説明

エアジェット紡績装置

本発明はエアジェット紡績装置に関し、それは渦室(9)中に開口する繊維導入通路(8)及び渦室(9)から出て行く繊維引出し通路(10)を含む。前記引出し通路はスピンドル形状要素(13)内に配置され、このスピンドル形状要素は調整装置により繊維導入通路(8)から離れるように動かされることができる。圧縮空気源(E)に連結されることができかつスピンドル形状要素(13)に対して向けられたクリーニング通路(23)が繊維引出し通路(10)の入口開口の領域をクリーニングするために設けられる。クリーニング通路(23)はスピンドル形状要素を取り囲む環状通路(24)に開口する。前記環状通路からの第一出口開口(25)は繊維導入通路(8)から離れるように動かされるときスピンドル形状要素(13)を取り囲む環状開口を形成するように具体化され、かつ繊維導入通路(8)に対して向けられる。環状通路からの第二出口開口は糸引出し通路(10)中に中間通路(27)を介して開口し、かつその入口開口(15)に対して向けられる。メンテナンスの場合、入口開口(15)の領域はかくして内側及び外側からクリーニングされることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアジェット紡績装置に関し、それは渦室に繋がる繊維供給通路を含み、更に渦室から出て行きかつ入口開口を持つ、スピンドル形状要素内に配置された繊維引出し通路を含み、更にスピンドル形状要素を繊維供給通路から離れるように動かすための可動装置を含み、更にスピンドル形状要素に対して向けられた出口開口を持ちかつ加圧空気源に連結可能なクリーニング通路を含むものである。
【背景技術】
【0002】
この形式のエアジェット紡績装置は、ドイツ公開特許DE19501545C2において従来技術である。紡績工程時に、ステープル繊維束が、上流に配置されたドラフト装置内で繊維ストランドにドラフトされ、次いでこの繊維ストランドに紡績撚りがエアジェット紡績装置内で与えられる。この工程では、繊維ストランドが、まずエアジェット紡績集合体の繊維供給通路を通して渦室に供給され、この渦室に、糸引出し通路の入口開口の周りに渦流を発生するための流体装置が割当てられる。この繊維ストランド中に保持された繊維の前方端が、これにより糸引出し通路中に供給され、一方広がった後方自由繊維端は渦流により捕らえられ、糸引出し通路の入口開口内に既に位置する前方端(すなわち既にからみあった端)の周りにからまり、それにより大きな範囲に真の撚りを持つ糸が発生される。
【0003】
もし何らかの理由のためにまだ非常に弱い撚られていない繊維ストランドまたは紡績された糸が破断すると、糸継ぎ工程が行わなければならず、そこでは既に紡績された糸の端がドラフト装置に送り戻される。既知のエアジェット紡績装置では、紡績工程の中断後、加圧空気ノズルから出る加圧空気が更に断たれ、糸引出し通路を含む要素が繊維供給通路から離れるように動かされる。ここでは繊維供給通路と糸引出し通路の間の領域をクリーニングすることが必要である。というのも端破断の場合、繊維または糸のタフトが操業時の繊維供給通路と糸引出し通路の間に存在する比較的狭い隙間内に積りうるからである。
【0004】
この重要な領域をクリーニングする目的のため、上述の従来技術においてある変更が開示されており、それによればクリーニング通路が設けられ、それは、スピンドル状要素が繊維供給通路から離れるように動かされるとき、加圧空気流をスピンドル形状要素に対して吹きつける。しかし、実施態様の例から明らかなように、糸引出し通路の入口開口がクリーニング通路の出口開口から非常に遠いという事実のため、重要な領域の完全なクリーニングは不可能である。これは、特に糸引出し通路がその入口開口の領域内で塞がれるときに当てはまる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、この欠点を避け、かつ紡績工程の中断の場合に繊維供給通路と糸引出し通路の入口開口との間の特に重要な領域のための効果的なクリーニング法を提供し、上述の形式のエアジェット紡績装置のための解決策を作り出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明によれば、クリーニング通路がスピンドル形状要素を取り囲むリング通路に繋がり、このリング通路の第一出口開口が、スピンドル形状要素が繊維供給通路から離れるように動かされる場合に、スピンドル形状要素を取り囲むリング開口として設計され、かつ繊維供給通路に対して向けられていること、及びこのリング通路の第二出口開口が中間通路を介して糸引出し通路に繋がり、かつその入口開口に対して向けられていることにより達成される。
【0007】
本発明のこの特徴のため、糸引出し通路の入口開口の領域の外側及び内側からの完全なクリーニングが可能である。一方でリング開口から来る空気流がスピンドル形状要素の外部輪郭の上及び繊維供給通路に吹きつけ、この領域を外側からクリーニングする。他方で更なる加圧空気流がクリーニング通路の第二出口開口を介して内側から、すなわち糸引出し通路の入口開口を通して、繊維供給通路に対して吹きつける。
【0008】
エアジェット紡績装置のスピンドル形状要素は通常、空気排出通路により取り囲まれており、そこでは更に低圧がメンテナンス工程時にうまく作用し、流れる空気流により吹き飛ばされた繊維片は直ちに排出される。
【0009】
本発明の一実施態様では、第一出口開口はスピンドル形状要素が繊維供給通路から離れるように動かされない場合に閉じられるということが規定される。従って、スピンドル形状要素がその操業位置にあるとき、加圧空気がまだ活動しているときでさえ、その外部輪郭の上を空気流が流れることができない。しかしながら、この状態では、クリーニング通路を介して供給された加圧空気は中間通路を介して繊維引出し通路中に供給されることができ、それによりこの加圧空気は当初のクリーニング機能に加えて更なる機能、すなわち噴射によりドラフト装置に戻るように輸送されている糸端を吸い込み、かつそれを繊維供給通路に供給するという機能が与えられることができる。それゆえ加圧空気源への連結はまずクリーニング工程が完了するときのみならず、糸端が糸継ぎ工程のためドラフト装置に戻るように供給されるときもまたクリーニング通路から切断される。
【0010】
クリーニング通路のリング開口として設計された第一出口開口は、スピンドル形状要素が操業位置にあるとき、非常に簡単な方法で閉じられることができる。スピンドル形状要素は、有利にはスピンドル形状要素が繊維供給通路から離れるように動かされるときにリング開口を開口する外径の小さい方の領域、及びスピンドル形状要素が繊維供給通路から離れるように動かされないときに密封隙間によりクリーニング開口を閉じる外径の大きい方の領域を含む。この方法では、加圧弁の必要がなく、それは費用節約をもたらす。
【0011】
図面の簡略説明
本発明のこれらの及び更なる目的、特徴及び利点は、添付図面に関してなされるときにそれらの以下の詳細な説明からより容易に明らかとなるであろう。
図1は、操業時の本発明によるエアジェット紡績装置の軸方向断面で大きく拡大された図を示し、
図2は、非操業状態の同じエアジェット紡績装置の図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に示されたエアジェット紡績装置1は、ステープル繊維ストランド3から紡績糸2を製造する役目をする。ドラフト装置4がエアジェット紡績装置1の上流に配置されている。
【0013】
ステープル繊維ストランド3がドラフト装置4にドラフト方向Aで供給され、紡績糸2として引出し方向Bに引出され、巻取り装置(図示せず)に案内される。一部のみ示されたドラフト装置4は、好ましくは三シリンダードラフト装置であり、従って三つのローラー対を含み、それらのそれぞれが駆動下部ローラーと加圧ローラーとして設計された上部ローラーを含む。送出ローラー対5,6のみが示されており、それがドラフト装置4のドラフト帯域を終える。この種のドラフト装置では、ステープル繊維ストランド3が既知の方法で希望の繊度にドラフトされる。ドラフト装置4の直ぐ下流に、細い繊維ストランド7が存在し、それはドラフトされているがまだ撚られていない。
【0014】
繊維ストランド7が繊維供給通路8を介してエアジェット紡績装置1に供給される。その下流にいわゆる渦室9があり、そこで繊維ストランド7がその紡績撚りを受け、従って紡績糸2が形成され、それは糸引出し通路10を通して引出される。
【0015】
流体装置は、渦室9での紡績工程時に渦室9に接線方向に繋がる圧縮空気ノズル11を通して圧縮空気を吹き込むことにより渦流を発生する。ノズル開口から出る圧縮空気は排出通路12を介して排出され、そこでは通路12はスピンドル形状要素13の周りにリング形状断面を持つ。スピンドル形状要素13は、操業時は静止しており、かつ糸引出し通路10を含む。
【0016】
撚り阻止として作用する繊維案内表面14の縁は渦室9の領域内に配置され、前記繊維案内表面14は糸引出し通路10に対してわずかに偏心してその入口開口15の領域内に配置されている。
【0017】
エアジェット紡績装置1では、紡績される繊維は一方では繊維ストランド7内に一緒に保持され、従って繊維供給通路8から糸引出し通路10中に本質的に紡績撚りなしに供給されるが、他方では繊維供給通路8と糸引出し通路10の間の領域内の繊維は渦流に露出される。渦流は繊維を、または少なくともそれらの端部領域を糸引出し通路10の入口開口15から半径方向に離れるように駆動させる。上述のエアジェット紡績装置1により作られた糸2は、有意な撚りが全くなく本質的に糸の縦方向に延びる繊維または繊維領域を含む芯と、繊維または繊維領域が芯の周りに巻かれている外部領域とを有する。この形式のエアジェット紡績装置1は非常に高い紡績速度を可能とし、それは300〜600m/分の範囲内にある。
【0018】
圧縮空気ノズル11から渦室9に出る圧縮空気は、操業時に圧縮空気通路16を介して供給方向Cにエアジェット紡績装置1に供給される。圧縮空気通路16から、圧縮空気は渦室9を取り囲むリング通路17にまず到達し、この渦室9に上述の圧縮空気ノズル11が直接連結されている。
【0019】
操業紡績工程時に、糸引出し通路10の入口開口15と繊維案内表面14との間に非常に小さな距離が存在し、この小さな距離は例えば0.5mmでありうる。この小さな距離Xは糸引出し通路10を含むスピンドル形状要素13が軸方向に可動であるような方法で配置されることで調整される。距離Xは、操業状態ではばねにより固定されることができる。より大きな距離Xをとる図2に見ることができるように、距離Xを増やすために、スピンドル形状要素13はピストン状要素19を含む。その機能は以下に述べられる。
【0020】
何らかの理由のために繊維ストランド7または糸2が破断すると、渦室9に供給されている圧縮空気がまず絶たれる。図2の十字付き矢印参照。同時に、ドラフト装置4及び糸引出しローラー(図示せず)及び巻取り装置(図示せず)の全ての駆動がスイッチを切られる。送出ローラー対5,6の上部ローラー6が下部ローラー5から上昇される。
【0021】
スピンドル形状要素13はピストン状要素19を含むので、スピンドル形状要素13の繊維供給通路8から離れる動きは非常に簡単な手段を用いて実施されることができる。従って、スピンドル形状要素13を取り囲むリング通路20が設けられ、それは圧縮空気のための導管21に連結されている。この圧縮空気は紡績工程が中断されるときにのみ供給される。図2の矢印D、及び図1の十字付き矢印参照。リング通路20に入る圧縮空気は、ピストン状要素19を図2の図に示されたように上向きに動かし、従ってリング通路20は、ピストンのストロークのため拡大したリング室22となるように増える。ピストン状要素19は、操業時にリング通路20を境界付け、紡績工程の中断時に拡大したリング室22を境界付ける。そのように設計された可動装置の圧縮空気は、この結果、ばね18に対して作用し、それは、圧縮空気が切られるとき、すなわち紡績工程時にピストン状要素19をその安全な操業位置に押圧する。スピンドル形状要素13の繊維供給通路8から離れる動きは、導管21を介して供給される圧縮空気により行われ、一方ばね18は戻り運動を行う。
【0022】
非常に小さな距離Xは、スピンドル形状要素13を離れるように動かすことにより距離Xに増やされ、それは以下に述べられる方法で繊維案内表面14と糸引出し通路10の入口開口15との間の空間のクリーニングを可能とする。
【0023】
次いで糸継ぎのための糸端が図示されていない方法で糸2の操業引出し方向Bの反対方向にドラフト装置4に向けて戻されることができる。
【0024】
繊維供給通路8と糸引出し通路10の入口開口15との間の重要な領域をクリーニングするために、クリーニング通路23が設けられ、必要なときそれに圧縮空気が供給方向Eに供給されることができる。このクリーニング通路23は以下に述べられる方法で多数の出口開口によりスピンドル形状要素13に対して向けられる。
【0025】
クリーニング通路23は当初、スピンドル形状要素13を取り囲むリング通路24に繋がっている。二つの出口開口25と26がこのリング通路24から幾分直接的に出ている。繊維供給通路8から離れるように動かされたスピンドル形状要素13の場合、第一出口開口25はスピンドル形状要素13を取り囲むリング開口として設計されており、それは図1に示されるように操業位置では閉じられている。第二出口開口26は、中間通路27を介して糸引出し通路10内に繋がっており、かつ前記糸引出し通路10の入口開口15に対して向けられている。
【0026】
スピンドル形状要素13は、リング開口として設計された出口開口25を介してその外部輪郭から糸引出し通路10の入口開口15までクリーニングされることができる。糸引出し通路10の内側は、第二出口開口26を介してクリーニングされる。
【0027】
上述のように、第一出口開口25は、スピンドル形状要素13が繊維供給通路8から離れるように動かされていない場合、閉じられる。これは、スピンドル形状要素13が外径の小さい方の領域28と円筒状の外径の大きい方の領域29を含むことで達成されることができる。
【0028】
スピンドル形状要素13が図2に示されるように繊維供給通路8から離れるように動かされるとき、リング開口の形の第一出口開口25は開かれる。対照的に、図1に示されるように、スピンドル形状要素13がその操業位置にあるとき、このリング開口はその直径比のため密封隙間30により閉じられる。しかし、もし必要なら、加圧空気を中間通路27及び第二出口開口26を介して糸引出し通路10中に繊維供給通路8に対して吹き込み続けることができ、従って、糸継ぎされる糸端が噴射作用によりドラフト装置4に戻されることを達成することができる。この方法では更なる機能がクリーニング通路23に割り当てられることができる。
【0029】
この点でもし必要なら、加圧空気通路16を介して入りかつ紡績工程のための空気としての役目をする加圧空気も図2に示されるような非操業位置に供給されることができることが述べられる。次いで、この空気は加圧空気ノズル11から出て、この結果、もし必要なら繊維案内表面14の領域を更にクリーニングすることができる。
【0030】
理解されるように、加圧空気は、それぞれ別個に制御される三つの異なる場所すなわち加圧空気通路16を介して、導管21を介して、そしてクリーニング通路23を介してエアジェット紡績装置1に供給されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】操業時の本発明によるエアジェット紡績装置の軸方向断面で大きく拡大された図を示す。
【図2】非操業状態の同じエアジェット紡績装置の図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアジェット紡績装置であって、それが渦室に繋がる繊維供給通路を含み、更に渦室から出て行きかつ入口開口を持つ、スピンドル形状要素内に配置された繊維引出し通路を含み、更にスピンドル形状要素を繊維供給通路から離れるように動かすための可動装置を含み、更にスピンドル形状要素に対して向けられた出口開口を持ちかつ加圧空気源に連結可能なクリーニング通路を含むものにおいて、クリーニング通路(23)がスピンドル形状要素(13)を取り囲むリング通路(24)に繋がっており、このリング通路(24)から第一出口開口(25)が、スピンドル形状要素(13)が繊維供給通路(8)から離れるように動かされるとき、スピンドル形状要素(13)を取り囲むリング開口として設計され、それが繊維供給通路(8)に対して向けられていること、及びこのリング通路(24)から第二出口開口(26)が中間通路(27)を介して糸引出し通路(10)に繋がり、かつその入口開口(15)に対して向けられていることを特徴とするエアジェット紡績装置。
【請求項2】
第一出口開口(25)が、スピンドル形状要素(13)が繊維供給通路(8)から離れるように動かされないとき、閉じられることを特徴とする請求項1に記載のエアジェット紡績装置。
【請求項3】
スピンドル形状要素(13)が、スピンドル形状要素(13)が繊維供給通路(8)から離れるように動かされるときにリング開口(25)を開口する外径が小さい方の領域(28)を含み、更にスピンドル形状要素(13)が繊維供給通路(8)から離れるように動かされないとき、密封隙間(30)によりリング開口(25)を閉じる外径が大きい方の領域(29)を含むことを特徴とする請求項2に記載のエアジェット紡績装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−512576(P2008−512576A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530639(P2007−530639)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009577
【国際公開番号】WO2006/027216
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(590005597)マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト (93)
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstrasse 20,CH−8406 Winterthur,Switzerland
【Fターム(参考)】