説明

エアゾールスプレー缶用防食塗料及びこれを用いた日常簡易補修工法

【課題】貯蔵安定性に優れ、さらに素地との付着性、錆面への浸透性、防食性、耐候性等に優れた塗膜を形成できるエアゾールスプレー缶用防食塗料、及びこれを用いた日常簡易補修工法を提供すること。
【解決手段】(A)大気中の水分によって架橋硬化する有機溶剤型防食塗料であって、架橋性官能基含有樹脂(a)として湿気硬化型ウレタン樹脂を含有し、必要に応じて該樹脂(a)中の架橋性官能基と反応する架橋剤(b)を含有する一液型防食塗料、
(B)補助有機溶剤、並びに
(C)噴射剤
を含み、該噴射剤(C)の含有量が、該一液型防食塗料(A)と該補助有機溶剤(B)を混合した塗料液に対する容量比で、該塗料液:該噴射剤(C)=55:45〜30:70の範囲内であることを特徴とするエアゾールスプレー缶用防食塗料、並びに、これを用いた日常簡易補修工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾールスプレー缶用防食塗料及びこれを用いた日常簡易補修工法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼構造物は、雨水や薬液などの腐食環境により発錆するため、塗装や亜鉛メッキ等による防食が施されている。しかし経年により、防食塗膜やメッキはまず部分的に劣化し、その部分が先行して腐食する。その鋼構造物を保守するため、一般には日常的に点検を行ない、部分的に現れる発錆に対し、部分補修を施している。部分補修箇所が多い場合には、専門塗装業者に委託して、徹底的な補修を行なうが、該箇所が少ない場合は点検者自らがその場で下地処理及び塗装を施す部分補修を行なうことが多い。
【0003】
日常点検者自らが部分補修を行なう場合、発錆部の下地処理として、電源やコンプレッサーエアが現場では直に入手しにくいことから、電動又はエア駆動のサンダーケレンが行なわれることは殆どなく、通常、ワイヤーブラシなどによる手ケレンが行われている。ここで、ケレンとは、素地調整のことであり、具体的には、鋼構造物の発錆部の錆びた部分を除去したり、旧塗膜表面の面粗らしをしたり、防錆効果を失って脆くなっている塗膜を除去したりすることを意味する。また、ケレンは、1種、2種及び3種に分類され、1種ケレンとは錆、塗膜を除去し清浄な鋼材面とすることを、2種ケレンとは錆、塗膜を除去し鋼材面を露出させること(但し、くぼみ部分や狭あい部分には錆や塗膜が残存している)を、又3種ケレンとは錆、劣化塗膜を除去し鋼材面を露出させることを、それぞれ意味する。
【0004】
下地処理は、2種ケレン程度まで行なわれることが好ましいが、手ケレンでは難しく、実質上、かなりの程度錆が残存した状態で塗装が行われることになる。そのような程度の悪いケレン面に塗装する場合、錆面に対する浸透性が高くて密着性に優れた、例えば2〜3種ケレン用錆面浸透型エポキシ樹脂塗料を下塗りすることが推奨されている。この塗料は、エポキシ系樹脂を主成分とする主剤と、ポリアミンを主成分とする硬化剤からなり、これらを所定比率で混合し、さらにシンナーで適当量希釈してさらに錆面浸透性を高めた上で塗装に供している。錆面に浸透した塗料は、主剤中のエポキシ樹脂と硬化剤中のアミンが硬化反応を起こし、より強固で素地密着性及び防食性に優れた塗膜を形成する。
【0005】
しかし、この錆面浸透型エポキシ樹脂塗料を補修塗装時に用いた場合には、現場での主剤及び硬化剤の秤量配合、シンナー希釈、さらに刷毛での塗装、塗装終了後の刷毛洗浄などといった煩雑な作業を必要とすること、特にダムや送電鉄塔などの山間僻地に設置された鋼構造物の補修の場合には、秤量器具や塗料缶等の用具を現地に持って行くのも手間がかかること等から、日常点検者が補修するための塗料としては、実際上採用が困難であった。
【0006】
そこで、通常、日常点検者が行なう補修塗装は、手ケレン後、非架橋タイプの樹脂組成物からなるエアゾールタイプのスプレー缶塗料を吹き付けるという、簡便迅速な補修が施されているのが現状である。しかしながら、このようなスプレー缶塗料では、前記2〜3種ケレン用錆面浸透型エポキシ樹脂塗料に比べて著しく防食性に劣り、特に手ケレンなどの素地状態の悪い面に塗装した場合には、素地との付着性が悪いため、折角の日常補修による防食性能が発揮できず、補修塗装後早期に塗膜の剥離現象を起こすという問題があった。
【0007】
以上の点から、鋼構造物等に対して、高度な防食補修が可能で、且つ簡便迅速に日常簡易補修ができるスプレー缶塗料の開発が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、貯蔵安定性に優れ、さらに素地との付着性、錆面への浸透性、防食性、耐候性等に優れた塗膜を形成できるエアゾールスプレー缶用防食塗料、及びこれを用いた日常簡易補修工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討した結果、特定の有機溶剤型一液型防食塗料、補助有機溶剤及び噴射剤を含むエアゾールスプレー缶用防食塗料によれば、上記目的が達成できること、しかも、塗料成分の溶解性を低下させることなく、霧化性も良好であること等を見出し、これに基づき本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記のエアゾールスプレー缶用防食塗料、及びこれを用いた日常簡易補修工法に係るものである。
【0011】
1.(A)大気中の水分によって架橋硬化する有機溶剤型防食塗料であって、架橋性官能基含有樹脂(a)、及び必要に応じて該樹脂(a)中の架橋性官能基と反応する架橋剤(b)を含有する一液型防食塗料、
(B)補助有機溶剤、並びに
(C)噴射剤を含むことを特徴とするエアゾールスプレー缶用防食塗料。
【0012】
2.一液型防食塗料(A)が、架橋性官能基含有樹脂(a)としてエポキシ樹脂及び架橋剤(b)としてケチミン化合物を含有する有機溶剤型防食塗料である上記項1記載のエアゾールスプレー缶用防食塗料。
【0013】
3.補助有機溶剤(B)としてグリコールエーテル系溶剤を、且つ噴射剤としてジメチルエーテルを、それぞれ使用してなる上記項2記載のエアゾールスプレー缶用防食塗料。
【0014】
4.一液型防食塗料(A)が、架橋性官能基含有樹脂(a)として湿気硬化型ウレタン樹脂を含有する有機溶剤型防食塗料である上記項1記載のエアゾールスプレー缶用防食塗料。
【0015】
5.一液型防食塗料(A)が、湿気硬化型ウレタン樹脂及び無結晶水防錆顔料を含有する防食塗料である上記項4記載のエアゾールスプレー缶用防食塗料。
【0016】
6.一液型防食塗料(A)が、湿気硬化型ウレタン樹脂、無結晶水防錆顔料及びシランカップリング剤を含有する防食塗料である上記項5記載のエアゾールスプレー缶用防食塗料。
【0017】
7.補助有機溶剤(B)としてグリコールエーテル系溶剤を、且つ噴射剤(C)としてジメチルエーテルを、それぞれ使用してなる上記項4記載のエアゾールスプレー缶用防食塗料。
【0018】
8.鋼構造物表面又はその塗膜面の部分補修部位に、上記項1乃至7のいずれか1項に記載のエアゾールスプレー缶用防食塗料を塗装することを特徴とする日常簡易補修工法。
【0019】
9.鋼構造物表面又はその塗膜面の部分補修部位に、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のエアゾールスプレー缶用防食塗料を塗装した後、さらにエアゾールスプレー缶用上塗り塗料を塗装する上記項8に記載の日常簡易補修工法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、貯蔵安定性に優れ、さらに素地との付着性、錆面への浸透性、防食性、耐候性等に優れた塗膜を形成できるエアゾールスプレー缶用防食塗料が得られる。本発明のスプレー缶用塗料は、塗料成分の溶解性の低下がなく、適正な温度及び湿度で貯蔵すれば、長期にわたって良好な霧化状態及び塗膜性能の発現を維持できる。
【0021】
従って、本発明のスプレー缶用塗料を用いれば、簡便迅速に日常点検時の補修塗装を行なうことができる。さらに、本発明塗料による補修部位に、耐候性に優れたスプレー缶用上塗塗料を塗布することにより、チョーキング現象などを抑えることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
一液型防食塗料(A)
本発明において、(A)大気中の水分によって架橋硬化する有機溶剤型防食塗料であって、架橋性官能基含有樹脂(a)、及び必要に応じて該樹脂(a)中の架橋性官能基と反応する架橋剤(b)を含有する一液型防食塗料としては、大気中の水分と塗料成分が反応することによって架橋反応を開始し、硬化する防食塗料であれば、特に制限なく従来公知の常温硬化型塗料及び熱硬化型塗料が使用可能である。
【0023】
一液型防食塗料(A−1)
上記一液型防食塗料(A)としては、架橋性官能基含有樹脂(a)がエポキシ樹脂、架橋剤(b)がケチミン化合物である有機溶剤型塗料(以下、これを塗料(A−1)と言うことがある。)を好適に使用できる。
【0024】
上記エポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を2個以上、好ましくは2〜5個含有するエポキシ樹脂であり、数平均分子量が約350〜3,000、エポキシ当量が約80〜1,000のものが好適である。
【0025】
上記好適なエポキシ樹脂の例としては、多価アルコール、多価フェノールなどと過剰のエピクロルヒドリン又はアルキレンオキシドとを反応させて得られるエポキシ樹脂を挙げることができる。
【0026】
上記多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ソルビトール等が挙げられる。また、多価フェノールの例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、ハロゲン化ビスフェノールA、4,4−ジヒドロキシジフェニルメタン[ビスフェノールF]、トリス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、レゾルシン、テトラヒドロキシジフェニルエタン、ノボラック型多価フェノール、クレゾール型多価フェノールなどが挙げられる。
【0027】
また、上記好適なエポキシ樹脂の他の例としては、1,2,3−トリス(2,3−エポキシプロポキシ)プロパン、フタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチルカルボキシレート、トリグリシジルイソシアヌレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0028】
上記塗料(A−1)におけるケチミン化合物は、上記エポキシ樹脂の硬化剤であって、カルボニル化合物でブロックされた第1級アミノ基を1分子中に少なくとも1個有するポリアミン化合物であり、アルジミン化合物を包含している。この「カルボニル化合物でブロックされた第1級アミノ基」は、例えば水分の存在によって容易に加水分解して遊離の第1級アミノ基に変わりうる保護されたアミノ基であり、典型的には、下記式(I)
【0029】
【化1】

【0030】
(式中、R1は水素原子またはアルキル基、シクロアルキル基等の1価の炭化水素基を表わし、R2はアルキル基、シクロアルキル基等の1価の炭化水素基を表わす。)で示すことができる。ここで、R1が水素原子の場合が、アルジミン化合物である。
【0031】
上記ポリアミン化合物は、脂肪族系、脂環族系及び芳香族系のいずれのものであってもよい。また、第1級アミノ基を有する限り、ポリアミド類であってもよい。該ポリアミン化合物は、エポキシ樹脂と硬化反応を行なう第1級アミノ基を有することが必要であるが、一般に約2,000以下、好ましくは約30〜約1,000の範囲内の第1級アミノ基当量を持つことが有利である。また、該ポリアミン化合物は一般に約5,000以下、好ましくは約3,000以下の範囲内の数平均分子量を有することが好適である。
【0032】
該ポリアミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミンなどの脂肪族ポリアミン類;メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミンなどの芳香族ポリアミン類;イソホロンジアミン、シクロヘキシルプロピルアミン、ノルボルネンジアミンなどの脂環族ポリアミン類;分子末端に第1級アミノ基を有するポリアミド類等が挙げられる。
【0033】
前記ポリアミン化合物の中でも分子中に第2級アミノ基を含有しない、即ちケチミン化された第1級アミノ基のみを有するポリアミン化合物が、エポキシ樹脂と混合後の貯蔵安定性が良いことから特に好適である。このため分子中に第2級アミノ基を有するケチミン化合物を使用する場合、第2級アミノ基を前記したエポキシ樹脂と反応させたアダクト化合物として使用することが望ましい。
【0034】
前記ポリアミン化合物をケチミン化するために使用し得るカルボニル化合物としては、通常用いられる任意のケトン類、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルt−ブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。また、ポリアミン化合物をアルジミン化するために使用するカルボニル化合物として、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒドを使用することができる。
【0035】
ポリアミン化合物とカルボニル化合物との反応は、それ自体公知の方法によって行なうことができ、その際存在する第1級アミノ基の実質的にすべてがカルボニル化合物と反応するような量的割合及び反応条件を用いることが望ましい。該反応は、脱水反応であり、これを容易に進行させるためには、カルボニル化合物として、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンのような水溶性に乏しく且つ立体障害の小さいケトン類を使用することが一般に有利である。
【0036】
上記ケチミン化合物の配合割合は、前記エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対してケチミン化合物の活性水素が0.5〜5.0当量、好ましくは0.6〜3.0当量になるような割合で用いるのが望ましい。0.5当量より少ない場合には硬化が不十分となり、5.0当量より多い場合には硬化塗膜に粘着性が残り、防食性に問題を生じることがあるので望ましくない。
【0037】
上記エポキシ樹脂とケチミン化合物との架橋系である一液型防食塗料(A−1)には、塗膜の乾燥性を向上させるために、必要に応じて、ウレタン変性エポキシ樹脂、及び/又は、キシレン樹脂、トルエン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂及び石油樹脂からなる群より選ばれる常温で固形である樹脂を配合することができる。特にウレタン変性エポキシ樹脂を使用することが、各種素材(鉄、非鉄金属、非金属)への付着性が向上するので好適である。
【0038】
上記ウレタン変性エポキシ樹脂としては、例えばエポキシ樹脂にアミン類を反応させてなるアミン付加エポキシ樹脂にポリイソシアネート化合物あるいはモノイソシアネート化合物を反応せしめたものが挙げられる。
【0039】
上記エポキシ樹脂としては前記(a)成分としてのエポキシ樹脂と同様のものが使用でき、アミン類としては、アルカノールアミン類、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、脂環族アミン類などが使用できる。ポリイソシアネート化合物としては従来公知の脂肪族、芳香族または脂環族のポリイソシアネート化合物などが使用でき、モノイソシアネート化合物としては、脂肪族モノアミンまたは芳香族モノアミンにホスゲンを反応させたものや、ジイソシアネート化合物の一方のイソシアネート基に水酸基含有化合物を反応させたものなどが使用できる。
【0040】
該ウレタン変性エポキシ樹脂は数平均分子量が1,000〜65,000、好ましくは2,000〜25,000の範囲とするのが好適である。数平均分子量が1,000未満では付着性、耐水性が低下し、一方65,000を越えると高粘度化し作業性、貯蔵安定性に悪影響を及ぼす場合があるので好ましくない。
【0041】
該ウレタン変性エポキシ樹脂を使用する場合の配合割合は、樹脂固形分比で前記(a)成分としてのエポキシ樹脂100重量部に対して、5〜95重量部、好ましくは10〜90重量部が好適である。
【0042】
一方、キシレン樹脂、トルエン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂及び石油樹脂から選ばれる樹脂は、常温で固形で、融点が60℃以上、好ましくは70〜140℃の樹脂であり、これらは1種または2種以上併用して使用できる。該樹脂を使用する場合の配合割合は、樹脂固形分比で前記(a)成分としてのエポキシ樹脂100重量部に対して、5〜70重量部、好ましくは10〜50重量部が好適である。
【0043】
上記エポキシ樹脂とケチミン化合物との架橋系である一液型防食塗料(A−1)には、貯蔵安定性の確保の点から、必要に応じて脱水剤が配合されることが望ましい。該脱水剤は、特に制限なく従来公知のものが使用可能であり、代表例として以下のものが挙げられる。
【0044】
(i)粉末状で多孔性に富んだ金属酸化物又は炭化物質;例えば、合成シリカ、活性アルミナ、ゼオライト、活性炭など。
【0045】
(ii)CaSO4、CaSO4・1/2H2O、CaOなどの組成を有するカルシウム化合物類;例えば、焼石膏、可溶性石膏、生石灰など。
【0046】
(iii)金属アルコキシド類;例えば、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウム−sec−ブチレート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、ジルコニウム−2−プロピレート、ジルコニウム−n−ブチレート、エチルシリケートなど。
【0047】
(iv)有機アルコキシ化合物類;例えば、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、ジメトキシプロパン、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなど。
【0048】
(v)単官能イソシアネート類;例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、「アディティブTI」(商品名、住友バイエルウレタン社製)など。
【0049】
これら脱水剤は、単独又は2種以上併用することができる。該脱水剤の使用量は、塗料組成物中に含まれる水分量及び脱水剤の吸収、吸着能、又は反応性によって異なるが、一般的には塗料組成物中の樹脂固形分重量100重量部に対して0.1〜25重量部、好ましくは0.5〜15重量部が適当である。
【0050】
上記エポキシ樹脂とケチミン化合物との架橋系である一液型防食塗料(A−1)は、有機溶剤型塗料であり、使用される有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、ミネラルスピリット等の芳香族炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤;エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール系溶剤;これらグリコール系溶剤のメチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル等のモノアルキルエーテルやジアルキルエーテル、更にはモノアルキルエーテルのアセテートやプロピオネートなどのグリコールエーテル系溶剤などの従来公知の溶剤が使用できる。これらのうち、エアゾール用塗料としての貯蔵安定性の確保の点からは、ケトン系溶剤、さらにはグリコールエーテル系溶剤が好適である。
【0051】
上記エポキシ樹脂とケチミン化合物との架橋系である一液型防食塗料(A−1)には、さらに必要に応じて着色顔料、体質顔料、金属粉、防錆顔料等の顔料類;増粘剤、可塑剤、充填剤、分散剤等の添加剤などを混合して使用してもよい。
【0052】
上記着色顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、酸化鉄、黄鉛等の無機着色顔料、フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機着色顔料を挙げることができる。また、体質顔料としては、石英粉、タルク、酸化アルミナ、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム等を、金属粉としては、ステンレス粉、亜鉛粉、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母粉等を、それぞれ挙げることができる。
【0053】
一液型防食塗料(A−2)
本発明における上記一液型防食塗料(A)としては、架橋性官能基含有樹脂(a)が湿気硬化型ウレタン樹脂である有機溶剤型塗料(以下、これを塗料(A−2)と言うことがある。)が好適である。また、該塗料(A−2)としては、湿気硬化型ウレタン樹脂及び無結晶水防錆顔料を含有することが好ましく、更に湿気硬化型ウレタン樹脂、無結晶水防錆顔料及びシランカップリング剤を含有することがより好ましい。
【0054】
上記湿気硬化型ウレタン樹脂としては、従来公知の湿気硬化型ウレタン樹脂を特に制限されることなく、各種のものを使用することができる。このような湿気硬化型ウレタン樹脂としては、例えば、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応して得られるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを好適に用いることができる。
【0055】
上記ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール又はポリオレフィンポリオールを用いることができる。
【0056】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの水酸基を2個以上、例えば2〜6個、好ましくは、2〜4個有する炭素数2〜8個、好ましくは、2〜6個のポリオールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の、例えば、炭素数2〜8個、好ましくは、2〜6個のアルキレンオキサイドを、アルカリ触媒などの存在下で付加重合して得た分子中に2〜4個の活性水素基(水酸基)を持つポリアルキレンポリオールなどを用いることが適当である。
【0057】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ブタジエン、イソプレンなどのジエン系化合物に、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドを付加重合して得た分子中に2〜4個の活性水素基(水酸基)を持つポリジエンポリオールを用いることが適当である。
【0058】
ポリイソシアネートとしては、1分子中に2個以上、好ましくは、2〜3個のイソシアネート基を有する化合物、所謂多官能イソシアネート化合物を使用することが適当である。多官能イソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートとの異性体混合物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「4,4’−MDI」という)、4,4’−MDIと2,4’−ジフェニルメタンジフェニルジイソシアネート(以下、「2,4’−MDI」という)との混合物(例えば、商品名「ルプラネートMI」:ビーエーエスエフジャパン社製)、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、粗製MDI、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HMDI」という)、キシリレンジイソシアネート(以下、「XDI」という)、メタキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トルイレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物;「スミジュールN」(商品名、住化バイエルウレタン社製)等のビュレットポリイソシアネート化合物;「デスモジュールIL」、「デスモジュールHL」(いずれも商品名、バイエルA.G.社製)、「コロネートE.H.」(商品名、日本ポリウレタン工業社製)等のイソシアネート環を有するポリイソシアネート化合物;「スミジュールL」(商品名、住化バイエルウレタン社製)、「コロネートHL」(日本ポリウレタン工業社製)等のアダクトポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。本発明では、これらポリイソシアネートは1種単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0059】
湿気硬化型ウレタン樹脂の合成方法は、特に限定がなく、従来公知の方法を使用することができる。具体的には、湿気硬化型ウレタン樹脂は、例えば、ポリオールと、過剰のポリイソシアネートとを重合させることにより製造される。過剰のポリイソシアネートとは、ポリオールの水酸基当量よりもイソシアネート当量が過剰であることを意味し、その当量関係をNCO/OH比で表わすことができる。特に液状で低粘度の湿気硬化型ウレタン樹脂を形成するためには、ポリオールの種類、官能基数、分子量等を考慮すると共に、NCO/OH比を例えば、2〜10、好ましくは、5〜10に調節することが適当である。重合温度及び重合時間も特に制限されないが、通常水分の影響を避けるために、窒素気流下でポリオールとポリイソシアネートとを混合した後、例えば、50〜100℃にて3〜8時間反応させるのが適当である。反応前、反応途中及び反応終了後、有機金属塩系ウレタン重合触媒や、安定剤、水分補促剤、重合調節剤等を適量随時添加しても差支えない。
【0060】
湿気硬化型ウレタン樹脂を含有する一液型有機溶剤型防食塗料(A−2)は、該ウレタン樹脂の固形分重量が、通常、5〜70重量%、好ましくは、10〜50重量%、特に好ましくは、20〜40重量%の量であることが適当である。
【0061】
本発明で使用する無結晶水防錆顔料は、無結晶水の防錆顔料であれば、特に制限なく使用することができる。このような防錆顔料としては、例えば、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸亜鉛等の防錆顔料が挙げられるが、これらに限られるものではなく、これら以外のものであっても、結晶水を含まない防錆顔料であれば使用することができるができる。無結晶水防錆顔料を使用する場合には、一液型防食塗料(A−2)中の湿気硬化型ウレタン樹脂の固形分100重量部に対して、通常、5〜50重量部、好ましくは5〜30重量部、特に好ましくは10〜20重量部の量で使用することが適当である。
【0062】
本発明で使用するシランカップリング剤としては、従来より、塗料の分野において使用されているものであれば、各種のものを使用することができる。このようなシランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシトリメトキシシラン等のビニルシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン等が使用できる。
【0063】
シランカップリング剤を使用する場合には、一液型防食塗料(A−2)中の湿気硬化型ウレタン樹脂の固形分100重量部に対して、通常、1〜25重量部、好ましくは1〜15重量部、特に好ましくは2〜8重量部の量で使用することが適当である。
【0064】
上記一液型有機溶剤型防食塗料(A−2)は、前記湿気硬化型ウレタン樹脂を必須成分とし、必要に応じて前記無結晶水防錆顔料やシランカップリング剤を配合するが、更に必要に応じて、着色顔料、体質顔料、金属粉等を配合することができる。
【0065】
具体的には、酸化チタン、亜鉛華、酸化鉄、黄鉛等の無機着色顔料、フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機着色顔料、石英粉、タルク、酸化アルミナ、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム等の体質顔料、ステンレス粉、亜鉛粉、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母粉等の金属粉等が代表的なものとして挙げられる。
【0066】
一液型防食塗料(A−2)に使用される有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール系溶剤;これらグリコール系溶剤のメチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル等のモノアルキルエーテルやジアルキルエーテル、更にはモノアルキルエーテルのアセテートやプロピオネートなどのグリコールエーテル系溶剤等が代表的なものとして挙げられる。これらのうち、エアゾール用塗料としての貯蔵安定性の確保の点からは、炭化水素系溶剤、さらにはグリコールエーテル系溶剤が好適である。
【0067】
また、一液型防食塗料(A−2)には、必要に応じて、更にその他の添加剤として、例えば、表面調整剤や、分散剤、紫外線吸収剤、脱水剤、沈降防止剤、ダレ止め剤、増粘剤、反応調整触媒等の通常塗料用添加剤として知られている添加剤を配合することができる。
【0068】
エアゾールスプレー用防食塗料
本発明では、上記の一液型防食塗料(A)に、補助有機溶剤(B)及び噴射剤(C)を加えて、適当な粘度に調整し、エアゾール容器に充填して、エアゾールスプレー用防食塗料が得られるものである。
【0069】
補助有機溶剤(B)としては、引火点が0℃以上の有機溶剤であれば特に限定されず、例えばトルエン、キシレン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶剤;ジオキサン等のエーテル系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール系溶剤;これらグリコール系溶剤のメチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル等のモノアルキルエーテルやジアルキルエーテル、更にはモノアルキルエーテルのアセテートやプロピオネートなどのグリコールエーテル系溶剤が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して使用でき、エアゾールスプレー用防食塗料中の有機溶剤全体の引火点が好ましくは21℃以上になるように選択することが安全性の面から望ましい。これらのうち、特にエアゾール用塗料としての貯蔵安定性の確保の点からは、グリコールエーテル系溶剤が好適である。
【0070】
上記補助有機溶剤(B)の使用量は、一液型防食塗料(A)と補助有機溶剤(B)を混合した塗料液中5重量%〜35重量%、好ましくは15重量%〜25重量%となる量とするのが望ましい。5重量%より少ないと、エアゾール噴霧性に劣り、35重量%より多いと貯蔵性に劣るので望ましくない。
【0071】
噴射剤(C)としては、公知のジメチルエーテル、LPガス等を単独又は混合して使用することができ、特に塗料の溶解性、霧化性の点から、ジメチルエーテルが好適である。
【0072】
噴射剤(C)の使用量は、一液型防食塗料(A)と補助有機溶剤(B)を混合した塗料液に対する容量比で、該塗料液:噴射剤(C)=55:45〜30:70の範囲内とするのが好適である。
【0073】
上記各成分をエアゾール容器に充填する際には水分が混入しないよう作業することが望ましい。水の混入量は約750PPM以下、好ましくは500PPM以下となるように制御することが望ましい。該水分混入の制御は、上述の脱水剤の配合以外に、塗料中の各使用原料を予め脱水処理するなどして行なえる。
【0074】
上記の本発明のエアゾールスプレー用防食塗料は、鋼構造物等の金属製構造物等を、防食補修する場合に、好適に使用することができる。
【0075】
日常簡易補修工法
本発明の日常簡易補修工法は、鋼構造物表面又はその塗膜面の部分補修部位に、前記のエアゾールスプレー缶用防食塗料を塗装するものである。
【0076】
即ち、前記本発明のエアゾールスプレー缶用防食塗料を、鋼構造物の表面又はその塗膜面の部分補修部位に、エアゾール塗装することにより、好適且つ迅速に、日常簡易補修することができる。補修部位に錆が発生している場合には、塗装前に、必要に応じてワイヤーブラシなどによる手ケレンなどの下地処理を適宜行なうことができる。
【0077】
また、該補修部位に耐候性を付与するために、上記エアゾールスプレー缶用防食塗料を塗装後、さらに耐候性に優れた上塗り塗料に基づくスプレー缶上塗り塗料を塗装することができる。
【実施例】
【0078】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより一層具体的に説明する。但し、本発明は、これら各例により、限定されるものではない。尚、各例において、「部」及び「%」は「重量部」及び「重量%」を示す。
【0079】
製造例1 一液型防食塗料(A−1)の製造
2リットル容器に、エポキシ樹脂液(注1)100部、ウレタン変性エポキシ樹脂液(注2)175部、ビニルトリメトキシシラン30部、ケイ酸マグネシウム375部、二酸化チタン110部、キシレン235部、メチルイソブチルケトン70部、ブチルセロソルブ30部を、順次仕込み、ディスパーで混合し、サンドミルにて、JIS K−5600に規定の分散度にて60μm以下迄分散した後、ケチミン化合物(注3)10部を後添加しディスパーで混合・攪拌して一液型防食塗料(A−1)を得た。
【0080】
上記(注1)〜(注3)は次の通りである。
(注1)「エピコート1001」(商品名、油化シェル化学社製、固形状)の70%トルエン溶液、
(注2)「アラキード9203」(商品名、荒川化学社製、固形分40%、アミン付加エポキシ樹脂のジイソシアネート反応物)、
(注3)「バーサミンK−13」(商品名、コグニスジャパン社製、ポリエチレンポリアミンのケチミン化合物であって、その2級アミノ基をエポキシアダクトとしたもの)。
【0081】
製造例2 一液型防食塗料(A−2)の製造
2リットル容器に、キシレン樹脂(注4)100部、湿気硬化型ウレタン樹脂(注5)310部、無結晶水防錆顔料(注6)50部、二酸化チタン80部、タルク250部、脱水剤(注7)80部、キシレン145部を、順次仕込み、ディスパーで混合し、ポットミルにて、JIS K−5600に規定の分散度にて60μm以下迄分散して、一液型防食塗料(A−2−1)を得た。
【0082】
上記(注4)〜(注7)は次の通りである。
(注4)「ニカノールLLL」(商品名、三菱ガス化学工業(株)製、キシレン/ホルムアルデヒド樹脂)、
(注5)「スミジュールE21−1」(商品名、住化バイエルウレタン社製)、
(注6)「Kホワイト#94」(商品名、テイカ(株)製)、
(注7)「アディティブTI」(商品名、住化バイエルウレタン社製)。
【0083】
製造例3
2リットル容器に、キシレン樹脂(注4)100部、湿気硬化型ウレタン樹脂(注5)310部、無結晶水防錆顔料(注6)50部、二酸化チタン80部、タルク250部、脱水剤(注7)80部、キシレン145部、シランカップリング剤(注8)5部を、順次仕込み、ディスパーで混合し、ポットミルにて、JIS K−5600に規定の分散度にて60μm以下迄分散して、一液型防食塗料(A−2−2)を得た。
【0084】
上記(注4)〜(注7)は前記の通りである。また、(注8)は次の通りである。
(注8)「KBM−403」(商品名、信越シリコーン(株)製)。
【0085】
実施例1 エアゾールスプレー缶用防食塗料の作成
製造例1で得た防食塗料(A−1)に、補助有機溶剤としてエチレングリコールモノブチルエーテル250部を加えて希釈し、さらにこの希釈塗料とジメチルエーテルとを容量比1:1の割合でエアゾール容器に充填してエアゾールスプレー缶用防食塗料を得た。
【0086】
実施例2及び3 エアゾールスプレー缶用防食塗料の作成
製造例2又は3で得た防食塗料(A−2−1)又は防食塗料(A−2−2)に、補助有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート250部を加えて希釈し、さらにこの希釈塗料とジメチルエーテルとを容量比1:1の割合でエアゾール容器に充填してエアゾールスプレー缶用防食塗料を得た。
【0087】
比較例1
「ラバテクトCPプライマー」(商品名、関西ペイント(株)製、非架橋型のラッカー塗料)を、ジメチルエーテルと容量比1:1の割合でエアゾール容器に充填してエアゾールスプレー缶用塗料とした。
【0088】
比較例2
「ビニローゼレッドプライマー」(商品名、大日本塗料(株)製、非架橋型のラッカー塗料)を、ジメチルエーテルと容量比1:1の割合でエアゾール容器に充填してエアゾールスプレー缶用防食塗料とした。
【0089】
実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた各塗料組成物について、下記の貯蔵安定性、スプレーノズルの詰まり性、付着性及び防食性に示す性能試験に供し、評価した。
【0090】
貯蔵安定性:上記エアゾール容器に充填したエアゾールスプレー缶用塗料を、40℃・50%RH雰囲気下で、1ケ月間貯蔵後の塗液状態の変化を観察し、次の基準で評価した。○は異常なしを、△は増粘又は沈降があったことを、×はゲル化したことを、それぞれ示す。
【0091】
スプレーノズルの詰まり性:40℃・50%RH雰囲気下で、1ケ月間貯蔵後の噴霧性を調べ、次の基準で評価した。○は全量噴霧可能で異常なしを、×はノズル詰まりがあったことを、それぞれ示す。
【0092】
付着性:基材として、1種ケレン、2種ケレン、3種ケレン及び亜鉛メッキ鋼板の4種を使用して、上記塗料を各基材面にそれぞれエアゾール塗布し、20℃・65%RHの雰囲気で7日間乾燥して各試験塗板を作成した。これらの試験塗板を耐湿試験機(50℃、相対湿度95%以上)に240時間入れた後、取り出した直後にJIS K−5400に準じてクロスカット後、粘着テープ付着試験を行い、次の基準で評価した。○は塗膜の剥がれがなく付着性良好を、△は塗膜が部分的に剥がれ、付着性やや不良を、×は塗膜が全面に剥がれ、付着性不良を、それぞれ示す。
【0093】
防食性:上記付着性の場合と同様にして作成した各試験塗板の塗面上に、ナイフでクロスカットキズを入れた。該試験塗板を35℃で240時間塩水噴霧試験に供し、錆・フクレの発生を観察し、次の基準で評価した。○は異常がなく、防食性良好を、△は部分的に錆・フクレが発生し、防食性やや不良を、×は全面に錆・フクレが発生し、防食性不良を、それぞれ示す。
【0094】
上記性能試験の結果を表1に示す。
【0095】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)大気中の水分によって架橋硬化する有機溶剤型防食塗料であって、架橋性官能基含有樹脂(a)として湿気硬化型ウレタン樹脂を含有し、必要に応じて該樹脂(a)中の架橋性官能基と反応する架橋剤(b)を含有する一液型防食塗料、
(B)補助有機溶剤、並びに
(C)噴射剤
を含み、該噴射剤(C)の含有量が、該一液型防食塗料(A)と該補助有機溶剤(B)を混合した塗料液に対する容量比で、該塗料液:該噴射剤(C)=55:45〜30:70の範囲内であることを特徴とするエアゾールスプレー缶用防食塗料。
【請求項2】
一液型防食塗料(A)が、湿気硬化型ウレタン樹脂及び無結晶水防錆顔料を含有する有機溶剤型防食塗料である請求項1記載のエアゾールスプレー缶用防食塗料。
【請求項3】
一液型防食塗料(A)が、湿気硬化型ウレタン樹脂、無結晶水防錆顔料及びシランカップリング剤を含有する有機溶剤型防食塗料である請求項2記載のエアゾールスプレー缶用防食塗料。
【請求項4】
補助有機溶剤(B)としてグリコールエーテル系溶剤を、且つ噴射剤(C)としてジメチルエーテルを、それぞれ使用してなる請求項1記載のエアゾールスプレー缶用防食塗料。
【請求項5】
補助有機溶剤(B)の使用量を、一液型防食塗料(A)と補助有機溶剤(B)を混合した塗料液中5重量%〜35重量%となる量とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエアゾールスプレー缶用防食塗料。
【請求項6】
鋼構造物表面又はその塗膜面の部分補修部位に、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のエアゾールスプレー缶用防食塗料を塗装することを特徴とする日常簡易補修工法。
【請求項7】
鋼構造物表面又はその塗膜面の部分補修部位に、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のエアゾールスプレー缶用防食塗料を塗装した後、さらにエアゾールスプレー缶用上塗り塗料を塗装する請求項6に記載の日常簡易補修工法。

【公開番号】特開2009−7578(P2009−7578A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205854(P2008−205854)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【分割の表示】特願2002−194490(P2002−194490)の分割
【原出願日】平成14年7月3日(2002.7.3)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】