第2気室と連通するように設けられている。
【0011】
好ましい実施の形態においては、上記シリンダ本体内には、潤滑剤が含まれ、上記第2気室には、上記通気孔へと向かう上記潤滑剤の流出を阻止するための潤滑剤流出阻止手段が設けられている。
【0012】
好ましい実施の形態においては、上記潤滑剤流出阻止手段は、油返し部である。
【0013】
好ましい実施の形態においては、上記潤滑剤流出阻止手段は、上記シリンダ本体の内周壁に形成された突出部である。
【0014】
好ましい実施の形態においては、上記第2気室と上記通気孔との間には、ラビリンス状の通気路が設けられている。
【0015】
このような構成によれば、1つの吸気ポートを利用するだけで空気の吸気とバネの弾性力によってピストンを動作させることができ、その動作時には、シリンダ本体と外部との間で通気孔により塵埃放出を防ぎつつ空気の出し入れを行うことができる。これにより、1つの吸気ポートに1つの空気配管を接続するだけでよいので、空気配管の数を最小限とし、その取り回しを簡素化することができる。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用されたエアシリンダの一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示すエアシリンダの動作を説明するための断面図である。
【図3】本発明が適用されたエアシリンダの他の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明が適用されたエアシリンダの他の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明が適用されたエアシリンダの他の実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明が適用されたエアシリンダの他の実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明が適用されたエアシリンダの他の実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明が適用されたエアシリンダの他の実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明が適用されたエアシリンダの他の実施形態を示す断面図である。
【図10】本発明が適用されたエアシリンダの他の実施形態を示す断面図である。
【図11】搬送装置の斜視図である。
【図12】図11に示す搬送装置に適用されたハンドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
図1および図2は、本発明が適用されたエアシリンダの一実施形態を示している。本実施形態のエアシリンダA1は、たとえば図11および図12に示すような搬送装置のハンド300に備えられるものであり、エッジクランプ機構400を動作させるためのアクチュエータとして用いられる。エアシリンダA1は、シリンダ本体1、ピストン2、ロッド3、吸気ポート4、通気孔5、塵埃放出防止手段としてのエアフィルタ6、およびバネ7を備えている。シリンダ本体1内には、ピストン2により仕切られた第1気室R1および第2気室R2が存在する。
【0020】
シリンダ本体1は、筒状ケース10の開口をロッドカバー11と底蓋12で封止して構成されている。ロッドカバー11には、軸シール11Aを介してロッド3を外部に突き出すための軸孔(符号省略)が形成されている。底蓋12には、第2気室R2に通じる通気孔5が形成されている。特に図示しないが、シリンダ本体1内には、筒状ケース10の内周壁とピストン2との摩擦を低減するための潤滑油が含まれる。
【0021】
筒状ケース10には、第1気室R1に通じる吸気ポート4が設けられている。筒状ケース10の内周壁には、吸気ポート4の開口までピストン2が移動しないようにストッパ10Aが設けられている。第2気室R2には、底蓋12の通気孔5に通じる空気出入り口13が設けられている。この第2気室R2には、空気出入り口13を囲うようにバネ7が配置される。空気出入り口13の周部には、この空気出入り口13に潤滑油ができる限り入り込まないように油返し部14が設けられている。空気出入り口13から通気孔5までの間には、ラビリンス状の通気路15が設けられている。この通気路15は、空気出入り口13に偶然入ってしまった潤滑油の塊が通気孔5へと向かうことがないように空気の流れを規制する。このような空気出入り口13、通気路15、および通気孔5が設けられていることにより、第2気室R2は、外部との間で空気の出し入れが自由に行われる。すなわち、第2気室R2の空気圧は、たとえば大気圧といった外部の空気圧と等しくなる。一方、第1気室R1は、吸気ポート4を介して空気圧が変化させられる。具体的には、第1気室R1内の空気について吸気が行われることにより、第1気室R1の空気圧は、第2気室R2や外部の空気圧より低い負圧となる。
【0022】
ピストン2は、筒状ケース10の内周壁に密接した状態で往復運動可能となるようにシリンダ本体1内に配置されている。筒状ケース10の内周壁とピストン2との隙間はほとんど無い。これにより、第1気室R1および第2気室R2は、ピストン2によって仕切られた互いに異なる空間として存在する。第1気室R1に面するピストン2の一方側には、この第1気室R1から外部へと突き出るようにロッド3が固定されており、第2気室R2に面するピストン2の他方側には、バネ7の一端が固定されている。このようなピストン2は、第1気室R1の空気圧が負圧になると、図2に示すようにバネ7の弾性収縮力に抗してロッドカバー11に近づく方向に動く。第1気室R1の空気圧が第2気室R2の空気圧と同圧になると、ピストン2は、バネ7の弾性収縮力を復元力として底蓋12の方へと引き戻され、図1に示すような元の位置に止まる。
【0023】
ロッド3は、第1気室R1およびロッドカバー11の軸孔を通って外部に突き出るようにピストン2に固定されている。このようなロッド3は、ピストン2と一体になって往復動作させられる。その際、ロッドカバー11の軸孔においては、軸シール11Aを介してロッド3が摺動するため、この軸孔を通じて第1気室R1と外部との間で空気が出入りすることはなく、第1気室R1の気密性が保たれる。ロッド3の先端部3Aは、常に外部に突き出ており、この先端部3Aにエッジクランプ機構400が接続される。これにより、エッジクランプ機構400は、ロッド3の往復動作に伴って所定の動作を行う。
【0024】
吸気ポート4は、第1気室R1の空気を吸気するために設けられている。吸気ポート4には、図示しない空気配管を介してたとえば真空ポンプが接続されている。吸気ポート4を介して第1気室R1の空気が吸気されると、第1気室R1の空気圧が第2気室R2や外部の空気圧に対して負圧になる。これにより、ピストン2およびロッド3は、先述したようにバネ7の弾性収縮力に抗してロッドカバー11に近づく方向に動く(図2参照)。一方、吸気ポート4からの吸気が停止すると、吸気ポート4を通じて第1気室R1に空気が戻され、第1気室R1の空気圧が第2気室R2や外部の空気圧に対して等圧となる。これにより、ピストン2およびロッド3は、図1に示すような元の状態に戻る。このような第1気室R1の吸気とその停止を繰り返し行うことにより、エアシリンダA1は、アクチュエータとして動作する。
【0025】
通気孔5には、エアフィルタ6が設けられている。エアフィルタ6としては、たとえばHEPAフィルタあるいはULPAフィルタが用いられる。このようなエアフィルタ6によれば、シリンダ本体1内における第2気室R2の空気が通気孔5から出る際、油分を含む塵埃が外部に排出されることはなく、第2気室R2と外部との間においては、きれいな空気のみが出入りする。
【0026】
バネ7は、第1気室R1の空気が吸気されると自然状態から伸びた状態になり、ピストン2に対して弾性収縮力を作用させる。第1気室R1における吸気が停止すると、この第1気室R1に空気が戻されることでその空気圧が第2気室R2や外部の空気圧と等しいレベルに徐々に戻り、それに伴いバネ7は、弾性収縮力によってピストン2を引き戻す。
【0027】
次に、エアシリンダA1の動作について説明する。
【0028】
まず、第1気室R1の吸気を行うと、この第1気室R1の負圧による力がバネ7の弾性収縮力よりもピストン2に対して大きく作用する。これにより、ロッド3は、図2に示すように外部へと向かう方向に動く。
【0029】
このとき、ピストン2の移動に伴って第2気室R2の容積が大きくなる。そのため、第2気室R2には、通気孔5を介して外部の空気が引き込まれる。
【0030】
一方、第1気室R1の吸気を停止し、この第1気室R1の空気圧を元に戻すと、ピストン2は、バネ7の弾性収縮力によって図1に示す元の自然状態の位置に戻され、ロッド3は、シリンダ本体1内へと向かう方向に動く。これにより、エアシリンダA1は、吸気ポート4を介した第1気室R1の吸気とその停止を行うだけでロッド3を往復移動させ、アクチュエータとしての動作を実行する。そのため、エアシリンダA1においては、吸気ポート4に1つの空気配管を接続しておくだけでよい。
【0031】
このようなエアシリンダA1において第1気室R1の吸気を停止させたとき、第2気室R2においては、その容積が小さくなるのに伴って空気出入り口13から余分な空気が押し出される。空気出入り口13に進入した空気は、通気路15および通気孔5を通って外部に排出される。
【0032】
その際、第2気室R2においては、空気中に含まれる塵埃だけでなく、筒状ケース10の内周壁やピストン2に付着した潤滑油も、空気出入り口13の方向に空気とともに流動する。そのうちの潤滑油は、油返し部14によってほとんど跳ね返される。そのため、潤滑油が空気出入り口13に入りにくい。仮に、潤滑油の塊が空気出入り口13に偶然入ったとしても、ラビリンス状の通気路15を大きな塵埃が通り抜けにくいため、その塊が通気孔5に直接達することはない。第2気室R2にあった塵埃を含む空気は、空気出入り口13および通気路15を通って通気孔5に達する。通気孔5においては、空気中に含まれる塵埃がエアフィルタ6によって十分に除去される。これにより、エアシリンダA1の動作時には、シリンダ本体1内の潤滑油や塵埃を含む汚れた空気が外部に排出されることはない。
【0033】
したがって、本実施形態のエアシリンダA1によれば、1つの吸気ポート4を利用するだけでピストン2およびロッド3を往復運動させることができ、吸気ポート4に接続する空気配管を1つだけとしてその取り回しを簡素化することができる。
【0034】
エアシリンダA1の動作時においては、シリンダ本体1内と外部との間で通気孔5のエアフィルタ6によって塵埃放出を防ぎながら空気の出し入れを行うことができる。シリンダ本体1内の潤滑油は、油返し部14や通気路15によって通気孔5の方へと流出しにくく、通気孔5に潤滑油が達しても、油分として塵埃とともにエアフィルタ6によって完全に除去される。これにより、極めて高度な空気洗浄度とされるクリーンルームにエアシリンダA1を対応させることができ、搬送装置のエッジクランプ機構400を動作させるアクチュエータとしてエアシリンダA1を適用することができる。
【0035】
油返し部14やラビリンス状の通気路15は、エアフィルタ6に対して潤滑油をできる限り付着させにくい構造であるため、エアフィルタ6の長寿命化を図ることができ、ひいてはエアフィルタ6の交換などといったメンテナンス作業を軽減することができる。また、エアフィルタ6は、底蓋12に形成された通気孔5に取り付けられるため、交換し易いものとなっている。
【0036】
図3〜10は、本発明が適用されたエアシリンダの他の実施形態を示している。なお、先述した実施形態によるものと同一または類似の構成要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0037】
図3に示すエアシリンダA2では、第1気室R1にバネ7を配置している。ストッパ10Aは、ピストン2が吸気ポート4の開口まで移動しないようにするためのものであり、このストッパ10Aにバネ7が係止されている。このバネ7は、第1気室R1の吸気によってピストン2がロッドカバー11の方向に動くと、自然状態から収縮した状態になり、ピストン2に対して弾性付勢力を作用させる。第1気室R1における吸気が停止してその空気圧が外部の空気圧と等しいレベルになると、それに伴いバネ7は、弾性付勢力によってピストン2を元の位置に押し戻す。このようなエアシリンダA2も、先述した実施形態によるものと同様にアクチュエータとしての動作が可能であり、第2気室R2と外部との間では、塵埃や油分の外部放出を防ぎながら空気の出し入れが行われる。そのため、エアシリンダA2によっても、先述した実施形態によるものと同様の効果を得ることができる。
【0038】
図4に示すエアシリンダA3では、空気出入り口13と通気孔5との間にラビリンス状の通気路が設けられていない。このようなエアシリンダA3では、空気出入り口13を通って通気孔5へと直接向かう潤滑油の流出がある程度生じるものの、そのような潤滑油もエアフィルタ6によって空気から除去される。そのため、エアシリンダA3によっても、第2気室R2と外部との間で塵埃や油分の外部放出を防ぎながら空気の出し入れを行うことができ、先述した実施形態によるものと同様の効果を得ることができる。さらには、通気路を設けない分だけエアシリンダA3の構造を簡素化することができるとともに、小型化することができる。
【0039】
図5に示すエアシリンダA4では、空気出入り口13の周部に油返し部が設けられていない代わりに、筒状ケース10の内周壁(シリンダ本体1の内周壁)に突出部10Bが設けられている。そして、この突出部10Bにバネ7が係止されている。この突出部10Bは、油返し部と形状は異なるが、空気出入り口13に対して潤滑油を入り難くする効果がある。また、突出部10Bは、ストッパ10Aと同様に内部に突出するだけの形状であるため、油返し部よりも構造が簡素であり、安価に製作することができる。このようなエアシリンダA4では、油返し部を設けた場合よりも、空気出入り口13に対して潤滑油が入りやすいと考えられるため、潤滑油が多い場合には適さない可能性が高いが、潤滑油が少ない場合には、油返し部の代わりに用いることができる。そして、エアシリンダA4の場合においても、ラビリンス状の通気路15によって通気孔5まで達しにくく、仮に達してもエアフィルタ6によって空気から除去される。そのため、エアシリンダA4によっても、第2気室R2と外部との間で塵埃や油分の外部放出を防ぎながら空気の出し入れを行うことができ、油返し部を設けないことで構造を簡素化しつつも、先述した実施形態によるものと同様の効果を得ることができる。
【0040】
図6に示すエアシリンダA5では、底蓋12とピストン2で囲まれた空間が第1気室R1であり、ロッドカバー11とピストン2で囲まれた空間が第2気室R2になっている。第2気室R2には、油返し部14を取り付けるための突出部10Bが筒状ケース10の内周壁に形成されており、この突出部10Bよりもロッドカバー11に近い部分に副室R2’が形成されている。この副室R2’を形成するシリンダ本体1の適部には、エアフィルタ6とともに通気孔5が設けられている。このようなエアシリンダA5では、第1気室R1の吸気が行われると、ピストン2が底蓋12の方向に動く。その際、バネ7は、自然状態から伸びた状態になり、ピストン2に対して弾性収縮力を作用させる。第1気室R1における吸気が停止してその空気圧が外部の空気圧と等しいレベルになると、それに伴いバネ7は、弾性収縮力によってピストン2を元の位置に引き戻す。このとき、副室R2’を含む第2気室R2の空気は、エアフィルタ6を通って通気孔5から排出される。このようなエアシリンダA5も、先述した実施形態によるものと同様にアクチュエータとしての動作が可能であり、第2気室R2と外部との間では、通気孔5のエアフィルタ6を介して塵埃や油分の外部放出を防ぎながら空気の出し入れが行われる。そのため、エアシリンダA5によっても、先述した実施形態によるものと同様の効果を得ることができる。
【0041】
図7に示すエアシリンダA6は、先述の図6に示すエアシリンダA5に対して油返し部が設けられていない点が異なるだけである。このエアシリンダA6では、油返し部が設けられていないが、筒状ケース10の内周壁(シリンダ本体1の内周壁)に突出部10Bが形成されている。バネ7は、突出部10Bに係止されている。この突出部10Bは、図5に示すエアシリンダA4と同様に、空気出入り口13に対して潤滑油を入り難くする効果がある。このようなエアシリンダA6によれば、先述した実施形態によるものと同様の効果を得ることができるほか、構造を簡素化することができる。
【0042】
図8に示すエアシリンダA7では、第2気室R2において空気出入り口13や油返し部14、バネ7が配置された空間と副室R2’との間にラビリンス状の通気路15が設けられている。このようなエアシリンダA8によっても、通気路15やエアフィルタ6によって塵埃や油分の外部放出を効果的に防ぎながら先述した実施形態によるものと同様の効果を得ることができる。
【0043】
図9に示すエアシリンダA8は、図9に示すエアシリンダA8は、先述の図8に示すエアシリンダA7に対し、油返し部を設けない代わりに筒状ケース10の内周壁(シリンダ本体1の内周壁)に突出部10Bを形成した点が異なるだけである。この突出部10Bは、図5に示すエアシリンダA4と同様に、空気出入り口13に対して潤滑油を入り難くする効果がある。このようなエアシリンダA8によっても、先述した実施形態によるものと同様の効果を得ることができる。
【0044】
図10に示すエアシリンダA9は、先述の図1および図2に示すエアシリンダA1に対してラビリンス状の通気路とエアフィルタが設けられておらず、通気孔5の外側には、可変容積室80をもつベローズチャンバ8が設けられている。ベローズチャンバ8の可変容積室80は、通気孔5を介して第2気室R2に連通しており、外部とは完全に遮断された空間である。このようなベローズチャンバ8は、第1気室R1の吸気に伴って第2気室R2の容積が大きくなると、通気孔5から第2気室R2へと空気を送り込むように可変容積室80が小さくなる。一方、第2気室R2の容積が小さくなると、通気孔5から押し出された空気が可変容積室80に流れ込み、この可変容積室80が大きくなる。つまり、エアシリンダA9の動作時には、ベローズチャンバ8の可変容積室80と第2気室R2との間で通気孔5を介して空気の出し入れが行われ、その空気に含まれる塵埃や油分は、ベローズチャンバ8の可変容積室80内に溜まるだけで外部に放出されることはない。そのため、エアシリンダA9によれば、通気孔5にエアフィルタを設けなくても、塵埃や油分の外部放出を防ぎつつ第2気室R2の空気の出し入れを行いながらアクチュエータとしての動作を行うことができ、先述した実施形態によるものと同様の効果を得ることができる。
【0045】
なお、ベローズチャンバ8を用いたエアシリンダA9においても、ラビリンス状の通気路を設けたり、油返し部14の代わりに筒状ケース10の内周壁(シリンダ本体1の内周壁)に突出部を形成することができる。また、図3に示したエアシリンダA2のように、バネ7を第1気室R1側に配置することも可能である。
【0046】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0047】
上記実施形態で示した構成は、あくまでも一例にすぎず、仕様に応じて適宜設計変更することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
A1〜A9 エアシリンダ
R1 第1気室
R2 第2気室
1 シリンダ本体
10B 突出部(潤滑剤流出阻止手段)
14 油返し部(潤滑剤流出阻止手段)
15 通気路
2 ピストン
3 ロッド
4 吸気ポート
5 通気孔
6 エアフィルタ(塵埃放出防止手段)
7 バネ
8 ベローズチャンバ(塵埃放出防止手段)
80 可変容積室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ本体と、
上記シリンダ本体内において往復運動可能なピストンと、
上記ピストンに一体化され、上記シリンダ本体内から外部に突き出されたロッドと、
上記シリンダ本体内において上記ピストンにより仕切られる第1気室および第2気室と、
上記第1気室の空気を吸気するための吸気ポートと、
上記第2気室の空気を出し入れ可能とするための通気孔と、
上記通気孔から外部への塵埃放出を防ぐための塵埃放出防止手段と、
上記シリンダ本体内に設けられ、上記ピストンに弾性力を付与するバネと、
を備えていることを特徴とする、エアシリンダ。
【請求項2】
上記塵埃放出防止手段としては、HEPAフィルタあるいはULPAフィルタが上記通気孔に設けられている、請求項1に記載のエアシリンダ。
【請求項3】
上記塵埃放出防止手段としては、外部と遮断された可変容積室をもつベローズチャンバが上記通気孔を介して上記第2気室と連通するように設けられている、請求項1に記載のエアシリンダ。
【請求項4】
上記シリンダ本体内には、潤滑剤が含まれ、上記第2気室には、上記通気孔へと向かう上記潤滑剤の流出を阻止するための潤滑剤流出阻止手段が設けられている、請求項1ないし3のいずれかに記載のエアシリンダ。
【請求項5】
上記潤滑剤流出阻止手段は、油返し部である、請求項4に記載のエアシリンダ。
【請求項6】
上記潤滑剤流出阻止手段は、上記シリンダ本体の内周壁に形成された突出部である、請求項4に記載のエアシリンダ。
【請求項7】
上記第2気室と上記通気孔との間には、ラビリンス状の通気路が設けられている、請求項5または6に記載のエアシリンダ。
【請求項1】
シリンダ本体と、
上記シリンダ本体内において往復運動可能なピストンと、
上記ピストンに一体化され、上記シリンダ本体内から外部に突き出されたロッドと、
上記シリンダ本体内において上記ピストンにより仕切られる第1気室および第2気室と、
上記第1気室の空気を吸気するための吸気ポートと、
上記第2気室の空気を出し入れ可能とするための通気孔と、
上記通気孔から外部への塵埃放出を防ぐための塵埃放出防止手段と、
上記シリンダ本体内に設けられ、上記ピストンに弾性力を付与するバネと、
を備えていることを特徴とする、エアシリンダ。
【請求項2】
上記塵埃放出防止手段としては、HEPAフィルタあるいはULPAフィルタが上記通気孔に設けられている、請求項1に記載のエアシリンダ。
【請求項3】
上記塵埃放出防止手段としては、外部と遮断された可変容積室をもつベローズチャンバが上記通気孔を介して上記第2気室と連通するように設けられている、請求項1に記載のエアシリンダ。
【請求項4】
上記シリンダ本体内には、潤滑剤が含まれ、上記第2気室には、上記通気孔へと向かう上記潤滑剤の流出を阻止するための潤滑剤流出阻止手段が設けられている、請求項1ないし3のいずれかに記載のエアシリンダ。
【請求項5】
上記潤滑剤流出阻止手段は、油返し部である、請求項4に記載のエアシリンダ。
【請求項6】
上記潤滑剤流出阻止手段は、上記シリンダ本体の内周壁に形成された突出部である、請求項4に記載のエアシリンダ。
【請求項7】
上記第2気室と上記通気孔との間には、ラビリンス状の通気路が設けられている、請求項5または6に記載のエアシリンダ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−236623(P2010−236623A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85589(P2009−85589)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】
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