説明

エアゾール型かつら用固定剤

【課題】使用者に違和感、不快感を与えることなく、短時間でかつらを容易に固定することができ、装着したかつらが外れる心配も無く、さらには長期間の保存にも適し、エアゾール缶等に充填すると、スプレー噴射により、固定剤の塗布を、使用者の手を汚すことなく、ムラ等を伴わないで、均一かつ容易に行うことができ、また、継続して噴射しても、エアゾール缶等の噴射口や管内に内容物が詰まることもない優れたかつら用固定剤を提供すること。
【解決手段】接着剤成分である粘着剤と、希釈剤成分である有機溶剤を含み、前記粘着剤と有機溶剤を液化ガスまたは圧縮ガス中に溶解または分散させ、噴射して使用することを特徴とする。前記粘着剤が、シリコン系ポリマーであること、また、前記有機溶剤が酢酸エチル及びキシレンからなる群より選ばれた1種もしくは2種の混合物であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール型かつら用固定剤に関し、かつらを頭皮、額及び頭髪部に接着させるための固定剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄毛部分を隠す方法として、かつらが用いられてきた。その際、かつらが頭部からずれたり外れたりしないよう、かつらを頭部へ確実に固定しなければならない。通常、かつらを頭部へ固定する方法としては、ストッパーを用いて固定させる方法(特許文献1)、両面テープにより固定させる方法(特許文献2)、かつら用固定剤を頭皮またはかつらに塗布して固定させる方法(特許文献3)等がとられている。
【0003】
しかしながら、従来のこのような方法では以下のような課題があった。
【0004】
ストッパーを用いて固定させる方法では、かつらの着脱は容易であるが、使用者の頭髪を利用するものであるため、頭部の固定箇所に頭髪の残毛が少ない場合や頭髪が全くない場合には不適当であった。また、ストッパーが金属である場合、空港等で金属探知機に反応し、かつらを外す必要があった。
【0005】
両面テープにより固定させる方法では、頭髪が全くない場合であっても装着できるが、頭髪が残っている場合には、残毛が両面テープの間に入り、粘着性が悪くなるほか、取り外す場合はテープに付いた自毛を1本ずつはずす必要があった。さらに、発汗や洗髪等で両面テープが濡れた場合には粘着力が低下し、かつらが外れてしまい、恥じらいを生じる恐れがあった。
【0006】
かつら用固定剤を用いた固定方法は、両面テープよりもかつらの固定を短時間に行うことができ、簡便なため頻繁に用いられている。しかしながら、従来のかつら用固定剤は粘性のある液体であり、これを用いる場合は、塗布用のブラシや刷毛、スポンジを用いて、または手で直接、頭皮またはかつらに塗るタイプのものであり、使用者の手を汚す問題や、塗布にムラが生じる等という問題があった。また、過度の塗布により皮膚が炎症を起こす等、物理的・化学的なダメージを受けることがあった。さらに、接着剤成分が外気に触れる時間が長く劣化しやすい等の課題もあった。
【0007】
また、前記のように従来のかつら用固定剤は粘性があり、エアゾール缶等を用いて噴射すると、噴射口や管内に詰りが生じるため、噴射して用いることが困難であった。
【特許文献1】特開平11−222706
【特許文献2】WO2005/009157
【特許文献3】特表2004-510843
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来のかつら固定法が前記の諸課題を有することに鑑み、新規なかつら用固定剤を提供することを目的とする。すなわち、使用者に違和感・不快感を与えることなく短時間で容易にかつらを固定することができ、装着したかつらが外れる心配も無く、さらには長期間の保存にも適し、噴射して用いても詰まらない、かつら用固定剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者らは鋭意検討を行い、使用者に違和感・不快感を与えることなく短時間で固定することができ、さらには長期間の保存にも適し、噴射して用いても詰まらない、かつら用固定剤を見出し、新規なエアゾール型かつら用固定剤の発明に成功した。
【0010】
本発明に関するエアゾール型かつら用固定剤とは、接着剤成分である粘着剤と、希釈剤成分である有機溶剤を含み、前記粘着剤と有機溶剤を液化ガスまたは圧縮ガス中に溶解または分散させ、噴射して使用することを特徴とする。
【0011】
本発明に関するエアゾール型かつら用固定剤において、前記粘着剤は好ましくはシリコン系ポリマーであり、前記有機溶剤は好ましくは酢酸エチル及びキシレンからなる群より選ばれた1種もしくは2種の混合物であり、前記液化ガスは好ましくはLPガス、フロンガス及びジメチルエーテルからなる群から選ばれた1種もしくはそれ以上の混合物である。
【0012】
また、前記LPガスは好ましくはn−ブタン、イソブタン及びプロパンからなる群から選ばれた1種もしくはそれ以上の混合物である。
【0013】
なお、本明細書中で接着剤とは「物体の間に介在することによって物体を結合することのできる物質」であり、粘着剤とは「常温で接着性を有し、軽い圧力で被着体(被着材)に接着する物質」であり、希釈剤とは「接着剤の固形分濃度及び粘度を低下させるために添加する液体」であり、JIS規格のJIS K6800の記載に準ずる。
【0014】
本発明をエアゾール缶等に充填すると、使用者はスプレー噴射により、容易に頭皮またはかつらに接着剤をスプレーでき、かつらを固定することができる。さらに、エアゾール缶の内容物は長期間に渡り保存できる。
【0015】
また、本発明に関するエアゾール型かつら用固定剤は、継続して噴射しても、エアゾール缶等の噴射口や管内に内容物が詰まることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定して解釈するべきではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0017】
本発明は、接着剤成分である粘着剤と、希釈剤成分である有機溶剤を含み、前記粘着剤と有機溶剤を液化ガスまたは圧縮ガス中に溶解または分散させ、噴射して使用することを特徴とするエアゾール型かつら用固定剤である。
【0018】
本発明で用いられる「接着剤成分である粘着剤」は、シリコン系ポリマー、シリコーン、アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー等からなる群から選ばれた1種もしくはそれ以上の混合物であり、好ましくはシリコン系ポリマーである。ここで、シリコン系ポリマーには、付加反応型シリコン系ポリマーと縮合反応型シリコン系ポリマーがあるが、どちらかに制限されるものではなく、それらの混合物であっても良い。特に好ましくは縮合反応型シリコン系ポリマーである。更に好ましくは、シリコンレジンとポリジメチルシロキサンとを脱水縮合反応して得られるシリコン系ポリマーである。
【0019】
シリコン系ポリマーは、本発明において使用される液化ガスまたは圧縮ガス中に容易に溶解または分散する。よって、固定剤を頭皮またはかつらに均一に泡状または粒子状にスプレー噴射することで、かつらを容易に固定することができる。また、シリコン系ポリマーは、希釈剤成分である有機溶剤がなくても、接着性を発揮できる。
【0020】
本発明で用いられる「希釈剤成分である有機溶剤」は、酢酸エチル、キシレン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、アセトン、ジイソプロピルエーテル、ラウリルアルコール、メタノール、エタノール、ブタノール、エチレングリコール、グリセリン等から選ばれた1種もしくはそれ以上の混合物であり、好ましくは酢酸エチル及びキシレンからなる群より選ばれた1種もしくは2種の混合物である。
【0021】
本発明で用いられる液化ガスは、圧縮することにより常温で液化する気体である。「LPガス」は、「Liquefied
petroleum ガス」の略称であり、液化石油ガスまたはLPGとも呼ばれる。LPガスは、n−ブタン、イソブタン及びプロパンから選ばれた1種もしくはそれ以上の混合物を主成分とするものであり、圧縮することにより常温で液化する気体である。なお、窒素ガス、炭酸ガス等の圧縮ガスについては、本発明の効果を損なわない範囲で、使用することができる。
【0022】
本発明の特徴である「噴射して使用する」とは、前記粘着剤及び有機溶剤を、液化ガスまたは圧縮ガス中に溶解または分散させ、それをエアゾール缶等の噴射用容器に入れ、そのまま、または手で数回振った後に、エアゾール缶等から頭皮またはかつらにスプレー噴射して使用することをいう。
【0023】
本発明において「使用する」とは、好ましくはエアゾール缶等の噴射口を下向きとし、缶の底辺を上向きとして頭皮またはかつらに使用することである。この使用形態により、継続して噴射しても、エアゾール缶等の噴射口や管内に内容物が詰まることがなくなる。
【0024】
以上の特徴から、本発明に関するエアゾール型かつら用固定剤は、固定剤の塗布を使用者の手を汚すことなく、ムラ等を伴わないで、均一かつ容易に行うことができる。
【0025】
さらに、本発明に関するエアゾール型かつら用固定剤は、噴射して使用するため、直接に手で塗る場合や、ブラシや刷毛、スポンジを用いて塗る場合よりも、過度の塗布の恐れがなく、それ故に皮膚が炎症を起こす等の恐れもない。
【0026】
さらに、固定剤がエアゾール缶等の内部に密閉されているため、接着剤が外気に触れる時間が短く、長期間の保存も可能である。また、継続して噴射しても、エアゾール缶等の噴射口や管内に内容物が詰まることもない。
【0027】
本発明で用いる粘着剤と有機溶剤の配合割合は、本発明の効果を損なわない範囲で種々の変更が可能である。粘着剤と有機溶剤の全重量に対して、好ましくは粘着剤が40重量%以上、有機溶剤が60重量%以下の範囲で含まれ、特に好ましくは粘着剤が50〜90重量%、有機溶剤が10〜50重量%の範囲で含まれる。
【0028】
また、有機溶剤として酢酸エチルまたはキシレンを用いる際には、酢酸エチルとキシレンの配合割合は、本発明の効果を損なわない範囲で種々の変更が可能である。粘着剤と有機溶剤の全重量に対して、好ましくは酢酸エチルが60重量%以下、キシレンが10重量%以下の範囲で含まれ、特に好ましくは酢酸エチルが10〜50重量%、キシレンが5重量%以下の範囲で含まれる。
【0029】
粘着剤と有機溶剤の混合物に対する液化ガスまたは圧縮ガスの配合割合は、本発明の効果を損なわない範囲で種々の変更が可能である。好ましくは粘着剤と有機溶剤の混合物100重量部に対し、液化ガスまたは圧縮ガスは10〜10000重量部の範囲で配合できる。
【0030】
本発明で用いるLPガス中のn−ブタン、イソブタン及びプロパンの濃度は、本発明の効果を損なわない範囲で種々の変更が可能である。LPガス中の全重量に対して、好ましくはプロパンが50重量%以上、n−ブタン、イソブタンが50重量%以下の範囲で含まれ、特に好ましくはプロパンが80重量%以上、n−ブタン、イソブタンが20重量%以下の範囲で含まれる。
【0031】
本発明に関するエアゾール型かつら用固定剤は必要に応じて、本発明の効果を損なわない限り、化粧品に一般に配合される成分、すなわちエタノール等のアルコール類、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、硬化ヒマシ油やオリーブ油等の油脂類、ポリエチレングリコール、シリコン、架橋型シリコン、ポリアクリル酸、可溶化セルロース等の高分子化合物等の使用感に関連する成分、パラベン等の防腐剤、アシルグリシン等の界面活性剤、パラアミノ安息香酸等の紫外線防止剤、ヒアルロン酸等の保湿剤、抗菌剤、酸化防止剤、pH調整剤、ビタミン類、色素、香料等を含むことができる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明が実施例により制限されることはないのは言うまでもない。
【0033】
(実施例)
以下の配合で、エアゾール型かつら用固定剤を製造することができる。
【0034】
すなわち、粘着剤として縮合反応型シリコン系ポリマー65重量%と、希釈剤として酢酸エチル34重量%とキシレン1重量%を混合する。前記粘着剤と希釈剤の混合物100重量部を、500重量部のLPガス(プロパン90重量%、イソブタン5重量%、n−ブタン5重量%)中に溶解または分散させる。
【0035】
さらに、LPガス中に溶解または分散させた前記粘着剤と希釈剤の混合物を、エアゾール缶に入れ、エアゾール缶の噴射口を下に向け、内容物を頭皮またはかつらにスプレー噴射し、かつらを頭皮、額及び頭髪部に接着させる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明者は、使用者に違和感・不快感を与えることなく短時間で容易にかつらを固定することができ、装着したかつらが外れる心配も無く、さらには長期間の保存にも適し、噴射して用いても詰まらないかつら用固定剤を見出し、新規なエアゾール型かつら用固定剤の発明に成功した。
【0037】
本発明にかかる、エアゾール型かつら用固定剤は、固定剤の塗布を、使用者の手を汚すことなく、ムラ等を伴わないで、均一かつ容易に行うことができる。また、噴射して使用するため、直接に手で塗る場合や、ブラシや刷毛やスポンジを用いて塗る場合よりも、過度の塗布の恐れがなく、それ故に、皮膚が炎症を起こす等の恐れもない。さらに、固定剤がエアゾール缶等の内部に密閉されているため、接着剤が外気に触れる時間が短く、長期間の保存も可能である。継続して噴射しても、エアゾール缶等の噴射口や管内に内容物が詰まることもない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤成分である粘着剤と、希釈剤成分である有機溶剤を含み、前記粘着剤と有機溶剤を液化ガスまたは圧縮ガス中に溶解または分散させ、噴射して使用することを特徴とするエアゾール型かつら用固定剤。
【請求項2】
前記粘着剤が、シリコン系ポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載のエアゾール型かつら用固定剤。
【請求項3】
前記有機溶剤が酢酸エチル及びキシレンからなる群より選ばれた1種もしくは2種の混合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載のエアゾール型かつら用固定剤。
【請求項4】
前記液化ガスがLPガス、フロンガス及びジメチルエーテルからなる群から選ばれた1種もしくはそれ以上の混合物であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のエアゾール型かつら用固定剤。
【請求項5】
前記LPガスが、n−ブタン、イソブタン及びプロパンからなる群から選ばれた1種もしくはそれ以上の混合物であることを特徴とする、請求項4に記載のエアゾール型かつら用固定剤。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のエアゾール型かつら用固定剤の製造方法。

【公開番号】特開2010−84027(P2010−84027A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255035(P2008−255035)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【出願人】(000222129)東洋エアゾール工業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】